読切小説
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Heaven or Las Vegas
 寒村から脱出して着いた都会は、故郷よりもっと寒々しかった。
 仕事を求めて田舎から出てきたはいいものの、質素倹約を庶民に強いる教会領は万年不景気で碌な仕事が無い。
 女ならまだ、その教会のお偉いさん相手に身体を売るなり、あわよくば妾にしてもらうなり、後ろ盾なしに身を立てる術が無いでもないのだが、男じゃそうはいかん。
 定まった職はなかなか見つからず、実家から持ってきた金も底を突き、酒場で最低級の蒸留酒をちびちびやりながら希望の無い明日に絶望していた俺には、突然現れた黒衣の女の誘いを断る道など無かったのだ。
 フードのようなもので目元を隠したその女曰く、たった一晩で、ちょっとした事業を始められるくらいの金が貰える賭博があるらしい。
 余りにも怪し過ぎる、これ以上無いくらい裏の有りそうな、生活に余裕のある時なら相手にもしなかった話だったが、都会の路地でひっそり朽ちるかという瀬戸際に立っていた俺はつい、その話の詳細を尋ねてしまった。
 やはりというかその賭博は単なるギャンブルではなく、非合法なものらしい。それも、人間同士で勝負するのではなく、魔物が人間と勝負したがっているとのこと。
 魔王が代替わりして以来、魔物たちもその性状をずいぶん変えたらしいが、実際どう変わったのか、俺は今一つ良くわかっていなかった。
 俺の故郷は教会の影響力が弱かったため、ここらあたりの神学校で施されるような、「魔物は人類の天敵である」とか「あらゆる魔物を誅殺してこそ人類の幸福が実現する」なんて血腥い、狂信的な教育を受けたわけではない。が、しかし魔物と実際に交流したこともないため、魔物と人間との関係について判断すべき材料が俺には無い。
 俺の人相からそのあたりを判断して、女は声を掛けてきたのかも知れない。実際、魔物を心から恐れ憎んでいるやつがゴロゴロいるような街では、俺みたいなスタンスが相対的に魔物に対して友好的である、とも言えるだろう。
 しかし、人間相手にやる時でも細心の注意を払わねば酷く騙され毟られるのが賭博というやつである。まして、人外との賭博など、どんなイカサマが仕込まれているやら知れないし、第一勝てたとして、金をちゃんと払ってくれるか甚だ疑問である。
 しかし、その、口元のホクロが印象的な謎の女の話を蹴ってしまえば、俺は明日食べるものにも事欠くのだ。
 人間と遊びたがっている、ということは、少なくとも話は通じるのだろうし、騙すにしても俺みたいな見るからに金の無いオケラを捕まえて、詐欺だの美人局だのやる阿呆もいるまい。
 ダメで元々、どうせ死にかけたこの身、せいぜい派手に散らしてやるぜなんて粋がって、件の賭博とやらの行われる場所を尋ねた俺を、女は見透かした風でいた。

 言われた場所へ行くと、果たしてそこには一軒の洋館があった。
 入り口に近づくと、俺がドアを叩くより早く、館の内から一人の女が出てきた。

「いらっしゃいませ。プレイヤーの方ですね?」
「ああ。案内してくれるのか?」
「はい。どうぞこちらへ」

 案内人に続いて、建物の中に入る。階段を降りて、向かうは地下。
 螺旋状の石階段を降りて辿り着いたのは、長い廊下だった。左右には上質の木出来ているらしい分厚い扉がいくつも並んでおり、さながら旅館のようだった。
 丈夫な壁と扉の向こうからは、何の音も聞こえないが、もしかしたらこれらの部屋の何処かでは、俺と同じような奴らが命を賭けた勝負を行っているのかな、とふと思った。
 通路の中ほど、右側の扉を案内人が開ける。促されて入ったのは、一面に赤い絨毯の敷かれた小部屋だった。
 部屋の中央には黒く四角いテーブルが据えられ、その卓を挟んで大きなソファーが一対置かれているが、それ以外には何も無い。応接間と呼ぶには殺風景なその間には、先客がいた。

「いらっしゃい。よく来てくれたわね。
 私はアルテミシア。歓迎するわ」

 入り口から見て左手のソファーに座った女が、立ち上がって歓待してくれた。灰色のタイツに黒のタイトスカート、上半身には白のブラウスを着た、素晴らしい美女である。
 すっと通った鼻筋、切れ長の眼、紅く瑞々しい唇。どう讃えようと、褒める言葉が尽く見劣りする、何処か破滅的な雰囲気を放つ女だった
 賞賛されるべきなのは顔だけにとどまらない。肌は雪のように白く、部屋の間接照明を受けてそのきめ細かさ、滑らかさを惜しげもなく誇る。
 胸は大きく、肩にかかるセミロングヘアはまるで絹のよう。余分な脂肪は一切無く、それでいて女性らしく薄く肉のついた美味しそうな脚。
 美しい、良い女なのは確か、なのだが……口元のホクロや、つり気味の目などが、どこか勝気、いやもっとアグレッシヴな、獰猛な雰囲気を放っていた。
 美貌にアテられかけた自分を奮い立たせ、挨拶もそこそこに俺はソファに座った。賭けの内容を尋ねると、なんとポーカーだという。

「ほう。それはまた……」
「不服かしら? アンティなし、交換一回のシンプルなルールで行こうと思うのだけれど」
「いや、問題ない。……しかし、あんたは金を賭けるとして、俺はどうすればいいんだ?」

 無用心にもテーブルの端に積まれた金貨の山が、今夜の俺の目的に違いない。一枚あれば充分、一家四人が高級料理店で美味い夕食をたらふく食えるであろう金貨がぞんざいに積み重ねられている光景は、欲望よりもむしろ夢を見ているような非現実的な感覚を俺に与えた。

「ああ、そのこと。簡単よ。私が負けたら、賭けた分の金貨をあなたにあげる。約束の分全部勝ったら、持って帰っていいわ。その代わり、あなたが負けたら、服を一枚脱いで頂戴」

 なんだと。

「……どういうことだ。お前、魔物って、まさか」
「私はサキュバス。あなたみたいな若い男の身体が大好きな、危険な魔物……」

 言うと、女の背中から蒼黒い、非人間的な何かが伸び出てきた。腰の辺りから一対、その少し下、人間でいう尾骨の当たりから一本。
 腰から現れたものは、空中で薄く広がり、面積を増し、皮膜状になった。尾骨から伸びた物体は、そのまま太く長くなり、先端がハート型に膨れる。尻尾と翼、言うまでもなくそれは人外の証。

「魔物娘……」
「ええ。あなたが負け続けて全裸になったら……フフッ。どうされるか、分かるかしら?」

 答えを知っていて、敢えて問いかけるアルテミシアの嗜虐性が垣間見える。命を賭ける覚悟は持っていたが、まさか貞操を狙われる羽目になるなど、思いもよらなかった。
 しかし、金貨を目の前にして逃げ出すくらいなら、ハナからこんな胡散臭いところには来ない。腹をくくって空いたソファーに座ると、対戦相手たる女は上機嫌になった。

「そう。そうよねぇ。お金、欲しいですよねぇ……くくっ、じゃ、早速始めましょうか」

 何処からともなく取り出したトランプ一セットを、適当にシャッフルした後、俺に手渡す。受け取った束を再び俺自身で切り直し、カットを一回して返す。上から5枚自分の分を取って、アルテミシアは俺にも5枚カードを寄越した。 
 卓の端から無造作に金貨を掴み、アルテミシアはテーブルの中央に置いた。全体の十分の一程度でしか無いそれの、強烈な誘惑に耐えながら俺は手札を確認した。
 クラブの9、ダイヤの9、ハートの1、クラブの8、スペードの5。ワンペアである。
 まあ役無しよりはマシなんだが、魔物とやり合うにはかなり心もとない手札だ。といっても、相手と違って俺には賭けるべき価値のある物なんて無いし、一対一の勝負でほいほい降りたって仕方ない。
 アルテミシアはカードを3枚交換した。引き続いて俺も、揃った9以外の3枚を捨て、新たに3枚取る。新たに役は出来ず、ショウダウンに入る。

「7のワンペア……あら、私の負けですね」
「……」

 役は同じだが、数字の大きい俺が勝者となる。ベットしていた金貨をアルテミシアはテーブル中央に押しやり、俺と彼女のちょうど中間辺りにそれが置かれた。
 一回勝ったくらいで舞い上がれるほど俺は子供ではない。さあ次だ、と思いかけた時。
 机の向こうのアルテミシアが身じろぎした。両脚を上げ、タイトスカートの中に手を入れ、艶めかしい光沢を放つタイツをするすると脱いでしまった。

「おい、何して……!」
「あなたが負けたら服を脱ぐのに、私だけ何にもしないなんて、不公平でしょう?」
「お前は金を出すんだから、それでいいだろうが!」
「ふふ。まあいいじゃないですか。目の保養にして下さい♪」

 タイツを履いていた時もその美しさ、完全な均整に目を奪われたその脚は、生脚となってもその魅力をいささかも減じることなく、むしろ雪のように真っ白な腿とふくらはぎ、足先に至るまでが人間ではありえないほどに美しく、すぐにでもその足元に跪いて接吻したくなる。
 内腿に浮かんだ、青黒い静脈の作る筋は生々しく、一切の染みも汚れも傷もない足裏は、見ているだけでも舐めて味を確かめたくなってしまう。
 早鐘を打つ鼓動音と唾液を飲み込む音を悟られまいとしながら、目を背けるのが精一杯だった。

「……次、勝負、頼む」
「もっと見てくれてもいいのに。物足りないわね」

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、どうせ心にも思っていない戯言を吐いてアルテミシアは再び金貨を置き、カードを配った。渡された5枚のカードを確認する。
 ダイヤの8、ダイヤの7,ハートの6、クラブの1とスペードの2。見事な糞手……このままでは役無しだ。
 やはりアルテミシアの次に、起死回生を賭けてカードを交換。1と2を捨て、引いてきたのはハートの5とクラブの4。なんとストレートである。

「……おい、なんか知らんが、俺今日ツイてるぞ」
「それは良かった。なら、途中で止めるなんて、言いませんよね?」
「やっぱり駄目なのか、それ」
「当たり前ですよ、ちゃんとフィニッシュしてくれなきゃ。中途半端じゃあ、欲求不満になってしまいます」

 言いながら、何の役もないブタを堂々と晒して見せるアルテミシア。なにか釈然としないまま、ストレートの手札を見せると、二連敗しているにもかかわらず彼女の口角は一層釣り上がった。

「あら、本当に強いんですのね」
「どうも……」

 何か引っかかる感じはするが、思いもかけず開幕二連勝を決めたことで、すこし人心地が付いてきた。
 まだ相手所有の金貨はだいぶ残っているが、既にエリート僧官の賞与に匹敵するほどの額をこちらも得ている。この調子で行けば俺の人生、大逆転だぜなんてにやついた瞬間。
 アルテミシアがタイトスカートに手を掛け、そのまま脱いでしまった。
 黒い、レースで装飾されたいかにも高級そうな、手の込んだ下着が目に映った時には、何が起こったのか理解できなかった。驚きの余り、ものも言えず居る俺に、平然と彼女は嘯く。

「あら、どうしました? 負けたから、服を脱いだんですれど」
「おま、お前! 何してんだ、さっさと服を着ろ!」
「ダメですよ。ルールなんだから」
「馬鹿な事言うな!」
「そんなに、私の裸はお気に召しません? これでも、カラダには結構自信があるんですけれど」

 結構どころの話ではない。
 セクシーな黒下着を残して服を全て脱ぎ去ってしまった下半身と、未だ手付かずの上半身。酷くアンバランスな装いに、なんだか痴漢プレイのような、酷くいけない事をしているようで、脳髄が沸騰しそうになる。
 その上半身、ブラウスの胸元も妙に大きく開かれ、パンティとお揃いらしい黒いブラジャーがチラチラ垣間見えてしまう。あまりの悩ましさに視線を下げれば、そこにはたった薄布一枚に覆われた女性器があるわけで。
 既に二連敗しているというのにまだまだ余裕綽々なアルテミシアの態度と、彼女が自分から率先して魅せつける余りにも蠱惑的な肉体に、頭に血が上って頭痛すら覚える。
 こいつは一体何を考えているんだ。無駄に金を消費して、何がしたいんだ。
 普通に考えるなら、勝負運の無い女が色仕掛けで俺を惑わそうとしている、のだろうが、にしては余りにも楽しそうな彼女の様子が不可解だ。
 微かに頬を染め、右足を椅子の上にあげて殊更に黒い下着を魅せつけてくるさまなど、とても賭け事の最中とは思えない。その下着の向こう、アルテミシアの女陰が、微かに濡れて光を反射しているように見えて、もうそれ以上何も考えられなくなってしまう。
 興奮と欲情で視界が真っ赤に染まる。我知らず息が荒くなり、下半身のみ下着姿という、どこまでも倒錯的な背徳的な姿のこの美女にむしゃぶりつきたくなってしまう。
 臨戦態勢の俺が飛びかかっていったら、この女は相手をしてくれるだろうか。俺を抱きしめて、受け入れて、気持ちよくしてくれるだろうか。それとも冷たく跳ね除けて、あの白くて綺麗な脚で俺を踏みつけにするのだろうか。
 いや、待て。落ち着け。発情している場合ではない。
 俺は勝負に勝って、この女から大金をせしめなければならないのだ。そうでなければ、俺は都会の影で一人朽ちるより他に無いのだ。自分で戦う以外に、この身を助ける方法は無いのだ。
 闘志を無理にも奮い立たせ、カード配布を要求すると、羞恥を一切感じていないらしいアルテミシアは手早く5枚、カードを寄越した。
 よく育っていく作物を見る農夫のような、牛に飼葉を喰わせる酪農家のような、人が人を見るときには決して有り得ない歓びに満ちた彼女の瞳は、その悍しさにかかわらず、星無き夜の月のような非人間的に美しい輝きを放っていた。
 手に入ったのはハートのK,ダイヤのK、スペードの2、クラブの2、ダイヤの1。このままでもツーペア、大して強い役でもないが贅沢は言えない。
 第一、決して勝負強くはないこの俺(でなかったら、こんな訳の分からん勝負などしなくても生きて来れたはずだ)が、ここ一番の大勝負で三連続役ありというのが、そもそも奇跡に近いレベルの話なのだ。
 特に信仰深いわけでもないこの身に降りかかった異常な幸運を、手放しで喜ぶには俺は大人であり過ぎた。
 カード交換を終え、ショウダウン。アルテミシアのワンペアは5,またしても俺の勝ちとなる。
 ここまで来ると嬉しさよりも不気味さが強く感じられ、酷く落ち着かない。早く勝負が終わってくれることを願いつつ、俺はここに来たことを後悔し始めていた。

「また負けちゃいました。 どんどん脱がされちゃって……恥ずかしい♪」

 恥ずかしがる振りすらせずに、アルテミシアはやはり服を脱ぐ。
 胸元が挑戦的な白いブラウスを脱ぐのか、いよいよ上下、下着だけの姿になってしまうのかと興奮した俺に、肩透かしを食らわすかのように彼女は袖から腕を抜こうとしない。ブラウスの裾を捲って、服の内でガサゴソ何かしていたかと思うと、するりと抜け出る黒い布。
 器用にも、上半身のブラウスを脱がないまま、その下の大きなブラジャーを取り去ってしまったのだ。
 メロンのように大きな乳房が、ブラの戒めを逃れて服の下でたぷんたぷんと自由を謳歌していた。白い生地の下、紅く勃起した乳首が透けて見え、裸でいるのに勝るとも劣らぬほど淫靡。
 アルテミシアの、大きな大きなミルクタンクはただ大きいだけではなく無上の柔らかさをも備えているようで、彼女がちょっと身動きするのに合わせてばいんばいんと揺れ、飛び跳ねる。
 呼吸に伴う胸壁の動きにすら敏感に反応し、いかにも触ってほしそうにぷるぷるする。白いブラウスに遮られ、その全容は見えないが、それだけにより一層興奮を掻き立てられる。
 来た当初の目的を忘れ、俺はアルテミシアに夢中になり始めていた。
 今まで見たこともない、絶世の美女がじっくり焦らしながら目の前で一枚一枚服を脱いで、俺だけのためにストリップショーを開いてくれているのだ。むしろ今まで三回の勝負、よく理性を保ったというべきではないだろうか。
 いや、気を抜いてはいけない。まだまだ目標の金額までは遠いのだ。後何度か分からないが、とにかく勝ち続けなければならないのだ。でなければ、俺はこの女に何をされるか分からない。
 しかし、愛液を分泌して下着の下から男を誘う女性器の淫猥さや、薄い服の下でしこり勃つエロ乳首の魔力は凄まじく、「何をされるか分からない」という恐怖よりも、「何か」されてみたいという欲求の方が強まってきた。
 ぱっぱっと一気に服を脱がれたら、もしかするとこんなに、脳が茹だるほど興奮させられることはなかったかも知れない。
 アルテミシアが脚を組み替え、股から微かに、粘膜同士擦れるような音を立てる度、首筋が燃えたぎり、言いようのない衝動で胸が一杯になる。
 アルテミシアがちょっと身じろぎし、ブラウスの下でたぷたぷおっぱいが一回とすんと揺れる度、背筋が戦慄し海綿体が剛直を増す。餓えた野良犬のように、虚ろな目付きではぁはぁと息を切らし、自分を抑えるのに精一杯な俺のもとに、カードが配られてきた。
 ダイヤの4,ハートの4,クラブの4,クラブのQ,ハートのJ。スリー・オブ・ア・カインドである。
 このままでも多分勝てそうに思えたが、しかし俺の理性は、獣欲を抑えながらも、何が起こっているのか分からずただただ性的欲求だけを高められるこの状況に強い危機感を抱いていた。
 本当に今俺は幸運に恵まれているのか、それともアルテミシアが何か企んでいるのか、それを確かめたかったのだ。
 陰茎はもうこれ以上無いほど硬くなり、凶暴な衝動で視界が霞みそうになるのを、どうにか抑え、この奇怪な状況を打開できる策を求める。
 彼女が俺に勝ちを譲ろうとしているのか、もしそうなら、それは何故なのか。宙ぶらりんのままでは、俺は俺を抑えきれず、何もできなくなってしまうような気がする。
 このまま漫然と勝負していても俺のペースには持ち込めない。何か刺激となる、奇手の必要を感じた俺は、手札のうちクラブの4,クラブのQ,ハートのJを捨ててみることにした。
 折角出来たスリー・オブ・ア・カインドを無駄にし、ワンペアという最低ランクの役に落とすこの行動は愚行というより他に無いが、この勝負が仕組まれたものであるなら、セオリー破りの行動で何かが見えてくるかもしれないという魂胆。どうせ俺はまだ無敗だし、服の一枚や二枚取られても問題無いということで、この「賭けの中の賭け」に挑んでみたのだ。
 もし、この状況が単なる幸運によるものだとしたら、誰の作為も関わっていないとしたら、カードを引いても新しく役は出来ないだろう。確率的に言って、ここでまた強いカードを引いてくることなど、あり得ない。
 相変わらず淫猥な、粘つくようなアルテミシアの視線を感じながら、新たに3枚カードを得る。引いてきたのは、スペードの10,ハートの10,クラブの10。
 なんとフルハウスである。勝負を賭けねばならない訳でもないシチュエーションでむざむざスリー・オブ・ア・カインドを捨て、結果より良い役ができることなど、偶然ではまず有り得ないことだろう。
 もう間違いない。この勝負はイカサマだ。それも、俺が勝つように仕組まれた。
 ワンペアの手札を晒し、負けたアルテミシアがニッコリ笑う。俺も何も言わず、彼女がゆっくりとボタンを外してブラウスを脱ぎ去るのを見ている。
 遂に現れたおっぱいは、改めて見るとすごい大きさだった。たわわに実った果実、という表現がここまでしっくりくる爆乳は、他にはそうあるまい。
 脚や腕など、全体的に細くスレンダーなアルテミシアだが、乳房だけは例外らしい。
 子供の頭程もありそうな豊かな乳脂肪は、ミルクを分泌していないのが不思議なくらい成熟しきり、どっしりとした存在感を放っている。ちょっとの動きにも官能的に揺れるほど柔らかく、それでいてだらしなく垂れることなどなくしっかり引き締まる。
 むっちりしてたまらなくエロい頂点には、紅い乳首が発情して硬く勃起している。持ち主の体温上昇を反映してか、全体的に綺麗な薄紅色にとなり、うっすらと汗ばんでいるさまは、見るからに準備万端といった有様で、今すぐにでも吸いつき、揉みしだきたくなってしまう。
 どうせこの勝負は勝負として成り立っていないのだし、いいじゃないか、そのおっぱいを、俺にくれ。渇望に突き動かされ席を立ちかけた瞬間、新たにカード5枚が飛んできた。
 どうせ今度も俺の勝ちだ。カードのスートも、数字にも興味がない。適当に見るだけ見て、卓の上に叩きつける。何の役もつかないブタを晒したアルテミシアは、すっくと立ち、股間をどうにか隠していた黒い布切れを乱暴に脱ぎ捨て、完全に裸体となった。
 服を着ていた時も恐ろしいほどの美貌、匂い立つような色気を誇ったアルテミシアだが、一切の服を脱ぎ捨てた今、その美しさは秩序と調和の極みに至り、俺すら知らぬ間に我慢汁をだらだら流させる程の官能美を体現していた。
 腰から生えた尻尾や翼も彼女の肉体に良く似合い、むしろそれらを持たない人間女の方こそが奇形なのではないかとさえ思わされてしまう。
 回りくどい手順を踏み、じっくりじっくり魅せつけられたせいでほとんど理性を奪われた俺だったが、これほどの肉体を持っているのならば、最初からヌードを見せただけでも十分俺を魅了することは出来たのではないか、と思える。
 わざわざ勝負という手段をとったのは何故だろうか、と考えアルテミシアを見た瞬間、その悪戯っぽい表情から全てを察することが出来た。
 彼女は、遊びたかったのだ。俺という人間を弄んで、興奮させて、狂わせたかったのだ。
 彼女の玩具となることに、最早一片の嫌悪も無かった。美しき女悪魔が望むままに、生き、死にたいとすら思わされる、魔物娘の魅了。知らぬ間にテーブル上へ身を乗り出し、食い入るように裸体を見つめる俺の眼下に、またカードが配られてきた。
 どうでもいい。フォー・オブ・ア・カインドだろうがストレートフラッシュだろうが関係ない。手に取るや否やカードを表返し、無言のままに勝ちを宣言する。負け続け、これ以上脱ぎ捨てる衣服を何も持たないアルテミシアは、ゲーム開始以来初めてソファーを立ち、卓を回ってこちらに近づいてきた。

「また私の負けですね。……もう、脱ぐ服がありません。だから、代わりに私が、この肉体で奉仕しましょう」

 奉仕。なんと甘美な響きか。その言葉の裏に秘められた、有無を言わさないニュアンスが心を蕩かし、俺は自ら望んで足元に跪いた爆乳淫魔のおもちゃとなる。
 水のようなふわふわおっぱいを両手に抱え、アルテミシアは俺を見上げた。自分の胸を抱いての上目遣いに、脊髄が焼けるような興奮を覚える。掴んだ手の指と指の間から漏れ出る乳肉をぷりぷりさせて、彼女は言う。

「さっきからずっと気にしてらっしゃる……このおっぱいで、気持ちよくして差し上げますわ。堪能してくださいね」

 俺のズボンと下着を脱がすと、勃ちっぱなしの陰茎が飛び出た。
 勢い良く反り返り、頬にぶつかりそうにもなったそれをアルテミシアは愛おしげに眺めると、両腕に抱えた一対の巨乳を寄せてきた。
 大きすぎる胸で、いとも容易く男性器を包みこむ。根元から先端までを完全に乳肉に埋もれさせ、更に左右から圧迫する。
 汗ばんだ乳肌は、竿は勿論外に突出したカリ首や先端、亀頭粘膜までもぴったりと吸いつき、俺がいまだかつて味わったことのない凄まじい快楽をもたらす。
 スライムのように柔らかく、それでいて柔軟性、しなやかさをも備えた乳房は、敏感な肉棒を優しく包むこむと同時に反発し、元の球体に戻ろうとする。それをアルテミシアが両手でぐっと抑え、左右の乳を、中心に挟んだ男根に寄せ、押し付ける。
 長い間焦らされ長時間勃起を強いられ、我慢汁だけを垂らしていた俺のものは、こんな柔らかすぎる胸に挟まれてしまっては一分も持たず射精してしまうのではないかと思われた。しかし、彼女の汗と俺のカウパーで粘つく乳の谷間に抱かれていても、快感のみが際限なく上昇し、なかなか解放の時は訪れない。見下ろすと、パイズリ奉仕の手を止めないまま、ちょっと意地悪げにアルテミシアが言った。

「駄目ですよ、そんなすぐにイっちゃあ。勿体無いでしょう? もっとたっぷり、じっくりよがらせてあげますから……」

 いつの間にか俺は、射精の自由すら彼女に奪われてしまったらしい。肉体の主導権を奪い尽くされ、俺の心に残るのはこの美しい女への恋慕の情のみ。
 乳ごとちんこを揉みしだくような手の動きから、アルテミシアはもっと直接的な、胸で竿を上下に擦る運動に切り替えてきた。右の乳房と左の乳房、交互に動かすことでそれまでの何倍も激しい快楽を神経に注ぎ込み、乳愛撫の余りの良さに失神しそうな俺を更に追い詰めてくる。
 止めどなく溢れるカウパー氏腺液が、乳と陰茎の間で糸を引き、水っぽい淫らな音を立てる。ただひたすら感じさせられ、射精を許されない俺の屈服の証を、淫魔は至極満足気に見た。

「っ……と。もうちょっと……」

 更に滑りを増すためか、胸で肉棒を擦り立てながら、アルテミシアは口の中に唾液を少し溜め、胸の谷間に垂らした。泡立つ、温かい、美女の体液を生殖器に浴びせられ、甘美な屈辱が魂を揺らす。
 潤滑油としての唾液を亀頭や鈴口へ塗り込むべく、たぷたぷ乳脂肪が陰茎を捉えて激しくヌメる。唾を塗りたくられて硬度を増す、調教されきった俺は、唾液によって更にいやらしく、大きくなったパイズリの水音に聴覚までも犯されていった。
 ぐっちゃぐちゃと遠慮のない音を立てて、淫乳サキュバスはパイズリで俺を狂わせる。本来セックスとは関係無い筈のおっぱいでこんなにも酔わされ、よがらされることが、恐ろしくもありまた楽しくもある。自分の主導権を吸い取られることが、こんなに心地良いなんて知らなかった。
 頭の中がアルテミシアのおっぱい一色に染まり、ゲームのことも、賭けの金のことも忘れ去ってしまった。乳姦の甘みに追い込まれた俺は、半ば無意識的に懇願する。

「お願い、アルテミシア……いかせて、おっぱいに、射精させて……」
「……もう、完全に堕ちちゃった感じですねぇ。可愛いですよ……じゃ、そろそろ、イかせてあげましょうか。むにむにおっぱいに、好きなだけ中出ししてくださいね♪」

 言うと、乳を抱えていたアルテミシアの手の力が一際強まった。肉槍全体を左右の巨乳で押しつぶしながら、その柔らかさでもって、押し付けながら摩擦を加える。乳の海で翻弄されるような、生まれて初めての感覚に抗う術はもとより無い。
 急激に腰の奥から絶頂感がせりあがってくるのを感じて、我知らず呟いていた。

「で、でる、アルテミシア……」
「はい、どうぞ♪」

 きゅっと一回強く締められ、それで終わりだった。
 散々焦らされたせいか、生まれてこのかた見たことも無い程大量の白濁が、乳の谷間にぶちまけられ、溢れかえる。ぎゅうっと乳に挟まれ、刺激されながらの射精はイってもイってもまだ気持ちよく、何度も子種汁を放ってしまう。
 肉棒を挟んだ左右の乳房が胸壁との間につくる谷間に、俺の出したザーメンが溜まって、アルテミシアの腰の方まで垂れ落ちて行く。女性の象徴を欲望でどろどろに汚され、魔物娘は満面の笑みを浮かべた。

「いっぱい出ましたね。偉いですよ……あむっ、じゅっるる……れろろ。……んふふ。美味し……♪」

 男性器を離さないまま、彼女は胸に張り付いた精液を舌で舐め取り、わざとらしく音を立てて咀嚼し嚥下する。自分で自分のおっぱいを愛撫する、まるでオナニーのような仕草に、射精したはずの陰茎はまだまだ萎えられない。
 捕らえきれない分をソファーに零しながらも、アルテミシアは見る見るうちにあの大量のスペルマを飲み干してしまった。最後、胸の谷間に覗いた亀頭の先を舌でちょっと舐め、尿道に残った分も余さず飲み下すと、ようやく俺を乳から開放してくれた。
 俺の精液と彼女の唾液でべたべたになったエロ過ぎる乳を右前腕で支え、卓の向こう側、最初アルテミシアが座っていた辺りを指さして、サキュバスは言った。

「あれ、見えますか? 最初に用意したお金、もうほとんど無くなってしまいました。後一回、それでお終いです」

 勝負や金のことなど忘れかけていた俺は、そう言われても今一つ現実感が無い。いつの間にか手にとっていた山札を高く掲げ、アルテミシアは上から一枚一枚、俺の膝の上へカードを落とした。
 降ってきたのは、ハートの10、ハートのJ、ハートのQ、ハートのK、そしてハートのA。
 ロイヤル・ストレート・フラッシュ。
 笑うしかなかった。

「勝負してみるまでもありませんね。あなたの勝ちです。
 ……これで今夜の勝負はあなたの勝ち、ということになるわけですが……最後に、もう一度私のご奉仕、受けていただけますよね?」

 俺の返答を待たず、アルテミシアは腰に跨ってきた。魂の底まで魅了されきった俺が彼女を拒絶することなど、有り得ないということを充分に知っているのだろう。
 ついさっき大量に射精した筈の俺のものは、彼女の美しさ、淫らさに絶頂した後も弛緩出来ずにいた。
 ザーメンやカウパーや唾でどろどろに汚れきったそれを眼下に捉え、淫魔は腰をゆっくりと降ろしてくる。亀頭の先っぽと膣口が触れ合うと、濡れきった陰唇が長らく待ち望んだ獲物に歓喜の汁を漏らした。
 女性器の入り口で先っぽを包まれているだけなのに、彼女の膣は素晴らしく気持ちよかった。教会が言っていた、魔物が人間を滅ぼすというのも、案外当たっているかも知れない。こんなに魔物とのエッチが気持ちいいと知ってしまったら、人間と子作りする気になんかなれないだろう。
 先端を重点的に責められるだけでもすぐに射精してしまいそうだったが、淫魔がそんな半端なことをする筈も無い。容赦無しに、腰を降ろしずぶずぶと、膣で男性器を飲み込んでいく。
 異常なキツさと締りを兼ね備えたアルテミシアの肉筒は、咥えこんだ俺の肉棒に絡みつき食いつく。
 細かい襞が与えるちょっとザラザラした感触は、文字通りチンコを喰われているのではないかと思えるほど激しく、また気持ちいい。ぴったり張り付く、どころの話ではなく、不規則かつ豊富な突起で面積を増した膣壁が竿を四方八方から迫る。
 尿道が塞がるんじゃないかと怖くなるほどの締まりで、根元まで挿れられたときには、もういつ射精してもおかしくないほどに感じさせられていた。

「じゃあ、動きますね……」
「!? ちょ、ちょっと、今は……」

 ちょっと気を抜くと我慢汁と共に精液が漏れ出そうなのを、どうにか意志の力で抑えていたところに、アルテミシアの腰使いが加わる。
 挿入前から濡れきっていた二人の性器は、激しいピストンでも引っ掛かることなく滑らかに擦れる。膣壁が俺のモノの形に変形するんじゃないかと思える程狭く、無理やり割り入れる、といった感もあるのに、どういう技法かアルテミシアは思いのままに腰を振り、貪欲な淫壺は男そのものを貪る。
 外側に突出したカリ首は膣襞の摩擦を最も強く受け、敏感なエラを上から下に、また下から上に撫で締められる度失神しそうになる。膝をついたアルテミシアは俺の肩に手を掛けて、より一層自由にピストン運動できる体勢に移った。
 ソファーの反発を利用して、上下に激しく尻を振り、更に時折、前後左右の動きをも加える対面座位。腰の奥から射精感が疑いようもなく迫ってきているが、不思議と絶頂出来ない。射精寸前の快楽を延々と引き伸ばされ、俺の正気は削り取られていった。

「な、なんで……」
「まだまだ。もっと気持ちよくしてあげます。もっと、もっと、私に狂わせてあげます……」

 下半身の動きをそのままに、アルテミシアは器用にも顔を下げ、血のように真っ赤な唇を俺の顔に近づけてきた。毒花のように禍々しく、黒い髪とのコントラストが強烈なそれを、俺の唇に合わせる。
 突然のキスに戸惑う俺を放って、飢えた舌が唇を割って口腔へ侵入してきた。小さい口からは想像もできないほど長い舌が俺の前歯から歯茎、舌に上顎を蹂躙する。
 二人の舌が絡まり、ぴちゃぴちゃいう淫靡な水音が頭蓋骨を通って鼓膜へ直接伝わり、脳を内側から陵辱されるような感覚に陶酔させられた。
 喉の奥から溢れる唾を、じゅる、じゅるるっとわざとらしく音を立て、アルテミシアは啜る。目を見開き俺の瞳を見つめる彼女は、俺が狂わされる一部始終を観察するのだろう。
 だらしなく緩んでいるであろう顔をじっと見られ、今更ながらひどい羞恥を覚えるが、それすら快感に変わってしまう。むしろ、もっと見て欲しい、もっと乱して欲しいという思いで心がいっぱいになる。
 キスとセックスに酔わされ、俺はもう全てが限界だった。見据える瞳に視線で懇願すると、察してくれたアルテミシアは今まで以上に激しく腰を振り立ててくれた。
 胸で犯されたときの感触は、じっくり優しく男を感じさせて、その後に気持ちよく射精させる感じだったが、この座位搾精はまさしく絞りとるといった表現が似合う、俺の意志を完全に無視して蹂躙し、精液を奪う交合だった。
 多数の突起を備えた複雑な形状の淫筒で長らく焦らされ続けた陰茎を擦り上げられ、抵抗する意志すら潰える。
 口を犯されながら、俺はアルテミシアに屈した。抱きしめてくれた彼女の膣内に、大量の精液を放ち、やっと訪れた解放と未だ止まぬ膣の運動に恍惚となる。射精する端からひくつく肉の襞に愛撫され、また気持ちよくなってしまう。彼女の望む限り、俺はただ犯され、精を捧げ続けることしか出来ない、それは愛の拘束。
 狭い膣道の奥、子宮目がけて撒かれたザーメンの美味を、淫魔は胎で味わっているようだった。俺の首に両腕を絡め、射精中の性感に震える俺の耳に、唾液でぬらぬら光る唇を寄せて、優しく囁いた。

「どうです、私のおまんこ、気に入って頂けました?
 ……そうですか、声も出ないくらい、良かったですか。悦んでもらえて嬉しいです♪
 ねえ、一回なんて言わないで、もっといっぱい、エッチしてもいいんですよ?
 ……うふふ。そうですよねぇ。ザーメン、まだまだ出し足りないですよねぇ。
 いいですよ。もっといっぱい、楽しみましょう。お金とか、人間社会のこととか、余計なことは全部忘れて……私だけに、夢中になって下さいね♪」

 熱っぽい声と熱い吐息を耳に感じながら、俺はまた彼女に犯され、堕とされていく。
 きっと、再び朝日を拝むことはないだろう。代わりに、これからはアルテミシアが俺にとっての太陽になってくれる。
 夜の闇に輝く、淫らな黒い太陽に。
11/06/21 18:54更新 / ナシ・アジフ

■作者メッセージ
思いの外長くなってしまいました。
読みやすい長さとは一体どれくらいなのか、まだいまいち掴みきれていません。体で覚えるしか無いのでしょうか。

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