連載小説
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番外編2 少年少女の選択
「・・・おとぉさん・・・遅いなぁ・・」
今回のお話はこんなさりげない一言から幕を上げる。現在、チコは誰もいない自宅で一人、人形遊びに徹していた。手に持っているのはハニービーをデフォルメした可愛らしい人形で、チコのお気に入りだ。

「・・・う〜ん・・」
現在、リーフはネルを連れて遠くのヴィラル大図書館と言う所へ資料の調達に行っている。リーフの言う通りならば夜過ぎには帰って来るらしいが、それまでの間はずっとチコ一人だ。現在時刻はアルラウネの形を模した薔薇の時計通りならば4:30だ。まだまだ太陽もそこそこ高い位置にいる。傾いてはいるものの日差しの色は明るい色のままだ。

「・・おとぉさん・・・おかぁさん・・・」
人形で遊ぶのを止めて、そのまま人形を抱きしめたチコはリーフとネルが居ない事を寂しく思って俯いていた。

「(ガタッ)・・!誰っ?!」
俯いて気持ちをどん底まで落としていたチコだったが、その時に聞こえた何かがぶつかってしまったような音を聞いて直ぐに顔を上げた。一応はネルからアルラウネなりの戦い方も教えてもらっていたチコは、周りの植物の助けを借りて蔓を生み出してそれを周りにうねらせて警戒態勢に入った。

「(俺だよ!俺っ!ツリーだよ!)・・・ツリー・・?」
窓の向こうから聞こえて来た聞き覚えのある声を聞いて警戒を解いたチコは、蔓を使って窓のカギを開けて窓を開いた。そこには今日も詰まらない事を大げさに言っていたチコの隣の席の少年、ツリーが居た。なにやら手には色々なおもちゃを持参している。

「・・暇だろうと思ってさ・・・その・・あそぼ・・?」
チコが出て来た時には真っ直ぐを向いていたのに、チコがツリーを見つめてると、だんだんと恥ずかしくなったのかツリーは視線を横に逸らしていた。そしてそのままおもちゃをチコの足元に並べて行ったツリーは、チコとの遊戯を所望した。その時の表情はとても恥ずかしそうにしている。ただ単に女の子と遊ぶのが恥ずかしいのか、ませているのか分からないが、とにかくツリーの顔は赤く染まっていた。しかし。

「・・な・・何しに来たの?」
最初は遊び相手が出来た事に表情を明るくしたチコだったが、その相手がいつも付き纏っているツリーだと言う概念を入れた途端に愉しみの興が冷めてしまった。そしてツリーの手を蔓で縛って、チコはそのままツリーを磔にした。

「・・えっ?・・・・なに・・これ・・えっ?」
手を縛られて磔にされたツリーは、どうすればいいのか分からなくなっていた。思考の全てが混乱して、今の状況さえも掴めないでいた。最初からチコにこんなことをされるとも微塵にも思っていなかったツリーは、暫くの間は混乱し続けた。

「さぁ!白状しりゃさい(イタッ!)!なんで君がチコの家に来てるのかを!」
「・・・・可愛い・・・」
「!?!・・な、な・・な・・・な・・・・・な・・(バタン・・」
ツリーを縛りあげ、此処に来た理由を聞き出そうとしたチコだったが、途中で舌は噛むし一人称をついつい家での時と同じように名前呼びをしていたしで少しパニックになっていた。そして止めにツリーから『可愛い』と言われてパニックは絶頂に達してしまった。そして目を回すほどにパニックしてしまったチコはそのまま混乱して倒れてしまった。

「どういう事なの・・これ・・」
チコが倒れそうになったのをギリギリでキャッチ・・・することも出来ず、チコが気絶してから蔓から解放されたツリーは、チコを抱えあげて窓からチコの家へと入った。(←住居不法侵入罪適応!

「これが・・・(ゴクッ)女の子の部屋・・・」
チコを重たそうに背負って部屋に入ったツリーは驚愕した。そこは、女の子らしい可愛いぬいぐるみが置いてあるかと思えば、その隣では色々な色をした鮮やかな植物の鉢がたくさん置いてある部屋だ。因みにこの部屋はまだリーフとネルからチコにと渡されてから半年ほどしか経っていない。それまではチコは寂しがりやで二人と一緒に寝ないと怖くて寝付けなかった。

「とりあえず・・よいしょ・・・これでよし・・」
チコをベッドに寝かせたツリーは、さっさと外に出ようと窓を見た。しかし、どうしても視界がチコのスヤスヤと眠る顔を離そうとしなかった。これも男の性なのだろうか。とにかく、スヤスヤと眠っているチコを見たツリーはその場で金縛りにあったかのように動けなくなっていた。

「・・・うぅん・・・おとぉさん・・・おかぁさん・・・」
未だに目を覚まさないチコは、寝言でリーフとネルを呼んでいた。その声にはいつもツリーに怒っている時のチコのような尖りが無く、まるで赤ん坊が母親に懐いている時の様な優しく柔らかい声音だった。そしてそれを聞いたツリーはまたもや生唾を呑み込んでいる。喉の潤いが全く絶えていないらしい。

「い・・・今なら起きてないし・・・これくらいなら・・・・」
チコの寝顔に心をドキッとさせたツリーは、そのドキドキの赴くままにチコの柔らかそうな唇へと自分の口を向かわせた。段々と二人の唇の差が縮んでいくが、あと数pと言った所でツリーの顔の動きが止まった。

「・・どうしよ・・・たしか・・・チューしちゃうと赤ちゃん出来ちゃうんだよね・・」
「んん・・・」
「・・・・駄目だ・・僕にはそんな勇気無いよ・・・」
このヘタレ男が!それでも男か!そうツッコミたいのは山々だが、生憎と我々はこの物語の蚊帳の外に居るので手出しは出来ない。非常に残念だ。とにかく、ツリーはチコとキスをする寸前で自分の口を引いてしまった。そしてチコは、ツリーの目の前で少し体を捻って楽な体勢へとなった。その名も[仰向き]だ。そしてその事によってツリーはとんでもないものを目撃する。

「・はぁ・・・・!なっ!」
「うぅん・・・あれ・・」
ツリーが目撃した物。それは、チコの服が寝返りをうった時に肌蹴てしまった服の中にある、年相応とは言い切れないが少し膨らみかけの小さめの形の整った胸だった。しかもタイミング悪くもその時にチコが起きてしまった。起き上がっても服はチコの胸に引っ掛かってギリギリ落ちない。そして。

「・・・?何処見て・・・・・キャァーーー!」
「ちょっ!誤解だよ!誤解!」
「変なことしたでしょ!イヤッ!近寄らないで!と言うか出てって!」
最初はツリーの視線が自分よりも少し下を向いていた事に疑問を持ったチコだったが、自分の体を包んでいたネルから貰った手織りのセーター(肌着用)が肌蹴て自分の素肌が晒されているのに気付いて顔を段々と真っ赤にすると悲鳴を上げてツリーを蔓で引っ叩いて外へ追い出そうとした。必死に講義していたツリーだが、それも聞き入れなかったチコは尚もツリーを蔓で叩いた。流石に痛くなってきたツリーは、そのままチコの部屋を飛び出して帰ってしまった。遠くから大声で泣く様な声が聞こえたが無視したチコは、改めて先程までの状況を思い出して顔を赤くしていた。

「おとぉさん・・おかぁさん・・・はやく帰ってきて・・グスッ・・」
恥ずかしさから顔を真っ赤に染めながらも、チコはリーフとネルの帰りを待っていた。リーフとネルが帰って来たのは、それから1時間ほど後の事だった。
10/10/27 18:34更新 / 兎と兎
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■作者メッセージ
さてさて、予定通りここで完結ですがどうも煮え切りませんよね?そうなのですよ!もしかしたらまた番外編をやるかもしれないのです!ですがとりあえずはここでひとまず完結です。読んでいただいてありがとうございました。

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