連載小説
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・十女が刑部狸な場合


魔物には決まった特技がある者もいる。
それは戦闘だったり、特殊な能力だったり。
人間と同じように家事ができたり、商才があったり、様々だ。
性格や容姿は違っても、根本的な部分は同じだったりする。
だから、『この魔物はこれができる』と決まった印象で考える人が多いんだろうけど。
皆がみんな同じじゃないってこと。そんな当然なことを忘れやすいんだよね。

・〜ある日の朝〜


「タムタム、朝だよ」

「んぅ・・・兄やん、お早うさん・・・」


俺が声をかけるとすぐに目を覚まして体を起こそうとしているが、のそのそとした動きだ。
まだ眠いようで、目蓋の重そうな黒い目元をこしこしとこすっている。
髪もボサボサ。まさにザ・寝起きという姿だ。


「タムタムは起こすのに手間取らなくて助かるよ」

「ウチはできる子やしね、兄やん」


この妹は、刑部狸。
狸耳としましま尻尾がチャームポイントな、ちょっぴり自信家の刑部狸だ。
うちの妹達の中では年齢が下の方ではあるんだが、中々のしっかり者である。
どれくらいかと言えば、下の妹達のまとめ役にもなっているほどだ。
俺が考える『朝に手がかからない妹ランキング』では堂々の2位である。
ちなみに1位は自分で起きるコルネッタ。
勝手に順位付けをしたけど、あくまで『朝に』であることは言うまでもない。


「うんうん。手がそこまでかからない子に育ってくれて、俺は嬉しいよ」

「そこまでって・・・別にウチ迷惑かけてないし」

「ん?あぁ、言い方少し悪かったかもな。ゴメンよ」

「それでいいんやし(`・∀・´)」


両手をわざわざ腰に当てて胸を張るタムタム。
どうでも良いことを威張っているように見える風ではあるが、妹達ではただの愛嬌のある仕草にしかならない。
流石である。何というか流石である。


「でも別にそんな一言一言細かいとこ取り上げなくてもいいと思うんだけどなぁ」

「兄やんに迷惑かけたことないウチが、そうあるように言われたからだし。謝罪を要求するんやし。」

「ははー、申し訳ございませんでしたー」

「うむ。それでいいんやし(`‐∀‐´)」


完全に平謝りだけど、満足そうだから別にいいよね。
本気謝りしても、引かれるだけだし。
背伸びがしたいお年頃ってやつなのかな。


「それよりも兄やん。何か忘れてるんじゃない?」

「ん。そうだな」

ナデナデ

「んへぅ〜♥」


タムタムは毎朝ちゃんと起きるご褒美に、と向こうが理由をつけて頭を撫でることを要求している。
・・・ちゃんと起きるんだったら、コルネッタみたいに自力で起きてくれるのが一番嬉しいんだけどね。
頭を撫でられるのが好きなようで、目を細めて笑い、もっふもふの尻尾が左右に揺れる。
やっぱりまだまだ子供だよなぁ・・・
しかし、俺の方も最早日課になりつつあるので文句は言えない。
むしろ文句なんてあろうはずがない。
まったく、妹の頭ナデナデは最高だぜ!!とさえ言ってもいい。
実際には絶対言わないけども。


「よし、それじゃそろそろ行くからね。タムタムも顔洗ってきな」

「うん。いってらっしゃいやし」

「おう」


すんなり離れてくれるのはありがたいけど、何か拍子抜けしちゃうよなぁ。
手間取ることに慣れてしまった自分が怖い。
近すぎる妹には自制することを。離れている妹にはもっと甘えてもいいことを。
両方求めちゃうってのは、やっぱり贅沢なんだろうなぁ・・・






(本当はもっと一緒にいたいけど・・・兄やんが大変なの分かってるからやし。
兄やんが撫でてくれるだけで・・・うちは嬉しいんやし♥)



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・〜ある日の密告〜


「兄やん兄やん、今日ってばアレの日やし」

「ん?あぁ、もうそんな時期か・・・」


俺が家計簿と財布を見比べている最中。
タムタムから声をかけられた。
毎度のことながら説明すると、タムタムには家の金銭管理を手伝ってもらっている。
刑部狸は元々商売を得意とする種族。
だから金銭管理はお手の物。うちのタムタムもそれは同じなようで。
普段は俺がつけてはいるが、それでも抜けがある。
だからこうやって二人でつけることがある、ということだ。


「それじゃ、今回も頼むよ」

「はい!なんやし」


その抜け漏れ調整や『あること』で、タムタムは非常に手助けしてくれている。
その『あること』とは・・・












「まず、フルー姉やんからやし。
この前、街で新しいぬいぐるみとクッション買ってたんやし。計2点やし。
ホルン姉やんは油揚げ、バレス姉やんは遊び道具、アコ姉やんは本2冊ほど追加で購入してたんやし。
値段は・・・だいたいこれくらいやし。
あとは・・・カスタ姉やんが、最近鍛冶屋に出入しているようなんやし。
特に何かを買ってるわけじゃないみたいだけど・・・一応報告しとくんやし」

「ふむ・・・そんなもんか」


そう。あることとは、妹のお金使用度チェックである。
うちの家はお小遣い制。そのため、必要金額に応じて割り当ててある。
無駄なお金を持たせないためだ。使いすぎとか衝動買いとかを防ぐ意味合いもある。
それぞれ何に使ったかなんて個人の自由。
とんでもない物でもない限り口出ししないつもりではある。
それでも・・・絶対なんてことはない。
何か危ない物を買っていた場合、言及しなければいけないこともある。
家計簿に釣り合わない矛盾の発覚のためにも、タムタムにはこの『秘密報告』に一役買ってもらっている、というわけだ。
まあ、こういうことはあまりしない方がいいんだけど・・・
何せ、『前例』があるからなぁ・・・





「あ、忘れるとこやったし。
コル姉やん、新しいピッキング器具一式揃えてたんやし」

「・・・・・・」





まあ、基本危ない物というのは、俺が危なくなる物がほとんどだ。
己の身をある意味危険に晒さないためにも、この家では必要なことなんだよ・・・
前例で言えば・・・『媚薬』とか『強力な魔力の篭った食べ物やアイテム』とか『家族に危害が及びそうな道具』とか。
こういった陰ながらの努力や工夫で、家族の安全(主に自分)は守られているのだ。


「・・・コルネッタ、減給・・・と」

「・・・ドンマイなんやし。コル姉やん」

「この前も同じようなことあったし・・・後で久しぶりに仕置くか」

「・・・・・・本当にドンマイなんやし」



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「へくちゅんっ!・・・!?」ブルッ

「どうかしたのですか?コルネッタ」

「いや・・・何やら寒気、と・・・・・・・・・お尻の方にむず痒さを感じたであります・・・」

「・・・何とも具体的な悪寒ですね。また何かいけない事でもしたのではないですか?」

「そ、そんなバレスや下の妹たちじゃあるまいし!
頻繁にいけない事シてる風に言わないで欲しいであります!
それにまだ何もやってないでありますッ!!」













「・・・・・・『まだ』?」

「・・・・・・わ、わぅふ(~ω~;)」



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「さて、今回も助かったよ。ありがとうな」

「これくらい当然のことなんやし!妹だから、あったりまえなんやし!」


タムタムの協力のおかげで、何とか矛盾なく家計簿を付け終わることができた。
普段は一人でつけているけれど、二人だとやっぱり確認作業が捗る。
タムタムは頼りになるなぁ。


「・・・でも、時々うちが必要なのか本当に怪しくなることがあるんやし」

「いるよいるよ。大助かりだよ」


でもタムタムは納得してないようだ。
実際、時間も負担も減ってるわけだから、こちらとしても非常に助かる。
だが、タムタムがやる範囲が少ないことも事実。
やっぱり刑部狸だから、もっとお金扱ったりしたいのかね。


「まあ、もう少し大きくなったら、うちの金銭管理は全部任せちゃってもいいかなとは思ってるんだぞ?」

「!? 本当なんやし!?」

「ああ」


いつまでも俺が家のことに関してつきっきりというわけにもいかないだろう。
そのためにも、こうやって色々と教えたり経験させたりしているわけだし。
実はタムタムだけじゃなく、クラリネやホルンやコルネッタ、意外なところではバレスにも教えてたりはする。
まあ、長女のクラリネと管理能力に長けてるコルネッタ以外はまだまだ全然不十分な段階だが。
タムタムなんて、まだまだ危なっかしい部分もある。
家のこと全部任せるなんて話、いつになるか分からないんだけどさ。


「嘘だったら許さないんやし!約束なんだからね!」

「分かってるよ。約束だ」


目をキラキラさせて、今にもぴょんぴょんと跳ね出しそうな勢いだ。
うちの狸は本当に純粋な目をしている。
時には強引かつあくどい手段を取るとの噂の他の刑部狸と比べたら・・・
本当にいい子だよ、タムタムは。


「ん!」

「どした?」

「ゆびきりっ!」ムフー


そう言うとタムタムは、自分の小指を立てて、俺の前に突き出してきた。
勢いよく指を突き出したその顔は、正に自信たっぷり。
まだ何もしていないのに、どや顔をしている。
すぐに金銭管理を任せるなんて、一言も言ってないんだけどなぁ・・・
やっぱまだまだ子供だな、と思わずクスッときてしまう。



「はいよ。指きりな」

「うん!」



ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーーますっ♪

ゆーびきった!



「えっへっへー、今に見てるんやし!すぐに兄やんに認められてがっちりまとめてあげるんやし!!」

「楽しみにしてるよ」


何とも感動的な光景だな。
これからの成長が楽しみだ。また一つ楽しみが増えたな。
まあ・・・一番上である長女のクラリネが未だに苦戦しているということは・・・
まだ、秘密にしておこうか。






(もし、うちが家のお金を任されたなら・・・兄やんもっと元気になるんやし!
うちのことももっと見てくれるんやし!そして兄やんと・・・にへへへへ〜〜♥)



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・〜ある日の借金〜


「兄やん・・・ちょっとお願いがあるんだけど・・・」

「ん〜?どうしたー改まって」


ある日の昼頃、タムタムから何かお願い事があるようだ。
ふむ、タムタムから何か俺にお願いだなんて珍しい。
他の妹と違って、タムタムは俺を頼ろうとしない節があるからだ。
今日に限って、一体何だろうか?


「え、えぇっ〜と・・・そのぉ〜・・・」

「何だ?」

「うぅん・・・あっとね・・・」

「・・・どうした?」


何だろう、中々言わないな。
顔を見ると、真っ赤だ。手も合わせて、指同士でくるくる動かしている。
頼み事なんて慣れてないから緊張してるのかな?
もじもじとしていて、いつもの自信満々の姿はどこにいったのやら。


「んと・・・その・・・お金・・・

「何だって?聞こえないんだが・・・」

「ええと、その・・・!






お、おおお小遣い貸してくだひゃいっ!!///






「・・・ふぁっ!?」


盛大に噛んだな・・・いやまあそれはともかく。
お、お金を借りる?タムタムが?
どういうこったい。あのタムタムが。
自分の金銭管理には目一杯気を使っているあのタムタムが、だ。
まだちょっと頭の整理が追いついてないが・・・
つまり、タムタムが望んでいるのは『お小遣いの前借り』だろう。
一応我が家にも、お金に何か困ったことがあればその時言うようにと妹達に言い聞かせており、この前借り制度が設けられている。
他の妹からならともかく、タムタムから申し出を受けることがあるなんて・・・
刑部狸がある意味借金しているようなものだし・・・
・・・明日は雪でも降るのだろうか。


「えーっと。つまりお小遣いの前借りでいいんだよな?」

「・・・・・・///」コクコク


顔を真っ赤にして俯き加減に無言で頷くこの可愛い生き物。
何これ抱きしめたいんだけど。
こんな可愛らしい姿ならお金なんていっぱいあげちゃうっ!とか言う人いそうだけども。
そんなことをしては話が進まない。あとそんな奴がいたら全力で許さない。


「うーん、前借りかぁ・・・」






「・・・・・・ダメ?///」ウルウル


「!?」









ぐはァっ!?
で、ですこんぼっ!?
『口元付近に手を置いて、上目遣いで顔を赤くしたまま瞳をウルウルさせた後の一言』というデスコンボですとっ!?
タムタム・・・恐ろしい子・・・!
ダメージが間を置いてからきやがった・・・!
この純粋さ故の破壊力ッ!
手を顔に当てることで表情に出すことは辛うじて防いだ・・・
だ・・・駄目だ・・・まだ笑うな・・・堪えるんだ・・・・・・!


「兄やん・・・?」

「ん・・・あぁ、大丈夫、大丈夫だ・・・ちょっと驚いただけだから・・・」

「・・・確かに、うちからは意外だと思うんやし・・・でもどうしても必要なんやし・・・」


タムタムは俺になるべく迷惑をかけないように心がけているらしい。
この家で手のかからなかった妹などが居るはずもなく、別にそこを気にしたことはないんだが・・・
そのこともあって、中々言い出せなかったんだろうなぁ。
お金を借りることで俺に迷惑をかけることになると考えているんだろう。


「いいよ」

「え?」

「いいよ。お小遣い前貸ししてあげる」

「ほ、本当っ!?」

「うん。・・・そこまで必死にならなくても、それくらいしてあげるって」

「あ、ありがとうっ!」


一体何に使うのかは知らないけど・・・
まあ、タムタムなら大丈夫だろう。
変なことに首を突っ込むタイプでもないし。
そうなってたら真っ先に俺に話がいくはずだしな。
考えるだけ無駄、か。






「あ、あのぉ〜、私もお小遣いアップを、要求したいな〜・・・なんて・・・で、あります」

「コルネッタは駄目。反省してなさい」

「きゃ、きゃいん!(;ω;U)」






(これで資金はOK・・・兄やん・・・待ってるんやし!///)



・・・・・



そんな俺がタムタムにお小遣いを前貸ししたことも頭から離れていた一週間後・・・
夜に居間で片付けや明日の朝食の準備をしていた時のことである。


「・・・兄やん!」

「・・・? タムタムか」


普段ならもう寝てる時間のはずなんだけど・・・どうして起きているんだろう?
また母さんがフルーの時のような話でもしたのか?


「どうした?こんな時間に。もう寝ている時間だろう?」

「その・・・兄やんに、渡したいものがあって・・・///」


どうやら渡したいものがあるらしい。
ふむ・・・一体何だろうか?
こんな夜中にわざわざ渡すものなんて・・・


「こ、これなんやし!///」


渡されたのは、ちょっと大きめの箱。
綺麗に包装紙でラッピングされており、リボンで飾り付けられている。
破かないように注意しながらリボンと包装紙を取り外し、箱を開けると・・・


「・・・! これ、フライパンじゃないか!」


なんと、フライパンである。
実は最近新しいのに買い換えようかとも思っていたんだが・・・
まだ今のままでも十分使えるからと、諦めていたのだ。
しかもこれ・・・結構いいやつ。
あそこの鍛冶屋お手製のやつじゃないか!?


「まさか・・・俺のために?」

「こ、これだけじゃないんやし!もう一つあるんやし!」


そう言うとタムタムはもう一つ、袋に包まれた柔らかいものを手渡してきた。
開けると、何やら編まれたものが・・・
これは・・・セーターか?
中々に丁寧に編みこまれており、よく出来ていた。


「ちょっと見た目は悪いかもしれないけど・・・頑張ったんやし」

「・・・!これ手作りか!・・・でも一体何のために・・・」


今日、もとより今月は特別な日とか、そういうのはないはずだ。
俺の誕生日はまだ先だし・・・何かの記念とかでもないはず・・・
一体何でタムタムが俺にプレゼントをしてきたのかが分からないな・・・


「えっとね。兄やん忘れているかもしれないけど、今日は『勤労感謝の日』なんやし」

「・・・ああっ!」


勤労感謝の日。
それは、この街の領主が決めた、記念日の一つだ。
簡単に言えば、働いている人、お世話になっている人に感謝しようという日である。
理由は、「そんな日があってもいいでしょ?」という如何にもいい加減な理由だったりするのだが。
とはいっても、この街ではいわゆるただの休日だ。
強いて言えば、奥さんが旦那さんに「いつもお仕事ありがと♥」と言うくらいの日といってもいい。
・・・仕事を休んでヤりまくる家もあるみたいだけど。
自分は家事ぐらいしかしてないから、関係ないかと思っていた・・・


「いっつも兄やん、家のこと頑張ってくれてるし・・・これは感謝の気持ちなんやし!///」

「ありがとうな・・・手作りか・・・大変だったろ?」

「本当は・・・前借りしたお小遣いで服を買ってあげようと思ってたんやし・・・
でもお店のジョロウグモさんが『プレゼントなら作ってみます?』って言ってくれて。
丁寧に教えてくれたんやし!糸もサービスしてくれて・・・!
それでもお金渡そうと思ったんだけど、『自分で作ったのだからお代は必要ないですよ♪』って言われちゃって・・・
それでお金が余ってたから、そういえば兄やんフライパン欲しがってたなって!
それで、一人で初めて鍛冶屋に言って、お願いして、作ってもらったんやしっ・・・!」

「そうかぁ・・・そうかぁ・・・・・・」


一つ一つを一生懸命に話すタムタム。
それを聞いていると、何やら目頭が熱くなってきた。
でも、ここでみっともなく泣き出すわけにはいかない。
押し戻して、ぐっと堪える。


「うちは、一番乗りで兄やんに渡したかったから・・・でも他の姉やんも妹たちもみんな準備してるんやし!」

「・・・それは、言っちゃっていいのかなぁ」

「っ! い、今のは聞かなかったことにして欲しいんやし!忘れて欲しいんやし!」


タムタムは咄嗟に口を押さえるが、もう遅い。
そっか・・・妹達皆、何かしら用意してくれているんだな。
俺のために、こんなに一生懸命になってくれる妹がいるとは・・・
俺は・・・幸せ者だなぁ・・・


「・・・タムタム」

「何やし兄やん!うち何も言ってないんやし!」




ギュッ




「へっ・・・はわ、兄、やん・・・?」



「ありがとう・・・本当に、ありがとうな・・・」


俺は、タムタムと同じ目線に立って、頭を撫でつつ優しく抱きしめた。
普段ならこんなことは滅多にしないが、今は妹達への感謝の気持ちでいっぱいだ。
顔を見ると少し泣き出しそうなので、顔を見られないようにしたかったからというのもある。
たとえ嫌がられても、こうして感謝を伝えたかった。


「はわ、はわわわわ・・・どう、致しまして、なん・・・やしぃ・・・///


いつも毎日大変だけど、それでも家族がいるから頑張れる。
でも、こういう日があれば、明日はもっと頑張れる。
毎日が楽しい日々だけど。
今日はいつも以上に自分の幸せを感じられる日になった。
明日も、明後日も、その次の日も。
俺はまだまだ、頑張らないとな。






(はわぁ・・・兄やんの声が耳元でぇ・・・♥
良かったぁ・・・兄やんに、こんなに喜んでもらえて、よかったぁ・・・♥♥)






「なぁ、ところでタムタム」

「何なんやし?兄やん♥」






「このセーターのデザインは、どうにもならなかったのかな」


(胸の辺りに大きく I ♥ 妹 と描かれている)


「こ、これはジョロウグモさんのアイデアなんやし」






今度あのお店に行ったとき。
お礼とあと一言、言っておこう・・・
家でしか着れないじゃないの、これじゃ。
いや、家でも少し危ない・・・かなぁ?



・・・・・



その後。
妹達からのプレゼントで埋められた兄の姿が発見される事件が発生し。
それが12時間後の話であることを。
兄タクトは、気付くはずもなかった。

・・・あと、兄がそのセーターを着ている時、それを見る妹達の視線が少し熱くなったそうな。
13/08/24 00:33更新 / 群青さん
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■作者メッセージ

はい。お読みいただきありがとうございます。
十女の『タムタム・オーケスティア』
刑部狸です。
年齢は13歳。
この子は、最後までどんなお話にするか・・・色々と苦労させられました。
お金関連の内容ばっかりになってしまうんですよ・・・
性格も普通の刑部狸とはちょっと違い、純粋で健気な妹というイメージです。

またも、更新が2ヶ月ぶり・・・大変申し訳ございませんでした。
忙しさのピークは過ぎたのですが、また9月にはこのようなことがあるかもしれません。
どうしても現実優先になってしまうことをお許し下さい。

名前の由来は打楽器『タムタム』から。
ええ、知っている人は知っているかもしれませんが名前そのまんまなのですよ。
物自体は大きな銅鑼のような楽器です。
お分かりかと思いますが、タヌタヌではございません。種族はタヌタヌですけれども。


次は十一女のお話なんやし。
あと、5人・・・ようやく3分の2になるんですね。

次回もお楽しみに。

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