連載小説
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Living loving maid
 魔物娘達による総合アミューズメント施設「Dreams」、俺は今日ここで、とある格闘ゲームの大会が開かれると聞いてやってきた。普段は家でネット対戦ばかりやってきたので、たまにはこうやって店舗で遊ぼうじゃないかと友人に誘われたためだ。まぁ俺はエントリーしなかったのだが。
「しかしあいつ、こんなに強かったんだなぁ」
 ランクが離れたせいか最近対戦することがなくなったため、どれくらい強くなったのかと友人を眺めていると、もうトーナメント準決勝というのにまだ席に座り続けている。俺は友人側の席に居るため向かい側の相手の表情は伺えないが、体力ゲージに関しては友人が押している。大画面の3D格闘ならではの迫力がそこにはあった。
「あ、入った」
 俺が呟く間もなく、無慈悲な無敵技が相手にクリーンヒットし、場内が一気に沸き立った。
「決めたァァァァ!なんと初参戦の南雲選手、マリー選手を沈めて決勝戦にコマを進めたァ!」
 共に席を離れて向かい合い、握手を交わす。凄まじい熱気と緊張感からか、本人たちは汗だくだった。相手が若い女性であったことに驚いたが、怪しく光る赤い瞳と腰から垂らされる尻尾で察した。サキュバス辺りだろうか、手を離すと筐体の近くに置いていたカバンを持って客席へと下がる。
「お前ってこんなに強くなってたんか、どんなところで揉まれてきたんだ?」
「ま、全国ランカーってほどじゃないけど、それなりの上位クラスかなぁ」
「すげぇな、そんなところで勝負になってんのが……」
 こいつの戦法はシンプルといえばシンプルだ。守るために攻め、攻めるために一撃を守る。いわばカウンターからのラッシュコンボを確実に決めていくタイプ。それゆえ2Dではあまり芽が出ないが、3Dなら今回のようにガンガン戦えるのだとか。
「ほら、ラッシュ中にゲージ使って逃げるってのができないじゃん?暴れで攻めても押せるときは押せるけど、上位陣にそれは通じないからねぇ」
「お、おぉう」
「コンボ中に逃げられないようにしなきゃいけないから大変だよったく、一発外したらそこから今度は向こうのコンボが始まるからねぇ」
 基本的に3D格闘ゲームは、浮かせたまま何発殴れるかで勝負が決まるといっていい。一撃で体力ゲージを大量に奪える必殺技があるのならまだしも、そういうゲームはこういう界隈では毛嫌いされやすい傾向があるとかないとかこいつは語る。
「ま、次で決勝だ。これで勝てば賞金出るし、美味いもんでも食おうじゃないの」
「ここはそういうレストランもきっちりしてるからすごいんだよなぁ……」
 総合アミューズメント施設の名前は伊達ではなく、ここで生活しようと思えばできそうなほどの充実ぶりである。事実ここのスタッフは、施設の上層階に位置する寮に住んでいるのだとか。
「さ、そろそろ決勝のお時間だ。行ってくるよ」
「せいぜい生き抜いてこいや」
 俺はそう言って友を送り出した。

 そして決勝。どちらも細かいパンチやキックを出し合って牽制しているが、間合いに入ったのか友のコンボが始まる。空中に浮かせた状態で上段パンチからの対空技を入れると滑らかにジャンプ攻撃に移り、最後に吹っ飛ばしボディブロー。だが計算が狂ったのか、相手の体力ゲージがわずかだが残ってしまった。残り時間に余裕はそれほどないためか相手が素早くダッシュで間合いを詰め、ダッシュ攻撃で吹っ飛ばして壁際に追い詰めた。
「あ、終わった」
 しかしそれがまずかった。近づきすぎたのが災いし、無慈悲にも友の放った起き上り攻撃でノックアウト。席を立った相手はまたもや美人だ。ショートカットにした金髪がよく似合う高貴な白人っぽい顔立ちに、全体的にスリムながらブラウスを押し上げる部分とのメリハリが非常によろしい。友と握手を交わしたときは爽やかな笑顔を見せていたが、席を立った瞬間の非常に悔しそうな表情を俺は見逃していない。
「美人は何しても魅力的だからずりぃよなぁ……」
 そして決勝の前に行われた三位決定戦の勝者と共に表彰台を飾る友の姿が、俺にはとても眩しかった。そして、二位の人が奴に向けている熱い視線から俺は奴のその後を案じた。まぁ、頑張れ。死なない程度に。

 まぁそんなのを見ていて俺もちょっと触りたくなったが、流石につい今の今までそこで大会をやっていた筐体でやる気にはなれず、別のゲームで暇つぶしがてら遊んでみようと思ったものの、やはりそう思っている人間は多いようでなかなか波が引いていかない。ちなみに奴は俺のところに来る前に決勝を争った女性に連れて行かれていた。無事な生還を願う。とりあえず人が引くまで勉強がてら対戦を眺めているが、もはや何をやっているのか、所詮は素人に毛が生えた程度の俺ではわからなかった。
「空いてますけど……」
「ああ、お先にどうぞ」
 このやり取りをもう何度繰り返しただろうか。解説もなしにプレイを見ても全く参考にならなかったのでそろそろ帰ろうか、少なくともこのエリアからは離れようかと考えていると、何かが始まったのかポツポツとプレイヤー達が席を立っていく。それを見てワンクレジットくらいならいいかと席に着いた。
「さて、さくっとやって帰りますか」
 使うキャラはコンボがシンプルでリーチも長く、扱いやすい主人公キャラだ。プレイ回数こそ多いが、あくまで俺はちょっと時間が潰せればいいやという程度のライト勢であり、全国ランカーと真っ向勝負がしたいとまでは思っていない。すると、アーケードモードが始まる前に乱入者が来た。
「ま、適当に流すとするか……」
 コントローラーの操作に慣れる前に挑まれたのは痛いが、そもそもここはそういうところ。筺体がライン接続されている以上、誰かが対戦を望めば断ることはできない。
「受け技相手か……せいぜい揉まれてくるとしますかね」
 挑んできた相手のキャラは、自分から攻撃するのではなく、相手の攻撃に合わせてコマンド投げやカウンターを主体とするもの。初心者狩りなどこの界隈では当たり前。店舗に足を運ぶたび、ネットの海に繋ぐたびに何度も負けて来た。

 結果はやはりというか俺の負け。タイミングをあえてずらせるチャージ技や移動技を中心に使い自分から積極的に攻めていくが、流石に対人経験が豊富な人間はこの辺の対処がうまい。完全にタイミングを読み切って効果的に技を返される。気付けば一撃たりとも入れることができなまま敗北の文字が画面で踊っていた。コンティニュー画面をボタン連打で流し、そのまま席を立ってエリアから離れた。奴から連絡が来ていたようなので確認すると、今日は先に帰っていてくれとのこと。わかりきっていたことなので、応とだけ返した。

 しかしそれがどうしてこうなったのだろうか。そのまま「Dreams」から離れ、自宅近くのスーパーで夕食を買うはずが、走って店を出てきたとある女性に引きずられ、近くにあった大衆居酒屋で酒を飲み交わしていた。彼女は先ほどの大会で三位を勝ち取った人で、ここまで色々とあのゲームについて語り合っている。聞けば俺が対戦したのも彼女だというのだから、あの負けっぷりも納得ではある。ちなみに尻尾はあそこにいる時以外は隠しているのだとか。
「ごめんねー、あの人の知り合いだから絶対強いと思って本気でボコっちゃったから機嫌悪くしたのかと思って」
「そんな程度で機嫌を悪くするようならあの場所にはいないさ」
 自己紹介から入り、酒も進めば互いの敬語も外れる。こうして見ると彼女の肉感的な体が非常に目に毒だ。くっきりとした目鼻立ち、酒でとろけた瞳、艶っぽく湿った唇、わざと開けた赤いワイシャツから覗く谷間、白魚のような指。流石に初対面を相手にして前後不覚になるとか酔った勢いでどうこうとかそんな程度まで酔うつもりはないが。
「でもさ、話聞いてると君も色々わかってるっぽいし、もっと突き詰めていけばかなりのところまでいけると思うんだよね。普段どんな練習してるの?」
「あのゲームならコンシューマー版持ってるし、熱帯もそこそこってところかな。ただアケコン持ってないし、ゲームにたくさん時間はかけてられんよ」
「ってことは彼女とかいたり?」
「いたらわざわざあそこに野郎連れては行かないなぁ」
「ってことはフリーなんだぁ、ふーん……」
「なんじゃいその顔」

 そんなやりとりをしていると時間が過ぎるのも早いもので、店員から閉店時間だと告げられた。俺としてはナニが落ち着かないので早く帰って収まるまで抜いて寝たいところなのだが、彼女がなかなか離してくれない。結局二人でDreamsに戻り、中にあるバーでダラダラと喋り続けている。しかし酒がかなり回ってきたのか、今自分が起きているのかどうか意識がはっきり保てなくなってきた。
「すいませーん、精算、ここふたり分で」
「はいな」

 もう我慢できなかった。彼と共に居酒屋で飲んでいた時か、いや、彼に対戦を挑んだ時から彼のことが気になって仕方なかった。なんでかはわからない。直感というものだろう。気付けばお酒でボロボロの彼を引きずってホテルにチェックインし、彼をベッドに転がしてシャワーに飛び込んでいた。彼がどうしようもなく欲しい。お酒も手伝ってかお腹の底から早く早くと急かすように熱い。
「でもダメ、せめて余計な匂いは落としてからじゃないと……」
 我が身を焦らせる肉欲を適度になだめながらシャワーから上がって髪を乾かすと、彼がベッドに座ってぼーっとしている。おそらく何が起こっているのかわかっていないのだろう。それでも構わない。これから私が体で叩き込むから。
「俺はなんでこんなところに……」
「私が連れてきたからだよ」
「なんで?」
「そりゃあれだけ話し込んで彼女いないなんて聞かされたら我慢できなかったから」
「え?」
「きっかけなんてなんでもいいの。理由もない。しいていうなら私の体が、あなたじゃないとダメって言ってる」
 これはもはや本能。風呂上りだから服は着てないし、纏うものは大きなバスタオル一枚。
「ね、見て……あなたのものになる体だよ……」
「ちょ……」
 彼が驚くのも聞かず、私は彼の正面でタオルをはだける。尻尾も角も隠さない。全部見て欲しいから、そして私を受け入れて欲しいから。
「……」
 口を開けたまま唖然としてる。でもその視線はちゃんとおっぱいに来てる。もっと、もっと見て欲しい。触って欲しい。そう思う前に私の腕は正直だった。彼の両手を掴むと、私のおっぱいを掴ませる。
「はぁっ……」
 彼の感触に酔う私を見ても、彼は完全にあっけにとられてる。無理もないかも知れない。でも満更でもなさそう。今はそれだけでいい。
「んんっ……」
 すると彼の手は私のおっぱいを揉みほぐす。勝手に下の口が開いて蜜を床に垂らす。両脚が震えだし、さらにお腹の奥が熱く、もどかしさが募る。
「お願い……」
 気付けば私の体は彼におっぱいを揉ませたまま体を倒し、耳元で熱と吐息をたっぷり込めて囁いていた。既に彼の腕から離していた手はそのまま彼の股間を探っていた。案の定かなり固くなっている。それだけで察したのか、彼は私のおっぱいから手を話そうとするが、私の腕はそれを許さなかった。もっと触って欲しい、服脱がすくらい私がするから。それくらい今の私は本能に操られていたのだろう。あっという間に彼の下半身を丸裸にしていた。
「いくね……」
 彼を受け入れた瞬間、目の前が真っ白になった。比喩でもなんでもなく、本当に何も考えられなかった。しばらく意識がどこかに飛んでいたように思うけど、それでも体はどこまでも正直で貪欲だった。自らの欲のまま、そして彼の思うままに腰を上下左右に揺らす。もはや無意識の動き。これこそが淫魔と言われる私達の本能。声も出ないままに悦楽に溺れ、いつの間にか私の方が意識を失っていた。

 正直、何が起こったのか全くわからなかった。ゲームで負けた相手に酒に誘われたと思ったらいつの間にか跨られていて、思いっきり中にぶっぱなしてしまっていた。自分はこんなに我慢できなかっただろうか。いや襲われたようなものなのだから不可抗力かもしれないが、彼女は俺の体を終始気遣ってくれていたような気がする。とりあえず、彼女が目覚めるまで、その肉感的で熱い体を離さないように抱きしめてみる。するといつの間にか、また眠りに落ちていた。最後に考えたのは、財布の心配だったというのは、いかにもというか何というか、自分でも呆れざるを得ない。
15/06/25 05:27更新 / ☆カノン
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■作者メッセージ
 DOA5とBBがまた新しく出たと聞いて買わざるを得ない気がしている(とおいめ

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