連載小説
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【Take1:常識はずれの愛と青春の旅だち】
 桜も終わり、何かと変化する環境にも慣れ始めた5月。
ここはとある高校の屋上。生徒達が教員の目を離れて過ごせる憩いの場所…
現実では学園モノとは違って閉鎖されている事がほとんどでございますが、
この高校では開放されております。ベンチも付いてます。まあ、学園モノですからね。
そんな屋上で、放課後にふたりの男子生徒がベンチに座り、
特に意味もなくぐだぐだと駄弁っておりました。

「和也!」
「あぁ?なんだよ、シロ。」
「オレを…」
「オレを?」
オレを…彼氏にしてくれッ!!

「……」

本気なんだ!!
「……いや待て。アレか?彼女欲しいってことか?」
「うん。」
「…言葉足りな過ぎだろ。俺じゃなかったら誤解するぞ、マジで。」
「でも最悪、それでもいいかなって…」
俺はよくねえわッ!こちとら彼女いるってんだよ!」
「そう…それなんだよ。モテる方法か、女の子紹介してくんない?」
「いや、無理だ。」
「なんだよー。彼女できたんなら、女の子の百人や千人、余裕で紹介できるっしょ?」
「そんなに紹介できる奴いるかッ!
…それに、知ってんだろ?俺は告られただけなんだって。自分から行ったわけじゃなく。
 そもそも俺が、女にモテるようなタイプだと思うのか?」
「うん、 絶 対 に 思わん!」
「強調して断言すんな!傷つくだろ!」

 駄弁っているというよりは、漫才でもしているかのようなやり取りをするこの二人。
それぞれ名を『万西 和志朗(まんざい わしろう)』『十五持 和也(とうごもち かずや)』といいました。共に高校2年生、クラスも同じです。
陽気でお調子者なボケの方が万西くん、ちょっと不良っぽいツッコミの方が十五持くんです。
幼い頃から家が隣同士で、赤ん坊の頃からの付き合いの、同学年ではわりと有名な凸凹コンビでありました。

「クソォォ、なんでオレがモテないんだ!背の低さか!?くせっ毛か!?
腐女子受けしそうなオレより、極道顔ゴリマッチョの方が優れてるというのかーッ!?」
「…おいコラ、俺のコンプレックスを刺激しに来たのか。いい加減ケツ蹴るぞ。」
「いいじゃないかぁ、それが好きっていう子と出会えたんだし。
 …うぅ、こんなチビ夫のことを愛してくれる女の子は、一体どこにおるんやぁ〜…」
「ったく…」
「畜生、もうワンダフルなアレとかコレとか済ましちゃったんじゃないの?
 あのモデル並み、いやそれ以上の美女と!
毎晩毎晩バインバインヌッチャヌッチャ…ぬぅぅぅぅ…羨まちい……!!」
「勝手に妄想してんじゃねえよ…まあ、否定はしねえけど。」
「あああぁぁ〜!!」

 おどけていたかと思えば、焦って、悲嘆して、嫉妬に悶えて転げ回り。
もともとの性格に加え、やや童貞をこじらせたのも手伝って、ほんの数分の内に、まあ面白いようにコロコロと表情が変わる少年でございます。

「くううっ…!青春してえ…!!」
「…なにも、女と付き合うだけが青春じゃねえだろ。部活とかよ。」
「…最近、映画部にカップル続出でさぁ。肩身狭いのよ…。」
「続出?」
「うん。4月に、今年の学祭用の映画のシーン撮ったんだけどさぁ。
人数いるシーンで、部員だけじゃ足りなくて人集めたらさぁ、
なんでかその人達と部員のみんなが次々といい仲に…」
「マジかよ…」
「なのに!オレのとこには誰も来なかった!何故だ!坊やだからか!?」
「知らねえよ…。」
「クッソォォォォ…!天は、天はオレを見放したもうたのかッ!!ああ…」

 そこで万西くんは突然立ち上がり、屋上の中央に向かって走ったかと思うと、
両手を高く掲げ、天を仰いで叫びました。傍目から見たら完全に危険人物です。

神よ、オレに彼女をくれええええッ!!

 彼も、なかば冗談のつもりでやったことでしょう。
この現代社会で『神』が本当にいると信じている人など、ほとんど居ないのですから。


…しかし。


はい、どうぞ!
「…え!?」

 すると突然、晴れているのに、空から一条の光が差してきました。
「光…!?」
「なんだ一体!?」

「(Ah───、Ah────、Oh h──────♪)
さらにどこからとも無く、賛美歌のような荘厳なコーラスが。
日が出ているのにもかかわらず、空には花火大会のような沢山の花火が。
その上、屋上の四隅から紙吹雪やスモーク、特撮のような爆発にレーザービームまで…」

「…って、ちょっと待て!演出過剰すぎだろ!?いつ仕込まれた!?」
「いや、そうだったら面白いのになあって。」
「あ?どういう事…って、お前が口で言ってたのかよ!?」

 もちろん、そこまでの大仕掛けはありません。
天から差す光と共に、人型の何かが、花びらのようにゆっくりと降りてきて…
万西くんの前に降り立ったのです。

「……」
「……」

 二人とも、あまりの出来事に、口をぽかんと開けて呆けておりました。
こんな非現実的な光景を見れば、誰だってそうなる事でしょう。
空から人が、しかも…可愛らしい女の子が降りてくるなどと。
しかも褐色肌に、腰まで伸びる桜色のロングヘアー、身に纏うのはほぼ下着のような衣装。
背後には、原理の分からないハート型の光の輪。
現実離れした特徴と痴女のような格好ですが、全身に纏う雰囲気は、どこまでも清純。
そんな不審…いや、不思議極まりない少女が、閉じていた目を開き、万西くんに微笑みかけました。

「はじめまして、旦那様♪」
「…え?」
「私の名前は『ウレティシア』と申します。
 お母様…愛の神エロス様の下から、貴方の伴侶となるべく遣わされました。」
「え?」
「…こ、こいつの、か?」
「はい。万西 和志朗さんの元に、です♪」
「え…人違い、じゃなくて?」
「人違いなんてありえません!エロス様より生まれてから16年…のうちの10年、
ずーっと和志朗さんのことを見つめ続けていたのですから。
先程天に向かって叫ばれていた所まで、全部♪」
「…ずーっと?」
「はい♪寝顔も、お風呂も、おトイレも、10年間ずーーっと…」
「…おいシロ。110番だ。やべえぞこいつ。」
「…ん。」
「あわわっ!冗談、冗談ですよ!流石におトイレまでは見てません!」
「ならいいけど…。」
(…ならいいのか?)
「いやしかし…なんでオレ?確かにさっき叫んだけど、冗談半分だったし…。」
「あら。別に叫ばなくても、もともと和志朗さんの元に行くのは確定だったんですよ?
たまたま『いざ!』というタイミングで、ぐうぜん和志朗さんが祈っていただけです。」
「…つーかそもそも、あんた一体何者なんだ?
さっきから、ただの変態どころじゃなく怪しすぎんぞ。」
「…それは確かに。どう見たって、怪しいピンクの女の子にしか見えない。」
「そのまんまじゃねーか。」
「この状況でもボケツッコミ…流石のお二人です。
 それで…ですね。私はフーリーといいまして、いわゆる『天使』なんです。」
「天使ィ?」
「はい。天界から、下界の人間どもを24時間つねに監視し続けるのがお仕事です。」
「…もっと言い方あんだろ。普通に『人々を見守ってる』とかでいいじゃねえか。」
「おっと、そうでしたね。
 …で、見守ってるうちに素敵な男性を見つけたら、今度はその男性を重点的に見守り、
お母様のゴーサインが出たら地上へ向かうのです。
そしてその方の伴侶となり、幸せにしてあげるのが、私たちの役目というわけです♪」
「マジかよ…」
「う〜む…」
「さては信じてませんね?まあ確かに、都合のいい話に聞こえるでしょうが…
 本当にあるんですよ。神様も、救済も、天使も、奇跡も。」
「じゃあさじゃあさ、モケーレ・ムベンベは!?いるの!?」
「それは今関係ねえだろ!?」
「実はそれもいるんですよー。少し噂と違いますけど…って、話がそれちゃいましたね。
ともかく…もう、言わなくてもわかりますよね?だ・ん・な・さ・ま♪」
「う…。いやでも、なんでオレが?
嬉しいっちゃ嬉しいけどさ、こんなだよ?オレ。見てたんなら知ってるでしょ?」
「…まあ、バカなんだよな。そこ否定はできねえ。」
「バカってなにさー。成績はそこそこいいじゃん!」
「中一の時、『ワイヤーアクション事件』を起こしやがった奴がバカじゃなくてなんだ。」
「いいじゃん、みんな楽しんでたんだし!大人から滅茶苦茶怒られたけど…」

 よく突拍子もない事を言い出す万西くんですが、これはそんな彼の逸話のひとつ。
『ワイヤーアクションがしたい』と突然言い出した万西くんが、片方に重りを、片方に自分を結んだロープを体育館の梁にかけて跳ね回った挙句、最終的にへんな落ち方をして骨折してしまった事件の事です。
その他にも、時には十五持くんを巻き込み、数々のオモシロ伝説を残してきた万西くんですが、詳しい事は長くなるので割愛します。

「うふふっ。そこはちょっと心配ですけど、いつも楽しそうでいいじゃないですか♪
 それに私は、そんなことは問題にもならないくらい、
和志朗さんのいい所も沢山知ってるんですよ?」
「えっ…?」
「例えば和志朗さんが小学生の頃、お友達の迷子になったペットの猫を、
 いっしょに夜中まで捜し歩いてあげた事がありましたよね?」
「…そうだったっけ。」
「あー…。そういやあったな。隣町の寺で、ようやく見つけたんだっけか?」
「あ、思い出した。あそこでボス猫として君臨してたんだっけ。」
「…それどころか、そこでラジオ聞きながら、月明かりでマンガ読んでたとも聞いたぞ。
尻尾も二本になってたとか…アレ、本当に猫だったのか?」
「どうだろ…。」
「和志朗さんの優しさを天界から見ていて…私、濡れてしまいました♪」
「濡れたとか人前で言うな。…意味が分かる俺もアレだが。」
「ていうか、オレが小学生の頃なら、君も小学生くらいだったんだよね…?」
「それだけじゃありませんよ?
中学校で、いじめられていたお友達を、十五持さんと二人で守ったこと…
去年のマラソン大会で、熱中症で倒れた人を介抱したこと…
 それからそれから…♪」
「うーん…なんか…改めて褒められると、ちょっと照れる。」
「…まあ、すげーいい奴ではあるんだよな、お前。バカだけど。」
「イヤーン、やーめーてーよー。」
「うふふ♪ご自分がどんなに素敵な人であるか、理解していただけましたか?
 正直、どうして今まで女性に縁がなかったのか、不思議でならないくらいです。
 ですから…。」

 彼女は、今一度しっかりと万西くんの目を見つめ、尋ねました。

「万西 和志朗さん。
もしよろしければ、私に、貴方を幸せにさせていただけませんか?
 貴方が沢山の人を笑顔にしたように、私も、貴方に沢山の笑顔をお届けしますから♪」

 万西くん、その笑顔にドキッとしました。そして直感的に思いました。
『流石に、ここでボケちゃ駄目だ!』と。なので…

「…いきなりの事だし、貴方のこと何も知らないし、ちょっと戸惑ってるけど…。
 えーと、よ、喜んで!」
「…!……ありがとうございます…!!」

 感極まって、万西くんの胸に飛び込むウレティシアさん。
万西くんも、それを反射的に抱きとめます。

「……(ダーン)エンダアアアァァァァァァァァ♪
イヤアアァァァァァ♪
「おいコラ!告白直後にいきなりボケんな!」
「おっ、ノリいいねぇ。ウレティシアちゃん。」
「長いので、レティって呼んでください。
 ふふ…私も、本当は好きなんですよ。こんな風に楽しくやること♪」
「なんか早くもオレ達、うまくやれそうな予感がするよ。
 そう…ふたりは!」
「カルテットッ!!」
「なんでだよ!二人だろ!?」

 ボケ側が二人に増え、ますます賑やかになってしまった夕暮れの屋上でしたが、
そこに新たに入ってこようとする人影がありました。

「和也、いるか?」

 屋上の扉を開けて現れたのは、すらりと背が高く、大きな胸を除けばアスリートのように無駄のない体型の、凛々しい美女でした。

「いるぜ。剣道部終わったのか?藍。」
「ああ。誰かさんと違って、私はサボったことが無いのが自慢なんだ。」
「うるせえな。いいだろ、一日くらい。
 …どうせ今日は、親父のとこでシゴかれなきゃならねえんだからよ…。」

 ちなみに十五持くんは、空手部の副主将です。
彼の父親も空手道場を経営しており、やる気はともかく、実力はかなりのもの。

「そうか。部活の分まで、しっかり鍛えてもらうといい。
 サボってばかりだと、私も見限ってしまうかもしれないぞ?フフフ…」
「ったく、仕方ねえな。見限られんのはゴメンだ。」
「…ん?そういえば、万西はいいとして、そこの子は一体誰だ?」
「はじめまして♪私、和志朗さんの恋人で、ウレティシアと申します。」
「ついさっき、オレと付き合いはじめました☆」
「そうか。私は『朱行 藍(あかゆき あい)』という。この和也の恋人だ。」
「まぁ♪お二人は、どういった出会いをなされたのですか?」
「そうだな。あれは忘れもしない去年の冬、
彼の強さを聞いた私が、剣道と空手の異種試合を申し込み…」
「…って、待て待て。何すんなり受け入れてんだ?色々突っ込むところあんだろ。」
「…と言われてもなぁ。
万西がどういう人間かは私もよく知ってるつもりだ。何があろうと驚かない。
 正直、天に祈ったら降ってきたとか言われても驚きはしないぞ。」
「…よくわかったな、その通りだ。」
「ホラ見ろ。」
「…オレって一体…。」
「『日ごろの行い』って知ってっか?」
「まあまあ…。…ところで、朱行さん?」
「なんだ?」
「朱行さんって、魔物ですよね?」
「う…!バレたか。」

 そう言うと、彼女の体は変化を始めました。
両耳が霧のように消え、代わりに緑のヒレのようなものが生えてきます。
続いて両手に、靴を脱ぎ捨てあらわになった両足も、あっという間に緑のウロコに覆われ、
そして最後に、制服のスカートのすそからトカゲのしっぽが飛び出して、
たった十数秒で、トカゲと女性の混ざったような姿に変貌したのです。

「普段は隠しているのだが…実は私は、トカゲの魔物、リザードマンなんだ。」
「マジでッ!?」
「…俺もはじめは驚いたけどな。
 別に人間にとって危ねえ存在でもないらしいし、すぐに気にしなくなったぜ。」
「和也の肝の強さも大したものだ。私はつくづく、いい伴侶に出会えたな♪」
「それにもし、危ねえ相手だったとしても……いや、なんでもねえ。」

 何かを言いかけて止めた十五持くんに、万西くんがニヤリと笑いながら詰め寄ります。

「ん〜?なんて言おうとしたのかな?和也きゅ〜ん?」
「気になりますねぇ…」
「うるせえ!言えるかよ恥ずかしい。おい、藍、なんか言ってやってくれよ…」

 ところが…

「…和也。私たちの間で、互いに隠し事はするなといつも言っているだろう?」
「ちょ…お前もかよ!?」
「大丈夫だ、ここには私たちしかいない。
 そしてこの二人も、何を言おうと馬鹿にしたりするような人間ではないだろう…多分。」
「…クソッ、俺に味方はいねえのか…。」

 それでも口を開くあたりに、万西くんと朱行さんへの信頼がうかがえます。

「……危ねえ相手でも、受け入れてたと思う。俺も藍を好きになっちまってたからな…
 って言おうとしたんだ…ああクソ、これでいいか?」

 それを聞いた朱行さん、急に固まります。
顔には驚愕の表情を浮かべながら、夕焼けの中でも分かる程に顔が赤くなっていきました。
柔らかそうな唇がわなわなと震えたかと思うと、その顔を隠すように十五持くんに勢いよく抱きついていきました。

「ああ、もう…もうッ!!!
 もう…お前は、魔物娘に対してそんな事を言うなんて、分かっているのか、おい!!
 今の一言で、子宮が一瞬でマキシマムでバーニングでビーアンビシャスなんだぞ!?」
「意味わかんねえよ!?何だよビーアンビシャスって!?」
「お前の子供を山ほど産みたいという大志を抱いてるんだ!子宮がッ!!」
「上手いこと言ったつもりか!」
「(ダーン)エンダアアアァァァァァァァァ♪
イヤアアァァァァァ♪
「そこ、抱き合ったからって歌うな!」
ウィゥオオルウェェイズラァァゥヴュゥゥゥウゥゥゥゥゥ♪
お前もかよ!?
うすうす気付いてたけど、お前やっぱりそっち(ボケ)側か!」
「女であるからには、突っ込まれる側に決まっているだろう。おかしな事を言う。」
「だから上手いこと言ったつもりか!ドヤ顔やめろ!
 畜生、いきなり負担が二倍どころか三倍になりやがった…!」



 そんなこんなで日も落ち、学校にいる生徒もまばらになってきました。
十五持くんカップルは二人と別れ、彼のお父さんの道場へ。
和也の稽古が終わったら、最高に熱い夜を過ごす!と朱行さんが息巻いておりました。

「うふふっ…お二人とも、お互いへの素晴らしい愛をお持ちでしたね♪」
「うん。なんだかんだラブラブなんだよ、あの二人。…ちょっと羨ましいくらいに。」
「そうですか…。
じゃあ私達も、あの二人に負けないくらいの仲になれるよう、頑張りましょう♪」
「…うん。」

 ツッコミがいなくなったせいか、急に静かになってしまった二人。
屋上にはもう、車の音や、カラスの鳴き声が遠くに響くばかりです。

「…そろそろ、帰りましょうか。」
「だね。
…そういえばさ。オレは家に帰るけど、レティはどうすんの?やっぱ天界に帰んの?」
「いえ、地上で暮らしますよ。」
「でも、家とかは?」
「もちろん、ちゃんとありますよ♪エロス様の奇跡の力のおかげで、戸籍だってあります。
私達を着の身着のままで放り出すような無責任な方ではありませんからね。
和志朗さんのお家のすぐ近くですし、あの…」
「…?」

 おずおずと、レティさんの手が差し出されます。

「いっしょに、帰りましょう?」

 先ほどまでの陽気さとは打って変わった、赤くはにかんだ初々しい微笑です。
ギャップはありますが、これもまた、彼女の一面なのでしょう。
ちょうど万西くん自身も同じタイプであるため、彼女の様子に親近感を感じながら、
万西くんはそっと彼女の手を握り、共に歩き出しました。





 その夜。
夕飯を食べ、風呂に入って、歯を磨き、パジャマに着替えた万西くんは、さあ寝ようと二階にある自分の部屋のドアを開きました。

「こんばんは、和志朗さん♪」

 そこには、寝巻きらしき服を着て、笑顔で立っているレティさんが居ました。

「……」

 そのとき、彼は瞬時に悟りました。
『ああ、なんてことだ。オレは異世界に迷い込んでしまったんだ』と…

「違いますよ!?
混乱させてしまったのはすみませんけど、これそういう話じゃないですからね!?」
「なんだ。よかったような残念なような。
 …それで、どうやってここに…いや、どうしてうちに来たの?レティ。」
「はい。よろしければ、和志朗さんと添い寝をさせて頂こうかと♪」

 そのとき、彼は瞬時に悟りました。
『ああ、なんてことだ。オレは異世界に迷い込んでしまったんだ』と…

「違いますってば!?現実ですよ!げ・ん・じ・つ!」
「逆さから言うと?」
「……つんじ…いや、つじんげ?
…ってもう、脱線させないで下さいよ…」
「ごめんごめん。…でも、初日から添い寝って…急すぎない?」
「そんなことはありませんよ?
外国では割と普通なことですよ。見たこともありますし。」
「いやでも、ここ日本だし…」
「…それとも、お嫌ですか?私といっしょに眠るのは…」
「い、嫌なわけではないけど、えーっと…」
「ダメ、なんですか…?」
「その…ぽ、ポーン!!

話をそらすべく、無理矢理にでもボケようとしています。無駄な足掻きです。



そして。

「どうです?私のカラダ…あたたかい、ですか…?」
(…ああ、なんてことだ…)

 宣言どおり、万西くんはベッドの中で、レティさんに添い寝されておりました。
もう一時間ほどになりますが、お互いまったく眠る気配がありません。

「あ、あの…密着しすぎじゃあ…?」
「そんなことありませんよ。恋人同士なんですし♪
 それよりも…どうですか?ご感想は。」
「か…かんそう?むしろ汗でしっとりして…」
「ボケたってやめませんよ?
 私のカラダ、どんな風に思ってますか?」
「…あ、温かくて、柔らかくて、凄いいいニオイして…
 いや、かなり色々触れてるんだけど、そういうのってふつう嫌がるもんなんじゃ…?」
「嫌がったりなんてしませんよぉ。
 その『色々』の感触…教えていただけませんか?」

 レティさんは万西くんより更に小柄ながらも、胸やお尻は大きく魅力的に膨らんでいます。
彼女はごく自然な動きで万西くんの手を取り、スケールこそ小さいものの、片手のひらでは握りきれないほどのボリュームを持つ胸のふくらみに押し当てました。

「いや、ダメだって!?青少年のなんかが危ない!
 オレだって男だよ!?このままだとヤバイ事になるよ!?」
「………。
…私は、とっくに『ヤバイ事』になっていますよ?
 少なくとも、我慢できずにこんな行為に走ってしまうくらいには…」

 そう言うレティさんの瞳は、行為に反して真剣なものでした。
よく見るとその顔は、羞恥で耳まで真っ赤に染まっています。
強い恥じらいを感じながらも、それを上回る意志が、彼女をこんな大胆な行為へと突き動かしているのでしょう。

「10年です。貴方は気付いていなくても、10年間、ずっと貴方の事を見ていたんです。
 貴方の楽しそうな所も、素敵だった所も…つらく、苦しそうだった所も。」
「10年…」
「ずっと、すぐにでも飛んで行きたかったんです。
 貴方に触れたかった。愛していると囁きたかった。辛い時、傍に居てあげたかった。
 身も心も、私の全てを、貴方に捧げたかった。」

 万西くんは、しばし想像してみました。
もし逆の立場だったとして、果たして自分は、想いを寄せる相手に10年間も話しかけることすら出来ないという事態に耐えられるのだろうか?…きっと耐えられない。
それを思うと、10年という時を自分のためにひたすら耐え抜いた彼女の健気さが、とても純粋で、愛おしいものに感じられました。その気持ちに応えてあげたい、とも。

「さあ…もっと触れて下さい。どう、ですか?
 この身体は…いま、貴方に触れてもらうためにあるんです。
 貴方に喜んでもらえたら…嬉しいです。」

 彼女は寝巻きをはだけさせ、大きく開いた隙間から、自らの手で褐色の乳房を両方とも掬い出しました。
まさしく天使的な美しさを持つその造形に、万西くんは口内のつばを無意識に飲み込み、レティさんの手に導かれるがまま、それを自分の手に触れさせました。
大福餅のような優しく柔らかな感触。その中心で充血し熱を持つ、肌にマッチした深いローズピンク色の突起。さらにその奥にある、破裂しそうなほど強く激しい鼓動までも、手のひらから直接伝わってきます。

「…もにゅんもにゅんだ…。」
「うふふふ…そうですか。お好きなように触って下さい♪」

 そして万西くんは、ゆっくりと自分から指を動かし、レティさんの乳房を揉み始めました。
まだ恐る恐るといった様子の手つきですが、レティさんは嬉しそうです。

「ん、はぁ…ぁ…♪」

 時折漏れる悩ましげな吐息が、万西くんの理性を削いで興奮を加速させ、次第に手の動きが早くなり、五指はより深く、柔らかなお肉の中にめり込んでゆきます。
数十分の間、万西くんの五感は、目の前のものが自らの手でカタチを変えていく様子しか認識しませんでした。

「…あの…よろしければ、こちらも、お願いします…」

 レティさんがゆっくりとショーツを下ろすと、つるりとした股間からは細く透き通った一本の糸が引いていました。
万西くんがそれを見たのが分かると、手のひらから感じる鼓動がさらに大きくなります。

「…もう、こんなになっていて、耐えられないんです。
 ずっと、和志朗さんに触れてほしかった…さあ、早く…♪」

 胸を弄んでいるうちに、すっかり興奮しきっていた万西くんは、言われるがまま、静かにそこへ手を伸ばしました。
くちゅっ…という微かな音の直後に、人差し指が胎内の熱に包まれます。

「あっつ…!こ、こんなに熱いんだ…。」
「そうですよぉ♪
和志朗さんのことを考えてる間は、ずっとこうなってしまうんです。…まあ、考えてない時なんてないから、つまりずっとこの状態だったんですけど…♪」

 進入直後はきつく固かった内部のお肉でしたが、
万西くんが指を動かしていると、そこはあっという間にほぐれ、柔らかくなっていきます。
まるで、長い時間煮込まれた食肉のように。

「はあ……はぁ…はぁ…」
「はっ…はーっ……」

 まだ何者の侵入も許していない、無垢な、それゆえに過敏な秘所と、これまた自分の手以外が触れた事の無い乳房を、いまやすっかり興奮に身を任せていた万西くんに無遠慮に弄り回され、レティさんの息はいよいよ荒くなってきます。
とは言え、痛みは感じていないようです。拙く荒い愛撫もすべて受け止め、快感として受け入れるのは、天使のなせる業でしょうか。

「!……」
「………?和志朗、さん…?」

 レティさんが快感に蕩けていると、不意に、万西くんの動きがピタッと止まりました。

「…」
「……あ…ええっと…もしや……」

 万西くんのパジャマのズボンをトランクスごと下ろすと、
白く生臭い粘液が糸を引き、力を失いつつある無残な状態のモノがありました。
レティさんの生の肉体は彼にとって刺激が強すぎたため、触れているうちに興奮が限界に達して出てしまったのでしょう。

「……死ぬ。」
わぁぁぁ!?落ち着いて、大丈夫ですから、落ち着いて下さい!」

 丸出しのままベッドから立ち上がり、どこからか取り出した懐刀を腹に突き立てようとするのを、レティさんは必死に止めます。

「ええい離せッ!男(おのこ)として最大の恥辱を見られては、最早生きてはゆけぬッ!!」
「私は恥なんて思ってませんから!早まらないでぇーッ!!」

 お互いゼーゼー息が上がりながらも、レティさんは何とか万西くんを止め、ベッドに座らせます。

「ふぅ…。大丈夫ですよ、任せて下さい。ちょっと失礼しますね…」

 開かせた股の前に座り、すっかり柔らかくなってしまったそれに、そっと手を添えます。
ほんのりと汗ばんだレティさんの手のひらは、赤ちゃんの肌のようにぷにぷにと柔らかく、心地いい温かさをもって万西くんの縮んだモノに覆いかぶさり、密着します。

「たしか、こうして擦ってあげれば…」

 繊細なガラス細工を扱うような手つきで、レティさんの五指がゆっくり動き始めました。
さきほど出した精液が、にちゅっ、にちゅっ、という粘着音を伴い、手の動きを助けます。

「…いかがです?」
「……すんごく、エロい。」

 純粋無垢で穢し難い、まさしく天使のような神聖な美貌を持つ少女が、その顔に艶やかな笑みを浮かべつつ、半裸どころか大事な場所が一切隠れていないあられもない姿で、汚液にまみれた男根を擦っている。しかも他でもない、自分のモノを。
万西くんの目に映るその現実が、拙くも優しい奉仕から得られる感覚を増幅させて、
見る見るうちにペニスはさっきまでの大きさに、いや、それ以上に膨れ上がりました。

「わぁぁ……♪」
「み、見んといて!そんなに見んといて!恥ずかしいからッ!」
「恥ずかしいことなんてありませんよぉ。立派なおちんちんじゃないですか♪
 これが、いまから私の中に……ッ♪」
「ま、マジで!?そこまでやる!?」
「はい♪一度旦那様と定めた殿方の『愛』を、この身すべてで全部受け止める…
 それこそが、私たち愛の天使の最大の夢であり、何よりの大好物なんです♪」

 言いながら、レティさんは素早く立ち上がり、向かい合ったまま万西くんの背に腕を回し、腰をまたいで両太股の上に座って、対面座位の姿勢になりました。
そのまま腰を持ち上げ、挿入しようとしています。

「それでは…行きますね。」
「ま、待ったッ!!」
「あっ、もしかして、赤ちゃんの事ですか?心配要りませんよ。
ちょっと残念ですけど、天使と人間では出来にくいんです。
それにもし出来たとしても、天界がいろいろと保障してくれますし…」
「そ、そうじゃなくて…あの、えーと…!」
「どうされましたか?…それともやっぱり、私とするのは…んむぅ!?

 一瞬、拒絶されるのかと不安げになったレティさんの唇を、万西くんが唇で塞ぎました。

「んんっ……ぷぁっ、な、何を…」

 唇が離れた後には、レティさんに負けないほど真っ赤な顔をした万西くんがいました。

「こ、これだけは!これだけは、先に済ませとこうと思ってッ!
童貞の発想だけど、手順とか、そういうのもあるし!
エロイ事だけだと恋人として違うと思って、何かこっちも君にしてあげたくて…」

 万西くん自身も何を言っているのかわかりませんが、レティさんには、なんとなく万西くんの気持ちが伝わりました。
そして直後、万西くんのペニスが、一瞬にして飲み込まれます。

「「!!!」」

 二人とも声が出せず、ただ、口をパクパクさせるばかり。

「ぁば…れ、レティ、なにを…」
「う゛うっ…はーっ…はぁーっ…♪
 だ、だって…そんな、こと、されたら……♪」

 涙を浮かべ、身を震わせながらも、幸せそのものといった笑みを見せるレティさん。
受け入れの準備は整ったといえど、やはり少し痛がっているようですが、それを無視して、自分から腰を上下させ始めました。

「すごい…ですッ♪おなかのなかに、わしろうさん、が…!」
「こっ、こっちも、これ、ちょ、すごい、うねって…!」

 お互いの感想を述べようとしても、うまく言葉を紡ぐ余裕がありません。初めて同士なのだから当然ですが。

「だいすき…だいすき、なんです…あっ、ひぁ、はっ、ぁ…!!」
「く…ぅ、おれ、は…おれっ…」

 いつの間にか、万西くんも自分で腰を突き上げ、その感覚を積極的に貪っています。
蜜の溢れる柔肉を突き刺し、下から子宮めがけて先端を叩きつけるごとに、背中に絡みつくレティさんの細腕に力がこもるのが、嬉しく、楽しく、愛しく思えました。
しかし万西くんもまた、レティさんの襞が側面を撫で上げる度に、自分もそうなっている事に気付いてはいません。
二人はたとえようもない暖かく幸せな気分に包まれて、右も左も分からないまま、ただ、目の前の相手だけは離すまいと必死にしがみつくばかりでした。

「ぁぁぁぁ、もう、だめっ、う、ゃぁぁ…」

 絶頂がすぐ近くなり、強烈な快楽によって腰の動きに力が入らなくなってきたレティさん。
反対に、万西くんはより絶頂へと近付くために、さらに力強くレティさんを突き上げます。
そこにもはや、理性や余裕はほぼありません。ただ一個の生物のように共同して、最高の一瞬に向けて進むのみ。

「んぁっ、いっ…んんんんん〜〜〜〜〜……!!」

 先に絶頂までやって来たレティさんが、万西くんを腕で、膣で、力の限り抱きしめます。
それがトドメとなり、一瞬遅れて万西くんも、これまで出した事がないほど大量の精液を、神聖な子宮に思いっきり吐き出しました。

「……!……」
「ぁっは……はぁ…ぁぁ…」

 大きな波が過ぎ去ると、二人は抱き合った状態のままベッドに倒れこみ、心地よいまどろみの様な、甘い絶頂の余韻を堪能しました。

「……レティ。」
「何ですか?」
「…気持ちよかった。」
「私も、です♪」

 レティさんは万西くんの胸板に頭を軽くこすり付けて、子供のように甘えます。

「…あのさ。」
「何ですか?」
「……正直オレ、レティのこと、よく分かんないんだ。
 いきなり空から降ってくるわ、その日のうちにこんな事になっちゃうわ…」
「…ごめんなさい。」
「…でも、こんなオレのこと好きだって言ってくれたのは、嬉しかった。
 今はまだオレ、レティの事好きってハッキリ言えないけど…
 きっとオレも、好きになるよ。レティの事。」
「和志朗さん……ッ♥」

 万西くんに抱きつく腕に力を込めながら、顔を見えないほど深く彼の胸にうずめます。
真っ赤に染まった顔と、じわりと染み出した涙を隠すためでしょうか。

「和志朗さん…和志朗さん…♪」

 万西くんは、目の前にある艶やかで美しい桜色の髪を、なんとなく撫でてみます。

(おお…)

 今まで嗅いだ事の無い、気分の安らぐような甘く爽やかな香りが立ち昇りました。
レティさんは気持ち良さそうに、頭を撫でる手に身を任せています。

(……可愛い…)

 ただ頭を撫でているだけで、なんだか幸せな気分になってきた万西くん。こんなことは初めてです。
しばらく言葉も無いまま、急に静かになった空間で、頭を撫で、撫でられ続けていました。

「……♥」
「……♪」

 なんともいえない、甘酸っぱく幸せな気分に包まれたまま、二人はいつの間にか眠りに…

「……さ、もう一回…しませんか?」
「……
 …………え?」
「初めてでこんなに気持ちよかったんですから、
次はもっと気持ちよくなれると思うんです♪」
「マジで?」
「マジですけど?」
「このまま寝る流れじゃなかった?」
「?別にそんなつもりでは…もうお疲れですか?」
「別に疲れてるわけじゃないけど…」
「それとも、もうしたくないとか?」
「いや、まだしたいにはしたいんだけど…」
「それじゃあいいじゃないですか。しましょう?
 ほーら、こうして顔を挟んで…男の夢だって、前に言ってましたよね♪」

 汗で湿り気を帯び、吸い付くような感触へと変わった柔らかく神聖な双丘に、万西くんの顔面を迎え入れます。ダメ押しとばかりに、乳房の両側からさらに両手でむにゅむにゅと圧力をかけてみたりもしています。
そのまま太股を万西くんの股間に押し当て、ペニスが三たび膨張しきったのを確認すると、
レティさんは万西くんの顔を開放し、笑顔で言いました。

「さあ、まだまだ夜は長いですよ。
 『初夜』は一回きりなんです。ずっと忘れられない思い出にしましょう♪」

 レティさんを抱きしめて、盛った犬のように腰を振りながら、
万西くんは、今日の夕方、朱行さんに別れ際言われた言葉を思い出していました。


「…そうだ、万西。」
「なに?」
「レティと話していて分かったが…彼女は、どうやら我々の同類らしい。」
「どゆこと?」
「いや…、ただ、今夜を楽しみにしておくといい。
 …なにせ10年だ。すごい事になるぞ。」
「?」
「なに。天使も魔物も、愛の強さに大差は無いという事だ。」


(もしかして…『この事』だったのかァ〜〜〜ッ!?)

 気付いた時にはあとの祭り。もはや正のスパイラル、いや、性のスパイラルの中。
お互いに求め、求められ、二人はいつ果てるとも知らず、激しく愛し合い続けたのでした。





『仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照…』
「……ん…?」

 愛用の目覚まし時計から流れる般若心経のアラーム音で万西くんが目を覚ますと、
何の変哲も無い、いつものベッドの上でした。

「…え?レティ?」

 傍らに、レティさんは居ませんでした。
それどころか、パジャマや寝相は乱れておらず、色んな体液でぐちゃぐちゃになっていたはずのベッドも、そんな痕跡は一切なく、キレイなものでした。

『シロー!起きて目覚まし止めてよ。
 いつもの事だけど、何なのよあんたのセンス。前回の『時そば』といい…』

 万西くんの姉『ひより』の、ちょっと不機嫌そうな声が壁越しに聞こえます。
そういえばあれだけ激しくしたのに、両親はおろか、隣の部屋の姉にも音が聞こえないなんて事がありえるのでしょうか。

「……夢?」

 昨夜の行為、いや、ウレティシアという少女自体、万西くんが見ていた夢に過ぎなかったのでしょうか。

「…えー…。ないわー、夢オチとか…
 モテないからって…マジ、ないわー………。」

 がっくりと肩を落とし、うなだれる万西くん。
いつになく重い動作で朝食を食べ、身支度をし、ふらふらと学校へ向かうのでした。





「…はぁー。」
「…んだよ、らしくねぇ。今朝から溜息ばっかじゃねえか。」
「放っといてよ…ふぅ。」
「昨日あんなにはしゃいでたってのに、一体どうした?
 藍の見立てが確かなら、今頃ポケーッとしてるか、ウゼェくれえに脱童貞アピールかましてくると思ったんだが…」
「…え、どゆこと!?」

 万西くんが聞き返そうとした矢先、担任の男性教師が教室に入ってきました。

「おーいお前ら、ホームルームの前に、転校生を紹介するぞー。」
『転校生!?』
『急じゃね!?』

 突然の知らせに教室がざわめく中、先生が、ひとりの生徒を招きいれます。

「さて、転校生はなんと女の子だ。男子も女子も、仲良くしてやれよ。
 おーい、入ってこーい!」

…ところで皆様。こういう話の『お約束』をご存知でしょうか。
何年も何年も前から使われ過ぎて、陳腐化した面白くもない展開ですが、
これから始まるちょっとおバカな青春ストーリーは、そのお約束な展開から始まります。
…まあ、これから面白くなるとは限りませんが、今しばらく、彼らの紡ぐ物語にお付き合いいただければ幸いでございます。

「皆さん、はじめまして。
レティ=秋庭(しゅうてい)と申します。これからよろしくお願いします♪」

 入ってきたのは、黒い髪で白い肌、背後の光の輪も無い小柄な女の子。
しかし、花が開いたような満面の笑みを浮かべるその顔は、まぎれもなく、この場にいる中では万西くんと十五持くんだけが知っている顔。
ひとりの少年に愛を与えるべく降り立った“愛の天使”のものでした。

15/12/19 22:21更新 / K助
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■作者メッセージ
 …また無責任にも新しい連載をはじめていくスタイル。K助です。
怪我したり仕事変えたりと、個人的にいろいろあった今年ですが…もう、あと一週間余りになってしまいましたね。
…書き溜めを出すだの、次はフーリーさんの話しを書くだの言っておきながら、年末まで引っ張ってしまいました。…はい、怠慢病です。
それでも恋するゼリー最後の一つはほぼ完成しているので、一週間後に上げられると思います。楽しみにしていた方には、本当に申し訳ございませんでした。

 …まだまだ謝罪したりませんが、ここで今回の連載のコンセプトを。
この話のコンセプトは、あらすじにもあるように『ラブコメならぬ、ラブ&コメディ』。
ギャグの練習も兼ねて、なるべくギャグシーンを詰め込む方針で行かせていただきます。
…それ以外のことは、いつ終わるかも含めて一切ノープランですが、どうか完結まで、万西くんとレティさんのバカップル…ならぬ、おバカなカップルぶりを見守ってやって下さい。

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