読切小説
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彼女は淫らな僕の女王
「――今、何と言ったのかしら。少し耳が遠くなってしまったみたい、よく聞こえなかったわ」

憮然とした表情で彼女が言う。
寝台に腰掛ける我が主から投げかけられる視線は酷く冷たく、蔑みの色を帯びている。
こちらが跪いているということもあり、否応なくお互いの立場の差を思い知らされる。
しかし、ここで挫けてはそれこそ骨折り損というもの。
意を決して、もう一度先ほどの言葉を繰り返す。

――仕え続けて早十数年、御身の寵愛を頂きたく……

「ああ、もういいわ、黙りなさい。聞くだけで耳が穢れてしまいそう」

なけなしの勇気を振り絞った懇願は、ばっさりと一言で切り捨てられた。

「つまり、私を抱きたいということ? 気紛れに拾っただけの、使用人の分際で」

絶対零度を思わせる声音に怯えすら感じながらも、ゆっくりと首肯する。
拾われてから十数年、首筋に牙が触れたことは数え切れないが、一度も肌を許してもらったことが無い。
当にこの身は彼女と同じ夜の住人に転じているのに、である。
粗相をしたことは――まあ、数え切れないほどあるが――それでも自分なりに実直に、誠実に仕えてきたつもりだ。
特筆して、主の不興を買うようなことをしでかした記憶はない。
それなのに、未だ彼女から寵愛を受けられないということはどういうことか。
自分に何か足りないものがあるのだろうか。それとも覚えがないだけで何かしでかしてしまったのだろうか。
兎にも角にも、理由に皆目見当がつかない――、と、気づくとそのようなことをまくし立てていた。
しまった、と我に返った時にはすでに遅く、はっきりと侮蔑の表情を浮かべた彼女と目が合ってしまう。
わずか数秒、だが己の失態を後悔し尽くす程度には十分なほどの気まずい沈黙は、彼女が口を開いたことで破られた。

「たった今、お前がぶち撒けたことが全てだと思うけれど。主を抱くために働くような浅ましい男に、一体誰が体を預けようなどと思うかしら」

何処の生まれとも知れない下賤な血の分際で、と吐き捨てるように付け足された言葉に、今度こそ完全に打ちのめされた。
まさしくその通りで、もしも、万が一にでも彼女と自分の立場が逆であったなら同じことを思うだろう。
しかしそれでも、お前と体を重ねるなど金輪際有り得ない、と宣告されるのは存外に堪えるものがあった。
何しろそれだけを一縷の望みとして、どんなに酷使されようが使用人としての生活に甘んじてきたのだ。
どれだけ浅ましかろうが絵に描いた餅だろうが、それが無くなってしまったとあっては今後何を支えとして働いて行けばいいのか……。
そのように絶望に打ちひしがれていたからだろうか。主が何か思いついたような酷薄な笑みを浮かべていたことに、一切気付きもしなかった。

「でも、そうね。理由はどうあれ、忠実に使えてくれたことは事実。なので一つ、褒美を与えましょう」

褒美と聞いて、条件反射的に顔を上げる。
目前に、汚れ一つない漆黒のブーツを纏った美しい脚が無造作に投げ出されていた。

「脚一本、思うままに穢すこと。そして妄想の中で私を抱くことを、今この場限りで許可します。お前が抱きたいと願った主の前で、無様に、存分に自分を慰めるといいわ」

その許しが出た途端、自分の中で何かがぷつんと音を立てて切れる感触がした。


言われるがまま、許可されるがまま、芸術品のような美しい脚に、己の欲望を擦り付ける。
すべすべとしたレザー、その奥にある柔らかくハリのある女体の感触を忘れぬ様、執拗に、味わうように擦り付ける。
今この場限り、ただ脚一本だけとはいえ主の体を自分の好きなように扱っているという事実が何よりも興奮を誘う。
その興奮に身を任せ、猿のように主の脚で肉棒を慰めすぎたのか、まだ数分と経っていないというのに射精感がこみ上げてくる。
いけない、いつ許可が撤回されるかわからないのだ、もっとじっくり堪能せねば――。
一瞬だけ冷静さを取り戻し、ふと主の方を見た。見てしまった。

――彼女が、まるで嫐るように、嘲り笑いながらじっくりとこちらを見ていることに気付く。

自分の痴態を観察されている。そう理解した瞬間、辛抱たまらず煮えたぎる欲望を解き放ってしまった。
びゅるる、びゅるる、と、もはや止めることなど叶わないまま夥しい量の白濁液を吐き出し、美しい黒を汚していく。
それでも治まらない、むしろ際限なく膨らんでいく欲に流されるがまま、射精を続ける陰茎を彼女の脚に擦り付ける。
それでもまだ足りない。もっと、もっと、もっと。
気付けば自由になっているのをいいことに、みっともなく主の脚にしがみついていた。
感触を忘れまいとふくらはぎを抱きしめ揉みしだき、味も匂いも堪能せんと太ももにむしゃぶりつき嘗め回す。
その全てを、余すことなく彼女に曝け出している。そして、それを許可したのは紛れもなく彼女だということが、さらに興奮を掻き立てる。

「ふふ、たかが脚一本でこれ程興奮するなんて。平民の嗜好は随分と奇特なのね」

彼女の蔑む声に肉棒が震える。
もはや彼女の一挙一動すら興奮する要因にしかなっていない浅ましさに、三日月の様な笑みをさらに深くし主は嗤う。

「どうせ脚に夢中で妄想するのを忘れているのでしょう? ほら、さっさと居もしない私と存分にまぐわいなさい」

そうだ、許可されているのは脚だけではない。
匂いと柔らかさを堪能することは続けつつ、主との逢瀬を思い描く。
――草木も寝静まった夜、月の明かりに包まれながら、生まれたままの姿を晒す彼女と自分。
見つめ合い、接吻を交わし、舌を絡め合う。
痛いほどに張りつめた強直を、彼女の細く柔らかい掌が包み込む。
うっとりとした表情で彼女が肉棒をしごきあげるのを堪能しつつ、薄い茂みの下、蜜の滴る秘裂に手を伸ばす。
濡れそぼったそこを押し広げたり指を挿れ掻きまわしたりして弄ぶ。
不意に弱点に触れたらしく、いつもの凛とした声ではなく、可愛らしい嬌声を彼女が上げる。
そのことをからかうと、顔を真っ赤にした彼女がさらに激しく肉棒をしごきあげる。
堪らず精を吐き出したのを満足そうに見つめながら、ゆっくり彼女が押し倒してくる。
そして馬乗りになった彼女が淑やかに、されど大胆に強直を入り口にあてがい――。

「ふっ――、あ――っはっはっはっはっは! 随分と純な妄想じゃない、主の脚に縋り付く変態の分際で!!」

肉棒にことさら強い痛みと快楽を感じ、現実に引き戻される。
いつの間にか立ち上がった我が主が、直々に強直を踏みつけ靴裏と床とで激しくしごきあげていた。
既に大量の精液に塗れぐちょぐちょになっていた靴裏と絶妙な力加減によって、痛みだけではなく強烈な快楽がペニスへと送り込まれる。

「気付いていて? お前、また途中から全て声に出していたわよ!」

さらに肉棒をしごく速度が上がる。
余りにも不遜な自分の妄想を主に知られたという現実。
それが泣き出しそうなほどの羞恥と、それを上回る興奮と快楽を呼び起こす。
結果、既に何度目かわからない射精を、主の脚裏に行う。

「妄想を聞かれて、それで射精するなんて! 本当にどうしようもない変態ね、お前は!!」

罵りにどうしようもない興奮を覚えながら、謝罪の一つすら思い浮かばず再度彼女の脚にむしゃぶりつく。
ただただ浅ましいだけのその行為を跳ね除けることはせず、彼女はさらに褒美(ばつ)を与えてくれる。
もっと、もっともっと褒美(ばつ)を。そう考えた途端、体が勝手に動いていた。
許されている限界、すなわち脚の付け根。スカートの中に潜り込み、そこに舌を這わせる。
極めて薄手の黒のレース。透けて見える、夢にまで見た主の秘部。
みだらに濡れた、隠すでなく、むしろ淫靡に飾り立てるソレの感触を気付かないふりをしながら頬で楽しむ。
恐らく彼女は気付いているだろう。気付いていながら気付かない振りをして、さらに激しく脚で熱烈な快楽を与えてくれる。

「ほらっ、ほらっ、ほらっ! お前の不埒な夢と私の肢体、どちらがイイか答えなさい!!」

答えるまでもなく、貴女の肢体です――。返答代わりに、もはやどうなっても構わぬと秘裂に口付ける。
もはや用をなさない布をずらし、舌を彼女の膣内へと侵入させ、襞の一枚一枚をじっくりと舐る。
人の尊厳をかなぐり捨て、彼女の体を味わいたい欲望に突き動かされる。

「あっ、は――っ。言いつけを、守れない、なんて、犬以下、ね。全く!」

がっちりと自らの腰に回された腕を引き剥がさず、白い指で撫でさする彼女。
それを許可と受け取り、さらに彼女の膣内を蹂躙する。
とめどなく甘露が溢れる膣内を味わう様に舐めまわしていると、まるで舌がペニスになったような錯覚を覚える。
その性感と、呼吸をするのすら惜しいとむしゃぶりついている自分を主が受け入れてくれている、ただそれだけで精を放ってしまう。
さらに苛烈に精を絞り上げる彼女の脚の動きも相まって、壊れたポンプの様に射精し続ける。

「あっ、あんっ! あな、貴方が、味わえるっ、んっ! 唯一の、おォっ、女を! ほらっ、たんの、うっ、なさいっ! 私も、そろそろ――っ!」

そろそろ、何だ。絶頂が近いのか。自分の舌で彼女は達するのか。
無理やり主の秘部にしゃぶりつき、蹂躙し絶頂させる。
何とも言えぬ征服感と昏い満足感を覚えながらさ舌の動きを加速させ、逃さぬ様に両腕をさらにきつく絡める。
考えを察したのか、がくがくと快楽に震える脚を、これまで以上に酷使し搾精行為を行う彼女。
既に止まらない、だが今までのものより遥かに強い射精感がこみ上げてくる。

「はぁッ、あっ、あ、あ、あ、あ――――――――ッ!!」

不意に頭を押さえつけられ、さらに強く秘部に押し付けられる。
突っ込んでいる舌、それに絡みつく襞の感触で、彼女が絶頂に達したことが解った。
そしてそれは彼女だけではなく、自分もまた、爆発と形容できるほどの射精を、彼女の靴裏で炸裂させていた。


はぁ、はぁ、と、荒い息遣いだけが部屋に響く。
しばらくして、ようやく絶頂の余韻から下りてこられたのか、彼女が僕の頭をなでながらこう呟いた。

「――常々思っているのだけれど。貴方って、こう、少し倒錯的に過ぎるんじゃないかしら」

自覚はしています、ハイ。
しかし性癖というのは制御できないもの。彼女に徹底的に虐め抜かれたいという願望は、どうやっても抑えられない。
それに、そう言いつつ毎回付き合ってくれる彼女の付き合いの良さのせいで加速している、という側面も少なからずあると思う。

「ああ、もう、こんなに無駄撃ちして……。ちゃんと私の膣内に出す分は残してあるんでしょうね」

射精痕……というよりはもはや精液の池と形容した方がいいソレを見やり、彼女がぼやく。
だがしかしインキュバスの性欲を舐めないでほしい。この程度の量で枯れるなど有り得ない。
愛しい彼女のことを考えるだけで、即座にいきり勃ち準備完了となる頼もしい我が分身。
けれどそれを見つめる彼女の目が若干呆れているのはなんでだろうか。
そもそもここまで絶倫になったのは、間違いなく朝晩問わず彼女が求めてくるのが原因なわけで……。

「ちょっ、だって夫の性欲処理は妻の仕事な訳で……! それに大体貴方がいつも勃起させてるからヌかざるを得ないんじゃない!!」

そうは言うが、この間我慢が出来ないと仕事中にもかかわらず逆レイプをかましてきたのはどこのどなたでしたでしょうか。
それ以前に、勃起していないなら強制的に勃たせてやるとばかりに手コキやらフェラチオ、果ては素股を数え切れぬほど敢行した前科持ちが言っても、説得力というものがまるで無い。

……まあ、断らずそれに嬉々として付き合い、行為に及ぶ自分も自分なのだが。

痛い所を突かれたのか、あー、だのうー、だのうめき声を上げていた彼女が、意を決したように押し倒してくる。

「あーもう、いいから前戯は終わり! さっき出した以上の精液、子宮に注いでもらうから覚悟しなさい!」

望むところだ。こちらとしてもさっきので終わっていたら不完全燃焼もいいところだった。
さあばっちこい、熱い夜はまだ始まったばかりだ――。
16/10/27 13:04更新 / めきゃべつ。

■作者メッセージ
ヴァンパイアさんに逆レ騎乗位罵倒ックスされたい

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