読切小説
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僕はホモじゃない
「なんでもするって言ったよね」

そう言った先輩の股間は膨らんでいた。
顔もどことなく赤い。
僕は思わず唾をのみこんだが、ホモじゃない。
うろたえる僕をよそに、先輩は服を脱ぎ始める。筋肉質な体だった。ホモじゃないのに美しいとさえ思った。
しばらく見とれていると先輩がこちらを見る。そしてたった一言『脱いで』と命令をした。

以下、濃厚な男同士の絡み合いなわけだが、ぶっちゃけ聞きたくないよね?いや、こんなタイトルのSSを開いているわけだし、一部の人は興味あるのかもしれない。でもここは主にノンケ向けのSSを書き込むサイトなわけだから、大多数の人から反感を買うような表現には気をつけないといけない。『そして僕たちはお互いのペニスを口に含んだ。どちらもこうした経験は初めてだ。相手からどうされると気持ちが良いか、そんなことを考えながら頭を前後に動かした』みたいなことを書かれても反応に困るだろ?あ、僕はホモじゃないです。

でも確かにこれは魔物娘の話なんだ。厳密にいえば、僕がアルプになった話。この多くの人にとって気味が悪いパートも詳しい描写はいらないけど、こんな事実を通して僕がアルプになったわけだから、触れる程度は一応書いておかないといけない。

あ、先程から男性同士の性交渉について否定的なことを書いているが、別に僕にLGBTを差別する主義があるわけではない。でもその一方で、一般的に理解が得られるとも思っていない。特にこのサイトは男女、もしくは女性同士について特別関心がある人が集まっているように思える。ほら、タグに『百合』はあっても『薔薇』は無いだろう?ああ、もしかしたら『アルプ』って種族がその変わりなのかもしれない。

じゃあ、濃厚なホモセックスパート入れとくか?僕はホモじゃないけど。いや、やめておこう。

さて、まずはなんでホモじゃないのに、ホモセックスをすることになったか。それをこれから語りたいと思う。

きっかけは大学生になって初めてできた彼女に振られたことだった。




――――――――――
「他に好きな人が出来たの。別れて」

「あなたの女々しい所が嫌い。身長もないし、運動も駄目だし、それなのに妙に裁縫が得意だったり、掃除が細かかったり、気持ち悪いのよ!男のくせに!」

「顔が良いから付き合ってみたけど、それ以外はてんで駄目ね!」

「あなたつまらないのよ!」

「別れましょう!あなたのことが好きになれなかったの!」


僕は昔から背が低くて、筋肉もつかなくて、まるで女の子みたいだと言われ続けていた。でも、そんな僕でも人から好きになってもらえると思ったんだ。……その日までは。

それからしばらくして元彼女は1学年上である西園寺先輩にアタックしていると聞いた。なんでも、つい最近フリーになったらしく、それを聞いた元彼女はワンチャンあると踏んで僕が邪魔になったらしい。

僕の怒りの矛先は西園寺先輩に向いた。自分でも不思議なことに、元彼女が僕を捨てたことよりも、西園寺先輩がフリーにならなければ!という方向に思考が働いたのだ。

復讐の方法は単純だ。女装をして西園寺先輩へ近づき、良い感じになったらネタばらしをする。ちょっとした悪戯程度のものだが、怪我をさせたりだとか、散財をさせるのはNGだと判断した。これは逆恨みだと分かっているからだ。それでも彼に嫌がらせをして溜飲を下げたい。そんな妥協点がこの方法だった。

西園寺先輩は基本的に遊び人だと聞く。やってやれないことは無いはずだ。……たぶん。




――――――――――
先輩の自宅を特定(みんなはTwitterに近所の写真アップしないようにね!)して、その付近のコンビニで強襲をしかけることにした。

「はぇぇぇぇ……」

初めて近くで見る西園寺先輩に男ながらドキドキしてしまう。先に言っておくが僕はホモじゃない。それでも頭一つ抜けた美貌は男女の垣根を越えて感動するものだ。

「えっと、君は?何処かであったかな?」

うっわ、その趣味は無いのに重低音に惚れ惚れするわ!

「あ、そうですよね、すみません。はじめまして。大学が同じなんですよ」

「俺のこと知っているんだ?」

「もちろんですよ!先輩有名ですもん!」

「何年生?こんなに可愛い子を見逃していたなんて」

このセリフ、僕みたいな非モテが言ったら極刑ものだな。

「先輩の一つ下です!普段はキャンパスが違うんですよ」

「よかったら、少しお茶しない?」

チャラいなこいつ!
まぁやりやすくて助かるよ。
このチャラさが人気の秘訣なんだろうな。卑屈な精神で観察した結果、西園寺先輩と付き合っていた女子の多くは、『好き』というよりも、『他の女子に自慢するために』付き合い始めたパターンが多いように思える。
なんというか、表現が難しいのだが、『将来を共にしたい』というよりかは『人気の鞄をみせつけたい』というような、そんな風に見えた。
だからこそ、その相手には飽きたら交換できる軽さが求められる。呪いの装備はみんな嫌いだ。僕のような重い男は粘着質だと思われるみたいだ。くそったれめ!

「ええ〜!いいんですか〜!」

明るく返事をする。
狙いどころは少し遊んでも後腐れがなさそうなタイプだ。先輩の元彼女の傾向は掴んでいるんだ。どうせイケイケ系のギャルが好きなんだろ?

今に見ていろ!ギャフンと言わせてやるからな!などと考えつつ、先輩についていった。




――――――――――
喫茶店でクリームソーダを啜りつつ、先輩との距離を縮めることにした。
奢ってくれるというのでクリームソーダを注文したら『子供みたい』だと笑われた。
笑顔にドキッとしたが、僕はホモじゃない。

「――それじゃあ、前の彼女さんとはどうして別れちゃったんですか?」

「えっとね……」

「あ、すみません!下世話でした」

「いや、いいんだよ。……前の子とは浮気が原因でね」

「どっちの、って聞いてもいいですか?」

「ひどいなぁ。一応、俺は浮気はしない主義なんだよ」

「ええ!先輩素敵なのに、なんで浮気なんか……」

「う〜ん……浮気を問い詰めたら言われたよ。『貴方は顔だけだ!一緒にいてつまらない!』だってさ」

「……」

……そう言って笑う先輩は少し寂しそうだった。
妙に同情心が芽生えてしまう。僕と似たようなことを言われているんだと勝手な親近感を覚えたのかもしれない。勘弁してくれよ……

「……俺さ、チャラいって言われるけど、恋愛は真剣にしたかったんだ。毎回『今度こそは……』って思うんだけど、相手はそんな付き合いは嫌いみたいでさ、流されるままに付き合って、最後はいつもこんなカンジ」

「……」

こんな好青年にハニートラップのような悪戯仕掛けるって言ったの誰だよ!?僕だよな!ごめん!

「って君に行っても仕方ないよね。ごめんね?変な話をして。君、妙に話しやすいんだ。お詫びに何か注文してよ」

「……ください」

やらかす前に気がついて良かった。僕が感じているのは勝手な同情心だった。僕がやろうとしたことは僕が傷ついた行動と本質は同じだった。そのことに今更気がついた。気がついたら叫んでいたよ。

「え?」

「あきらめないでください!」

「ええ!?」

「真剣な恋を見つけましょう!大丈夫です!私が保証します!!」

「急にどうしたんだよ!?」

「たった今、先輩には幸せになって貰いたいと思ったんです」

「ええ……?」


……というのが数カ月前の話




――――――――――
それから先輩とは友達の距離を保ちつつ付き合っていた。……そのはずだ。うん、多分、きっと。事件が起こったのは先輩の家に遊びに行ったときだった。

「――俺と付き合ってくれない?」

「え?」

先輩に告白されてしまったのだ。
最初の作戦通りだったらここで『ざ〜んねん、僕男の子だよ?』と言うつもりだった。しかし今は違う。
本当は先輩に同情した時点で離れるべきだったのだ。しかし僕は性別を偽ったまま近づいてしまった。そうでなくても本当の性別を告白するチャンスは何回もあったはずだったんだ。単純に、先輩と遊ぶのは楽しかった。もう少し一緒にいたいと思ってしまった。それが最悪のタイミングでネタばらしをする羽目になるなんて……
いや、ここは素直に謝ろう。ここは逃げちゃだめだ。

「あのですね、先輩――」




――とまぁ、そんなことがあって最初のホモパートに入るわけだ。僕はホモじゃないけど。あれから全てを先輩に話して、色々と燃え上がって、翌日の朝に僕はアルプ化していたわけだけれども、不思議なことに股間の汚いバベルの塔は残されたままだった。先輩は『あった方が興奮する』と言っていたので良しとするが、僕としてはえらく中途半端な気分だ。特にミニスカートを穿いているときに勃ってしまうと、一切隠せないのが困る。

さて、僕の話に長々と付き合ってくれてありがとう。特にオチはなくて申し訳ない。僕も婚約者との出会いを誰かに話したかったんだ。このサイトには多くの魔物娘のノロケ話が書かれていると聞いたから、僕も倣ってみた。出会いが無くて困っている人がいたら、あえて同性に抱かれてみるのもアリかもしれないぞ。僕の話はこれでおしまい。それじゃあ、またいつか会えたら。



















――――――――――
「西園寺せんぱ〜い!」

先輩と腕を組んで歩いていると後ろから声が聞こえた。
……元彼女の声だ。

「次の土曜日ぃ、合コンがあるんですよぉ〜。どうです?先輩好みの人も連れてきますよぉ〜」

こんな声初めて聞いたわ。そうか、好みの男性の前ではこう話すのか。初めて知った元彼女の一面に意外とショックは受けなかった。

「いや、婚約者ができたからな。遠慮しておくよ」

振り返りながら先輩は僕を抱き寄せた。

「え”!? あ、あんた……!?」

元彼女は僕を見て潰れたカエルのような声で驚く。

「西園寺先輩!こいつ男ですよ!?なんで?」

「好きになった人がたまたま男だっただけだ。それに今は……」

先輩が僕の胸をつかむ。

「んっ」

うっかり感じてしまったが、僕はホモじゃない。

「女の子だもんな?」

「……はい」

耳元で囁かれてうっとりとしてしまったが僕はホモじゃない。

「そ……そんな!嘘よ!嘘よぉぉぉぉぉぉォォォォ!!!」

元彼女は叫びながら何処かへ走っていく。
それを呆然と見送る僕たち。

「あの、先輩?」

「あの子、君の元彼女なんだって?」

唐突に先輩が質問をする。

「え、はい」

あの、先輩。目つきがこわいですよ?

「ごめん、少し嫉妬しちゃったみたいだ」

まだ身体を抱き寄せられたままの状態だ。
鋭い目つきの先輩の顔が近づいてくる。

「え、え?」

唇が近づくことに妙な期待をしてしまうが、
それでも、
それでも僕は、




僕はホモじゃない!

18/08/10 01:08更新 / 幼馴染が負け属性とか言った奴出てこいよ!ブッ○してやる!

■作者メッセージ
本当は濃厚なホモパートを書きたくて話を作り始めたのに、投稿する段階になって日和ってカットしました。僕はホモじゃないです。

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