読切小説
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逃げない奴はよく訓練されたワイバーン
竜騎士になる方法として、幼い頃からワイバーンを育成するというものがある。
同年齢なら幼馴染として育つうちに、自然と人間を背に乗せることを受け入れる。
二人の年齢が離れていれば兄と妹、もしくは父と娘の関係になり、従順な飛竜として育つことだろう。

だがその逆をすると失敗してしまうことが多い。
つまり“年上の飛竜と年下の人間”の組み合わせである。



「ダメだっ! 私のモゲロを危険な目に遭わせられるかっ!」
厩舎ならぬ竜舎。竜騎士の騎乗する飛竜たちが暮らす建物。
その中の一室でモゲロという名の少年――成人にはほど遠い――を腕の皮膜で隠すように抱いて、飛竜は大声をあげる。
その対象はモゲロの父親。

「そうは言うがなバーン。お前も納得して今までソイツと生活していたのではないのか?」
バーンと呼ばれた飛竜はうっ…と息を詰める。
「戦争など実際には起きないと思っていたのか? だとしたら考えが甘すぎるぞ。国際情勢など容易く移り変わる。
 我が国の竜騎士が張り子の虎と思われないためには、今実際に血を流して戦う必要があるのだ」

バーンの暮らしている国は周辺国との仲も良好であり、軍隊の仕事など演習と訓練しかなかった。
しかし最近、同盟を結んでいる国である事件が起こった。
一部貴族たちによるクーデターである。

幸い王家の者は脱出することに成功し、同盟国へ逃れることができた。
もし全滅していたならば話は違ったかもしれないが、王家の者が生きている以上、盟約に従ってこの国は奪還するための兵をあげなければならない。
当然一番の戦力として期待されるのは竜騎士だ。

「でっ、でもモゲロはまだ子供じゃないか!」
一応竜騎士として登録されているとはいえ、戦場に出すには早すぎるとバーンは抗う。
だが父親はその言葉を鼻で笑いとばした。

「子供? いままで散々まぐわっておいてソイツが子供だとぬかすのか!? ははっ、たいした冗談だまったく!」
バーンをバカにするように―――否、完全にバカにして笑い声をあげる父親。
彼女はギリッと牙を噛んで睨みつけるが、父親は意にも介さない。
彼はひとしきり笑ったあと、真面目な顔つきに戻り最終通告を告げた。

「所属は爆撃部隊、出発は四日後だ。準備と覚悟を済ませておけ」
これで用件は済んだと立ち去ろうとする父親。
その背に向けてバーンは憎々しげに呟く。

「……モゲロは貴様の息子だろうが」
何度も父親に向けて言ったセリフ。
いまさら違う答えが返ってくるとは思わない。

「要らん子だ。あの売女が一緒に連れて逝ってくれればよかったんだがな」
そして父親の答えも変わらない。遊び相手の厄介な置き土産だと吐き捨てる。

父親が出て行き、バタンと扉を閉めたところでバーンはようやくモゲロを解放した。
彼女の腕の中から現れたのは、実の父親からの言葉に落ちこんだ顔をしたモゲロ。
バーンは安心させるため、かがんでモゲロと目を合わせる。

「……実戦は、やっぱり怖いか?」
バーンの問いに正直に頷くモゲロ。
これは当然の反応である。戦争は大の大人でも恐怖を抱く物なのだから。
でもバーンと一緒なら……とモゲロは小声で喋る。

(ああ、私を信じてくれてるんだな……。それは嬉しいけど…)
竜騎士の基本戦術は弓矢による高所からの狙撃、もしくは爆発物等の投下である。
空中にいれば剣や槍に攻撃される恐れはなく、複雑な飛行をしていれば敵の射撃が当たる確率も低い。
だがそれでも最前線にいる以上、傷を負い死亡する危険性は常に存在するのだ。
モゲロが敵の矢に貫かれ、自分の背から落ちて行く姿など想像しただけで死にたくなる。
だから―――バーンは一つの覚悟を決めた。


その日の夜の事。
バーンはモゲロを竜舎に呼び出した。

「お前は昼間“実戦が恐ろしいか”と訊かれて頷いたな。いや、責めてるんじゃないんだ。
 私だって怖いと思うんだから。こんな時間に呼んだのは叱るためじゃなくて……」
その言葉を口にすることをバーン少しためらった。
モゲロの父親の姿が一瞬で脳裏に浮かび彼女を罵倒する。
今まで散々世話になってきて土壇場で逃げだすのかと。
(ふん、別にいいさ。何とでも言え。こんな国よりモゲロの方がずっと―――)

「その……私と一緒に行かないか? ここじゃない遠く、戦う必要なんてない安全な所へ」
決定的な言葉。その意味を理解した瞬間、モゲロは息を飲む。

バーンが企てているのは脱走。
実行してしまえば二度とこの国へは戻れず、残された一族も恥さらしの汚名を被ることだろう。

(頼む、肯いてくれ……!)
母をすぐ亡くし、父に冷遇されていたモゲロを、バーンは母のように姉のように育ててきた。
モゲロにかけた愛情と時間について言えば、彼女と父を比べるなどとてもできないだろう。
だがそれでも血の繋がりというものは断ち切れないほどに強い。
どれほど冷たくされても実の父親とは離れ難いのではないかとの不安があるのだ。

(もし断ったら……私たちの関係は終わりだな)
バーンはすでに脱走する覚悟を決めていた。
もしモゲロが断ったなら無理矢理さらって逃げ出そうと。
だがそうなれば、今までの信頼関係は確実に崩壊する。
自分を恨むモゲロを何処かに閉じ込め、一方的に犯し交わる関係になることだろう。

(でも、この子が死ぬよりずっとマシだ)
バーンは内心祈りながら、答えが返されるのを待つ。
そしてモゲロはしばらく黙って考え―――そっと肯いた。


月の光がない真闇の夜。
飛竜の姿になったバーンは、背にモゲロを乗せて高空を飛ぶ。
彼女は遠くへ行くと言ったが、実のところ明確な目的地などない。
あの国から遠く、落ち着いた所ならどこでもよかったのだ。

―――そのため、彼女は知らずのうちにある場所へと引き寄せられてしまった。

そこは広大な樹海に囲まれた山脈。
いかなる理由かドラゴン属の魔物が集まり数多く生息している危険地帯。
近くの者はその一帯を指して“竜の巣”と呼んでいる。


夜を徹して飛び続けたバーン。
空が白み始め、地上の様子がはっきり分かるようになると、その背で半分眠っていたモゲロに声をかけた。

「モゲロ、起きてるか? 下を見てみろ」
こっくりこっくりと櫂を漕いでいたモゲロはその呼びかけに地を見渡し、うわぁ…と感嘆をもらした。
大地は見渡す限りの緑と緑と緑。文字通りの“樹の海”。
所々では海と大陸が入れ替わったかのように、湖や沼が青い水を湛えている。

(これだけ広い森なら獲物は豊富に生息しているはず。
 長い山脈には風雨を凌げる場所も相当数あるだろうな。
 なによりこんな奥深くまで他の人間がやってくることはない……よし、ここに決めた!)

「モゲロ! 私はここに住むぞ! お前はどうだ!?」
眠気も忘れて自然の美しさに見入っていたモゲロ。
彼がそれに反対するはずもなく、二人の新たな生活場所は早々に決まった。


「ふう……けっこう疲れたな」
水飲みと休憩のために、一番近い水源にバーンは降り立つ。
ドラゴン属とはいえ変身したまま一晩中高空を飛び続けるのはそれなりの疲労があるのだ。
バーンは普段の姿に戻ると沼から水をすくい上げバシャバシャと顔を洗う。
そして隣で一緒に顔を洗っていたモゲロもさっぱりとした顔になった。

「少しここで休もう。その後は山の方へ行って良さそうな洞窟を見つけるぞ」
こくりと頷き返すモゲロ。
文明的な建築物から自然の洞窟へ住居が変わることに不安を覚えないでもないが、
バーンが一緒なら何とかなるだろうと彼は気楽に考える。

「よし。それじゃあ……まず魔力補給だ!」
そう言うとバーンは胸を隠している布状の皮膜をめくりあげた。
それなりに大きな胸がプルンと震え露出する。
次いでショーツの様に股間を隠していたウロコが何処へともなく消え去り女性器が露出。
二秒とかからず裸になったバーンはモゲロを抱きしめ、柔らかい草の生えた地面の上へ倒れ込む。
そしてズボンに手をかけ―――たところでモゲロの様子がおかしいことに気付いた。

「どうしたんだ? 顔をそらして」
普段ならキスしたり胸にしゃぶりついてくるのに…とバーンは疑問に思う。
それに対して、モゲロはこんな場所で恥ずかしいと答える。
ベッドの上でしか経験がない彼にとって、野外で堂々と交わりを行うなどあまりにも破廉恥で非常識すぎたのだ。
しかしバーンは気にすることなんてないと言い服を脱がしてしまう。

「誰も見てないんだ、恥ずかしがることなんてない。もし来たら見せつけてやれ」
そう言ってクックッと笑うバーン。
だが彼女以外に裸を見せたことがないモゲロは他人に見られた場面を想像し顔を赤くする。

(あ、赤くなった。可愛いなあ……。こんなに恥ずかしがるなんていつ以来だろう)
最初のころは自他問わずに裸を恥ずかしがっていたモゲロだが、
全裸での交わりを繰り返すうちにバーンに対してはそういった感情を持たなくなった。
自分に慣れてくれたのは嬉しいが、ちょっぴり残念だとも彼女は思っていたのである。

「大丈夫だ。もし誰か来たら私が隠してやるから。な?」
久しぶりの可愛さを堪能した後、バーンは両腕の皮膜を広げてモゲロを覆ってみせる。
それで渋々とだがモゲロはこの場で交わることに同意した。

「よしよし。じゃあ今日はお母さんになってやろう」
『お母さん』。
二人が交わるときのこの言葉には特別な意味がある。

その始まりはある交わりの最中にモゲロが誤って『お母さん』と呼んだこと。
その時にバーンは思ったのだ。
(この子は母親の顔も憶えてないんだよな……そうだ!)
いいことを思いついたと、バーンは自分の下にいるモゲロに顔を寄せる。
呼び間違いを咎められるのかと思い、ごめんなさいと先に謝るモゲロ。
だが彼女が発した言葉は全く予想しないものだった。
「モゲロ、私がお前のお母さんになってやる。だから今日は好きなだけそう呼んでいいぞ」

それ以降、バーンはときおり『お母さん』としてモゲロと交わるようになったのである。
ちなみにその後『お姉ちゃん』にもなり、今では『お母さん』『お姉ちゃん』『バーン』の三つの顔を持っている。
(流石に『妹』や『娘』にはなれなかった)

久しぶりの『お母さん』。
赤子の頃を思い出そうとするかのように、モゲロはバーンの胸に吸い付く。
「ん……。お母さんのおっぱいはそんなに好きか?」
胸に顔を埋めてチュウチュウ吸うモゲロの頭をバーンはそっと撫でる。
彼は『お母さん』相手だとまず気が済むまでそうするのだ。
(こんなに必死に吸っちゃって。本当に母乳が出たらいいのにな……)
しばらくモゲロの好きにさせて、彼が口を離したところで本番。
年齢の割にかなり大きいモゲロの男性器。バーンはその上に自分の穴を位置させる。
「じゃあ…入れるぞ。お母さんと一つになろうな……」
優しく言ってバーンは腰を下ろす。そして性器が繋がった瞬間に快感が二人に襲い掛かった。

「んっ……、お前の…おちんちんは、やっぱり、良いなっ…!」
大きいとはいえまだ未成熟なモゲロの男性器。
人間ならば物足りないと思うかもしれないが、バーンにとってはこれ以上無いほどの逸品だ。

「お母さんの…おまんこは、どうだっ…?」
モゲロと違いバーンの女性器は完全に成熟しきっている。
さらに彼女は魔物であり、モゲロは快楽に弱い子供。
この組み合わせで“気持ち良くない”と言うわけがない。

「まあ…当然だなっ……! お母さんのおまんこを、もっと…味わえよっ…!」
周囲にグチュグチュという音を響かせながら腰を動かすバーン。
弱いながらモゲロも下から突き上げ、快感を増幅しようとする。
そうしているうちにモゲロの息遣いが変化してきた。

「あ…なんだ? もう、お漏らしか?」
“お漏らし”というのは射精の隠語である。
『お母さん』のバーンはまるで幼児を相手にするようにモゲロに接する。
おちんちんという言葉などまさにその代表で、自分が完全に子供扱いされているようでそこがモゲロは少し不満だ。
だからといって『お母さん』をやめて欲しいとは思わないが。

「ん、いいぞ…! お母さんの…おまんこトイレにっ、おしっこ出せっ…!」
モゲロはバーンにしがみ付くと、最奥まで差し入れて精を放つ。
「あっ……! 出て、るっ…! 白いおしっこで、お母さん汚れちゃう…っ!」
(ああっ、この子の精液たまらないっ! もう本当にトイレになってもっ…!)
尿の代わりに排出される精液。粘性の液体に胎内を汚し尽くされ、バーンはこの上ない充足感を得る。
「ん…ふぅ……っ。おまえのお漏らしで、お母さんの中グッチャグチャだ……」
射精直後でぼうっとしたモゲロを見下ろし笑みを浮かべるバーン。
そして抜かずの二回目――――と考えたところで邪魔が入った。



ガサガサと音を立て、木立の向こうから現れる魔物。
「おやー? 朝っぱらから声が聞こえると思ったら、イイコトしてるじゃない」
股下から一体化した下半身。ほぼ全身を覆う緑色のウロコ。
知識の無い者ならラミアの一種と思うであろうその姿。
だが同じ魔物であるバーンが間違えることなどない。
「……ワームか」
「そうよ。ワタシはコーリン。ワームのコーリンよ」
ワームはそう名乗り、第三者の登場にあたふたするモゲロを目を細めて見つめる。
バーンはその視線を不快に感じ、モゲロを抱え緑の皮膜で覆い隠した。

「騒がしくしてすまなかったな、コーリンとやら。私たちはすぐ立ち去るから水浴びでもなんでもしてくれ」
会話は終わりだと態度で示し、その場を離れようとするバーン。
しかしコーリンはそれを引き止める。

「ちょっと待って。もしかしてアナタたち、ここに来たばっかりじゃない?」
自分の陰でモゲロに服を着させながら、それがどうしたとバーンはぞんざいに答える。
「空いてる洞窟探して一から住処にするのは面倒よ? せっかくだからワタシのトコにこない?」
家の無い新入りに部屋を貸してやろうと、善人の見本のように言うコーリン。
だがその顔に浮かんだ隠しきれない笑みを見れば、誰でも本心を察せられるだろう。

「ありがたい申し出だが遠慮しておく。モゲロは恥ずかしがり屋だから私と二人だけがいいんだ」
おまえの世話にはならないと、あくまでも堅持するバーン。
全て捨ててきたのだから、二人だけで静かに暮らしたいと彼女は思う。
だがそんな内心などいざ知らず、コーリンは勧誘を続ける。

「ふーん、その子はモゲロくんっていうんだ。
 ……ねえモゲロくん、アナタはなーんにもない暗い洞窟で草敷いて寝るのと、
 明るい洞窟の柔らかいベッドで寝るの、どっちがいい?」
“暗い洞窟”“草を敷く”と言葉で不安をあおり、物で釣ろうとしてくるコーリン。
自然の中で暮らすことへの不安を憶え始めていたモゲロは、彼女の誘惑に少し心が動いてしまう。
だがその雰囲気を察しバーンは釘を刺した。

「耳を貸すんじゃないモゲロ。一緒に行ったら難癖つけて襲われるぞ」
(この子を不安がらせて連れ込もうとはな。ワームのくせに頭が回るじゃないか)
酷い言い様だが実際にワームはドラゴン属の中では知能が低い。
同じドラゴン属同士だと内心バカにされることも多いのである。

「とにかく、私はおまえの世話になる気はないし、モゲロも行かせん。
 この子は私のものなんだ。男が欲しければ自分でどうにかしろ」
交渉には一切応じないと、バーンは強引に話を打ち切って別れようとする。
その態度に言葉では無駄と考えたのか、コーリンは説得から強奪へと方針を切り替えた。

「ヤダ! ワタシはその子がいいんだっ!」
そう叫びバーンへ飛びかかるコーリン。
しかし彼女はそれをヒョイッとかわし、モゲロを抱えたまま跳びはねて距離をとる。
人型とはいえバーンは飛竜。地竜よりも身は軽い。

(所詮はワーム、最後は力づくか。こんな事になるなら休まなければよかった)
この場所で休憩しようと考えたことを後悔するバーン。
だが後悔先に立たず。
こうなってしまった以上、モゲロを諦めさせなければ、飛んで逃げても彼女は追ってくることだろう。

「別れろなんて言ってないんだからいいじゃん! アンタだって住まわせてあげるんだからっ!」
バーンと無理やり引き離したら自分を拒絶するであろうことは彼女も理解している。
朝から晩まで悲しみに暮れ、顔を見れば憎しみの籠った目で睨んでくるモゲロなど見たくはない。
なのでコーリンはモゲロのオマケとしてバーンも同居させてやるつもりだった。

「どうせ私に一人部屋をあてがって、モゲロは自分の部屋に住まわせるんだろう?」
バーンは彼女に大人しくついていったらどうなるか想像する。
ろくに物がない殺風景な狭い部屋。一人ではすることもなく、ただぼうっと“いる”だけ。
やがて隣からギシギシアンアンと音が聞こえはじめ、自分は死んだ目で膝を抱える――――。

(そんなのはお断りだ。モゲロには私だけいればいいんだっ!)
男を独占しようとするのは魔物の本能。本能が強いドラゴン属ならば特にそう考える。
だが今のコーリンはどれほど言葉を重ねられても諦めないだろう。
ならばもう手段は一つしかない。

「決闘だっ! ワタシが勝ったら大人しくその子を寄こしてよっ!」
弱肉強食は自然の掟。勝った方の言い分が通る。

(やはりそれしかないか……)
気が進まないがそれ以外の道も思い浮かばない。
一つ息を吐くと、バーンは抱えていたモゲロを離した。
そして沼を指差し指示を出す。

「お前は離れていろ。あの水辺の辺りにいればいい。これから少し騒がしくなるからな」
そう言って背中をトンと押すバーン。
モゲロは戸惑いつつも言葉に従い、睨みあう二人から離れていった。


モゲロが十分離れたと横目で確認すると、二人は大きく息を吸い込み“変身”する。
バーンは腕が翼の飛竜の姿。
コーリンは大蛇のような地竜の姿。
強い魔力を持つドラゴン属だけが変身できる、前魔王時代の巨獣姿である。

飛竜の姿になったバーンはすぐに地上を離れ、空へ舞い上がる。
炎の吐息のような飛び道具を持っていないワーム相手なら、空を飛んでいれば安全なのだ。

「こらー! 降りてこい、卑怯者ー!」
敵が手の届かないところへ移動したことに、野次をあげるコーリン。
そんな抗議の声を右耳から左耳へと素通し、バーンは戦い方を考える。

(さて、どう攻めたものか……)
空は安全地帯とはいえ、ワイバーンも遠距離攻撃の手段は持っていない。
岩を落とすことぐらいならできるが、地竜相手にそんなことをしても硬いウロコに弾かれるだけ。
結局は接近して自分の肉体で攻撃しなければならないのである。

(いつまでグルグル飛んでるんだろ。さっさとかかってきてくれないかな)
地竜の力は原種並みで、ウロコの防御力も高い。
同じ一撃でもそのダメージは飛竜とは段違いだ。
そして彼女は少しばかり攻撃されたぐらいでは、びくともしない自信がある。

防御などせず相手と同時に自分も攻撃すればいい。
耐久力の削り合いになれば先に倒れるのは向こうの方だ。
コーリンはそう考え、バーンが向かってくるのを待つ。

(このまま回っていても仕方ない………行くか)
円を描いて飛んでいたバーンはツバメのように急降下。
コーリンのほぼ真上から攻撃する。

(速っ! でもまっすぐ降りてくるなら―――)
どれだけ速かろうと直線の軌道なら捉えられる。
コーリンはそう思った。しかしその予想は容易く裏切られる。

真っ直ぐ降下してきたバーン。
その顔を尻尾で打ちすえてやろうと硬い尾を振り上げるコーリン。
これなら直撃だと彼女が確信したとき、バーンの軌道がグニャリと曲がった。

(うそっ! なにいまの―――イタッ!)
尻尾の一撃を見事にかわし、カウンターで背のウロコに爪を立てたバーン。
足を止めて二度三度と追撃する様なことはせず、またすぐに上空へと退避する。

(アイタタ…ずいぶん器用なことすんじゃないの……)
コーリンは飛竜の飛行能力を舐めていた。
飛竜にとっては急降下の最中に軌道を反らすなど朝飯前。
単純な軌道しか取れないようでは、背に乗る竜騎士が射られてしまうのだから。

(思った以上に頑丈だな。これはやっかいだ……)
先に一撃を加えたバーンは、心の中で舌打ちする。
ダウンを奪えそうな一撃が入ったと思ったら、相手は少し痛がっただけ。
これでは相手が戦意喪失するまで何度も何度も攻撃しなければならないだろう。
先は長いぞと彼女は気を引き締める。


何度も行われる急降下攻撃。
コーリンの攻撃は全て空を切り、一度もバーンに当たらない。
飛竜は非力で地竜の肉体は頑丈といってもダメージは少しずつ蓄積されていく。
やがて痛みとともにイライラが溜まったのか、コーリンは急降下してくるバーンに跳びかかるようになった。
だが地竜のジャンプ攻撃を食らうような飛竜ではない。
むしろ柔らかい腹の側を攻撃できていい隙だと歓迎する。

「いいかげん諦めたらどうだ? お前の攻撃はかすりもしていないぞ」
コーリンがあまりにも単調に跳びかかりを繰り返すので、バーンはもう面倒になってきた。
このまま続けても結果は見えている、お前に勝ち目はないぞとバーンは言う。

「黙れっ! ワタシはモゲロを絶対諦めないぞっ!」
尻尾をブンッ! と振って木々を折り倒し、吠えるコーリン。
「……そうか。ならお前が嫌になるまで付き合ってやる」

バーンはコーリンの動きを読み切っていた。
どれほどの速さで攻撃を繰り出すか。どの程度まで高く跳べるか。
どの方向なら反応が鈍るか。どの場所が特に弱いか。
気を抜かなければ彼女が負けることはまず無いだろう。

(―――って考えてるんだろうねえ)
バーンはコーリン…というよりワームという種族をあなどっていた。
ほとんどのワームは単純バカだが、中には頭が回る者もいるのである。
コーリンが弱い腹を何度攻撃されても跳びかかりを続けた理由。
それはバーンに限界を見極めさせるためだった。

アイツはこれ以上の高さには到達しない。
あれよりも素早く跳びかかることはない。
バーンは無意識のうちに安全ラインを自分の中で定めていたのである。

尺取り虫の様に体を曲げ、跳びかかる体勢をとるコーリン。
それを見て今までと同じように攻撃しようと考えるバーン。
しかしコーリンはこっそりと呪文を唱えていた。

「H・T・W・O・R・G―――」
変身能力を見て分かるように、ドラゴン属は強大な魔力を持っている。
だが攻撃魔法を使う者はほとんどいない。肉体だけで十分強力だからだ。
またそれに関連し、戦闘で役立つような魔法を習得している者もまずいない。
しかしこの地竜は別目的で戦闘で使う魔法を憶えていたのだ。

「―――T・N・A・I・G !!」
彼女が唱えたのは巨大化の魔法。
地に伏せていたコーリンの体がぶわっと膨れ上がる。
体長、体重、胴回りその他身体サイズが3割増しに大きくなった。
そしてコーリンは魔法で強化された体でもってバーンに跳びかかる。

(―――なっ、魔法を使った!?)
急降下していたバーンは突然の事態に軌道を変え回避しようとするが―――。

「逃がすかぁっ!」
リーチの伸びた尾でバーンの紙一重の回避を無効化し、その翼を打ちすえる。
バーンは飛行が制御できなくなり地面へと落下。
コーリンは地面に激突した彼女に素早く近寄ると巻き付いて締め付けた。

「逆転だね! アンタはもう逃げられないよ!」
コーリンの言うとおりこの状況は“詰み”である。
原種ならばまだ力勝負を挑めるが、飛竜のバーンには力づくで拘束を解くことはできない。
「さっさと降参しなよ。早くしないともっと痛い目見るからね」
ギリギリギリ…とコーリンは獲物を絞め殺す蛇のように締め付けを強めていく。

「……ぐ…ぅっ、ワーム…なんぞにっ…!」
バーンも自分に勝ち目が無くなったことは理解している。
だがバカにしていた地竜相手に敗北を認めるのは……。

「さっきもいったけど、別れろなんて言わないんだからいいじゃない。それとも策でもあるの?」
バーンは答えられない。
この状況を打開する手段があるなら、とっくにそうしている。
バーンはしばらくもがいていたが、やがて動きを止め、人型に戻って拘束を抜け出した。

「………………私の負けだ」
ドラゴン属同士が竜の姿になって戦う場合、自発的に人型に戻ることは降参を意味する。
バーンは涙目になって自分の敗北を認めたのだった。


二人が沼へ戻った時、モゲロは水辺でザリガニと遊んでいた。
ずいぶん長く戦っていたので、ただ待つのに飽きてしまったのだ。

「ただいまー、モゲロくん!」
「………ただいま」
背から声をかけられて振り向くモゲロ。
その目に映るのは笑顔のコーリンとお通夜のバーン。
戦いの結果がどうなったかなど一目で分かる。

「モゲロくんは喜んでいいよー! 今晩からあったかーいベッドで寝られるからねー!」
そう言ってすぐ傍に寄ってくるコーリン。
出会って数時間程度の相手に密着されモゲロは困った顔。
助けを求めるようにバーンを見るが、彼女は謝罪の言葉とともに首を振る。

「ごめん。本当にごめんなモゲロ……。そいつと…コーリンとまぐわってくれ……」
敗北したバーンにはコーリンを止める権利はない。
見るのも嫌だと二人に背を向け、モゲロの代わりにザリガニをいじり始める。

「じゃワタシと気持ちイイことしようね。あ、そんなに恥ずかしがらなくていいって。
 バーンとはいっぱいシタでしょ? それと同じでいいんだから」
背後から聞こえてくるのは、モゲロの戸惑う声と服が脱がされる音。
それに腹立ち、ザリガニが伸ばしてきたハサミを人差し指でピンッと弾くバーン。

「もう…赤くなっちゃって。大丈夫、キミのは立派だよ。
 この歳でそんなに大きいなんて、ますます将来が楽しみっ!」
よく知らない女性に自分の全てを見られ、茹でダコのように赤くなるモゲロ。
性器が立派だという称賛の言葉も羞恥に変換されてしまう。
一方バーンはザリガニのハサミを一本ちぎり、今のモゲロはこれよりも赤いのだろうかと物思いにふけっていた。

「ほーら、ワタシの胸大きいでしょ。そこの貧弱ワイバーンよりずっといいよね?
 え? あんまり変らない? じゃあこれでどうかな。H・T・W・O・R・G―――」
足占いにザリガニの小足を一本ずつもいでいたバーンは、背後から聞こえてきた詠唱に振り返る。
(巨大化の魔法? 一体何する気だ?)

「―――T・N・A・I・G !!」
先ほどの戦いと同じように巨大化するコーリン。
……いや、同じではなかった。巨大化したのは胸のみだったから。
場所が限定的なためか、その効果は3割増しなどではなく数倍増し。
モゲロの手が全て乳房に埋まってしまうほどの大きさになり、自慢げにコーリンは鼻を鳴らす。

「どう? キミみたいな子はおっきい胸の方が好きでしょ?
 これワタシが使える唯一の魔法なんだよねー」
モゲロの背に手を回し、胸の谷間に頭を挟んでしまうコーリン。
息苦しいとモゲロが顔を上げたところで、すかさず彼女は唇を奪いにいく。
その姿を不快に感じ、バーンは再び小足をもぎにザリガニへ向き直った。

「んふっ……キミも、その気になったみたいだねぇ…」
ピチャピチャと響く舌をからめる音。
それはモゲロの側も積極的に動かしているという証明だ。
興奮と欲情が恥ずかしさを上回り、ついに彼はコーリンとの結合を望む。
「ちょっと待ってね、グルグル……っと」
下半身をモゲロに巻き付け、グパァ…と自分の穴を開くコーリン。
だが頭が胸に挟まっているモゲロには、下の様子が分からない。
なのでコーリンは男性器を掴み誘導する。

「えへへ…キミのちんぽに汁がかかってるよね? これ全部ワタシのまんこから出てるんだよ。
 まるでオモラシみたいでしょ? だから……キミのでアナをふさいじゃうね」
体液でモゲロの性器を湿らせ、ヌルリと入れるコーリン。
挿入した瞬間、二人は同時に息を詰め、またすぐに吐き出した。
その呼吸でモゲロが奪われたと理解し、バーンは雑巾をしぼるように手にしたザリガニをねじり切る。

「うーん、どうしようねぇ……。オモラシとまんないや。どんどん出てきちゃって……」
男性器が往復するたびにコーリンの膣は体液を溢れさせる。
あまりの量に二人の下半身はもうベタベタだ。
しかしどちらもそんなことは気にせず腰をぶつけ合う。

「んぁ……っ、もう…だらしないなあ、ワタシのまんこ。キミのちんぽで…栓されてるのに……」
より奥まで差し込まれるほど零れる体液。肉の棒による栓など何の効果も持たない。
そうやって無駄な止水を繰り返すうちに、モゲロの方にも危機が訪れる。

「ん、出ちゃう? キミもオモラシしちゃうのかな? するならワタシのまんこに出していいよ。
 キミをベッタベタに濡らしちゃったから、そのお詫びねっ!」
肌を汚してしまったから、代わりに体の中を汚していいよと言うコーリン。
その言い様はどこか『お母さん』を連想させ、モゲロは巨大な胸に顔を埋め射精した。

「ひゃぁっ! キミの精液来て……るっ!
 もっと、してっ…! ワタシの…まんこ、汚してぇっ…!」
びゅくびゅくと白濁液を注ぎ込まれ、身を震わせながら嬌声をあげるコーリン。
それを聞いてバーンは不快の極みに達した。

(うぁー! 殺してやりたいっ! モゲロがお漏らししていいのは私だけなのにっ!)
自分の専売特許を奪われ腸が煮えたぎるバーン。
彼女はその怒りを紛らわせようと、ねじ切ったザリガニを口に放り込みバリバリ噛み砕いた。


しばらく繋がったまま抱き合っていた二人だが、魔法の効果時間が切れ、胸が通常サイズに戻る。
それにより胸の谷間に挟まっていたモゲロの頭が解放された。
汗や涙で濡れた顔をコーリンは一瞥し、ベロベロ舐めまわす。

「ん…泣いちゃうなんて…そんなに、良かった? なら、もっと…しよっか?
 キミなら好きなだけ汚して「もういいだろ! 早くおまえの住処に連れていけっ!」
自分の近くで連戦などやらせるかと叫ぶバーン。
コーリンは顔に不満を浮かべジロリと睨むが、彼女も真っ向から睨み返す。
その険悪な雰囲気を感じ取り、モゲロは慌てるように自分も家に行きたいと発言した。

「そう? 遠慮なんてしなくていいのに。ま、いいや。続きはベッドでしようねー」
(続きなどさせるか。それより私の体でモゲロを綺麗にしてやらないと……)
こうして色々と問題を抱えつつも、二人はコーリンと共に暮らすことになったのだった。



三人で暮らすようになってしばらくの間、バーンとコーリンは幾度も衝突した。
二人がいがみ合い、モゲロが何とかしてそれを収める。
その繰り返しの果てに、どうにか二人が妥協できるルールが構築された。
それは一方が外へ出ている間はモゲロを独占可、ただし帰ってきたら即交代というもの。

コーリンが食糧調達の当番で狩りに出かけた日。
二人きりになった洞窟の中、バーンは自分の部屋へモゲロを連れ込む。

「さあモゲロ、邪魔者はいなくなったぞ。お母さんといい事しような……」
今のバーンは二人だけで交わる時、必ず『お母さん』になる。
『お姉ちゃん』だとコーリンと被り気味になるし、三人で交わる時は普通にバーンと呼ぶからだ。
コーリンの出払っているこの時間だけが、バーンが『お母さん』になれる時間なのである。

いつものようにモゲロを裸にした後ベッドに寝かせ、バーンはその上にのしかかる。
「それじゃあ、お母さんの中に入れてやるからな……。ん………っ」
自分の膣内にモゲロを受け入れるバーン。
数え切れないほど繰り返してきた『お母さん』としての交わりが、今はとても貴重に思える。

「お前のおちんちんも、ずいぶん大きくなったな……。やっぱり、毎日してると違うのかな…?」
国にいた頃は毎日朝から晩まで交わり続けるなど、とてもできなかった。
だがこの洞窟に来てからは、バーンかコーリンのどちらかが常に寄り添い、暇があれば交わっている。
それによりモゲロの性器は鍛えられ、大きく肥大したのだ。

「でも……甘えん坊なのは、変らないなっ…!」
ペチャペチャとバーンの乳首を舐めるモゲロ。その様子は以前と変わらない。
そして母親離れをして欲しくない彼女はその姿を好ましく思うのだ。

(このままずっと子供でいてくれたらな……。でもコーリンは嫌がるか)
二人きりで暮らしていたなら、モゲロは成長せず、ずっと子供のままだろう。
しかしコーリンはもっと育った姿を望む。
10年後の彼がどのような姿になっているかは誰も予想が付かない。

「モゲロ…お母さんは、お前が大好きだぞっ…! 何があっても、愛してるからなっ…!」
どんな姿になってもモゲロはモゲロ。その愛は変わらないと口に出すバーン。
そんな内心など知らないモゲロは、素直に自分も『お母さん』が好きだと返す。

「うん……ありがとう。さ、お母さんに白いおしっこ出そうなっ…!」
近づく射精を感じ取り、膣に力を込めるバーン。
『お母さん』相手に我慢などせず、モゲロは欲望のままに放出する。

「く、ぅっ……! ひどい…お漏らしだなっ…! おまんこトイレから、溢れてるぞ…っ!」
男性器の肥大化に伴い、モゲロは精液の量も増加した。
一度射精するだけでバーンの中が満たされ、入りきらない分が外へ漏れてしまうほどに。

「あは……っ。これじゃ、お母さんはもう…トイレ失格かな。
 ……ん? いや、怒ってないよ。ちょっと残念だな…って思っただけ」 
モゲロの精液を受け止めきれなくなったことは残念と思うが、
量が増え、よりたくましくなってくれたことは喜ぶべきことだ。

「お母さんはお前がしてくれることならなんでも好きなんだ。だから…もっとしような……」
自分が出しすぎたせいで機嫌を損ねたのではないか?
そう心配するモゲロの額に、バーンはチュッとキスをした。
12/11/11 19:28更新 / 古い目覚まし

■作者メッセージ
別にザリガニに恨みはありません。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

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