連載小説
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雪の日/日常
「茜華さん!雪ですよ雪!」
「泰華雪好きなのか?」
窓から外をのぞき込んでいた小さな男は向き直り答える。
「もちろんです!」
「ほう、理由はなんだろうか。単純で純粋な泰華のことだから…雪だるま作りたいとかかな」
ズバリと言われると少しだけ考えてから照れたように笑う。
「自分より大きい雪だるま作ってみたいんですよ」
要約すれば力がないんで一人で大きい作れたことがなく、そんなことも言えないまま成人してしまったと。
「んじゃ、作るか!うちの前なら大丈夫だろうて。大家も分かってくれるはずだ」
「本当にですか!?」
「もちろんさ♪」
お礼の代わりに包容すると優しく包み込まれる。
「それよりも泰華。寒いのは大丈夫なのか?」
当然のごとく水が氷、結晶に成り保たれるからには外の温度は予想がつく。
「大丈、夫です!」
「一回止まったように聞こえたがまぁいいか」
「良いです!」
二人は着替えて外へと出るのだった。



シンシンと降る雪の中。現在は茜華の住んでいるアパートの前に出たところ。
「さ、サムイです!」
「そりゃな」
ニット帽にマフラー、手袋に長靴と完全防備だがそれでも震えが多少なり見える。
「しょうがないなぁ」
後ろに張り付くようにして泰華の腕を取った。
「くっついてやればそんなに寒く無いと思うが。どうだ?」
「茜華さん…」
「んっ…」
嬉しそうに後ろを振り向くと背伸びをして頬にキスをする。
ちなみに茜華は冬着にフード付きコートのみでマフラー等はしていなく頬はむき出しだ。ありのままを説明すると所々に体毛があるため防寒になるのだ。しかし、それを実感できない泰華には考えられない格好だ。
「僕、別の意味でぽかぽかしてきました…」
「じ、自分でやって照れるなよ!」
照れ隠しに後ろからギュッと抱きつくヘルハウンド。
「でも、凄く暖かいです」
「ほらほら、作るぞ!」
泰華の幸せそうな表情を見ていると日が暮れそうになるので作業を始める。
と言っても簡単なことなのだが。
「これくらいにして」
雪合戦などで使用するような大きさの雪玉を作りそれを転がしていく。
「歩くとざくざく音がするの好きなんですよ」
「確かに心地良いかもな」
子供の様なことを言っているが空気を読んで話しているのでなく本心からだ。
自分の思ったことを素直に表現できるだけである。
「ほれ、もっと転がしてみ。大きくならないぞ」
幸い、それが他の者にとってはそうかは分からないが、雪は30センチ弱程積もっており材料としては十分であった。
よいしょよいしょと転がすとみるみるうちに大きさが倍々になっていく胴体予定の球。
どんどん雪玉の成長を促していくがすぐに限界がきた。
「う、動きません!」
泰華の膝と高さが同じになると本人ではもうどうしようもなくなっていた。
「こ、これで動かないのか」
「す、すみません…」
少し驚いたがすぐに助けを出す。
泰華が手を添えている雪玉だったものに指で軽く力を加えるとすぐに動き出す。
「わっ!茜華さん早いです!待って下さい!」
慌てて手を動かし必死に政策へ加わろうとする泰華。
五分も転がしいてるうちに泰華の肩程度の高さまできた。
「こんなに大きくなりました!」
「ん?小さいぞ?」
そうですか?と振り返ると恋人は自分を見て発言していた。
「もぉー!茜華さん意地悪いわないで下さい!」
「ククッ…すまんすまん」
愉快とばかりに反省の色が見えない謝罪で済ました。
「次は頭です!」
基本的に気にしない性格のためすぐに機嫌が直るのも泰華の特徴である。
こうして頭の制作へと移っていった。



「で、出来ましたね」
自分より大きな完成物への感動が止まらずに今にも抱きつきそうだ。
「こんなもんで良かったのか?」
「最高です!」
茜華と比べればまだまだ大きなだるまとはいえないが隣の小男が喜んでいるからもちろん異論はない。
「それで泰華」
「?」
「なんで雪が好きなんだ?」
先ほど答えたはずであるが茜華は騙せなかった。
正確には騙す気など泰華は微塵も無かったのだが。
「さっきのあたしが聞いた後、答えるときの雰囲気で分かるさ」
「そ、そうですか?」
図星をつかれ、隠す気も意味も無くなったので話し始める。
「雪の結晶って一つとして同じものがないらしいんですよね」
「ほうほう」
もちろん茜華は知っていたが話をスムーズに進めるため流す。
「ぼ、僕にとっての茜華さんみたいだなぁって」
“僕だけの恋人で他の誰にも変えられない、なんか雪と重なるようで。それで好きなんです”
「ま、全く恥ずかしい奴だ」
泰華を抱き寄せ頭を撫でる仕草から言動が一致していないのは周知。
二人しかいないのだが。
「そんな恥ずかしいことを言う奴は家でいっぱい愛してやるからな!」
「でも、僕お腹空きました」
ググゥと天文学的タイミングで腹の虫が自己主張を始める。
「分かったよ。それなら飯食って、それからヤるか♪」
「はい!」
降り積もる雪の中、身を寄せ合いながら家へと消える二人。
この時ばかりは泰華も寒さなど忘れているのであった。


18/05/10 10:51更新 / J DER
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■作者メッセージ
はい、毎回毎回ワンパターンですねぇ
まぁ、この設定はもうこういうののために作ったので仕方のないことです

他の投稿者様のようにストーリー仕立ても書いてみてますが中々うまいこといきません
そんなこんなでまた別の似たようなのを書いているので泰華と茜華には単調なイチャラブの犠牲になってもらいます
それでは

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