連載小説
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終わりの言葉
戻ってきた我が家は少し暗かった。
不思議に思って見回すと、寝室だった。
居間へと転移したつもりだったが、僅かに座標がずれたらしい。
まあ、私の家ならどこだっていい。
重要なのは、隣りに彼がいることだ。
そのグレンは懐かしそうに部屋を見回している。
そして、すぐにそれは言葉となった。
「不思議なものだ。なぜか懐かしく思える」
「そうね……。私もあなたがいることが―」
懐かしい、と言いかけたところで目眩に襲われた。
体から力が抜けて立っていられず、くらりと視界がぶれた。
ああ、倒れる。
そう思ったものの、私の体が床に崩れ落ちることはなかった。
グレンが抱き支えてくれたのだ。
「ミリア、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫……。ありがとう。ちょっと目眩がしただけだから……」
さっきの転移魔法で魔力がとうとう底をついたせいだろう。
体はそんな状態だというのに、グレンの腕に納まっている今の状況が嬉しい。
「少し休んだほうがいい。ほら、座ってくれ」
しかし、あっさりとベッドに下ろされてしまった。
名残惜しく彼の腕を見ていると、グレンは手にしていた剣を置き「待っていてくれ」と言って寝室から出ていってしまう。
声をかける間も与えてもらえず呆然としていると、彼はタオルを手に戻ってきた。
「ミリア、左腕を見せてもらってもいいか?」
「腕を?」
「ああ。血で汚れているはずだ。拭くから見せてくれ」
言われた通りに腕を見せるべく、魔力の装束の左肩から先を消す。
それによって露わになった左腕には、血が模様のようにこびり付いていた。
「少しじっとしていてくれ」
グレンの手が私の手首を掴んで腕を真っ直ぐに伸ばすと、濡れたタオルで丁寧に拭き始めた。
グレンとしては他意なく拭いてくれているのだろうが、私はタオルが往復する度にくすぐったくも心地良い快感が走り、変な気分になってくる。
目を瞑って体を拭いてもらう感覚を楽しんでいるうちに作業は終わったらしい。
グレンの手が止まり、意識が覚める。
「一通り拭いたが、べたつくところはあるか?」
「大丈夫よ。ありがとう」
「そうか。では、少し休んでいてくれ。目眩は貧血によるものだろう。すぐに肉料理を作ってくる」
タオルを手に、グレンは部屋から出ていこうとする。
「待ってグレン」
「なんだ」
グレンが振り向いた。
そこで私は立ち上がり、彼の前へと移動する。
「言っておきたいことがあるの」
グレンの顔が強張った。
私が想いを伝えたら、彼はどんな顔をしてくれるのだろう。
驚き、喜び、戸惑い。
もしくはそのどれでもない顔を見せてくれるかもしれない。
それを想像し、口を開いた。
「言ったわね。私は、あなたが必要だと。もう気づいているでしょ?私があなたを」
好き。
その一言を伝えるより先に、グレンの手が素早く私の口を塞いでいた。
なぜ?
なぜこんなことをするの?
私は想いを伝えたいだけなのに。
目でそう訴えると、グレンは首を振った。
「そこから先は、俺に言わせてくれ」
覆っていた手を外すと、グレンは表情を改めた。
磨き抜かれた宝石のような目が真っ直ぐに私を見つめ、そして。
「ミリア。君が好きだ。愛している。初めて会ったあの時から、ずっと」
その瞬間、全てがどうでもよくなった。
私が欲しかった言葉は、それくらいの威力を持っていた。
喜びで体が震え、息が詰まって言葉が出ない。
だから、グレンはそのまま続けた。
「君の一番ではなくていい。召使いでも奴隷でも構わない。だから、君の傍に置いてほしい」
私の一番でなくてもいい。
そんな言葉を言ってしまえるくらいに、想ってくれている。
もちろん想っているのは私だって同じだ。
グレンの傍にいたい。
違うのは、グレンの一番でありたいという気持ち。
それを伝えるべく、彼に近づく。
二人の距離がほんのわずかになると、両手を彼の頭に伸ばして引き寄せ、そのまま唇を重ねた。
「んっ……」
いきなりそんなことをされるとは思っていなかったのか、グレンが驚きに目を見開く。
あまりにもあっさりと触れ合った柔らかな唇の奥から感じる味は、例えようがないくらいに美味だった。
私が今まで食べてきたどの料理も、この味には敵わない。
これがグレンの精の味。
それを理解すると、もっと味わいたいという欲求がむくむくと湧いてきた。
しかし、今はもっと優先することがある。
名残惜しくも顔を離すと、放心したようなグレンの顔があった。
「返事はこれでいい?私がどう思っているか、わかってくれた?」
「……恐らく」
恐らくでは困る。
「じゃあ、もっとはっきりわからせてあげる」
言ったと同時に再びキスをした。
さっきとは違い、何度も。
あの日は本能と意思が対立して触れることさえできなかったのに、今は驚くほど簡単に唇を重ねることができる。
好きだと言ってもらえたことによって枷が外れた今、本能の赴くままにこうすることができるようになった。
ようやく一致した本能と意思に従い、キスを繰り返しながらグレンの体をベッドへと誘導し、そこへそっと押し倒していく。
体の、お腹の奥が疼き始める。
今までずっと眠り続けていたそこが出番を悟り、ついに目覚めたのだ。
子宮から生じた疼きは瞬く間に体へと広がり、それに敏感に反応した本能が体に指示を飛ばす。
その指示に従い、キスをやめるとグレンの上で膝立ちになる。
「あなたが欲しい。あなたの全てが」
具現化させていた装束を魔力へと戻して一糸纏わぬ姿となり、胸も秘部もなにもかもをさらけ出した。
思えば、男に裸を見せたのは初めてかもしれない。
つまりグレンが初めて。
そのグレンは声も出せないようだった。
目を見開いて凝視する顔がなんとも可愛らしい。
そんな初心な反応をしてくれた彼だが、その下半身はしっかりと男の反応をしてくれていた。
彼が私の裸に欲情してくれている。
それだけで、たまらない喜びが胸の奥からこみ上げ、子宮が更に疼き出す。
もう少し我慢してと内心言い聞かせ、グレンの服に手をかける。
まずは上着だ。
抵抗するつもりはないらしく、グレンは脱がしやすいように体を動かしてくれた。
おかげですんなりと上半身が顕わになる。
同時に、一際彼の匂いが強くなった。
それを発しているであろう胸板にそっと手を置くと、ぴくりと反応する。
彼を手当てする際にも見たが、こうして触れてみると、見かけ以上にしっかりした手応えだ。
思わず頬ずりしたくなる。
実際にしたっていいのだが、それは後のお楽しみにしておこう。
今は……。
胸板に置いた手を腹部へと滑らせると、彼の体が強張っていく。
次に脱がされるのは下半身しかないわけだし、さすがに少しは抵抗があるのかもしれない。
しかし、私は早くそこを見たい。
緊張に体を強張らせる様を眺めているのも悪くないが、見たいという欲求が勝り、ベルトを引き抜くと、下着ごとズボンを降ろした。
「素敵……」
まるでバネ仕掛けのように飛び出してきた陰茎を見て、口から勝手に感想がもれる。
「っ……」
羞恥ゆえか、グレンが呻き声のようなものをあげるが、私はそれどころではなかった。
放たれる精の香りが強く鼻をつく。
それは私にとって媚薬にも等しく、無意識のうちに手が陰茎へと伸びる。
そして、人差し指でそっとそれを撫でた。
「っ!」
びくびくと動く男の象徴は、早く納まる場所に納まりたいと訴えているように見えた。
私の膣穴もこれが欲しいと意識し、熱を持ち始めている。
この熱を冷ます方法は一つしかない。
自分の鼓動がうるさいくらいによく聞こえる。
グレンが欲しい。
このオスの精が欲しいと騒ぎ立てるのだ。
それを感じてほしくて、彼の右手を取り、私の胸に押し当てた。
「鼓動が高鳴っているのを感じる?あなたのせいよ。これでもあなたは私の気持ちがわからないの……?」
「それは……」
揉んでほしいという期待も込めて彼の手を胸へと導いたのだが、その気配はない。
それでも、彼の手が触れている個所は熱を帯び、小さな快感が生じる。
しかし、期待が高まっている体は今やこの程度の快感では満足できない。
その証拠に、子宮が本格的に疼き出した。
急かすように中で愛液がどんどん溢れてくるのがわかる。
「わからないなら、体で教えてあげる」
言葉とともに腰を浮かせた時だ。
それまで私の胸に当てられていたグレンの手が、押し止めるように私のお腹へと動いた。
「ミリア……俺でいいのか……?」
見れば、グレンは戸惑ったような顔で私を見ている。
自分が選ばれたことを信じられないような顔つきだ。
それが嘘ではないことを証明するようにそっとキスをして、言ってあげた。
「あなたじゃなきゃ嫌」
そう言って彼の両肩に手を置くと、陰茎の根元にぴったりと割れ目を当てる。
その途端、そこだけが別の意思を持っているかのようにグレンへと吸いついた。
そして、溢れる愛液を塗りつけていくのだ。
「っぁ……!ミリア、それは……!」
気持ちがいいらしく、グレンから呻き声が上がる。
「気持ちいい?でも、もっとよくしてあげるわ……」
腰を動かし、密着した秘所の位置を亀頭に向かってゆっくりとずらし上げていく。
それに合わせて割れ目が甘噛みをするように吸いつきつつ、漏れた愛液を擦りつける。
グレンがそうであるように、彼の陰茎を割れ目に擦りつける私もそこから感じる快楽に体を震わせた。
呼応するように子宮も震え、さらに愛液が分泌される。
塗りつけられる愛液が増したことで与えられる快感も増えたのか、グレンがぴくぴくと動いた。
その動きは当然私の秘部にも伝わり、早く迎え入れたいと催促する。
「待っていて。もうすぐだから……」
求め合う互いの性器をなだめ、裏筋を刺激しすぎないように注意しながらなぞっていくと、ついにその先端へと到達した。
先走りで濡れる亀頭に、私の割れ目が接触する。
そこでグレンが私を見た。
青い目には、戸惑いと隠しきれない期待の色がある。
そして、私の目もきっと同じはずだ。
膣穴は愛液で濡れ、彼を迎え入れる準備を整え終えている。
それを感じ取り、微笑む。
「焦らしてごめんなさい。さあグレン、覚悟はいいわね……」
亀頭を割れ目の中心で捉えると、彼の返事を待つことなく腰を下ろした。
「ん……!」
ぐちゅりという音とともに、グレンが私の膣穴へと入ってくる。
固く焼けるような熱を持ったそれは、ぴっちりと閉じた膣壁を押し広げてまだ誰も入ったことのない奥へと進んでいく。
体内へ初めて迎え入れた異物に不思議な感覚を覚えるが、それ以上に溢れんばかりの快感が私を襲う。
「くっ……ミリア……!」
グレンが呻き声を上げた。
彼も私と同じように信じられない快感を味わっているはずだ。
もっと味わってほしい。
そう思って更に腰を下ろした時だ。
「う……!」
突如、鋭い痛みが下腹部に走った。
しかし、それは覚悟していたこと。
だから構わず腰を動かし、グレンを根元まで完全に咥えこむ。
止めていた息を吐くと、破瓜の痛みは少し和らいだ。
鍛えようのない体の内側から生じた痛みはかなりのものだったが、この痛みは一生に一度だけ。
それを与えてくれたのがグレンなのだと思うと、未だに尾を引く痛みも気持ちいいものに感じられた。
同時に、グレンが私の中にしっかりと納まっているのを感じ取る。
やっと繋がった。
処女を捧げ、彼とようやく一つになれたことが泣きたくなるほど嬉しい。
「ぐっ……」
悶えるような声が聞こえ、虚空をさまよっていた視線が彼に向く。
グレンは辛そうな顔でシーツを握り締めていた。
「すまないミリア……その、長くはもちそうにない……!」
私の中で、グレンがぴくぴくと震えている。
我慢が限界を迎えつつあるらしい。
嬉しさのあまり失念していたが、私もリリムだ。
その膣穴が彼に与える快感は相当なもののはず。
それでも挿入したばかりで射精するわけにはいかないと思っている。
今のグレンを説明するなら、こんなところだろうか。
そんなグレンが愛しくてたまらない。
「私もあなたの精が欲しいの。だから遠慮なく中に出して」
我慢しているのなら、ちょっとした刺激で限界を超えてくれるはず。
本能の命じるままに膣内の肉壁を締め付け、絡みつかせる。
「っ、ミリア……!」
私の名前を呼んだと同時に中で彼が大きく震え、弾けた。
びくりと跳ねるのを合図に、どろどろとした熱い精が私の中に広がり始める。
「んぅ……!熱いのが、出て……!」
グレンが脈打つ度に全てを焼き尽くすような精が膣内を満たし、子宮がそれを吸い上げていく。
誰よりも愛しい彼に射精されている。
グレンに子種を注がれる喜びと、初体験となる膣を使っての搾精による快楽で私は意識が飛びそうだった。
しかし、連続して放たれる精によって与えられる快感が私の意識を強制的に引き戻す。
そしてまた意識が飛びそうになる。
それがどれだけ繰り返されたのかはわからない。
声も出せないままそれを感じるのに精いっぱいで、気がつくとグレンは私の中でぴくぴくと小さく震えるだけで、なにも出さなくなっていた。
互いの荒い息だけが聞こえるなか、私はグレンへと語りかける。
「どう、グレン……。気持ちよかった……?」
「ああ……」
僅かに顔を上げ、グレンは疲労困憊の顔で小さく笑う。
だが、跨ったままの私を見て急に目を見開いた。
「ミリア、血が……!」
血?
不思議に思って彼の視線を辿ると、お互いの結合部に目がいく。
いまだにしっかりと繋がったままのそこから、精液と愛液とが混ざりあったものが僅かに漏れ出ていた。
そこに若干ながら赤が混じっていたのだ。
「ああ、これ……」
処女を喪失した証を見て、ふと笑みが零れる。
「処女だったの。初めては、私の夫となる人に捧げようって決めていたから」
今までずっと守り通してきた甲斐はあったと思う。
ところが、なぜかグレンは申し訳なさそうに顔をしかめた。
「俺でよかったのか……?」
「ええ。すごく嬉しいし、ずっと大事にしてきてよかったと思ってるわ。あなたにあげられたんだもの」
だからその責任はとってねと言おうとしたところで、体の奥でドクンと脈動するような音が鳴る。
「あ……」
それはあっと言う間の出来事だった。
魔力が湧き出てきたのだ。
グレンがくれた精が吸収され、更に魔力へと変換される。
そうしてできた魔力が恐ろしい早さで体を駆け巡った。
それは神経に電流を流されたような快感をもたらした。
思わず身悶えし、自分の体を抱くようにするが、そんなことは気休めにもならない。
「ん……、ふぁ……!」
膣から得た精による魔力の回復がこんなにも気持ちがいいと思わず、悩ましげな声が出てしまう。
それがグレンの欲情を誘ったのか、膣内で彼がぴくぴくと反応する。
グレンのくれた精が極上の味を余韻として残しながら、お腹の中で溶けるように消えていく。
枯渇していた魔力が戻ってくる。
その後を追うように、体の活力も湧いてきた。
指先にまで鋭気が充足していくのをはっきりと感じる。
体が活力を取り戻したことで、感覚も数瞬前とは比べ物にならないほどはっきりと感じ取れる。
まるで生まれ変わったようだった。
それと同時に、ひどい物足りなさを感じる。
グレンがくれた一回分の精だけでは、極限まで減った私の魔力を回復するには全く足りていないのだ。
体がもっと欲しいと訴え、催促するように子宮もきゅんきゅんと疼く。
よりはっきりとわかるようになった膣内では、グレンが未だに大きさを保ったまま納まっている。
その固さは幾分か落ちてしまったようだが、それでもまだ萎える気配はない。
膣壁がそれを敏感に感じ取り、もう一回くらいなら頑張ってくれそうに思える。
「ミリア、どうかしたのか?」
「なんでもないわ。あなたが精をくれたから、魔力が回復して気持ちよかっただけ。それよりグレン……」
ゆっくりとグレンの上に倒れ込むと、間近で綺麗な青い目を見つめる。
「私はもっとあなたの精が欲しい。あなたはどう?さっきの一回で満足できた?」
「……君には悪いが、こういうことをするのは初めてだからな……。よくわからないうちに終わっていたというのが正直な感想だ。しかし、俺が満足したかよりも、君の思いの方が大事だ。だから君が精を欲しいと言うのなら、俺はいくらでも応じる。俺は君のものだからな……」
「じゃあ、今度ははっきりと満足できるように気持ちよくしてあげるわ」
お互いの初めてを捧げあった先程の交わりは、私もほとんど楽しむことなく終わってしまった。
グレンを迎え入れ、射精に至るまでの過程は確かに気持ちよかったのだが、快楽に流されて行為を楽しむ余裕を持てなかった。
だが、今度はそうはならない。
お互いに一度達した後だし、私に至っては体が活力を取り戻し、グレンがどうすれば感じてくれるか色々と試してみようという余裕さえ出てきている。
自分の体でこれから最愛の人を喜ばせるのだと思うと、それだけで胸が躍ってしまう。
逸る気持ちを押さえつつ、まずはグレンの両脇からその背中へと腕を回し、しっかりと抱きしめる。
より密着したことによって、胸板に押し当てた胸がぐにゃりと形を変える。
それだけで、グレンの体が緊張するのがわかった。
膣内の方ではよりそれがはっきりと現れ、固さを取り戻していくのを感じる。
胸は効果があるようなので、ほとんど密着した今の体勢のまま、ゆっくりと腰を動かしてみた。
乳首を擦りつけつつ、ゆっくりとグレンを膣奥まで迎え入れては戻す。
「っ……!」
これもよかったらしく、グレンが再びこらえるような顔になった。
「ん……はぁっ……ふふっ、どう?気持ちいい……?」
わざわざ聞かなくても、すぐ近くで見るグレンの顔には気持ちいいと大書してあるのだが、きちんと声にして言ってもらいたかった。
グレンがそうであるように、私もまた気持ちいいのだ。
膣を押し広げられるのも、柔壁が擦れ合うのも、信じられない快感を私にもたらす。
つい声が出そうになってしまうほどの快楽を与えてもらっているのだ。
それと同じくらい、グレンにも快感を与えているのだとはっきり知りたかった。
「あっ……んっ……ねぇグレン、答えて……?気持ちいい?」
「ああっ……!」
グレンは肯定の返事なのか、悲鳴なのかわからない声を漏らした。
辛そうに見えるが、私の膣内でぴくぴくしていることから前者だろう。
それでもまだ射精の兆しはない。
一度出したことで、彼も少しは余裕ができたらしい。
それならばと腰を動かす速度を少しばかり上げ、より早い抽送を繰り返す。
勢いが加わったことで膣内で陰茎と柔壁とが擦れ合う際に生じる快感は加速的に増していき、それを感じ取った子宮の内部では爆発したような熱が発生する。
与える快感も増したのか、私の中でグレンがびくりと跳ね、その表面に血管を浮かび上がらせるのを感じ取る。
激しいと呼ぶには程遠い交わりなのに、感じる快感は確実に増していき、荒くなった吐息がお互いの頬を撫で合う。
触れ合っているグレンの体が火照って熱くなり、その熱が繋げた性器を通して伝播したのか、私の体も内側から熱くなり始めた。
「ミリアっ……!そろそろ……!」
グレンが上擦った声で、二度目の絶頂が近いことを伝えてくる。
「そう、ね……。私もそろそろだわ……。だから、最後は、一番奥で、んっ!お願い……!」
いつの間にかグレンは私の中で膨らみ、今にも爆発しそうなくらいに震えている。
最初の時よりも更に大きいであろうそれを深く咥えこむべく、一旦腰を浮かせてから一気に落とす。
そしてとうとうグレンが子宮口との接触を果たした。
「うぁっ……!」
「んぅっ……!」
最も敏感であり、貪欲なそこはようやく来てくれたグレンを歓迎するように咥えこむ。
明らかに私とは別の意思を持っているとしか思えない子宮がその口で亀頭へと吸いつき、精を搾り取ろうと蠢く。
「ミリア……!」
かすれた声で呻いたと同時にグレンが中でびくんと大きく跳ね、二度目の精が迸った。
「っ〜〜〜〜!」
グレンが力強く脈動する度に、密着した子宮口へと精が吐き出される。
まるで体の中から溶かされていくような感覚に、彼の背中へと回した両手に力が入り、強く抱きついた。
ずっと疼いていた子宮が待ち焦がれていた精を一滴残らず吸い上げ、その中に納めていく。
そこでは舌よりも明確にグレンの精の味を感じ取ることができた。
最高に甘美で、思考をも蕩けさせるグレンの精。
それが子宮へと広がっていく度に、膣はもっと欲しいと収縮して更に搾り出そうとする。
それに応じてグレンから大量の精が放たれ、子宮を満たしていく。
中で繰り返される脈動と子宮に広がる熱さに声もなく感じ入りながら、私はこれ以上ない充足感と幸福感に包まれていた。
やがて数分間は続いたであろう射精が終わり、絶頂の昂揚が引いていくと心地よい余韻が残る。
上下するグレンの胸を枕にしつつ、もらったばかりの精が再び魔力となって体に行き渡るのを感じながら、グレンの胸に右手を置いて撫でる。
「すごかったわね……。気持ちよかった……?」
「ああ……。君はどうだ……満足できたか……?」
「ええ……。おかげ様で」
満足のため息をもらすと、頭の上でグレンが笑った気配があった。
顔を上げてそちらを見ると、グレンは小さく口元に笑みを浮かべていた。
「どうかしたの?」
「いや、ようやく謎が解けたと思ってな……」
「謎?」
聞き返すと、グレンはうなずいた。
「間違いに気づくまで、いつも疑問に思っていた。主神を背後に持つ俺達教団の勇者や兵が、なぜ魔物の誘惑に負けるのかとな。だが、勝てないわけだ。こうして肌を重ね、愛情をぶつけられたら勝てそうにない。身を以ってそれがわかった……」
「それは、やっと私の想いをわかってくれたということかしら?」
「ああ……。だが、このまま少し寝てもいいか?君と別れてから満足に眠れなくてな……」
よく眠れなかったのはグレンも同じだったらしい。
しかし、もうそんなことはないだろう。
これからは、ずっと一緒なのだから。
「抱きしめてくれたら、寝てもいいわ」
そう言うと、グレンは一瞬だけ目を見開いた後、すぐにその両腕で私を包みこんでくれた。
「こんな贅沢な寝方をしていいのだろうか……」
「いいのよ。だから、私が逃げないようにきちんと抱きしめて捕まえていて」
返事の代わりに抱きしめる腕に力がこもった。
優しく抱かれているのを感じながら、そっと体を動かしてキスをする。
「おやすみなさい、グレン」
「ああ……」
グレンの胸へと頭を置くと、彼の匂いと体温の相乗効果で私にも眠気が襲ってきた。
満足に眠れなかった体で二回も性行為をして体力を使えば眠くなるのも当然だが、今眠ってしまうと彼が消えてしまう気がした。
次に目を覚ましたら、また寂しい一人の朝を迎えるという考えが頭をよぎったのだ。
それだけは嫌だと彼の胸に顔を押しつけ、離れないように抱きつく。
意識を耳に向ければ、彼の鼓動の音が聞こえる。
とくん、とくんと脈打つ鼓動は子守唄のようで、それを聞いていると自然と心が和み、安心してくる。
大丈夫、今度はきっといてくれる。
それで緊張の糸が切れ、意識が眠りへと落ちた。


最初に感じたのは、とくん、とくんという生命の音。
続けて右頬に触れている温かいなにかが定期的に上下するのを感じる。
意識が覚醒し、なんだろうと顔を上げると優しい声がすぐ近くから聞こえた。
「おはよう」
耳がぴくりと動き、そちらを向くと、小さく微笑むグレンが目に入る。
夢じゃない。
瞬時にそう理解した。
この安らぎを感じる匂いも、触れ合っている肌から感じる温もりも、全てが現実だ。
挨拶の代わりにそっと唇を重ねる。
触れ合った唇は柔らかく、確かな温かさを伝えてくる。
目の前の彼が紛れもなく現実の存在であることを確かめると、微笑みを返した。
「おはよう、グレン」
「ああ。しかし、その挨拶をする時間は随分前に過ぎてしまったようだが」
そう言われて反射的に窓へ目がいく。
カーテンを閉めていなかったそこから見える外の景色の明るさは正午といったところだろうか。
「揃って寝坊だな」
どこか呆れたような口調に、同意せざるを得ない。
「そうみたいね。それより、お腹空いたでしょ?今から昼食を作るわ」
私はたっぷりと精をもらったおかげで空腹を感じていないが、グレンはそうもいかない。
今ある材料で手早く作れる料理はなにがあったかと考え、名残り惜しくも体を起こす。
そこでグレンは言った。
「ミリア、その前に頼みがある」
真剣な声だった。
「どうしたの?」
見つめると、彼の青い瞳に強い意思が浮かんだ。
「もう、時間がない。だから、君の手で終わらせてくれ」


雲一つない晴天だった。
散歩、買い物、昼寝。
なにをしてもきっと楽しめるに違いない天候の下、私はグレンと対峙するように立っていた。
主神の加護が失われてきているのだと彼は言った。
その原因はもちろん私と肌を重ねたから。
私の魔力不足もあって完全にはインキュバスになっていないようだが、それも時間の問題だ。
そうなる前に、決別をしたい。
それがグレンの頼みだった。
その願いを叶えるべく、私はグレンと向かい合っている。
互いにそれぞれ愛剣を手にして相手の正面に立つと、グレンは抑揚のない声で宣言する。
「リリム、ミリア。君に尋常の勝負を申し込む。貴女を愛する者としてではなく、勇者の一人として」
不器用な人だと思う。
それでも、笑ったりはしない。
私は、そんな彼を好きになったのだから。
「その勝負、受けましょう。貴方を愛する者としてではなく、リリムの一人として」
そこで一瞬だけグレンが表情を緩めたのは、茶番だと思っているからだろう。
しかし、すぐにその表情が消える。
そして現れたのは、勇者の顔。
口を閉じ、淡々とこちらを見る目にはなんの感情も窺えない。
「想いは全て剣に込める。いくぞ」
顔の高さに構えた剣の腹を左手が素早く撫でていき、それに合わせて刀身が光を帯びていく。
それは、グレンの魂そのものの色だった。
剣に宿る力なのか、勇者である彼の固有技術なのかはわからない。
わかるのは、どこまでも澄んだ蒼を宿した剣を構えるグレンに目を奪われたことだ。
蒼い剣を構えてこちらを見るグレンは、私が今まで見てきた誰よりも勇者と呼ばれるに相応しい姿だった。
剣もその魂も、眩しいくらいに蒼く光り輝いている。
「本当に素敵ね……。好きになったのがあなたでよかったわ」
昂ぶる魔力が体から溢れ出す。
羽根の一本一本にまで魔力を行き渡らせ、愛剣にも藍色の魔力が絡みつく。
私も準備が整ったことを認めると、グレンは大地を蹴って躍りかかってきた。
互いの剣が閃き、それがぶつかると蒼と藍色の魔力が火花のように弾け、空気が震える。
なにも知らない他人が今の私達を見れば、勇者とリリムの一騎討ちだと捉えるだろう。
それでも、私には彼と戦っているという感覚がない。
剣を手に斬りかかっているはずなのに、どこかダンスでもしている気分なのだ。
そんな二人の時間はいつまでも続きそうだったが、グレンが一瞬動きを止めたことによって終焉を迎えた。
グレンが一際大きく剣を振りかぶった姿勢で動きを止め、互いの視線が絡み合う。
終わらせてくれ。
目だけで語ると、グレンは剣を振り下ろした。
その剣の軌道目がけ、私は彼の過去を断ち切るべく剣を振るう。
蒼と藍色の軌跡が交錯した瞬間、乾いた金属音を奏でてグレンの剣が折れた。
回転しながら宙へと放られた剣の半身は陽光を反射しつつ、二人から離れた位置に突き刺さる。
グレンは自分の手にある折れた剣を見つめてなんともいえない表情を浮かべると、その場に片膝をついて頭を垂れた。
「俺の完全なる敗北だ」
決別の儀式はこれで終わりだ。
剣をしまうと、私はグレンへと右手を差し出した。
「グレン、私の夫になる覚悟ができたらこの手を取って」
想いを伝え、肌を重ねた。
それでも、夫になれとは言えない。
だから、グレンが夫にはなれないと言ったら、それを受け入れてしまうと思う。
しかし、グレンは私のそんな不安をかき消すように、すぐに手を取ってくれた。
「覚悟はできている」
そして、そのまま私の手をひっくり返すと、自分の額に当てた。
「永遠に愛し続けることを誓う」
まるで王に忠誠を誓う騎士のようだった。
グレンが立ち上がると、その体へそっと抱きつく。
「やっと……やっと手に入れた。私だけの愛しい人を」
「俺も、やっと太陽の下に出られた気がする」
そう言って、彼は未だに右手に持たれた剣の柄を持ち上げた。
それを見る目に様々な感情が宿っていることに気づき、尋ねてみる。
「今更だけど、その剣、折ってしまってよかったの?」
「ああ。愛着がなかったと言えば嘘になるが、俺は、もっと愛情を向けるものを手に入れたからな……」
グレンの腕が私の背中に回され、抱きしめてくる。
それが嬉しくて尻尾が揺れた。
「この剣は俺の……『勇者グレン』の罪の象徴だ。君は俺を救い、太陽の下へと連れ出してくれた。だから、君の手で終わらせてほしかった」
グレンは右手にあった剣の柄を折れた半身の方へと投げ捨て、右腕も私の背中に回し、両腕で抱きしめてきた。
「剣とともに『勇者グレン』は死んだ。だから俺は、ただのグレンだ。罪を償いながら、君と一緒に歩いていく」
「そうね。手と手を繋いだまま、どこまでも一緒に行きましょう」
ゆっくりと体を離し、右手を差し出す。
そこへしっかりとグレンの手が重ねられた。


昼食を済ませ、私は書斎で机に向かっていた。
洗い物はグレンがしてくれるというので、お言葉に甘えさせてもらった。
机の一番上の引き出しを開け、そこから一冊の本を取り出す。
その中身は日記だ。
ただ、毎日書いているわけではないので、そこに記されている日付はばらばらだったりする。
この日記を書くのは、決まってなにかあった日だ。
私にとって忘れられない出来事があった日のことを、ここに書いている。
一人暮らしを始めた日から書いているので、その中身はなかなかの量になっている。
しかし、買った物が分厚すぎたせいで、ようやく半分を超えたというところだろうか。
ぱらぱらとめくり、少し目を通してはその出来事を思い出して笑ってしまう。
日記を書くようにしたのは、こうして体験した出来事を忘れないためだ。
もちろん、忘れられない思い出はたくさんある。
だが、全ての出来事を覚えておくことはできない。
新しい出来事によって古い記憶が埋められてしまうからだ。
数十年しか生きられない人でさえそうなのだから、長い時間を生きる私はきっと多くのことを忘れてしまう。
それでも、こうして記憶を記録しておけば、いつでも思い出すことができる。
その日記の中へ、今日のことを書き込む。
グレンと結ばれた記念すべき日だから忘れるはずはないが、それでも書かなくていいことではない。
彼と出会った日から、夫婦となった今日までの出来事をかいつまんで記していく。
すらすらとペンが進み、一通りのことを書き終えると、グレンが部屋に入ってきた。
「ミリア、洗い物は終わった」
「そう、ご苦労さま」
振り向いて笑顔を浮かべると、グレンは近づいてきて手元を覗き込んだ。
「日記か?」
「ええ。今日は記念すべき日だから、今書いていたの」
「そうか。ところで、今日はこれからどうする?日暮れまではまだ時間があるが」
「そうね。じゃあ、少し散歩に行きましょ」
「散歩?また森に行くということか?」
微笑とともに尋ねてくるグレンに、私は首を振ってみせた。
「いいえ。それは普通の散歩。今私が言っているのは、私がいつもしている方の散歩よ。世界を見て回るの」
「世界を?」
「ええ、そうよ。世界にはまだ私達の見たことのないものがたくさんあるわ。それを見に行くの」
「なるほど。わかった、では、居間で待っている」
「そうして。もうすぐ書き終わるから」
うなずき、グレンが出ていく。
それを見送ると、書き途中だった文面に視線を戻す。
グレンを待たせないために、手早く残りの文を書いていく。
さほど時間も取らずに書き記すと、日記を引き出しに入れようとして手が止まる。
残りのページはまだまだあるが、今日からは新しい日記にしようと思ったのだ。
ここに書かれているのは、私だけの物語。
しかし、私だけの物語は終わり、今日からは私とグレンの物語が始まる。
それは、ずっと終わることのない物語だ。
だから、それを書くのは別の日記にして、この日記はこれでお終いにしよう。
そうと決まれば引き出しではなく本棚に置こうと思い、腰を浮かせかけたところでふと思いついたことがあった。
そして再びペンを取る。
こうして日記という形の本にしておけば、誰かが手に取って読むかもしれない。
それがグレンか、彼との間にできる娘なのかはわからない。
ひょっとしたら、全く関係のない誰かかもしれない。
だが、この広い世界で、無数の物語があるなかで、私の物語が誰かに読んでもらえるというのはきっと幸せなことだ。
それくらい世の中には物語が溢れているし、これからも次々に物語は生まれ続けていく。
私の物語はその一つにすぎない。
だから、時間をかけてこれを読んでくれた人のために、願い事を書いておこう。
私の物語が終わる最後のページにペンを走らせ、感謝を込めてその一文を書き込む。
祈りにも似たその言葉を。


     『私の物語を読んでくれた人に、良き日々が多くありますように』
13/01/29 00:26更新 / エンプティ
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■作者メッセージ
最後の後書きとなりました。
一年半は続いた長い物語「リリムの散歩」はこれにて完結となります。
さて、この最終章ですが、ものすごく難産でした。
話の骨格は決まっていたはずなのに、書いてみると進まない進まない……。
特に最終話は二本立てということで、文字通り書くことに全力投入でした。
こうしてなんとか書き終えたわけですが、楽しんでいただけたでしょうか。
ちなみに、この作品で書きたいことはほぼ書けたので作者は満足しております。
惜しむらくは、最後のエロ。
これだけは妥協に妥協を重ねてなんとか及第点というレベルでした。
ただでさえ難しいエロシーンなのに、それを女視点で書くというのは難易度が狂っておりました……。エロくならないよちくしょう。
体にダイナマイトを巻きつけて、地雷原に全力ダッシュした気分です。
よって、いい表現が思いついたらここだけはこっそり書き換えているかもしれません。


長々と書いたところで、次の作品のことでもと言いたいのですが、実はまったく考えておりませんw
燃え尽き症候群というやつなのか、さっぱり話が思いつかないのです。
思いついたとしてもここまで長くせず、数話で完結する話を目指そうと思います。
そんなわけで、しばらくは読者側に回ろうかと。
とりあえず、執筆作業を優先して更新されてたのに読めなかった作品から手を付けていくことにします。
それでは、最初から読んでくれてた人、途中からの人も最後までお付き合いいただきありがとうございました!
影も形もない次回作でまた会いましょう!

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