29日〜30日
・8月29日
『天気：晴れ
残すところ私の活動限界まで二日となってしまった。
もはやここまでこれば半ば諦めの色が色濃く出始め、刻々と迫り来る時までただ何も考えずに過ごそうと考えている私が自分自身納得したくはないが、そうすることしか出来ないのが心苦しい。
人生何があるかわからないとよく聞くが、生まれて一ヶ月の命と決定付けられている私にとっては気休めの言葉でしかない。
結局はそうなのだ。命というものは全てのモノに平等に分け与えられ、そして平等に失うのである。
歴史的改革を成した偉人も、世界的犯罪者も、名も無き奴隷も、普通の兵士も。
全て平等にこの世に生を受け、そして平等に死んでゆく。それが遅かれ早かれの差はあるが、命というものは得た時にはすでに失うことが決まっているのだ。
そしてそれは人間も魔物も同じ。
だから我々生あるものはその終わり行く最期のひとときまで自分がこの世に生きていたという証を残すのである。
それがどんな形あれ、他人に気づかれるものなのか誰にもわからぬものなのか。それでもいい。
歴史に残されようとも人々の記憶から消えようとも、要は自己満足でもいい。
少なくとも私はそれで満足だ。
･･･とまぁ感情のない私が語ったところで信憑性は皆無なのだがな。最期の愚痴ということにしておこう。
さて今日は丸一日エルと過ごすことにした、いやさせてもらった。
なんたる偶然か屋敷には母様、妹様ともに外出しており、今屋敷にいるのは私とエルの二人のみであったのだ、この機を逃すわけがない。
おそらく今日がエルと過ごせる最後の日になるであろう。いや、だろうではない、そうなのだ。
今思い返すとこの一ヶ月でたくさんのことを体験したな。
私はエルに連れ出さられ、エルと共に暮らしかけがえのないものをたくさん貰った。
人々の温もり。
家族の心地よさ。
そして人を愛するということ。
もはや感謝という言葉では表せられないほどの多大なことを教えてもらった。私は幸せ者だ。
だから今日はエルに感謝の念をこめて私ができる精一杯の恩返しをしようと思う。
それはとても大事なこと。今となっては私の生きる最大の糧となるもの。私はエルがいたから、エルに取り出されてもらったときからこうなるように決められていたのだ。
多分これは、プログラミングされていたからという範疇では収まらないだろう。きっとそうなるように運命付けられていたのだ。
私は全力でこの感謝の念を伝えようと思う。
少々日記帳で書くのは忍びない内容なので、音声の記録のみで綴ろうかと思う。
―――――――――――――――――――――――――――――――
･･･ピー･･････ガガッガ･･･
「いやぁしかしこんな天気のいい日にユミルが押しかけてくるとは･･･てっきり母さんと妹について行くもんだと思ってたよ」
【いえいえ、私にはエルと過ごすこのひとときのほうが余程魅力的に感じます。そして本日はエルに用事がありますゆえ･･･】
「俺に用事？一体何事だ」
【かしこまって言うのもなんですけど、私は常日頃エルから多大な御礼を承っています。ですので本日はその恩返しをしようという目論見がありまして】
「目論見って聞くとどうも負のイメージしか沸かないんだが･･･まぁいい。で、そうかそうか恩返しか！ユミルもだいぶ機械らしさが抜けてきたなぁ。どんな恩返しとやらをしてくれるんだ？」
【私の身体器官の復興率は100%･･･いえ、研究跡地から戻ってきた際に150%まで増幅されておりました。つまりもう理解できますよね】
「だろうな。でなきゃこの状況の説明が付かん。とりあえず手を離してくれないか」
【え･･･あっ！す、すみません！もう私自身我慢できなく･･･ですので私が熱暴走する前にエルの方からリードしてくだれば本望です】
「何で恩返しするほうがお願いしているんだよ･･･ま、俺だってユミルのマスターだ。召使のお願いは聞いてやらないとな」
バキンッ
メリメリメリッッ
ゴトリ･･･
【はぁぁありがとうございますエル。外殻を外しました、私の素肌を･･･生まれたての裸をどうぞその眼に焼き付けて下さい。私が生きていた証をしかと記憶して下さい】
「そんなこと言われなくてもユミルとはこれからも一緒だよ。マスターである俺が愛するのはユミルだけだし、召使であるユミルが愛するのは俺だけでいい。そうだろう？」
【嬉しいっ♪私は貴方を愛しています。マスターとして、一人の男として。これからもですか･･･そう、ですよね･･･これからも･･･よろしくお願いしますっ】
「おいおいどうしたそんなに嬉しかったのか？」
【はいっ。おかげでホラ･･･私の下のお口が泣いていますよ。もうエルの声を聞くだけで･･･はぁん･･･以前の感度とは比べ物になりません】
「確かにすごいな。もう準備万端じゃないか」
【魔物娘としての本能が開花してしまったようです。エルのペニスを咥えて離しませんよ･･･ってきゃ！】
ぼふぅっ！
【あ、仰向けに･･･】
「綺麗な体だ･･･作り物かってほどに綺麗だ。って本当に作り物だったっけな」
【ふふっ♪今思えばこの体は全てエルに捧げるために作られているといっても過言ではありません。存分に貴方色に染め上げてください♪】
「ああ、言われなくてもその気だ。というかユミル、お前セックスのときは性格が変わるよな」
【そう･･･ですか？裸と裸の付き合いですし、もしかしたらこれが私の本当の性格なのかもしれませんね♪あ、でも私感情ないですし性格とかもないですよ】
「それもそうだな、まぁ考えても野暮ってもんだ。･･･しかし凄いな、こんなに濡れてるとは」
っぷ･･･
くちゅっ
【はぁ･･･ん♪すごいっ指で撫でられるだけで痺れちゃぅ。もっと、もっとぉ♪】
「完全にユミルからおねだりしてんじゃねーか･･･」
【ひゃぐぅ！！♪それイイ･･･ソコっ、そのざらざらしてることイイッ】
「はぁ、やばい･･･ユミル、今のお前最高に可愛いぞ」
【やぁん///そんなこと･･･嬉し過ぎてさらに感じちゃぅ♪】
「指を折り曲げてと、このざらついてるとこがいいのか？」
【そうっソコっ！♪じんじんくるのぉ♪】
「すげぇ指がまるで吸い込まれていくかのようだ。よし、余った親指でと･･･」
【！？♪やばっ･･･クリトリスも攻めちゃやぁ♪んんんっ！2点攻めはやばいってぇ♪】
「気持ちいいか？俺もユミルのエロイ喘ぎ聞いてパンパンに張れてるぞ」
【んああっ！エルの咥えたい･･･けどきもひよすぎて動けないぃい♪痺れるるる！】
「どっちなんだ、フェラしたいのか？それともイキたいのか？ユミルの口から言わないとやってあげないぞ」
【やぁ･･･言葉攻めなんて聞いてないよぉ///でもそれがまたイイっ♪
はぁっん！イ･･･イキたいれすぅ♪クリちゃんとGスポットの2点攻めで私をイカせてくらさいぃ！】
「くぅっ躊躇なく言いやがった･･･本当にお前は淫乱なヤツだな！お望みどおりイカせてやるよ」
【あっあっあっ♪♪ソコっそこそこ！気持ちイイっ！♪♪】
「（くっ手が攣りそうだが･･･頑張れ俺！もうすこしでユミルをイカせてあげれるんだ）
クリトリスもむき出してきたし、締まりもよくなってきたな。そろそろイクか？」
【あぁっ♪景色が白く･･･ばちばちする♪あっ何か来る！きちゃう♪んんっ！】
「よし、最後のスパートだっ！誰もいないから全力でイッていいぞ」
【ああっ！くる！イクっ♪♪あっぁっん！イっちゃう♪！あぁっ――】
バチバチバチっ！
ザザ―――
【あれ、私―】
「あぁ目覚ましたか。一体どれだけ気持ちよかったんだ？2,3分ほど意識失ってたぞ」
【え、あ･･･んんっ♪やらぁ思い出してまたイキそう///】
「おっと待った待った。どうせイクなら･･･ちゃんとセックスしてイこうか。俺もそろそろ張りすぎて辛くなってきた」
【わぁ前よりも大っきい♪だいぶ私の魔力が馴染んできたのかな】
「魔物娘と交わると大きくなると聞くが、まさかこんなに効くとは思わなかったな。
ユミルの大好きな精液上か下のどっちで貰いたい？」
【そんなの考える間もないよ♪さあ、早く私のナカにエルのおっきな肉棒ぶちこんでください♪♪】
ぬちゃぁ
くぱぁ･･･
「うおっ･･･自分から開くとは･･･そそるな」
【エル専用の穴なんだからエルが挿れないと意味ないでしょ？エルに丁度合うようにサイズも変わったんだから♪エルが喜ぶように私も色々考えているんだよ】
「･･･本当にお前は･･･よく出来た恋人だ」
【えっ今なんてっ･･･あんっ！！♪】
ぬぷぷ
ずっ･･･ずっ
「ううお･･･なんだこれはっ。軽く動いただけで暴発しちまいそうだ」
【はぁぁぁ〜♪エルが私のことを恋人･･･恋人･･･あぁん！♪
あのタイミングで言うなんて卑怯だよぉ♪♪考えただけでイキそっ･･･】
「･･････じゃあもう一度言おうか」
【え、や、やめて！今言われたら本当にイッちゃう！】
「お前が好きだユミル。これからもずっとお前と一緒に歩んでいきたい」
【やだっ！！幸せ♪あああああっ！！！イクのが止まらないよぉ！♪んああぁ！！
私だって･･･大好きっっ♪エルが好きで好きでたまらない！！】
「おい、ばっ、やめろ膣を動かすなって･･･！はあっ！♪」
【やっと素直になれた･･･私はエルが大好き！♪】
「ぐぐっはぁ！もう･･･やば･･･出る！出すぞユミル！！お前の大好きな精液をたっぷり注いでやるっ！♪！」
【頂戴！ちょうらい！！そしたらまたわらひイっちゃうからぁ♪！エルの精液一杯頂戴ぃ♪♪】
「はぁっはぁっ･･･イクぞ･･･溢すなよっ。ああっ！！」
ドクンッ！！
ビュー！ビュッー！
･･･ドロォ
「【んあああああっ！！！！♪♪♪】」
【しゅごいぃ！エルの熱っいのがきてる♪ドロドロだよぉ！！】
「はっ！はあっ！！うっ･･･くふぅ･･････気持ちよすぎるっ。魂まで持ってかれそうなくらいだ･･･」
【んあんっ♪まだ絞ったらもっと出るかな？うりうり〜】
「うぐぐっ･･･それもヤバイっ」
【よしっこれで全部かな♪ひとまずごちそうさまっ♪】
「ふぅ、こんなに出たのは生まれて始めてかも知れんな。流石は魔物娘と言ったところか」
【はぁ･･･サイコーに気持ちよかったぁ♪】
「そうだな。なぁユミル、キスをしてくれないか」
【それは業務命令？】
「恋人命令だ」
【んふふ〜♪んちゅっ･･･じゅるる】
「んっ･･･本当に可愛く･･･なったな、ユミル」
【ちゅ〜〜♪んぷっ、くちゅ、ネロォ･･･唾が糸引いてるよ♪】
「本当だな、凄く官能的だ」
【んむぅ、んちゅっ･･････んん！？！？
ゲホッゲホッ！エル、一体何のつもり！？】
「あースマン。どうも一回じゃ満足できそうにないんで、その気になるように虜の果実の錠剤を少々口移しさせてもらった。
大丈夫、俺も飲んだから」
【エル･･･そんなものなくても私は何度でもできるのに♪
言ってくれないと私だってわからないよ！】
「ごめんごめん。ただユミルが凄く可愛くて･･･もっと交わっていたくなったんだ。ごめんな」
【そういうところを含めて私は貴方を好きになったのだから、謝る必要なんてありませんよ。
私は貴方のためなら何度だって肌を重ねることが出来る】
「ははっ、お前も言うようになったな。じゃあコレ、もうさっき出したばっかりなのにこんなにも立ってるコレをお前の好きなようにしてくれ」
【エルの願いとならば私に拒む権利はありません♪丹念にご奉仕させていただきます♪】
「ふぅ･･･ユミル、これからも俺と俺の家族をよろしく頼むな。お前がいないともう俺達はやっていけない、お前も俺達の家族なんだから」
【･･････はい。嬉しいお言葉でございます】
「･････････」
【さ、さぁたんとご奉仕させてもらいますよ！今日はまだ始まったばかり、長いのです！お互い虜の果実で発情していますし精一杯お相手しますよ♪】
「ちょ、まて！そんな行き成り攻めると、ああっ！イクッ！！」
―――――――――――――――――――――――――――――――
残念ながらここで録音装置のバッテリーが切れてしまったのでここまでとなっている。
その後も私たちは何度も交わり、何度も果てこれでもかという程に白濁とした精液に塗れることとなった。
これほどエルと肌を重ねたことはあっただろうか。いやこれが初めてだ。
そして同時に最後でもある。
エルの精液を出来るだけ溢さぬよう子宮のタンクに詰めることにより、私が宇宙へ飛び立つ燃料となることができる。
誰にも悟られることなく･･･たった一人でこの地球の命運を分かつ遠い遠い旅へと旅立つことができるのだ。名誉この上ない。
エルに悟られることもなく、ありったっけの愛情を受け私もエルに伝えたいことは全て伝えた。
私はこれほどまでにエルを愛していたのだ。これほどまでにエルに愛されていたのだ。
それだけで･･･それだけ知ることが出来ただけで十分である。
そのためにも愛する者を守るため、私は行かなければならない。
帰ることのない片道の旅へ。』
・8月30日
『天気：晴れ
アー･･･テステス。
これからは実況モードで綴ろうかと思う。
時刻は午前4時、天気は雲ひとつない快晴だ。宇宙へ飛び立つには絶好の気候である。
私はこれからあの暗く冷たい宇宙へと飛び立つ。私自身が決めたことなのだ、たとえエルが止めろと命令してもこれだけは絶対に譲れない誓いである。
私は明日、遠い宇宙から飛来する巨大隕石と共に最期の時を迎えるのだ。若干の<恐怖>は少なからず感じている。
だがしかし、私にとって愛する人々を失うことのほうがよほど恐ろしく思えてくる。
エルと過ごした日々、妹様と語りつくした事柄、母様に教えてもらった教訓･･･彼らが死ぬということは、彼らと過ごした日々すらも消えてしまいそうで恐ろしいのである。
それがどんな形であれ救えるというのならば私は満足だ。
心置きなく旅立つことが出来る。
出発の時刻は午前5時。時間までの間に軌道調整と宇宙に対するよう機器の設定を変えなければならないな。
あとは爆弾の設定と･･･
設定と･･････！
な、なぜ･･･ここに･･･
「ハァ、ハァ、ユミル･･･」
エ、エル！なぜここにいるのですか！？誰にも感づかれぬようしていたのに･･･
「どうせお前のことだ、全部一人で抱えようとしてるんだろ。この馬鹿やろうが･･･」
私は誰にも心配かけたくなかった！それがエルであっても、母様や妹様であっても誰にも気づかれる事なく旅立つのが私のせめてもの償いであったのに。
「馬鹿が！！何度も言ってるだろ･･･お前はもう俺達の家族なんだ、家族に隠し事なんてしちゃだめだろうがよ。それに俺はユミルの恋人だ、俺には知る権利があるんだよ」
エル、私は･･･私は罪深きゴーレムです。主に嘘をつき、命令に背き身勝手な行動をとってしまったことをお許し下さい。ですが私にはやらなければならないことがあるのです。
「それは命令違反するほどの価値があるものなのか」
はい。私は宇宙へ旅立ちやらなければならないことがあるのです。具体的には言えませんが、この星の命運を分かつほど重要なことです。
「俺が行くなと言っても？」
私は行きます。行かなければなりません。これだけはどうされようとも何を言われようとも変更はありません。
「はぁー･･････呆れた。お前には本当に呆れたよ、ユミル」
どのような処罰も･･･受ける覚悟です･･･
「じゃあお前は今日この時限りで俺の使用人解雇とさせてもらう。いいな」
･････････
「いいなと言っているんだ。どうなんだ」
･･････はい･･･それがエルの下す処罰とならばなんなりと･･･
「晴れてお前は使用人ゴーレムからただのゴーレムとなったわけだ。おめでとう」
･････････はい･･･
「お前はもう俺の使用人ではないただのゴーレムだ。
だからもう自由に行動していいぞ、ユミル。主人と使用人という関係から解き放たれたお前は自由に行動していいんだ。勝手にどこへでも行くがいいさ」
･･･エ、エル！！本当に、本当に私はエルに感謝してもしきれません。ありがとうございます！
「これでようやく対等の立場になれた。恋人ってのはお互いが対等でなきゃいけないだろ？」
はい！エルはもはやマスターではありません。私のダーリンです！
「じゃあそんなダーリンからお願いが一つある。聞いてくれないか」
なんでしょうか、恋人の願いとならばなんなりと。
「必ず、戻ってこい」
･･･了解でありますエル！必ずや任務を遂行し帰還するであります！
「･･･ははっ何だその軍隊口調！約束だからな」
はい約束は破りません。愛する人の待つ地球へ戻ってまいります。
「おう、戻ってこい。そのときはまた家族で待ち構えておいてやるよ」
ありがとうございます。帰る場所、というのはとてもいいものですね。
ピーッピーッピーッ！
私の体内にセットされているタイマーがけたたましく鳴り響く。
ついに別れの時間がやってきたようだ
最期の最期にエルにこうやって会えて、本当に心残りがない。私は胸を張って旅立つことが出来そうだ。
「そろそろ時間か･･･」
はい、出発の時刻がやってきたようです。
無常にも鳴り響くタイマーのサイレンは人類の夜明けを示唆し、私の終わりを告げているかのようであった。
ふと目をやるとエルが私に何かをセットしているかのようだ。
それは一体？
「えーと･･･いつだっけ。8月11日くらいだっけな、お前と一緒に作ったカラクリが完成したんでな。もしもの時に作っておいたものだったがこうも早く使えるとは思わなかった」
あぁいつぞやのあれですか。どんな機能があるのですか？
「まぁ一言で言うならそうだな、遠距離音声通話機とでも名付けようか。遠く離れた距離の相手と自由に会話が出来る装置だ。結構単純そうに見えて中身は複雑なんだぞ？」
す、すごいです！遠くの相手と会話するなんて人類の夢ではありませんか！世紀の大発明ですよ！！
「よせやい照れる！まぁ地球で使う前提で作ってるんで、宇宙では対応できるか分からんが･･･それがあればもしかしたら任務中でも俺たち家族と会話できるかもしれない」
すばらしいです、ありがとうございます。本当に･･･
最期のひとときまでエルと会話が出来る、そう考えただけで心が躍るかのように悦び回っている。
あぁ私はやっぱりエルが好きなのだなぁ。
できればこのまま別れたくないが仕方のないことである。
ではそろそろ･･･行って参りますね。エル。
「ああ、行ってこい。俺はいつまでも待っているぞ」
エルの真っ直ぐな視線に私も視線を合わせ彼を見つめる。
それだけで意思の疎通が出来そうな気さえしてきた。
相思相愛すぎて逆に怖いほどに。
エネルギー出力最大▼
ジェットエンジン稼動条件達成▼
グラビテーションシステム作動、重力の制限を解除します▼
発射カウントダウン10▼
9
8
7
6
5
エル！貴方に拾われて本当に良かった。貴方を好きになれて私は幸せです。
4
3
2
1
「ユミル･･････行ってこい。」
はい！！
0
ゴゴゴゴゴゴゴゴ･･･
みるみるうちにエルが小さくなっていく。
少し涙ぐんでいるようにも見え、思わずもらい泣きをしてしまいそうであった。
これでいいのだ。
歴史には残らずとも私はエルという人物に私を刻み込んでもらった。
それだけで十分私が生きた証となるであろう。
この短い命のなかで恋人が出来るという素敵な出来事に遭遇できたことを私は誇りに思う。
と同時に、命の重みというのも実感できた。
もう思い残すことは何もない。
私はこれから巨大隕石に向けて直進あるのみだ。
私の明日は来なくとも、地球の明日を迎えさせてやる。絶対に！
あぁそれと。
やはり私は罪深きゴーレムです。
最期の最期で彼に嘘をついてしまったことを今この場で深く詫びよう。
必ず帰ると･･･』
地上
「ふっ･･･ぐぅぅ･･･ホントにユミル、あいつは大馬鹿やろうだ・・・！
嘘ついてるのなんて･･････バレバレなんだよっ･･････」
『天気：晴れ
残すところ私の活動限界まで二日となってしまった。
もはやここまでこれば半ば諦めの色が色濃く出始め、刻々と迫り来る時までただ何も考えずに過ごそうと考えている私が自分自身納得したくはないが、そうすることしか出来ないのが心苦しい。
人生何があるかわからないとよく聞くが、生まれて一ヶ月の命と決定付けられている私にとっては気休めの言葉でしかない。
結局はそうなのだ。命というものは全てのモノに平等に分け与えられ、そして平等に失うのである。
歴史的改革を成した偉人も、世界的犯罪者も、名も無き奴隷も、普通の兵士も。
全て平等にこの世に生を受け、そして平等に死んでゆく。それが遅かれ早かれの差はあるが、命というものは得た時にはすでに失うことが決まっているのだ。
そしてそれは人間も魔物も同じ。
だから我々生あるものはその終わり行く最期のひとときまで自分がこの世に生きていたという証を残すのである。
それがどんな形あれ、他人に気づかれるものなのか誰にもわからぬものなのか。それでもいい。
歴史に残されようとも人々の記憶から消えようとも、要は自己満足でもいい。
少なくとも私はそれで満足だ。
･･･とまぁ感情のない私が語ったところで信憑性は皆無なのだがな。最期の愚痴ということにしておこう。
さて今日は丸一日エルと過ごすことにした、いやさせてもらった。
なんたる偶然か屋敷には母様、妹様ともに外出しており、今屋敷にいるのは私とエルの二人のみであったのだ、この機を逃すわけがない。
おそらく今日がエルと過ごせる最後の日になるであろう。いや、だろうではない、そうなのだ。
今思い返すとこの一ヶ月でたくさんのことを体験したな。
私はエルに連れ出さられ、エルと共に暮らしかけがえのないものをたくさん貰った。
人々の温もり。
家族の心地よさ。
そして人を愛するということ。
もはや感謝という言葉では表せられないほどの多大なことを教えてもらった。私は幸せ者だ。
だから今日はエルに感謝の念をこめて私ができる精一杯の恩返しをしようと思う。
それはとても大事なこと。今となっては私の生きる最大の糧となるもの。私はエルがいたから、エルに取り出されてもらったときからこうなるように決められていたのだ。
多分これは、プログラミングされていたからという範疇では収まらないだろう。きっとそうなるように運命付けられていたのだ。
私は全力でこの感謝の念を伝えようと思う。
少々日記帳で書くのは忍びない内容なので、音声の記録のみで綴ろうかと思う。
―――――――――――――――――――――――――――――――
･･･ピー･･････ガガッガ･･･
「いやぁしかしこんな天気のいい日にユミルが押しかけてくるとは･･･てっきり母さんと妹について行くもんだと思ってたよ」
【いえいえ、私にはエルと過ごすこのひとときのほうが余程魅力的に感じます。そして本日はエルに用事がありますゆえ･･･】
「俺に用事？一体何事だ」
【かしこまって言うのもなんですけど、私は常日頃エルから多大な御礼を承っています。ですので本日はその恩返しをしようという目論見がありまして】
「目論見って聞くとどうも負のイメージしか沸かないんだが･･･まぁいい。で、そうかそうか恩返しか！ユミルもだいぶ機械らしさが抜けてきたなぁ。どんな恩返しとやらをしてくれるんだ？」
【私の身体器官の復興率は100%･･･いえ、研究跡地から戻ってきた際に150%まで増幅されておりました。つまりもう理解できますよね】
「だろうな。でなきゃこの状況の説明が付かん。とりあえず手を離してくれないか」
【え･･･あっ！す、すみません！もう私自身我慢できなく･･･ですので私が熱暴走する前にエルの方からリードしてくだれば本望です】
「何で恩返しするほうがお願いしているんだよ･･･ま、俺だってユミルのマスターだ。召使のお願いは聞いてやらないとな」
バキンッ
メリメリメリッッ
ゴトリ･･･
【はぁぁありがとうございますエル。外殻を外しました、私の素肌を･･･生まれたての裸をどうぞその眼に焼き付けて下さい。私が生きていた証をしかと記憶して下さい】
「そんなこと言われなくてもユミルとはこれからも一緒だよ。マスターである俺が愛するのはユミルだけだし、召使であるユミルが愛するのは俺だけでいい。そうだろう？」
【嬉しいっ♪私は貴方を愛しています。マスターとして、一人の男として。これからもですか･･･そう、ですよね･･･これからも･･･よろしくお願いしますっ】
「おいおいどうしたそんなに嬉しかったのか？」
【はいっ。おかげでホラ･･･私の下のお口が泣いていますよ。もうエルの声を聞くだけで･･･はぁん･･･以前の感度とは比べ物になりません】
「確かにすごいな。もう準備万端じゃないか」
【魔物娘としての本能が開花してしまったようです。エルのペニスを咥えて離しませんよ･･･ってきゃ！】
ぼふぅっ！
【あ、仰向けに･･･】
「綺麗な体だ･･･作り物かってほどに綺麗だ。って本当に作り物だったっけな」
【ふふっ♪今思えばこの体は全てエルに捧げるために作られているといっても過言ではありません。存分に貴方色に染め上げてください♪】
「ああ、言われなくてもその気だ。というかユミル、お前セックスのときは性格が変わるよな」
【そう･･･ですか？裸と裸の付き合いですし、もしかしたらこれが私の本当の性格なのかもしれませんね♪あ、でも私感情ないですし性格とかもないですよ】
「それもそうだな、まぁ考えても野暮ってもんだ。･･･しかし凄いな、こんなに濡れてるとは」
っぷ･･･
くちゅっ
【はぁ･･･ん♪すごいっ指で撫でられるだけで痺れちゃぅ。もっと、もっとぉ♪】
「完全にユミルからおねだりしてんじゃねーか･･･」
【ひゃぐぅ！！♪それイイ･･･ソコっ、そのざらざらしてることイイッ】
「はぁ、やばい･･･ユミル、今のお前最高に可愛いぞ」
【やぁん///そんなこと･･･嬉し過ぎてさらに感じちゃぅ♪】
「指を折り曲げてと、このざらついてるとこがいいのか？」
【そうっソコっ！♪じんじんくるのぉ♪】
「すげぇ指がまるで吸い込まれていくかのようだ。よし、余った親指でと･･･」
【！？♪やばっ･･･クリトリスも攻めちゃやぁ♪んんんっ！2点攻めはやばいってぇ♪】
「気持ちいいか？俺もユミルのエロイ喘ぎ聞いてパンパンに張れてるぞ」
【んああっ！エルの咥えたい･･･けどきもひよすぎて動けないぃい♪痺れるるる！】
「どっちなんだ、フェラしたいのか？それともイキたいのか？ユミルの口から言わないとやってあげないぞ」
【やぁ･･･言葉攻めなんて聞いてないよぉ///でもそれがまたイイっ♪
はぁっん！イ･･･イキたいれすぅ♪クリちゃんとGスポットの2点攻めで私をイカせてくらさいぃ！】
「くぅっ躊躇なく言いやがった･･･本当にお前は淫乱なヤツだな！お望みどおりイカせてやるよ」
【あっあっあっ♪♪ソコっそこそこ！気持ちイイっ！♪♪】
「（くっ手が攣りそうだが･･･頑張れ俺！もうすこしでユミルをイカせてあげれるんだ）
クリトリスもむき出してきたし、締まりもよくなってきたな。そろそろイクか？」
【あぁっ♪景色が白く･･･ばちばちする♪あっ何か来る！きちゃう♪んんっ！】
「よし、最後のスパートだっ！誰もいないから全力でイッていいぞ」
【ああっ！くる！イクっ♪♪あっぁっん！イっちゃう♪！あぁっ――】
バチバチバチっ！
ザザ―――
【あれ、私―】
「あぁ目覚ましたか。一体どれだけ気持ちよかったんだ？2,3分ほど意識失ってたぞ」
【え、あ･･･んんっ♪やらぁ思い出してまたイキそう///】
「おっと待った待った。どうせイクなら･･･ちゃんとセックスしてイこうか。俺もそろそろ張りすぎて辛くなってきた」
【わぁ前よりも大っきい♪だいぶ私の魔力が馴染んできたのかな】
「魔物娘と交わると大きくなると聞くが、まさかこんなに効くとは思わなかったな。
ユミルの大好きな精液上か下のどっちで貰いたい？」
【そんなの考える間もないよ♪さあ、早く私のナカにエルのおっきな肉棒ぶちこんでください♪♪】
ぬちゃぁ
くぱぁ･･･
「うおっ･･･自分から開くとは･･･そそるな」
【エル専用の穴なんだからエルが挿れないと意味ないでしょ？エルに丁度合うようにサイズも変わったんだから♪エルが喜ぶように私も色々考えているんだよ】
「･･･本当にお前は･･･よく出来た恋人だ」
【えっ今なんてっ･･･あんっ！！♪】
ぬぷぷ
ずっ･･･ずっ
「ううお･･･なんだこれはっ。軽く動いただけで暴発しちまいそうだ」
【はぁぁぁ〜♪エルが私のことを恋人･･･恋人･･･あぁん！♪
あのタイミングで言うなんて卑怯だよぉ♪♪考えただけでイキそっ･･･】
「･･････じゃあもう一度言おうか」
【え、や、やめて！今言われたら本当にイッちゃう！】
「お前が好きだユミル。これからもずっとお前と一緒に歩んでいきたい」
【やだっ！！幸せ♪あああああっ！！！イクのが止まらないよぉ！♪んああぁ！！
私だって･･･大好きっっ♪エルが好きで好きでたまらない！！】
「おい、ばっ、やめろ膣を動かすなって･･･！はあっ！♪」
【やっと素直になれた･･･私はエルが大好き！♪】
「ぐぐっはぁ！もう･･･やば･･･出る！出すぞユミル！！お前の大好きな精液をたっぷり注いでやるっ！♪！」
【頂戴！ちょうらい！！そしたらまたわらひイっちゃうからぁ♪！エルの精液一杯頂戴ぃ♪♪】
「はぁっはぁっ･･･イクぞ･･･溢すなよっ。ああっ！！」
ドクンッ！！
ビュー！ビュッー！
･･･ドロォ
「【んあああああっ！！！！♪♪♪】」
【しゅごいぃ！エルの熱っいのがきてる♪ドロドロだよぉ！！】
「はっ！はあっ！！うっ･･･くふぅ･･････気持ちよすぎるっ。魂まで持ってかれそうなくらいだ･･･」
【んあんっ♪まだ絞ったらもっと出るかな？うりうり〜】
「うぐぐっ･･･それもヤバイっ」
【よしっこれで全部かな♪ひとまずごちそうさまっ♪】
「ふぅ、こんなに出たのは生まれて始めてかも知れんな。流石は魔物娘と言ったところか」
【はぁ･･･サイコーに気持ちよかったぁ♪】
「そうだな。なぁユミル、キスをしてくれないか」
【それは業務命令？】
「恋人命令だ」
【んふふ〜♪んちゅっ･･･じゅるる】
「んっ･･･本当に可愛く･･･なったな、ユミル」
【ちゅ〜〜♪んぷっ、くちゅ、ネロォ･･･唾が糸引いてるよ♪】
「本当だな、凄く官能的だ」
【んむぅ、んちゅっ･･････んん！？！？
ゲホッゲホッ！エル、一体何のつもり！？】
「あースマン。どうも一回じゃ満足できそうにないんで、その気になるように虜の果実の錠剤を少々口移しさせてもらった。
大丈夫、俺も飲んだから」
【エル･･･そんなものなくても私は何度でもできるのに♪
言ってくれないと私だってわからないよ！】
「ごめんごめん。ただユミルが凄く可愛くて･･･もっと交わっていたくなったんだ。ごめんな」
【そういうところを含めて私は貴方を好きになったのだから、謝る必要なんてありませんよ。
私は貴方のためなら何度だって肌を重ねることが出来る】
「ははっ、お前も言うようになったな。じゃあコレ、もうさっき出したばっかりなのにこんなにも立ってるコレをお前の好きなようにしてくれ」
【エルの願いとならば私に拒む権利はありません♪丹念にご奉仕させていただきます♪】
「ふぅ･･･ユミル、これからも俺と俺の家族をよろしく頼むな。お前がいないともう俺達はやっていけない、お前も俺達の家族なんだから」
【･･････はい。嬉しいお言葉でございます】
「･････････」
【さ、さぁたんとご奉仕させてもらいますよ！今日はまだ始まったばかり、長いのです！お互い虜の果実で発情していますし精一杯お相手しますよ♪】
「ちょ、まて！そんな行き成り攻めると、ああっ！イクッ！！」
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残念ながらここで録音装置のバッテリーが切れてしまったのでここまでとなっている。
その後も私たちは何度も交わり、何度も果てこれでもかという程に白濁とした精液に塗れることとなった。
これほどエルと肌を重ねたことはあっただろうか。いやこれが初めてだ。
そして同時に最後でもある。
エルの精液を出来るだけ溢さぬよう子宮のタンクに詰めることにより、私が宇宙へ飛び立つ燃料となることができる。
誰にも悟られることなく･･･たった一人でこの地球の命運を分かつ遠い遠い旅へと旅立つことができるのだ。名誉この上ない。
エルに悟られることもなく、ありったっけの愛情を受け私もエルに伝えたいことは全て伝えた。
私はこれほどまでにエルを愛していたのだ。これほどまでにエルに愛されていたのだ。
それだけで･･･それだけ知ることが出来ただけで十分である。
そのためにも愛する者を守るため、私は行かなければならない。
帰ることのない片道の旅へ。』
・8月30日
『天気：晴れ
アー･･･テステス。
これからは実況モードで綴ろうかと思う。
時刻は午前4時、天気は雲ひとつない快晴だ。宇宙へ飛び立つには絶好の気候である。
私はこれからあの暗く冷たい宇宙へと飛び立つ。私自身が決めたことなのだ、たとえエルが止めろと命令してもこれだけは絶対に譲れない誓いである。
私は明日、遠い宇宙から飛来する巨大隕石と共に最期の時を迎えるのだ。若干の<恐怖>は少なからず感じている。
だがしかし、私にとって愛する人々を失うことのほうがよほど恐ろしく思えてくる。
エルと過ごした日々、妹様と語りつくした事柄、母様に教えてもらった教訓･･･彼らが死ぬということは、彼らと過ごした日々すらも消えてしまいそうで恐ろしいのである。
それがどんな形であれ救えるというのならば私は満足だ。
心置きなく旅立つことが出来る。
出発の時刻は午前5時。時間までの間に軌道調整と宇宙に対するよう機器の設定を変えなければならないな。
あとは爆弾の設定と･･･
設定と･･････！
な、なぜ･･･ここに･･･
「ハァ、ハァ、ユミル･･･」
エ、エル！なぜここにいるのですか！？誰にも感づかれぬようしていたのに･･･
「どうせお前のことだ、全部一人で抱えようとしてるんだろ。この馬鹿やろうが･･･」
私は誰にも心配かけたくなかった！それがエルであっても、母様や妹様であっても誰にも気づかれる事なく旅立つのが私のせめてもの償いであったのに。
「馬鹿が！！何度も言ってるだろ･･･お前はもう俺達の家族なんだ、家族に隠し事なんてしちゃだめだろうがよ。それに俺はユミルの恋人だ、俺には知る権利があるんだよ」
エル、私は･･･私は罪深きゴーレムです。主に嘘をつき、命令に背き身勝手な行動をとってしまったことをお許し下さい。ですが私にはやらなければならないことがあるのです。
「それは命令違反するほどの価値があるものなのか」
はい。私は宇宙へ旅立ちやらなければならないことがあるのです。具体的には言えませんが、この星の命運を分かつほど重要なことです。
「俺が行くなと言っても？」
私は行きます。行かなければなりません。これだけはどうされようとも何を言われようとも変更はありません。
「はぁー･･････呆れた。お前には本当に呆れたよ、ユミル」
どのような処罰も･･･受ける覚悟です･･･
「じゃあお前は今日この時限りで俺の使用人解雇とさせてもらう。いいな」
･････････
「いいなと言っているんだ。どうなんだ」
･･････はい･･･それがエルの下す処罰とならばなんなりと･･･
「晴れてお前は使用人ゴーレムからただのゴーレムとなったわけだ。おめでとう」
･････････はい･･･
「お前はもう俺の使用人ではないただのゴーレムだ。
だからもう自由に行動していいぞ、ユミル。主人と使用人という関係から解き放たれたお前は自由に行動していいんだ。勝手にどこへでも行くがいいさ」
･･･エ、エル！！本当に、本当に私はエルに感謝してもしきれません。ありがとうございます！
「これでようやく対等の立場になれた。恋人ってのはお互いが対等でなきゃいけないだろ？」
はい！エルはもはやマスターではありません。私のダーリンです！
「じゃあそんなダーリンからお願いが一つある。聞いてくれないか」
なんでしょうか、恋人の願いとならばなんなりと。
「必ず、戻ってこい」
･･･了解でありますエル！必ずや任務を遂行し帰還するであります！
「･･･ははっ何だその軍隊口調！約束だからな」
はい約束は破りません。愛する人の待つ地球へ戻ってまいります。
「おう、戻ってこい。そのときはまた家族で待ち構えておいてやるよ」
ありがとうございます。帰る場所、というのはとてもいいものですね。
ピーッピーッピーッ！
私の体内にセットされているタイマーがけたたましく鳴り響く。
ついに別れの時間がやってきたようだ
最期の最期にエルにこうやって会えて、本当に心残りがない。私は胸を張って旅立つことが出来そうだ。
「そろそろ時間か･･･」
はい、出発の時刻がやってきたようです。
無常にも鳴り響くタイマーのサイレンは人類の夜明けを示唆し、私の終わりを告げているかのようであった。
ふと目をやるとエルが私に何かをセットしているかのようだ。
それは一体？
「えーと･･･いつだっけ。8月11日くらいだっけな、お前と一緒に作ったカラクリが完成したんでな。もしもの時に作っておいたものだったがこうも早く使えるとは思わなかった」
あぁいつぞやのあれですか。どんな機能があるのですか？
「まぁ一言で言うならそうだな、遠距離音声通話機とでも名付けようか。遠く離れた距離の相手と自由に会話が出来る装置だ。結構単純そうに見えて中身は複雑なんだぞ？」
す、すごいです！遠くの相手と会話するなんて人類の夢ではありませんか！世紀の大発明ですよ！！
「よせやい照れる！まぁ地球で使う前提で作ってるんで、宇宙では対応できるか分からんが･･･それがあればもしかしたら任務中でも俺たち家族と会話できるかもしれない」
すばらしいです、ありがとうございます。本当に･･･
最期のひとときまでエルと会話が出来る、そう考えただけで心が躍るかのように悦び回っている。
あぁ私はやっぱりエルが好きなのだなぁ。
できればこのまま別れたくないが仕方のないことである。
ではそろそろ･･･行って参りますね。エル。
「ああ、行ってこい。俺はいつまでも待っているぞ」
エルの真っ直ぐな視線に私も視線を合わせ彼を見つめる。
それだけで意思の疎通が出来そうな気さえしてきた。
相思相愛すぎて逆に怖いほどに。
エネルギー出力最大▼
ジェットエンジン稼動条件達成▼
グラビテーションシステム作動、重力の制限を解除します▼
発射カウントダウン10▼
9
8
7
6
5
エル！貴方に拾われて本当に良かった。貴方を好きになれて私は幸せです。
4
3
2
1
「ユミル･･････行ってこい。」
はい！！
0
ゴゴゴゴゴゴゴゴ･･･
みるみるうちにエルが小さくなっていく。
少し涙ぐんでいるようにも見え、思わずもらい泣きをしてしまいそうであった。
これでいいのだ。
歴史には残らずとも私はエルという人物に私を刻み込んでもらった。
それだけで十分私が生きた証となるであろう。
この短い命のなかで恋人が出来るという素敵な出来事に遭遇できたことを私は誇りに思う。
と同時に、命の重みというのも実感できた。
もう思い残すことは何もない。
私はこれから巨大隕石に向けて直進あるのみだ。
私の明日は来なくとも、地球の明日を迎えさせてやる。絶対に！
あぁそれと。
やはり私は罪深きゴーレムです。
最期の最期で彼に嘘をついてしまったことを今この場で深く詫びよう。
必ず帰ると･･･』
地上
「ふっ･･･ぐぅぅ･･･ホントにユミル、あいつは大馬鹿やろうだ・・・！
嘘ついてるのなんて･･････バレバレなんだよっ･･････」
12/08/18 20:11更新 / ゆず胡椒
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