読切小説
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年末の一刻(ひととき)
今日は12月31日。

冬休みが始まりクリスマスが過ぎ、もうこんな日付か。
この一年、ずいぶんと短かっ・・・・((ガラガラッ

「やっほー♪」

・・・・そうでもなかったか






「結ちゃーん!おはよっ♪」


俺は小鳥遊 結(たかなし ゆう)どこにでもいるふつーの高校生。


だが、インターホンも鳴らさずいきなり玄関を開けて
ずかずかと俺の家に入ってくる不届きな人間なんて俺の知り合いにはいない。

「とうっ!」

ぼふっ!!っと俺のベットにダイブしやがった。
痛ぇなこのやろう。耳引っ張るぞ。

「えへへー、結ちゃん寝起き可愛いー♪」

うるさいな……低血圧で今不機嫌なんだよ。あっち行ってろ。

「えぅ・・・結ちゃん私のこと嫌いなのぉ・・・?ぐすっ」

な・・・!?泣き落としには引っかからねーからな!

「ぐす・・・いいもん・・・このまま大声で泣いてやるもん・・・!」

脅してきやがった。
こいつ人様の迷惑になること選んで言ってるのか・・・?

「ごー、よん、さん、にぃ・・・」

だぁぁ!!いいから!
ここに居ていいから泣くな!カウントを止めろ!!

「・・・じゃぁ、好きって言って?」

はいはい・・・隙(だらけ)だよ!

「あっ!しまった!!」

俺は玄関に向けて全力ダッシュした。
この後にあいつが喚いても俺には関係ないと言い張れる。残念だったなぁ!!


・・・とは、上手くいく筈がなく。
玄関に手をかけようと扉は全く動かない。あら不思議、魔法かな?

「なーんてね、引っかかった?」

理由はわかる。こいつの魔力の結界。
俺は今、俺の家から出るにはこいつに従うほかないわけだ。

「なんでにげるのよー!逃げれないのわかってるんでしょう?」

せめて抵抗くらいはさせてくれ。
俺はなにもしないっていうのがキライなだけだよ。

「かわいくないー・・・」

悪かったな。で、今日は何をするんだ?

「取り敢えず、全裸になりなさい!」

意味がわからない。何が「取り敢えず」、だ。
あぁ、そういえばお前、稲荷だったっけ?

「そう、わかってるならさっさと脱ぐ!」

だが、やられっぱなしは趣味じゃない。
対お前用に作った俺の切り札見せてやる!!

「何を・・・・・っ!?そ、それは!!」

そうだ、俺が昨日の晩に作ったものだ!
今日はお前が来るだろうと思って残しておいた「油揚げ(きりふだ)」!!

「くっ・・・結ちゃん・・・まさか・・・!」

あぁそうだ。ぱくっ、と一口食べる。

「あぁぁっ!!」

ぱく、ぱくっ、と一口食べるごとに、

「あぁっ!ダメっ!!それ以上はぁ!」

うん・・・問題ないよな?
俺は油揚げを食べてるだけだもんな?

「はぁ・・・はぁっ・・・っ!!」

ちょ、何で息荒げてんだよ!

「だってぇ・・・結ちゃんが焦らすからぁ・・・」

意味わかんねぇよ!
油揚げ食ってるだけで「焦らす」ってなんだよ!?

「も、もう・・・限界ぃ!!」

欲に負けた狐が飛び掛ってきた。
この程度なら問題なくかわせる。

「あうっ!」

べしゃ、と床に頭から突っ込む。うわぁ痛そう・・・ま、関係ないが。

ほらほら、早く取らないと無くなっちまうぜ?

もう一口、ぱくっと口に咥えた瞬間。

「隙ありっ!」

急に目を見開いた稲荷が俺の両足を払った。
うわっ、と情けなく尻餅をつく。そこに稲荷が飛び乗った。

「けーせーぎゃくてん?」

ほい、なにふるふもりば?(おい、何するつもりだ?)
口に油揚げを咥えたままなので上手くしゃべれないが、

「ふふふ・・・期待してるの?」

成る程、間違って伝わったみたいだ。
取り敢えず退けろ。と言おうと口を開いた刹那。

「んちゅう♪」


開いた口にキスしてきやがった。ディープで。

いや、正確には俺が咥えていた油揚げを食べてるわけで、
俺の口内に残った油揚げの味も堪能して・・・されている。
あちらさまは全く気にしていない御様子だが、
俺としてはたまったものじゃない。

掴まれていた腕で必死に抵抗するが、
腐っても稲荷で妖怪。全くビクともしない。

「んちゅ・・・はむぅ♥」

口内が別の生き物に蹂躙されてるみたいだ・・・
いや実際に別の稲荷(いきもの)蹂躙されてるわけだが。


それからかれこれ5分ほど。


「ぷふぅー・・・おいしかったぁ♥」

や、やっと終わった・・・
このバカ狐!俺を窒息させて殺す気か!!

「痛い痛い痛いっ!尻尾引っ張らないでぇ!!」

次やったら隣山に捨てに行くからな!!

「ヤメテ!それだけはご堪忍を〜!!」

頭を抑えて逃げていく稲荷を見やって、
俺はバカ狐のせいで身に着けた早着替えをして玄関を出る。
そこで玄関の木に隠れていたあいつを見つけた。

「・・・・チラッ」

何してんだよ・・・?

「お、怒ってない・・・?捨てに行かない?」

んなことしねぇよ。次って言ったろ?ほら、さっさと行くぞ。
と言って、稲荷の横を通り過ぎる。

「え、どこに?」

きょとんとする稲荷に振り返りながら言ってやった。




今日は大晦日だぜ?明日の朝までデートに決まってるじゃんかよ?




それを聞いた稲荷はニコリと笑って言った。

「うん!結ちゃん、だぁいすき♪」
13/01/02 23:46更新 / 紅逢

■作者メッセージ
初投稿なのに二作目という(・ω・`)

生暖かい目で見読んで欲しいナ・・・

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