読切小説
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「海祭り」
臨海都市ウォルテ、数本の街道を除けば後は山と海に囲まれた親魔物領の街です。
海と山に囲まれているという事で、海の魔物だけではなく、山に住む魔物とも交流が盛んな街でもあります。
今日はそこで年に一度の「海祭り」が行われていました。

街道側では
「海祭りなら海の魔物に配慮したモノ出しなさいよ!」
「たこ焼きくらい大目にみてくれよ!」
と屋台を挟んで喧嘩しているスキュラと店主の声や

「塩焼き二本くださいなー」
「へい毎度!…ってあんたマーメイドじゃないか…いいのか……?」
足を人間のものにして屋台巡りを楽しんでいるマーメイドさん、

「これも美味しいけどやっぱりあなたのチョコバナナ食べさせて♥」
「待った、せめて宿に戻ってからアッー!」
『そこのバカップル!路上での行為は禁止だ!せめて裏通りでやれぇ!……まったく…私も旦那とシたいのに……』
発情したカップルが交わろうとしているのを拡声器で叱るアヌビスの姿が見られます。

他にも
『迷子のお知らせです、バフォメットの「フェルト」ちゃんのお兄さん、至急迷子センターまでお越しくださ「ぶぇ゛ぇ゛ん゛に゛い゛ざま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」』
といった迷子コールの声も響きとても活気が溢れています。

では海岸側はどうなっているかというと……
「『海祭り記念カップルラブラブコンテスト』開催中でーす!飛び入りも大歓迎なのでどんどん見せつけてくださーい!受付はあちらでーす!」
どうやら特設のステージが用意されて見物客に"自分たちがどれほどお互いを愛し合っているか"を見せつけるコンテストが開催されているようです。
「ど…どうする?参加してみる……?」
「は…恥ずかしいですけど…参加しましょう…♥」
お祭りの力はすごいもので、普段は臆病なコカトリスさんも大胆になれるようです。

「はい、これがエントリーナンバーの札よ♥呼ばれたら貴方たちがどれくらいラブラブなのかあの舞台の上でもうぐっちょぐちょになるまで見せつけてね♥それまでは我慢よ?」
受付ではメロウさんとその旦那様がエントリーしようとするカップルでできた長い長い行列を凄まじい早さでさばいていきます。

ステージの方はというと

『ありがとうございましたー!では続いてエントリーナンバー2XX番、サキュバスのセニカさんとその旦那様!どうぞ愛し合ってください!』
アナウンスの声の後にカップルが現れ、早速男の人を押し倒して交わりはじめました。
見物客は皆独身の男性の方々のようで頻繁に「爆発しろー!」「壁はどこだー!」などの声が上がっていますが、その後ろでは同じく独身の魔物さん達がギラギラした目で狙いを定めています。

「だんなー!カレーライス5の海鮮焼きそば10、いか焼き14追加ですー!」
「あぁ!?もう具が切れちまう!おい、買出しいってこい!大至急だ!」
「は、はいっ!麺もですか!?」
「当たり前だ馬鹿野郎!」
「はーい、ただいま大盛況中なので先に注文だけ受け付けまーす…はい、カレー2のいか焼き2ですねー、かしこまりましたー」
会場から少し離れたところでは海の家がコンテスト見物者と海水浴に来たお客で満員御礼状態です、その様子はネコマタの手どころかクラーケンさんの触手も借りたい勢いです。

そしてもちろん砂浜では…
「はぁい♥あなた一人…?つまらないでしょ?ほら、私と泳ぎましょう……♥」
「待って!僕はただ日焼けに来ただけで…!」
日焼けをしようと仰向けになっている男性をネレイスさんが強引に海に連れていったり…

「いやっほーーー!」
「……はい、次の子ー、準備はいい?いきますよー!」
ウンディーネさんのウォータースライダーを楽しむお子様達

「…はい!儀式は問題なく完了致しました、これからもお幸せに!」
「ありがとうございます!ほら、アナタもお礼を…気絶してる……」
「いえいえ、これがお仕事ですから(私も旦那様が欲しいなぁ…クスン)」
"偶然"居合わせたシービショップ様に『儀式』をしてもらい新しい海の魔物さんとの夫婦が生まれたりしています。

やがて夜になり、電球が灯るようになるとがらっと祭りの雰囲気は変わります

屋台では日が出ている間は販売禁止を受けていたものが解禁され、たとえばカキ氷の店では虜の果実を使ったシロップやホルミルクを使った練乳ミルクが追加され、
まといの野菜をつかったお好み焼き屋などが現れ始めます。
また、新たに山で取れるキノコをつかった串焼き屋なども夜からの開店となっております。
なお解禁された後は食べ歩きは禁止となり、各所にあるご休憩エリアで美味しくいただくルールとなっています、破ってしまった際にはカラステングさんによる正座お説教が始まってしまいますので
ご注意を……

「じゃあ次のナンバーいっくよー☆」
「お前らー!まさか疲れているなんて言わないよなー!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
海岸側ではコンテストも終わり、代わりに今度はセイレーンさんやサンダーバードさんによるライブが始まります。
この為に来た、というファンの方も非常に多く、熱気は日中に負けないほどです。

離れた所では恋人達が星を眺めたりと落ち着いたムードが漂います…そのまま昂ぶってしまうカップルもしばしば見かけられるようです。

そしてお祭りのトリを飾るのはシービショップさん達とその旦那様による混声合唱です、皆さん正装をして海神様への賛美歌を歌う様は
非常に神々しいものがあります。

賛美歌が終わった後は海祭りはおしまいですが、祭りを訪れた方々の大半は宿に戻ってからが本番でもあります……、海祭りでできた恋人のためにと
2人以上の部屋を多数ご用意しているようですのでお泊りの際にも安心です。

ウォルテの「海祭り」、気に入った方は是非来年からでもご参加くださいませ
13/07/15 18:57更新 / よ〜かい

■作者メッセージ
海の日なので即興で書き上げました、シービショップさんと食べさせあいっこしたいです……

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