連載小説
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シズク外伝 01
名前、冴島雫
身長、152cm
体重、43`
胸、言いたくない。
年齢、人間でいうと13くらい
好きなこと、寝ること
好きな食べ物、チョコレート
好きな音楽、クラシック
好きなゲーム、エレクトロプランクトン
好きな本、最近は恋愛小説。
好きな物、お兄さんの枕
憧れの人、お兄さん
好きな匂い、お兄さんの服の匂い
好きな人、お兄さん

そばにいて欲しい人。

レン。

ーーーーシズク外伝ーーーー

…なにがどうなって、なにがどう巡って、私がどうなったかなんて大それて大きいことは話せない。
そもそも法螺を吹いて話せるほど饒舌な舌は持っていない。

マユの用に活発にハキハキと喋ることができればもう少しお兄さんは私に振り向いてくれるのかな、なんて。

つまるところ、語る事を放棄します宣言を今私はしたわけです。
私が話すのは、生い立ち、趣味、好物、諸々を放り捨てて。

お兄さんに対する思い、ただ、それだけ。

シズク。
アマホシ シズク。
今は冴島シズク。

降り注いだ雨粒の名残。
つたり落ちるは一雫。

頬は濡らしたことはないけれど、基本的に雫って見かける時は「誰のものともわからない雫が頬を伝った」なんて文言が多い気がするのは、私だけかな。

私だけみたいだね。

さて、腕を伸ばし、足を伸ばし、首を回し、体を起こす。

「…うん、健康体。」

体の節が痛む時は大抵熱がある。
そんな気がするだけ。

うん、動ける。
やっぱりいつもどおり。

まだ大きいとはお世辞にも言えない歩幅でまずすること。

ピッキング。

ん?
いや、普通だよ。

水を細い糸のように伸ばして固め、右に回す。

「…あれ。」

あれ。
あれあれ。

普通ならここで感触があるのに、何もない。

上へ回したり下に回したり、左に向けたりもう一度右をいじったり。

「…鍵、変わってる?」

げんなり。
お兄さんの寝顔を見るのが日課だったんだけどな。

「…もういっかい。」

まぁ、だからといって別に諦めたわけじゃないし、やることといえばピッキング一回目と変わらない。

もう一度ぐるりと一周させ、手掛かりを探す。

…手掛からない。

「…まさか。」

ドアノブに手をかけ、右に回す。

「……」

鍵、かかってませんでした。
そう言えば昨日お兄さん帰り遅かったっけ。

「…不用心。」

なんの迷いもなく扉をあけ、閉める。

そして鍵をかける。

「…これでよし。」

密室。

密、って漢字に興奮を覚え始めたのは、お兄さんに会ってからのこと。

密室
密着
密接

…うん、凄くゾクゾクする。

忍び足をしてもどうしてもひたひたと足音が鳴ってしまう、湿っているのは体質上しょうがないとはいえ、起きてしまわないか毎回気絶もののスリル。

起きてしまった場合は一週間程冷たくされてしまう。
あれは割と凹むから辞めてほしい。

これは辞めないけど。

「…おはよう。」

顔を覗き込んで、ぽそりと呟く。
ベッドの横に座り込み、枕元に顔を置く。

決して顔に素敵とかは思わない。
テレビでイケメンなんてちやほやされている人間を見ても、それも特にどうとも思わない。

お兄さんが俗に言うイケメンかどうかは分からないけれど、私は…好き。

ゆっくりとベッドに這い上がり、お兄さんに被さる。

夜這いみたいで興奮する。
この場合早朝這いなんだけれどね。

「…ぁぁ、お兄さん…」

またゆっくりとお兄さんの胸元に顔をうずめて、目を閉じる。

落ち着く。
興奮する。

相反しているけれど、寝てしまいそうで、寝ることができない。
寝たくない、ずっと味わっていたい。

けれどそれはできない。
今ここで寝てはお兄さんにバレてしまう。

最後に数回胸に顔をうずめて深呼吸したあと、ベッドから降りる。
ひたりひたりとなるべく足音を殺して部屋の外に逃げる。

「…おい。」

…逃げられなかった。

「…………」

「…なにしてた?」

固まる。
言えない。
いや言える、言えるけど言いたくない。
引かれたくない。

「…その、お兄さんの部屋の鍵が空いていたから。」

「…空いていたから?」

話しながら言い訳を考える。
脳細胞がとっぷぎあだぜ。

「…空いていたから、もしかしたら、誰か部屋に忍び込んでいるんじゃないかと、偵察に。」

「……あぁ、なるほどな…」

誤魔化せた。
うん、お兄さんは単純だなぁ。

「…こっちこい。」

「…えっ」

あれ、誤魔化せていない?
デコピンされる?
痛いのはやだなぁ…

「…ん…」

ベッドの淵に座っているお兄さんの前に立つ。
目を閉じて襲い来る驚異に備えていると。

「…お前、撫でられるの好きだよな。」

そんな変化球なセリフが飛んできて

「えっ」
「…ありがとう。」

ポン、とお兄さんは頭に手を置いてゆっくりと髪を梳いた。
…ご褒美?

「…んん…」

「俺の事心配してくれたんだろ?ありがとな、大丈夫だよ。」

若干良心が痛むけれど、貰える物は貰っておく主義。
ありがたく頂戴する。

…えへ。

「…もう大丈夫。」

「ん、そうか…っと、まだ五時じゃねぇか、もう少し寝とけ。」

「うん、そうする。」

ちゃっかり心配もしてくれる。
ここが好き。

優しい所が好き。

「…お兄さん。」

「うん?」

「ご褒美、追加できる?」

「……要望だけ聞こうか。」

即刻拒否ではないだけマシ。
千載一遇のチャンス。
ものにします、私。

「…一緒に寝てくれない?」

「…却下。」

…無理でした。

ーーーー

「ごちそうさんでした、と。」

お兄さんの合図で朝食は区切られる。

お兄さんはちゃんとみんなが食べ終わるまで待っていてくれる。

余談だけれど、私は食べるのが遅い。
熱いものは苦手。

片付けは私達の仕事。
というか、家事が私達の仕事。

稼ぎはお兄さん。
家事が私達。

一夫多妻制の家庭みたい。
お兄さんが私以外に嫁を持つなんて認めないけれど。

家事、この場合皿洗いが終わったらお兄さんの部屋に行く。
迷いはない。

お兄さんは朝食を食べ終わると同時に仕事に行ってしまうのでもう居ない。

少し寂しいけれど、寂しいからお兄さんの部屋に行く。
しょうがない行動、うん、しょうがない行動。

お兄さんは案の定また鍵をかけるのを忘れていたのでノブを回し
入る。

お目当ては枕、ベッド、布団。

「ん…」

お兄さんのベッドに潜り、掛け布団をしっかりかけて、枕にうつ伏せになる。

気持ちいい。
気持ちいいというか、心地いい。

「…んぁ…」

息苦しくなり横向きになる。
足を折り曲げ、布団を抱きしめる。

…お兄さんを抱きしめたい。

「…お兄さん…」

枕にすりすりと頬をこすりつける。
私がここに居た証。
いわばマーキング。

きっと気付いてくれないけれど。

これ以上やると気がおかしくなってしまいそうなので布団から出る。

綺麗にベッドメイキングをし、部屋を後にする。

再びドアノブに手をかけたがしかし。

「…パジャマ…」

パジャマが目に入った。

「…少しだけ。」

扉に背を向け、パジャマを拾い上げる。

「…ん…」

自分の服をゆっくりと脱ぎ、裸になる。
下着も脱ぐ。

「…んぁ…お兄さん……っ」


お兄さんのパジャマに自分の服の代わりに腕を通し、着る。
ブカブカ。

「はぁ……」

動く度に鼻をくすぐるお兄さんの香り、肌を擦る布地。
もうダメ、体の奥の方がキュンとして、疼いて。

「お兄さ…もう………っ」

ゆっくりと自分の秘部に手を伸ばしたその時


「…っ!?ちょっ!?シズクぅ!?」

目を真ん丸にしたマユに見つかり、事なきを得ることとなってしまった。

ーーーー

「あーもう…とりあえずそのパジャマを脱ぐ!」

「はい…」

「まったくもう…」

お兄さんの香りが離れていくことにかなりの寂しさを覚えつつ、脱ぐ。

「にぃを落とす気ならこのスポーツブラやめたら?」

「…ほかの下着はスクール水着しか持ってない。」

サハギン=常時スクール水着ってイメージがあるがしかし、そんなことはない。
皮、鱗といえどパージ可能な部位、私だってお洒落をしたい。

パジャマはちゃんとしたパジャマだし、服は買ってもらった。

「…はぁ…」

「…なーに名残惜しそうな声漏らしてるのさ…」

つべこべ言っている間に着替え終わった。
着替え終わってしまった。

今度はちゃんとパジャマを畳み、ベッドの横に置いておく。

「…なに?今日もにぃの匂い嗅ぎに来たの?」

「当たり前…」

「…考える事はやっぱり同じだよねー…」

マユはゆっくりとベッドに近付いて、ぽすっと顔をうずめた。

マユも、お兄さんの事が好き。

「…はーぁ、にぃ、好きな人とかいるのかな。」

「いない、そんなの、いない。」

「…言い切るなぁ。」

いない。
いるわけない。

いて欲しくない。

お兄さんは、私の。
百歩譲って、私達の。

「…いたらどうする?」

「…その人になんとしても勝つ。」

「やっぱりそれしかないよねー。」

わたしの…じゃなくてお兄さんの枕をマユは抱きしめて、呟いた。

「私はさ、にぃの事が好きで、好きで好きで、好きで好きで大好きだけれど、でもね。」

すぅ、と一息吸ってから

「でもね、私はシズクの事も好きだし、アヤの事も好きだし、まぁ、なんやかんやサヤのことも好きだから、だから。」

この楽しい関係が壊れるくらいなら、叶わなくても、いいかな、なんて。

と、一番お兄さんにつきまとっていたマユが、さみしそうにポツリと呟いた。
15/09/27 18:43更新 / みゅぅん
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■作者メッセージ
外伝です。
深刻に絵師さん欲しいです。

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