読切小説
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不潔な物書きにはあかなめが憑く
 丸木真帆戸は、一心不乱にパソコンのキーボードを叩いていた。小説の締め切りが迫っているのだ。真帆戸の様な売れない小説家にとっては、締め切りを破る事は死活問題となる。ゴミが散乱し埃が積もった部屋で、狂ったようにキーボードを打ち付けている。
 真帆戸の体は、部屋同様に汚れきっていた。もう五日も体を洗っていない為、ふけと垢に塗れている。腋と股間からは、本人ですら辟易するような臭いがする。だが、シャワーを浴びる暇すらない。
 真帆戸はうめき声を上げて手を止め、繰り返し頭を振る。もう限界なのだ。疲労と眠気で頭がまともに働かな状態が続いている。真帆戸は書いていた物を保存すると、パソコンをシャットダウンした。そのままふらつく足でベットまで行き、かろうじて眼鏡を外すと倒れこむ。
 シーツと枕カバーは真帆戸の体臭が染み付いているが、今の真帆戸の状態ではそんな事を気にしていられない。横になると直ぐに鼾をかき始めた。

 真帆戸は、体を何かが這いずる感触で目覚めようとしていた。蛇か鰻を思わせる長くて滑る物が、真帆戸の体中を愛撫している。それなのに不快感は感じず、それどころか体に気持ちの良さを感じる。
 真帆戸は混濁した意識の中で、体を襲う快感を楽しんでいた。次第に意識が明瞭になって来ると、自分の状態に不信感を感じ始める。真帆戸は、強引に眼を開けて状況を確認しようとした。
 真帆戸の目の前に女が覆いかぶさっていた。そぼかすの浮いた少女の様な外見の女が、真帆戸の体を舐め回している。舌は、何十センチあるかわからない異常な長さだ。人間離れした舌で、真帆戸の左腋を舐め回している。女は、真帆戸が目覚めた事に気が付くとニヤリと笑った。
 真帆戸は、跳ね上がる様に起きた。自分に覆い被さる女を凝視するが、驚愕のあまり声が出ない。ただ、まじまじと女を見続けた。
「何も言う必要は無いからねえ。野暮な事を言わずに楽しもうよ」
 女はそう言うと、真帆戸の体を舐める事を再開した。真帆戸の服は脱がされており、股間が向き出しになっている。女は真帆戸の股間に顔を埋め、鼻を鳴らしながら臭いを嗅いだ。
「臭いねえ、何日洗って無いんだい?こんなに臭いと、ベルゼブブが寄って来るよ。あたしがきれいにして上げるからねえ」
 女は真帆戸のペニスに鼻を擦り付けながら笑い、舌を伸ばして玉をくすぐった。そのまま竿まで舌を伸ばし、汚れをこそぎ落とすように舐め始めた。
 真帆戸は始めは驚愕で、今は快楽で何も言えない。ただ、女の与えてくれる快楽に喘ぐばかりだ。真帆戸は、異常な状況にも関わらず快楽を味わおうとしていた。
「君は、包茎君なんだねえ。どうりで臭いはずだよ。剥いたらどうなるのかな?」
 女は唾液で先端をふやかして、舌を皮と亀頭の間に差し込む。女は、見せ付けるようにゆっくりと皮を剥いていく。皮が剥けると、白い垢に塗れた亀頭とかり首が露わになる。女は舌の先端で恥垢をこそぎとって、真帆戸に見せ付けた
「ごらんよ、このチンカスを。こんなに溜まっていたんだよ。人間が君をフェラしたら病気になるねえ」
 人間離れした舌を持つ女は、舌を蠢かせながら恥垢を真帆戸に見せ付け続ける。女はニヤニヤ笑うと、真帆戸の恥垢を咀嚼してみせる。恥垢と唾液が混ざり合う音が、はっきりと聞こえた。
 少女のようなかわいらしい顔の女が変態じみた事をする光景に、真帆戸は鼻息を荒くして凝視する。真帆戸のペニスは、震えながら怒張する。
 女は、真帆戸の亀頭とかり首に舌を這わせて、臭気を放つ垢を舐め取って行く。不潔きわまり無い物を、おいしそうに舐め取る。
 真帆戸は、興奮と快楽で直ぐにも絶頂に達しそうだ。長い舌でくびれと裏筋を愛撫されて、快楽が絶え間なく襲う。真帆戸は、女に断る事も無く精液をぶちまけた。
 何日も抜いてない為に溜まりきった精液が、女の舌と口、顔に飛び散る。濃い白濁液が大量に女を汚す。女は、笑いながら汚液を受け止めた。射精がやっと止まると、女は自分の顔を覆う刺激臭を鼻を鳴らしながら嗅ぎまわす。滑る舌を伸ばして、顔を汚している白濁液を見せ付ける様に舐め取った。
「溜まっていたんだねえ。だめだよ、きちんと抜かなきゃ。体に悪いじゃないの。あたしがたっぷりと抜いてあげるからねえ」
 女はそう言うと、舌を伸ばして蟻の門渡りをくすぐり、アナルを突いた。

 その後も、真帆戸は女に体を舐め回され続けた。女は、何十センチあるかわからない舌で真帆戸の体の隅々まで舐め回した。汚れた腋や、ペニス、アナルを執拗に舐めしゃぶられたのだ。真帆戸は、女の舌で合計三回射精させられた。
 さらに女は、真帆戸のペニスをコンドームも付けずにヴァギナに飲み込んだ。そのまま二回中で精を絞られた。精を子宮に飲み込んでいる最中も、女は真帆戸の体中を舐め回した。
 真帆戸は、途中で抵抗する気を無くした。気持ち良すぎるため、体が快楽を求めた上に意思も快楽に屈したのだ。そのまま快楽に流され続けた。
 五回射精し、これ以上出なくなった所でやっと理性が戻ってきた。真帆戸は、状況を把握し始める。女は、網戸にして開けてある窓から入って来たのだろう。真帆戸の部屋はアパートの一階にあり、侵入するのはたやすい。真帆戸は、窓を開けたまま寝る事が多い。印鑑や通帳、カードなどは、分かり辛い所に仕舞っている。侵入者が探し出したら、寝ていても分かる。男である真帆戸を襲う物好きもいないはずだ。そう思って、窓を開けっぱなしに寝る事が多かった。
 女は真帆戸とのセックスが終ると、真帆戸のベットに寝転がりながら真帆戸を上目遣いに見ている。シーツに顔を付けながら、いい臭いだねえなどと言っている。
「お前は誰だ?俺の部屋に入って来てどうするつもりだ?」
 今更遅すぎるとは思ったが、真帆戸は女を誰何した。
「聞くのが遅すぎるねえ。まあ、いいけれど。私は小島鈴。隣のアパートに住んでいるあかなめと言う魔物よ、よろしくね」
 鈴によると、真帆戸の部屋からいい臭いがして来たので、思わず入り込んだそうだ。部屋に入ると、おいしそうな垢が付いているので真帆戸を舐め回したそうだ。
 隣のアパートの住人か。真帆戸は、厄介な事になったと溜息を付いた。隣のアパートは「化け物アパート」と呼ばれている。築何年か分からないおんぼろアパートの所為もあるが、住人が魔物娘ばかりなのだ。しかもナメクジみたいな者やらゴキブリみたいの者やら、癖のありすぎる魔物娘ばかりだ。
 日本政府が魔物娘の存在を公表してから七年経つが、魔物娘の存在に抵抗を持つ者はまだ多い。まして、隣のアパートに住むようなアクのある者達は嫌われやすい。これは下手をするとトラブルに巻き込まれるなと、真帆戸は苦虫を噛み潰したような顔をした。
 鈴は、真帆戸を笑いながら見上げた。
「ねえ、あたしとセックスフレンドにならない」
 真帆戸は、思わず吹いてしまう。何を言い出すのかと、鈴を凝視する。
「あたしは、君を気に入ったのよ。恋人にしたいけれど、君にとってはいきなりの話だよねえ。それじゃあ、セックスフレンドから始めない?あたしが君を気持ち良く出来るのは分かったよねえ」
 真帆戸は何も答えられない。いくら気持ち良くても、不法侵入者にセックスフレンドになろうと言われて、ハイとは言い辛い。
「ねえ、君は今は疲れているのかな?」
 鈴の質問で真帆戸は気が付く。真帆戸をここしばらく蝕んでいた疲労が消えている。
「あたしはねえ、体を舐める事でその男の疲労や汚れを舐め取る事が出来るんだよ。あたしとセックスフレンドになると、すっきり出来る上に健康になれるんだよ」
 それが本当ならば、真帆戸にとってはありがたい事だ。ただ鈴の話では、疲労物質と老廃物を舐め取る事になる。それは鈴にとって害になる事ではないだろうかと、真帆戸は危惧する。自分の体を舐めて鈴の体が壊れたのでは、真帆戸には後味が悪い。
「心配ないって。私達あかなめは、人間の疲労物質や老廃物をエネルギーに変える事が出来るんだよ。医者がそう話してたよ。くわしい事は私にも分からないけどね。まあ、私達あかなめは昔から垢を舐め取っていたし、それで体を壊したという話も聞かないしね」
 この言葉で、真帆戸はセックスフレンドになる事を承諾した。自分は健康で清潔になれるし、鈴にとってはエネルギーになる。何よりも、舐め回されたりセックスする事は気持ちがいい。
「それじゃあ決まりだね。よろしくね、真帆戸君」
 鈴は、口の端を吊り上げて笑う。
「ところで、締め切りはいいのかい?寝言で何度も言ってたけれど」
 鈴の言葉に、真帆戸はパソコンに飛び付いた。

 こうして真帆戸と鈴は、セックスフレンドとなった。二人は、毎日の様にセックスにのめりこんだ。
 真帆戸は、性欲は強いが恋人はいなかった。たまに風俗に行くくらいで、ほとんどはオナニーで性欲を解消していた。それが鈴というセックスの相手が出来たのだ。真帆戸は、鈴とのセックスにのめり込んだ。
 鈴の舌技は、真帆戸には驚くべきものだ。今まで相手をしてもらった風俗嬢の舌技とは段違いの気持ちの良さだ。しかもチンカスを舐め取るなど、風俗嬢が嫌がるような変態プレイをしてくれのだ。鈴が体を舐めてくれると体の疲れが取れ、清潔になれる事も真帆戸に喜びを与える。直ぐに鈴の舌技は、真帆戸には無くてはならないものとなった。
 鈴が魔物娘という事も、真帆戸が鈴にのめり込む事になった理由の一つだ。真帆戸は、魔物娘に以前から興味があった。人間の女と似ている様でかなり違った存在である魔物娘に興味が湧くのだ。人間女と付き合う気は無いが、魔物娘とならば付き合う気になる。最初は鈴が、近所から「化け物アパート」と呼ばれている所の住人である事は気になった。だが今では、真帆戸にとって鈴のほうが近所の住人よりも好感が持てる。
 真帆戸の仕事は、鈴のおかげで仕事はうまくいっていた。鈴が疲れを舐め取ってくれるので、執筆がはかどるのだ。今までに無いほど、真帆戸の仕事の成果は良くなった。
 ただ真帆戸にとり少々困るのは、風呂に入る事やシャワーを浴びる事を鈴に禁じられた事だ。汚れは全て舐め取るからと言って、体を洗う事を許してくれないのだ。もっとも、真帆戸に抵抗があったのは始めだけだ。鈴に汚れを舐め取ってもらったほうがきれいになると体で分かり、風呂に入る事を止めた。

 真帆戸が書いているのは十八禁物のライトノベル、いわゆるエロラノベだ。時々普通のライトノベルも書くが、ほとんどはポルノだ。中世ヨーロッパ風の異世界を舞台とした冒険者同士のエロや、現代日本を舞台とした学園ラブコメをエロを交えて書いている。
 真帆戸の作品を、鈴は評価してくれた。真帆戸の書く物は、登場人物が良く動き回っていて面白いそうだ。
「やっぱり物語は、登場人物が色々と動き回ると面白いねえ。主体的に動くにしろ、他の登場人物に引きずられるにしろ、状況に駆り立てられるにしろ、登場人物が動き回るからどんどん先を読む気になるねえ。君の書く話は、そこの所がきちんと出来てるよ」
 ただ、鈴は褒めてばかりいる訳ではない。慎重な態度を取りながらも、真帆戸に苦言を呈する事もある。
「エロ描写の所で、臭いや味の事があまり出ない事はどうなのかなあ?君も分かっていると思うけど、エロい事をすれば臭いや味は関わるものだよ。そういう物に興奮する人もいるんだからねえ」
「それは分かるけれど、エロラノベの読者には臭いや味を嫌う人もいるからな。だから、女の子の髪のシャンプーの香りの描写程度に留めているんだ」
「確かに嫌う人はいるだろうねえ。でも、そういう描写を入れる事で表現は豊かになるよ。胸の谷間に顔を埋めたらどんな匂いがしたか、おへその窪みに付いた汗を舐めたらどんな味がしたか、そういう描写は入れてもいいんじゃないかなあ?」
 うーんと唸り声を上げて考え込んだ真帆戸に、鈴はいたずらっぽい顔をする。鈴は真帆戸に抱き付くと、胸を真帆戸の顔に押し付けた。鈴の胸は露出度の高く薄いシャツで覆われていて、柔らかい感触がする。
「どんな匂いがするのかな?」
 鈴の言葉に、真帆戸はゆっくりと匂いを嗅ぐ。柑橘系のコロンの香りが、汗や肉の生なましい匂いと交じり合っている。繰り返し真帆戸が嗅いできた匂いだ。
「舐めてみてよ」
 真帆戸は、鈴のシャツを捲り上げて胸の谷間に舌を這わせる。谷間に溜まった汗の塩味がする。場所によって味の濃さが違う。
「胸の匂いや味くらいなら描写してもいいんじゃないかな?」
 鈴の匂いと味を感じている内に、真帆戸は小説で描写してもいい気になってきた。
 鈴はニヤニヤ笑うと、真帆戸の股間に顔を埋める。真帆戸の履いているショートパンツとトランクスを脱がすと、顔を股間に押し付けた。
「こちらは、相変わらずすごい臭いだねえ。酸っぱい臭いだけれど、腋の酸っぱさとは違うねえ。汗と垢と尿の臭いが混ざると、こういう臭いがするのよねえ。味も、しょっぱさの中に酸味があるよ。あたしは、この臭いや味を描写してくれると興奮するんだけれどねえ」
 真帆戸は、鈴の痴態に興奮しながら苦笑する。さすがに男の股間の臭いを描写する事はためらう。真帆戸は、臭いを放つペニスを笑いながら鈴の顔に擦り付けた。

 ちなみに鈴の職業はノンフィクション作家だ。何冊かの本を出版している。
 真帆戸は、鈴の書いた本を読んでみた。「ゴミ屋敷の四季」「君も産業廃棄物処理場で働こう!」「寄生虫博士の優雅な日々」「粘菌は僕らの友達さ!」といったタイトルの本だ。
 鈴の書いた本を読んだ後、真帆戸はしばらくの間、夜うなされる羽目となった。

 前述したように、鈴の住むアパートは「化け物アパート」と呼ばれている。住人が一癖もふた癖もある魔物娘ばかりなので、近所の人々からは嫌われている。この住民間のトラブルが顕在化した。
 近所の住民は、「化け物アパート」を警察と市役所に訴えたのだ。理由は、ゴミを漁る、住民の環境が不潔である、不振人物が出入りするなどである。
 近所の住民は、始めはアパートの大家に苦情を申し込んだ。だが、大家は蝿の魔物娘であるベルゼブブであり、アパートの中で暮らしている張本人だ。それで埒が明かないと見た住人達は、行政に訴えたのだ。
 警察は民事不介入が原則であり、刑事に関わる事も軽い物は扱わない事が多い。市役所もよほどひどい事例で無ければ介入しない。事態はそれほど深刻なわけではない。
 ただ、物によっては法に引っ掛かりそうな物もある。ゴミ漁りなどは該当するかもしれない。鈴のように人の部屋に忍び込めば、住居不法侵入罪が該当する。
 そこで、真帆戸は鈴から話を聞く事にした。実際に、「化け物アパート」の住人が何をやっているのか把握する必要があるからだ。
 ベルゼブブやゴキブリの魔物娘であるデビルバグは、捨てられているゴミを漁っていた。おおなめくじやデビルバグ、蜘蛛の魔物娘であるアラクネはアパートの外壁を這い回っている。また、いずれの魔物娘も好みの男の所に住居不法侵入を行っている。アパートの中は、住んでいる魔物娘の種族の性質上かなり汚い。アパートを出入りする者は、アパートの住人と同種族の癖のある面子だ。
 真帆戸は大学の法学部を出ており、学生時代に刑法の教授に世話になっていた。その教授に時間を作ってもらい、相談する事にした。

「というわけで、ゴミ漁りと住居不法侵入は控えてくれ」
「分かったけれど、本当に世知辛い世の中だねえ」
 刑法の教授に相談した結果、この二つが問題だと判明した。ゴミに関しては、市が条例で持ち去る事を禁じている。また、ゴミの種類によっては占有離脱物横領罪に該当する。ゴミを漁る事で個人情報が暴かれるとして、プライバシーの侵害で訴えられる可能性もある。住居不法侵入は結果として相手の男と合意になったが、何かのきっかけで問題となりかねない。
 アパートの外壁を這う行為は、自分の住んでいる所だから特に問題は無い。アパートの中が汚い事は、アパートの住人の勝手である。住人も外まで汚しているわけではない。不信人物はアパートの住人である魔物娘の同種族の友人だから、これを突かれても近隣住民を差別問題で逆に槍玉に上げる事が出来る。
 真帆戸は教授に相談した後、市役所の市民生活課に行き話を聞いた。市役所の方でも、事を荒立てるつもりは無いらしい。夜中に騒いだり、暴力沙汰を起こしているわけではない。不潔といっても、有毒ガスを出すほどひどい訳ではない。市役所としても、いちいち介入したく無いらしい。ただ、ゴミ漁りについては注意を受けた。
「全く、鈴達のお陰で汗をかいたよ」
「それじゃあ、きれいに舐め取ってあげるからねえ」
 鈴は、真帆戸のシャツのボタンを外して右腋をうれしそうに舐め始めた。

 真帆戸はこれで問題は収束すると考えたが、それは楽観的な考えだった。状況は、真帆戸が市役所職員と話してから三日後に変わった。
 市役所が、大家であるベルゼブブの所へ苦情の電話をかけて来たのだ。ゴミを漁るのは条例違反である事を責め立てた上で、警察が動く事を示唆した。占有離脱物横領罪とストーカー防止法に該当するというのだ。ゴミ漁りはプライバシーの侵害であり、それがストーカー防止法に引っかかるという話だ。
「ストーカー防止法云々は、こじ付けじゃあないの?」
「こじ付けさ。だけど行政がその気になれば、こじ付けでも介入してくるな。ただ、行政の対応が変わったのは何故だろう?」
「それは、あたしが調べてみるよ」
 鈴はノンフィクション作家であり、取材力がある。それで鈴が調べたところ、ある与党の市会議員が動いている事が分かった。近所の住民の中には、その市会議員の後援会の会員がいる。その者が、市会議員に訴えたのだ。市会議員は、市役所の市民生活課と環境課に直接行き、取り締まるように命じたそうだ。その為、市役所の態度が変わったのだ。
「どうしたらいいと思う?」
「野党の市会議員の中に、魔物娘との友好を公約にしている人がいる。俺は、その人の所に話に行くつもりだ」
「じゃあ、あたしもマスコミの伝が使えるか試してみるよ」
 真帆戸は鈴の書いた本を思い出し、まともなマスコミが動くのかと訝る。だが、意外と役に立つかもしれないと思い返し、期待する事にした。

 真帆戸は、翌日に野党の市会議員に電話をかけてアポイントメントを取った。電話をかけてから二日後に市議会の議員控え室で会う事が出来て、その市会議員に与党の市会議員の圧力について訴えた。
 その野党議員の態度は慎重だった。アパートの住人が問題を起こしている事は事実なのだ。下手に動けば、与党から反撃を食らう。市内の他の魔物娘まで攻撃を受けるかもしれない為、この件では動き辛いのだ。結局、真帆戸は大した成果も無く引き下がる事となった。
 真帆戸は法で争う事を想定し、福祉センターでやっている法律相談に聞きに行き、自分でも住民トラブルに関する対策本を読み始めた。ただ、不利な状況で争う事になると確認する羽目となった。
 沈んだ態度を取る真帆戸に、なぜか鈴は自信有りげだ。何の根拠があるのか「心配無い」と意味有りげに笑った。
 鈴の言葉は、次第に裏付けられた。何時まで経っても、市役所も警察も介入してこないのだ。真帆戸が双方に確認すると、どちらもゴミについて真帆戸に注意するだけで動くつもりは無いらしい。
 与党の市会議員の話が出てから一月過ぎてから、その議員について地元の地方新聞に記事が載った。議員が、カラ出張を十数回行った疑惑が載っていた。市議会の野党は早速追及するつもりらしい。
「これが鈴の言った『心配無い』という理由か?」
「そういう事。あの議員は、以前から地元マスコミに目を付けられていたんだよ。それでちょっと突いてやったのさ。まあ、こんなにうまく行くとは思わなかったけどねえ」
 新聞を手に驚く真帆戸に、鈴はニヤニヤ笑いながら答える。
「それに大家のベルゼブブも動いてくれたしねえ」
「あの人は何をやったんだ?」
 鈴によると、大家は魔物娘の互助組織のメンバーだそうだ。互助組織は市に影響力があり、市と話を付けてくれたという事だ。市が動かなければ、警察もいちいち動く気は無いらしい。
「結局、鈴たち魔物娘が解決したんだな。俺は、何も役に立たなかったな」
「そうでもないさ。人間が魔物娘のために動いてくれた事がうれしいんだよ。あたし達魔物娘は、人間無しにはやっていけないからねえ」
 鈴は真帆戸に抱きついて、顔を胸にこすり付けた。そのまま真帆戸の服を脱がして行き、真帆戸の臭いを嗅ぎながら舐め回す。真帆戸のスラックスとトランクスを脱がすと、愛おしそうにペニスに頬ずりをしたり、鼻をペニスにこすり付けながら臭いを嗅いだ。
 快楽で呻き声を上げる真帆戸を見ながら、鈴は真帆戸を床に寝せる。真帆戸の尻を掴んでひっくり返し、真帆戸の尻の穴を広げた。鈴は鼻を鳴らして臭いを嗅ぎながら、尻の穴をねっとりとした舌遣いで舐め始める。
「ひどい臭いだねえ、しかも苦い味がするよ。こんな汚いアナルを舐める事が出来るのは、あたしとベルゼブブくらいだよ」
 鈴は、唇の端を吊り上げて笑う。
「大家のベルゼブブも君を狙っていたんだよ。あたしの方が僅かに先だった訳さ。あたしと君がセックスフレンドになってからしばらくの間は、あのベルゼブブは自棄酒を飲んでいたんだよ」
 鈴はさも楽しそうに笑い声を上げると、真帆戸の尻の穴をほぐしながら舌を奥へと入れて行った。

 真帆戸は、パソコンのキーボードを叩いていた。締め切りが迫っており、原稿を仕上げなくてはいけない。
 今書いている小説は、主人公とご近所の魔物娘達が起こす珍騒動を描いたものだ。書いている物はエロラノベだから、エロ描写もたっぷりと入れる。鈴に注意された事から、エロシーンでは匂いや味の描写も入れる。
 キーボードを叩いている真帆戸の股間からは、水音が高く響いている。むき出しになった真帆戸のペニスを、ひざまずいた鈴がしゃぶっているのだ。ひと段落着いた真帆戸がキーボードの手を止めて鈴の頭をなでると、鈴はうれしそうに笑う。
 二人は、セックスフレンドの関係を続けている。もっとも、真帆戸は既に恋人のつもりだ。鈴との関係は、セックスだけに留まらなくなっている。もう、真帆戸にとっては鈴は無くてはならない存在だ。
 鈴にとっても自分は恋人であってほしいと、真帆戸は思う。鈴は既に自分を恋人として見ているのではないかと、真帆戸はあえて楽観的に考えている。自分を笑いながらそう思っている。
「ねえ、『化け物アパート』に新しい娘が住む事になったのは知っているかい?」
「いや、知らないけれど」
 鈴はニヤリと笑うと、真帆戸に言う。
「その娘はゾンビだよ。あたしに挨拶している最中に、その娘の右目は取れちまったね。これには、さすがに驚いたよ」
 真帆戸は、危うく椅子からずり落ちるところだった。そのうち、近所の人間は皆引っ越すのではないだろうか?
「大丈夫だよ。あたし達は、人間と揉めるつもりは無いんだからさあ。仲良くするつもりさ、こういう風にねえ」
 鈴は、真帆戸のペニスに繰り返しキスをする。苦笑する真帆戸が頭を撫でると、鈴は唾液と先走り汁で汚れたペニスにうれしそうに頬ずりをする。
 まあ、魔物娘と人間の全部が恋人になる事は難しいだろう。だが、友人や恋人になる者が出る事で、少しずつ解決していけるかもしれない。楽観的な考えだけどなと、真帆戸は苦笑する。
 真帆戸は、顔をうれしそうに摺り寄せる鈴の頭を撫で続けた。
14/09/12 23:18更新 / 鬼畜軍曹

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