連載小説
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37 技は盗むものって言葉を思い出した
「うぉおおおっ!?」
ゆ、夢か…いやはや…すさまじい夢を見たぜ…
え?『どんな夢を見たか聞きたくないけど…どうしてもって言うから聞いてあげるんだからね!!』って?
そこまで変にツンデレっぽくしなくてもいいじゃないか…
などと、言ってもいないであろう読者諸君にこう告げて、今現在見た夢の内容を話そうとしている俺は確かにそこにいた…
大丈夫!!身振り手振りで表現してみるからさ!!

俺が今日もまたいつもと似たような変な夢を見るのかと思って、眠りについてから多分しばらくしたときだろう…いきなり、見ていた夢が変わったんだよ!
気がつくと俺は良くわからない平原に立っていたんだ…
そして、小さい女の子がこっちに向かって手招きをしていたんだよ…
俺はそのことに関しては一切突っ込まず、まるで当然のようにその子のところに歩いて行ったんだ…
すると…いきなり小さかったはずの女の子が大人の女性になり、その後俺の体の大きさが…まるで小人にでもなったかのように縮んだんだよ!!
そして、小さかった女の子は今ではすばらしい巨乳の持ち主に…!!
ここまでは良かった…性格に言えば、その谷間の間に挟まれる瞬間までは…まるで天国にいるかのような夢だったわけだよ…

だが、さすがは俺が見た夢…一筋縄ではいかなかったんだ…
胸の間に挟まれた俺は容赦なくその女性の胸に押しつぶされ、呼吸が出来なくなったわけですね…?
で…頑張ったが運悪く力尽きた…と、そこで夢は終わったと思っていたんだ!
だが、気がつくと俺は廃墟が立ち並ぶ場所にいて、ふと空を見上げたんだ…
すると、空を覆うほどの巨大で隕石のような胸が降って来たんだよ!!
で、悲鳴を上げたってのが…俺の夢さ!!
実は…凄く内容をカットしてるけど…まぁ、あながち伝わったと思うぜ…
だが、夢だったとはいえ、俺は胸が大きいとこんな恐ろしいことが起こりうるという事実に気付くことが出来たんだ!!
しばらくは、胸が大きい女性は遠慮したいぜ…

そしていつもと同じように食事をして、今日は珍しく久しぶりにジャグリングをしてみたんだ!!
まぁ、どうでもいいことだけどね?
それにしても、今日は依頼が届くのが遅いなぁ…
いつもなら1時間くらい前には依頼を持ってきている紅緒が今日はまだ来ていないんだよ…まさか、まさか昨日の件で仕事が楽になったからってまだ酒を飲んでいたりしないだろうなぁ…
そう思っていると、いきなりまたもや宿の扉が乱暴に開けられたんだ!!
扉の金具が壊れたらどうするんだ!?や、やめてくれよ…

俺の宿の扉を思いっきりすさまじい勢いで開いたのは…奉行所三人組みの一人…マスカットだったんだよ!!
あれ…?紅緒さんは…どうしたんだ?
「あの…紅緒さんは…?」
俺は思わず聞いてみたわけだけど…このとき、ジャグリングに使っていたコップが全部半壊したんだ…
コップなんか、ジャグリングに使用しなければ良かった…

俺がちりとりの中に割れたコップの破片を入れているときにマスカットが俺に向かっていってきたんだけど…
「紅緒なら、今日は飲んでるから来ないよ…で、これが依頼書ね?じゃ…」
そう言って容赦なく扉を思いっきり閉めてマスカットさんは帰ってしまったんだよ…
その瞬間、俺の扉を支えていた金具の留め金が吹き飛ぶ始末…
だ、だからゆっくりと閉めて欲しかったんだよ…

俺が必死に金具を修正している間にメリィは依頼書にちらっと目を通すと、興味もなさそうに自分の部屋に戻っていったんだよ…
せめて、手伝ってくれるとうれしかったぜ…本気で…
誰も…誰も手伝ってくれなかったんだ!!
俺の手伝いをして飛んでいったネジ一本とってくるのがそこまで嫌か皆!?
俺は非常に言いたいことができたが…これ以上精神的にストレスを溜めるのは身体によくない…よな?

そして…扉の修理が終わってから、俺は割れたコップの破片を念入りに掃除すると、机の上にナイフで止められた依頼書に目を向けたんだ。
最近、俺の扱いが目に見えて酷くなってきているが…こんな俺でも主人公って事を忘れているんじゃないのか?
今までだって…俺が戦闘中にどれだけ主人公らしいことをしてきたか…
読者のみんななら、わかってくれるよな?な!?

で、肝心の依頼書の内容だが…

〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:蔓木 葡萄(つるき ぶどう)
内容:温泉宿大清掃計画
『今回は、私の依頼を受けていただき…ありがとうございます
 今回、築30年記念、蔓木温泉の大清掃の時期がやってきましたので…
 依頼を受けてくれた方…当宿に泊まりに来てくださった方も手伝っていただけるようなので…
 よろしくお願いします!!仕事が終わった際は皆さん、温泉も用意しておりますので!』

報酬:温泉数回無料券 温泉葡萄饅頭

〜〜〜〜〜〜〜〜

これだよ!!俺はこういう感じの依頼を待っていたんだよ!!
いやぁ…思えば、今まで自分から喜んで行った依頼は一つも無かったけど…
これは喜んで行かせてもらうぜ!!だって…ただの掃除の依頼じゃないか!!
少なくとも…変な戦闘の依頼の900倍はいいぜ!!
ふっ…コレから先の依頼は全部…コレでいいぜ俺は…

まさに心のそこから喜びを隠せない俺は、この依頼を受けることを…
考えることも無く決めた!!行くに決まっているだろう!!
ついでに、他の宿屋の内装や気を使っているところなどを参考にもしたいし…
温泉ってのも気になるぜ…いや、口コミで聞いたことがあって…
何でも、心の疲れも取ってくれるそうじゃないかよ!これはもう…行くしかないだろ!!
でも…さすがに一人で行く勇気は…ないぜ…
へ、へタレってわけじゃないぞ!?これは…そう!計画だよ!!
ま、まぁ、計画の内容は聞かないでくれ!!

それで…誰を連れて行こうかなぁ…
俺はそう思ってふと周りを見回してみると…何人か残っているなぁ…
ここで誰を連れて行くかによって俺の疲労は大きく変わるんだが…
そうだ!!
このタイミングだからこそ…俺は日ごろの感謝の気持ちを表そうと思うんだ…
だから、俺が世話になった奴らを誘っていこう…

そして俺は、ナナとジュンコ…そしてソフランとククリを連れて行くことにした訳だぜ…
ナナはいつも夜遅くまで宿の掃除をしてくれているし…ジュンコは俺の面倒を良く見てくれるんだよ…
そして…ソフラン!!いつも俺の宿屋のあちこちにある鉢植えに水をやったり、家庭菜園の野菜たちに水をあげてくれるいい人だよ!!
本音…ソフランの事を覚えている人は何人いるんだろうか?
この究極的とも言える空気キャラ…ここで出すなんて誰が予想しただろうか!?
初め…モンスターラグーンのメンバーの自己紹介をされたときに俺を縛っていたイメージしか初めはなかったが……無口ながらも自然を愛する女性だよ!
そして…ククリはモンスターラグーンのメンバーや俺に、間食時コーヒーを作ってくれるんだよ…この心使いはそう簡単に出来ることじゃない!
でも…本人は『ば、バカ!!わ、私が飲みたかったからついでに作ったに決まっているでしょ!?』って言うんだよなぁ…
正直、そこまで見栄を張って生きても…きついだけだと思うんだよ…
俺みたいに、楽しく生きなきゃ!!

そして今…俺を含めて5人は蔓木温泉と書かれた大きな宿屋の前にいたわけだ。皆は快く俺の依頼についてきてくれたと…俺はそう信じたい!!
それにしても…この建物は…外から見てみると真ん中に大きな木が植えていることを除けば、凄く普通の宿屋に見えるが…
俺はそっと扉を開けて中に入っていったわけだ。

「ソフラン…どこに依頼主の葡萄さんがいると思う?」
「……」
…そうだった、この人めったに話をしないんだったぜ…というか、話したのを見たことも無いぜ…
俺はそのことに気がつくと、ナナに向かって話を振ったんだ…
この宿屋…外見より中広いじゃないか!!
「ナナは…どっちに行けばいいと思う?」
「宿屋には必ずロビー的な場所がありますし…そこに行けばいいと思います」
そこがわからないから聞いているんだとか言ったら、どんな目で見られるかわからないな…
俺はわかった振りをすると、みんなの後についていくことを決めたわけだぜ…

そして宿屋内部をあちこちまで探索していった結果…入り口のすぐ真横にあった扉をあけて中に入ると、そこにいたわけだよ…
でも、俺は初めにこの扉を開けようとしたとき、心の中で『今はこの扉を開けるべきでは無い!!』って言った気がしたんだよ…
つまり、ゲーム的に言うとしたらこうだ…
この扉を進んでストーリーを進めるためには他のエリアを全て回る必要があったんだって事さ!!簡単だろ!?
いやぁ…最近いいわけが上手くなった気がするぜ…

俺たちが近づくと多分この宿の経営者だと思われる人がこっちに気付いて歩いてきたんだ。
中々に大人な感じのドリアードの女性で、腰の部分には大きな木が巻きついているんだ…正確には枝だがね?
「あ…みなさんが、モンスターラグーンの方々ですか?」
…モンスターラグーンの方々として依頼書は送られてくるのか…
だとしたら、俺もその中の一員として扱われているのか!?
「あと……そこの弱そうな男の方も…来てくださりありがとうございます」
扱われていなかったよおい!!しかも…弱そうって何だよ!?
そして、俺はまたこんな扱いを受けるのかと内心思いながらも掃除道具を取りに行ったわけだった…
変だな…さっき視線を感じた気がしたけど…気のせいだったか…

そして掃除が始まり、俺は今は倉庫の掃除をしているわけだった…
他にも5人この倉庫の掃除に来てくれるらしいけど…誰も来ないまま終わってしまいそうで仕方が無いぜ…
「でも、埃なんてそんなにないし…少々だけでOKだと思うぜ…」
などと小声でいいながらも真面目に掃除をしている俺…
ここでサボるのは簡単だが……こういうところでサボっているときっと嫌なことが起こるんだよ…
これが…長年の経験って奴さ!!

そう思って作業していると、扉の外の方から声が聞こえてきたんだ…
ようやく来たのか…
「さぁて…パッと終わらせてまたセツナのところに行かないと…」
ん!?こ、この声は!?
俺は若干だがこの声に聞き覚えがあったんだ…この声…間違えようが無い!
「あ、アルフォンスじゃないか!?」
「誰だ…?俺の名前を読んだのは…って!?デメトリオじゃねえか!?」
若干見た目が変わったが…ジパングスタイルに身を包んだこいつは間違いなく元・俺の親友だ!!
俺の宿で結婚して…そのまま俺のところから消えた勝ち組じゃないか!!
「まさか…こんなところで会うとはな…」
「それは俺の台詞だぜ…フェルス興国でまだ宿屋しているのかと思っていたけど…ジパングに来ていたんだな…」
微妙にだが、俺と目を合わせにくそうにしているのはなぜかわかるかい?
俺たち、フェルス興国独身同盟に入っていた連中は絶対に結婚した相手のことを恨まないって約束があるけど…恨んでしまうだろう!?人間だもの!!
今では…フェルス興国独身同盟メンバーは俺一人だぜ…

そして空気が重くなった倉庫で俺たちは無言で掃除をしていたわけだが…
扉の外で大勢の人の話し声が聞こえてきたんだよ!
多分…これで全員そろったんだろうな…

「ここが私達の掃除場所ですよ!!もう他の人は来ているみたいです!」
外から元気そうな声が聞こえてきて、倉庫の扉がそっと開いたわけだよ。
「あぁ!!デメトリオやないか〜!」
あれ…?このドラゴンの女性と俺は前にどこかで会ったか!?
でも…俺の名前を知っている…だと?
「だ、誰ですか…?」
「…あぁ、そうや、そういえば最後にあったのはデメトリオが6歳のときやったなぁ…懐かしいわぁ〜、セムは元気?」
……あぁ!!思い出した!ジーナさんだよ!!
あのセムちゃんの姉で…グロリア家の二女の!!
昔、フェルス興国のボランティア活動で…一緒に活動したことがあったぜ!!

他にも…優しそうな雰囲気の夫婦が二人…ようやく俺以外のメンバーがそろったわけだぜ…
まぁ、元々清潔にされていたから、すぐに掃除は終わったんだけど…
じゃあ、ここからはのんびりと情報収集と世間話としゃれ込もうか?

「えっと…春材さんはどうして今回ここに…?」
「妻と一緒に温泉に来ていたときのついでです。まぁ、旅行のついで…って奴でしょうかね?」
……そ、そうなのか…それにしても、嫉妬しそうなくらい中がいい夫婦で…
羨ましい…あぁ羨ましい…
見せ付けるかのように春材さんは自分の妻とべったりしていたわけだよ…
あぁ!!離れろ!!俺にそんな幸せな雰囲気を見せ付けないでくれ!!

俺は春材さんからまるで逃げるように距離をとり、雀さんのところに行ったわけだ…
ところで、あそこにある観賞用植物…センスいいなぁ…
俺はただなんとなく世間話をしているだけのように見えて、ちゃんと宿屋の調査もしているんだぜ!?
「雀さんは、何でここに来たんですか?」
「歩き巫女といって…各地を渡り歩いているたびの途中ですよ。デメトリオさんは?」
「俺は…ま、いいじゃないか」
こうやって、俺は綺麗に話を受け流したんだ…いや、別に教えても良かったんだけど、今宿屋を展開している土地の住所がわからないし…さ?

そしてのんびり話し込んでいると、午前中の間に掃除が終わったんだよ!!
聞いた話だと…ナナが一人で30部屋掃除を終わらせて掃除の女帝と呼ばれているとかどうとか…
ま、早く終わることはいいことだって!!うん!
で、みんなが我先にと風呂に行っているのを横目に、俺は一人葡萄さんのところに歩いて行ったわけだ…
この宿屋になぜコレほどまでお客さんが来るのか…それを知る必要がある!

「あの…葡萄さん、ちょっといいですか?」
「はい、なんですか?」
俺は葡萄さんに言いにくそうに話しかけたわけだ…
だって、他の宿屋のテクニックを本人から聞くって事はそれすなわち…その宿屋の客足を奪ってしまう可能性があるんだ…
単純に聞けばいいって物じゃないんだよ!
俺は何と言うべきか本気で困ったが、変な言い回しをするよりは一気に聞いたほうがいい気がする…って事で、正直に聞いてみたんだ。
まぁ、教えてくれなかったら駄目だったって事だよ!

「宿屋経営の中で、工夫していることとかありますか?あったら少し教えて欲しいんですけど…」
「えっ…?工夫…ですか?(まさかこの人…他の宿屋の回し者って事?見た目はさえない屑のような感じなのに…まだ、様子を見ましょうか…)」
……あれ?表情を変えないってことは…そこまで気にしていないって事なの
か!?
…これはチャンスって奴じゃないのか!?

俺はこの勢いのまま、本題に入ったわけだぜ…
「はい、俺も少々宿屋経営をしているんですが、この地域に来てからそこまでお客さんが来てくれなくて…やっぱり、フェルス興国とジパングでは何かが違うみたいなんですよ…少しでいいので教えてくれませんか?」
「……(フェルス興国ってことは…ハイネの宿か…フェルトリオの奴には散々煮え湯を飲まされた経験があるんだが…こいつは、フェルトリオの子供か…?あいつの子供にしてはちょっと冴えなさ過ぎるが…待て、これはチャンスかも知れない!私の独身生活にピリオドを打つ為のイベントかも…ちょうど、私の好みだしここで言うことを聞く振りをして弱みを握れば…ハイネの宿と夫が同時に手に入り、フェルトリオに対する恨みも果たせる…乗っておくか)」
葡萄さんは真剣に考えているようだぜ…まぁ、確かに他の宿の情報を聞くって事は、聞かれた宿からしたら死活問題…って、これは前に言ったな…
それでも…少しでもいいから教えて欲しいって気はあるんだ。
そうだ…教えてくれたら俺の宿に代々伝わる整頓術を教えてあげようっと…
この整頓術は凄いぜ?なんせ、一つの箱にボックスってのが9個出来、中には物凄く大量のものが入るんだ!!まさに…秘伝の技って奴さ!

そうしてしばらくすると、葡萄さんが答えを導きだしたようで、俺の方を向いた。おぉ!?笑みを浮かべているってことは、OKって事なんじゃないのか!?
「いいですよ、では…秘密を少しだけなら教えてあげますね?(ついでに…あなたの人生も奪ってあげますけど…ね?)」
「ほ、本当ですか!?」
や、やったぜ!!葡萄さん…いい人だ!!

そして俺は葡萄さんに、宿屋の真ん中にある大きな木の真下に連れてこられたんだ…
うはぁ…近くで見ると、大きさがわかるぜ…ここまで成長するのにどれほどの歳月をかけたんだろうか?
「これが…当宿の温泉の秘密です。この大きな私の木で綺麗な地下水をくみ上げ、それを長時間かけて熱していくことにより健康・美容にいい成分を作成することが出来るんですよ」
「そ、そうだったんですか…」
駄目じゃないか…俺の宿にはそんなシステム取り入れることが出来ないぜ…
だって、このシステムを取り入れるには俺の宿屋に物凄い歳月をかけて木を植えるところから始めないといけない…
多分、俺が生きてる間に宿がどうなるかってのはわからないじゃないか!

「どうも、ありがとうございました…」
そう言って、思いのほか収穫も無かった俺は葡萄さんにお礼を言って、その場から去ろうとしたんだが…
「ちょっと…待ってくれませんか?」
って言われたので、俺はその場で立ち止まった…
なんだ?はっ…そういえば俺は自分の宿の秘密をまだ葡萄さんに教えていなかったな…危ない危ない…

「すみません…俺だけ宿屋の秘密を聞いちゃって…俺の宿屋の秘密もお教えしますよ」
「いえ…結構ですよ?(だって…これから先、一生ここから出ることは出来ないんだからな…?)」
結構…?だったら、何で俺を呼び止めたりなんかしたんだ…?
…駄目だ、全然わからないぜ…

「……あの、一度でいいんです…私を抱いていただけませんか?(一度でもそうしてくれたら…即座に大声を上げて…責任を取ってもらえるからな…?)」
「……へ?」
さっき、葡萄さんはなんていったんだ?抱いてくださいって…こう言ったよな!?いきなり、展開が物凄い速度で進行しているんだが…
……駄目だ!!葡萄さんには俺なんかよりもずっといい男がいつかきっと来てくれるはずなんだ!!俺がここで抱いてしまったら…彼女の人生に大きな傷を残すことになるじゃないか!
昔から、据え膳食わねば男の恥…って感じのことわざが合った気がするけど…
俺は恥をかくことにかんしては何も思わないぜ!!

「葡萄さん…一瞬でも気の迷いが生じたのはわかります…でも、葡萄さんには俺よりももっといい人が将来できるはずなんですから、もっと自分の身体を大切にしてください。まだまだ人生、これからでしょう?」
「え…?あ…」
俺は葡萄さんがあたふたとしている間に、かっこよくその場を後にしたのだった…
いやぁ…いいこと言ったぜ!!

その後、俺は宿屋の人から葡萄饅頭受け取ると他のみんなと一緒に自分の宿に戻っていったのだった…
で…自分の宿屋に戻って他のみんなともらった葡萄饅頭を食べているとある事実を思い出したんだ!!
お…俺、温泉入ってねぇじゃねえか!!せっかく温泉宿に行ったのに、何してるんだ俺は!?
「デメトリオ…温泉入っていないでしょ?これ…使いなよ」
「く、ククリ…これは?」
「温泉の粉って名前らしいよ」
ククリ…本当にいい子だ…
「ありがとう!!本気でありがとう!!」
「…別に、ただもっていただけだから…」
またそっけない態度をとるなぁ…別にいいんだけど…

さぁて…さっそくもらった温泉の粉って奴を使ってみるとするかな…
そう思い、俺は自分の宿屋の風呂場で温泉の粉を使ってみたわけだぜ。
おぉ!?なんだかそれらしい色になってきたぜ…
で、どうでもいいことなんだけど、粉って書いてるくせに、中に入っていたのはプルプルのゼリーっぽいやつだったんだ。
…ん!?これ、袋の中に何か紙が入っているんだが…?
俺は温泉の粉とかかれた袋の中に入っていた紙を取り出したんだ。
紙にはこう書かれていたんだが…

『今回、これを受け取ってくれた人には感謝の念を隠せません…実は、この中に入っていたゼリー状の物体は私の娘でございます…本来ならば私が一生をかけて世話するのが筋なのですが、家の事情があり38人目のこの子は世話できないのです…どうか、大切に育ててください!!お願いします」

……えっと、とんでもないものをもらってきたんだなククリは…
もう開けちゃったよ!?しかも、湯につけちゃったよ!?
さまざまな家庭の事情があるのはわかるけどさぁ…
俺がそう思って複雑な心境でいると、いきなり風呂場の水がプクプクと泡を立て始めたんだよ!!
ま、まさか…!?
悪い予感がして俺がそっと振り返ると…そこには、3歳くらいの小さなスライムがいたわけだ…
風呂場にいるのに服を着ているというこのアイデンティティー…どう思う?
「パー♪」
…パパといいたいのか!?だが、悪かったな!!俺は…君のパパじゃない!!
俺は後ろめたい思いを感じながら風呂場をあとにした…

そうだ…これは多分夢なんだ!!こんな非現実的なことが起こってたまるか!
俺はそう考えると、一応野菜サラダを細切れにしたものを風呂場にそっと入れると一気に自分の部屋に行って眠りに入った…
もし…次の日の朝も風呂場にいたら…本気でどうしようか?
明日の心配事が一つ増えた気がした俺だった…
12/04/15 13:58更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

今回も見てくださってありがとうございます!!
だんだん、ジパング編も終わりに近づいてきました!!
そこで…ジパング編のキャラクターと同時に、その後主人公たちが訪れる
時の砂漠という場所で出てくる魔物娘達の情報を送ってくれるとありがたいです!

では…次回も気が向いたら見てやってくださいね…
ありがとうございましたーー!!

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