連載小説
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無明
「ねえ?どうしたのかな、貴水さん?」

 淫靡さを感じさせるピンク色の明かりの中、私のことをジットリと見つめて、私の目の前の男は『表の世界』における私の名前を呼んだ

「あ、あぁ……」

 私は私を『裏の世界』に叩き落とした張本人を目の前にしながらも怒りや恨み、憎しみをぶつけることができず、ただ口をワナワナと震わせて動揺することしかできなかった
 そんな私の様子を見て目の前の男はニヤニヤと顔とさらに陰湿な笑みを深めて

「あ〜、なるほど……『響』て呼ばなきゃだめかな?」

「……っ!?」

 私の心を弄ぶかのように私の『裏の名前』を口にした
 その時、私の胸には過ぎ去ったのは深い恐怖であり、悲しみであり、怒りであり、憎しみであった

「……どうして……あなたがいるんですか……」

 私は胸から湧いてくる自らをもジワジワと焦がすほどの地底に溜まっているマグマの如く、暗くて熱い負の感情を抑えながら目の前の男に尋ねた
 すると、男は陰湿な笑みからパーッとした爽やかな笑みに切り換えて口を開いた

「いや〜、実は今日君を見かけてね〜……
 本人かな〜?と思って、跡をつけたんだよ」

「……え」

 私はそのことを聞いた瞬間、ガツンと頭を鈍器で殴られたような不快感と衝撃、そして、不安を感じた

 跡をつけた……て、まさか……

 私は斉木の一言でこの状況の経緯が推測できた
 斉木は今日、私のことを偶然見かけて尾行していたのだ
 そして、その結果、私がソープ嬢である事を知って、この店に『客』として訪れたのだ。私を弄ぶために
 しかし、私が不安を感じているのは斉木が『いつ』から私を尾行していたかについてだ

「いや〜、まさかさ……」

―ドクン―

 お願い……『あの後』だと言って……!

 私は目の前の男が『あの時』のことを目にしていないことを必死に祈り続けた
 だが、私の願いは届かず

「的場のやつもさ、もう少し周りを見て告白をすべきだよね〜」

 嘘……

 無情な斉木のその一言を聞いた瞬間、私の足元がガラガラと崩れ落ちていくような感覚を感じた
 この男は私のことをあのファーストフード店に入る前から尾行していたのだ
 そして、私と的場さんの会話も店の中で私達に気づかれないように『全て』盗み聞きしていたのだ
 私はこの男に全てを見られていたことにとてつもない屈辱感を感じた
 だが、この男の私に対する陵辱はこれだけで終わりではなかった

「でもさ〜、貴水さん……君も中々ズルいよね?」

「……え?」

 斉木の唐突な一言に私は思わず思考が止まってしまった

 私がズルい……?

 私は一瞬、この男が何を言いたいかわからなかった
 何よりもいつまでもこの男だけにはこれ以上の辱めを受けるのとこいつにだけは卑怯と言われるが我慢できず口を開いて

「何が……ズルいですか!!言っておきますけど、明日、私ははっきりと告白を断るつもりです!!」

 斉木に対する鬱憤を晴らすかのように怒鳴り声をあげて的場さんの告白を断ることを伝え、これ以上自分のことを揺さぶっても無意味なことをはっきりと口にした
 しかし、斉木はそのことを聞いても動揺するどころか

「ふ〜ん、そうか……それで?」

 変わらず人を小馬鹿にするような態度を崩さなかった
 私は内心、イラつきながらも斉木が何かを企んでいることに気づきながらも

「それでて……あ、なるほど……私がここで働いていることを的場さんに言うつもりなんですね?
 それなら、残念ですね……私はそのことも明日、的場さんに伝えるつもりです!」

 先ほど、鈴ちゃんがくれた勇気によって生まれた『決意』を斎木に向かって強くピシッと言い放った
 恐らく、斉木は私が的場さんの私への想いを利用して、この世界から出ていこうとしていると考えているのだろう
 他人を利用することでしか考えず、そのために多くの人間を踏み躙ることをする人間である斉木だったらそう考えるしか出来ないだろう
 そして、斉木はそのことをネタに私を脅して、的場さんにばらさない代わりに私を弄ぼうとしているのだ
 例えば、自分の子供を私に産ませて的場さんに育てさせることや、かつて、あの『悪魔』が『あの女』を寝取った感覚を自らも味わいがために私を使うことなどが考えられる
 この人達、いえ、この連中はそう言った『嗜好』があるのだ
 そして、そのために他人を平気で傷つけられる残虐性もこいつらには存在するのだ
 私はそれを阻止するために明日の返事を毅然とした態度で断言した。だが、

「……ぷっ」

「……は?」

 斉木は私の予想した自分の計画通りにいかず焦るような反応をしなかった
 それどころか

「あっはははははははははははははははははははははははははは!!」

「……!?」

 当初の計画とは違うことが起きているにも拘らず、口をを大きく開け、目を横に広げて、腹を抱えて不気味に大きな笑い声をあげたのだ

「な、何がおかしいんです!?」

 私は斉木の不快な笑い声をこれ以上、耳に入れるのを止めたいがために斉木に噛みつくように言った
 それは皮肉にも私が予想した当初の斉木の反応そのものであった

「だってさ〜、貴水さんがあまりにも馬鹿すぎて笑えるんだもん」

―ビクっ―

「な、何がです!?」

 斉木はニヤリと顔をひどく歪ませて私の方を見た
 私はその表情を見て、一瞬蛇に睨まれた小動物のように体を震わせて、その後に言い知れない不快感と恐怖に襲われた

「貴水さんさ〜」

 斉木は口を開いて次の言葉を言い放った

「『嘘』はいけないと思うよ〜?」

―ズキ―

「……っ!」

 その一言に私を胸を銃弾で撃ち抜かれたかのような罪悪感と心痛を感じた
 そう、目の前の男は私が最も気に病んでいる『事実』を的確に私に向かって指摘したのだ

 ダメ……このままじゃ……!

 私はこのままでは斉木の言葉によって、ズタボロにされるのを防ぐために立ち直って反論しようとするが

「でもさ〜?これって的場が知ったらどうなんだろ?」

 斉木は私の僅かな反抗すら許そうとせず

「もしかすると……君のことを軽蔑するかもね」

「なんですって……」

 私は斉木のその言葉を静かに怒りを込めながら聞き返した
 すると、斉木は嗜虐心に満ちた顔をして

「だってさ〜、君、自分の『横領』が原因で辞めさせられたくせに的場には自分から辞めたと言ってよね?」

「なっ!?」

 あたかも私が横領したかのように言ってきた
 私は斉木がそのことを口にした瞬間、心の底から来た怒りと憎しみに駆られて

「ふざけないでください!!あなた達が私のことをハメたんじゃないですか!!」

 目の前の私をこの世界に叩き落とした張本人の1人に対して、掴みかかるように言った
 私はこいつらにハメられたのだ
 それなのにこいつはあたかも私が『実行犯』であるかのように嘲りながら語ったのだ
 私はそれに対して、地獄の炎よりも熱くて暗い憤りを感じて、さらに斉木に怒りをぶつけようとするが

「でもさ?それ……誰が本当のことを知ってんの?」

「え?」

 斉木はしれっと私にとって、苦しい事実を告げた

「どういうことですか……」

 私は自らの怒りを必死に抑え込みながら斉木に聞いた
 すると、斉木は顔をニヤけながら聞き返すように尋ねてきた

「だからさ……誰がそんなことを証明してくれるの?証拠は?」

「そ、それは……」

 私はそれを聞いた瞬間、先ほどまでの威勢はなくなりオロオロと言葉に詰まってしまった
 なぜなら、私は斉木が自分をハメたと言う『事実』は知っているが、それを示す『証拠』など一つもない
 そもそも、そんなものがあれば私はこんなところにいない
 そして、私の勢いがなくなったのを見ると、斉木は下卑た表情で呟いてきた

「もしさ……俺が的場に君が嘘を吐いたことを知ったら、どうなるかな?」

「そ、そんなの……わ、私はそのことも的場さんに伝えるつもりです……だから……」

 私は斉木の問いに弱々しくもそんなことが無駄だと主張しながら反論した
 たとえ、的場さんが許してくれなくても私は本当のことを伝えて、嘘を吐いたことを謝罪するつもりだ
 だから、私にはそんなことは脅迫のネタにならないはずだ
 私にはまだそう言った『安心』がかろうじて残されていた
 だが、そんなものはもろくも崩れ去るまやかしでしかないことを斉木の次の言葉で思い知らされるになる

「いや〜、そうじゃないよ……もしも、俺が『先』に的場にこのことを言ったらどうなるかな?」

―ドクン―

「え……」

 斉木の言葉は私に不安と恐怖を抱かせるには十分すぎた
 そして、言葉による陵辱がこれで終わりではなく始まりであることを私は知った

「もしかすると、的場の奴……君が本当に『横領』した人間と思うかもね〜?」

「あ……あああ……!!」

 斉木の嗜虐心に満ちた処刑人が罪人を苛む拷問のような言葉が私を苦しめ、私は恐れ戦いてしまった
 斉木の予想はあまりにもあり得ることなのだ
 『実行犯』と思われ実際に会社をクビになった私と濡れ衣であってもその『事実』を知っている斉木の証言では信憑性は圧倒的に斉木の方が上なのだ
 仮に斉木がその事実を伝えたら、的場さんの私への印象は『自分のことを守るためならば平気で嘘を吐く女』になってしまう
 私は自らが招いたとも言える襲い来る未来からの恐怖に悶え苦しんでいるとさらに斉木は私の心を嬲ろうと口を開いて

「それにさ……もしかすると、貴水さんのことを『自分のことを利用する卑怯者』と思うかもね?」

「ち、違う……私は……」

 私は既に心がズタズタになりながらも微かに残った気力で身体をワナワナと震わせながらもそれを否定しようとするが

「違わないよね〜?だってさ、君、心の底では的場にここから助けてもらおうと思ってるじゃん?」

―ドクン―

「……え?」

 その一言で私の『何か』が崩壊したような気がした
 私は何も考えることができず、呆然としながらも斉木の方へと顔を向けた
 すると、斉木はさらに笑みを深めて続けた

「貴水さんはさ、的場に嫌われたくないだけだよね?
 だから、自分のイメージを守るために的場に自分から本当のことを話そうとしてるよね〜?
 これってさ……」

 私は斉木の言葉など耳に入れたくないはずなのに耳を塞がず、黙って聞いてしまった

「君は的場を自分を助けてくれる『王子様』のように思ってるんだよね〜
 お気楽にさ」

 斉木はニヤニヤと陰湿な笑みを浮かべて私の心を抉った。そして、最後に

「でも……残念だね〜……
 君みたいな一度穢れてしまって、さらには嘘を吐いた人間なんて
 的場が愛してくれるかな〜?」

「………………」

 私はしばらくその言葉が理解できなかった
 そして、私は肩を落とし呆然としてしまった
 だが、斉木は私が気持ちの整理ができていないことを気にも留めず

「ねえ、『響』さん?
 時間が勿体ないから、早く仕事をしてくれないかな〜?
 君の『仕事』を」

 しれっと私にサービスを催促してきた
 私は斉木の言葉による陵辱に打ちのめされ、すぐに仕事をできることなどできない
 いや、それ以上に私は斉木の発言で私はこれから斉木とセックスをしなければならないことを改めて認識させられた

 いや……この男だけとは……絶対に嫌ぁ……!!

 私はこの男と性行為をしなくてはならないことに強い拒絶感と嫌悪感を感じた
 私の処女を奪いながらも私に対して性欲以外にも自らのあらゆる征服感や嗜虐心と言った人間の獣性の中でも最も浅ましくて醜悪な欲求をぶつけようとする男との性行為は
 強姦魔によるレイプどころか獣との性行為と同じくらいの悍ましさを私に感じさせた
 しかし、私は『娼婦』なのだ。お金を払ってもらっている以上は目の前の『客』である男のことを満足させなければならない

 大丈夫……一時間半だけ……一時間半だけ我慢すれば……

 私は心の中で何度も自分に言い聞かせた
 目の前の男は確かに3コース分、つまり、4時間半も私のことを指名してきた
 しかし、幸いにもここのスタッフは私に無理ならば、他の嬢と代わることを許可してくれた
 つまり、かつて頑張って受けていた大学の授業長さと同じ時間である1時間半だけ目の前の男と性行為をすれば少なくとも今日は解放されるのだから耐えられるはずだ
 私は無理矢理自分を奮い立たせて意を決した

「あ、そうだ……『貴水』さん、一ついいかな?」

 すると、斉木に対して今度はニッコリとした笑顔を向けてきた
 私はその笑顔を見た瞬間、ゾッと言いようのない恐怖に襲われ立ちすくんでしまった

「な、なんですか……」

 私は斉木のことを恐れるあまり少し声を震わせて斉木の言葉を待った
 もはや、私には自分の恐怖を隠す余裕すらもなかった
 そして、斉木は屈託のない笑顔で、いや、目に獲物を甚振ることを楽しもうとする地獄の悪魔のような悍ましい光を宿らせ、歪ませた表情で

「今夜は長いけど……楽しませてね?」

 私にとっては『死刑宣告』に等しい一言を告げた
 だが、悪魔の告げる絶望はそれだけでは終わりでなかった

「あ、もし……俺のことを満足させることができなかったら……的場に言うからね」

「……!?」

 斉木は私の逃げ場を封じるた
 そして、私はその言葉が暗示する未来に殻をビクリと震わせて恐怖した

「嫌だよね〜?自分のことを愛してくるかもしれない唯一の男から嫌われるのは
 自称『悲劇のヒロイン』の『奏』さんは?」

「っう……」

 私は斉木の一言に反論したかった
 しかし、それはできなかった
 なぜなら、私は心のどこかで的場さんに軽蔑されることを恐れていた
 それが『自己保身』によるものからなのかは自分でも理解できなかったが

「……どうしたらいいんですか?」

 私は自分で思考を放棄してしまい、憎い相手である斉木に懇願するようにどうすれば的場さんにバラさないでくれるか弱々しく聞いた
 すると、斉木は優越感に浸りながら笑って

「じゃあ、今日は俺の言う通りにしてくれる?」

 私に少しでも反抗的な態度を取ることを禁じた
 私はそれを聞くと

「……わかりました……じゃあ、服を脱がしますね」

 反抗する気力を持つことすらできず、斉木の服に手を伸ばして仕事に取り掛かった
 
「あ、ちょっと待った。響さん、先に脱いでくれない?」

 すると、斉木は私にお願いと言う名前の強要を告げてきた

「わかりました……」

 私はただそれに素直に従うことにした
 どうせ、後から裸で抱き合うことになるのだ
 なら、今から今から全裸になって裸体を見せつけても大差ないはずだ

―ジィー―

「………………」

 私は自分の服の左脇腹にあるファスナーを下ろしている時に斉木はその様子をジッと見つめながらまるでストリップショーのストリッパーを見るかのように愉しんでいた

 くっ……

 いや、これは『ストリップショー』そのものなのだ
 斉木は私が羞恥心に駆られながら、自らの服を脱ぎ去っていく矛盾に満ちた痴態と苦悶の表情、そして、露わになっていく私の裸体を視姦しながら観賞しているのだ
 私はそんな状態に置かれながらも逆らうことのできない自分の無力さを悲しみながらもファスナーを下ろし終えると自らの服の胸元を掴むと

―ボト―

「へえ〜……相変わらず、良いスタイルしてるね〜?」

―ギュゥ―

「っ……」

 服を足元に下ろし、身に纏う物が下着一枚になると私は両腕で自分を抱きしめるように乳房を隠すと斉木は嬉しくもない賛辞を贈ってきた
 自分でも言うのはどうかと思うが私は胸が大きく、ウエストも引き締まっており、ヒップラインも整っていることからスタイルは抜群なのだ
 だけど、この時ほど私は自分のこのスタイルを恨めしく思ったことはない
 私が悔しみながら胸を隠していると

「はいはい、じゃあ、次は……下着も脱いでよ」

「っ……はい」

 斉木は私に自らの秘部を守っている最後の砦を取り除くことを促してきた
 私はやはり逆らうことができず、渋々自らの胸を隠している両腕による盾を捨てて、下着の身頃に手を伸ばした

―スルル―

 そして、すぐに終わることを願って私は下着を足元へと下ろした

「………………」

 私は生まれたままの姿になると左腕で右腕を抱きしめて乳房を、右腕を自分の下腹部へと伸ばして自らの秘部をかろうじて隠した
 そんな私の僅かな反抗を見て斉木はニヤニヤ嗤いながら

「ねえ?俺も服を脱ぐから手伝ってくれない?」

 と自分の服を脱がす手伝いをすることを催促してきた
 それは私に自分の裸体を隠す腕による壁を無くせと言う意味も遠回しに言ってるのだ

「……すいません」

 しかし、私はそれに従ってすぐに全裸のままで彼の真正面へと身体をモジモジと動かしながら寄った
 
「じゃあ、頼むよ?」

 そして、私が近づくと斉木は優越感と愉悦に満ちた笑みで私に対して、顎で使うように自分の服を脱がすように言った

「はい……じゃあ、まずは上着から脱がしますね……」

 私はそれを甘んじて受けて斉木のシャツのボタンに手を伸ばし、そのままボタンをはずし始めた

―プチ―

―プチ―

―プチ―

 ボタンを外していく度に斉木の裸体が露わになっていき私の目に映り
 私は目の前の男とセックスをしなければならない現実を嫌でも理解させられることを歯を噛み締めながら感じた

「あ、後は自分で脱ぐから、脱ぎ終わったら今度は下の方を頼むね」

 私がシャツのボタンを外し終えると斉木は後は自分で脱ぐことを告げ、その後に私にズボンを脱がすことを指示した

「はい……」

―バサ―

「じゃあ、ズボンを脱がさせて頂きます……」

―ガチャガチャ―

 斉木がシャツを自ら脱ぎ去るのを確認すると私は 斉木の指示に従ってズボンのベルトを外して掴み外し次はファスナーに手を伸ばした

―ジィー―

 そのままファスナーを下ろすとパンツ越しに何かが脈打っているのがわかった
 私はそれを目にして一瞬、引け目を感じたが意を決してズボンとパンツを一緒に下ろした

―ボト―

 うっ……

 パンツを下ろして見るとそこから男性の股間特有の鼻に突く異臭が漂ってきた
 私はこの仕事で何度もこの臭いを嗅いできたが、やはり馴れるものではない
 それに今回は自分が最も嫌悪している男の臭いであることもあって、吐き気を催すほど最悪だ
 そして、私が臭いに馴れて目を向き直すとそこには先端が黒澄んでいる肉棒があった

「いや〜、君にとっては僕のを見るのは二回目になるかな?」

「うぅ……」

 私は斉木の言葉で悔しくて泣きそうになった
 私はこの男の肉棒に処女を捧げたのだ
 あの時は初めてで恥ずかしかったことや加藤先輩がいなくなったショックもあり、私はこの男の肉棒をはっきりと見ていなかったのだ
 だけど、確定した。この男は相当、女で『遊んでいる』
 それなのに私はこんな男なんかに『初めて』を捧げてしまったのだ
 私が後悔に明け暮れていると

「そう言えば、あの時の『貴水さん』は本当に気持ちよさそうだったよね?」

「え……」

 斉木は私の『初体験』の時の様子を楽しそうに語った
 私はその瞬間、思考が止まってしまった

「『貴水さん』、初めてだったのにあそこがあんなに濡れてたし、俺が色々なところを突く度にいい声出してたよ?」

「ち、ちがう……あれは……」

 斉木の語る事実を『演技』だったと斉木にも他ならぬ自分にも言い聞かせようと口を開こうとするが

「へえ〜、その割には君の身体はかなり反応してたよ?」

「なっ……!?
 う、嘘よ……」

 斉木の言葉によってそれは妨げられてしまい同時に私の心を動揺させた
そんなはずはないと私は必死に否定しようとするが

 私は……あの時……

 必死に否定しようとする度に私の脳裏にはあの夜のことが蘇り続け私が斉木にイかされたことを思い知らされることになった
 斉木はあの時、最初は処女膜を失った破瓜の痛みを感じていた私を気遣った後にゆっくりと腰を動かし、その後に私が慣れてくると私の感じやすい所を的確に何度も何度もリズミカルに突いて来た
 そして、私はそれに対して演技などではなく、嬌声をあげて本当に私は快楽を受け入れていたのだ

「………………」

 私が自分のそんな浅ましさに困惑と嫌悪を感じてしまい、言葉に詰まっていると

「ねえ?響さん?何、そんな顔してんの?」

「え?」

 斉木が突如、顔を険しくしてそう尋ねてきた

「あのさ、君はいつもそう言う顔で接客してんの?」

「……違います……」

 私は仕事で仕方なく、いつも営業スマイルをしているが今の相手が相手のために俯きがちの表情をしている
 どうやら、斉木は私のそう言った態度が気にいらないと言う理由で私をさらに辱めることを考えたらしい
 だけど、私はその悪辣な罠から逃れることはできなかった

「じゃあさ、とっと笑ってくんない?
 こっちは金払ってんだから、それじゃあ、俺は満足できないよ?」

 斉木は私に『笑顔』でセックスをしろと強要してきた
 そして、斉木は同時にそうしなければ的場さんに私のことを教えると遠回しに脅してきた

「……これでいいですか?」

 私はヒクヒクと震える口元と目元吊り上げて、あまりの屈辱と悔しさ、悲しみ、そして、悲しみによって涙を流しそうになりながらも無理矢理、笑顔を作った
 私は従うしかできなかった
 すると、斉木は私の作り笑顔を見ると優越感に満ちながら

「まあ、合格点だね……じゃ、服を片付けてね……
 あと、服を片付けたら俺の前に真っ直ぐ立つように」

「はい……」

 斉木は自分で靴下を脱ぐと足元にある自らの服を指差し、私に下女に命じるようにそれを片付けることとその後のことを指示してきた
 私はせめて涙を流すまいと意地を張りながらそれに従った
 そして、斉木の服を畳み終えると私は腕を下に垂らして一糸纏わぬ自分の姿を斉木に晒した

「こうしてお互いに裸で向き合うのも久しぶりだね〜」

「う……うぅ……そうですね……」

 私と斉木は向かい合った。それも互いに裸体を晒し合いながら
 私の乳房も
 私のへそも
 私の腕も
 私の脚も
 私の陰毛も
 私の秘部も全て斉木の目に映っているのだ
 私は本当はなるべく自分の腕で少なくとも胸と股間は隠したかったが
 ここは風俗店であり、私はここの娼婦なのだ
 だから、私は自分の裸を目の前の客に隠さずに見せつけなくてはいけないのだ
 そんな考えが身体と心に染み渡っていた
 そして、何よりももし、ここで斉木の気に障ることをしたら、的場さんに今までのことをばらされる恐怖が私の心を支配していた
 だけど、同時に私は見たくもない斉木の裸を見せつけられている
 実は私は斉木の裸体の全てを目にしたのはこれが初めてだ
 あの時は私は『処女』であったことから恥ずかしくて、会社では紳士の皮を被っている斉木に

『恥ずかしいので……暗くして下さい……』

 と明かりを暗くしてなるべく身体を見られないように頼むと
 少し、間を置いてから斉木は見た目は爽やかな笑顔でそれを了承してくれた
 かつての同僚の女子達ならきっとあの笑顔を向けてもらえたことに喜びを感じると思うが、失恋したばかりの私の心は何も感じるものはなかった
 だけど、そんな斉木の笑顔も所詮はこの男の狡猾な本性から来るものでしかなかった
 この男は職場での地位や評判、体面を守るために紳士の皮を被っているにすぎない
 だけど、今の私に対してはこの男はそんなことを気にせずに遠慮なしに自らの欲望をぶつけられるのだ

「さてと……実は俺、こう言う店は初めてなんだよね〜
 今から楽しみだな〜」

 斉木はニヤニヤとかつては見せなかったよく学校などで自分よりは下に見ている人間を小馬鹿にして、自らの虚栄心と優越感を満たす人間のような笑顔をして私に自らの感情を向けた
 話の内容としてはたぶん、間違いないだろう
 しかし、それは決して斉木が女性に対して真面目だと言うのが理由ではない
 斉木はルックスも表向きの人当たりも良く、さらにはかつての直属の上司である加藤先輩が失脚する前から斉木の収入は高く、加藤先輩がいなくなったこの男はそれに加えて地位まである
 女にとって、これほど魅力的な男はいないだろう
 女の中にはこう言った男と仲が良いことをステータスとする独特の価値観が存在するものだ
 斉木に声をかけられる大多数の女子は逆上せ上って、簡単に心を許すだろう
 だから、斉木は女には不自由などせずにすみ風俗に来る必要がないため、こう言った店は初めてなんだろう
 私はそれを聞くと歯を噛み締めながら作り笑顔のまま

「あの……じゃあ、こっちの部屋に来てください……」

―ギュ―

「お、よろしく」

 自分の心を必死に殺して斉木の手を取って自らを穢すことになる場所へと斉木を誘導した
 いや、既に私の身は穢れているのだ
 私はどう自分を言い繕うが自らの身体を使って操を売り、それによって糧を得て、借金を返そうとする売女なのだ
 今さら、そんなことに嫌悪感を抱いて悲嘆することすらおかしいと思うがそれでも私は『知人』相手に売春行為をするのは『貴水 奏』と言う表の自分も穢れる気がしてしまって悲しかった

「そこに座ってください」

 浴室に着くと私は斉木に座面に大きな凹みがあるいわゆる世間では『スケベ椅子』に座るように言った
 すると、斉木はすぐに座った

「少し、待っててください」

―シュコシュコ―

―ニュルニュル―

 私はそれを確認すると自らの仕事道具の一つであるソープを初めに腕に、次には胸に塗ると

―ニチュニチュ―

「う……」

 そして、最後は自らの秘部に塗り手繰った
 自らの手を秘部に持っていき、粘液状であるソープを塗る様子は自慰を彷彿させるだろう
 だが、私のこう言った痴態を見て愉しむ客も多くいた

『いや〜、響ちゃんみたいな真面目で可愛い娘が乱れる姿を見れると男としては嬉しい限りだよ』

『まったく、最近の若い娘は親が泣いてるぞ』

 色々な客の言葉が私の心を悲しませ惨めにする
 中には娼婦を買っているくせに偉そうに説教をして、自分の優越感を満たそうとする四十代くらいの男達もいた
 しかし、そんな辱めを受けても男達の欲望の捌け口である私達は必死に男が好むことをしなくてはならない
 そして、そんな男達と同じ存在である斉木は私の痴態を見て、言葉を出さず、顔をニヤケさせて娼婦に堕ちた私の艶姿を望んでいた
 私はそれを心の中で苦に思いながらも仕事を再開しようとした

「じゃあ、最初は背中から洗わせて頂きます」

「ああ、わかったよ。任せるね」

 私は全身にソープを塗り終えるといつもの様に背中から客である斉木の身体を自らの身体を使って、ソーププレイと言う名前の前戯を行おうとした

―ニチュ―

「うおっ!?」

「ん……」

 私の泡に包まれた乳房が背中に当たるとソープに塗れたことで粘液上の物質が生み出す音が生まれ私はこれでこの男と肌を重ねるのが二度目となった
 だけど、その後に今まで私を含めた数多くの女性と肌を合わせてきたはずであろう斉木が身体を震わせて素っ頓狂な声をあげた
 恐らく、さすがにこの店で風俗嬢とするようなセックスはしていないのだろう
 私は斉木がそれに不快感を感じていることを期待して背中から乳房を離し

「あの……もし、嫌なら……普通に洗いますけど?」

 なるべく斉木に対するサービスを淡白なものにしたいがためにソーププレイだけでも削ろうと話を持ち込むが

「は?金払うんだから、最後までみっちりやってくれよ
 それとも……そんなに俺に接待するのが嫌なわけ?」

「い、いえ……そう言うわけでは……」

 そんな私の魂胆を見透かしたかのように斉木は先ほどまでは一応は被っていた笑顔と言う仮面を脱ぎ去ったかのように私に対して、心が冷えるほどの恐ろしい目つきで言ってきた
 そして、同時に私に対して『今後、手を抜くようなことを考えたら的場さんにばらす』と無言の圧力をかけてきた
 私は本当は斉木とは絶対にこんなことはしたくなかったが、この場でこの男の支配欲と性欲を満たすことでご機嫌を取ろうとした

「ふ〜ん、じゃ、続けてね?」

「はい……」

 斉木は私が自分に従う態度を示すとケロッとした笑顔に戻り、私にソーププレイを続けるように言った
 私は斉木のことをなるべく刺激しないように泣くのをこらえながら震えている身体を斉木の背中に再び接触させようとした

―ヌチュ―

 そして、再び私の身体が乳房が再起の背中に触れると今度はすぐに身体の前部を押しつけ、全て重なり終わると私は

「じゃあ、動かしますね」

―ヌチュ―

―ヌチュ―

―ヌチュ―

 斉木によってもたらされた数々の恐怖から来る震えを誤魔化し、斉木に悟られぬように私はいつもより上下に身体を動かす動作を速めた

「おぉ……!!いいね……」

「んん……」

 斉木は私のそう言った痴態とソープと女体の感触を背中越しに感じて快楽と感嘆の声をあげた
 私は乳房と肌から来る感触に負けないように声を押し殺していた

―ヌチュ―

―ヌチュ―

―ヌチュ―

 私の身体が上下する度に部屋にはソープの粘液が泡立つことで生じる淫靡な音が響いた
 それが20回ほど響き終わると私の身体を大量の泡が覆っていた。そして、私は次の部位のことを洗うため身体を一度斉木の背中から離した

「背中は終わりました……次は腕を洗わせて頂きます」

「ふ〜、中々悪くないね……じゃあ、頼むよ」

「はい」

 斉木は私が次に腕を洗うことを言うと初めて味わったソーププレイに満足しながら自分の右腕を差し出してきた

―ギュチュ―

 私はそれを確認すると斉木の差し出した腕に先ほどのプレイで泡が多く生まれた身体を絡みつかせるように抱きつき

「それじゃ、動きますね」

―グチュ―

 ん……

―グチュ―

―グチュ―

―ネチョ―

―グチュ―

 私は斉木の腕を登り棒の鉄棒の様に支柱して、自分の身体を再び上下に往復させながら斉木の右腕を擦っている
 私の身体が上下する度に私の恥部が斉木の腕に当たり微かに快楽を感じさせる
 しかし、それは私が淫乱だからではない。こんなことはいつものことだ。私は普段通り私は自分がイかないように身体の動きに緩急をつけながら制限した
 すると

「ねえ、響さん?もしかすると……感じてる?」

 斉木は私の動作から気づいたらしく今、私の最も聞かれたくないことを聞いてきた
 私はそれに対して仕方なしに

「……少しだけ……」

 私は本当のことを言った
 今、ここで『感じてない』など嘘を言っても女と何人もセックスしている斉木には見破られる可能性が高い
 さらにはそれを知っていてもわざと『じゃあ、スピード上げてよ』と言って、ペースを上げることを強要しかねない
 最悪の場合、機嫌を悪くする可能性もあり得る
 だから、私は本当のことを素直に包み隠さずに口にした
 しかし、私の考えた予想は私の予想しなかった最悪な方向で外れた

「ふ〜ん……じゃあ、右腕はもういいから、左腕を頼むよ……さっきよりもスピードを上げてね」

「え……」

 私はその瞬間、思考が飛んでしまった
 そして、私が落ち着きを完全に取り戻すまでの猶予は与えられはしなかった

「え?じゃないよ
 早く、左腕も頼むよ」

 斉木は私に向かって左腕へのプレイを催促してきた

「ほら、どうしたんだよ?」

「え……だ、だけど……ペースを速めたら……」

 私は斉木に対して無駄だと頭では理解しながらも身体の動きを速めることで起きることを遠回しに伝えて、なんとか斉木に指示を撤回してもらおうと今だけは目の前の人でなしにもあると信じている『良心』にすがろうとするが

「ん〜?何が問題なのかはっきりと言ってくれないとわからないな〜?」

「ぐっ……それは……」

 そんなものは存在しなかった。むしろ、斉木は私のことを猫が捕らえた獲物を弄ぶように私のことを苦しめるように言ってきた
 しかしそれでも私はせめて言葉に出せばその意味を知った斉木が自分の身体が汚れることを気にして取り止めることを願って、恥を忍んで思い切って言った

「その……感じすぎて……イっちゃって……あそこから愛液が溢れて……汚いので……ペースを速めるのは……」

 私はしどろもどろ自分が口にした卑猥な言葉による恥辱と屈辱のあまりに心が苦しくなり泣きそうになった
 しかし、私は自分がここまで勇気を振り絞って言ったのだから流石の斉木でも同情もしくは自分の都合で撤回してくれると考えた

「あぁ、なるほど……」

 私は一瞬、斉木の態度に安堵を覚えた
 しかし、そんな淡い希望は簡単に打ち砕かれることをすぐに思い知らされることになった

「あ、だけど俺は別に問題ないよ?」

「……え」

 斉木はあっさりと私の希望を握り潰し、私に笑顔で絶望を与えた
 
「だってさ、この後にあの風呂に入るんだよね?それにさ、イくかイかないなんて響さんの頑張りしだいじゃん?」

 斉木はバスタブを指差し私の逃げ場を封じるように汚れなど気にしないと口にして、私が感じやすいことを誰よりも知りながらも絶対に無理なこと耐えろと告げてきた

「で、でも……」

 はっきり言えば、このプレイは一種の『自慰行為』になってしまう。今まで、多くの客に痴態を見せ、性行為を行ってきた私でも自ら快楽を得るために浅ましく秘部を擦る姿など見られたくない
 私はもはや、自分に逃げ場などないことを悟りながらも見苦しくも食い下がってなんとかこの要求だけは避けようと必死に俯きながらも懇願した
 だけど、そんな私の態度は私が最も恐れる事態を招くことになってしまった

「ふ〜ん……いいんだ?
 的場に喋っても?」

―ビク!!―

「……!?」
 
 斉木は私のその態度を見て再び私のことを脅してきた
 私はそれを聞いた瞬間、先ほどまで感じていた苦しみよりも的場さんに知られることへの恐怖が勝り即座にさっきまで必死に守ろうとした尊厳をかなぐり捨てて顔を上げ

「わ、わかりました……斉木さんの言う通りにしますから……
 的場さんには言わないで……」

 私は斉木に対して奴隷が主人に対して命乞いをするようにすがって従おうとした
 しかし

「だめだ」

―ゾク―

 斉木はゾッとするほど恐ろしい低い声でそう呟いた
 私はその声に身体を止めてしまった
 すると、斉木は口を開いた

「あのさ……さっきからこっちがやって欲しいことをやらないで的場に言われたくないからやるなんて……何様のつもり?
 こっちはお金を払ってんだよ?
 あ〜あ、気分が冷めたよ……お金の無駄使いだね」

「そ、そんな……」

 私は斉木の言葉を聞いて打ちのめされ一焦りとともに何としてでも斉木の機嫌を取ろうと躍起になるが

「……じゃあね」

「あ……」

 斉木は椅子から腰を上げて浴室から出て行こうとした
 私はそれを演技だと気づいており、斉木が何を望んでいるのかも気づいていた
 それが私にとっては苦渋の決断であることも

「待ってください!!」

「何?」

 それでも私は斉木が帰るのを引き止めた
 もちろん、これが斉木の望んだことである、
 それが斉木の望む自分のことをさらに苦しめることに繋がる陵辱への入り口であろうと私は見苦しくも行うしかなかった

―スタ―

「お願いです……私に……私に……斉木さんの御奉任をさせてください!!」

 私は浴室の床に跪き手を地に着け頭を恭しく伏せて斉木の望みであろう態度で懇願した
 そう、斉木の望むものとは『隷従』であった

「斉木さんの望むことなら、何でもします……!!だから……私とセックスしてください!!」

 私は自らのプライドも完全に捨て、涙を流すのもこらえて形振り構わずに必死に続きをすることをそう叫んだ

「ふ〜ん……もう、文句は言わないよね?」

 斉木は私のことを訝しげに見るふりをしながら、支配欲と嗜虐欲が満たされながらもさらなる愉悦と満足感に満ちた目を向けて

「ま、それだけ言うのなら……仕方ないかな」

 すぐに椅子に座り直し左腕を差し出してきた
 私はそれに対して、心の中では敗北感と屈辱感、悲壮感に暮れながらも必死に涙をこらえて

「ありがとうございます」

 と媚びを売るように偽りの笑顔を浮かべて感謝の言葉を告げた

「それじゃあ、左腕を洗わせていただきます」

「とっとと、やってくれよ?」

「はい」

 私は差し出された左腕に傍に寄ると

―ギュチュ―

「ん……」

 私は斉木の腕に絡みつくように抱きつくと休む間もなく

―グチュ―

「んぁ……」

 すぐに右腕の時の様に身体を上下に動かした

―グチュ―

―ネチュ―

「あん……」

―グチュ―

―ネチュ―

「はあはあ……んん……」

 最初は身体を慣らすために先ほどと同じペースで身体を動かしていたが

―グチュ―

―ネチュ―

―グチュ―

―ネチュ―

「はぅん……!」

 身体が慣れていくと斉木の指示通りに身体のペースを速めた
 すると、私の身体が上下する度に部屋にはソープが泡立つ音と愛液が溢れる音が満ちて、私の乳房は激しく揺れ、私の秘部には動作による接触によって快感が走っていた

―グチュ―

―ニチュ―

―グチュ―

―ニチュ―

―グチュ―

―ニチュ―

「んん……!!」

 部屋に私の愛液の音が完全に響き渡るほどになり、私が快感に声を抑えられず淫らな声をあげると

「ふ〜ん、そんなに他人の身体を使ってオナニーするのが気持ちいの?」

「そ、それは……あむ……」

 斉木は屈辱的な質問をしてさらに私を辱めようとした
 私はその質問に答えたくなどなかったが、もしここで斉木の怒りに触れてしまえば斉木が私の最も恐れていることをするはずだ
 そうなれば今までの陵辱を耐えてきたことが水泡に帰してしまう。そうならないために私は

「……ぃもち……ぃいです……んん……!」

―ニチュ―

―グチュ―

 私が嬌声からなんとか振り絞って口に出した囁きに斉木は

「ん?何かな?」

 答えを知りながらも底意地の悪さを魅せながらとぼけながら再び聞いてきた

「んん……!」

 私は自分が自ら招いた襲い来る快楽に耐えながら再び口に出そうとした

―ニチュ―

―グチュ―

「……気持ちいいです…!!」

 私は斉木の最も望んでいるであろう答えであり、
 私が最も答えたくもない本当のことを自らの嬌声と淫靡さが入り混じった声で答えた
 私は身体を上下に動かす度に自らを絶頂と言う奈落へと導く快楽を感じてしまっていた

―ニチュ―

「あん……」

―グチュ―

「んぁ……!」

 いや!イきたくない……!

 私は自分の意思を介さない快楽を感じていく度に自分が自分でなくなるような錯覚に囚われ恐怖を感じていた
 しかし、私は自分がその快楽を得ることで辿りつく絶頂と言う名前の破滅への歩みを止めることはできない

―ニチュ―

「うぅん……」

―グチュ―

 ダメ……!誰か助けて……!

 自分が心のどこかでこの快楽を求めていることを実感した
 だけど、私は決して快楽を望んでいる訳ではなく、むしろ、拒絶しており自らの浅ましさに苦しさを感じていた
 その葛藤を意に反さず私の身体は既に汗に溢れており視界はぐらついていた

―ニチュ―

「うぅぅ……!!」

 イく……!イく……!!イっちゃう!!

―グチュ―

 そして、視界が一瞬弾けたかと思った瞬間

「あふっ……!!あぁん!!」

―ギュ―

 斉木の腕にしがみつかなくては立ってはいられないほど身体に痙攣による震えが生じて、同時に脱力感、そして、苦しいほどの快楽が走った

「おぉ……すごいね」

「はあはあ……あっ……」

―ドサ―

 私が絶頂による快楽による疲れで呼吸を荒げていると斉木は身体を腕から振り払った
 そして、自慰によって立っていられない私は支えを失ったことでそのまま床へと投げ出された

 私……この男の前でイっちゃったんだ……

 私は自慰による快楽の波が完全に引かず朦朧とする意識の中で床に倒れながら自分が最もこんな姿を見せたくない男に見られたことに悔しさと共に惨めさを感じた
 しかし、斉木による陵辱はまだ終わりではなかった

「ほら、立てよ……自分だけしか満足すればいいのか?」

 斉木は私の事情など気にせずに残りのサービスを続けるように催促してきた
 もはや、斉木がどんな顔をしているのか私にはわからなかったがおそらく、ひどく歪んだものであろう

 そうだった……まだ……終わりじゃないんだ……

 私はその言葉を聞いて力が入らない身体を必死に起き上がらせた
 そして、これがまだ明けることのない暗闇の入り口でしかないことを気づかされた

「ごめんなさい……今から、ソープをもう一度身体に塗らせてください……」

 私は斉木のご機嫌を取るように必死に笑顔を繕い、疲れで覚束ない脚を前に進ませてソープに手を伸ばしたながらこう心の中で叫んだ気がする

 助けて……加藤先輩……的場さん……

 自分が助けを望んでも助けを求めることのできない人達に助けを求める声を
 そして、私の長くて冷たい暗い夜は続いていく
14/05/25 22:26更新 / 秩序ある混沌
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■作者メッセージ
 『無明』……それは仏教の言葉で『道理に暗いこと』を意味する言葉です……
 人は『無明』の世界では多くの苦しみを感じ続ける……
 しかし、それは『光』が足りないからと言う意味でもあります……
 彼女に光が届くか……その光が何なのか……その光が本物であるか……
 さて、劇はまだ続きます……どうか、皆様方もう少し、私の劇にお付き合いください

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