読切小説
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明後日の八月蝿
 昨日あれほど疲れていたというのに、案外小さな違和感で目を覚ましてしまうものだ。
 ぐちぐちというかすかに聞こえるねちっこい音と、くぐもった女の声に気付き、俺の意識は夢の世界から現実へと引き戻された。
「うぅっ、ふぅーっ、ふぅーっ……」
 ぐちっ、ぐちゅっ……
「はぁーっ、あ゛ーっ……」
 視線の先に、オナニーをしている全裸の幼女がいた。
 歳は小学二年もしくは三年くらい。しかし、その幼さとはかけ離れた、とろとろにとろけきったイき顔をさらしている。
 黒いセミロングの髪が、全身に玉のように噴出している汗に張り付いて、年齢以上の妖艶さをかもし出していた。
「あっ……あー……あ゛ー……っ」
 仰向けになり、まんぐり返しで股間を俺の方にさらしている。そんな体勢で大きく息を吐き、喉の奥から声を漏らしている様は、とても小学生とは思えないほど快楽に開発されつくしているように思えた。
 だが、それも当然である。彼女は人間ではない。
 髪の毛の間から、細く長く触覚が二本、突き出している。背中には大きな薄紫の二対の羽。お尻からは、先にはさみのようなものが付いた黒い虫の腹部のようなものが生えている。そして、自身の一番大事なところをいじっている指。その先から肩の手前まで、青紫の外骨格で覆われている。
 彼女の指は長くて太い。なので、自分で簡単にGスポットを掻ける。相当気持ちいいのだろう。あそこは俺がいつもこすってあげている場所だしな。などと思っているうちに、脳が完全に覚醒した。
「姫子」
 目の前のオナニー狂いの幼女の名を呼ぶ。すでに何度も呼んだ、慣れ親しんだ名前。俺の愛する彼女、ベルゼブブの姫子。
「あー……んっ、んぅ。しょー、起きたぁ」
 瀬田彰。彼女も答えるように、甘ったるい声で俺の名前を呼んだ。

「何でそんなところにいるんだ?」
 素直に疑問を口にした。
 ベルゼブブの性格は「凶暴」で「我侭」で「好色」だ。普段だったら、寝ている俺に覆いかぶさって、無理やり汗と精液をなめとるはずだ。それなのに、俺から離れてオナニーするなんてどういう風の吹き回しなんだろうか。
「しょー、昨日バイトでへとへとだったから」
 荒い息を整えつつ、彼女が言う。
 確かに。昨日はバイト漬けの一日だった。開始時間は昼で遅かったのだが、みっちり八時間働かされたのだ。
 夏休みのファミレスは戦場のようである。厨房で延々と料理を作り続け、鼻がそれらの匂いで麻痺を起こす。
 帰ったら風呂に入ることなく布団に倒れこんだ。だから、一昨日の昼、彼女と一緒に水風呂に入って以来、俺は入浴していないことになる。つまり、今の俺は彼女にとってはとてつもなくいいにおいを放っているはずだ。
 それなのに、彼女は我慢した。
「一昨日、いきなりなめたらしょー嫌がってたし」
 目を伏せて彼女が言う。
 俺を気遣ってくれていたのか。そんなこと、気にしてないのに。
「確かに一昨日は驚いたが……別に、嫌じゃないぞ」
 のそりと布団から起き上がり、彼女のもとへと向かう。
「ほんと?」
 上目遣いで彼女が覗き込んできた。ぱたぱたと小さく羽が動く。彼女の羽は、犬の尻尾のような役割を果たしており、嬉しくなるとこんな風に羽ばたく。少し笑顔も見せてくれた。彼女は悲しんでいる顔よりも、断然笑顔の方が可愛らしい。
「でも……」
 頭を掻いた。起きたときから、頭が痒い。風呂に入っていない上に、この暑さだ。覚醒した直後から、あまりの熱気に早速汗ばんでいるのだ。頭の油も多くなり、それが痒みとなっている。
「せめて、頭だけでも洗わせてくれないか?さすがに痒くて……」
 そう言うと、彼女が目に見えてしゅんとうなだれてしまった。尻尾のように生える虫の腹部が、がくりと地に着いてしまっている。
 一度受け入れてしまった手前、そんな風に目に見えて落胆されると罪悪感を覚えてしまう。
「はぁ、しょうがないな。今日だけだぞ」
 あきらめたように、ため息をついて答えた。
 すると、彼女の様子が一変した。羽をせわしなく動かし、目をキラキラと輝かせている。まるで、欲しいおもちゃを買ってもらったときのようである。
――全く、俺より年上だというのに。単純な性格は見た目の年齢通りだな。
 彼女の要求通り、俺は彼女の顔に自らの顔を近づけた。そして唇が触れ合う。
「ん……ちゅっ……」
 上目遣いで目を潤ませたら、『キスしたい』の合図である。
 彼女は必要最低限のことしかしゃべらない。あとは喘ぐか行動で示す。性的なことに関してはまさに以心伝心である俺たちに、こういったことには言葉は要らない。
「あむぅ……れるれる」
 彼女が舌を出し、絡ませてくれとおねだりする。それに応え、俺も舌を伸ばした。
 やわらかく湿った感触が、舌全体にまぶされる。歯と舌の間へ自分の舌先を伸ばし、彼女の舌裏をつついてやった。すると、彼女は俺の胴体に両腕を回し、汗ばんだシャツを硬い手でぎゅっと握り締める。
「ぬぽっ……そんなに強くにぎるなよ。何回シャツを買い換えているか分かってるのか?」
 そう、彼女の外骨格の手で強く握られると、すぐに破れたり穴が開いてしまうのだ。今月だけでもう三枚は破られている。
「だって、こうしないと……しょーのキス、気持ちよくて」
 もじもじとしながら、目線をそらしつつ、彼女が答えた。その恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせる姫子も実に可愛い。快楽にとろけた顔を見るだけで、シャツが破れそうなことなどほんの些細なことだと許せてしまう。我ながら単純な性格だと思う。
「じゃあ、もう一回するか?」
 見た目相応の反応に、つい守ってあげたくなる欲求が強まったので、頭をぽんぽんと触りつつ優しく声をかけた。こくりと彼女は小さくうなずく。
「よし、じゃあ……」
 もう一度、彼女の唇を奪う。すでに互いの唾液で湿っているそれらは、吸盤のように吸い付いて、なかなか離れない。
「ふぅ……にゅるっれるっ」
 唇で相手の唇を食みながら、舌同士を触れ合わせる。彼女の舌は小さく震えており、俺とのキスで快楽を得ていることが分かった。
「姫子……こんなにぶるぶる震えて。キス、そんなに気持ちいいか?」
 唇を離して問いかけると、切羽詰った表情で彼女は小さく何度もうなずいた。そして間髪入れずに彼女から抱きついて唇を貪ってきた。
「んっ!じゅるっ、んんっ、んっ、うぅーっ!」
 舌を唇ではさんで音を立てて吸ってあげると、彼女は全身を大きく震わせた。がくがくと何度か体をひくつかせると、脱力しきった彼女はくたりと腰を畳に落としてしまった。
「あっ、はっ……はひゅっ」
 短く息を吸って吐き、とろりと瞳を快楽にとろけさせている。
――まさか、もうイったのか?
 確かに今まで、何回かキスだけで絶頂させたことはあったが。こんなに短時間でイかせてしまったのは初めてだ。
「姫子、大丈夫か?」
 彼女の手を優しく握り、彼女を起き上がらせようとする。しかし、膝と腰が笑ってしまっていてそれが叶わない。手を離すと重力に負けてすぐにお尻が落ちてしまう。
――まったく、しょうがないな。
 このまま彼女を放っておいて風呂に行ってしまったら、この後何日も口を利いてくれないだろう。
 そこで、俺が布団に寝て、彼女が覆いかぶさる形で続きをしようと考えた。これなら下半身が上手く動かなくても何とかなるだろう。
――まあ、布団まではがんばってもらわないといけないんだけど。
「ほら、布団まで行くぞ」
 手を引きつつ、彼女を布団の上まで誘導する。何とか四つんばいになった彼女は、ハイハイを覚えたての赤ちゃんのように、震える手足で何とか俺の手についていった。
「あっ……あっ……」
 吐息のように、震えた横隔膜が彼女の喉を鳴らす。こちらを見つめる上目遣いの目は、これからもっといい思いができるという期待でいっぱいだった。
 一分近くかけて、ようやく俺たちは布団に到達した。それと同時に俺が布団に寝そべり、腹を指差す。
「ほら、姫子は上だ」
 それだけで彼女は意図を理解したらしく、のそのそと俺の体の上に乗っかってきた。彼女の体は、見た目が小学生だけあって軽い。全体重を預けられても苦にはならない。
 俺の胴体に彼女の両腕がきつく巻かれ、背中がもぞもぞする。ちょっとくすぐったい。
「よくがんばったな」
 そう言って彼女の頭をなでる。目を細め、気持ちよさそうに表情を緩める姫子。
 可愛いなと思っていると、彼女が舌をだらしなく唇から外へさらし、首筋に吸い付いた。
「くっ」
 思わず声が漏れてしまった。彼女に吸い付かれた場所が、薬が染み込んだようにじんじんと熱く痺れる。
「あむっ、れるっ、ちゅぅ……」
 舌を這わせ、時折唇で吸い付いて汗と垢をなめ取られる。舌は全体でべったりとなめたかと思うと、次の瞬間には先っぽで触れるか触れないかという弱さでなぞってくる。そのたびに、俺の体はゾクゾクと快感とくすぐったさに震える。
「れろろ……れるぅ」
 彼女の舌がゆっくりと俺の体を下る。首筋から喉仏、そして鎖骨。肩に優しくキスをして、胸を舌がナメクジのように這い回る。
「ぐぅっ!」
 乳首をなめられた瞬間、快感が電気のように走り、歯を食いしばってしまった。すっかり食べられるものから食べるものへと立場を逆転した姫子は、それが嬉しいのか、目を細めて笑った。それと同時に、なめていない方を指で弄くってさらに快楽を高めさせる。
「ちょっ、姫っ、子っ!それは、反則……っ」
 思わず抗議するが、我侭な彼女が聞き入れるはずもなく、唇で乳輪に吸い付き、下品な音を立てて吸引をし始めた。
 以前から丹念に乳首を責められていたせいで、最近はすっかり性感帯になってしまった気がする。初めはくすぐったいだけだったが、すっかり快楽を覚えこんでしまった。
 喉から声とも吐息ともつかぬ音を発し、左右に身をよじって俺は悶えた。
「こっちも。じゅぅっ!」
 唇が離れ、一息落ち着いたと思った次の瞬間、今度は逆の乳首が彼女の口内に含まれた。そして今までなめられていた方は、彼女の指でこすられる。さっきまで吸われて充血し、敏感になったところに、彼女の固い指は刺激が強い。
 さっきよりもさらに大きな声で悶えてしまった。
「あ」
 彼女が何かに気付いたように声を上げた。そして頬を朱に染めつつもじもじと太ももを動かす。気付かぬ内に、すっかり臨戦態勢となりトランクスの前の穴から飛び出していた肉棒が、彼女の太ももに当たって熱を伝えていた。それが彼女の柔肌にこすれて、早速分泌されている我慢汁とねちっこい音を奏でる。
「くんくん……はぁ」
 目を軽く閉じ、鼻をすんすんと鳴らして、彼女はうっとりとため息を漏らす。一日半風呂に入っていない体の、特ににおいの濃い部分である。よって、遠くても、昨日のバイトですっかり嗅覚が鈍くなってしまっている俺でも、ペニスから漂うにおいはちゃんと脳が認識する。
――本当に風呂に入らないとまずいなこれは。
 自分のにおいというのは、自分では分かりにくいものである。しかし、それでも俺の鼻にはツンとくるあの独特のにおいが届く。昨日あれだけ汗をかいて、その上俺は仮性包茎なのだ。皮の下で蒸れてひどいことになっているに違いない。
 それでも、目の前の彼女、ベルゼブブにとっては極上のご馳走ともいうべき香りなのである。
 普段なら、この後腹やへそ、脇や手指なんかをなめしゃぶるはずの彼女であるが、全て放棄して一直線に股間に顔を寄せた。
「すぅー……はぁー……すぅー……はぁぁ……」
 肺いっぱいに鼻から息を吸い、口の端からよだれを流しつつ息を吐く。大きく開かれた口から、優しく熱い吐息がペニス全体にかかる。
 空気の圧力と、それによってもたらされる快感によって、肉棒が小さくふるふると震えた。さらに、温められた亀頭から、より濃くなったにおいが漂う。
「はっはっ、はっはっ……」
 彼女はすっかりできあがってしまったみたいだ。顔を発情により真っ赤に染め、口から小さく舌が伸び、呼吸も浅く荒くなっている。まるで発情期の獣のようだ。
 そんな顔を見せられたら、もうこちらも我慢できない。なので、俺は彼女と視線を合わせ、小さくうなずいた。
「あむぅ……」
「くっ、うぅっ!」
 亀頭が彼女の口内に含まれた瞬間、つい吐息を漏らしてしまった。
――熱い……それにねとねとだ。
 すでに準備が整っていた彼女の口内は、とにかく熱かった。口内にずっと溜められていた粘性の高い唾液が、発情して高まった体温によってほかほかになっていたのだ。
「んれるっ、ぬろぉ、ぬるっ」
 皮の上から彼女の唇がカリ首をはさむ。きゅっと唇を閉じて密封された口内で、亀頭が彼女の特製フェラジュースをまとった舌によって愛撫される。
 口内に含んだ部分を唾液まみれにすると、彼女は一旦唇を開いてどろどろになった先っぽを解放した。
 粘度の高い唾液が、唇と亀頭の間にエロティックな橋となり垂れる。橋が切れ、糸となった唾液が彼女の下唇にかかる。
 ぺろり。舌を出し、それをなめて取る。粘液によって鈍く光る舌が、ひどく俺の心を熱くする。
 ごくりと無意識の内に唾を飲み込むと、彼女がその音に敏感に反応し、俺の方へ視線を向けた。半目で上目遣いの姫子。
 俺の目を見て、次に俺が何をされたいのか理解したのだろう。彼女は小さく微笑むと、勃起して半分ほど皮がむけ露出している亀頭の先に口付けた。
 舌を少しだけ出し、そこで余り皮を引っ掛ける。彼女が口内に招き入れると同時に、ずるずると茎を包む皮が下がっていった。
「れるる……ぬるんっ」
 亀頭が完全に口内に隠れ、それとともに皮がすっかりむけたのを感じた。
――皮ごしじゃなくて、直接、熱とぬるぬるが……
 ひたり、と舌の上面が、亀頭の裏側の粘膜に触れている。そこから伝わる彼女の体温と唾液そして肉の感触が、じんわりと優しい刺激をもたらす。
「れるぅ……れるぅ……」
 ゆっくりと舌が動き始めた。口内であるため見えないが、舌がゆっくりと亀頭の表面を回転しているのが分かった。
 舌の広い部分で粘膜を愛撫しつつ、同時に先っぽが裏筋やカリなど、弱い部分を的確に突付いてくる。この技術はやはり魔物娘である。俺はただ、喘ぎを漏らし体を震わせるしかない。
「れるっ……今日のおちんちん、あむっ、じゅるっ……おいしい……」
 嬉しそうに目を細め、彼女は言った。ペニスを口に含み、音を立ててすすりながら話すせいで、舌と口内の粘膜が不規則に当たる。
 今日のフェラチオは、一昨日のものと違ってとてもゆったりとしている。一日かけて溜めて熟成させたカスを、じっくり味わうように舌でこそぎ取っている。
「にゅるっ、じゅぷっ……んっ、んっ……」
 うっとりと目を閉じ、喉の奥へとくわえ込まれたものが挿入されていく。先端だけでなく、幹も一緒に温かいものに包まれる。
 何かに当たる感触がした。弾力をもちつつも、しっかりとした肌触り。喉奥に到達したのだ。
「んぐぐ」
 喉の筋肉が縮こまった。食道に届いているのではないかと錯覚するくらい、喉の奥まで挿入されている亀頭が、縮んだ筋肉にみっちりと隙間なく包まれ、締め上げられる。そして同時に、舌全体を使って幹の裏面をなめ回してくる。
――これは……フェラじゃなくて、もはや口まんこだな……
 全体を温かい肉に包まれる感触。気持ちいいというより心が安らぐ刺激に浸りながら、そんなくだらないことを思った。
 だが、すぐに余裕がなくなっていく。ぐにぐにうねうねと、気持ちいいところを的確に、正確になめられ突っつかれ、揉まれしゃぶられ吸い付かれ……確実に絶頂へと追い詰められていった。
「うっ、ぐぅっ、姫、子ぉ……」
 切羽詰って彼女の名を呼ぶ。ぞりぞりと恥垢を削られ、吸引され、飲み込まれる。
――やばい、もう、限界、だ……
 まさに彼女の口内に発射する瞬間、彼女の視線がこちらを向いた。一番のご馳走をもうすぐ味わえるという嬉しさからか、彼女の瞳は期待で輝いていた。目尻が下がり、鼻腔に濃いにおいを充満させるために、鼻から大きく息を吐いている。
「んれるっ……らして……」
 彼女の許可が出ると同時に、俺の頭の中は真っ白になった。強烈な快楽が、睾丸から全身に走ると同時に、そこから精液がほとばしる。尿道を精液が駆け上がり、バチバチと電気のような快楽に包まれる。
「んくっ、んっ、ごくっごくっ……ごくっ」
 食道へ直接流し込まれる特濃のミルクを、何の苦もなく彼女は飲み干していく。喉の動きが直接亀頭に伝わり、出しながらさらに搾り取られる。
「ぐっ、くっ、うぅっ!」
 いつまで経っても終わらない、後を引く快楽を食らって、俺はただ喉から喘ぎを搾り出すしかなかった。
――それにしても……
 絶頂でとろけきった頭で考える。まだペニスの根元はジンジンと痺れ、睾丸がきゅっと上がりっぱなし。つまりまだ射精をしている。
――長すぎないか、これ……
 確かに昨日は一回も射精をしなかったが、それだけでここまで量が多くなるのだろうか。
「あ、ああ……」
 もう三十秒以上は出しっぱなしだ。さすがに出てくる量は減ってきたが、依然として股間は放出感とそれに伴う快感を全身に伝えてくる。
「んっ」
 彼女が鼻から声を漏らすと、口内に収まりきらなかった精液が一筋、ゆっくりと垂れた。
「んれる」
 みっちりと隙間のない口から、柔らかな舌を無理やり出される。そして垂れてきた精液を拭い取り、口内に納めた。その動作で亀頭とカリがこすられ、さらにもう一度大きく尿道から精液が噴出す。
――まだ、出るのか……
 それからさらに二度ほど精液を漏らしたが、それでようやく打ち止めとなった。しかし、俺の息子はまだひくひくと震えている上に、快感が収まらない。震えに合わせてぞくぞくと気持ちよさが背筋から脳へと這い登ってくる。
「んんん……ぬぽっ」
 射精が終わると、彼女が喉の奥からペニスを引っ張り出した。粘っこい音と共に、よだれまみれの肉棒が久々に視界と空気にさらされる。
――うわ、これ、よだれだけじゃなくて……
 真夏で外の空気が高温なのにも関わらず、ペニスは湯気が出そうなほどほかほかになっていた。彼女によって塗りつけられた粘度の高い唾液と、彼女の胃に収まりきらなかった精液で、べとべとになっていた。
「れる、ちゅっ……れる、ちゅっ……」
 彼女がそれを一舐め。そしてキス。
 舐めて、キス。舐めて、キス。
 根元から先っぽに向け、機械のように同じ動作を繰り返した。
「あぐっ……」
 掃除をされているにも関わらず、そこに奉仕や愛情という感情はあまり感じられなかった。
――淡々と、捕食されている。
 舌が先端まで到達した。尿道口を集中的に舐め、キスをされる。
「ちゅぅぅ」
 突然、彼女はそこをぴったりと覆うように唇をくっつけ、吸引を始めた。
――ぐっ、そんな、いきなり……
 先ほどまでの感情が表れない掃除とは打って変わって、この吸引には明確な意思が表れていた。
――もう一回、出して。
 上目遣いでこちらを見つめた姫子の瞳から、そんな言葉が聞こえてくるようだった。
 さっきまでの淡々とした掃除は、このための布石だったのか。油断したのを見計らっての、強烈な吸引攻撃。魔物娘、それも口での搾精を得意とする種族のフェラチオに、ただの人間である俺はなす術もなかった。
「くっ、うっ、で、るっ!」
「んっ」
 ついさっき射精したばかりなのに、早くも今日二回目の射精をしてしまった。量は一回目とほとんど変わらない。三十秒近くも放出感とそれによる快感が、手足の末端にまで駆け抜けた。
「ん、ちゅぅ……れる、ねちっ、あむ」
 今度はいきなり飲み干さず、彼女は舌の上に精液を乗せているようだ。舌に溜め込もうとする動作で裏筋が愛撫され、寒気にも似た気持ちよさが背筋を駆け上がる。
「んっ、んっ、ちゅぅっ……しょー、いっふぁい、れた」
 彼女の口がペニスから離れ、大きく口を開いて中をこちらに見せてきた。
「あーん」
「うわ……」
 とても人間が自然に出せる量とは思えなかった。まさに搾り取られたと言っていい量。
 口の中いっぱいに溜まった白い粘液。それが小学生の口内でこってりと溜まっている。その光景に、頭がくらくらした。あまりにも魅力的で、蠱惑的。性癖がノーマルだったはずの俺を、一気にロリコンに突き落とした彼女の魅力が、その動作に凝縮されているようだった。
「んっ、ごくっ、ごくっ、ごくっ……」
 天井の方を向き、彼女は口を閉じて喉を鳴らした。未発達の首筋が、それに合わせて上下する。
 自分が出した欲望の証を、一番愛する女性に飲まれる。これほど男としての幸せを感じる瞬間はないであろう。
「お風呂、入っていいよ」
 一滴残さず精液を飲み干した彼女は、先ほどまでの発情しきった表情を普段の無感情なものに戻し、一言そうつぶやいた。

 いつも以上に念入りにシャワーを浴び、全身をしっかりと洗った。皮脂や汗や唾液や精液や、その他色々な汚れを綺麗さっぱり冷水で洗い流す。キロ単位で体重が減ったのではなかろうかというくらい、体が軽やかになり、鼻歌を奏でながらユニットバスを後にする。
 部屋にはスク水少女がいた。
「姫子……?」
 ぴっちりと素肌に張り付き幼さが強調されるロリボディ。その持ち主である姫子は、いつもの無表情のまま俺の方を見上げた。
「一昨日、しょーがプール行きたいって言ってたから」
 ぽつりと彼女はそう言った。確かに、俺は一昨日、彼女と対面座位で交わりながらそんなことを言った。そのときは、彼女は面倒だと言って断ったのだが。
「さっき私のわがままを聞いてくれたから、今度は私が聞く番」
――姫子はいい子だなぁ。
 一昨日誘ったときは聞く耳持たずに嫌がっていたのに。
 改めて、彼女のスク水姿をじっくりと観察する。
 ぴっちりと隙間なく彼女の肌を覆う水着。蛍光灯の光を反射し、ぎらりと紺色にきらめく布素材。
 おっぱいというにはあまりにも未発達な胸。かろうじて中央が少し縦にへこんでおり、将来の成長を期待させる。胸にパットが入っていないのか、乳首がぽつりと二つ、小さく膨らんでいる。
 視線を下に移す。幼い子供特有のなだらかに膨らんだお腹が、きつい布地できゅっと引き締まり、幼さを強調している。
 さらに下へ。彼女の一番大事な部分に、水着が食い込んで谷間を作っていた。ぴったりと張り付くスク水の中で、唯一のしわ。俺の視線はそこに釘付けになった。
 ついさっき射精してすっきりしたばかりなのに、シャワーで冷えた体がまた熱を帯びてきた。
「似合う?」
 彼女の一言で我に返る。目の前で股間を凝視されているというのに、彼女の表情には羞恥が感じられない。発情していない彼女は、基本的にあまり感情を表に出さず、口数も少ない。
――その分、一度スイッチが入るとすごいんだけど。
 そう思いつつ、俺は何度もうなずいた。
「ああ、似合ってる」
 微笑みつつ答えた。それを見て、彼女もふっとわずかに微笑みを返す。たまにしか見せないこの表情。俺は彼女になるべく多く、この表情でいて欲しいと思っている。だが、無意味には微笑まない。俺が何かしらのアクションを起こし、彼女を喜ばせないと笑ってくれないのだ。だからこそ、こうして笑ってくれると、喜びもひとしおなのである。
 だが、一つ気になることがあった。
「そういえば、何でここで水着を着ているんだ?」
 彼女は俺の質問に答えず、スク水に直接半そでの上着を羽織って玄関に向かっていった。
「プール、行かないの?」
「え?」
 思わず聞き返してしまった。靴を履き、今にも外に出ようかという姫子。
「おい、まさかその格好で出かけるんじゃ……」
 彼女は、俺の言葉を聞いて少し驚いた様子だった。
「だめなの?」
 どうやら、本気でスク水と上着だけで出かけるつもりだったらしい。
「あのな、そんな格好で外出したら、おまわりさんに囲まれて色々聞かれるぞ?」
 ため息をつきながら言った。彼女は俺と出会ってから、まだ数回しか部屋から出たことがない。別に、拉致監禁しているわけではなく、俺たちは同棲をしているのだ。だから、好きなときにいつでも自由に外出していいはずである。
 しかし、彼女は一日中この部屋にいる。今は俺が夏休みだからさびしくはないだろうが、それ以外の時期は何をしているのだろうか。
 なので、一度普段部屋で何をしているのかと質問したことがある。
「しょーの匂いをかぎながらオナニーしてる」
 彼女はそう返答した。
 その日のセックスはいつも以上に盛り上がった。
 まあ、そういうわけで、彼女は世間一般の常識というものを知らない。
「でも、いつもの服より肌が見えてないよ」
 なぜスク水で出かけてはいけないのか、理解ができないらしい。
 確かに、彼女の普段の服は、クロビネガの絵そのものである。もふもふのマフラーみたいなものを肩にかけ、乳首と股間しか隠れていない露出度の低いものを着ている。
 しかし、あれはベルゼブブという種族共通の制服みたいなものであり、世間にも浸透している。
 それに比べてスク水はどうか。彼女はいくら魔物とはいえ、見た目は小学校低学年なのだ。その上、水着を着るために邪魔だったのだろう、魔物の特徴の一部である羽と尻尾を隠してしまっている。これでは遠目から見たら確実に小学生だ。その上、顔が一切似ていない俺と並んで歩くのである。
 ちょっとそこの君、なんて警察官さんたちに呼び止められ、色々と聞かれることは確実だ。そうなってしまったら、もはやプールどころではなくなってしまう。だから、せめて下に何かもう一枚着てほしい。
 だが、ベルゼブブは我侭である。頑として聞き入れず、そのまますたすたとアパートの廊下を進んでいってしまった。
「ちょっと、待て!まだ、準備が……!」
 プール用のかばんに急いで荷物を詰め込むと、慌てて玄関を飛び出し彼女の後を追った。

 この世界は、思っていた以上に魔物娘に毒されているようだ。
 何しろ、夏休みで人通りが多い街中を歩いているのに、ちっとも俺たち二人のことを意に介さないからである。
 確かに、時折俺たちの方を鬼のような形相でにらんでくる男たちがいるが、それはまた違った意味の視線だろう。彼らに言いたいことは、「部屋を汚くしろ」それだけである。
 俺たちは手をつないで歩道を歩いていた。プールへの道のりは、この大通りを通っていくのが一番早くそして安全だからだ。交番の前を通ったときはビクビクしていたが、特に何も問題はなくプールにたどり着いた。
 大通りから一本隣の道路に面した、小さな市民プール。その入り口のガラス戸には、政府公認の魔物娘用施設を表したシールが貼ってあった。
 魔物娘大発生から数年、国は彼女たちとの共存を目指した。そのための政策の一つが、この公認施設の設定である。
 魔物娘にはいまだ未知の部分が多く、まだ完全に人類と同等の権利が得られていない。しかし、公認施設内では、そういった制限から開放され、自由に行動することが可能である。つまり……
「くちゅっ、れるっ……好きっ、好きぃ!」
「んっ、あうっ、もっと……奥まで突いてぇっ」
「ふふっ、じょーずにしゃせぇできましたぁ……」
 こうなる。
 消毒槽の出口に突っ立ったまま、俺は呆然としてしまった。
 お世辞にもあまり広いとはいえない市民プール。そのプールサイドや水の中に、何組ものカップルがまぐわっていたのだ。当然、その全てが魔物娘と人間男の組み合わせである。
――何だ、これ……
 今まで魔物娘用の施設に行ったことがなかったので、現実を受け入れるのに時間がかかった。まさか、政府公認のお堅い施設が青姦ストリップショーの会場になっているとは、夢にも思わなかったから。
 かなり不機嫌な表情で消毒槽を抜け出した姫子も、この光景に絶句していた。彼女は無口だから、普段から絶句しているようなものだが、とにかく、予想外の光景に驚いているようだった。
「え、あ、そ、そうだ、プールに入る前に準備体操をしないとな、な!」
 震える声で何とかそれだけを口にした。俺たちは泳ぎに来たのだ。それに、他人の行為をジロジロみるのは失礼である。
「準備、運動?」
 小さな声で、彼女が言った。そうか、彼女はプールに来るどころか、水泳するのも初めてであろう。きっと彼女は泳げないから、まずは水泳の基本を教えなければならない。
「そうだ。いきなり水の中に入ると、体が急に冷えて大変なことになるからな。水の中に入る前に、体を動かして温めないといけないんだ」
「体を、温める?」
「あ、ああ……そうしないと足が攣ったりするんだよ……」
 彼女の様子がおかしい。違和感を覚えて押し黙っていると、様々な音や声が耳に入ってきた。
「バックしゅごいですぅ!おまんこの壁がぞりぞりこすれてぇ!」
「んっ、れるっ、じゅぷじゅぷ……亀頭が膨らんできたな。うん、いいぞ、そのまま口の中に出せ、な?」
「あーあ、おっぱいの中に、いーっぱい出ちゃったねぇ。んふふ、あったかい」
 プールそっちのけで性行為に没頭するカップルたちの声が聞こえる。
 それらによって高鳴る俺の心臓の音。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 そして目の前で荒い息遣いが聞こえる。
――荒い息遣い?
 疑問に思った瞬間、トランクスタイプの海パンごしに股間をまさぐられる感触がした。
 視線を落とすと、こちらを見上げている姫子と視線が合った。
「はっ、はっ、準備体操……する」
――ああ、完全に発情したなこれ。
 周りの空気にすっかり影響されてしまった彼女にあきれながらも、彼女の手技に俺の股間は早くも反応してしまっていた。
 右の手のひらで幹を包み込み、左の手のひらで睾丸を優しく揉み解す。幹はちょうど時計の十二時の方向に固定され、曲げられた二本の指ががっちりと亀頭の両側を挟んだ。そのまま器用に、挟んだ指で余った皮をむき下ろす。
「くっ、うっ」
 彼女の指と海パンの布地が粘膜にこすれ、思わず声が漏れてしまう。
「おちんちん暖めて、ほぐして、準備するから」
 何の準備だよと思いつつも、気持ちよさに思考が麻痺して、彼女の行動を止める気が一切起きなかった。
 黙って彼女のなすがままにしていると、余った右手の真ん中の指が、的確に裏筋に当たった。ぞくっと背筋を震わせると、とろけた笑顔で彼女がこちらを見る。
「ここ、ここ……」
 そう言って、彼女は裏筋に当てた指をくりくりと動かし始めた。
「ぐっ、くぅっ」
 尖っていて硬い、外骨格に包まれた指が、俺の一番の弱点を遠慮なくこする。だが、海パンの布で防御された粘膜には、そのちょっと強すぎる刺激が心地よかった。すぐにペニスに血流を大量に送り込み、むくむくと硬さと大きさを増していく。
「おちんちんの準備、できた」
 しっかりと勃起したことを確認すると、彼女は両手を離した。快感が一気になくなり、ペニスがさびしそうにぴくぴくと震えるのが分かる。
「じゃあ、準備体操、するね」
 離れた両手が、海パンのゴムをつかむ。
――まさか、ここで『準備体操』をするのか?
 いくら周りが公開セックスショーだとはいえ、俺はまだその空気に身を任せるのは恥ずかしかった。セックスってのは二人だけで隠れてするものだという思いがあったので、さすがに公衆の面前でするのははばかられたのだ。
「さすがに、ここではちょっと……」
 正直にそう言うと、彼女が目に見えてしゅんとうなだれてしまった……これは。
――朝と全く同じ展開じゃないか。
 せっかく俺の我侭に付き合ってもらったのだ。彼女の悲しそうな顔は見たくない。それに、人前でやるのが嫌なだけで、むらむらしているのは彼女と同じなのだ。
――どこか、隠れられる場所は……
 辺りを見回していると、敷地の隅の方に倉庫と思しきコンクリートで出来た建物を見つけた。あそこの裏なら誰にも見られることはないだろう。
「付いて来い」
 彼女の手をとり、早歩きで倉庫のもとへ連れて行く。歩きながらそっと彼女の方を見ると、彼女は俺の意図を察したらしい。さっきまでのしゅんとした表情とは打って変わって、ぱっと顔が輝き表情を発情でとろけさせていた。
――他のカップルがみんな青姦好きでよかった。
 目的地には誰もいなかった。どのカップルも他の人の視線がないと興奮できないのだろう。こっそりとやれるここは不人気スポットだったようだ。日光にさえぎられているため、程よく涼しい空気が漂っている。
「はぁーっ……はぁーっ」
 長く深い、彼女の呼吸が聞こえる。完全に発情しきって、全く余裕のない証拠である。もう一秒たりとも待てないはずだ。
「姫子、広げて、見せてみろ」
 俺も同じく息を荒げ、彼女に言う。余裕がないせいで、どことなく命令しているようにも聞こえる。
「あぁ……ふぅーっ」
 素直に、彼女はスク水の股間部分を横にずらし、俺によく見えるように大陰唇を両手の指で押し広げた。普段は我侭で俺の言うことなんかほとんど聞かないのに、発情状態だと一変従順になる。
 彼女が広げた部分を、食い入るように見つめる。
「ごくっ……」
 芸術品のように綺麗なそこを見て、思わず生唾を飲み込んでしまった。一日に何度もハメているのに、びらびらがはみ出ておらず、ぽっこりと開いた肉穴のようである。外である大陰唇はぷっくりと肉付いており、指に押さえつけられた部分が柔らかにへこんでいる。中は綺麗な桃色で、たくさんのひだが凹凸を作り出し、複雑な影を描いている。その上には、小さく彼女の呼吸に合わせてひくつく尿道口。さらに、すでにぷっくりと膨らんで自己主張をしているクリトリスがあった。
「しょーも、私の準備、して……」
 ひどく甘ったるい声で、俺を誘う。
――確かに、せっかく俺のを硬くしてもらったんだ。姫子のも、もっと濡らさないとな……
 濃厚な甘い匂いを放つ肉穴に、さながら花に引き寄せられる虫のように、俺はふらふらと口鼻を近づけていった。
「あむっ」
 ぽっかりとだらしなく開く穴に、唇を合わせる。
「ひぅっ」
 触れただけで、彼女は切なげな声を上げた。とろりと、口内に粘り気のある液体が注ぎ込まれる。
 俺は毎回不思議に思うのだが、なぜ彼女から出る液体は全て甘いのだろう。たとえば、キスしたときに流し込まれる唾液。俺に組み敷かれ、快楽に染まりきったときに流す涙。
 そして、今口内に広がる愛液。正直言って、病み付きになるほど甘くて美味しい。人間ではとてもこんなものは出せないだろう。惚れた弱みなのかもしれないが、こんなに中毒性のあるものは今まで口にしたことがない。
――でも、まだ量が足りない。
 滴り落ちる愛液は、まだ普段の発情した彼女が流すものよりも少なかった。彼女も初めての部屋以外での性行為に緊張しているのか。そう思うと、彼女のことをより可愛らしく思えた。
――それじゃあ、準備万端にしてあげないとな。
 もうこれ以上ないほど浴場しきった彼女の顔を見て、俺も我慢が利かなくなってきた。もう脱がなくても分かるほど、俺の海パンは高々とテントを張っている。
 彼女の狭い穴に、舌をねじ込む。
「んんっ!」
 ピンク色の粘膜を熱い舌で刺激され、彼女が快楽の喘ぎを漏らす。
 ごしごしと、舌を尖らせて膣口から入ってすぐの上面をこする。彼女は確か、ここが弱かったはずだ。
「ひぅんっ!」
 予想は見事に的中。ぞりぞりと弱点をこすられた彼女は、より声を艶やかにしてもがいた。彼女の両手が、もっともっととせがむように俺の後頭部をつかむ。
――それじゃあ次は指で。
 右手を俺の鼻と彼女の股間の間にねじ込み、充血したクリトリスをきゅっとつまむ。
「きゅぅん!」
 喉の奥から搾り出すように声を出し、彼女の両手の力が強くなる。硬い外骨格が肌に食い込んでちょっと痛い。
 彼女を早く絶頂させて準備万端にするためと、彼女の手から早く解放されたいという二つの考えが入り混じり、責めをより激しく強くする。
 普通の人間だったら、痛みを訴えるのではないかというほど陰核をつまみねじり、同時に唇で吸い付きながら膣壁を舌でこする。
「あんっ、あぅ……あっ、あ゛ーっ……」
 がくがくと彼女の体が震える。膝もかくかくと笑ってしまい、俺の支えがなければ崩れ落ちてしまうだろう。声も彼女の絶頂直前特有の、喉の奥から深く吐き出すものへと変わっていた。
――これで、とどめ!
 舌を限界まで伸ばし、上下左右に舌先を動かして膣道を揉みほぐす。それと同時にクリトリスの皮をむき、露出した粘膜をピンと人差し指で弾いた。
「あ゛っ、あぁっ、いきゅっ、あ゛ーっ!」
 ぎゅっと後頭部を強くつかみ、彼女はあっけなく絶頂を迎えた。膣に挿入されたままの舌が、きゅうきゅうと肉に締め付けられる。しばらくすると、脱力しきったそこはかぽっと音を立て、ペニスを迎え入れるために大きく道を広げ緩まった。
 それにより、今まで閉ざされていた奥から、本気汁がだらしなく漏れ出す。
 砂糖水を煮詰めたような甘さととろみ。ごくごくと喉を鳴らし飲み干してしまいたかったが、そうするとせっかく分泌液を増やした意味がなくなってしまう。名残惜しい気持ちで、彼女の膣口から唇を離した。
「準備、できたな」
 湿った口元をぬぐいつつ、彼女に言う。支えがなくなったせいで、彼女の体がコンクリートの壁にもたれたまま、ずるりと落ちてしまった。ぺたんとお尻が地面にくっつく。
「姫子」
 荒い息を何とか抑えつつ、こちらを誘うように開かれた両足の間にしゃがみこむ。
「入れるぞ」
 彼女のわき腹を両手でつかみ、手前へ持ち上げて寄せる。そのときぴくりと彼女の体が震えたが、絶頂の余韻がまだ残っているせいなのか、それ以上の反応は見せなかった。
 こちらも濃厚な愛液を味わって、今にも暴発しそうなくらい欲情しているのだ。反応しないのなら、遠慮なく挿入させてもらう。
 彼女の返事を聞かず、地面に横たわった彼女を組み伏せ、正常位で挿入する。
「うっ」
 膣口に亀頭が触れた瞬間、あまりの熱さと粘り気に思わず声を漏らしてしまった。
――準備運動、すごいな……いつもより、温かさも、ぬるぬるも、段違い……
 腰を進めると、ぽっかりと開ききった蜜壷は、何の抵抗もなく肉棒を受け入れていった。
「あぁ……はぁぁ……」
 このため息は俺のものか彼女のものか。とにかく、ロリ膣とは思えないほどゆるくとろけた彼女のまんこは、気持ちいいというよりも、心が安らぐといった方がふさわしいという刺激だった。
 だが、このプール独特の空気に完全に中てられた俺には、このゆるい刺激は物足りなかった。早く絶頂したい。早く射精して、このロリまんこに俺の匂いを擦り付けたい。
 そのために、最初から遠慮なくガツガツと腰を打ちつけた。
「はっ、はっ、はっ……」
 腰の動きに合わせ、リズミカルに呼吸を繰り返す。
「ふっ、うぅっ、あぅっ」
 それに合わせて彼女も力なくあえぐ。
 さっきのクンニが相当よかったのか、彼女はいまだ絶頂の淵から戻ってこない。そのため、いくら子宮口を亀頭でこつこつ叩いても、いつもの強烈な締め付けをしてくれない。
――さて、どうしたものか。
 頭がぼーっとしてきた。そもそも、俺は今日起きてから何も食べていないのだ。それなのに、起きてすぐにフェラチオで二発も精液を抜かれ、プールまで歩いて、今こうしてセックスをしている。確実に栄養不足だ。さすがに、これ以上長引くと倒れかねない。
 そう考えた俺は、体を折り曲げて彼女の顔に自らの顔を寄せた。
 そして呆けた表情を浮かべたままの彼女の唇に口付けをする。姫子はベルゼブブだ。蝿の女王だ。だから、味覚が発達している。そして、魔物娘であるが故、感覚の鋭さは性感の高さとイコールとなる。
――だから、こうやってつながりながらキスをしてあげると……
「れりゅっ!……っ!」
 彼女にとってこのキスは考えの外だったのだろう。二つの舌が触れた瞬間、彼女の両目は大きく見開かれ、次の瞬間にさっき以上にとろけたものとなった。同時に、きゅっと一気に膣肉が引き締まる。ガツガツと動いていたペニスに、若く瑞々しい肉ひだが絡みつく。
 ちょうど最奥まで突き入れていたペニスを引き抜こうとしていたので、堀の深いひだがカリと引っかかり、特に敏感な部分を強烈に舐めた。
――くぉっ、この、刺激は……!
 突然の強烈な刺激に、俺の射精欲が一気に極限まで高まった。
「ごめん、姫子、もう出る……っ!」
 接吻していた唇を離し、一言そう告げた。すぐに口付けを再開する。両方の口で、幸せに浸りながら射精したかったからだ。
 肉圧が復活してから一往復目。抜いた肉棒を戻しただけで、もう耐えられないくらいの快楽が股間に集まった。最奥で尿道口と子宮口をくっつけ、腰をねじって刺激する。ぐつぐつと睾丸が煮えたぎるように温まり、大量に作られた精液が尿道を駆け上がってくるのが分かった。
 そして決壊。どくどくと音が外に漏れているのではないかというほど、大量の精液が直接子宮内部に注がれる。
 姫子が後頭部へと回した手にぎゅっと力を込める。
 まぶたを上げると、射精の快楽によってぼんやりとした視界の中、それでもはっきりと彼女の顔が見えた。心ここにあらずといった表情だった。目を薄く開け、目の焦点は合っていない。頬は朱に染まりきっている。鼻から何とか呼吸を確保しようと、大きく荒く息を吸って吐く。甘い香りが辺りに漂う。
――そんなに苦しいなら、キスをやめればいいのに。
 そうは思うが、舌が絡むたびにその考えは吹き飛んでしまう。確かに、こんなに美味しくて気持ちいいキスは、死んでもやめたくない。
 股間の痙攣が収まった。ようやく、長い長い射精を終えたのだ。実際にどれくらい出していたのかは分からないが、体感時間にして一分は軽く超えていたのではなかろうか。
 最近、射精の量も長さも増えていっている気がする。そのうち、人間をやめてしまうのではないか。と心配になってしまう。
――まあ、でも、たくさん気持ちよくなれるし、いいか。
 一方で、こんな受け入れたくなる気持ちも同時に持っていた。
 絶頂の波が少しずつ引いていき、触覚と味覚以外の閉じられた感覚が少しずつ戻ってきた。
 ここから離れたプールサイドからは、相変わらず仲睦まじいカップルたちの嬌声が、少しこもって聞こえてくる。
 くてんと力をなくして地面に落ちた彼女の腕。口付けを終わらせ顔を離すと、そこには絶頂と酸素不足でぼーっとした彼女の顔が。視線を下ろすと、なだらかで慎ましいロリおっぱいが、湿ったスク水につつまれててかてかと光っている。
 そして、近づいてくる足音……足音?
 慌ててそれが聞こえてきた右方へ顔を向けると、カップルと思しき男女二人組みがこちらに近づいてくるところだった。
 彼らとの距離は五メートルほど。完全にあちらの視界には俺たちの姿が入っているだろう。女性の驚いた声。逆光でよく見えないが、女性の上半身の傍らに、くねくねとうねるシルエットが見える。下半身が蛇の蛇娘だろうか。
――しまった……
 別にとがめられることはないが、こっそりやっていることを赤の他人に見られたのだ。隠れている分堂々とやっているよりも恥ずかしい。その上、俺の相手である姫子は、実年齢はともかく見た目は小学生なのだ。半分失神している彼女に覆いかぶさる大人の男の俺。悪い意味に勘違いされるかもしれない。
「あれ、ひょっとして、彰か?瀬田彰。俺のこと、覚えてる?」
「え?」
 思わず聞き返してしまった。カップルの男の方が発した言葉。その声は、どこかで聞いたことがあるものだった。
「いやー、久しぶりだね。二年ぶりくらいじゃないか?ほら、同じサークルの。」
 男が一歩歩み寄り、倉庫の影に入り込む。それによって、彼の顔が視認できるようになった。
「えっ、あ、夏目先輩?」
 夏目葉月。同じサークルに入っていた先輩で、俺の二つ上である。確か、卒業後この辺りの会社に就職したと聞いた。
「そうそう。いやー、懐かしいね」
 ということは、まずい事態が起こったということになる。何故なら、カップルの男の正体が夏目先輩ということは、自動的に女の正体が決定してしまうからだ。
「へぇ、瀬田彰ねぇ……」
――海野先輩、怖い目でこっちを睨まないでくださいよ……
 海野奈美。夏目先輩の恋人で、メドゥーサと呼ばれる種族である。下半身が蛇で、髪の毛の先端が蛇に変化しているのが特徴だ。
 彼女は、とにかく目が怖い。サークルの集まりで夏目先輩が彼女以外の誰かと話すと、男女構わずその蛇の目で睨んでくるのだ。故に、後輩たちからは「氷の目」と呼ばれ恐れられていた。冗談抜きで、彼女に睨まれると全身が寒くなり鳥肌が立つのだ。確か、蛇娘はどの種族も嫉妬深いと聞いたことがある。
 男の俺から見ても、夏目先輩は格好いいと思う。名前通り夏を思わせる情熱に満ち溢れていた。そんな彼に浮ついた噂が一切なかったのは、海野先輩のせいである。どことなく遊び人を想像させる夏目先輩であったが、彼は彼女にべったりなのだ。心の底から惚れこんでいると言っていい。生まれたときからずっと隣同士の家に住んでいて、新生児が病院で眠るベッドすらも隣同士だったという噂もある。二人は誕生日が一緒。
 そんな運命の赤い糸でつながれているかのような二人に、他の異性が入り込む余地は一切ないのだ。
「そ、それにしても、何で先輩方がこんなところに?」
 今もなおこちらを睨みつけてくる氷の目から意識をそらすために、俺はとっさに夏目先輩に問いかけた。
「あ、ああ、このプールあまり日陰がないからな。だから、ここで涼もうと……」
 いつもはっきりと物を言う先輩が、珍しく視線を泳がせながら答える。その様子に、ピンと来るものがあった。
――なるほどね。
 先輩方も、俺と姫子と同じ目的で来たのだろう。そして予想外の先客にとまどったのだ。そうすると、海野先輩の髪にいる蛇が、しゅんとうなだれているのもうなずける。発情しきってせっかくこれからやれると思ったのに、出鼻をくじかれて残念がっているのだろう。こころなしか、彼女本体の視線が、俺と姫子がつながっている部分に注がれている気がする。ちょっと恥ずかしい。
「いや、本当、すいません。こんな状態で」
 改めて今の状況を思い返してみて、赤面する思いだ。今俺は、あぐらで座り、対面座位で姫子とつながったままなのだ。ちょっと身じろぎするたびに、姫子の肉ひだがペニスの弱いところを舐めてぞくりと快感が駆け上がる。
「うん、まあ、いいんじゃないの。ここはそういう場所だし」
 にこりと夏目先輩が微笑む。さらに顔を険しくする海野先輩の視線が痛い。
「ああそうだ、彰、お前今腹へってないか?」
 夏目先輩が、唐突な質問をしてきた。それと同時に、俺のおなかがぐぅと鳴る。
「お、減ってるみたいだな。ちょうどよかった」
 そう言うと、彼は手に持っていた巨大な包みを床に広げた。そこにあったのは、何段も積まれた重箱。
「いや、奈美が勢い余って作りすぎちゃったみたいでさ。それなら一緒に食べないか、と思って」
 ははは、と笑いながら重箱を開け、辺りに置く。
「べ、別にあんたのために作ったんじゃないんだからね!」
 海野先輩が俺を見てよく分からないことを叫ぶ。
「うん、まあ、そうだろうね。彰に会ったのは偶然だし」
 俺は黙って重箱の中身を見つめていた。いよいよ空腹が限界に達しようとしている。
「すごいですね。これ全部海野先輩が作ったんですか」
 前かがみになって、料理を覗き込む。コアラのように俺の体にしがみつく姫子を、落ちないように片腕で支えた。
「えーと、玉子焼き、目玉焼き、ゆで卵、玉子ふりかけのおにぎり、うずらの卵のしょうゆ漬け……」
――何だこれは、卵料理ばかりではないか。
「何よ。何か文句ある?」
 険しい目つきの海野先輩が言う。
「いや、そんな、滅相も……いやー、美味しそうだなぁー」
 誰が聞いても分かるくらい、俺の声に抑揚はない。卵は好きだが、さすがにそればっかりってのは……
「奈美は蛇だからな。卵が大好きなんだ……もぐもぐ」
 異常な料理のラインナップに全く異議を唱えることなく、夏目先輩は玉子焼きを齧った。
「うん、美味い」
 彼のその言葉を聞いて、海野先輩の顔がとろとろにとろけた。まるで半熟のオムレツみたいだ。頬を真っ赤に染め、彼を見つめる視線に熱がこもっている。
「それじゃあ、僕も、いただきます」
 手を合わせ、重箱と一緒に包みに入っていた、アウトドア用のプラスチックフォークを一本手に取る。そして、目玉焼きに狙いを定めた。彼女は、それをちょっと不満そうに見つめている。自分の彼氏以外の人間に食べられるのが不服なのだろう。しかし、空腹には勝てない。白身を切り分け、口に運ぶ。
「……美味しい」
 白身だけであったが、明らかに俺が作るのよりも段違いで美味しかった。俺が作っているときみたいに、適当な時間焼いて目視でなんとなく皿にあげているのとは大違いなのだろう。きちんと温度調節や時間管理をしていると思わせる、付け入る隙を与えない完璧な味だった。
「ふふん、そうだろうそうだろう。奈美の卵料理は天下一品だからな」
 夏目先輩が、まるで自分のことであるかのように嬉しそうに笑う。彼は彼女の手料理に絶大な信頼を寄せているのだろう。
 その後も、俺は彼らと談笑しながら、海野先輩の卵料理に舌鼓を打った。
 俺は、夏目先輩に根掘り葉掘り姫子のことを質問された。彼女との出会いや、普段の生活、果ては夜の営みの内容まで、かなり詳細な内容を聞かれた。話していくうちに、徐々に海野先輩の表情がやわらいでいったのが印象的だった。俺と姫子が互いにべったりで、浮気をしそうにないと判断したからだと本人が言っていたが。さすがに俺は男色の趣味はないから、夏目先輩をそういう目で見たことは一切ないと誓って言える。

 帰り道。結局俺は泳ぐことはなかった。姫子が俺に抱かれたまま眠ってしまったからである。
 先輩方と食事をした後、彼女がぐっすりと眠っていることに気付いた。何度揺り動かしても起きないし、頬を叩いても反応がない。仕方なく、俺は先輩方に別れを告げ、家路に着くことにした。おそらく、今頃あの二人はあそこでいちゃいちゃしているのだろう。
 彼女を抱っこしたまま、人気の少ない道を歩く。抱っこはしているが、当然ちゃんとズボンをはいて性器同士は離れている。さすがに街中で駅弁をする勇気は俺にはなかった。彼女は無意識の内に俺から離れるのを相当嫌がったが。
「あぅ……ん?」
 胸のところから声がする。彼女がようやく目を覚ましたようだ。
「ここは?」
「外だよ。お前が寝ちゃったから、こうやって抱っこして連れて帰ってるんだ」
 そう言うと、彼女は少し悲しげな表情を浮かべた。
「ごめん」
「ん?何がだ?」
 彼女に謝られる理由は何もないはずだが。
「その、せっかく一緒にプールに行ったのに、泳げなくて」
 ああ、そういうことか。
「いや、別に気にしてないぞ。姫子とこうやって一緒に外に出れるだけで、俺は十分だから」
 ぽんぽんと、彼女の頭を軽く叩いてみる。
「……」
 彼女は押し黙った。何かいけないことでもしたのだろうか。
「しょーは、私と一緒に外に出るの、嫌じゃない?」
 今にも泣きそうな顔で、問うてくる。
「何でだ?」
「だって、私、蝿だし……一緒にいるのを見られると、しょーの部屋が汚いってみんな分かっちゃうから」
 そういうことか。今まで彼女が外に出たがらなかったのは、俺を想ってのことだったのか。
「俺は別にいいぞ。周りにどう思われたって。部屋が汚いのは本当のことだし。今更何を言われたって気にしない」
 ぎゅっと彼女を抱く腕の力が強くなる。
「むしろ、可愛い姫子をもっとみんなに自慢したいくらいだな。いっぱい色んなところに行ってさ」
 そう答えると、彼女の顔に笑みが戻った。
「うん、じゃあ、明日。デート、しよ」
 頬を染めて、俺の胸に顔をうずめつつ言った。ちょうど明日はバイトもない。夏休みはまだまだある。ここで断る理由がない。
「じゃあどうする?遊園地にでも行くか?隣町の遊園地、今年から魔物娘OKになったんだってさ」
 うん行こう、そうしようと、明日の予定を顔を輝かせて語りつつ、俺たちは自分の部屋へと戻った。
11/09/05 02:45更新 / 川村人志

■作者メッセージ
最後の方がエロ薄めになってしまった。

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