連載小説
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二駅目 服の調達
風が冷たく感じられるようになって来た秋の初頭ほど。そこに二人の変態が身を隠していた。二人は行為の直後に発生した崖崩れによって、なにも着ていない状態のまま外に逃げて来たのだ。

「・・クシュンッ!」
ミリアが手で押さえながらもくしゃみをした。とても女の子らしくて可愛らしいくしゃみの仕草だ。そう言う所は無駄に女の子っぽい所もあるミリアなのに、あそこまで淫乱だとその内ミルの精液を吸い尽くしてしまいそうだと、ミルは鼻をムズムズさせているミリアを見ながらゾクッとしていた。

「ブルブル・・・・ミルぅ・・なにか毛布とか・・クシュンッ!・・ズズッ・・持ってない?」
体を震わせて再びくしゃみをしたミリアは、鼻水を吸って途中で止まっていた言葉を続けてくれた。だが、帰ってくる答えは分かっていた。NOだ。

「うぅ・・・駄目・・眠くなってきた・・・・」
体を尚も震わせていたミリアは、段々と体を左右に揺らし始めた。これは前からミルも見ている仕草で、ミリアは心の底から眠さを感じるといつも左右に体を揺らして眠気を誘うらしい。いつも親にされていたのか自分で無意識のうちにやっているのかは不明だが、とにかくこれはサインの様なものだった。

「ごめん・・・ちょっとの間・・・寝かせて・・・・」
隠れる様にして姿勢を低くして座り込んでいた二人だが、眠気に負けたミリアがミルの膝の上に頭を載せて寝てしまった。ラミアを含む蛇は、変温動物と言われる部類に入るらしく、寒い場所等の温度変化が著しい環境下では体が無理やりにでも冬眠に入ろうとするらしい。外はせいぜい風が冷たく感じる程度だが、ミリアにはこれは寒すぎるのだろう。そう思ったミルは、裸のままなのにもかかわらずミリアの頭を撫でて寝かし付けていた。その時にしこたまミルの勃起した棒がミリアの頭を突いていたのに関しては触れてはいけない。

「・・うぅ・・・やっぱり・・ちょっと寒いかも・・」
「・・・・・困ってます・・・・・?」
流石に日も落ちてきた状況下で、恒温動物である人でも寒さには耐性はそこまで強くは存在しない。元々、温度変化が希薄だった洞窟の中で昼夜問わずに交わり続けていたミリアとミルだ。それがいきなり外に出されて素っ裸のままで居れば寒くもなると言うものだ。そんな事を考えていると、背後の茂みから少女の声が聞こえた。どうやらミルの状況を分かっているらしい。声を上げそうになったミルだったが、不意に背後から唇を唇で奪われた。その時にミルの額には、とても硬質な物がぶつかっている。

「・・・・困ってますね・・・・」
「・・う・・うん・・寒くてね。」
キスしていた唇を離した少女は、少し顔を赤くしながらも表情は変えずに分かり切った事をミルに聞いた。その質問に、分かり切った形で答えたミルは少し体を震わせていた。

「・・・私の服・・・あげる・・・」
「えっ?」
「・・・ただし・・・私のお願い・・・聞いて・・?」
「そんな女なんか捨てて・・・一緒に住んで欲しい・・」
最初は自分の服を差し上げると抜かした少女だったが、ミルが膝に乗せているミリアの事を邪険に思っているのか、交換条件にそのミリアを捨てろと、更には一緒に住もうと言って来た。ミルにはそれを容認できなかった。当然だ。いつもミルを可愛がって(性交)くれているミリアと、今さっき知り合って美味しい条件を突き出して来た幼げの残る少女。どちらを取ると言われるとミルはすかさずミリアを取る。それくらいの覚悟でその誘いを断った。

「・・・・そう・・・・残念・・・」
そう言うと少女は、宣言通りに自分の鞄の中から女性物の服一式と、男性物の服一式をミルの目の前に置くと、何も言わずに去ってしまった。そしてミルはその少女に付いて思い出してみる。まず、あれは人では無い。魔物だ。恐らくはサイクロプスと呼ばれる人種だ。肌の色は有り得ないほどに青ざめており、額には小振りな角があった。そして極めつけは、キスした時に見た大きな目玉だ。顔の半分ほどの面積を使っていそうな瞳には、何処か謎めいた光も見えていた様な気がする。どうやら街か何処かへ物を売りに行っていたらしく、大きなカバンも見受けられていた気がする。なにせ、その中からこの暖かそうな服が出て来たのだから。とりあえず、寒さを凌ぐために自分の着る服に手を伸ばす前にミリアに服を着せたミルは、その後から自分の服を着た。デザインはごくごく在りがちな地味なファッションだった。その割に中には温度が溜まって温かい。ミリアの服も同等の物らしく、それを来たミリアは服の裾を握って温かさに浸っていた。眠っているのが少し勿体なくも感じたミルだが、そんなに考え込むことも無く瞼が重くなっていった。

「それにしても・・・さっきの少女は一体・・・・・zzz」
考える力も失われてきたミルは、考えを途中で切り捨てて眠ってしまった。なんとも無防備の様に見えるが、隠れている場所は比較的茂みの裏側に位置していたので見つかる心配は無かった。そして睡魔に身を任せたミルは、そのまま目を閉じて眠ってしまった。その少し後ろでは、とある一人の少女がその様子を見て顔を赤く染め上げていたと言うのは、また次回に。
10/10/30 17:39更新 / 兎と兎
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