連載小説
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旅18 さあ船に乗ってジパングに行こう!
シャアアアアア……


「いやぁ…夜ご飯の後改めていろいろ見てみたけどこの『テント』凄いね!」
「リンゴお姉ちゃんも……みんな同じこと言うけど…アメリよくわかんない……」
「それはやっぱりアメリちゃんが魔王様の娘だからだよきっと」

現在21時。
お昼寝したからかアメリちゃんはまだ眠く無さそうだ。今は私とアメリちゃんとリンゴの三人でシャワーを浴びながらお話している…やっぱり最初はこの『テント』の話になったが。
いや、正確に言うとリンゴは浴槽に浸かっている。
ツバキとユウロは使っているみたいだが、私やアメリちゃんは普段使わない……けど、リンゴを見ているととても気持ちよさそうだし身体洗った後に入ってみようかな?浴槽も5人位なら悠々と入りそうだし。
ただ…私のこのもこもことした毛がお湯を吸って大変な事になったりしなければいいけど…

「というか本当にこの『テント』便利だよね〜。まさか浴槽まであるなんて思ってなかったよ!」
「そういえばネレイスって海に棲む魔物だけど…お湯に浸かってリンゴが茹で上がったりしないよね?」
「さすがにそれは無いよ!!魚じゃないんだからさ〜」

そういえば浴槽はベリリさんの希望で後から取り付けたそうだ…っていうか取り付けたり出来るんだね。
そもそも何で『テント』はこんなに大きく広いのだろうか…アメリちゃんとベリリさんの二人旅にはこの大きさは必要ないんじゃないかな?
もしかして…こうなる事を想定されてたとか?いやまさかな……



シャアアアアア……



「でも本当にごめんねサマリ…わたしが変な勘違いなんかして、挙句殺そうとまでしちゃって…」
「もうその事は気にしてないって…流石にあの時は怖かったけどね…」
「アメリあのときのリンゴお姉ちゃんのこと思い出すだけで…あわわ……」プルプル…
「うぅ…それは言わないで……」

リンゴが昼の事を謝ってきたが…もう何度も謝られているから既に気にしていない。
でも折角なので軽くからかってみたら…アメリちゃんも乗ってきちゃってリンゴがへこんでしまった。
そのアメリちゃんは本気で怖かったらしく、あの時みたいにプルプルと震えている。

「ま、まあ気にしないで!!それよりリンゴにはいくつか聞きたい事があるんだけれど…」
「ん?何サマリ?」

このままへこませるのも良くないし、聞きたい事もあるので気にしないでと言って励ます。
まだ暗い顔をしているが、一応元気になったようだ。

「まずはそうだね…リンゴとツバキの故郷ってどんなとこ?」

なので私は、気になっている事を優先度の低い順で聞いていく事にした。
まずは二人の故郷の事だ。今のところ龍という魔物を信仰している海沿いの町だという事しかわかってないし、リンゴと会えたけれど行くことには変わりないので行く前にもう少し知っておきたいのだ。

「そうね…まあ海沿いにあるから漁業が盛んかな?それでまあ妖怪は水神様をはじめ『アカオニ』とか『白蛇』とか『ネコマタ』とか…まあいっぱい住んでるよ!今言ったのは皆友達だけどね!」
「へえ〜、聞いた事無い魔物…じゃなくて妖怪がいっぱいだよ…」

リンゴの口から何種かの名前がでたけど…全く想像が出てこないや。
まあ私が魔物になった今でも全然魔物に詳しくないってのが一因かもしれないけれど…見てみたいものだ。

「あ、そうだ!『祇臣』に着いたらお刺身食べさせてあげる!!二人とも食べた事無いでしょ!?」
「……へ?」

しおみ?おさしみ?
聞いた事が無い単語が出て来たけど……何の事だ?

「リンゴお姉ちゃん、しおみってどこ?それとおさしみって何?たべもの?」
「え?ああゴメン…説明しないとね……祇臣ってのはわたし達の故郷の名前だよ。椿ったら一回も言った事なかったのね」

へぇ…二人の故郷は祇臣っていうのか…ツバキは言った事無いかな。初耳だし。
というかアメリちゃんいつの間に復活した?さっきまで震えっぱなしだったのに…

「それでお刺身って言うのはね…んーと…簡単に言うと生のお魚や貝を薄く切って醤油や山葵をつけて食べるものだよ!」
「ほえ?魚を生で食べるの!?それに醤油とか山葵って何?」
「ん〜…まあ着いてからのお楽しみってことで!」

お刺身…いったいどんな食べ物なんだ?
生で魚を食べるだなんて…美味しいのだろうか?というかそもそも大丈夫なのだろうか?
そして醤油と山葵…調味料か?
まあ、それは実際に見るまでの楽しみにしておこう。




シャアアアアア……



「じゃあ次の質問するね…」

故郷の話を結構聞けた事だし、次は真面目で今後に関わる質問をしようと思う。



「…これからリンゴとツバキはどうするの?」


リンゴとツバキは、とりあえず故郷…祇臣までは一緒に行く事になっている。


そう、祇臣までは…だ。


その先はどうするのか…どうやら私達が『テント』に入る直前に話あっていたみたいだけど…夜ご飯の時は聞きそびれたので今聞いてみる事にした。

「そうね…まずはサマリ達と一緒に祇臣に行くけど…その後は……」
「その後は?」

少し考えている顔をした後、私の目を見ながら…








「二人一緒に、故郷に残る事にするよ…」



「そう…だよね……」







リンゴは、ツバキと一緒に私達と別れる事を告げた……
そりゃあそうだ。ツバキは死んだと思っていたリンゴの事を忘れる為に旅をしていたのだ。つまりリンゴが生きているなら旅をする必要が無いのだから。
旅をせず二人で仲良く二度と離れる事無く幸せに暮らす…寂しいけど、そのほうが二人にとってもいいし、私も嬉しい。


「あ、でも、いつかは椿と海の中で暮らすつもりだし、また皆に会いたい時はどうにかして二人で会いに行くよ!!」
「え?海の中で暮らす?ツバキ死なない?」
「大丈夫だよサマリお姉ちゃん。ツバキお兄ちゃんがリンゴお姉ちゃんの魔力でインキュバスになっちゃえば海の中でも生活できるようになるよ!『シー・ビショップ』さんにたのんでみてもいいしね!」
「へ、へぇ〜……」

海の中でも生活する方法があるんだな…まあ無かったらマーメイドやネレイスみたいに海で暮らす魔物は大変か。
あ、シー・ビショップってのも魔物なのかな?見てみたいな…

「だから数日間だけになるけど…わたしも一緒に旅するから!改めてよろしくね♪」
「うん!よろしく!」
「よろしくね♪」

ま、今すぐ別れるわけでもなければ一生の別れという事でもないし、今しんみりする必要はないか…



シャアアアアア……



「で、これが一番聞きたかった事なんだけど…」
「え?なーに?これからの事よりも聞きたかった事って?」

最後に、私がリンゴに一番聞きたかった事を聞こうと思う。

それは…半月ほど前の私なら絶対聞かなかった事……



「ツバキとのエッチってどうだったの?気持ちよかったの?」



そう、性行為についてである。
いやだって魔物としてかなり気になるじゃん?男性器の感じとかおまんこでそれを咥えた感じとかさ。
自分はいつ誰とするかわからないけど…聞いておいて損は無いと思う。

「そうねぇ…気持ちよかったかどうかと言われたら、これ以上素晴らしいものは無いってところかな?それに椿の精は美味しかった。こう言ったら悪いけどサマリのご飯よりも美味しかった!」
「ふんふん、それで?実際に精を受けた感じは?それで今はどんな気持ち?」
「椿の陰茎がわたしの膣内で脈動する感覚は何が起きても忘れられないよ…それにね、実はまだ子宮内に椿の精が残っててね……えへへへ♪」

リンゴが自分のお腹を擦りながら恍惚とした笑顔になってる……ということは……

「そんなに良かったのか…ちょっとうらやましいな…」
「椿はあげないからね…するならユウロのほうにしてね…」

そう言いながらちょっとだけ声を低くして怖い顔になったリンゴ…

「そういう意味じゃないから…」
「ならいいや……ってアメリちゃん、お願いだから怖がらないで…へこむから…」
「はわわわ……」プルプル…

言い方が悪かったのは認めるが、ツバキの事になるとすぐ黒いオーラを出すのをやめたほうがいいんじゃないかな?アメリちゃんだってまた怖がっているしね…
というかするならユウロのほうってさ……リンゴは知らないのか……

「それと、ユウロもツバキ以上に拒んでるからね…」
「え?そうなの?なんで?」
「へ?……さあ?」

そういえば詳しくは知らないな…何か過去にあったらしいけど教えてくれないし…
それに…ファストザルト領の寝室に居た時に聞いた寝言…あの後ユウロに聞いたけど「え………忘れちまった…」の一言で済まされちゃったけど…あれは何だったのだろうか?
そういえば…アメリちゃんとは普通に接しているから忘れていたけど、前に子供と接するのが怖い、子供を傷付けてしまうとか言ってたな…それもよくわからないな…
わからない事が多いけど…まあいいか。本人が教えてくれない事をずっと考えていても仕方ないし。

「ま、ユウロにもいろいろあるんだよ。それよりも…」
「へ?ひゃっ!ちょ、ちょっとサマリ、いきなり何するのよ!!」
「わぁ〜…サマリお姉ちゃんだいたん…」

ユウロの事を考えるのをやめにして、私はリンゴの双丘…おっぱいを正面から触った…というか握った。

「なんで…なんでそんなに大きいの?ねえなんで?教えてほしいなあ……」
「ひゃんっ…そ、そんなに変わらないでしょ……ってあれ?サマリさっきより小さくmぁん!」
「ホント教えてよ…もしかしてこうやると大きくなるのかなあ?」

そのまま私の毛皮までいれた胸の大きさよりさらに少し大きいおっぱいを揉みしだく。
感度がいいのかちょっと喘いでいるが気にしない。

「んっ…やめてよサマリ…ぁあっ…」
「どうせツバキに揉まれて善がってたんでしょ?さらにそれで大きくするんでしょ?少し分けてくれないかなぁ?」
「えぇ…それは無理dひゃあん!も、もうやめてぇ…」
「今度はサマリお姉ちゃんがこわいよ…」プルプル…

その後アメリちゃんがもう出ようと言うまで私は何も考えずにただリンゴの胸を揉み続けた。
なんで皆して私よりも大きいのか…うらやましい。




ちなみに、私におっぱいを揉まれたせいで興奮したリンゴにツバキが襲われたのは言うまでもない。
一応ユウロの事を考慮してか防音が完璧なお風呂場で私達が寝た後の夜中にシていたが。


=======[アメリ視点]=======



ブォォォォ……


「はぁ……昨日の夜は死ぬかと思った…」
「何言ってるのツバキお兄ちゃん…リンゴお姉ちゃんは魔物なんだよ?死ぬわけないよ!!」
「そうかもしれないけどね…5時間ぶっ続けで搾られた後3時間だけ休憩してその後また5時間搾られたんだよ…人間にはキツイよ…」
「ははは…ま、それだけリンゴはツバキの事好きだって事だろ?」
「そう言われちゃうと何も言えなくなっちゃうね…」

ヘプタリアについたアメリたちは、昨日の夜ずっとラブラブしてたせいで体力がなくなっていたツバキお兄ちゃんを休ませていろんなお店を周ったあとに、ジパングに行くために船のりばに行った。
それでお船で行くことになったはいいけど…ジパングまでは長いから、すごく料金高かったんだ。
アメリみんなの分払えないことなかったけどサマリお姉ちゃんが「いつも食糧とか共用の物はアメリちゃんのお金で買ってるし、アメリちゃんのお金ばっかり頼るのは良くないから」って言ってみんなで何か売って払おうとしたけどね…

「おーい椿ー、ユウロー、アメリちゃーん!!」
「あっリンゴお姉ちゃーん!!だいじょーぶー?」
「わたし自身もこの進路の先もだいじょーぶだよー!!スキュラさんいたけどこの船は襲わないって言ってたからー!!ただ静かに進んでほしいってさー!!」
「了解!俺が船長さんに伝えに行くよ!!」
「ユウロお兄ちゃんいってらっしゃーい!」

このお船の船長さんが「ジパングの双母(ふたも)に着くまでの間航海の手伝いをしてくれるってんなら安くしてやる」って言ってくれた。だからアメリたちはそれぞれ手伝ってるんだ。
ちなみにふたもっていうのはこの船の目的地。ここからツバキお兄ちゃんとリンゴお姉ちゃんのこきょうのしおみまで、とちゅう山を一つこえて行くことになってる。


「林檎が気持ちよさそうに泳いでいるところもみたし、僕は倉庫の整理を手伝いに行ってくるね」
「うん、いってらっしゃーい!むりしないでねー!!」

ユウロお兄ちゃんとツバキお兄ちゃんは力仕事とざつようを手伝っている。
二人ともつよいだけあって力もあると船長さんもよろこんでいた。


「それじゃあアメリちゃん、わたし今やる事ないしもう少し泳いでくるね!」
「わかった!このお船見失わないようにねー!!」
「なるべく近くに居るつもりだし、椿の匂いもするからそれは大丈夫!」

リンゴお姉ちゃんはお船のすすむ場所に魔物がいないかをおよいで見に行っている。
いたらこのお船をおそったり沈めたりしないようにおはなしして、安全にこうかいできるようにしているんだ。
海にすむ魔物のお姉ちゃんたちにはわるいけど、お兄ちゃんやお姉ちゃんがのってるこのお船を沈められたらアメリたち旅もできなくなってこまっちゃうもんね。
ちなみにこれがいちばん助かっているらしく、だからいっぱい安くしてくれるらしい。


「アメリは…そろそろサマリお姉ちゃんをおこしに行こうっと!」

サマリお姉ちゃんはこのお船のお料理の手伝いをたのまれている。
いつもやっていることだからってお昼ごはんの時もだいかつやく。このお船にのっている料理人のおじちゃんに負けないくらい上手でしかも美人さんだって言いながら船長さんもよろこんでいた。
そう言われたサマリお姉ちゃんも口ではそこまで美人じゃないって言いつつ(サマリお姉ちゃんは十分美人だと思うけどな…)もまんざらでもなさそうだった。

それでお昼ごはんの後は、夜ごはんまで時間があるからって言ってサマリお姉ちゃんは…



「すぅ…………すぅ…………むにゃむにゃ………」



お船の甲板でからだを丸めながら気持ちよさそうにねている。
今日もあたたかいし、かぜも気持ちいいもんね……サマリお姉ちゃん見てるとなんだかアメリまでねむくなっちゃう…
そういえばサマリお姉ちゃんの毛、少しのびてきた気がする…だからさいきんすぐねちゃうのかな?
でも…本当にお姉ちゃんぐっすりねてるな……ふぁぁ〜〜………




…………………




…………………




………はっ!


アメリ本当にねちゃいそうだった…いけないいけない…サマリお姉ちゃんをおこさないと……


「サマリお姉ちゃんおきて!そろそろ夜ごはんのじゅんびの時間だよ!!」
「むにゅ………ん……ふぁ〜ふぅ……んー………」

一応おきたみたいだけど…まだ目がとろんとしてねむたそう…

「ほらおきてサマリお姉ちゃん!!」
「んにゅ……おはよーアメリちゃん…ふぁぁ〜…起こしてくれてありがと…」
「どういたしまして!」

まあサマリお姉ちゃんはワーシープだししかたないか…ワーシープにしたのアメリだけど。

とりあえずおきたサマリお姉ちゃんはまだねむたそうだけどちゅうぼうまでトボトボと行っちゃった…




…………………………




ヒマだな……でもみんなお手伝いしてるからいないし、アメリ何してようかな……




パシャリッ……




「ん?あっ!」
「こんにちは〜!!ちょっとおじゃましまーす!!」

なんか水の音がしたからふりかえってみると、スキュラのお姉ちゃんがあみみたいなもの持って甲板に上がってきていた。
さっきリンゴお姉ちゃんがおそわないようにいったはずなのに…どうしたんだろう?

「どうしたのスキュラのお姉ちゃん?このお船はおそわないって言ってたのに…」
「違う違う!私はこの船の船長さんに魚を売りに来たのよ!そもそも私旦那様居るから……ってリリム様!?
「うん、アメリはリリムだよ。それならアメリが船長さんのとこまであんないしようか?」
「え?い、いえ、リリム様のお手を煩わせる事でもありませんし…」
「むぅ…気にする事じゃないのに…」

アメリがリリムだからって魔物のお姉ちゃんたちアメリに気をつかうことあるもんな…アメリそういうのキライなのに…
けいごとか『様』って言われたりするのいやなんだけどな…けっこう年上のお姉ちゃんたちにならともかく、アメリまだ8さいなのに…おうちにいる他の魔物のお姉ちゃんたちもそんな感じだもんな…
いっしょに旅してるみんなはアメリをちゃんと子供として見てくれるからいいけど…旅のとちゅうで出会った魔物も全員じゃないけどけっこうアメリにはけいごつかってたもんな…
ホント、えらいのはお母さんでアメリじゃないのに…はぁ……

「スキュラのお姉ちゃんがなんて言ってもアメリがあんないするね…アメリ今ヒマだもん」
「ええっ!?は、はい!ではおねがいします!!」

もう…海の中のおはなしとかしたいのにちゃんとできそうにもないかな……はぁ……
そういうのは後でリンゴお姉ちゃんに聞こうっと。




…………



………



……







「レロレロるんるん♪」

スキュラのお姉ちゃんを船長さんの所まであんないしたら船長さんがほめてくれた♪
ついでにアメもらっちゃった。甘くておいしー♪

アメリはたのしそうにお船を歩いてたら船員もお客さんもみんな元気になるからって船長さんに言われたから、もらったアメを食べながらいろんな場所を歩いている。それで今は船長さんのところから甲板まで戻ってきたところ。

「レロレロらんらん♪」
「そこのリリムの女の子、足を滑らせないように気をつけろよー!!」
「うんー!ありがとー船員のお兄ちゃん!!」
「リリムさまー!わたしの歌聞いてもらってもいいですかー?」
「あ、セイレーンのお姉ちゃん!いいけど『さま』って言ってほしくない!それとアメリだよー!」
「わかりました!じゃあアメリちゃん、わたしの歌を聞いてね!」
「うん!」

一人でちょっとさみしいかなって思ったけど、他のお客さんとかお船の船員さんとか、海にすむ魔物たちが声かけてくれるからさみしくないや!
ジパングにつくまでにいっぱいお船を見て周ったりして楽しもっと!


=======[???視点]=======



「さてキミ達、大人しくしてくれるんなら殺さないでいてあげるよ」
「そこの眼鏡の坊主…急になんや!ウチらをどうするつもりや!?」

くそっ…行商の旅でたまたまこの町に寄っただけだって言うのに…変な武装集団に巻き込まれてボロい小屋に町の住民と一緒に連れ込まれてしもうた…
どうやらこの坊主がリーダーらしいけど…

「べっつにー、見たところあんたは人間の女性のようだし大人しくしてもらえたら特に危害は加えないよ」
「ほんまか?こう言っちゃわるいけど坊主かなり胡散臭いで…」
「ムッ…結構気にしてるんだけどな〜…そんな事言うならちょっと危害を加えるよ?」

そう言いながらウチの近くまで来て…剣を……!?




ゴツッ!




「いった〜!!なにすんねん!?」

この坊主…剣を鞘に入れたままウチの頭を思いっきり殴ってきよった……ごっつ痛い……

「何?刺してほしかった?それでもいいけど?」
「え!?あ、スマン!もう勘弁して!」

ほんま何なんこの眼鏡を掛けた綺麗な金髪で茶色い瞳を持った坊主…海の向こうから豪華な船に乗ってきたと思ったらあっという間にこの町を占拠して…ほんま何が目的なんや?


「大変ですエルビ様!」
「ん?何?えっと……名前なんだっけ?」
「私はチモンです!名前ぐらいそろそろ覚えて下さい!」
「あー、そうそうチモンだったね。頑張って名前覚えるよ」

その坊主…エルビの仲間…部下か?こっちのほうが年上だと思うけどな…赤茶色の髪に藍色の瞳を持ったウチの好みではないけどカッコいい男が慌てた様子を見せながらやってきた。

「で、何?」
「この『祇臣』に水神とか言って拝められていた魔物『龍』とその龍の男が我らの兵を薙ぎ倒しています!正直一般兵では太刀打ち出来そうにもありません!!」

そう言えばこの祇臣って町には龍がおったな…さっきから大きな物音がするのはそのせいか…
こいつらが来たときに妖怪だと認識されてたもんは皆エルビの術か何かで眠らされとったけど…龍は魔力も高いし無事やったみたいやな…

「あーそう…やっぱ龍にはボクの眠りの魔法は効かなかったのか…面倒だなぁ……じゃあボクが男のほうを嬲るから龍のほうはチモンに任せるよ。討伐は難しいかもしれないけど、先にボクが男のほうを痛めつけて人質にでもすれば大人しくなるでしょ」
「は、はい…ではやってみます。エルビ様も気をつけて!」
「ボクは大丈夫だって。心配性だなぁ…」

そう言いながらチモンって男のほうはたぶん龍を相手するために出ていった。
こいつら…さては大陸にいる教団って連中やな。妖怪を狙っている感じやしな…
ある意味ウチはタイミング良かったって事か?いや、巻き込まれとる時点でそうでもないか…


「あ、そうそう…」


と、ここでエルビがウチらのほうを先程とあまり変わらない…いや、若干恨めしい表情をしながら…

「ちなみに、キミ達も魔物と共存してるって時点でボクはムカつくし殺したいんだけど…そう人間を殺しまくるとおえらいさん達がうるさいんだよね…」
「!?」

どこか寒気がする声で、ウチらにそう言ってきた。

今の言い方からすると…ほんまはウチらも殺したいけど、上司がうるさいから我慢してやるって事やな…恐ろしいわ…







「ま、魔物なんかを妻にしてたり魔物なんかに婿入りしてるクソ共よりはいいけどさ…そんなクソは誰が何て言おうと皆殺しにしてやるよ…」







更にはそう言い残して、たぶん龍の旦那さんを相手するために小屋を飛びだしていった。





…あれ?ウチの見間違いやろうか…


そう言っているエルビの表情は、もちろん憎しみに満ちていたが…どこか寂しそうなものも混ざっとったようにも見えた。
12/05/06 21:12更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
最近長い話が多かったので少し短く感じるかもしれませんが一応8000字以上あります。
ついでに、同時に旅裏も更新しました。この話までの情報が載っています。

今回は話の繋ぎみたいなもの。リンゴとツバキはあとちょっとでお別れです…
…別れの前に一波乱ありそうですが。
最後に出てきた人物についてはもう少しお待ちを。

次回はようやくジパング編!まずはツバキとリンゴの故郷、祇臣に向かって旅します!…の予定。

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