僕と剣
目を覚ますと、僕の隣ではゴーレムのミーアが寝ていた。
「…………おはようございます。テツヤ様。私に襲われなくてよかったですね」
「何言ってんだよお前……」
僕は服を着替えながら、大あくびをした。
まぁ、着替えと言っても、ミーアが勝手に僕の服を脱がして着せ替えるだけだから、僕は何もしなくていいのだけど。
「今日の朝は遅いですね。どうかされたんですか?」
ミーアは器用に服を脱がしながら、僕に質問する。
その質問は、純粋な疑問から来るものだろう。
だから僕も素直にそれに答える。
「エルメリア姉さんと夜通し怖い話をしてたんだ」
情けない話だったが、ミーアには話せた。
「ふふっ、そうだったんですか。フェリーナ様に知れたら怒られちゃいますね」
「そうだな、これから気を付けないと」
柔らかに笑う彼女につられて、僕の頬も少しだけ緩む。
ミーアはゴーレムなのに、他のゴーレムとは違っておしゃべり好きだ。
冷たい言い方をすれば、彼女がおしゃべり好きなのは、左肩に刻まれたルーン文字によって、好奇心を持つようプログラムされているからなのだが、こうして毎朝、僕という存在に、純粋な好奇心を抱き、話しかけてくれる彼女にははとても感謝している。
僕という存在を詮索するわけでもなく、ただ僕のしていること、好きな事に一緒に興味を持ち、質問し、一緒に楽しもうとする。そうやって僕に寄り添ってくれるのはミーアや、エルメリア姉さんといった、特定の「魔物」たちだけだから。
他の人間たち――特にレスカティエ教国の従属国の貴族たちは、僕の出自や経歴、そしてどうやってこの『啓蒙国家フェリエ第一王子』になったのか、という事にしか興味を示さない。
それは僕がこのフェリエ家の養子だから、ということは痛いくらい理解してる。
僕は記憶喪失の状態で発見され、そのままフェリエ国の政策によって保護され、そして、流されるようにフェリエ家の養子になった。
もちろん、『テツヤ』という名前も後からつけられた名前だ。
この名前は黒髪黒瞳の民族が住むジパング地方の「哲学は全ての学問の頂点也」という言葉の最初と最後の二文字を拝借したものらしい。
黒髪黒瞳の僕によく似合う名前だし、名付け方も啓蒙国家の領主らしい。
フェリーナ様、つまり僕の義母にあたる領主様は僕にエルメリアと同じだけ世話を焼き、僕がさびしくないようにと、ミーアを僕に宛ててくれた。
そして僕に騎士と王族公爵の爵位までも与えてくれた。
フェリーナ様は偉大だ。だからこそ僕にこんなに寛容だ。
でも、それが僕の重荷になっているという事に、フェリーナ様は気づいていない。
「はいこれ、最後の仕上げです」
「ありがとう。ミーア」
僕はミーアから剣を受け取り、腰に差した。
この剣は王族公爵の紋章と騎士を表す勲位紋が施された、ジパングのカタナといわれるものらしい。
でも、それは僕には似合わないものだから……。
「じゃあ行ってくるよ」
「はい♪ 行ってらっしゃいませ」
僕は部屋を出てすぐに武器庫に向かい、剣を交換する。
いつも僕のカタナを整備してくれる彼女には悪いが、僕にこの剣を持つ資格は無い。だからこそ、僕は武器庫の奥に収められた古びたカタナを取り出し、かわりに腰に差す。
そうしてから、僕はようやく学び舎へ向かう。
だけど、その学び舎というものも、僕には似つかわしくない、この国最高級の貴族や騎士階級の魔物娘たちの集う、フェリエ王立総合高等戦術学院という、由緒正しき学び舎だった……。
「…………おはようございます。テツヤ様。私に襲われなくてよかったですね」
「何言ってんだよお前……」
僕は服を着替えながら、大あくびをした。
まぁ、着替えと言っても、ミーアが勝手に僕の服を脱がして着せ替えるだけだから、僕は何もしなくていいのだけど。
「今日の朝は遅いですね。どうかされたんですか?」
ミーアは器用に服を脱がしながら、僕に質問する。
その質問は、純粋な疑問から来るものだろう。
だから僕も素直にそれに答える。
「エルメリア姉さんと夜通し怖い話をしてたんだ」
情けない話だったが、ミーアには話せた。
「ふふっ、そうだったんですか。フェリーナ様に知れたら怒られちゃいますね」
「そうだな、これから気を付けないと」
柔らかに笑う彼女につられて、僕の頬も少しだけ緩む。
ミーアはゴーレムなのに、他のゴーレムとは違っておしゃべり好きだ。
冷たい言い方をすれば、彼女がおしゃべり好きなのは、左肩に刻まれたルーン文字によって、好奇心を持つようプログラムされているからなのだが、こうして毎朝、僕という存在に、純粋な好奇心を抱き、話しかけてくれる彼女にははとても感謝している。
僕という存在を詮索するわけでもなく、ただ僕のしていること、好きな事に一緒に興味を持ち、質問し、一緒に楽しもうとする。そうやって僕に寄り添ってくれるのはミーアや、エルメリア姉さんといった、特定の「魔物」たちだけだから。
他の人間たち――特にレスカティエ教国の従属国の貴族たちは、僕の出自や経歴、そしてどうやってこの『啓蒙国家フェリエ第一王子』になったのか、という事にしか興味を示さない。
それは僕がこのフェリエ家の養子だから、ということは痛いくらい理解してる。
僕は記憶喪失の状態で発見され、そのままフェリエ国の政策によって保護され、そして、流されるようにフェリエ家の養子になった。
もちろん、『テツヤ』という名前も後からつけられた名前だ。
この名前は黒髪黒瞳の民族が住むジパング地方の「哲学は全ての学問の頂点也」という言葉の最初と最後の二文字を拝借したものらしい。
黒髪黒瞳の僕によく似合う名前だし、名付け方も啓蒙国家の領主らしい。
フェリーナ様、つまり僕の義母にあたる領主様は僕にエルメリアと同じだけ世話を焼き、僕がさびしくないようにと、ミーアを僕に宛ててくれた。
そして僕に騎士と王族公爵の爵位までも与えてくれた。
フェリーナ様は偉大だ。だからこそ僕にこんなに寛容だ。
でも、それが僕の重荷になっているという事に、フェリーナ様は気づいていない。
「はいこれ、最後の仕上げです」
「ありがとう。ミーア」
僕はミーアから剣を受け取り、腰に差した。
この剣は王族公爵の紋章と騎士を表す勲位紋が施された、ジパングのカタナといわれるものらしい。
でも、それは僕には似合わないものだから……。
「じゃあ行ってくるよ」
「はい♪ 行ってらっしゃいませ」
僕は部屋を出てすぐに武器庫に向かい、剣を交換する。
いつも僕のカタナを整備してくれる彼女には悪いが、僕にこの剣を持つ資格は無い。だからこそ、僕は武器庫の奥に収められた古びたカタナを取り出し、かわりに腰に差す。
そうしてから、僕はようやく学び舎へ向かう。
だけど、その学び舎というものも、僕には似つかわしくない、この国最高級の貴族や騎士階級の魔物娘たちの集う、フェリエ王立総合高等戦術学院という、由緒正しき学び舎だった……。
17/05/08 03:33更新 / (処女廚)
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