連載小説
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平和
「ねぇ、なんかにぃ調子悪い?」

「えっ、いや、別に?」

「なんか浮かない顔してるし…ついでになんかすごーく長い間会えなかった気もするし…」

「後者はメタネタだ、慎め。」

「は、はい。」

どうやら暗い顔になっていたらしい。
ふむ、やっぱりバレてしまっているだろうか。

「なんかあったら言ってよね、なんのための私達だと思ってるの」

「少なくともそんなこき使える道具とは思ってねぇよ…家族だ。」

「にぃ……」

なんかまゆの目がハートマークになった気がするけど気にしない。
効果音としてはトゥンクって聞こえた気もする。

「よし、じゃあご飯にしようか。」

「ん、今日は作っておいたよ。」

「えっ。」

「ねぼすけ。」

いや、今日は俺の勘違いでなければ日曜日、the休日なはずだ。
9時半まで寝ていたらねぼすけと言われてしまう世の中なのか、なんと世知辛い。

なんてこの世の不条理を謳ったとてご飯を作ってくれたのはまぁ、それなりに嬉しいことである。

俺は寝間着から着替え、リビングへと向かう。

ちなみに脱いだ服は個別で洗う。
妹達がやけに洗濯を手伝おうとする理由なんざ魔物娘の特性上分かりきったことである。

狙われる下着、守り抜くぜ俺のパンティ。

「おはようございまーす!うぇるかむとぅしすたーずれすとらーん!」

「おぉ…」

そこにはホテルの朝食宜しくな豪華セットが並べられていた。
予想以上だった、俺の口から感嘆の声が溢れる。

「こ、これ、お前らが作ったのか?」

「まぁ、私はあんま関わってないんだけどね、大半はシズクとアヤだよ。」

「そっか、すげぇなお前ら」

「ふん…このくらいできて当たり前よ…」

「頑張った…撫でを所望する…。」

各自別々の反応をする、こんなにはっきりと性格が別れてんのも中々珍しいとは思うが一二ヶ月一緒に居るとそんなことも気にならなくなる。

慣れって怖いな、ボブ。

「じゃ、冷めないうちに食べようか。」

「…なでなで。」

「あぁ…わかったよ、食べたらな。」

「うん。」

シズクをあやしつつ席に座る。

「いただきます。」

かくして、今日も騒がしい一日が始まった。

ーーーーー

「ごちそうさまでした…と。」

どうやらこんなに凹んでいても俺の体は薄情らしい。
食べ物が喉を通らないなんて事はなく、美味しいものは美味しいと感じられた。

「…に、にぃ?なんか体に変化ない?」

「は?変化?」

なんだ、お前らは配管工が大きくなるタイプのキノコでも食材に使ったのか。

「…な、なんで!?ちょ、ちょっとアヤ!?」

「なっ、なによ、私に振らないでよ!」

「媚薬は!?」

「ぶっ」

吹き出した。
なんつーもの入れようとしてくれとんじゃお前。

「いれるわけないじゃない…お兄ちゃんに迷惑かけらんないでしょ…」

「うっ…」

アヤがこんな献身的なことに若干涙腺を緩ませそうになったが嗚咽のようなうめき声を上げたマユをかるーく睨む。

「…マユさん?」

「あっ、いや、その、これは手違いというか、ね!?シズク!?」

「私は知らない…」

シズクはまったくの無関心と言った様子でパンを口に運んでいた。
バターロール、美味しいよね。

「…マユ、当分お菓子禁止な。」

「あっ、まって、それだけは!それだけは勘弁を!」

「さて、じゃあ俺はレポートを進めるから部屋に戻るぜ」

「にぃぃ!?ごめんなさぁぁぁい!!」

世の中とは、無慈悲である。

ーーーーー

「…ふぅ。」

「…お兄さん。」

「おっ、お、おう、あのなんの迷いもなく俺の部屋に来るのやめない?」

レポートが一段落し、伸びをしようとしたら横から声をかけられた。
一応一段落するまで待ってくれたのだろうか、それならいいんだけど。

「…お兄さん、さっきのなでなでの話。」

「あー、するって言ったもんな。」

「お願いします…」

すっと目を閉じて頭をこちらに差し出してくる、撫でろの催促である。
妹達は撫でられるの好きなんだよなぁ、なんでか知らないけれど。

「はいよ…」

「んん…」

撫でる、というか、撫でられに来る、というレベルで俺の腕に擦り寄る。
気を抜いてるとこのまま腕に抱きつかれるので集中である。

集中してたのに。

「入るよ、お兄ちゃ……ん………」

「あ、アヤっ、」

「隙あり。」

アヤと目が合っているうちにシズクに抱きつかれた。
腕に抱きつかれるってのは訂正、体に思いっきり抱きつかれた。

「…そ、その、お取り込み中だったみたいね。」

「いや、これは気にしなくていい、どうした?」

「なんでそんな清らかな顔してるのよ…」

シズクは俺の服に顔を埋めている、ある意味この状況で安定しているので別に今ははがす必要もない。

というか今はがしたら多分ややこしいことになる。

「……シズクが居ると言えない。」

「えっ、なんだ、相談事か?」

「…まぁ、その類なんだけど、後でにするね。」

「告白はさせない…痛い痛い痛いっ」

変なことを抜かすシズクをぐりぐりしつつアヤを引き止める

「待て待て、じゃあこいつ剥がすから、今言えよ。」

「えっ、待ってよお兄さん、今は私のターンで…」

「また後でな。」

「…酷いよ。」

シズクを若干強引に服からひっぺがし、背中を押して部屋から出す。
これで姉妹仲悪くなったりしないだろうか、大丈夫かな。

「ん、で、なんだ?」

「…た、たまには、私もなでなさいよ。」

「お前もかーい」

まぁでもアヤから言い出すのは珍しいので別に嫌ではないのたが。

「いや、別に、ほかの二人をなでてるから私も撫でた方がいいんじゃない?っていう提案であって、別に私自身が撫でて欲しいわけじゃ…んにゅっ」

言い訳をたれるアヤの台詞をさえぎって頭に手を置く、そして左右に動かす。

「んん…くすぐったい…」

「段々気持ちよくなってくるさ。」

「そんなものかな…。」

撫でているうちに案の定段々と大人しくなってきた。
九尾特有のもふもふ尻尾はリラックスした様子でふわりふわりと揺れている。

「…お兄ちゃん、お礼。」

「んぁ、お礼?」

「そう、お礼、何がいい?」

「…いや、別に、礼なんていいよ。」

撫でているだけでお礼なんてもらってたらキリがないしな。

「なんかお礼したいの、これじゃ私が一方的に甘やかして欲しかったみたいでしょ。」

「一方的に甘やかしたいんだけどな、俺。」

「私のプライドが許さないのよ。」

「…じゃあ今度マッサージでもしてくれ、肩もみとかな。」

「そんなんでいいの?」

「あぁ、充分だよ。」

「わかった。」

若干不服そうだったがごまかせたようだ。

久しぶりにアヤと沢山話す機会である、俺が最近どう?などと定番の台詞を言おうとした途端インターホンが鳴った。

…無慈悲である。

「私出る?」

「いや、俺が行くよ。」

残念だな、とか考えつつ扉を開ける。

途端俺の視界はブラックアウトし、意識は途絶えた。

最後に見えたのは、細身の男と、その手に持たれた細身の刀。

そして、これは、血…?

ーーーーー

「いぎゃぁぁぁぁっ!?!?」

痛みで叫びを上げる、あれ、痛みで?

「うぐ…いってぇぇぇぇ……く、ねぇ?いてくねぇ?」

切られたであろう腹は、首は、腕は、なんの傷もついていなかった。

「…なんだ、どうなってる?」

「あ、やっと起きましたか、全く、相変わらずねぼすけですね。」

「ねぼすけ言うな…それは本日2回目…だ…?」

「…えへ、お久しぶりです、レンにぃ。」

そこには、数年前に殺されたはずの妹が。

半透明になってふわふわ浮いていた。
15/09/14 22:16更新 / みゅぅん
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■作者メッセージ
超展開

そして題名とはなんだったのか。

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