連載小説
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酒とアタシと男と娼館

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出会いはアタシの気まぐれから始まった。

酒をかっくらって気が大きくなっていたところに見えたピンクの看板
『外周娼館ニュクス イイ娘います 魔物娘も歓迎 男娼各種 勢ぞろい』
どうやら『お泊り型』の娼館らしい。値段設定も悪くない。
酒の火照りが別のものに変わった頃、アタシは娼館ニュクスの前にいた。

交易馬車の護衛についてから寝る事と喰う事には事欠かなかったし
立ち寄った町で一夜の逢瀬を楽しんだ事も数え切れない。
そんな一夜が増えるだけ。この時は そう思っていたんだ。

目の前に下着姿の男が一列横隊を組んでいる。
揺り籠から墓場まで・・・と言うと語弊があるが世代も様々だ。
そんな男供が緊張した面持ちでこちらの様子をうかがっている。
・・・ミノタウロスであるアタシの容姿は相手に無用の圧力を与えがちで
初対面で笑いかける事ができる人間は一人としていなかった。
目の前の男供の反応は大方見慣れたものだった
冷や汗かいてるヤツ、震えすぎて歯が鳴ってるヤツ、聖句を唱えるヤツ

そんな中で 一人だけ 微笑んでいた

身長の違いで起伏に富んだ頭の列が一際低くなったところに笑顔があった。
若葉を映しこんだ泉のような瞳が眠そうに潤み
控えめな唇が安心しきったように緩んで
それらを輝く麦穂のような金髪が慈しむように包んでいた。

我知らず、その男の子の前に歩み出ていた。
「ちょっと いいかい?」
「なんでしょう?」
小鳥の鳴き声じみた高く澄んだ声を聞いたアタシは
ひざまずいて男の子を抱きしめた。

しばしの沈黙の後、アタシは男の子を抱き上げて言い放った。
「こいつに決めた。部屋はどこだ?」
支配人らしき男が若干驚いた表情を浮かべた後、部屋まで案内してくれた。
どうやらアタシが選んだこの子は売れっ子らしい。
他の従業員も丁寧に扱っているように見える。
支配人は部屋の前まで同行した後、一礼して去っていった。

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部屋の中は生活観に溢れている。飲みかけの紅茶が残るコップ。汚れた皿。
乱雑に畳まれた新聞。この子はここで暮らしているのだろうか。
子供用の机や椅子が並ぶ中、キングサイズのベッドだけが異彩を放つ。
「あの・・・」
無遠慮に眺めていたからだろうか、恥ずかしそうに男の子が話しかけてきた。
「あぁ 悪い。『それ専用』の部屋だと思ってたから つい ね」
男の子は今度こそ耳まで真っ赤になってうつむいてしまった。
密室で二人っきりになったというのに男の子は全く私を恐れていない。
それがなにやらこそばゆくなって男の子を抱き上げて一緒にベッドに座った。
「アタシの名はガロア。今夜はヨロシクな」
「・・・ネモです。素敵な夜になるよう、ご奉仕します」
お互いに名乗りを済ませた後、軽く口付けを交わしつつネモを抱き寄せる。

「先程も そうでしたね」
アタシのなすがままになっているネモが不意に呟いた。
「どうして 指名の前に抱きしめたのですか?」
不思議そうなネモに見つめられると、なにやら頬が熱くなってきた。
・・・照れているのか?アタシは・・・
「抱き心地が 知りたかったのさ」
ネモは首を傾げたままだ。先程の言葉だけでは通じないらしい。
「みんな意外そうな顔をするが、ミノタウロスは眠るのが大好きなんだ」
ネモの流れるような金髪を自分の太い指で梳りながら告げる。
「散々ヤったあとに、抱き心地の悪い男と眠りたくないのさ」
耳元で囁いた後、首筋を唇で舐りつつ髪の匂いを嗅ぐ。

スケスケの貫頭衣ごしに見える桃色の乳首を布地ごと口に含むと
ネモはアタシの舌の動きに面白いほど反応して快感に震えながら
ロクに手入れをしていないアタシの髪を優しく撫でる。
不意に芽生えた安らかな気持ちに戸惑いを覚えたアタシは
ネモの手を取り自慢の胸に誘導する。

「・・・やわらかいです」
「だろ?ミノタウロスだからって筋肉だけじゃないのさ」
なにやら感動した様子のネモは すでにアタシの胸に夢中だ。
重さを確認するように上下にタプタプさせたかと思うと
全体を掴んで控えめに歪ませながら親指で乳輪をなぞりはじめた。
乳首に届きそうで届かない・・・焦らし系の業師といったところか
容姿のせいで忘れかけていたが、この子も男娼なんだよな・・・

「もっと乱暴に扱ってもいいぞ。その方が燃える」
尻尾の先でネモの右腕を叩きながら告げると少し考えた後
揉み解すような動きを加えて来た。それでも乳首はお預け状態。
「あのさ・・・ひっ 〜〜〜っ!」
もう一度声をかけようとした瞬間、乳首がネモの口の中に収まっていた。
口に含んだ刹那 舌で一周した挙句、挟んだ唇でこねられる。
焦れて敏感になっていた乳首からの刺激にアタシは悶絶してしまった。

気持ちいいことは気持ちよかったが、ちょっとイラっときたので
背骨をなぞるように下ろした手を そのままパンツに突っ込んだ。
「はヒっ!」
お仕置きとばかりに菊門を撫でると指の先がスルっと入ってしまった。
・・・どうやらこの子は男の客も取るらしい。
尻を開発された男は初めてだったが、どうにも嗜虐的な気分になり
潜り込んだ指の腹で腸の襞を撫で付けると面白いように反応する。
「ぁはっ んむ ぅ〜 ぃあ!」
胸への愛撫も忘れてネモはアタシの腕の中で狂ったように跳ね回る。
ネモを支えていた腕をパンツの前から入れて挟み撃ちしようとして

固 ま っ た 。

そこにはネモのあどけない顔つきからは考えられない大砲が
パンツをはみ出して ヘソを飛び越えて アタシの手に触れていた。
正直に言おう 前代未聞 前人未踏 ナンバーワンです。byアタ史
あんな感情は後にも先にもあの時だけだから確かめようが無いが
その時のアタシは『ビビった』のかもしれない。

「あの・・・」
ネモが困ったような顔をして問いかける。涙目で すこぶるセクシーだ。
しかし 極上の表情を堪能する暇も無く、アタシの頭は沸騰した。
いきなり湧き出した未経験の感情を恥と感じたプライドが
意味不明の怒りを量産して ぶつけどころを探して体を駆け巡り
時の流れを思い出した右手と左手が、同時に前後の急所を摩擦した。
「ぃ ひぅ〜〜っ!」
断末魔の声を上げて放出したネモの精液が密着していたアタシに着弾する。
大半が腕と胸を汚したが勢い余った分が鼻の頭や髪についていた。
並の男の3倍ほどの液の量に面食らいながらも腕についたそれをすする。
半ばゼリー状のそれは口中と喉に絡み、その味と匂いが長いこと残っていた。

――――――――――――――

不意に恍惚の表情で喘いでいたネモがノロノロと身を起こす。
「きれいにしますから、動かないで・・・」
すがりつくように私の体を掴み顔や髪の精液を自らの舌で拭う。
胸を覆っていた精液を掌で拭い、口に運ぼうとしたので横からかっさらう。
「アタシにもおくれ。さっきすすったのじゃ足りないよ」
と一声かけて音を立てて精を飲み込む。か細い指への愛撫も忘れない。
吐息とともに揺れる肉棒は全く衰えておらずヘソの上で暴れている。
手の平を舐め尽くしたので、肉棒から垂れる精液の残滓を頂く事にする。

「ん・・・む ぅん ぬ・・ちゅっ・・・」
「あぁ ガロアさん うご かないで って 言っ た のに・・・」
なんかほざいてたが無視して舌を這わせながら、喘ぐ様子を観賞していた。
アタシが楽しんでいるのに気付くとネモはアタシの体に手を伸ばし
今度は最初から乳首を指でこねながら。太ももの内側に指を這わせる。
アタシのそこは 既に濡れていた。
「ガロアさん・・・」
「んちゅっ ふぅ・・・ あぁ もう準備はできてる」

アタシの体じゃ潰してしまいそうだったから、正常位で繋がる事にした。
とりあえずベッドに寝転がり、両足を開いて股間を晒す。
騎乗位か座位しかしたことが無いので勝手がわからず困っていると
ネモの華奢な体がゆっくりと覆いかぶさり、とろけた視線を向けてきた。
「ガロアさんはズルイです。カッコイイのに かわいいなんて・・・」

カワイイナンテ?

その言葉の意味を一瞬の間を置いて理解した時、再び頭が沸騰した。
男の世辞で『キレイ』とか『美しい』は多々あったが
『かわいい』と言われたのは生まれて初めてのことだった。
その時のアタシの頭は『なんで?』『どうして?』と言った類の言葉で
埋め尽くされていて、ネモの動向を気にする余裕すらなかった。

「んくっ!」 「ひっ! ぃ ぁぁぁぁあああっ!」
気がついたときには亀頭が入り口にめり込んでいて あっという間に
アタシの奥まで届いていた。それでも竿は3分の1ほど残っている。
「ん しょ」 「くっ ぅン あぁっ」
掛け声とともに根元まで挿入されて降りていた子宮が元の位置に戻った。
今まで経験したことのない圧迫感のせいで口を開けているのに息ができない。
「全部・・・入りました」 「ぁ・・っ・・・ぅ・・・」

ネモはすぐに動かなかった。アタシの様子を見て手加減したのだろう。
実際アタシが呼吸を取り戻して声が出るようになるまで数分必要だった。
「ネモ  待た せたね もう 大丈 夫・・・」
「・・・ガロアさんの顔を見ていたら動くの忘れてました」
「・・・・・」
返事ができないでいるとネモがゆっくりと腰を動かしてきた。
びっちり隙間無く触れ合っている場所が ゆっくりと確実に擦れ合う。
「っは くっ うぅ」 「ぃひ くぅん ぁ やぁ」
肉棒が少しでも動くと背中が勝手に反り返ってベッドの上で暴れてしまう。
ネロの方も噛み締めた歯が剥きだしになり口の端からよだれが垂れている。
お互いに 余裕なんか全く無い。いつ果ててもおかしくなかった。
「ネ モ 膣内で いい からな・・・」
「!? は い・・・」
途端にネモが腰のスピードを上げてアタシの腰を強く掴んでくる。
アタシはやっぱり正常位のコツが掴めなくて成すがままになっていた。

「あぁ ガロ ア さん!」「ネモぉ!」
お互いに背筋をそらして同時に果てた。
先程よりも大量の精液が膣内を満たしていく感覚に酔いしれていると
体の力を抜いたネモの頭が ゆっくりと私の胸に着地した。
本当はキスの一つもしたいのだが身長差のせいで届かず。
かといって肉棒を抜くのも嫌だったのでネモの髪を撫でる事にした。
「・・・不思議ですね」 「・・・なにが?」
お互いに息が整った頃、ネモが独り言のように呟いた。
「さっきまでお腹の肉がカチカチだったのに 今ではとても柔らかい」
「へへっ 良質の筋肉は脱力すると信じられないくらい柔らかいのさ」
「なんだか 不思議で 気持ちいいです。」
スベスベの手でアタシの腹を撫でながらネモは眠そうに目をこすりはじめた。
アタシも既に満足して眠くなってきていたから、肌掛けを引き寄せて
ネモと自分が納まるように潜り込む。
「ネモのおかげで良い夢が見れそうだよ」
そう言って頬を撫でるとネモは嬉しそうに笑ってくれた。

「また・・・来てもいいかい?」
翌朝目が覚めて1回戦済ませた後、アタシはネモに聞いてみた。
その言葉を聞いたネモは花が咲くように微笑むと机の引き出しを開いた。
中から取り出した金属製のカードをアタシに差し出してくる。
黒光りする表面に白銀色で『ネモ』の魔法文字が刻印されている。
「VIPカードです。僕の指名に限り毎回50%の値引きがあります」
なんだか とんでもなく便利なものを貰って呆けていると
「あの・・・ガロアさん?」
ネモが不安そうに見つめてくる。『迷惑でしたか?』と顔に書いてある。
その顔を、自慢の胸で挟み込んだ。
「むぶぅ」
「おかげさんで『街』に来た時に必ず寄れるよ。ありがとう」
胸から這い出したネモが見せた満面の笑みを胸に
アタシは娼館を後にした。

このときにはすでに 惚れちまってたんだが
その事に気付くには 結構な時間がかかったんだ
10/06/23 03:30更新 / Junk-Kids
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