読切小説
[TOP]
美容室『モン・ムス』
 都内の一角にある建物の前で、後藤雅也は足を止めた。そこには『モン・ムス』なる美容室があった。洒落た作りの綺麗な建物で、なかなかに目を引く。
 雅也は今日ここに予約を入れてあり、こうしてやってきたのだ。だが、予約の時間まで間もないというのに、雅也は店の前で凍りついたように動けなくなった。
 『モン・ムス』は最近できたばかりの美容室だ。都内に新しい美容室ができるのは別に珍しいことではないので、大多数の人は新しくできたのか程度の認識で、ろくに気にも留めなかった。だから、『モン・ムス』も数ある美容室の一つにすぎないはずだった。しかし、立ちあげた社長がかなりのやり手らしく、あちこちに働きかけ、すぐに何冊かの雑誌で紹介された。
 記事ではそこまで大々的に紹介したわけではないが、それが皮切りとなった。一度訪れた人は口を揃えてあれ以上の美容室はないと豪語するのだ。特に女性に対する施術は相当なものらしく、まるで別人のようになるらしい。
 雅也は直接見たわけではないが、友人の通う会社に行ってみた人がいるらしく、友人の話では女優になってきたとのことだった。あまりにも美人になるので、整形手術でもしているんじゃないかと思ったほどだそうだ。
 もちろん男性客も受け付けており、こちらの意見も揃って好印象なものばかりだ。中には、いきなり店員に恋人になってほしいと言われた等、冗談のような感想も耳にしたが、結論として男女問わず満足できるという。
 店の噂はあっと言う間に広がり、すぐにその知名度を跳ね上げた。
 店は完全予約制で、しかも新規の客を優先するという前触れもあり、これはと思った人がこぞって訪れたのだ。予約は一か月分しか行わないのだが、月の開始とともに営業日の全ての予約が埋まるという繁盛ぶりである。
 そんな華々しい来歴があるものだから、奇跡的に予約をすることができた雅也が委縮するのも無理はなかった。
 しかし、いつまでも店前で凍っているわけにもいかず、勇気を振り絞ってオープンドアをくぐる。
 入った途端にシャンプーやリンスのいい香りが鼻をくすぐる。入り口の正面はカウンターとなっていて、受付の女性が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ」
 途端に雅也の体に緊張が走る。それというのも、受付の女性がかなりの美人だったのだ。
「あ、あの、予約していた後藤ですけど……」
 震える声でなんとかそう言うと、女性はすぐに微笑んだ。それだけで雅也はどきりと胸が跳ねる。
「後藤様ですね。承っております。では、こちらにどうぞ」
 本日訪れるであろう客のリストと照合すると、その女性は店の一番奥の席へと案内する。
 店内には当然他の客の姿もあり、それぞれに対応の美容師がついてあれこれと作業をしていた。それだけならなんてことない一美容室の光景だったのだが、その美容師達も揃って冗談みたいな美人ばかりだった。
 それを見て、雅也は呆然としつつも納得した。これなら、男受けするのも納得できる。なにしろ、超高級クラブのホステスと言われても納得できるレベルの美人が自分一人のために甲斐甲斐しく世話をしてくれているのだ。これで喜ばない男などいないだろう。雅也も予約できてよかったと内心で喝采する。
「こちらでお待ち下さい。今、担当の者をお呼びしますので」
 受付の女性が去っていくと、雅也は椅子に座った。固くなく、座り心地がいい。椅子からして客を精一杯もてなそうとする気遣いを感じられる。
 来てよかった。まだカットもしてもらっていないのに、雅也はそう思った。
 その時、受付女性の声が聞こえてきた。
「私だけど、千春さんにお客様が来たと伝えてもらえる? え、まだ来てない? どういうこと? 彼女、今日は出勤でしょう? は? 寝坊して遅れる連絡があった? そういうことは、すぐに連絡してちょうだい。……ええ、いいわ。こっちでなんとかするから」
 がちゃりと受話器を置く音がした。
「まったく、これだからワーシープは……」
 続く発言はよくわからないが、どうやらちょっとしたトラブルらしい。
 雅也が耳だけで様子を窺っていると、店のドアが開く音がした。
「ただいま」
 続けて澄んだ美声が聞こえた。
「あ、社長。あの、申し訳ないんですが、ちょっと相談したいことが……」
「どうしたの?」
 受付女性は帰ってきた社長と小声でなにかを話し始めた。
 こんなすごい美容室を立ち上げた社長とはどんな人物なのか、雅也は気になったのだが、席が奥のせいで受付の辺りはまるで見えなかった。
 そうしている間に、二人の間では話がまとまったらしい。
「仕方ないわね。ちょうど時間が空いているから、私がやります」
「すいません、社長。千春さんにはよく言っておきますので……」
 こつこつと近づいてくる足音がして、雅也はそちらを見る。そして凝視してしまった。自分の席へと向かってくるのは、日本人離れした美女だったのだ。いや、人間離れしたと言った方が正しい。ここの美容師を見て美人だと思った雅也だが、この人は次元が違う。他の客も同じ感想らしく、彼女に気付いた何人かがぽかんとした様子で彼女を目で追っていた。
 そんな視線に構わず、口を開けっぱなしの雅也の前に来ると、その女性はぺこりと頭を下げた。
「後藤雅也様ですね。本日はご来店いただきありがとうございます。社長の美雪です。今日はカットだと窺っていますが、こちらの手違いで担当の者が不在という状況なのです。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。よって、本来の担当の代わりに私が担当させていただきたいのですが、後藤様はそれでもよろしいでしょうか?」
 すぐ近くで流麗に話され、雅也は慌てて首を振った。
「あ、はい! それでよろしい、です!」
 緊張のあまり舌を噛みそうになり、変な返事になってしまう。
 美雪はそんな雅也を見てクスリと微笑んだ。
 それだけで、雅也の全身が強張る。
「ありがとうございます。それでは失礼しますね……」
 雅也の回りで美雪が手際よく準備を始める。その度に甘い香りが鼻孔に届き、雅也の頭を蕩けさせた。
「では、まずは髪を濡らしますね。熱かったら仰って下さい」
「はい……」
 優しい手つきで美雪が雅也の頭に触れ、小さなシャワーによってお湯がかけられる。存分に髪を濡らすと、いい匂いのシャンプーが頭に垂らされ、絶妙な力加減で洗髪された。
 雅也の記憶にあるのはそれが最後だ。
 すっかり夢心地になり、髪をカットする過程で何度か質問もされたのだが、どう答えたか覚えていなかった。
 気がつけば、美雪が前掛けを外すところだった。
「お待たせしました。後藤様のご希望通りに切りすぎず、少しムースで髪型を整えてみましたが、いかがでしょう」
 正面の鏡に映っている自分を見て、雅也は少しの間思考が止まった。
 そこに映っているのはもちろん自分なのだが、セットしてくれた髪型が驚くほど似合っていて、まるで別人になった気分だった。
 俺って実はけっこうイケてるんじゃないかと恥ずかしくなるようなナルシシズムが胸に湧き上がったほどだ。
「あ、ありがとうございます! 大満足です!」
 雅也が興奮気味に言うと、美雪も満足そうに笑う。
「それはよかった。では会計ですが、今回はサービスさせていただきます」
「えっ……そんな、悪いですよ」
 こんな美人に担当してもらった挙句、無料にされては良心が痛む。
 雅也はきちんと払うと財布を取り出すが、美雪はにこりと笑ってこう続けた。
「ああ、ご安心を。代金はきちんといただきますから。それ以外に、サービスをさせていただくということです。では、こちらに」
 奥にある扉へと美雪は歩いていく。見たところ、従業員専用といった雰囲気だが、社長自らが案内してくれているのだからいいのだろう。
 雅也はそのように考え、美雪の後に続いた。
 扉の先は白い通路で、どこか無機質な印象だった。等間隔で部屋があり、二人がいる近くの部屋は揃って使用中なる札が下げられていた。
 なんだかホテルみたいだと雅也が思っていると、美雪は困ったように笑った。
「あら、この辺は全部使用中なのね。仕方ないわ。奥へ行きましょう」
「あの、この部屋ではなにをしているんですか?」
 美容室の奥にこんな個室があること自体が意外で、その中でなにを行っているのか気になった雅也は思い切って尋ねてみた。
 それに対して美雪は目を細め、妖艶という雰囲気が相応しい笑みを浮かべ、答えた。
「サービスですよ。女はより美しく、男は……説明するより体験した方が早いでしょう。どうぞ後藤様。こちらです」
 意味ありげな台詞とともに、美雪は奥へと進む。それについていくと、やがて使用中の札が下げられていない部屋の前で立ち止まった。
「ここが空いていますね。どうぞお入り下さい」
 美雪が扉を開け、入るように手で促してきた。
 雅也は素直に応じ、まるで未知の世界に足を踏み入れるような気持ちで部屋に入る。そして絶句することになった。
 室内は薄暗かったが、そこにあるのはキングサイズのベッドが一つだけだ。右手にはシャワールームもあるが、この部屋で行われるサービスといったら、雅也にはいかがわしいものしか想像できない。
「気に入ってもらえたかしら?」
 先程とは違い砕けた言葉だ。同時に、かちゃりと施錠される音が聞こえた。
「あの、ここで一体なにを……」
 雅也が恐る恐る振り向くと、楽しそうに笑う美雪と目が合った。
 そこで雅也は金縛りにでもあったかのように体が動かなくなった。美雪の目が紅く輝いていたのだ。つい数分前までは他の人と変わらなかった瞳の色が美しい宝石のような赤へと変貌しており、その瞳が真っ直ぐに雅也を見つめていた。
「ここは清算室。当店を利用してくれたお客さんが会計をするところよ。女であればお金で支払う手もあるけど、男は一つだけ」
 美雪は雅也の横を通り過ぎてベッドの前に行くと、そこでくるりと振り向いた。
「体で支払ってもらうわ」
「そ、そんな……!」
 体で支払うという言葉に恐怖を覚え、雅也は思わず後ずさる。
「ああ、心配しなくてもあなたに痛い思いなんてさせないわ。それどころか、とてもいい思いをさせてあげるんだから、そう怖がらなくていいのよ」
 いきなり目の色を変色させるような人が言っても説得力のない言葉だ。いや、そもそも目の前にいる女社長は人なのだろうか?
 そんな疑問が雅也の頭に浮かぶ。そしてその疑問はすぐに最悪の形で解決した。
 美雪の付近の景色が一瞬ぐにゃりと歪むと、その頭からは角が、腰からは翼が音もなく現れた。続けて、スカートの中からするすると白い尻尾が顔を見せる。最後に、色素が抜け落ちるかのように綺麗な黒髪が白銀へと変化した。
 まるで映画のワンシーンを見ているかのようだった。
 雅也が声も出せずにただ変貌した彼女を見つめていると、完全に人外の存在へと変わり果てた美雪は再び妖艶な笑みを浮かべた。
「これが私の本当の姿よ。本名も別にあるのだけど、この世界にいる以上は美雪でいいわね。じゃあ、始めましょうか」
 美雪の言葉には聞き捨てるわけにはいかない言葉が含まれていたが、雅也はそれを問うことなどできなかった。疑問はいくらでもあるのに、声が出ないのだ。そんな彼の下半身だけが、雄弁に雅也の心情を語っていた。
 悪魔へと変貌した美雪もそれには当然気づいていて、ヒールを脱いでベッドに上がると仰向けに倒れ、肘をついて僅かに上半身を起こした体勢で目を細める。
 彼女のそんな体勢と下から見上げるような視線が雅也をより興奮させ、息子をより反り立たせる。
「じゃあ、サービスを始めましょうか。ほら、脱いで?」
 優しい口調でお願いするように脱いでと言われ、雅也は恐ろしいほど素直に靴と靴下を脱ぎ、ベルトを外してズボンを下ろした。こんなことをするつもりはないはずなのに、美雪の言葉に逆らえないのだ。
「あら、下からいくの? そんなに自信があるのかしら?」
 美雪はベッドの上でくつくつと笑うとスーツのスカートに手を伸ばし、それをあっさりと脱いでベッドの外へはらりと落とした。
 下半身を覆っていたスカートを脱いだことで、美脚と呼ぶに相応しい美雪の素足が露わになる。すらりとした長い足は芸術品のように白く、太腿は思わず頬ずりしたくなるほど瑞々しい色香を放っていた。その太腿の先には黒いパンツがあり、白い肌と見事なコントラストを作り上げている。
 下半身が下着姿となった美雪を見て、雅也の肉棒は早くも先走りの分泌を始めた。結果、下着に小さな染みができてしまう。
「あら、もう漏れてきてしまったの? じゃあ、早く脱がないとね。さあ、次はどこかしら?」
 あくまで選択権は雅也にくれるらしい。
 次はと問われ、どこにしようかと手をさ迷わせていると、体が熱いくらいに火照っていることに気づき、羽織っていたパーカーを脱ぎ捨てる。
 すると美雪もスーツの上着を脱ぎ、ブラウス姿になってみせた。
 体のラインが出るブラウスと黒い下着姿となった美雪は魔性の魅力に溢れていて、肉棒がびくんと跳ねた。正直、もう限界が近かった。
 興奮によって頭に血が上るなか、雅也はようやく美雪の意図に気づいた。
 彼女は、雅也と同じ個所を脱いでいっているのだ。
 では、ここを脱いだら彼女はどうするのか。
 雅也は素早くパンツを下に下ろし、脱ぎ捨てた。抑えつけられていた肉棒が勢いよく飛び出る。
 これにはさすがの美雪も驚いたのか、目を見開いて雅也のそれを凝視するが、すぐに笑顔が戻る。
 両手の親指が黒パンツの端にかけられ、ゆっくりと下ろされていく。秘部を晒すことに抵抗はないのか、動きを止めたりはしなかった。
「っ……!」  
陰毛が一本もない割れ目が露わになり、肉棒がびくんびくんと震える。
美雪はそんな雅也の反応を楽しむように眺めつつ、パンツを太腿の中ほどまで下ろした。そこが今の体勢で下ろせるぎりぎりの位置だったのだ。
 美雪は上半身を起こす気はないようで、そこから先は尻尾がするすると下着を下ろしていく。その際に、尻尾が脱がしやすいようにと腰や足を動かしてみせた。
 眼前で繰り広げられる下着のストリップショーは異常な艶めかしさで、雅也はついに限界を超えてしまった。
「あっ……!」
 尻尾が足首からパンツを脱がしきった瞬間、肉棒から精液が放たれ、放物線を描いて床に敷かれたカーペットに染みを作っていく。
 悪魔の脱衣シーンを見て興奮し、絶頂を迎えたというのに、今の雅也は恥ずかしさなど感じなかった。それどころか、早く次の服を脱いで美雪が裸になっていく様子を見ながら、もう一度射精したいとさえ思っていた。
「あら、漏らしてしまったの? いけない子ね。私はまだ脱ぎ終わってないのに。ほら、あと少しよ。頑張って」
 優しい声で応援され、射精によって脱力した雅也の体に不思議と活力が戻ってくる。
 最後の一枚となったTシャツに手をかけると、一息に脱ぎ捨てて全裸となった。
「はい、よくできました」
 子供を褒めるような口ぶりで美雪は笑った。そして、ゆっくり体を起こすとブラウスのボタンに手をかける。一つ一つボタンが外され、真っ白な肌がブラウスの隙間から現れてくる。
 その度に雅也の肉棒はぴくぴくと痙攣し、二度目の射精の準備を始める。
 美雪は手元には一切目を向けず、微笑を浮かべて雅也を見つめながら見せつけるようにボタンを外していった。
 ボタンの最後の一つが外し終わり、白いブラウスがするりとその体から脱げ落ちる。その瞬間、雅也の肉棒は極限まで反り立った。
 ブラウスの下から現れた美雪の体は完璧としか表現のしようがないプロポーションだった。その名が暗示するかのように真っ白な肌の上半身は余計な肉など一切なかった。そんな中、胸だけはしっかりとその膨らみを強調しており、黒いブラの内側に窮屈そうに納まっている。
 自分の息子が痛いくらいに勃起しているのを感じながら、雅也は生唾を飲み込む。早くあのブラの下の美雪の胸を見たい。そこで気づいた。雅也はもう脱ぐものがない。
 あのブラを外して彼女の裸姿を見ることができたら間違いなく達することができるのに、雅也にはもう身につけているものがないのだ。
 それに気づいて棒立ちになっていると、美雪はわかっていたかのようにその両手を背後に回す。
 まさか、外してくれるのかと雅也が期待の目で見つめると、彼女の紅い瞳と目が絡み合った。美雪は目だけでにこりと笑い、視線は少しも逸らさずに最後の一枚をゆっくりと体から外し、ベッドの脇に無造作に落とした。しかし、二つの白い膨らみは美雪の左腕によって巧妙に隠されている。
「見たい?」
 まさに悪魔といった微笑みを浮かべ、美雪が尋ねてくる。正也は懸命に何度も頷いた。
「そう。じゃあ、見せてあげる」
 焦らすように胸を覆った腕がゆっくりと動いていく。そして完全に腕から解放された二つの果実がふわりと弾んだ。
 ついに裸となった美雪を見て、雅也の肉棒から再び精が迸った。二度目だというのに、まるで水鉄砲のように精が勢いよく飛び出していく。
 精とともに力までもが体から吐き出されているようで、雅也は足腰から力が抜けていくが、美雪の言葉がそれを許さなかった。
「そんなとこで倒れちゃ駄目よ。ここにベッドがあるんだから」
 体を倒していき、再び上半身だけを僅かに起こした体勢になると、美雪は続けた。
「来て」
 誘いの言葉が頭に浸透していき、雅也はそれに素直に従った。自分の目の前にいる人外の存在に向かって、一歩ずつ近づいていく。
 彼女との距離が縮まる度に甘い香りが強くなり、雅也の意識を朦朧とさせる。頭はそんな状態だというのに、胸は高鳴り、肉棒はしっかりとその役目を果たすべく反り立っていく。
 ぎこちない足取りで雅也がなんとかベッドに辿り着くと、美雪は来るように手招きした。
「さあ、サービスの時間よ。こっちに来て」
 美雪から放たれる魔性の魅力に気後れしつつベッドへ上がると、四つん這いになってそろそろと美雪へ覆いかぶさるように移動する。 
 間近で見る美雪の裸は暴力的なまでに美しく、立ち上る甘い匂いが媚薬のように感情を昂ぶらせ、既に二度も射精をしている肉棒がその硬度を取り戻していく。
 恐る恐る雅也が美雪の真上に移動を終えると、その白い腕が雅也の首へと回された。
「挿れたい?」
 紅い瞳に見つめられつつ甘く囁かれ、雅也は声も出せないまま懸命にうなずいた。
「じゃあ、どうぞ。千春ちゃんが迷惑をかけたことだし、このまま正常位ですることをサービスしてあげる」
 その言葉で、雅也に僅かに残っていた理性が完全に消し飛んだ。
 腰を下ろし、亀頭が美雪の割れ目を捉えると、ゆっくりと侵入していく。
 しかし、半分も挿入しないうちに悲鳴を上げることになった。
「うぁぁぁぁ……!」
 人外の存在である美雪の蜜壷はそれ程の快感を与えてきたのだ。
 愛液に濡れた柔壁が肉棒へと絡みつき、より奥へ引き込もうと蠢く。奥へ進むほどに膣内は熱くなり、肉棒が溶けていくような快感が雅也を襲った。
「あ、で、出る……!」
 最奥へ到達する前に雅也は限界を迎え、膣の中ほどで肉棒が大きく跳ねた。
 だが、射精の直前で美雪が腰を浮かせ、一気に肉棒を奥まで咥え込んだ。一瞬にして奥まで引き込まれたところで、限界に達した肉棒が精を噴出させる。
「んっ……。あなたの精がドクドク流れ込んでくるわぁ……」
 美雪は恍惚とした表情で射精される快感に感じ入っているようで、蕩けたような声が口から漏れる。
 彼女の膣内はぎゅっと収縮して射精を促し、精を搾り取っていく。その動きに抵抗できるはずもなく、雅也は三度目とは思えないほどの量を吐き出し続けた。
 やがて肉棒が痙攣するだけになると、雅也は仰向けに倒された。
「ふふっ、三度目だから奥までもつと思ったけど、途中で果てちゃったわね。まあ、リリムの膣穴に入れたのだから、無理もないのだけど」
 騎乗位の体勢になった美雪は楽しそうに雅也を見下ろした。
「じゃあ、会計と行きましょうか」
「え……」
 荒い呼吸を繰り返していた雅也は一瞬息が止まった。
「なにを驚いているの? 言ったように、今のはこちらの不手際に対するお詫びよ。あなたのカット代金はこ、れ、か、ら♪」
 歌うように告げる美雪は、まさに悪魔の笑顔だった。
 雅也が返事をする間もないうちに膣内が蠕動し、肉棒を締め上げる。
「うあああ!?」
 三度の射精によって萎えかけていた肉棒に膣壁がじっくりマッサージするようにまとわりつき、雅也は身悶えた。恐ろしいことに、肉棒は四度目の精を放とうと力を取り戻していく。
「ふふっ、元気になったみたいね。じゃあ、私の中、楽しんで」
 言葉と同時に再び締め付けられ、搾り取るように膣壁が雅也を包み込んだ。ひだが絡みつき、肉棒に気が狂いそうな快楽を擦りつけていく。
「あっ……!も、もう……!」
 精巣で高速生産された精が早くも放たれようとしている。
「イきそうなのね? ほら、出して。全部子宮で受け入れてあげる」
 美雪がくいっと腰を動かすと、亀頭がこりこりとしたものに当る。触れたと同時に、そこは雅也へと吸いついた。
 最も敏感な亀頭へ子宮口によるディープキスをもらい、雅也は四度目の絶頂を迎えた。
「っぁ……!」
 美雪の最奥へ、今日の中でも最も多い精液が次々に飛び出していく。
「んぅ♪ あなたの精、どんどん来るわぁ……♪」
 膣壁が上下に扱くかのように蠕動して精を搾り出し、子宮がそれを一滴残さず吸い上げていく。
 四度目の射精はまるで体からあらゆるものが吸い取られていくような感覚だった。
 なにもかもを美雪に捧げている。雅也はそんな心地だった。だが、恐怖はまるで感じず、それどころか幸せにさえ感じた。
 子宮口に咥えられている肉棒が精を吐き出す度に、先端から溶けていくような感覚さえ幸福感をもたらす。
 そうして天国とも地獄とも判断し難い射精が終わると、美雪はお腹をさすりつつ微笑んだ。
「随分と出たわね。私を孕ませるつもりなのかしら? それはともかく、これで会計は終わりよ」
 言葉と同時に、雅也の額にキスが落とされた。
「ご馳走様♪」
 満足そうな美雪の声を聞きながら、雅也は目の前が真っ白になっていった。


「社長、少しよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「失礼します……って、なんでまだ裸なんですか!? 早く服を着て下さい!」
 部屋に入ってきた受付担当の女性は美雪を見て頬を染めた。
「事後だからに決まっているじゃない」
 楽しそうに笑いつつ、美雪はシーツを体に巻きつけた。
「で、百合ちゃん、要件はなにかしら?」
「……いえ、二号店の話はどうなったのかと思いまして」
「ああ、その話」
 美雪はベッドから下りると、軽い足取りで百合の前まで歩いていく。
「この間の視察で、良さそうな物件を見つけたわ。テナント募集の表示があったから、今夜の出張で交渉してくるわね」
「つまり、ほぼ確定というわけですね」
「ええ。あそこは間違いなく優良物件だから、どんな手を使っても絶対に確保するつもりよ」
 クスリと笑う美雪に、百合は困り顔で言った。
「社長はリリムなんですから、体を使うのはもう少し自重して下さいよ? 先程帰られた後藤さんなんて魂を抜かれたような顔してましたし。何回シたんですか」
「私だって独身の魔物だもの。夫探しも兼ねてセックスくらいしたくなるわ。ちなみに、彼にはサービスして二回ね」
 百合の口からため息が漏れた。
「二回も社長の体を味わったら、もう人の身体じゃ満足できないでしょうね。すっかりインキュバスになってたし」
「魔物の身体で満足してもらえばいいのよ。私達の身体の良さはわかってくれたはずだから、また来てくれると思うし。その時は、ここの誰かがものにするかもね」
 百合は再びため息をついた。
「まあ、彼はそれでいいですけど。それより、場所を確保できるとなると、二号店のオープンは確実ですよね? 本当に私なんかが店長をやっていいんですか?」
「ええ、もちろん。やっていることはここと変わらないんだから、そこまで難しく考えることなんてないわ」
「でも、私は社長みたいにできるとは思えませんし……」
 自信なさげに百合は顔を俯けた。その肩に、美雪の手が置かれる。
「大丈夫よ。私がこの世界に来た時と違って、あなたは用意された場所でするべきことをすればいいんだから」
「社長はすごいです……。こうして異世界でも確実に基盤を整えていくし」
「私なんて、尊敬するお姉さまに比べたら大したことないわ。私はそのお姉さまに教えてもらった通りにやっているだけだもの。美容室を選んだのも、そのお姉さまの影響よ。髪や毛の手入れがとても上手でね」
「そうなんですか? でも、社長よりすごいって、想像できないんですけど……。あっ、もしかしてレスカティエを陥落させた?」
 戸惑った様子の百合に、美雪は苦笑する。
「残念ながらその予想は外れよ。そのお姉さまはとても聡明な人でね。話していると、自分まで頭がよくなったように思えてくるのよ。だから何度も教えを請いに行ったわ。もう結婚しているのだけど、いつも嫌な顔一つせずに迎えてくれてね。私みたいな下の妹に対しても優しくしてくれる素敵なお姉さまよ。だから、私の憧れの人なの」
 少女のように語った美雪は「ほんと、あんな森の奥で暮らしているだけなのはもったいない」と言って、ふっと笑う。
「そういうことだから、私もまだまだよ。だから、お互い頑張りましょ」
「はい。私も社長の期待に応えられるように頑張ります」
「その意気よ。二号店、任せるから」
「はい!」



二ヶ月後。
いくつもの雑誌にそれは取り上げられた。


『モン・ムス』二号店、ついにオープン!
 今、話題の美容室『モン・ムス』の二号店が先日オープンしました!
 本店でなかなか予約が取れなかった人はこの機会に是非!
 当美容室は完全予約制となっております。店頭、もしくは電話予約の上でお越し下さい。
 担当の美容師を指名することもできます。詳しくは下記までお問い合わせ下さい。
 
 
 『モン・ムス』本店 tel ×××‐○○○‐△△△
        二号店 tel ×○○‐△△○‐○△×

 あなた様のお越しを、心よりお待ちしています。
13/09/04 00:08更新 / エンプティ

■作者メッセージ
どうも、エンプティでございます。
髪を切りに行って、切ってもらっている間にぼんやりと思いついたネタを読切という形で投稿してみました。
こんな美容室なら二週間に一回でも行くのに!
では、ここまで読んでいただきありがとうございました。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33