読切小説
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アリスのしょくちゅかんさつ日記
―1日目―
 今日はしょくちゅのたねをうえました。水をあげたけど、めは出ませんでした。

―2日目―
 今日も水をあげたけど、めは出ませんでした。

―3日目―
 今日もめは出ませんでした。なんかつまんない。

―4日目―
 しょくちゅのめがでた!うれしい。なんかちっちゃくてかわいい。

―5日目―
 きのうよりもしょくちゅが大きくなってる気がした。

―6日目―
 もう一つしょくちゅのめがでた。水をあげるとピコピコうごいてかわいかった。

―7日目―
 さいしょのしょくちゅはアリスの手ぐらいの大きさになった。しょくちゅとあくしゅできた。

―8日目―
 今日はしょくちゅがケンカしていた、ケンカしてることをおこったら二つともショボーンってなってた。仲良くするんだよとちゅういして水をあげた、すごくよろこんでた。

―9日目―
 今日はしょくちゅがきのう言ったとおりに仲良くしていた。なでてあげるとうれしそうだった。

―10日目―
 今日もしょくちゅに水をあげた。今日もしょくちゅは元気に遊んでる。アリスもいっしょに遊んだ。

―11日目―
 今日はしょくちゅに水の代わりにぎゅーにゅーをあげてみた。アリスもぎゅーにゅー大好きだから、しょくちゅにもあげるの。

―12日目―
 しょくちゅが白くなってた。ホルスタウロスさんのぎゅーにゅーってすごい。あと、しょくちゅも日記を書きたいみたいだから書かせてあげる。
 我輩は触手である、名前はまだ無い。……いや、もしかしたら「しょくちゅ」が我輩の名前なのかもしれない。どうやら我輩はホルスタウロス印の牛乳の栄養と魔力、それと偶然によって知識が芽生えたようだ。弟達に我輩ほどの知識が芽生えないことから見ると、我輩はかなりイレギュラーな存在であろう。まぁこれから暫く世話になるとするか。

―13日目―
 きのうはしょくちゅがムズカシイこと書くからつまんない、おしおきにしょくちゅにはパパの大好きなにっがいコーヒーをあげるもん。
 おいおい。冗談はよしてくれよ御主人。我輩これでも味覚とか発達してるのだが……ちょっその黒い液体を我輩にかけようとするのは、我輩の弟達にも迷惑かかるって……

―14日目―
 今日はなんかしょくちゅが黒かった、コーヒーのおかげだ!これでムズカシイことは書かないでしょ。
 我輩に珈琲はかなり美味しく感じられたが……とりあえず黒いスーツを着て探偵事務所を構えたい気分である。

―15日目―
 ぜんぜんしょくちゅはこりてなかった、あんなにっがいコーヒーがおいしいなんて信じられない、パパと同じだもん。
 御主人の父上殿に失礼じゃないのだろうか?何かを美味しく感じるのは人の勝手だと我輩は思うのだが。

―16日目―
 あしたとあさっては、お友達のお家におとまりしに行くからしょくちゅが日記書いておいてね。
 え、御主人無責任な。ってか日記書くの飽きてきたでしょ。我輩を放置するのか!

―17日目―
 マジで我輩に書かせるつもりかよ、御主人酷くね?母上が水をくれたからいいけど、……あれ?なんか、ちゃんとした水を飲めたのは久しぶりな気がするな。御主人は牛乳とか珈琲とか普通に我輩にかけるし。もしかしたらこのままの方がいいかも知れんな。

―18日目―
 今日も母上がちゃんとした水をかけてくれた、だが……なんか御主人がいないと少し寂しい気分だな。まぁ、明日は帰ってくるし、我輩がそこまで気にする必要もないか。

―19日目―
 帰ってきたらしょくちゅがなんかさびしそうだったから、なでてあげた。すごくうれしそうだった。
 ようやく御主人が帰ってきた。また騒がしくなると思うとやれやれだぜ。だが帰ってきてくれて嬉しいのも事実だな。

―20日目―
 今日はお友達がおとまりに来てくれるから楽しみ!
 ついに我輩や弟達に関係無くなったな、この日記……しかし、御主人の夏休みが終わるまであと十日か。ふむ、どうしたものか。

―21日目―
 お友達とたくさん遊んだ!でもしょくちゅは元気がなかった。
 御主人、そんなことより弟達のことを書いてやってはくれまいか?一応この日記は触手観察日記であるのだし。

―22日目―
 なんか、さいきんしょくちゅの元気がない、いつもぐったりしてる。だいじょうぶかな?
 だから、御主人は我輩じゃなく弟達の事を書いてもらえないだろうか?弟達もかまって欲しがっているのだし。

―23日目―
 しょくちゅだってしょくしゅでしょ?だったらしょくちゅの事を書いたっていいじゃん。
 我輩よりも弟達の事をかまってあげて欲しいのだ。なぜ御主人は理解してくれないのだ!

―24日目―
 しょくちゅはきのうからアリスと遊んでくれない、ケチ。

―25日目―
 しょくちゅがむしする、バーカ。

―26日目―
 ……つまんない、お水はあげてるけどしょくちゅは遊んでくれないもん。
 御主人……

―27日目―
 しょくちゅがへんじしてくれた!やったー!
 御主人、お願いがあるのだ……触手を大事に育ててくれるとありがたいのだ。

―28日目―
 いいよー、そのくらいかんたんだよ。今だってしょくちゅとケンカはしたけど、アリスにとって大事なおともだちだもん。
 そうであるか。御主人と友達になれて我輩も嬉しいぞ。また明日……

―29日目―
 しょくちゅ……疲れてるのかな?今日は全然動かないんだよ?ずっと寝てるみたい。

―30日目―
 しょくちゅが……枯れちゃった。しょくちゅの弟たちは元気なのに……しょくちゅだけ枯れちゃったの……いっぱいなみだが出てくるよ?なんで?なかなおり……できたのに。
14/09/17 08:44更新 / アンノウン

■作者メッセージ
私は日記を眺めていた。ずっと、ずっと昔に私が書いた、初めて別れの悲しみを知った時の私の日記だ。あの頃からあまり背は伸びないが、精神的には私も大きくなったかな?
今思えば、彼が別れの言葉を書かなかったのは彼なりの優しさなのだろう。多分彼の思いは弟達に引き継がれただろうし、私も約束は今でも守っている。だから、『また明日』であってるのかもしれない。
30日目の以降は白紙な日記のパラパラとめくる……そして私は最後から二番目のページに何かが書いてあることに気づいた。
『御主人、我輩は貴女に育てもらって感謝しています。恥ずかしいから目立たないように書いておきます、たぶん貴女は我輩が枯れてしまい悲しんでくれると思います。ですが我輩は貴女の感情の糧になれることを誇りに思います。本当に育ててくれたのが貴女でよかった―幸運なしょくちゅより―』
そっと日記を閉じ、私はあたたかい気持ちになりながら今育てている触手に水をあげることにした。

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