読切小説
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二つの白
そこは、高い山の麓に在る大きな町、
ガサガサ
そして、ここは、その町に在る一軒の家の玄関、
そこでは、一人の少年が靴を履いていた。
その少年の名前は、ジン・ケーニッヒ、父の様な強い剣士を夢見る十歳の少年だ。
「よし!」
ジンは鞄と練習様の剣を持ち、家を出る。そして、町の近くの森に向かう。その途中、
「あー、老いぼれジンだ!」
道の横で遊んでいた少年たちがジンを指さして笑う。
「うろせー!」
ジンの髪は白髪(ハクハツ)である為、昔から悪口を言う者が良く居る。その為、ジンは何時も、誰も居ない森の中で鍛錬をしている。
ジンは森の中にある木々が開けた場所に着くと鞄を降ろし、鍛錬を始めた。
「はっ!はっ!はっ!」
ジンは、練習用の剣で素振りを始める。
「(見てろよ!大きくなったら、誰よりも強く成って、あいつら全員見返してやる!)」
ジンがそんな事を考えながら鍛錬をしていると、
『おい!居たか!』
「うん?」
森の中から人の声が聞こえた。
『いや、いねえ』
『早く探せ!苦労して捕まえて来たんだ!何としても捕まえるんだ!』
「珍しいな、この辺りに人が来るなんて」
ジンは、この場所で三年ほど毎日の様に鍛錬をしているが、魔物なら数回会った事は有るが、一度も人に会った事は無かった。
ジンが声のする方の森を見ていると、
ガサガサ、
「!!」
突然、目の前の茂み揺れた。
「ふっ!」
ジンはすぐさま剣を構え警戒する。しかし、茂みから出て来たのは、
ヨロヨロ、
「ドラゴン?」
白いドラゴンの子どもだった。大きさは、ジンよりも少し小さい位だ。
「キュュューー」
ポテッ
そのドラゴンの子どもは、ジンの前で力無く倒れた。
「あっ、おい!」
ジンは警戒を解き、ドラゴンに近寄る。
「うっ!ひで〜!」
よく見るとドラゴンの体は傷だらけであった。刃物で切られたのであろう、鼻と目との間には、大きく痛々しい傷が出来ていた。他にも掠り傷が多く有る。
そして、ジンがドラゴンに触れようとすると、
「っ!カカカカカァァァ!」
「うわっ!」
ドラゴンが起き上り、ジンを威嚇する。
「だっ、大丈夫だよ、殺したりしないから」
そう言って、ジンはもう一度手を伸ばす。すると、
ガブッ
「いっ!」
ドラゴンがジンの手首に噛みついた。
「ググググッ!」
ドラゴンは更に顎に力を入れる。牙は肉に喰い込んで血が出てきている。すると、
ポンッ、ナデナデ、
ジンはドラゴンの頭に手を乗せ優しく撫でる。
「だから、なにもしねえって」
「・・・・」
すると、ドラゴンはジンの手首から口を離す。
「よしよし、いい子だ」
そう言いながらジンは更にドラゴンの頭を撫でる。すると、
『おい!さっきこっちの方で何か聞こえたぞ!』
先ほどの声が、少しずつジンたちの方に近づいて来た。
「やばい!どうしよう!どうしよう!あっ!」
ジンは何かを思いつき、急いでドラゴンを抱き上げる。そして、近くの茂みの中に隠す。
「いいか、どんな事が有っても、ここを動くなよ!」
ジンはドラゴンにそう言うと、その場所から少し離れた所に倒れる。そして、
「ぐわわーー!いてーー!」
大声で叫んだ。すると、
『おい、なんか悲鳴が聞こえたぞ!』
『あっちだ!』
先ほどまで聞こえていた声の主がジンの前に現れた。
「おい!ガキが居るぞ!」
それは、みすぼらしい格好をした男たちだった。
「(こいつら、魔物狩か)」
魔物狩とは、強い魔物や美しい魔物を捕まえて、売りさばく商人である。
「ドラゴンに噛まれた〜!」
「えっ!」
ジンがワザとらしく言うと男たちはその言葉に反応した。
「おいっガキ、そのドラゴンは何処へ行った!」
「あっちの方に逃げて行った〜。僕の事はいいから、あのドラゴンを捕まえてください〜」
ジンは、ドラゴンを隠した茂みと逆の、森の奥の方を指差す。
「そうか!よし、追うぞ!」
男たちはジンが指差した方に走って行った。
「ふ〜、バカな奴らだな」
ジンは立ち上がるとドラゴンの所に戻る。すると、既にドラゴンは、かなり弱っていた。
「不味いな」
そう言うと、ジンは鞄と剣を持ち、ドラゴンを背中に背負う。
「ひげ爺さんの所まで頑張れよ!」
ジンはそのまま町の方へ走る。

ジンは、町はずれの店に向かった。ここはとても不思議な店で、その時欲しい物は大抵何でもある。さらに、馴染のある人なら付けも効く。
キー
「じいさ〜ん、ひげじいさ〜ん!」
ジンは店に入ると大声で呼ぶ。
「ほいほい、いらっしゃい」
すると、店の奥から長いひげを垂らした老人が現れた。
「おお、ジンくんじゃないか、如何したんだい?」
「ああ、実はこいつ何だけど」
そう言うとジンは、背中に背負っているドラゴンを見せる。
「これは酷いの〜」
「ああ、魔物によく効く傷薬とか無い?あと、包帯も」
「ほいほい、有るよ〜」
「(相変わらず何でも有るな)」
そう言うと老人は店の奥から包帯と瓶に入った傷薬を持って来た。
「これを傷口に塗って、それから包帯を巻くんじゃ」
「分かった」
ジンは、包帯と傷薬を受け取ると傷の手当てをする。
「よし!出来た」
「後はお前さんもじゃな」
「うん?」
ジンがドラゴンの手当てを終えると老人は別の薬を差し出した。
「手首から血が出ておるぞ」
「あっ」
ジンは、手首を噛まれていた事をすっかり忘れていた。
ジンが薬を受け取り手首に塗っていると、
「そうじゃ、久しぶりにお前さんを占ってやろう」
老人が腰の袋からタロットカードを出した。ひげじいさんの占いは良く当たる。
「えっ、いいのか?言っとくが、俺あんまり金持ってねえぞ」
「ほほほ、今回は無料じゃよ」
「じゃあ、まあ、そう言う事なら、お願いする」
ジンがそう言うと老人は並べたカードを捲る。
「おお、これは!」
すると、老人は驚いた声を上げる。
「何か出たのか?」
「これからお前さんには、悲しい別れが訪れる」
「悲しい、別れ?」
「じゃが、それが永久の別れに成るかどうかは、お前さんしだいと出ておる」
「ふ〜ん」
「もし、悲しい別れが有っても、その者を忘れない事じゃ」
「今一、良く分かんないけど、まあ、覚えとくと」
そんな事をしている間にジンも傷の手当てが終わる。
「さて」
ジンは手当てが終わるとドラゴンを背中に背負う。
「ありがとうな、お金はまた今度持って来るよ」
「ほっほっほっ、お代はいいよ」
「えっ?」
「その代わり、その子が元気に成るまでしっかりと面倒を見るのじゃぞ」
「あっ、ああ、分かった、ありがとう」
ジンは老人に礼を言い、店を出た。
「さて、取りあえず、家に戻るか」
ジンは家に向かい歩き出す。

それからが大変だった。
家に帰ったのは良いが、直ぐに母親と父親にドラゴンのことがばれてしまい、母親との言い合いが始まった。しかし、間に父が入ってくれたお陰で、ドラゴンの傷が治るまで家に置く許可が下りた。
そして、半月が経った。
「ヒカリ〜、ご飯だぞ〜」
ジンが家のキッチンで大声を出すと、
バサッ、バサッ、
勢い良く何かが飛んできた。そして、ジンの前で床に着地する。それは、白い子どものドラゴンだった。ヒカルと言うのは、ジンが付けた名前である。名前の理由は、白い体に光が反射して光っている様に見えるからだ。
半月でヒカルの傷は殆ど直ってしまった。しかし、顔に出来た大きな傷は痕が残っている。
「よしよし」
ジンは皿にヒカル用のご飯を入れて床に置く。
夕食を終えると、ジンはベランダに出て夜風に当たる。ヒカルもそれに付いて行く。
ベランダからは、町に在る大きな闘技場が見える。
「父さんたちは、今日も仕事か」
ジンの父は、町の闘技場で戦う、百戦錬磨の剣士だ。母も、その闘技場で働いている。
「俺も何時か、あそこで戦うのが夢なんだ」
「キュー」
「もしかすると、お前と並んで戦う事に成るかもな」
「キュー?」
「あはは、らしくねえ事を言ったな、もう寝るか」
「キュー!」
ジンが部屋に戻り、布団に入ると、空かさずヒカルが布団に入って来た。ヒカル用の寝どこも用意しているのだが、ヒカルは殆どジンの布団で寝る。
ヒカルは、布団に入ると、直ぐに寝息を立て始めた。ジンはそんなヒカルを見ながら、老人の言葉と父との約束を思い出す。
『悲しい別れが訪れる』
『傷が治るまでなら、置いていいぞ』
「・・・もう少しで、こいつともお別れか・・・少し嫌だな」
ジンはそんな事を思いながら眠りにつく。

数日後、ジンは母親に頼まれ、町に夕食の材料を買いに出かけていた。そして、買い物を済ませて帰ろうとすると、
『おい、聞いたか』
「うん?」
店の前で商人の男たちが立ち話をしていた。
ジンは、その男たちの前をとうり過ぎようとしたが、
『ああ、あの白いドラゴンの事だろ』
「!!」
男の一言でジンは足を止めた。
『そうだよ!最近、この辺りの森に出るらしいぞ!』
『ホントか!』
『ああ、まるで何かを探してるみたいなんだってよ!』
『おお、でも、心配いらねえ!聞いた話だと、国から凄腕の騎士団が来てくれるそうだ!』
『そいつは安心だ』
ジンの耳に届いたのは、不吉な話だった。そして、ジンはその男たちに話しかけた。
「あのさ」
「えっ?何か用か?」
「さっき言ってたドラゴンって、何処に出るの?」
「うん?確か山の中腹くらいって言ったかな」
「そうか、ありがと」
そう言うと、ジンは走り出した。
「あっ!おい!」
男たちの言葉など聞こえない、ジンは家に急いで帰った。
ジンの頭の中ではある予感がしていた。
「(白いドラゴン、探してるみたい、恐らく、ヒカルの母親だ!探しに来たんだ、ヒカルを!)」
ジンは道を急ぐ。
「(なら、ヒカルを返さないと!このままじゃ、ヒカルの母親が殺される)」

そして、その夜
ジンはヒカルを背中の鞄に入れて、山に向かった。

ジンが山に登りだして数時間が経った頃、
「グオオオォォォ!」
ジンの前に白い大きなドラゴンが現れた。最初は警戒するようにジンを睨んでいたが、
「キュー!」
ジンの後ろからヒカルが顔を出すと途端に警戒心が消えた。そして、ヒカルは鞄から出て、地面に降りた。
「ほら、残念だが、ここでお別れだ。早く母親の所に行ってやれ」
ヒカルはジンの顔を少し見上げてから、母親の元に向かった。
「グルル」
「キュー」
そして、少しの間、お互いの存在を確かめると、ジンの元に戻って来た。
スッ
「うん?」
その口には、白く輝く何かを銜えていた。ジンがそれを受け取ると、それは、白い鱗だった。
「俺に、くれるのか?」
コクッ
「そうか、なら、ありがたく貰っとくよ」
ジンはそれをポケットに入れて立ち上がる。
「じゃあな、何時かまた会おうな」
そう言うと、ジンは後ろを向き、走り出した。
ヒカルは、ジンの姿が見えなくなるまで、ジンの走って行った道を悲しそうに見ていた。

それから数年が経った。

「うおりゃっ!」
「おっと!」
そこには、闘技場で戦う、ジンの姿が在った。しかし、ジンは一人なのに対して、相手は二人、しかも、片方は魔物だ。しかし、その魔物の姿は、女だった。

数年前に魔王が代替わりして、魔物は全て女性に成ってしまった。それ以来、町の闘技場では、人と魔物のタッグバトルが流行り出した。
そのお陰で、今では殆どの選手が二人一組で試合が行われている。
しかし、ジンはその中でただ一人、誰ともコンビを組まずに一人で戦っていた。
ジンは、この闘技場で戦い始めた当初、無敗を誇っていた。しかし、タッグバトルが始まると、今まで勝てていた相手にも勝てなくなった。
決して、ジンが自分の力を過信している訳ではない。ただ、ジンに合わせて戦う事が出来る魔物が居ないのだ。

「はああぁぁ!」
ドスッ
「ぐはっ!」
ジンは、相手の魔物、ミノタウロスのタックルをもろにくらいダウンする。
『勝者!ミノタウロスズ!』
オオオォォォォ!
ジン、この試合で99個目の黒星、
闘技場は大いに沸いた。

試合の後、ジンは酒場で酒を飲んでいた。
すると、選手仲間が話しかけて来た。
「ようジン、今日も派手に負けたな〜」
「うるせー!」
「ははは、怒るなよ」
すでにジンは、かなり酔っていた。すると、今日試合をした相手の二人が現れた。
「おや?誰かと思えば、今日我々に負けたジンさんではなですか」
男の方は、今日勝ったのを鼻にかけジンを見下す。
「しかし、悔む事は無い!お前に合う魔物が居ないのが悪いんだ。決して、君弱い訳ではないのだよ!あははははっ!」
その男の言葉で酒場に笑いが広がった。すると、
ピシッ
ジンの持っていたグラスにヒビが入った。
「おい、ジン、落ち着――」
選手仲間がジンを抑えようとするが、
ガタッ
「上等だ!じゃあ、俺が自分に合う奴を探して来てやるよ!それで、もう一度勝負だ!」
ジンは立ち上がり、男に向けて言い放った。
「へっ!じゃあ、それで勝てなかったら、闘技場のど真ん中で土下座して謝れよ!」
「良いぜ!」
ジンは酔った勢いで了解してしまう。

そして、ジンは酔いが醒めた頃、その言葉を後悔していた。
「は〜、酔ってたとは言え、なんであんな事言っちまったのかな〜」
すると、そんなジンに一人の選手仲間が話しかけて来た。
「ジン、一つだけ良い情報が有るんだが」
「何だ?」
「最近、山の方に強い魔物が居るらしいんだよ」
「へ〜」
「どうだ、もしかすると、お前と良いコンビに成るかもしれない」
「う〜ん」
「まあ、無理にとは言わないけど。騙されたと思って行ってこいよ!」
「そうか、そうだな。この町の奴とは合わないし、居ないなら、探すしかないか!」
ジンは、やる気を出して立ち上がる。
「行くのか?」
「ああ」
「そうか、じゃあ、一つだけアドバイスだ」
「なんだ?」
「顔は隠して行け、下手にリザードマンなんかに勝って、顔を覚えられたら、逃げられん」
「そうか、サンキュ!」
そう言うとジンは直ぐに家に帰り山に登る準備をした。
顔は黒い布を巻いて隠している。
「じゃあ、行って来るぜ!」
「おう、行ってこい」
そして、ジンは山に向かって歩き出した。そして、ジンが見えなくなった頃、その男の口元がニヤけた。
「へっ、これでライバルが一人減ったぜ。まあ、あの山に行かせれば、適当な魔物がくってくれるだろう(性的な意味で)」
実は、この男は、闘技場でジンを邪魔だと思っている男だったのだ。
そうとは知らず、ジンは山に向かってしまった。

ジンが山に入って数時間、
「てりゃっ!」
「はあっ!」
ガキン、ボトッ、
ジンは相手のオークのハンマーを弾き飛ばした。
「ふっ、遅過ぎる。約束どうり、付いて来るなよ!」
そう言うと、ジンはオークに背を向け、更に山の奥に向かう。
ジンはここまで、オークと2回、オーガと1回、ゴブリンに5回、遭遇し、その全てに勝利している。
そのお陰で、
「・・・・」
コソコソ
ジンの後ろの岩陰には、何匹かが付いて来ている。
「(めんどうな事になったな〜)」
ジンがそんな事を考えながら進んでいると、
「うん?」
行き成り、先ほどまで付いて来ていた者の気配が消えた。
ジンは疑問に思いながら、更に山の奥に進む。そして、少し歩くと、
ヒュウウウウウウゥゥゥ!
そこには大きな洞窟が在った。
「成るほど、どうやらここは強い魔物の縄張りの様だな!それなら、あいつらが付いてこなかったのも分かる・・・さて、行ってみるが!」
そう言って、ジンが洞窟に近づこうとすると、
「待ちな!」
「!!」
ヒュー、スタッ、
突然、洞窟の入り口の上からサラマンダーとリザードマンが現れた。
「ここより先は、あの方が居られる場所」
「如何なる理由が有ろうと、行かせる訳にはいかない」
「あの方?」
「それでも進みたいと言うのなら」
「私たちを倒す事だ!」
そう言うと、二匹は剣を構える。
「どうやら、やるしか無い様だな!」
そう言って、ジンも武器を構える。
ジンの武器は、腰の後ろでバッテンにして待っている双剣と、右手に固定されている盾である。
「行くぞ!」
二匹が叫び同時に襲いかかって来る。
キンッ、カンッ、パキッ、
「くっ!」
ジンは二匹の攻撃に押されていた。しかし、その中でジンは二匹の弱点を見抜いた。
「(こいつら、・・・リザードマンの方は鋭い剣筋での闘い方だが、サラマンダーの方は力押しの闘い方だ)」
ジンは大きく跳躍して後ろに下がる。
「逃がすか!」
すると、直ぐに二匹はジンを追って走る。そして、先に力押しのサラマンダーが真上から剣を振りおるす。が、
「(来た!)」
ジンはそれを避ける。すると、当然剣は地面に深々と突き刺さった。そして、ジンはその剣の峰の部分を足で踏み、抜けない様にする。
「なっ!」
そして、続いて攻撃して来るリザードマンの剣を片方の剣で受け止める。
「くっ!」
すると、ジンはもう片方の手に持っていた剣を離し、
ガシッ、
「なにっ!」
リザードマンの腕を掴んだ。そして、
「うおりゃあ!」
「うわっ!」
腕を掴んだリザードマンを横に居るサラマンダーにぶつけた。
「おわっ!」
当然、二匹は仲良く地面に転がる。
「くっそ!」
そして、すぐに立ち上がろうとした二匹に、
スッ
ジンが剣を突き付けた。
「勝負あり、だな」
「くっ!」
二匹は悔しがりながら負けを認める。
先ほどの闘い方は、ジンが闘技場で使っている闘い方で、ジンはこの戦い方で何度か勝ち星を上げている。
「あの方は、洞窟の奥に居られる。行くが良い」
「ああ」
二匹との戦いが終わり、ジンが手放した剣を拾って、洞窟に入る。
洞窟の中は暗かったが所々に光る岩が在った。
「ライト鉱石か、初めて見たな」

ライト鉱石:別名・怯え石、普段は光り、周りを照らしているが、何かの悪意や殺気などを察知すると途端に光を失ってしまう、珍しい石である。

ジンがそんな事を言いながら進んでいると、
フッ、
行き成り、ライト鉱石の光りが消えてしまった。そして、
「ほ〜、人間がこんな所に居るとは」
「!!」
突然声が聞こえ、暗闇の中に青い二つの目が光った。
バッ、
ジンは直ぐに剣を抜き、警戒する。
「ふむ、どうやら迷い込んだ様では無いな。もしや、お前、あの二人を倒したのか?」
「ああ、だが、心配するな、殺しちゃいない」
「そうか、それを聞いて安心した。っで、お前は私に何か用か?」
青い二つの目がジンを睨む。
「(何て奴だ!まだ姿すら見えて無いのにこのプレッシャー!)」
声の主は、姿を現さず闇の中からジンに話しかけて来る。しかし、その状況でも、ジンはすごいプレッシャーを感じていた。しかし、プレッシャーを感じていたのは、ジンだけでは無かった。
「(こいつ、流石にあの二人を倒しただけの事は有るわね。この暗がりでも全く隙が無い。下手に戦うと負けるかも)」
相手もジンを警戒していた。
「単刀直入に言おう、俺は一緒に戦ってくれる強い魔物を探している!」
「ふむ」
「だが、生半可な奴では駄目だ。だが、お前となら、良いコンビになれるかもしれない。お前の強さは、どうやら俺の求めていた強さの様だ!この暗闇でもヒシヒシと伝わって来るほどのお前の強さが、そう言っている!」
「成るほど、即ち、お前は私が欲しいのだな?」
「そうだ!」
「ふむ、なかなか熱烈な告白は、嬉しく思う。だが・・・それは無理だ」
「なぜ!」
「私は、ここである人を待って居るのさ。傷ついた私を助けてくれた、一人の人間を。だから、貴方とは行けないわ!」
ヒュッ、ガキンッ、
「くっ!」
突然、暗闇から鋭い攻撃がジンを襲った。しかし、元より警戒をしていたジンは盾でガードする。
「やるわね!この暗闇で私の初撃を防ぐだなんて!」
「それだけ殺気が有ればな!」
ジンはそんな事を言いながら、場所を移動する。しかし、攻撃は上から降り注ぐ。
「(この攻撃からして、どうやら相手は飛行タイプの様だな!)」
「はっ!はっあ!」
「(だが!まさかこの様に狭い場所で飛べるとは!)」
ジンは、暗闇から来る攻撃を盾と剣で弾きながら敵を分析する。すると、
ガッ、ヒュッ、
「うん?」
ヒュッ、ガキン、
またも暗闇からの攻撃、しかし、ジンは有る事に気がついた。
「(なんだ?先ほどから、飛ぶ前に何か聞こえる)」
ジンは神経を尖らせ、聴覚に感覚を集中する。すると、
ガッ、ヒュッ、ガッ、ヒュッ、ガッ、ヒュッ、
ドスッ、キンッ、ドカッ、
「ぐっ!があっ!」
ジンは、聴覚に集中していた為、数発攻撃を受けてしまう。しかし、今度はハッキリと聞こえた。そして、ジンはその正体が分かった。
「(成るほど、そう言う事か!)」
その正体は、相手が壁を蹴る音、敵はこの狭い空間での戦い方を知っていた。
「(クルピットだったか、壁を蹴り、一気に方向転換をして来る。だが、それなら何とかなる!)」
「そろそろ終わりにしましょうか!」
ジンは腰の後ろに付けていたポーチから何かを取りだす。
「(チャンスは一瞬)」
ジンは再度、聴覚に神経を集中させ、あの音を待つ。そして、
ガッ、
聞こえた。
「これで、終わりよ!」
「そっちがな!」
パリンッ
ジンはポーチから出した物を足元の地面に叩き付ける。すると、
パッ、
一瞬だけ、辺りが真っ白に成るほどの光を放った。そう、ジンが使ったのは閃光玉、普段は相手の目をくらます為に使うが物だが、この時ばかりは、それ以上の効果を発揮した。
「きゃっ!」
ジンに向かって来ていた相手は、
ズガガガガッ、ドンッ、
方向を見失い、地面に落ちる。
「今だ!」
ジンは、空かさず、倒れている相手に馬乗りの乗り、剣を突き付けた。
「俺の勝ちの様だな」
「ふっ、やるわね。まさか私に勝つなんて」
「もしも、これが外での戦いなら、勝てなかったかも知れない」
「そう、じゃあ、早く殺ってちょうだい」
「?殺せと言うのか?」
「ここで誰かの奴隷の様に成るなら、死んだ方がましよ!」
「・・・・」
スッ、
すると、ジンは突き付けていた剣を鞘に納め、立ち上がると、その魔物から離れる。
「元より殺す気は無い。そこまで嫌と言うなら、俺は別の相手を探す」
「・・・意外と優しいのね」
そう言うと、魔物は立ち上がり、暗くて分からないが、ジンの正面に立つ。すると、近くのライト鉱石が光り出し、洞窟全体を照らした。そして、二人の姿を照らし出す。
「えっ!」
そして、ライト鉱石の光りで照らし出された相手の姿にジンは驚いた。
「ドラゴン?」
白い、とても白い女のドラゴンだった。だが、ジンが驚いたのはそこでは無く。
「うん?」
女ドラゴンの顔に在る傷である。それは、見間違える事の無い傷、忘れる事の無い傷だった。
「ヒカル・・」
ジンは記憶の中に在る、懐かしい名を口にする。
「えっ?」
すると、ドラゴンはそれを聞き驚く。
「なっ・・なぜ貴方がその名を知っているの!」
「やっぱり、ヒカル・・・ヒカルなんだな!」
「え、ええ、でもそれは、私のもう一つの名前で、あの人以外はしらない・・・!!まさか、あなた!」
「ああ、俺だ!」
そう言うとジンは顔を隠していた布を取る。
「ジンだよ!」
「〜〜〜!」
ドラゴンはジンの顔を見ると、手で口元を押さえ涙を流し出した。そして、ジンの胸に飛び込んできた。
「おっと」
ジンはそれを胸と両手で受け止める。
「やっ、すんっ、やっと会えた。すんっ、また、会えた。ジン!」
そう言って、ヒカルはジンの腕の中で泣き崩れる。
「ああ、おれも、やっと合う事が出来た。嬉しいよ、ヒカル」
ジンは、泣き崩れるヒカルを抱きしめ支える。

それから少し経った頃、洞窟の外では、
「アイツ、出てこないな」
「そうですね」
そこではリザードマンとサラマンダーが洞窟の入り口を睨んでいた。
「・・・・」
「・・・・」
「おいっ、言っておくが!アイツがあの方に負けて出て来た時は、あたしがアイツを貰うからな!」
「なっ、なにを言っているの!彼は、私が貰いますから!」
二匹は、自分たちを倒したジンを高く評価し、どちらがジンを夫にするかで揉めていた。すると、
「お〜い」
ジンが洞窟から出て来た。
「こうなったら、早いもん勝ちだ!」
「させません!」
二匹は、ジンを見ると、一直線に突っこんでこようとした。しかし、
「「ええっ!」」
二匹は直ぐに止まった。なぜなら、
「スー、スー」
ジンの背中にヒカルが寝ていたからである。
「お前たち」
「「はっ、はい」」
「こいつの家、知らないか?洞窟の中には無かったから、他の所に在ると思うんだけど?」
そう、実は、ヒカルは泣き疲れ寝てしまったのである。
二匹は、少しの間ポカ〜ンとしていたが直ぐに我に返った。
「ああ、知ってるよ」
「案内するから、付いて来てください。あと、中で何が在ったか教えてください」

その後、ジンは二匹に案内されて、ヒカルの家に行く。

「よい、しょっと!」
ジンは不本意だが、ヒカルの家に入りヒカルをベッドに寝かせる。
「では、私たちはここで」
「じゃあな、案内ご苦労さん」
「ああ」
ジンを案内すると、二匹はそそくさと帰って行った。
ジンは寝ているヒカルのベッドの横に座る。
「あのヒカルがこんなに可愛く成るなんてな、驚いたな」
ジンはそう言ってヒカルの頭を撫でる。すると、
「うっ、う〜〜〜ん」
「おっと」
ヒカルが目を覚ました。
「・・・・」
ヒカルは暫くボーとすると、
「えっ、ジン!えっ、こっ、ここは?」
ヒカルは慌てて状況を確認する。
「心配しなくてもお前の家だよ」
「あっ、そっ、そうか」
ヒカルは顔を赤くしながらジンの横に同じように座る。すると、ヒカルはジンの胸元に光るペンダントの様にされている鱗が目に入った。
「それ、持ててくれたんだ」
「うん?ああ、これか、まあな、なんたってお前が暮れたもんだからな」
「そっ、そか」
「ああ」
「・・・私、あれから、ずっと待ってた・・」
「えっ?」
「何時か・・また、ジンに会えるって・・そしたら、本当に会えるんだもの、驚いちゃった」
「・・・正直に言うと、俺もお前に会えるのを期待してた」
「え!」
「昔、辛い別れが有っても、相手の事を忘れなかったら、また会えるって、言われたんだ。だから、何回も魔物とコンビを組もうとしたけど、何か、上手く行かなくて、やっぱり、お前の事を、体が覚えてたからなのかな」
「ジン・・」
「なあ、ヒカル」
「はっ、はい!」
「俺と一緒に戦ってくれないか?」
「・・・・」
「もっ、勿論、お前が良いならでいいんけど!」
「良いですよ」
「えっ?」
ヒカルがボソッと呟く。
「私は良いですよ」
「ほっ、ホントか!」
「ええ・・でも、その前に」
ガサッ、
行き成りヒカルがジンをベッドに押し倒した。
「えっ?」
「私を・・・貴方の物に、してください」
ヒカルは頬を赤く染めながら言う。
「・・・ああ、分かったよ」
「うふっ」
チュッ
そう言うと、二人は唇を重ねる。そして、唇を離し、二人は着ている物を抜ぎ、ヒカルは横に成り、ジンはその正面に座り、ヒカルに覆いかぶさる様に四つん這いになる。
「初めてだから、優しくしてくださいね」
「心配するな、俺も初めてだ」
「うふっ、ジンの初めての相手に慣れて良かった」
「俺もさ」
そう言って、ジンは硬くなった逸物をヒカルの秘部に入れて行く。
「んっ・・・・・!」
「ヒカル、平気か?」
「えぇ、平気。だから、構わず動いて、私を、感じて」
「分かった」
動く、ヒカルを感じる為に、ジンはヒカルを感じながら動いた。
「あんっ、ん、ん、んっ・・・うぅぅ、あ、あ!!」
「はぁ、はぁ、ぐっ!・・はぁ、はぁっ!」
ジンは徐々に速度を速める。
「あんっ、いいっ、気持ちいい!ジンの逸物が、中で擦れて!」
「俺も、良いぞ!はぁ、はぁ、気持ちよくて、もうイキそうだ!」
「出して良いよ。私の中に!ジンの精子、いっぱい出して!」
「わっ、分かった!ふっ、ふっ!」
「あんっ、あんっ!」
ジンは更に速度を速める。すると、
「んっ・・・」
「んんっ・・・ちゅっ・・れろ」
ヒカルがジンに抱き付き、唇を重ねて来た。そして、
「んっ!」
「んんんんんんっっっ!」
ドピュッ!!ドクッ、ドプッ!!ドクッ!
そのまま二人は絶頂を迎えた。
「ふー、ふー、ちゅっ・・・はー、はー」
「はー、はー」
二人は唇を離し、ベッドに並んで横に成る。すると、ヒカルがジンにすり寄って来た。
「うふふ、そう言えば、昔、こうして二人で寝てたね♪」
「ふっ、そうだったな、だが」
スッ、
ジンがヒカルを抱き寄せる。
「前に比べて、抱き心地が良い」
「あはは、ジンの方は逞しく成ったね」
「まあな」
「あっ、そうだ」
「うん?」
ヒカルが何かを思い出した。
「あの言葉、まだ言ってもらってない」
「あの言葉?」
「ほら・・・恋人なんかによく言うでしょ・・」
「よく言う?」
ヒカルはモジモジしながら、言葉を待つが、ジンはその言葉が出てこない。
「じっ、ジンは、私の事を如何・・・思ってるの」
「あっ!」
そこでやっとジンは気づく、
「も〜」
「あはは、ごめん、ごめん・・・・大好きだよ」
「うん、私も大好きよ」
ヒカルは、ベッドの上でジンに抱きつく。

あれから数日、ここは町の闘技場、
ガヤガヤ、ザワザワ、
すでに観客席は満員御礼、全員試合が始まるのを今か今か待っている。すると、
『皆様、大変長らくお待たせいたしました!これより、試合を始めようと思います!先ずは、先日白星を飾った。ミノタウロスズの登場だ!』
オオオオオオオォォォーーー!
片方のペアーが現れると同時に、観客席が盛り上がる。
「ふはは、これは良い、あのジンに土下座をさせるには良い盛り上がりだ!」
「そうね、あの男がいくら頑張ろうと、私たちに敵う訳な無いから!」
「そのとうりだ!あはは!」
ミノタウロスズの男が笑っていると、
『続きましては、先日99個目の黒星を飾ってしまったジン選手!現在、99勝99敗!この戦いが、100勝目となるのか、はたまた、100個目の黒星を飾ってしまうのか!では、登場していただきましょう!チーム―――』

闘技場の門が開いて行く。
「さて、行くか!」
「ええ」
扉の向こうから、アナウンスの声が聞こえて来る。
『ホワイト・ウイングズ!』
二人は、開いて行く扉に向かい、足を前に出す。
「俺たちの!」
「私たちの!」
扉が完全に開く。
「「初陣だ(です)!」」
二人は勢い良く飛び出す。

それから数年、
「パパ〜、ママ〜」
一匹の白いドラゴンの子どもが、芝生の上を、木の木陰で並んで座っているジンたちに向かって走って行く。

あの後、ジンたちを前にした、チームミノタウロスズは、二人のコンビにボロ負けをし、男の方の土下座で勝負が決まった。
その後、ジンたちは闘技場で無敵のコンビと成った。

「と〜う!」
バフッ
「おっと!」
そのドラゴンの子どもは、木の木陰に座っている、ジンに抱き付いた。
この子は、ジンとヒカルの子どもで名をヒカリと言う。
「相変わらず、ヒカリはパパが大好きね」
「うん!ヒカリ、パパもママも大好き」
「おっ、嬉しい事行ってくれるね〜」
「パパは〜?」
ヒカリがジンの方を向きに聞く。
「ああ、俺も、二人の事が大好きだよ!」
「ママは〜?」
今度は、ヒカルの方を見て、ヒカリが聞く。
「ええ、私も、二人の事が大好きよ!」
そんな事を話していると、ヒカリはジンの膝を枕にしながら寝てしまった。
「やれやれ」
「うふふ、無邪気な寝顔」
「再会した時に、泣き疲れて寝たお前を同じ顔だよ」
「もっ、もう〜、そんな事ばかり言わないでよ〜」
「恥ずかしいか?」
「すっ、少し・・・」
ヒカルが顔を赤くしながら逸らす。
「あはは・・でも」
ジンがヒカルの顔を優しく撫でる。
「俺は、そんなヒカルが好きなんだ」
「・・・うん」
ヒカルがジンに凭れかかる。
「大好きよ。ジン」
「俺もさ、ヒカル」
春の涼しい風が吹き、二人は寄り添いながら眠りにつく。

END

12/01/29 19:49更新 / アキト

■作者メッセージ
前作では、良いコメントを頂きありがとうございました。
前作の外伝話も書こうと思ったのですが、それより先にこっちの方を思いついたので、先に此方を書きました。
前作『言えなくて』の外伝話は、ネタが思いつき次第書きますが、頭の中に他にも多くのストーリーが在るので何時に成るか分かりません。
なので、暫くお待ちください!
今回も誤字脱字が有れば、言ってくれるとありがたいです。

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