海岸前線Ⅱ
「魔王の行いと戦うことはできない。ハリケーンがやって来たら、そこから逃げなければならない。だが、『狩人』に乗りさえすれば、ハリケーンと戦える。そして勝つことができる」しないけど...
「その資材は向こうへ運んでくれ。」
「Ikaijuの残骸処理の進度状況はどうなってる？」
「Ikaiju被害で避難した人たちのフォロー頼んだぞ。」
俺サーキット=マートンは各部門の部下たちに指示を出していた。
Ikaiju対策本部が設置されてから日が経ち、最近になって非戦闘時の狩人のパイロットの立ち回りが明白になってきた。
何、別にこれと言って難しい事はない。仕事内容は狩人の製造、維持のための資金集めを目的とした大商人のもとへ足を運ぶ渉外活動を始め、製造部への新兵器に関して企画提案といった作業を黙々とこなすだけだ。
仕事はできるやつはどんどんと昇格し、人を動かす立場になる。
俺も日々の作業を丁寧に対応していたことが上層部のお偉いさんたちの目に留まり、今の生活を手に入れた。
ここ2週間ほどは操縦シミュレーション、トレーニング以外では室内にいることが多く部下たちからは「ただのできる上司」扱いされている始末だ。
戦う必要がないということは、それだけ他のパイロットたちだけで対応できる技量があるということで頼もしいと思える反面、若干のもどかしさを感じる。
そんなことを考えつつ午前中の業務を終わらせて、愛妻弁当でも食べようかと思っていたその時だった。
≪Ikaiju出現。Ikaiju出現。 直ちに配備に付いてください。≫
けたたましいサイレンとともに無機質な声が非常事態宣言をする。
弁当の中身を確認する間もなく急いで指令室に向かった。
「うわっ！びっくりした。」
「ごめんなさい。迎えに来たけど、不要だったみたいね。」
部屋の扉を開けた瞬間、目の前に妻のオートマトンであるサーキット=シェリーと鉢合わせをして驚くがすぐさま持ち直す。
「いいや、そんなことないさ。急ごう！」
「分かったわ。急ぎましょう。」
2人揃ってパイロットスーツに着替える。いや、シェリーに至っては普段からパイロットスーツを着ているため俺の服を一瞬で剥いて着替えさせる。いつものことだが結構恥ずかしい。シェリーはずっと俺の股間を見てくるし。
なんやかんやあったが緊張感を持って指令室にたどり着く。
「お！やっと来たな！『ただのできる上司』！」
そんな重い雰囲気をオペレーターのマイクがぶち壊した。
「お前なぁ、状況考えろよ。」
「何言ってんだ！こちとら場を和ませようと思って気ィ効かせてんだよ。」
こいつとはタメなこともあって普段かこんな調子だ。
さすがにこんな緊急事態でもヘラヘラしてるこいつとは付き合いを考えるべきかと一悶着していると、
「・・・」
何も言っていないはずのシェリーから怒りの感情が伝わってくる。慌てて言い争いをやめて作戦内容の確認に取り掛かる。コイツはオートマトンのくせに感情的になりやすい。しかし、狩人に乗り込むと恐ろしいほど冷静になる。このギャップがたまらないと熱く語るのはまた別の機会にしよう。
「いつもの場所でIkaijuが湧いた。ただ...」
「ただ...何かしら？」
シェリーが痺れを切らして追求する。
「カテゴリ4だ。」
「っカテゴリ4だって！」
Ikaijuにおけるカテゴライズは1から5に分類され、数字が大きくなるほど凶暴性、サイズが増す。ことの重大性が部屋の空気を重くした。それだけ相手が異常なのだ。ちなみにカテゴリ5は今まで1度も出現したケースはない。
「分かりました。すぐに準備に取り掛かります。」
シェリーは驚きもせず準備をする姿を見て、慌てていた自分が恥ずかしくなる。
「そうだな。俺たちが動揺していてはダメだな。」
「すまないな。」
申し訳なさそうにマイクが俯いたが、ふと何かを思い出したのか慌てて電話を掛ける電話越しにいくらかやり取りをするうちに段々と顔が青くなっていくのを見て俺はもう嫌な予感しかしなかった。「ああ、分かった。」と電話を切るや否や、
「本作戦は、単独で行う。」
「どうしてだ？」
今度はあくまでも落ち着いて問う。本来、カテゴリ3以上と戦う際は狩人は2機以上と定められているはずだが、今回は何かトラブルがあったようだ。
「いつもならもう1機はホープが務める予定だったが、1週間前の戦闘で破壊された左腕と腹部の修理がまだ終わっていないらしい。」
「他の基地に救援を頼むことはできないんですか？」
シェリーが即座に案を出すが「狩人が到着する前に、Ikaijuに上陸される。」と却下された。
もはや打つ手なしと思われた未来だったが、
「俺たちが戦わなかったら、誰が戦うんですか？」
俺は覚悟決めて言い放った。
「マートン、勇敢と無謀は違う。無理に今戦わなくても市民の避難は十分に間に合う。最悪戦いに負けても図鑑補正で死にはしないが、失った魔力の分だけぶっ通しでヤり続けることになるぞ！」
「いいえマイク、夫の言う通り戦うべきだわ。自分たちが住んでいる場所が破壊されるのを黙って見ているほど私のプログラムは良くできていないのよ。」
マイクは俺とシェリーの熱意に圧倒されたのか、「くれぐれも無茶はするなよ。」と釘を刺し送り出した。
オートマトンはリビングアーマーとは搭乗方法が異なり、すでに胴体に接続されている頭部に乗り込み並列ではなく直列に立ち前に俺が乗り機体の操縦を管理し、後ろのシェリーが機体の状態を把握し応急の修理を担当する。
俺たちは一呼吸置いてからドリフトのスイッチを入れた。
走馬灯のように互いの記憶が飛び交うが明確な「街を守る」意思で固定され安定する。
「ドリフトの成功を確認。シンクロ率92%で安定。」
仕事モードのマイクが空かさず俺たちのサポートにまわる。
軽く機体の動作を確認し、ゲートの前に移動する。
「準備OKだ。いつでも出撃できるぞ！」
ゲートを開きながらマイクが俺たちの背中を押す。
「「了解！サーキット夫妻！ストライカーΣⅤ、出る！」」
昼間の月に見送られこれからのことが予想できないような穏やかな海に出た。
程なくしてヤツはいた。今まで見てきた中で1番でかい。
しかし、俺たちが操縦するストライカーΣⅤは狩人の中で最も新しい機体である。
そのパワーとスピードは他を圧倒するほどのものであり、全く勝ち目がないわけではない。
「先制を仕掛けるぞ！」
俺が合図をすると、シェリーはナイスなタイミングで機体背部についた2基の巨大ブースターを点火させIkaijuとの距離を詰める。
「電磁メリケンサック起動！」
俺の音声を認識し、高圧の電流が流れた右の拳をIkaijuの鼻先にお見舞いする。
ギヤァァァァァ
不快な鳴き声とともにIkaijuは麻痺し身動きがとれなくなる。
ここぞとばかりに俺は伝家の宝刀を抜く。
「ツインブレード！」
ストライカーΣⅤの最大の武器である両腕に内蔵されていた一対の鋭利な刃物が飛び出しIkaijuを切り刻んでいく。
ギャアァァァァァオ
これにはIkaijuもなす術がなく一方的に体力が削がれていく。
「そろそろ麻痺が切れるわ。」
シェリーが的確な指示を出す。
「ならもう一発！電磁メリケンサッー」
グェェェェェ
その時であった。Ikaijuは麻痺が解けるとすぐに口内の液体をぶちまけたのだ。
もろに液体を浴びてしまったストライカーシグマⅤの装甲はみるみるうちに溶けていった。
「強酸だわ！1度距離を取りましょう！」
シェリーの判断と反応により被害は最小限に抑えたがそれでもダメージは深刻だった。
「迂闊に近づけない！一体どうすれば？」
俺の一瞬の迷いがIkaijuにとって大きなチャンスであった。わずかに開いた距離を両腕を大きく広げ、羽ばたかせ空へと飛び上がったのだ。
「あんなでかい図体で飛べるのかよ！」
空中を飛び回るIkaijuはストライカーΣⅤの攻撃範囲外から次々と強酸のブレスを吐いて追い詰める。なんとか紙一重で躱すが海面に残った強酸が逃げ場を少しずつ削っていく。
「なんとかして動きを封じなければ！」
俺の中の焦りがどんどん大きくなる。万事休すかと思いきや、俺はある妙案を思いついた。
「シェリー！俺に合わせろ！」
俺の合図に合わせシェリーが背部ブースターの出力を最大限に引き上げる。
「バックパックパージ！」
俺の声に従いバックパックだけが勢いよく打ち上がる。元々ストライカーΣⅤのバックパックはメンテナンスを考慮して分離できるようにしてあったが、こうも役に立つとは思わなかった。
勢いそのままに飛び上がったバックパックは見事Ikaijuに命中し撃ち落とすことに成功した。
ギャェェェェェ
落下してきたIkaijuに電磁メリメンサックとツインブレードのハメコンボをひたすら加えてIkaijuはミンチとなった。
「はっはっは！まさか本当に倒すとはな！俺も驚きだよ！」
「イマイチ最後はかっこよさに欠けたけどな。」
「誰もお前にそんなの求めやしない！」
「なんだと言ってくれるじゃねーか？」
あの後俺たちはマイクの奢りで夜の街を練り歩いていた。
「そーいやマートン、シェリーどーした？」
「まだメカニックのとこだ。」
シェリーは基地に戻るとすぐに戦闘データを記録するためにメカニックのもとへ行ってしまった。最後に目を合わせた時には捕食者の目をしていたが、今は何も考えないことにする。
「そうか、そうか！だったら久しぶりに朝まで行っちゃうか？」
「悪くないっすねーw」
「マートン、飲み過ぎは体に良くないわよ。」
「今日ぐらいはいいんだよーっていつの間に！」
「さっき終わったばかりなの、ところでマイク？」
「な、なんだい？」
「マートン連れて帰っていいかしら？」ニゴォ
「どうぞどうぞ！」
「って即答かよおい。っちょ待っていきなりだよね？」
「マートン、ワタシモウゲンカイナノ。」
あぁそうだ、この2週間で忘れていたストライカーΣⅤはハイスペックが故に消費魔力が膨大であることを...
「強制搾精モードニ移行シマス。ワタシダケガ『デキル上司』ニナッテクダサイネ。」
アァァァァァァァァァァ！
「その資材は向こうへ運んでくれ。」
「Ikaijuの残骸処理の進度状況はどうなってる？」
「Ikaiju被害で避難した人たちのフォロー頼んだぞ。」
俺サーキット=マートンは各部門の部下たちに指示を出していた。
Ikaiju対策本部が設置されてから日が経ち、最近になって非戦闘時の狩人のパイロットの立ち回りが明白になってきた。
何、別にこれと言って難しい事はない。仕事内容は狩人の製造、維持のための資金集めを目的とした大商人のもとへ足を運ぶ渉外活動を始め、製造部への新兵器に関して企画提案といった作業を黙々とこなすだけだ。
仕事はできるやつはどんどんと昇格し、人を動かす立場になる。
俺も日々の作業を丁寧に対応していたことが上層部のお偉いさんたちの目に留まり、今の生活を手に入れた。
ここ2週間ほどは操縦シミュレーション、トレーニング以外では室内にいることが多く部下たちからは「ただのできる上司」扱いされている始末だ。
戦う必要がないということは、それだけ他のパイロットたちだけで対応できる技量があるということで頼もしいと思える反面、若干のもどかしさを感じる。
そんなことを考えつつ午前中の業務を終わらせて、愛妻弁当でも食べようかと思っていたその時だった。
≪Ikaiju出現。Ikaiju出現。 直ちに配備に付いてください。≫
けたたましいサイレンとともに無機質な声が非常事態宣言をする。
弁当の中身を確認する間もなく急いで指令室に向かった。
「うわっ！びっくりした。」
「ごめんなさい。迎えに来たけど、不要だったみたいね。」
部屋の扉を開けた瞬間、目の前に妻のオートマトンであるサーキット=シェリーと鉢合わせをして驚くがすぐさま持ち直す。
「いいや、そんなことないさ。急ごう！」
「分かったわ。急ぎましょう。」
2人揃ってパイロットスーツに着替える。いや、シェリーに至っては普段からパイロットスーツを着ているため俺の服を一瞬で剥いて着替えさせる。いつものことだが結構恥ずかしい。シェリーはずっと俺の股間を見てくるし。
なんやかんやあったが緊張感を持って指令室にたどり着く。
「お！やっと来たな！『ただのできる上司』！」
そんな重い雰囲気をオペレーターのマイクがぶち壊した。
「お前なぁ、状況考えろよ。」
「何言ってんだ！こちとら場を和ませようと思って気ィ効かせてんだよ。」
こいつとはタメなこともあって普段かこんな調子だ。
さすがにこんな緊急事態でもヘラヘラしてるこいつとは付き合いを考えるべきかと一悶着していると、
「・・・」
何も言っていないはずのシェリーから怒りの感情が伝わってくる。慌てて言い争いをやめて作戦内容の確認に取り掛かる。コイツはオートマトンのくせに感情的になりやすい。しかし、狩人に乗り込むと恐ろしいほど冷静になる。このギャップがたまらないと熱く語るのはまた別の機会にしよう。
「いつもの場所でIkaijuが湧いた。ただ...」
「ただ...何かしら？」
シェリーが痺れを切らして追求する。
「カテゴリ4だ。」
「っカテゴリ4だって！」
Ikaijuにおけるカテゴライズは1から5に分類され、数字が大きくなるほど凶暴性、サイズが増す。ことの重大性が部屋の空気を重くした。それだけ相手が異常なのだ。ちなみにカテゴリ5は今まで1度も出現したケースはない。
「分かりました。すぐに準備に取り掛かります。」
シェリーは驚きもせず準備をする姿を見て、慌てていた自分が恥ずかしくなる。
「そうだな。俺たちが動揺していてはダメだな。」
「すまないな。」
申し訳なさそうにマイクが俯いたが、ふと何かを思い出したのか慌てて電話を掛ける電話越しにいくらかやり取りをするうちに段々と顔が青くなっていくのを見て俺はもう嫌な予感しかしなかった。「ああ、分かった。」と電話を切るや否や、
「本作戦は、単独で行う。」
「どうしてだ？」
今度はあくまでも落ち着いて問う。本来、カテゴリ3以上と戦う際は狩人は2機以上と定められているはずだが、今回は何かトラブルがあったようだ。
「いつもならもう1機はホープが務める予定だったが、1週間前の戦闘で破壊された左腕と腹部の修理がまだ終わっていないらしい。」
「他の基地に救援を頼むことはできないんですか？」
シェリーが即座に案を出すが「狩人が到着する前に、Ikaijuに上陸される。」と却下された。
もはや打つ手なしと思われた未来だったが、
「俺たちが戦わなかったら、誰が戦うんですか？」
俺は覚悟決めて言い放った。
「マートン、勇敢と無謀は違う。無理に今戦わなくても市民の避難は十分に間に合う。最悪戦いに負けても図鑑補正で死にはしないが、失った魔力の分だけぶっ通しでヤり続けることになるぞ！」
「いいえマイク、夫の言う通り戦うべきだわ。自分たちが住んでいる場所が破壊されるのを黙って見ているほど私のプログラムは良くできていないのよ。」
マイクは俺とシェリーの熱意に圧倒されたのか、「くれぐれも無茶はするなよ。」と釘を刺し送り出した。
オートマトンはリビングアーマーとは搭乗方法が異なり、すでに胴体に接続されている頭部に乗り込み並列ではなく直列に立ち前に俺が乗り機体の操縦を管理し、後ろのシェリーが機体の状態を把握し応急の修理を担当する。
俺たちは一呼吸置いてからドリフトのスイッチを入れた。
走馬灯のように互いの記憶が飛び交うが明確な「街を守る」意思で固定され安定する。
「ドリフトの成功を確認。シンクロ率92%で安定。」
仕事モードのマイクが空かさず俺たちのサポートにまわる。
軽く機体の動作を確認し、ゲートの前に移動する。
「準備OKだ。いつでも出撃できるぞ！」
ゲートを開きながらマイクが俺たちの背中を押す。
「「了解！サーキット夫妻！ストライカーΣⅤ、出る！」」
昼間の月に見送られこれからのことが予想できないような穏やかな海に出た。
程なくしてヤツはいた。今まで見てきた中で1番でかい。
しかし、俺たちが操縦するストライカーΣⅤは狩人の中で最も新しい機体である。
そのパワーとスピードは他を圧倒するほどのものであり、全く勝ち目がないわけではない。
「先制を仕掛けるぞ！」
俺が合図をすると、シェリーはナイスなタイミングで機体背部についた2基の巨大ブースターを点火させIkaijuとの距離を詰める。
「電磁メリケンサック起動！」
俺の音声を認識し、高圧の電流が流れた右の拳をIkaijuの鼻先にお見舞いする。
ギヤァァァァァ
不快な鳴き声とともにIkaijuは麻痺し身動きがとれなくなる。
ここぞとばかりに俺は伝家の宝刀を抜く。
「ツインブレード！」
ストライカーΣⅤの最大の武器である両腕に内蔵されていた一対の鋭利な刃物が飛び出しIkaijuを切り刻んでいく。
ギャアァァァァァオ
これにはIkaijuもなす術がなく一方的に体力が削がれていく。
「そろそろ麻痺が切れるわ。」
シェリーが的確な指示を出す。
「ならもう一発！電磁メリケンサッー」
グェェェェェ
その時であった。Ikaijuは麻痺が解けるとすぐに口内の液体をぶちまけたのだ。
もろに液体を浴びてしまったストライカーシグマⅤの装甲はみるみるうちに溶けていった。
「強酸だわ！1度距離を取りましょう！」
シェリーの判断と反応により被害は最小限に抑えたがそれでもダメージは深刻だった。
「迂闊に近づけない！一体どうすれば？」
俺の一瞬の迷いがIkaijuにとって大きなチャンスであった。わずかに開いた距離を両腕を大きく広げ、羽ばたかせ空へと飛び上がったのだ。
「あんなでかい図体で飛べるのかよ！」
空中を飛び回るIkaijuはストライカーΣⅤの攻撃範囲外から次々と強酸のブレスを吐いて追い詰める。なんとか紙一重で躱すが海面に残った強酸が逃げ場を少しずつ削っていく。
「なんとかして動きを封じなければ！」
俺の中の焦りがどんどん大きくなる。万事休すかと思いきや、俺はある妙案を思いついた。
「シェリー！俺に合わせろ！」
俺の合図に合わせシェリーが背部ブースターの出力を最大限に引き上げる。
「バックパックパージ！」
俺の声に従いバックパックだけが勢いよく打ち上がる。元々ストライカーΣⅤのバックパックはメンテナンスを考慮して分離できるようにしてあったが、こうも役に立つとは思わなかった。
勢いそのままに飛び上がったバックパックは見事Ikaijuに命中し撃ち落とすことに成功した。
ギャェェェェェ
落下してきたIkaijuに電磁メリメンサックとツインブレードのハメコンボをひたすら加えてIkaijuはミンチとなった。
「はっはっは！まさか本当に倒すとはな！俺も驚きだよ！」
「イマイチ最後はかっこよさに欠けたけどな。」
「誰もお前にそんなの求めやしない！」
「なんだと言ってくれるじゃねーか？」
あの後俺たちはマイクの奢りで夜の街を練り歩いていた。
「そーいやマートン、シェリーどーした？」
「まだメカニックのとこだ。」
シェリーは基地に戻るとすぐに戦闘データを記録するためにメカニックのもとへ行ってしまった。最後に目を合わせた時には捕食者の目をしていたが、今は何も考えないことにする。
「そうか、そうか！だったら久しぶりに朝まで行っちゃうか？」
「悪くないっすねーw」
「マートン、飲み過ぎは体に良くないわよ。」
「今日ぐらいはいいんだよーっていつの間に！」
「さっき終わったばかりなの、ところでマイク？」
「な、なんだい？」
「マートン連れて帰っていいかしら？」ニゴォ
「どうぞどうぞ！」
「って即答かよおい。っちょ待っていきなりだよね？」
「マートン、ワタシモウゲンカイナノ。」
あぁそうだ、この2週間で忘れていたストライカーΣⅤはハイスペックが故に消費魔力が膨大であることを...
「強制搾精モードニ移行シマス。ワタシダケガ『デキル上司』ニナッテクダサイネ。」
アァァァァァァァァァァ！
19/10/26 00:28更新 / 甘党大工さん