連載小説
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CASE1 変人勇者
一週間後デルエラはレスカティエ城に戻ってきた。

「おかえりなさいませ。デルエラ様」
「ええ。ただいま。それであの件はどうなったかしら?」
「はいっまず十名の勇者を調べ上げました。」
「あらっ?意外と多いわね。」
「デルエラ様ウチも協力しました。」
「今宵ね。ありがとう助かったわ。」
「勿体ない言葉です。」
「そういえばデルエラ様のほうはどうでしたか?」

フランツィスカはふと気になった様子で彼女に聞いた。

「お父様は全面的に協力的で、すぐにお母様に言ってくれたわ。しばらくしたらあっちから連絡が来るはずよ。」
「勇者部隊のほうは?」
「あっちはあっちで報告書をよこすみたいね。説得するのに二日も掛かったわ。」
「なんとなく理由はわかります。」

説得に苦労した様子の主を見て今宵、フランツィスカは納得した様子を見せた。


「ウィルマリナやサーシャ達がいないのは残念だけど。早速報告書を見せtもらえるかしら?」
「はいっこちらです。」

そういってフランツィスカは自分のしもべを使って報告書を持ってきた。

「へぇそこそこ分厚いわね。」
「この十人に関しては比較的簡単に調べられました。」
「そうなの?それじゃあ意外と知られていたのかしら?」
「といっても結構変人ばかりです。」
「変人ばかり?」

デルエラは今宵の言葉に何か引っかかったがとりあえず報告書に目を通すことにした。

≪消された勇者に関する報告書 その一≫

デルエラ様の命により教会や貴族が消した勇者のうちここ十年間に消されたものを対象に調査いたしました。それでは報告いたします。また年齢に関しては現在の推測される年齢です。


@名前:ダニエル・フッテン 性別:男 年齢:25歳

通称:ロリコン勇者 出身地:反魔物系の町

町人の次男として生まれ、勇者として教会に認められた時は、家族にそろって送り出された。勇者としての才能はとても素晴らしく、魔法に秀でた魔法使い型の勇者である。しかし、最大の問題は彼の性癖である。性癖は人それぞれなのだが、寄りにもよって幼女が好きであることを酒に酔って居酒屋で大声で話してしまった。これを耳にした教会が密かに彼を調べたところ、なんと休日は幼女をストーカーのように観察していたというのだ。これには教育上よろしくないと判断されて、左遷された。現在は反魔物派の町に住んでいる。彼を落とすならば、インプやバフォメットがいいと思われる。

≪デルエラ様の感想≫
まあ人の性癖に文句を言うつもりはあまりないけど、流石にこれは教育上駄目ね。しかも詳しいデータを見ると最後には少女を追いかけまわしていたらしいじゃない。これに関しては破門されても当然かしらね……


A名前:セルジュ・エドゥアール・クールベ 性別:男 年齢:23歳

通称:セクハラ勇者 出身地:旧レスカティエ王国

旧レスカティエ王国の元貴族の三男。顔はいいが、性格は悪く貴族の権力を利用して多くの町人や農民の娘にセクハラをしていた。あまりにやりすぎたため父親からは勘当されて、勇者もクビなった。現在はレスカティエ在住で嫁のフェアリー達と生活している。

≪デルエラ様の感想≫
またどうしようもないのがいたのね。というより父親に勘当されてもなおセクハラをするって何やってんのよ。まぁレスカティエで今は大人しくしているみたいだから放置しておきましょう。


B名前:アリーナ・アダーモヴナ・ボロダエヴァ 性別:女 年齢:22歳
 
通称:サディスティック姫 出身地:旧レスカティエ王国

旧レスカティエ王国の元令嬢。美人で頭もいいが、とてつもないほどもサディストであり、ある部隊の指揮を任されたところその部隊にかなり無茶な訓練を繰り返してしまった。周りからの目に耐えられなくなり、他の都市に駆け落ちした。現在は親魔物派の町でダークエルフになって夫と生活している。

≪デルエラ様の感想≫
……今度はドSか。本当に彼女が指揮していた部隊の人が無事でよかったわ。彼女に関しては、今はダークエルフとして夫と幸せに暮らしているみたいだしほっといてよさそうね。

C名前:ウルスラ・セーデルボリ 性別:女 年齢:20歳

通称:マゾ姫  出身地:不明

出身地不明。孤児院にいたところを教会に連れ出されたらしい。彼女はとてつもないマゾヒストで、当時は道端の人に虐めてくださいと懇願するほどであった。しかし、彼女がこうなったのは孤児院にあり、孤児院の院長が孤児院の子供に虐待をしていたのである。現在は反魔物派の国に在籍しているが、彼女のドMの質はその王国で奇跡的に治った。そのためかつてのウィルマリナに匹敵するほどに成長しているため注意が必要である。また、教会に勇者としての記録を消されたのは、貴族の令嬢に逆恨みされたからである。

≪デルエラ様の感想≫
……これは厄介そうね。ただのドMかと思ったら虐待されて、こうなってしまったのね。逆恨みで勇者の記録を消されたみたいだけど、左遷先でマゾヒズムが無くなったことで対して恨んでいないみたいね。彼女に関してはもう一度詳しく調べてもらってから判断を下したほうがよさそうね。

D名前:ライリ・リーッタ・アホシルタ 性別:女 年齢:28歳

通称:ヤンデレ勇者  出身地:旧レスカティエ王国

レスカティエ王国の元令嬢。勇者としては優れていたようだが、一人の男性に執着して流血沙汰を起こした。二人の女性に大けがを負わせたことにより、教会から破門された。現在はラミアとなり、この国で怪我させた女性二人と仲良く夫と過ごしている。

≪デルエラ様の感想≫
一人の男性を愛したのは分かるけど、流血沙汰を起こしたみたいだし、さすがに教会も破門するでしょうね。彼女の夫が少し心配だけどほっといて平気ね。

E名前:ヴェイニ・キヴィコスキ 性別;男 年齢:45歳

通称;破壊王  出身地:旧レスカティエ王国

レスカティエ王国の職人の四男。筋肉ムキムキな人物で、レスカティエで行われた腕自慢大会を10連覇した男。しかし、非常に乱暴で喧嘩っ早くとても子供っぽいところも多い。そして一番の問題がむしゃくしゃするとあたり構わず周りのものを破壊する悪癖である。10年前に教会を壊したことでとうとう大司祭の堪忍袋の緒が切れて、勇者をクビになり左遷された。現在は居場所不明のためいつ襲ってくるかわからないため注意が必要である。

≪デルエラ様の感想≫
ロリコン、セクハラに続いて出てきた男の勇者は破壊王か。データを見る限り巨大な山を投げることも可能みたいね。まだ居場所が見つかっていないみたいだし、警戒しておきましょう。

F名前:インジフ・ムラチェク 性別:男 年齢:22歳(故人)

通称:外道勇者 出身地:旧レスカティエ王国

レスカティエ王国の金融業者の長男。顔立ちは悪く、性格も卑怯ものであり、太っていた。父親が大臣とのコネを持っていたため、好き勝手に動いていた。例を挙げると魔物撲滅と称して関係のない住人にも襲い掛かり、婦女暴行をしていた。他にも自分に逆らったものに執拗まで虐め自殺に追い込んだりしていた。あまりの行いに教会も動きたかったが、大臣が邪魔していて動けなかった。しかし、7年前に一人の勇者が大臣の不正の証拠を提出し、大臣失脚後今まで勇者の地位にいながら下種な行い行っていたため父親もろとも処刑された。因みに勇者としては勇者といい難い催眠能力にたけていたらしい。

≪デルエラ様の感想≫
ほんとこのようなクズが生きていなくてよかったわ。父親も法外な利子をとって、返せない人に散々酷いことをやっていたようだしね。それにしても不正の証拠を提出した人って誰なのかしら?

G名前:セオドール・ヴァンゲリフ 性別:男 年齢;34歳

通称:サボり魔  出身地:旧レスカティエ王国近隣の村

レスカティエ王国近隣の農民。生まれたところはとても貧しく教会に家族の保護を条件に勇者として向かった。最初はとても真面目にやっていたが、教会が家族の面倒を見ておらず、弟と妹が行方不明になったことを知ったとたん。勇者としての任務をサボるようになってしまった。その後教会に刃向かったとして左遷された。現在は左遷先の反魔物国家で再開した家族と生活している。彼はかなり優秀な統率者のため、注意が必要な者の一人である。

≪デルエラ様の感想≫
彼に関してはちょっと臆病なところがあったのね。直接抗議しないでサボることで抗議していたようだし、やはり少し変わった感性の持ち主ね。でも油断はできないから彼も調べたほうがいいわ。

H名前:カミラ・アレクサンドラ・フェーダール 性別:女性 年齢:25歳

通称:おバカ勇者  出身地:旧レスカティエ王国

レスカティエの貴族の元令嬢。美人だが、とてつもないバカで計算が全くできないほどである。人当たりはよかったが、最終的に父親が金の力で娘を勇者にしたとされてクビになった。現在はレスカティエで夫と生活している。

≪デルエラ様の感想≫
またダメな人ね。しかも自分の名前も書けずフルネームも書けないくらいとは相当だったのね。まぁ今はレスカティエで夫と愛し合っているみたいだしほっときましょう。

I名前:ヴィクトル・バルリエ 性別:男 年齢:29歳

通称:マッドサイエンティスト野郎 出身地:旧レスカティエ王国

レスカティエ王国の薬屋の息子。とてつもなく頭が良かったが、性格は陰湿であった。彼は研究者としての一面もあったのだが、完成した薬を他に人に試したがる悪癖があり、外道勇者のインジフと共謀していた。しかしインジフ処刑後追放された。現在は親魔物国家で嫁の魔女と薬屋を営業しているが、悪癖のほうは治っていない。

≪デルエラ様の感想≫
今は親魔物国家にいるからいいけど、もし反魔物国家にいたら対策が必要な一人ね。まぁ悪癖でせっかく顔がいいのにモテていなかったみたいだし、おとなしくしているなら警戒は必要ないわね。


「……ふぅ。」

デルエラは報告書を読み終えると思わずため息が出た。

「結構変人が多かったわね。」
「はい。ですがまだ調べ終わっていませんので。」
「他に変人もいるかもしれないわね。」
「デルエラ様彼らに関してはどうなさいますか?」
「そうね……。」

デルエラは少し考えた後で

「ダニエル・フッテン、ウルスラ・セーデルボリ、ヴェイニ・キヴィコスキ、セオドール・ヴァンゲリフに関してはもう一度詳しく調べてちょうだい。」
「はっ。」
「そうね。クノイチの力も借りられるかしら?」
「ウチがいえば大丈夫かと。そこそこ知り合いも多いですし。」
「では頼むわよ今宵。言い忘れてたけど今回は調査だけにしてちょうだい。」
「はいっ承知しました。ウチにお任せあれ。」

そう言って今宵はデルエラの部屋から出て行った。

「後フランツィスカ。」
「なんでしょう?」
「ヴィクトル・バルリエに連絡はつくかしら?彼からも情報を得たいのよ。」
「可能かもしれせんが、魔王城に近い所に住んでいるみたいですよ。」
「あらそうなのね。だったらお父様からの連絡を待つとしましょう。」
「承知しました。」
「さてとそれまで時間があるからお茶でもしましょう。」
「喜んで……では係りの者に用意させましょう。」

一端指示を終えた彼女はフランツィスカとお茶をしながら他の者の帰りや連絡を待つのであった。
16/08/30 00:27更新 / 旅人A
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■作者メッセージ
ここに出てきた勇者たちは後々にも登場します。次回はウィルマリナやサーシャの報告です。

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