連載小説
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日程:0日目 旅行前日
〜日本某所〜

季節は初夏。暖かい春の陽気が徐々にに蒸し暑くなっている。

「〜♪」

そんな初夏の空の下の街中を二組の男女が手を繋ぎ、恋人繋ぎで歩いていた。雰囲気からして既婚者だ。
男の方の名はワタル。自称どこにでもいるような会社員。黒髪で中肉中背とどこにでもいそうな日本人といった感じだ。
女の方の名はバスティアナ。隣のワタルより少し背が高く、髪は青紫色で茶色の角が生えている。
さらに背中にはコウモリのような翼、尻には爬虫類のような尾が、手足も同じく爬虫類のような見た目をしており、いずれも緑色の鱗に覆われている。
さらに一際目をひくのが、普通の女性よりかなりある胸、その大きさはスイカをも凌駕し、爆乳という言葉すら生ぬるく、もはやバカ乳と呼んでも良いだろう。
「こんなの人間じゃねぇ」と思った者も居るだろうが、その通りである。
人にして人にあらず、彼女は魔物で、ドラゴンという種族なのだ。
魔物とは、日本に突如現れた異世界の扉から大量に出現した種族で、全員が美しい女性の姿をしており、人間男性の精エネルギーを主食とし、主に性行為でそれを摂取する。簡単に言うと「違う世界からやってきたセックス大好きエロお姉さん」という事である。
そんなバスティアナはかつて、先程述べた異世界の魔物の軍隊「魔王軍」に所属し、「翠炎のバスティアナ」の名で恐れられた猛者だったのだが、こちら側、俗に言うメタな話で言うと我々の世界に偵察に赴いたが良いが、右も左も分からず右往左往していた所をたまたま居合わせたワタルに救われ、それ以降彼に一目惚れしバスティアナからの一方的な猛アタックの末に交際に発展し、見事ゴールインしたのだ。
かくして成立した新婚ホヤホヤのバカップルはデートの為に初夏の街を闊歩していた。

「バスティアナが喜んでるなら俺も嬉しいよ。」
「ふふふふっ♪・・・・ワタルっ!あれは何だ!?」

バスティアナの目にとまったのは、何やら大きな丸い板。
それに向かって人が何かを投げている。
「あれはダーツゲームと言って的に投げ矢を当てる遊びで、当たった所によって得点が違ってくるの。」
「ほう!」
「特に真ん中に当たると一番高い得点が入るんだ。」

バスティアナはワタルの説明を聞き、しばらく感心して、

「・・・・・・・。」
「どうしたの?」
「ワタル!我はあれをやりたいぞ!」

目を輝かせながらダーツに挑戦することをワタルに高々と宣言した。

「バスティアナがやりたいならいいよ。」
「やったぁ!ワタルっ!大好きだ!」
「ちょ、苦しい!胸押し付けすぎだ!」

バスティアナは許しを受けると、早速ワタルの手を(めっちゃ強く)引き二人共々列に並ぶ。

列が前に進むにつれてダーツゲームの内容が明らかになる。

「よくぞサバト特製ダーツゲームに挑戦してくれた!褒めてやろうぞ〜!」

バフォメットという幼い少女のような見た目をした魔物が「三回三百円」と可愛らしい字で書かれた看板の横で精一杯背伸びをして叫んでいる。

「見事ダーツを的の中心に当てた方には二泊三日南国旅行ペアチケットをプレゼントしま〜す!」

同じく魔物の魔女が背伸びをして叫ぶ。こちらも幼女のような見た目をしておりロリオーラ全開である。

「どりゃあ〜!」
「てぇい!」

前の人々は南国旅行ペアチケットを狙い必死になって投げる。だが、まったく当たる気配はなく、所持金を巻き上げられた人々は残念賞のティッシュを山のように持たされてトボトボと帰っていく。
そして、いよいよバスティアナ達の番になった。

「さて、腕が鳴るぞ!」

とバスティアナが意気込んで挑戦しようとしたその時。

「どけどけぇ!素人共!」

ロングコートを着たガラの悪い銀髪の青年が割り込んできた。

「俺、さっきからおめーらのダーツの投げ方見てたけどち〜っともなってねぇな〜!ヘタクソすぎて笑い死にしそうだったぜ〜!」

ギャハハと周りを小馬鹿にしたように笑って見せる青年。
その態度に並んでいた客は眉をひそめた。

「すいません、今は彼女の番なのですが。それに、横入りは後ろの方々にも迷惑がかかりますのでお止め下さい。」

ワタルが落ち着いた態度で注意すると、それに続いて周りからもそうだそうだと声が上がる。

「うむ、確かに横入りは良くはないの。じゃが、ここはあえてこやつに順番を譲ってもらえんか?」
「えっ?」
「ほう?」

バフォメットの以外な申し出にワタルと周囲は驚き、バスティアナはどういう事かと首をかしげる。

「わかってんじゃねぇか、お嬢ちゃん!」
「それだけ大きな口が叩けるのであればお主の実力は確かという事じゃな?」
「あたりめぇよ!こんなモン余裕だぜ!」

青年は三百円を払うと、魔女からダーツを奪い取るように受け取った。

「投げナイフマスターのウルフと呼ばれた俺様の実力を見せてやるぜぇ!」

青年は意気揚々とダーツを投げる。
青年の手から放たれたダーツはビュンと音を立て、彗星のごとき速さで・・・・・・・。

的の「縁」を射抜いた。

ピンッと乾いた音が響き、青年が投げたダーツはダーツボードの縁を(ほんの0.数ミリ)を抉り、地面に命中した。
「クソッ!」

青年は苛立ちながらダーツを投げる。
残る二本も的のフチを(やはりほんの0.数ミリ)抉り地面に命中する。

「ぬぐぐぐぐぅうぅうぅ〜〜〜!!!クソがああああ〜〜〜!!!」

青年が激昂して大声を上げた。

「こうなったらヤケだ!おい!そこのクソガキ!俺様の有り金全部くれてやるからありったけのダーツ寄越せや!」

と、青年がサイフ丸ごとを魔女の前に乱暴に叩きつける。青年の気迫と物を乱暴に叩きつけた音に魔女は物怖じもせず、サイフを受け取り、何処かへ行き、しばらくして大量のダーツが入った箱を持って戻ってきた。

大量のダーツを目にした青年は深呼吸した後、

「でぇいりゃあぁぁぁあ〜〜!!!きぇぃあうあうぁ〜〜!!!」

奇声を発しながら闇雲に、めちゃくちゃにダーツを投げていた。
放たれたダーツは凄まじい音を立て、的の外を外れていく。当たったとしても的の中心からはかなり外れている。

まるで三流脚本家が書いたコントのような馬鹿馬鹿しい光景に、ワタルはドン引きし、バフォメットと客達は呆れ、バスティアナは哀れな人間を見るような目を送り、魔女は笑いを堪えていたが遂に笑い出して腹を押さえて地面を転げ回った。

「ハァ、ハァ・・・・どうりゃああああああああああ!!!!!」

青年が最後のダーツをヤケクソに投げた。

ブスッ。

ダーツは的の中心の「近く」に刺さった。

「な、なぁ、おい、コレでいいんだろ?な?」

汗まみれになった青年が疲れきった顔で作り笑いを浮かべながらバフォメットに問う。

「う〜む、こいつは中心の「近く」に刺さっているのであってド真ん中に刺さっておるのではないのぅ・・・」
「い、いやギリギリ近くに刺さってるんですからギリギリセーフってことにしてくださいよっ、ね?ね?」

恥もプライドもへったくれもなく青年が頭をヘコヘコと何度も下げ、揉み手をしながら中心に刺さったということにしてもらおうと頑張る。

「残念じゃが、こればかりはオマケできんのう。」
「・・・・。」
「それに、難癖を付けて失敗を無かったことにしようとするなど往生際が悪いにも程があるわ!」
「・・・・・。」
「そんな奴にチャンスを与える価値など無い!潔くここから去るのじゃ!」
「・・・・・・。」

バフォメットの言葉で青年は完全に撃沈した。今の彼の状態を効果音で表すならば

チ~ン

「あはははは!自分で言っておいてこれですか〜?ヘッ!情けねぇなぁ!口先野郎!結局おめぇの実力の無さが晒されただけじゃねぇか!ゲハハハハハ!!!!」
「わははははははは!!!!!!」

魔女が幼い少女とは思えないドスの効いた笑い声で青年を嘲った。
さらに周りの客も笑い出す。

精神的制裁のトリプルコンボで完全に叩きのめされた青年は、

「あああ・・・お姉ちゃんに返す分のお金もスッちゃった・・・殺される・・・」

と情けない声で呟きながら、残念賞も受け取らずにフラフラとした足取りで去っていった。

魔女はその場にいる中で強者の部類のバスティアナとバフォメットすら恐怖を覚える程ドス黒い笑みを浮かべながら青年を見届けると、

「次のお客様!どうぞ〜!」
「は、はい。(この私に恐怖を覚えさせるとはこの子は一体何者だ!?)」

子供らしい明るい笑顔でバスティアナを迎えた。

「はい、三百円。」
「ああ、ありがとう。」

バスティアナはワタルから三百円を受けとると、ダーツボードの前に進む。

「・・・・・・・。」

バスティアナは目を閉じて意識を集中させた。
これまでに闘ってきた友とも呼べる強敵たちの顔が脳裏に浮かぶ。
そして、その友の力を受け取ったかのように目を見開き、ダーツを放つ。

パァンッ!

バスティアナが放ったダーツは見事的の中心を射抜いた。
あまりの神業に周囲が時が止まったように沈黙したが、すぐに

「すげえええええ〜っ!!!!」
「姉ちゃんあんた最高だよ!」
「ドラゴンさんかっこい〜!」
「おっぱい揉ませろー!」

大歓声が起こった。一部変なものも混じっていたがバスティアナを称賛する声が群衆の所々から浴びせられた。

「素晴らしいっ!よくやったのう!」

バフォメットが涙を流して感激する。

「という訳で、二泊三日南国旅行ペアチケットは〜えーっと、お名前をどうぞ!」

魔女がバスティアナに懐から出したマイクを向ける(この時マイクの先端がたまたまバスティアナの乳首に当たってしまいバスティアナが感じかけたのは内緒)。

「バスティアナだ。」
「2泊3日南国旅行ペアチケットを手に入れたのはバスティアナさんですっ!」
「カッコよかったよ!バスティアナ!」
「ワっ、ワタル!照れてしまうだろう!」

愛する夫から賛辞が送られた事で赤面するバスティアナ。めっちゃ嬉しそうやんけ!爆発しろ!(なお実際に爆破してやろうとしようものなら怒れるバスティアナに丸焦げにされるが)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふふふふ・・・・手に入れたぞ!」
「うんうん、良かったね。」

ほめてほめてと言わんばかりに旅行ペアチケットを両手で持ち、嬉しそうな表情でワタルに見せつけるバスティアナ。(なんじゃこのかわいい生物は。)
そんなバスティアナの頭をなでなでしてあげるワタル。(うらやましいなぁオイ!)

「あとは旅行の準備だな!」
「うむ♪」

いよいよバカ乳ドラゴンの南国旅行が始まった!(そして出発前に滅茶苦茶セックスした)
19/01/29 21:30更新 / 消毒マンドリル
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■作者メッセージ
「ご苦労じゃったの。ほれ、お主の日当じゃ。」
「そちらこそお疲れ様です!今回は途中から入ってきたあのバカガキのおかげでたんまりと儲かっちまったな〜!こんだけありゃお兄ちゃんの誕生日プレゼントが沢山買えるぜぇ!ケッケッケッケェ〜!」
「お、お主、その笑い声と顔やめてもらえんかの・・・・それを夜に思い出しちゃうとおトイレ行けなくなっちゃうのじゃ・・・」
「あ、すいませ〜ん!☆」

連載小説の処女作もやはりバカ乳ドラゴンさんに決まりだぜぇ〜!
これからどんどんおっぱいおっぱいしてやんよ!

キャラ紹介

バフォメット 戦闘力500
バフォ様。ロリ魔物の親分といえばこの子!カリスマでもそのままガキンチョにしてもいいキャラ!そして我らが健康クロス様のマスコットだ!
だがこのお話ではモブに過ぎない!
現実は非情だ!

魔女ちゃん 戦闘力200
ロリ魔物ではバフォに並んでメジャーだと思う。腹黒モブ。

ガラの悪い青年 戦闘力11
元ヤンキー(のパシリ)。
投げナイフマスターのウルフ(笑)。
ちなみにこの通り名は自分で勝手に名乗っている。
肝心の投げナイフの腕は超ヘタクソ。
普段は悪ぶっているが根は気の弱い小心者。
お姉ちゃん(人間)に怒られるのが怖いから夕方までにはちゃんとお家に帰る。

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