連載小説
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『人探し 【前編】』
「リン姉様・・・兄様は今・・・どこにいるのかな・・・?」
「どこだろうねぇ・・・。 兄さんのことだから、どこかで元気にしてるわよ。」
「そうかなぁ・・・」
「そうよ。 そんな気がするもの。」
「・・・・・・・・」
「もう・・・そんな心配そうな顔しないの! 私達の兄さんよ? そう簡単には土に還らないわよ!」
「・・・・・・うん」
「それに兄さん、きっと今頃順調に仲間を増やしてるわよ。」
「人間の仲間かな・・・?」
「魔物に決まってるでしょ? そうね・・・2人・・いや3人ぐらいかしら?」
「・・・・・・・・」
「毎日が乱交パーティよ、きっと! ああん、もう! 私も混ざりた〜い!!」

「兄様・・・どうかご無事で・・・」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・






ゾルアクアを出て少し経つ。
リザードマンのレビィとサイクロプスのエステルを引き連れ、俺は次の目的地を目指す。

『アルビアータ』。
これが俺達の目指す次の町だ。
しかし、この町へ向かうにあたり1つ問題が・・・。

『アヌビア砂漠』。
アルビアータはこの砂漠の中心に位置するらしい。
この砂漠を攻略しない限りは町に到着することはおろか、途中で行き倒れになることもあるとゆう。


砂漠の少し手前に『ホルン』とゆう小さな村があると聞き、とりあえずそこで情報を集めることになった。 
砂漠を案内することができる人物を捜さなくては。
途中で干からびるのはご免だからなぁ・・・。

とゆうか親父達・・・よくこんな険しい道を歩いて行けたもんだよ。
きっと砂漠なんて、目を瞑って進んでいったに違いない。

・・・・・・俺だって・・・親父の息子なんだ・・・! 出来ないわけがない!!
絶対に親父の通った道を辿ってみせる・・・!

どうして?って聞かれたら・・・・・・・・・困るな・・・。
もうホントなんとなく、のんびり旅がしたかったからかな。
あわよくば親父達の見た景色を、俺も見られたらイイなと思ったわけ。

こんな俺の旅に付いてくる奴がいるんだから・・・不思議だよなぁ・・・。






「・・・? あれが・・・ホルン・・・でしょうか?」
「え?どこ? ・・・・・・どこにも見えないけど・・・?」 
「まったく・・・貴様の目は節穴か? 目を見開き、良く見てみろ! 北東のおよそ10q先だ。」
「ん、どれどれぇ・・・・・・って! 見えるわけねぇだろ!! 10q先!? 人間の限界超えてるわい!!」

化け物かこいつら・・・。
まぁある意味化け物か、魔物なわけだし。

「まぁ私もボンヤリとしか見えないが。 しっかりと見えるのは、サイクロプスのエステルぐらいだろうな。」
「1つ目だけあって、やっぱり目は良いのかエステル?」
「・・・そうですね。 20q先までならなんとか・・・」
「あ、ああ・・そう・・・。」

俺のパーティ、強者揃いだな。 色んな意味で。

「まぁこのペースなら、日が昇りきる前に着けるだろ。 のんびり行きますか。」
「・・・そうですね。 急いで旅をする理由もありませんし・・・」

素直に同意してくれるエステル。
・・・良い子だな、ホント。

一方レビィは
「・・・・・・・・・」
なにやら考え込んでいる様子。 そして、

「・・・おい貴様。 私ともう一度勝負をしろ。」
「「・・・え?」」

エステルと声が重なった。

「貴様のその『無刀剣』とやらが一体どれ程のものか、私が試してやろう。」
「・・・いきなりどうしたんだよ?」
「サイクロプスに伝わる最強の剣・・・・・・本当に最強なのか試してやろうと言っているのだ。」

そしてエステルを横目に、
「私が勝てばその剣は下手物・・・とゆうことになる。」
「・・・・・・!」

エステルが若干不機嫌そうな顔をする。
これはエステルの・・・いや、サイクロプス全体の沽券に関わる。
負けられん・・・!!

「その勝負・・・受けた!」
「勇ましいな・・・。 さすが私のおっ・・・」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

雄叫びをあげてレビィの言葉を遮る。

「お、驚くではないか! 何なのだ一体・・・。」
「ああいや・・・戦闘前に気合いを入れておこうかと・・・。」

エステルが聞いているのに、『夫』って単語はタブーだろ・・・。
ああ・・・危なかった・・・。

「と、とにかく・・・決闘はどちらかが参ったと言うか、動けなくなるまで行う。 これで良いよな、レビィ?」
「問題ない。 では・・・早速始めよう。」
「エステルは離れてろ。 それと、勝敗をきっちりと見定めてくれ。」
「・・・はい」

ワンテンポ置いて、
「・・・きっと勝てます・・・。 どうか小生を・・・その武器を信じてください・・・」

・・・こりゃ・・・ますます負けらんねぇな・・・。


通算2度目の勝負。
現在0勝1敗。(まぁあの時は色々と『ハンデ』があったおかげで負けはしたが・・・)
俺にはある意味後が無いんだ。
エステルのためにも・・・・・男としても・・・。

今回は勝つ! 必ず・・・! 


と思った良いものの実はこの無刀剣、実戦で使うのは今が初めてなんだなこれが・・・。
ゾルアクアを出た後も、敵を倒していたのはレビィとエステルが6:4の割合。
俺がこの剣を使う間も無く戦闘が終わっちまうんだから・・・まぁ仕方ないよな・・・。
てゆうかエステル・・・意外と強いんだな、サイクロプスだけあって。
武器は鍛冶場のオッサンが使ってるような・・・いや、それ以上の大型の鉄ハンマー。
あぁ・・・俺の経験値が2人に取られていく・・・。


それはさておき・・・剣の使い方は知ってる。
エステル曰く、俺の感情の高ぶりが剣に伝わり刃を具現化させる・・・とのこと。
実際まだ見たことはないけど。
要するに『戦いを意識』すればイイんだ。
・・・よし!



一定距離を空け、互いに剣を構え睨み合う。 ちなみに俺の剣は未だ柄のまま。
(大剣はエステルに預けてある。 捨てられないよ、あの武器は)

そして・・・
「・・・・・・いくぞっ!!」
レビィが先に仕掛けてきた。

「・・・・・・!」

身構える俺。 まだ剣は柄のまま。

「フンっ!」

大きく飛び上がり、俺に渾身の兜割りを見舞おうとしてくる。
まだ剣は柄のまま・・・。

・・・焦るな、俺。
集中しろ・・・。

「はああああああ!!」

レビィが上空から俺に近づいてくる。
まだだ・・・。 十分に引き付けろ・・・。
まだ剣は柄のまま。

「もらったああああ!!!」

その距離およそ3m。
まだ剣は柄の・・・・・・って早くしろ!!
イイ加減武器として機能しねぇと、間違いなく死ぬぞ俺!!
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早くはや〜〜〜〜〜〜く!!!

てか死ぬ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ギイィィィィィン!

・・・・・・・え!?
寸でのところで兜割りを防ぐ俺の無刀剣。

その刃はまるで・・・『稲妻』。

「!? ・・・くっ!」

たまらず後ろへ飛び退くレビィ。
俺の剣はバチバチと、敵を威嚇するように音をたてる。

・・・これが・・・無刀剣・・・。
サイクロプスに伝わる最強の剣・・・。
エステルを信じて良かった・・・。

それと・・・もう負ける気がしない!

「やってくれたなレビィ! 次は俺の番だ!!」

と、お決まりの台詞を格好良く披露する俺1人。

「・・・覚悟しろ!!」


そう言い放ち地面を強く蹴り、レビィに高速で近づく・・・が・・・。

「・・・もういい・・参った・・・。 私の・・負けだ・・・。」

・・・・・・あれれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・。






気を取り直し、再びホルンへ向かう俺一行。

「・・・すまなかったな、エステル・・・。 私は貴殿を侮辱した・・・。 このような宝剣を下手物などと・・・・・許してほしい・・・。」

誠に申し訳なさそうに謝罪し頭を下げるトカゲ女。

「・・・い、いえ・・・。 小生は気にしていませんから・・・ど、どうか頭を上げてください・・・」

やっぱり優しい1つ目さん。

「・・・本当にすまなかった・・・。」
「・・・もういいんですよ、レビィさん・・・。 それに・・・2人共ケガが無くて・・・本当に良かったです・・・」

ぜ、善人の鑑!?
なんて器の大きいお人なんだ、エステル!

「・・・そう言ってくれると助かる・・・。」

これで一応和解かな・・・?

「仲直りできたところで聞きたいんだけどさぁ、レビィ。 お前どうして降参したんだよ? まだ始まったばっかで、別に重傷負ったってわけでもないだろ?」
「・・・ある意味重傷だったがな・・・。」
「? ある意味重傷って・・・どゆことよ?」
「剣と剣がぶつかり合った時、私の身体を強い痺れが襲った。 なんとか距離をとったが、私の身体は既に言う事を聞かなかったのだ・・・。」

麻痺してたってことか。

「てことはこの剣、切った相手を麻痺らせる事ができるのか? ・・・反則だな・・・。」
「強いに越したことはないだろう。 エステルに感謝するんだな。」
「お前に言われんでも感謝してるわい!!」
「・・・喜んでくれて・・・嬉しいです・・・」

笑顔が・・・実にカワイイ・・・。

「ああ・・・ホント感謝してる。 ありがとう、エステル!」
「・・・い、いえ・・・/// それと・・・先程は稲妻型でしたが・・・この他にも様々な形態が存在します・・・」
「まだあるのかよ!?」
「宝剣に恥じぬ性能だ・・・。」

驚く俺とトカゲ。

さっきの戦闘でなぜ稲妻型の剣に具現化したのか・・・。
恐らく、俺はレビィの動きをどうにかして止めたい・・・と思ったからだろうな。
え? 死ぬ〜〜!!っとか言って慌ててただけだろって?
・・・・・・うるさいな!
戦闘前にチラッとそう思ったんだよ!

っと、あれがホルンか。
今度こそ俺でも見える距離だ。

着いたら物資補給と、砂漠を安全に案内してくれる優秀な人材を探さないと・・・。






え? 前編とかいらないだろって?

・・・・・・・・・・・・・・・大人の事情だよ!!!



後編へ・・・











09/11/24 19:09更新 / HERO
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■作者メッセージ
2,5作目です。
自分でも前後分ける必要無かったんじゃ・・・と思いましたが・・・。
・・・まぁなんとなくです、はい・・・。

後編もすぐ制作に取りかかるつもりです。

感想・改善点等ありましたら、遠慮なくご意見お願いします。
非常に喜びます。

では・・・・・・・・・。

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