読切小説
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戦乙女と愛
とある反魔物国領土内で教団と魔物の娘との戦いが起きた。
煌々と揺らめく松明を掲げ、暗闇の中で両軍が睨み合う。
方や、主神の教えに従い戦わんとする敬虔な主神派たち。
方や、夫にするための男を捕まえんと瞳を爛々とさせる魔物の娘たち。
一触即発の空気が漂うなか、夜だけが素知らぬ顔で更けていく。
熱気と欲望が混在するその場に、剣を天に掲げながら男とヴァルキリーが馬を駆って現れる。
男の名はシグルズ。
ヴァルキリーの名はエイル。

「夜明けとともに我らは進軍する!騎士たちよ、魔物に臆するな!」
「「「おおおお!」」」
「姿は違えど愛し愛される心は同じ。魔物の娘らよ、愛のために立ち向かうのです!」
「「「はーい!」」」

ある者は神に祈り、ある者は興奮醒めぬまま、またある者は家族へと愛するものへと宛てた手紙を書く。
それぞれが眠れぬ夜を過ごすなか、ゆっくりとだが朝日は戦いの到来を感じさせる。

「全騎士団、進めー!!」

シグルズの開戦の合図に続き、角笛の音が高らかに響き渡る。
騎士達は馬を駆り、走り、魔物の娘に目掛けて突き進んで行く。
そしてそれに呼応するように、魔物の娘達も地を駆け、走り、飛び、騎士達を捕まえんとする。
ここに人と魔物の娘との戦いの火蓋が切って落とされた。

だが、その戦いは一方的としか言えないものであった。
重装騎士が槍で突けば魔物の娘はひらりと身を躱し、矢を放てば風の障壁で全て弾かれる。
もはや人と魔物の娘では力の差は歴然であった。
しかし、魔物の娘達が手心を加えたためか、人の被害は軽微で何人かが持ち帰られただけであり、戦線は膠着状態となった。

「力の差は歴然・・・しかしこの状況、エイル、何か策があるな」

瞬間、騎士団を挟撃する形で両翼に転移魔法の魔方陣が現れる。
そして、魔方陣から姿を見せたのは魔界の精鋭騎士たるデュラハンの軍団。
その類い稀なる剣術の前に、騎士団達は瓦解し、なすすべ無くその場で犯されるか、連れて行かれるしかなかった。
その渦中、魔物娘達の大将たるエイルへ単騎駆けをする者がいた。
魔力の矢の雨を潜り抜け、魔界銀の剣をいなし現れたるは団長シグルズ。

「エイル、何故に主神様を裏切ったのか!」
「全ては愛がため、貴方を思う愛がためなのです」
「愛していたのなら、なぜ私の前から姿を消した・・・」
「それは、私が主神の使いであったためなのです」

かつてシグルズは勇者候補として、エイルは勇者を育てる者として共に旅をしていた。
多くの苦楽を乗り越え、分かち合った仲であった。
しかし、ある親魔物国家に潜入して幾日か過ぎた日、エイルは忽然と姿を消した。
悲しみに暮れたシグルズは『エイルがいないならば意味などない・・・』と勇者の座を捨て、一騎士として長年、国に使えた。

「いったいどんな関係があるのだ!」
「主神の使いたるヴァルキリーが誰かを愛することは許されないのです。しかし、私は貴方を愛してしまった・・・ましてや魔物の娘達のように貴方と激しく愛し合いたいとさえ思ってしまったのです!」
「エイル・・・」
「それは許されざる思い。私は主神の命によって天界に戻ることになりました。幾つもの季節が移ろっても貴方への思いは移ろうことなく、ひたすら募るばかり・・・」

エイルの瞳から涙がつうと零れ落ちる。

「そんなある日、私は主神ではない神、堕落神からの神託を受けたのです。愛し愛される美しい心は何物にも縛られず、全ては快楽と堕落の下に平等であると・・・。そして私は貴方を思う愛がため主神の下を」
「ああ、辞めてくれエイル!お前が堕落していく様なんて聞きたくないんだ」
「なりませんシグルズ!これは私と貴方にとって付けなければならない決着、つまりは運命。シグルズ、私は貴方のことを愛しています。もはや天界の使いではない私なれど、貴方は愛してくれますか?」
「エイル・・・私は、私は・・・!」

頭を抱え、その場に膝を着くシグルズ。
そこへエイルがシグルズを後ろから抱きしめる様に寄り添う。

「シグルズ、愛しいシグルズ。この思いに応えてもらえないならば、どうか私を貴方の手で・・・貴方さえいれば他の者が例え死に絶えてしまってもかまわないとさえ考えている私を殺めてください。さすれば私は、天界の戦士たるヴァルキリーとして貴方の中で生きてゆけます・・・」
「エイル、最愛の人よ。お前はなんと狡い女なんだ。私がお前を殺められる訳がないではないか・・・」
「それではシグルズ、貴方は私のことを!」
「ああ、愛しているとも!」

ひしと抱きしめ合う二人。

「エイル・・・」
「シグルズ・・・」

求め合うように互いの唇を貪る二人。
もはや過去の束縛は消え去り、残るものは二人の固い絆と愛のみである。

「シグルズ、来てください。ひとつになりましょう」
「ああ、分かった。エイル、入れるぞ」

シグルズの男根がエイルの秘所に飲み込まれていく。
流れ出るものは純潔たる証。

「これが愛する人に純潔を捧げられた喜び・・・堕落神様、感謝いたします」

自らの欲望を果たし、より深い魔性へと堕ちていくエイル。
彼女の純白の翼は今や黒く染まっている。
ダークヴァルキリーへと堕ちたのだ。

「エイル、動いても大丈夫か?」
「ええ。貴方の好きなようにしてください」

二人は今までの時間を取り戻すかのように、ひたすらに交わった。

「エ、エイル、いくぞ!」
「きてください、シグルズ!貴方の子種で私の中を満たしてください!」

そしてエイルの中にシグルズの子種が注ぎ込まれる。

「ああ・・・幸せ♥」
「私も幸せだ、エイル。これからは何物にも邪魔をされず、共に生きて行こう」
「ええ、そうしましょう♥見て下さいシグルズ、堕落神の御使い達です。これから私達は万魔殿へと向かうのです。そこで私達だけの永遠の時を過ごしましょう」
「お前と一緒ならばどこへでも行こう」

こうして二人は万魔殿へと旅立ち、永遠に続く、快楽にまみれ堕落しきった時を幸せに過ごしている。    〜fin〜



『本日は劇団レスカティエがお送りする舞台、「戦乙女と愛」をご覧いただき誠にありがとうございました。お帰りの際は、忘れ物や行為中の夫婦に気を付けてお帰りください』
『また、主演男優および主演女優が万魔殿に籠もってしまったため、当劇団では新たな男優と女優を募集しております。旦那様や奥様と普段できないプレイを楽しみ、思い出に残しませんか?』
『劇団員一同、皆様のまたのご来場をお待ちしております』

終わり。
14/07/06 23:15更新 / リキッド・ナーゾ

■作者メッセージ
微エロかどうかも怪しいエロ・・・
そして、ワルキューレの騎行を聞きながら書いてたらこんなんになりました。
結果的に堕落しているのでジャンルをダークヴァルキリーにするか迷いましたが、ほぼヴァルキリーなので、ジャンルはヴァルキリー。
最後まで読んでいただきありがとうございます。

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