読切小説
[TOP]
アンニュイ激おも湿度マシマシ系神様
はぁ……。
全く、最近の氏子の信心離れには溜め息しか出て来ませんね。
でじたる、だの、あいてぃー、だのよく分かりませんが、古から続く神との関係性が蔑ろになっています。

少し前までなら雨乞いを求めて、村人が食べきれない程の供物や若い男性をひっきりなしに捧げてきたのに。
寿引退した前任の龍神と交代したからというもの、供物も参拝者も減るばかりです。
先月なんて、数人の参拝者しか来ませんでしたよ。
しかも殆どが色恋沙汰ばかり。
そんなの雨乞い専門の私に言われても困りますし、ぶっちゃけ私がご利益欲しいぐらいです。
まぁ、仕方がないので近隣の縁結びの神に仲介しましたけどね。
小銭程度とはいえ賽銭した心意気を無碍にするのもなんですし。
でも肝心要の雨乞いなんかは、運動苦手な小学生が運動会前日に祈るぐらいで殆どなくなってしまいました。
稲作や農業で引っ張りだこだった昔とは大違いです。


なので、なんとかという団体から神主が派遣されてきたのはかなり助かりました。
いくら龍神として歴史のある社といっても、小遣いにもならない小銭ではどうにもなりませんから。
まさか神である私が氏子に無心するわけにもいきません。

でも、でもですよ?
聞いてくださいよ派遣されたその神主が、全くなっていないのです。
まさか初日早々、私のいる本殿ではなく宿坊で寝泊まりすると聞いたときは呆れてものが言えませんでした。
だって神官とは神のお世話をすることが一番大切な責務ですよ?
ならば神と神主、おしどりのごとく寝食を共にするのが当たり前じゃないですか。
それすら分からないなんて、今時の神主達はどんな教育を受けているのでしょうか?
勿論、私の神主ともあろう者がそんな我儘は赦されません。
寝床なんて私と一緒に使えばいいのです。
狭くなると言うならお互い抱き締め合って密着すればいいですし、何なら神通力で空間ぐらい拡張します。
不敬だのなんだの、私自身が良いと申しているのですから何の問題がありましょうか。
それともまさか私と同衾するのが嫌だとでも?


それから神主としての仕事もダメダメです。
一日バタバタしていると思ったら、やれ社務だの書類仕事だの。
私だけの神主という意識が足りてないようです。
神主たる者、常に御神体である私の側に控えることも仕事というのは一般常識のはず。
それなのに、雑務に捕われ本職を疎かにするなど言語道断ですよ、ええ。
大人しく私にくんかくんかされたり性的な悪戯をされていればいいのですよまったく。


朝の礼拝や行事とかも、私が目の前にいるのに何故そんなことをするのでしょうか?
神の意見からすると、朝起きたときにギュッと抱き締めてもらったり濃厚なおはよう接吻のほうが百倍も嬉しいのですが?
何故いつも顔を赤らめて横を向くんです?
誘い受けですか?わざとですか?また襲いますよ?

祝詞とかも同じです。
どうせなら堅苦しい定形文のおべっかより、耳元で神主から愛を囁かれたほうが何倍もヤル気がでるというのに。
そこに気付かないとは、私の神主もまだまだですね。
今度ウシオニちゃんのごとく、無理矢理押さえつけて一晩中私好みの言葉遣いを身体に教えこみましょうか。


あ、あと食事にも不満があります。
何故精進料理ばかりなのでしょうか?
私としては今後も末永く二人で暮らすのですから、楽しく食卓を囲みたいと思っているのに。
神が良いって言ってるのですから、お互い好きなものを食べていいではありませんか。
精進料理縛りだと折角習った魔界絶倫素材使用の愛妻料理のレパートリーだって狭まりますし、私だってたまには家系ラーメンとか焼肉とか食べたいです。
ここだけの話、街中デートに憧れて人化の術を覚えたんですからね、私。
それから神主ならば神人共食ぐらい知っていて当然、ならばお互いにあーんして食べさせ合うのも当然でしょうに。
着任して慣れぬことも多いとは思いますが、あまり我儘を言っていると、白蛇ちゃんがしてたみたいにぐるぐる巻きにして直接私の口移しでしか満足出来ない体にしますよ?


…まぁ、私もキレイ好きなので掃除は致し方がないとは思います。
見栄えというのは何事においても大事ですからね。
でも意地悪な姑でもあるまいし、大体片付いていれば障子の埃まで気にはしません。
程々に切り上げて、私の御神体を隅から隅まで綺麗にしてほしいものです。
そうすれば一日とは言わず七日七晩雨を降らすことなんて訳ないですよ、ええ。
その為に源泉かけ流しの広い風呂場があるのですから。
使わないと神社の経費が無駄になってしまいます。
私的には、カラステングちゃんに聞いた「まっとぷれい」なるものを是非試したいですね。
私ほどの魔物娘になれば温泉に魔力を注いで擬似ローション化もお茶の子さいさい。
それと龍の長い身体とぷにぷにの鱗を活かして、組んず解れつぬるぬるぐちゃぐちゃ。
そんなの、想像するだけで絶対に気持ちい…もとい絶好の修験だというのに、私自ら命じないと一緒にお風呂にも入らないとはいかがでしょうか?
この間なんてちょっと油断したら一人で行水したと。
え?これもう水を司る龍神への宣戦布告ですよね?
まぁ、今後は必ず私と行水することを一昼夜かけて教え込みましたから、心配はしていませんが。
次やったらマジ泣きです。
みたいですか?いい年した高位の魔物娘が、ドッタンバッタンひっくり返って泣く姿。
おまけに早く止めないと、付近一帯洪水警報ですよ?



はぁ…こうしてみると不満点ばかりですね。
まぁ、確かに顔は好みで優しいし気も利いて私のことを第一に考えてくれるのですから?
私も高天原と葦原中国で一番に好きぐらいには思ってますけど?
未だ私に遠慮というか、恐縮してるみたいなんですよね。
なぜでしょうか?
私が龍神だから?
神と言っても相手が見つかるまでの交代制で、私自身そんな大層な身分ではありませんのに。
私としては初めての専属神主ですから、もっと身も心も親交を深めたいのですが、神主がそんな心構えではいけません。
わだかまりがあって末永い信頼関係が結べましょうか。

…とはいえ、私の神主の考えも分かります。
神を畏れる前時代の考えが強いのでしょう。
確かに一般的な人間より魔物娘は強いのに、それが神に等しい高位の魔物娘となれば敬う気持ちも出てくるもの。
しかし、私は、私達は、触れ合いたいのです。
ただ見守るだけの遠い存在ではなく。
目を見て、手に触れて、肌を重ねて。
一人きりの永劫には届かずとも、二人で八百万の時間を分かち合えばどれほど幸多いことか。
それが色の爛れた関係でも、甘い睦言を交わす関係であったも。
人は求め、神は応える。
古から続く人と神の関係が変わることはありません。
顔を上げてください。
胸を張ってください。
神々にとって、共に歩み続ける人の子ほど輝かしいものはないのですから。











そう。


その為には、やはり交合。
古来より裸のツキ合いとも言いますし、交合は全てを解決します。
ええ、ええ、口ではイヤイヤ嫌がってますが、身体は正直なの知ってますからね。
難しく考える暇があったら手っ取り早く全裸待機で襲うか襲われるかしたほうがいいに決まってます。
となれば、早くお夕食に魔界の精力剤を混ぜてお風呂のお湯を媚薬ローションに変えなければ。
やっと念願の「まっとぷれい」ですからね。
これも人の子を導くためですから、準備は万端にしなければ。
ふふ…快楽で蕩ける神主が目に浮かび、おっとこれ以上は鼻血が出てくるので自重しましょうか。


くふ。
そうと決まればぐずぐずしてはいられません、早速支度をしなくては。
あ、話を聞いてくれてありがとうございます。
このあと夕立が来ますので気をつけてお帰りなさ…。
え?
肝心のお祈り?
ああ、気になる殿方のことですよね?
そんなの押し倒しちゃえばいいじゃないですか?
好きになったら一直線にズッコンバッコン。
恋する乙女に無駄な時間はないのです。
ちなみに、私はこれでは成功しましたから。
神様のお墨付きというやつです。
…心配性ですね〜。
どうしても心配なら、これをどうぞ。
恋愛成就と子宝祈願のお守り。
自分で言うのもなんですが、ご利益はありますよ。
あと痺れ薬に、ロープ、媚薬、発情薬、受精促進剤に魔物化の妙薬も渡しておきますね。
これでも駄目ならまた来なさい。
次はもっと強力なやつをあげるから。

じゃ、私はこれで。

うーん、夕食まで我慢できるかなこれ?







……………あ、そうそう。
告白、絶対上手くいくから頑張ってね。
神様が応援してるわ♪



23/04/28 16:07更新 / 迷える哺乳類

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33