連載小説
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“ぼく”とセラピーキキーモラ
   月  日
 きょうはだれもいないなあみんなどこにいったんだろう 
 おかあさんもおとうさんもいないや
 おなかがすいたからびすけっとをたべたちょっとへんなにおいがしたけどおいしかった
 だれもいないからたいくつでしかたないはしりまわろうとしてもせまいや
 のどがかわいたからおみずをのもう
 あたまがつんとするあみずをみつけたなんだかくらくらするけどしあわせ
 おやすみみんなかえってくるかな


   月  日
 きょうはみんないないや
 どこにいったんだろう
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   月  日
 きょうはびっくりした
 ずっとうごかなかったどあがごみをおしながらあいたそしたらなんだかしらないおんなのひとがいた
 でもぼくはそのひとがすごくいやだった
 なんでかわかんないけどとにかくいやだったわんわんのおみみともこもこがついていた
 ぼくがかくれていいるとかってにはいってきたぼくはおこったここはぼくのおうちだかってにはいってくるやつはどろぼーだ
 ぼくはかべにあったおっきなけんをもってとびかかったでもおさらをふんでころんでしまった 
 おひざがすりむけてとってもいたかったぼくはないちゃった
 おんなのひとはびっくりしたみたいだったけどおひざをみるとおみずをかけてきたしみていたかった
 ばんそうこうをはりながらそのひとはないていたどうしてなくんだろうふしぎだいたいのはぼくなのに
 そのひとはなきながらだきついてきたいやだったからはたこうとしたけどあったかくてねむくなってきてしまった
 なんでだろうもうあんまりいたくないのになみだがとまらないや


   月  日
 きょうはだれかいた
 だれだろうおんなのひとだ
 わんわんのおみみともこもこがあっておかしいひとだなっておもった
 なんだかすごくまぶしいまどのおひさまがうるさいここはぼくのおへやだっけなんだかちがうおうちにいるみたいだ
 なんだかすごくいいにおいがしたよだれがすごくでた
 なんだろうっておもったらしろいけむりがもわもわしてるおみずがおさらにあったぱんもあった
 おなかがなったおなかのおくがきゅるきゅるしていたいぼくはすぐにおみずをのんだあったかかった
 ふくにこぼれちゃったけどぱんたべるとてもふわっとしていておいしかったぼくはたくさんたべた
 びしょびしょになったふくをおんなのひとがふいてくれたこのひとはきらいだけどすごくえがおだった
 でもどうしておめめがまっかなんだろう
 たべたらなんだかねむくなってしまった



   月  日
 きょうはだれかいた
 あなたはだれきいた
 せりー
 せりー
 おぼえた
 かなしそうなかおのせりー


  ご月 さん日
 きょうもだれかいた
 だれきいたせりー
 ままだきっとままだ
 あったかくてふわふわで
 まままま
 なかないでままいやなことあったの


   月  日
 せりー
 せりーがいた
 せりーのごはんおいしい
 おきてせりーといったらしゃがんでないちゃった
 どうしてせりーなかないで
 ふわふわはちょっといやだけど


  ご月ろく日
 せりーがおほんをもってきた
 いっしょによんだこえにだしてっていわれたからよんだ
 むずかしいくないですかってきかれたからううんっていった
 なんだかせりーすごくほっとしていたきがする


  ご月はち日
 おきたらせりーがいない
 どこにいるのさがしたらなんだかきたないおへやにいた
 ぼくがはいるとびっくりしてあわてていたなんだかごほんをよんでたみたい
 ちょっとこわいかおをしたせりーがおぼえてないですかってごほんをみせてきた
 よめない
 よめないよめないよめないよめない
 なんだかすごくいやなきもちになったからべっどにもどったすぐにねよう
 でもあのもじはぼくのにすごくにていた


 ろく月いち日
 せりー
 せりー
 いっしょにおうたをうたうすごくたのしいいっしょうけんめいがんばるとせりーがわらってくれるだからがんばってうたった
 もこもこをみるとむねがもやっとしたきのせいかな


   月  日







   月  日
 ゆめ
 すごくこわいゆめ
 いやだいやだ
 やだやだやだ
 せりー
 せりー
 


  7月 2日
 きょうはおこめをたべた。じぱんぐ、っていうところのぱんみたい。
 でもぼくはせりーのぱんがすきだなっていったらこえをあげてないちゃった。ぼく、せりーにいやなこといっちゃったのかな。
 ごめんね、ごめんね。
 なんかいもいってあたまをなでた。すればするほどせりーはくびをよこにふってないていた。
 

  7月 7日
 きょうはすごくたいせつなひだってしんぶんのからすさんがいってた。
 たいせつなひ。たいせつなひにはぷれぜんとをするっておほんにかいてあった。
 でもぼくはなにももってない。
 しかたないからさがした。そしたらほうせきのくびかざりをみつけた。
 とうめいなはこにはいっていたからせりーにとってもらった。あげる、といったらとんでもないってもらってくれなかった。
 ぼくのたいせつなもの、っていってたけどぼくはおぼえてない。おぼえてないならそんなにたいせつじゃなかったんだろう。なんどもあげる、っていったらやっともらってくれた。
 わんわんのおみみからくびにつけたときにはめまいがしたけど、だきついてきたせりーがあったかくてすぐになくなった。いっしょう、とかちかう、とかいってたけど、なんのことだろう。



  7月12日
 いつもいっしょにはいっていたおふろ。でもせりーのことをちゃんとみれない。
 なんだろう、せりーをみるとかおがかあってなって、はずかしくなる。
 おまたもなんだかむずむずした。
 きょうのよる、せりーがおへやにきた。
 ぱじゃまをきてたけど、なんだかいつものとはちがっていた。
 いっしょにねていいですか、ってきいてきたから、いいよ、ってこたえた。
 ちょっとはずかしかったけど。
 せりーがせなかからだきついてきた。ふわふわしてる。
 おまたがむずむずして、ちょっといたい。
 せりーがぼくのずぼんをおろした。
 そしたら、ぼくのおちんちんをたべちゃった。ぼうちょこをたべるみたいに、おくちでぐにゅぐにゅされた。
 おちんちんがあつい。おくちがぐにゅぐにゅして、ぺろぺろされたらあつくなって、おもらししてしまった。
 めがちかしかして、いきがはあはあになった。
 ぼくのしろいおしっこをのんだせりーがほほえんだ。くちびるをしたでなぞりながら。
 ぼくのおちんちんがまたあつくなった。



  7月13日
 セリーがぼくにまたがった。
 ごめんなさい、って。もうがまんできませんっていって、ぼくのおちんちんをあそこでのみこんじゃった。
 セリーのあそこはあったかくて、ぐじょぐじょしていて。
 ひだひだがおちんちんのうらをペロペロして、ぼくはすぐにおもらしした。
 だしているあいだおちんちんのさきっぽをちゅーちゅーされて、そのしたはぐにゅぐにゅしててしろいおしっこがとまらなかった。とってもきもちがいい。
 そういったら、セリーがかおをまっかにしながらこしをたくさんふった。ひだひだがとってもきもちよくってまただした。うれしそうにセリーはまたこしをふった。
 


  7月15日
 ひどく体が重い。何をするんでも倦怠感がつきまとった。
 朝起きたら知らない女が笑顔で「おはようございます」と言ってきた。その笑顔を見ると不思議と嬉しくなったが、しかし俺は彼女を知らない。名前を聞いたら、ひどく驚いた様子で、しぼりだすように「セリエス」とだけ言って去ってしまった。滴の溜まった目がひどく胸を締め付けた。
 部屋にも違和感があった。やたらと綺麗で整頓されている。それでいて必需品や大切なものはちゃんと分かるところに置いてある。おかしい、俺は散らかった部屋で雑魚寝するタイプだ。磨かれた自室の床など何年ぶりだろう。
 あの女がやってくれたのだろうか。
 ふと、日記帳らしきものが目についた。習慣として昔からつけているが、覚えがない日記帳だ。
 軽く読んだが、これはひどい。子供がお遊びで書いたような汚い字で、ろくに句読点すらつけていない。だが、字は俺のもの。
 不可解に思い、ちゃんと読んでみる。
 そこには何日、いや何ヶ月にもわたり同じ出だしで類似の内容が書かれていた。
 しかし、「せりー」という女性が現れたあたりから変化があった。字は徐々に綺麗になり、日付もつき、数字を用い、読みやすくなっている。
 これを書いた者は、「せりー」なる女性と母親のように仲睦まじく過ごしたらしい。いつもなら微笑ましく思いもするだろうが、何故か懐かしく感じた。
 さきほどから頭に霧がかかったようにもやもやする。俺は物置に行くと、ねじ込んでいたはずの(綺麗に入れられていた)日記を手に取る。
 ページをめくるたびに、忘れていた思い出が克明に蘇る。
 目で文章を追う度に頭が痛くなり、胃がきりきりする。読み終える頃には朦朧として、その場で倒れてしまった。
 しばらくして女が入ってきて、悲鳴を上げながら起き上げてくれた。
 うめく俺を抱き締め、何事かを言いながらずっと居てくれた。
 彼女の腕の中はとても落ち着いて、痛みもどこかに消えていくようだった。



  7月16日
 全て思い出した。



  9月20日
 セリエルがネックレスを俺に渡してきた。「お返しします。記憶が戻ったのならご主人様の物です」と言われ、受け取った。
 ああ、これか。
 婚約の証に。好きになった人に渡すつもりだった。
 ガーネットの宝石にアイビーの葉が埋め込まれた洒落たもので、高額だった。買うか買うまいかを散々悩んで結局買ったことを日記に綴った覚えがある。
 いつか見初めた人に渡そう、と女々しいことも書いた気がする。
 俺は渡されたネックレスをセリエスの首にかけた。ひんやりとした鎖が当たってぴくっと動く犬耳がなんとも愛おしい。
 呆然とした様子のセリエスに、「確か俺の日記を読んだんだよな。改めて渡そう、それはセリエスの物だよ」と告げると、目を潤ませたかと思うと急に口づけしてきた。
 しばらくしてやっと口を話すと首に腕を回して飛び跳ねる。「一生、一生お仕えすると誓います! ご主人様、ご主人様!」あんなにはしゃぐセリエスは初めてかもしれない。俺が過去もセリエスのことも思い出したあの日を上回りかねない浮かれっぷりだ。
 なし崩しに押し倒され、辛抱たまらないといった様子で挿入した。
 相変わらず俺を優しく包み込んでくれた。
 今日は眠らせてくれそうにもない。俺の精液を受け止めて歓喜したように鳴く彼女を見て、それもいいかと励んだ。



 11月21日
 ふと、少し前を思い出してセリーと呼んだら押し倒されてそのまま朝日を迎えたのは記憶に新しい、というか昨日のことだ。
 いつの間にか届いていた手紙を受け取る。配達の黒ハーピー曰く、中継地に長い期間強力な魔物がいたらしく、それで配達が大幅に遅れていたらしい。あまりにも必死に頭を下げられてたので怪訝にすら思ったが、差出人を見て納得した。
 俺のかつての仲間だ。
 今でも思い出す。
 俺は学生学者として旅の一行に混ざり、各地を冒険していた。研究のための同行で、お荷物のようなものだったが皆は良くしてくれてすぐに打ち解けた。座学と実際のギャップに打ちのめされたりもしたが、学んだ知識が皆の役に立った時の喜びはそれ以上だった。
 俺たちはもはや家族のような絆に結ばれていたが、悲劇は訪れた。
 ふらっと立ち寄った場所で魔王軍の混成部隊に遭遇し、キャラバンは一瞬で壊滅に陥った。
 伝説に聞くワームの如く巨体が屈強な斧使いを一呑みにし、魔花の魔香に惑わされ、複数の魔獣の特徴を併せ持つキメラになぎ倒されていく。悪夢としか言えない光景が目に焼き付き、時間を稼いでくれた仲間を置き去りにして俺は命からがら逃げ延びた。
 もしもの時のための集合場所である前の街の宿屋で何日も待ち続け、魔王軍が去ったという噂の後駆けつけた後には、仲間の剣だけが虚しく地面に刺さっていた。
 捜索を続けようと躍起になろうとも打つ手がなくなり故郷に帰った後も、俺は仲間を見殺しにしたと自分を責め続け、ついには酒に溺れて自我さえ手放した。
 ちなみに、偶然町の宿屋で従業員に扮して働いていたとあるキキーモラが俺の噂を非常に断片的に耳に挟み、「お世話が必要なひとがいる」と解釈して乗り込んできた、というのが今回の経緯らしい。
 ともかく、心優しい彼女に触れた今なら仲間達は死んでなどおらず、また別の幸せな日々を送っていると分かる。封を解けば幸福に満ち溢れた生活が文字として綴られていた。
 ほっとすると同時にやるせないようなもっと早く知らせてくれればと憤るような複雑な心境だが、ひとまず安心して済ませることにした。
 返事を書くためにペンを探す。場所を声で尋ねれば愛おしい返事が返ってくる。
 そのうち職でも見つけなきゃな、と呟きながら、今日はペンを置くとしよう。
14/11/11 23:20更新 / たたれっと
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■作者メッセージ
現実から逃げた人をキキーモラが徐々に癒していく、そんな感じで。
図鑑世界でも屈指の包容力を持つキキーモラさんならこんなのもありかなーと見切り発車した次第。
でもあれですね、バカで明るいノリを目指してるはずなのになんでどこかしら暗くなるんでしようか。タイトル詐欺じゃなかろうか。
ともあれ今回も大分文体で遊んでおります。そんな感じで。

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