連載小説
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彼らのホワイトデー 後編 1 それぞれの思惑
瑠璃の設定では、俺は後輩らしい

瑠璃『…』

和也「なに?」

同じ部の先輩の瑠璃に呼び出された。彼女は性格は悪くないし見た目もいいんだがいかんせん性格が暗めでなんと言うか地味な女子。それが俺の感想だ

瑠璃『えっと』

和也「またか…まとまってからでいいから」

彼女は言葉をまとめる前に口に出そうとするのでどもることが多い

瑠璃『また、先を越されて…』

和也「あ、はい」

瑠璃『うう…』

和也「コミュニケーション能力が上がれば、人気株になりそうなんだがな…」

瑠璃『…』

和也「と言うよりなぜ俺が平気で他がダメなんだよ…」

この学校ではどこかの部に入らないといけない決まりで俺は適当にこの部を選んだ

瑠璃『周りの噂とか気にせずに話しかけてくれたから…』

和也「自分で得たことを第一に信用してるだけだ」

瑠璃『…』

和也「分かったから泣くな…」

そのまま持ってきていたタオルを渡す

和也「俺に世話を焼かれるのはあなたくらいのものだ」

瑠璃『いつもごめんね…』

和也「俺みたいな浮いてるやつだからこそなのかもな」

彼女がなにかを考えていたようだが今の俺にはその真意はわからなかった



















雫の設定では、俺はある金持ち夫婦の護衛をしつつ申し訳ないと思いながらも奥方の愛人という設定だ

雫『…』

和也「四十九日、終わりましたね」

雫『これを、読む覚悟がやっとできました…』

和也「それは?」

手紙らしきものを雫は持っている

雫『主人の残した手紙です。自分がもしも手術でも助からなかったら…と渡されていたものです』

和也「なるほど…」

旦那は病気で若くして死んでしまった。末期がんだ

雫『!!!』

和也「どうかされましたか?」

雫『これを…』

渡された手紙の内容に俺は驚愕した

和也「まさか、病に蝕まれたときにはばれてて…」

雫『そして、私と財産をあなたに託すと…』

和也「えぇ…てっきり恨まれてるとばかり…」

雫『まあ、愛人の一人や二人持つのはある種の嗜みなら近くの人間で信用できる人材の方がいいと考えたのかも…』

和也「なんとも…」

雫『主人のためにも…』

彼女の眼が、悲しみ一色から別の色が混じる…

和也「そうですね…旦那さんのためにも貴女の心の穴を埋めなくては…」

俺は愛人、あくまでもそう捉えていた。






















楓の設定では、俺は里帰りした男で幼い頃に結婚する約束をしていた幼なじみが楓らしい

和也「地元にやっと帰ってきた感じがするな…」

地元の肉屋でメンチカツを買って揚げたてのそれを囓りながら家路に向かうと…

楓『和也、くん…?和也くんだよね。』

和也「?」

俺が振り向くと、見覚えのない女性がいた

和也「…誰?」

楓『私、楓。』

和也「…え」

印象が全然違うものになっていた、昔はお転婆かつ髪も短くてなんと言うかボーイッシュな女の子だったが…

和也「随分様変わりしたな…」

楓『うん、いろいろあってね…』

和也「そうか…」

楓『これから家に帰るの?』

和也「ああ、里帰りだ」

楓『何日か居るなら私のところにも来てよ』

和也「ああ、わかった。なら明日行く」

そのまま家路についた

和也「本当に、様変わりしていたな…」

背丈も髪も伸び、それでいて顔立ちはそのままだったが前の印象が強くてわからなかった、そして…

和也「でかかったな、あそこだけ成長比率が凄まじい…」

なんと言うか横長のスイカでも詰めたような胸に変化していたことも驚きのひとつだ

和也「まあ、寝るか。」

明日は楓の家に行く、少し早く寝よう。

和也「朝、か…」

それなりの時間に起きた俺は母が作ってくれた朝食を食べる

和也「懐かしい味だ…」

母『しっかり食べて行ってらっしゃい』

和也「そうする。」

朝食、歯磨きなどを終えて彼女の家の前に着いた

和也「…」

インターホンを鳴らす、思えば再会したときから彼女はどこか俺の知らないものを漂わせていたのかもしれない。

20/02/20 23:30更新 / サボテン
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■作者メッセージ
どうも、サボテンです。

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