連載小説
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無垢な蕾

 羞恥に染まったリリの言葉に礼慈はなんと返したら良いのか迷った。
 その間にリリは泣き出しそうになりながら礼慈に謝ってくる。

「ごめんなさい。わたし……おしっこはもう出ないと思ったのに……レイジお兄さまにかかってませんか?」
「……あー、違う」

 勘違いしたままというのもかわいそうだ。礼慈はリリに待つよう促し、鼻声で「はい」と頷くリリに、勝手に本棚に戻っていった本を睨みつけながら言う。

「それはたぶんあの本のせいで出てきたもので、もっと言うとそのおもらしはリリが思ってるおもらしとは別のものだ」
「そう、なんですか?」
「ヌルヌルするって言ったな」
「はい」
「おしっこはもっとサラサラしてないか?」
「えっと、わたし、さいごにおもらししてから、その、何年もたっているので……さわったことはないですし」
(それもそうか……)

 見たところリリも中学年以上だ。おもらしとはしばらく無縁の生活を送っていたに違いない。
 あまり迂遠な言い回しをしても不安が長引くだけだろう。

「リリの股がぬるぬるするのはな。本の中の狐が垂らしていたものと同じものなんだ」
「本の中のヒトと同じ……?」
「そう。だからおしっこじゃない。そこは心配しなくてもいい」
「本当ですか?」

 潤んだ常磐の瞳が妖しく光って問いかけてくる。
 その輝きに背筋がゾクリとするものを感じながら、礼慈は居心地悪そうにもぞもぞしているリリに言う。

「いつまでもぬるぬるしているのは気持ち悪いだろう。パンツ、脱いだほうがいいかもな」

 口に出してそう言った瞬間。女の子に自分は何を言ってるんだと内心で舌打ちする。
 が、リリは余程気持ち悪かったのか、薄ら寒いほど素直にスカートの中に手を入れてパンツをずり下ろした。

 手を突っ込んだことでスカートがめくれ、青と白のストライプのパンツが白いオーバーニーソックスの上に下りてくる。
 ふわりと、焼き菓子に蜜をかけたような甘い匂いが漂った。

 礼慈は思わず深く息を吸った。
 ずり下ろされたことで裏返っているパンツは股下部分が広範囲で濡れている。それ以外にもクロッチの辺りに黄色の染みがあった。
 相当我慢させてしまったのだろう。

「あの、あんまり見ないでください……」
「とりあえずパンツを脱がせるから少し我慢だ」
「はい……でも、少し……その……きたないです」

 思い切りよく脱いだが、恥ずかしいものは恥ずかしいのか、リリが顔をパンツから背けながら言う。
 礼慈は「そんなことない」と脚から抜きさったパンツに触れた。

「あ、あの……」
「まあ見ているんだ」

 人差し指でクロッチの辺りを押し揉んでから離すと、指先にパンツに染み込んでいた液体が付いて粘液の糸が指先との間に繋がった。

「……?」

 それが何なのか分かっていないらしいリリに、今度は人差し指と親指の間に糸を引いて見せてやる。

「ねばねば……わたし、はじめて出ました。これが……あの本の中のヒトが出していたもの?」
「そうだ」

 頷き返しながら、礼慈は指に架かる橋を眺める。
 輝く銀糸は蠱惑的に魔力灯の光を照り返して礼慈の目を愉しませて、だから次のリリの言葉に対してその意味を考えるのではなく、答えだけを素直に思案することになった。

「でもわたし、おまた、いじってません……それに、それは……何ですか?」

 なんと伝えたものだろうか。こちらの世界では正しい名称があったはずだが思い出せないし、向こうではどうなっているのか分からない。ここはむしろ俗な表現の方が意味合いを伝えやすいとぼんやりした頭は判断し、そのまま口は回答を吐いた。

「それはな、愛液という」
「アイエキ?」
「愛情の愛に水とかを意味する液体の液と書いてな……ああ、上手く伝えられないが」

 数瞬悩み、結局直截な表現をすることにした。

「エロい気分になった時に、出てくるものだ」
「エロい……ですか……? わたし、おまたからおしっこじゃないのってはじめて出ました」
「ああ、愛液が出てきてるのはそっちじゃないんだ」
「え?」
「おしっこの穴の、もっとお尻側。お尻の穴との間にもう一つ穴があるだろ。愛液はそこから出てくる」
「あ、あのお姉さんもそうだったかもしれないです」

 リリは最後はモザイクがなくなった状態のものを見ていたようだった。はっきりと画が浮かんでいるのだろう。

「わたし、やっぱりこれまでこちらの穴から何か出たこと、ないです」

 ということは初潮もまだということになる。そんな子にエロ本を見せたことになんとも言えない笑いが浮かんできた。

「でも、お母さまがここは大切なところだって教えてくれました」
「そうだな。大事な所だ」
「でも、どう大事にすればいいのかわからないです」
「男にはそれがないからなんとも言えないが、きれいに洗っておくだけでいいんだろう……と、思う」
「お母様もそうおっしゃってました。あんまり見たことはないですけど、きれいに洗えてるはず、です」
「じゃあ大丈夫だ」

 リリの母親が言っていたことと同じことを言ったのなら、トンチンカンな発言ではなかったということだろう。
 一安心だと礼慈が思っていると、リリは困ったように続けた。

「あの、おまたからのあいえきが止まらないです……ずっとこのままなんでしょうか……?」
「俺も詳しく知っているわけじゃないからなあ……」
「自分でなんとかしようとしても止められないんです……それに、なにかおまたのあたりがムズムズして、出てくるアイエキもふえたみたいで、すごく、あの……変です」

 制御が利かない自分の体をどうしたらいいか分からないと訴えるリリに、礼慈もなんと答えたものか返答に窮する。

「エロい気分じゃなくなれば自然と収まる……とは思う」

 迷った末、また直截に返すとリリは首を傾げた。

「エロい気分って、なんですか?」
(そこから分からないか……)

 礼慈としてはいつの頃からか自然と理解していた感覚だけに、リリの返答には愕然とした。
 アリスという種族は性的な体験の記憶を失うという。仮にこれまでにそういう気分になることがあったとしても、記憶していないということだろうか?

「さっきの本を読んで何かを感じたのなら、それがエロい気分だな。今の“ムズムズしている”もエロい――エッチな気分にあたるはずだ」
「そうなんですか……なんか、落ち着かないです。なんでこんな感じになるんでしょう?」

 どこか夢心地のような声でリリが言う。

「……本能? 子供を作って子孫を残したいから……か?」

 言ってから、まだ初潮が来てない子は体ができていないらしいから、それは当てはまらないかもしれないとも思う。
 どうがんばって考えてみたところで、性交渉の経験も子を育てた経験もない礼慈では、自分で納得できるような答えは出てこなかった。

 結局疑問符混じりの答えでお茶を濁すしかない礼慈に、リリは納得したような、分からないようなそんな表情で呟いた。

「子供……赤ちゃん……レイジお兄さまと?」

 リリの言葉はやけに重く響いた。

「いや、別に今この場でどうこうという話じゃない。
 言い方が悪かった。そうなったからって必ず子供を作れというわけじゃないんだ。ただ、子供を作るための体の準備運動のようなもので、その時じゃないのなら収まるまで待つなり、自分で慰めるなりすればいい」
「そうなんですか……」

 咄嗟に出てきた諭すような言葉に頷くリリがどことなく残念そうに見えるのは、危ない考えだと思う。

(……危ない?)

 そう、危ないのだ。今、この状況は。
 何とかしなくては、と危機感のもと走り出した思考は、

「レイジお兄さま。止まらないです……自分でなぐさめ? ないといけないでしょうか」

 より優先順位が高いリリの質問への回答のために後回しにされる。

(……そうだな……)

 時間的にはそろそろ本格的に帰らなくては、山を降りた頃には辺りが真っ暗という事態になりかねない。いくら丘程度の緩い山だとはいっても、山道からは外れているため暗い中での移動は危険がついて回る。
 だが、魔物たちの発情に伴う愛液の湧出がいつまで続くのかは分からない。
 そうなってくると、自分で処理をしてもらうのが一番良い考えに思えてきた。

「そうしてもらえるか? やり方はさっきの本に書いてあった通りにしてくれればいい、か、ら……」

 棚を見ると、例の本の姿が消えていた。
 あの本についてはもう深く考えるのはやめようと礼慈は思う。

「あの、わたし、はじめの方はよく見えてなかったので……よく分からないです」 

 リリからそんな申し出があった。
 そういえば、自分の性器をよく見てみたことはないようなことも言っていた。
 簡易的な図も写真と共に示されていたが、あの図だけでは理解できなかったのだろう。

(まあ、体の方が発情しているのなら、適当にいじるだけでもイくことはできるだろう)

 考え方としてはそれでいいはずだ。
 あの写真のことを思い浮かべながら性器周辺をマッサージするように指示をしようとすると、リリが懇願するように口を開いた。

「ですから! あの、レイジお兄さまに、お願いしても、いいですか?」
(いいですかって……)

 彼女のお願いなのだから、彼女のソコに手を出してもかまわないだろうという思いが強く湧いてきて、礼慈は動きかけた体を止めた。
 状況に順応しつつあった頭に混乱が舞い戻る。

(なんだ? おかしくないか? この考えは正しいのか?)

 アルコールを摂取し過ぎたためか、思考するために必要な脳の回線の内のどれかが溶け落ちてしまっているような、そんな違和感を得て、礼慈は答えを返せずにいた。
 意を決してしたお願いに返事がなかったためか、リリが恐恐と言う。

「すみません、きたないですよね。こんなところ」
「そんなことはない」

 思いの外鋭い語調で言ってしまった。それを取り繕うために、礼慈は咄嗟に続けた。

「俺も初めてだから、うまくできるか心配だったんだ」
「お兄さまにでしたら、どうされてもだいじょうぶだと、わたしは思います。ふしぎですけど。そんな気がするんです……あの、ですから」

 リリはスカートをたくし上げた。

「よろしくおねがいします」

 思い切りよく尻尾が尻尾穴から抜けるまでたくし上げられたスカート。それに覆われていた下半身が晒され、洞窟の薄明かりに陰影を帯びて浮かび上がった。

 腿を伝う愛液の軌跡が光り、その源泉であるつるんとした陰部が殊更に白く浮かび上がっていた。
 幻のようなその綺麗さを、しかし彼女から漂う香りが現実のものであると知らせてくる。
 それと同時に、この香りが香水の類などではなく、彼女自身の香りなのだと理解が及んだ。

 スカートという覆いを取り去ったからか、彼女の甘い香りは洞窟の湿気を含んだ冷たい空気を圧倒して、危機感を麻痺させる程に濃密に礼慈を包んでいた。
 神聖不可侵にして犯されざる聖域そのものであるかのような閉じた陰部からまた一筋愛液が銀糸を引いて落ちていく。

 閉じたそこは潤み、触れられることを望んでいるかのようだ。
 自分のうかつな発言で、リリはその気になってしまった。責任を取らなければリリが可哀相だ。
 礼慈は僅かな距離にあるリリの細い腰を掴んで引き寄せた。

「わ」

 驚きの声を上げた軽い体は、緊張に身を固めはしたものの抵抗することはなく、礼慈の傍まで引き寄せられてくる。
 眼前に迫る少女の匂いに惹かれるように、それまで何故か目を逸し気味にして直視しないようにしていたそこを、礼慈ははっきりと視界に収めた。

 あふれ出た愛液で湿した陰唇は、早くなりつつある呼吸ゆえか、ぴくぴくと動く下腹からの動きの先端でひくついていた。
 ぴったりと閉じているそこは清雅な印象を刻みつけてくるのに、戸惑ったようにこぼれる愛液がその印象を強烈な背徳へと塗り替えていく。

「じゃあ、するからそのままで」

 乾いた声がリリに聞き取ることができただろうか。
 礼慈は落ちていく銀糸をすくい取ってリリの閉じ合わされた下の唇を二本の指でこじ開けた。

「んぅ?!」

 グチュリという大きな水音が響き、閉じていた唇はあっさりと開かれる。リリの、これまで誰にも晒されたことのない――本人にするらほとんどその全容を見せたことがないであろう陰裂の奥――外陰部を目の前にして、礼慈は神性すら感じていた。

 ぎこちない動きで膣口がひくりと動き、愛液が垂れる。それは陰部をくつろげる礼慈の指間部に一瞬留まって掌に伝っていった。
 陰部の上端には包皮に包まれた陰核がある。そこも、礼慈の膝の上でもぞついたためか愛液に濡れていた。

「…………」

 鑑賞することに心を奪われていた礼慈に下腹部を押し付けるようにリリが動く。
 それに急かされるように、礼慈は小刻みに震える指をリリの陰核上端に押し付けた。

「ひんっ!」

 小鳥の鳴き声のような悲鳴が聞こえてリリの脚が内股に閉じられる。

(慣れていない者や、人間は包皮に包んだままでいいんだったな)

 リリに言ったように、礼慈としても女性の陰部を目にしていじるなど初めてのことだ。先程見たエロ本の内容を思い出しながらの動きはあまり上手いものではないだろう。だが、リリの反応を見る限りではファーストタッチはそう悪い感触ではなさそうだった。

 掌がリリの腿に包まれる感覚を心地よいと感じながら、礼慈は包皮ごと陰核を優しく捏ねるような動きを続けた。

「ぇあ? これ、なん! わた、し! お兄さまっ」

 軽く、撫でるような動きで行われる愛撫に、リリはいちいち憐れなくらいに反応を示した。
 脚が生まれたての子鹿のように揺れ、湧き出る愛液の量が目に見えて増えていく。
 そんな、彼女の身体の一部であることを証明するかのように素直な反応を返す陰部を夢中でこすり続けた礼慈は、リリの声が高くなっていることに気付かなかった。

「あ、あ、ぁっ!」

 スカートを持ち上げ続けることもできなくなったリリの手から離れた布が礼慈の頭に被さってきて、少女の局部との間で顔が包まれる。リリの熱気と、不意に濃密になった匂いの中で残った思考力も殴り飛ばされた礼慈は、指を伝って滴っていく少女の愛液に強烈な渇望を覚えた。

(ほしい)

 そんな言葉が頭に浮かんだ次の瞬間には、礼慈はリリの陰部に口をつけていた。

「――ッ!」

 息を呑もうとしてのどを空気がかすめたような高音が布地を通したくぐもった状態で頭上から聞こえる。
 簡単に覆い隠してしまえるほど小さなそこは、内部からの熱を礼慈の口に伝えてきた。
 指で弄っていた場所に上唇を当てて擦るようにすると、リリの声が更に一音上がって礼慈の腕を挟んでいる太ももがガクガクと震えた。

 それと同時に口の中にリリの愛液がこれまでのだらだらと流れるのとは違う、とぷん、という拍子でもって注がれてきた。

 上等な果実酒を更に煮詰めたような深い甘さが口の中一杯に広がり、溢れそうになるそれを反射的に嚥下する。
 喉へと落ちていく身体を熱くさせる液体は、しかしアルコールのように喉を焼くような刺激を与えてくることはなく、ただ自然に、水か何かのように、だが確かに粘性のある液体として胃へと下っていく。

 それが通り抜けた後は体組織が芯から潤うような、これまで感じたことがない心地よい感覚があった。
 味覚と嗅覚を通して見る夢のような一瞬が過ぎた時、脚を震わせていたリリがバランスを崩した。

「――っ」

 陰部をくつろげていた手を彼女の腰を支えるように回して支えてやると、リリはなんとか立っていようとするのか、礼慈の頭に手を置いて身を支えようとした。しかし脚の力は萎えていて、とても立ち続けられるような状態ではない。

 更に悪いことに、リリは「ご、ごめんなさいお兄さま……っ」と支えにしていた礼慈の頭を押しのけるように放してしまった。

「――ぁ」

 夢心地の中に居た礼慈では、リリの弱い力にも対抗できず、彼女にされるがままに押しのけられてしまう。
 リリは礼慈を突き放した反動のままに後方に倒れそうになり――礼慈が頭から倒れることがないようにと華奢な腕をなんとか掴んで自分が倒れるようにして彼女を引っぱった。

「大丈夫、か……?」

 自分の側に倒れてくるリリを仰向けに倒れながら膝で受け止める形になった礼慈は、夢の心地から抜け出せないままに尋ねる。
 対してリリは、難儀そうに礼慈の膝の上で顔だけ上げると、こちらもどこか意識がおぼつかないような口調で言う。

「だいじょ、ぶです……わたし、へんです……レイジお兄さまにきたないところ、さわってもらいたくなって、口もつけてもらって……うれしくて……」
「汚くなんてない。すごく綺麗だった……」

 そう口にしてから、自分の発言はどこかおかしいのではないかと思うが、リリの身体に美術品もかくやという美しさがあるのは間違いない。

(なら、問題ないか……)

 ならばと感想を続ける。

「味だってこれまで味わったことのない最高のものだった」

 これだけを糧にして今後生きていけそうなほど、衝撃的な味だったことを思い返していると、リリは恥じ入るように顔を俯けた。
 と、「あ」と何かに気付いたような声がする。
「リリ?」

 尋ねると、リリはこんなことをぼんやりと口にした。

「なんだか……ふしぎな匂いがします」

 そして彼女は礼慈の股間に――そこでズボンを押し上げている陰茎に触れた。

「――リリっ」

 あの本に触れてからここに至るまでに徐々に張り詰めていったそれは、礼慈がこれまで体験したことが無いほどに肥大化していた。

 そんな状態のそこにリリの細い指が触れた。
 衣服越しだというのに、それだけで礼慈は暴発してしまいそうになる。腰を折って前かがみになりなんとか射精欲を押しとどめていると、リリが礼慈を見上げた。

「あの、わたし、何かいけないことを……」

 不安がっている彼女の頭を撫でながら礼慈は答える。

「いや、大丈夫。今、ここが腫れてて……敏感なだけだ」

 すると、リリが慌てた声で言った。

「それなら早く楽にしてあげないと」
「いや、待――」

 礼慈が言い終わる前に、リリは礼慈のズボンのファスナーを開けていた。
 ためらいなく突っ込んだ手でトランクスの前開きをずらして陰茎を露出させたリリは、絶景でも見たかのように「わぁ」と声をこぼした。

「あの、すごくおっきいです。これおちんちんですよ、ね?」

 リリの桜のような唇から出た言葉に礼慈は動揺する。

「あ、ああ」

 窮屈な所から解放されたことと、リリの小さな手に掴まれながら、彼女の吐息が当たる程近くで見つめられていることに、陰茎は意思とは関係なく震えてしまっていた。

「こんなに大きくはれて、ビクビクしてます……いたくないですか?」

 心の底から心配そうに訊かれてしまい、礼慈の中に罪悪感が湧いてくる。

「大丈夫。リリの愛液と一緒で、エッチな気分になったからこうなっただけだ」
「エッチ……レイジお兄さまはエッチなんですね

 そういう気分になっているが、それを認めるのは危険だと、礼慈の中でドロドロに溶け落ちた理性が最後の警鐘を鳴らす。

「あ、おちんちんから何か出てきました」
「――」

 指摘された陰茎が震えて雫を零す。
 新たな一滴がこれまで陰茎を濡らしてトランクスに染み込んでいた流れに加わった。

「あの、これ、もしかしてわたしの、アイエキと同じですか?」
「似たようなもの、だな」

 リリは「じゃあ」と陰茎を伝う雫に指を這わせた。

「――?!」

 その刺激で陰茎の先からまた先走りが漏れてきた。
 指先だけの軽い刺激が、信じられないほどの快感になる。

(魔物の指先だからか?)

 礼慈が快感の声を必死に抑え込んでいる間に、リリはニチニチと音を立てて手に先走りを絡めて竿の刺激を続けた。

「――っ」

 手とは思えない、きめが細かく質の高い繊維のような滑らかな感触に、礼慈の口から抑えきれなくなった呻きが漏れる。

「え、あ、いたかったですか?」

 そんな声に首を横に振って応じるしかない。すると、リリは礼慈の顔を伺うようにして言う。

「わたしと同じなら……あの、なでなですればいいんですよね?」
「あ、ああ……」

 呻き声なのか肯定の声なのか発した自分でも分からなくなっている礼慈に、だがリリは得るものがあったのか、決意を定めたような表情で言った。

「リリがしっかりレイジお兄さまにお返しをさせていただきますね」

 そう言うと、リリは陰茎全体を撫で回す両手の動きを早めた。
 滑らかな感触がぎこちなく、だが熱心に逸物を刺激し、礼慈は息を詰める。リリは礼慈に目をやりながら全体をやわやわと揉み込み、満を持して、といった表情で鈴口に指先を触れた。

「――ッ」

 玉になっていた追加の一滴を押し潰しながら指先が鈴口に沈み込んだ瞬間、陰茎の脈動が激しくなり、尿道をとめどなく先走りが流れだした。

 湧き出るそれを搾り、ほじり出すように片手で竿を扱き上げて残る手で鈴口をぐりぐり捻っていたリリ。彼女は、全体に触れて刺激した結果、先端部分が一番敏感であることに気付いたようで亀頭部分を集中的にいじる動きにシフトしていった。

「――――っあ、っと、待――!」

 亀頭全体を小さな両手で握り込んで捻られるような動きに、快感よりもただ単純に刺激、と分類される種類の感覚を得た礼慈は悲鳴のような声をこぼす。リリは慌てて手を離して、

「あ、ごめんなさい! いたいですか?」
「……、あ、ああ。いや――これは、ちょっと強すぎるけど、痛くはないよ」

 言うと、リリは「それじゃあ」と先程までのやわやわとした触り方に戻った。

「レイジお兄さまがやってくれたみたいに、ゆっくり、やさしくしてみます」

(ああ、だからお返しか……)

 それに対してなんと言葉を返したものか言葉が出てこず、リリに触られるままに礼慈は陰茎を震わせた。
 こんなことになっているのはおかしいはずなのにそれをおかしいと認識できても実感に結びつかない。そんな奇妙な触れ合いをお互いに無言で続けていると、リリの様子が少しずつ変わってきた。

 呼吸が深いものになり、礼慈の反応を伺うようにしていた目がどこか虚空を見つめているかのように焦点を合わせなくなる。
 ゆっくりと体勢を崩して礼慈の膝に寝そべる格好になったリリは、不意に眼前に聳える形になっていた陰茎を舐め上げた。

「――っ」

 礼慈の腰がビクン、と跳ねる。
 その反応を心配ではなく嬉の表情で受け取ったリリは、小さなピンク色の舌で何度も陰茎舐めた。

 自分の劣情が滾るモノが舌で丁寧に舐られていくことに明確な快感を感じて、陰茎から先走りがこぼれていく。

 陰茎を伝っていく先走りを全て拭うように丁寧かつ夢中で竿を舐め取ったリリは、辿り着いた鈴口に舌の先端をちょんと付けて、漏れ出したばかりの先走りを掬い取った。

 鈴口から糸を引いて顔を上げると、リリは息継ぎするように大きく口を開いて――そのまま口の中に陰茎をほおばる。

「――――ッ!」

 瞬間。陰茎が未知の温かさに包まれた。

 実際にリリの小さな口が含むことができたのは亀頭部分だけだったが、まるで勃起した陰茎全体を口の中に含まれたかのような錯覚をおぼえた。
 狙っているのかいないのか、リリのぷにぷにした唇がカリ首を引っ掛けて刺激しており、口に含みきれない竿にはきめ細かな手が絡みついていた。

 これまでの自分の限界を超えるような勃起を相手にするにはどう考えても小さすぎる口と手で、リリは精一杯腫れた患部を慰めようとしていた。

「――り、り……ッ」

 僅かな動きで与えられる刺激にも汗をかきながら、礼慈は絞り出すような声で呼びかける。
 リリは口に亀頭を含んだまま、「おにいひゃまもひてくれまひた」と言う。
 
 その動きで、あらゆる刺激を味わおうとしようとしているかのように鋭敏になっている先端に歯が当たる。

「歯、は、当てないよ……うっ、に!」
「ふぁい、ごめんなふぁい」

 また歯が竿を掠める。痛みよりもむず痒さを感じた陰茎がビクンと跳ねると、舌の正中線に沿って収まっていた亀頭が口蓋を打つ。

「ンむ――――」

 跳ねた陰茎に驚いた声を上げたリリが、口の中で暴れるそれを抑え込もうとするかのように竿を握る両手に力を込めて頭を下げてきた。

 顔がより股間に近づいて、より深くリリの口腔へと陰茎が侵入する。

 より深く彼女の中に入れたことに礼慈は満足感を得て――直後、リリがストローから飲み物を飲むように陰茎を吸いたてた。

「――――――ッ!!」

 類似の感覚を味わったことのない陰茎に押し寄せた衝撃は、亀頭を直接手で擦られるよりも強烈なものだった。
 温もりに包まれて満足感を得た直後のそれは快感として認識され、状況を処理しきれなくなっていた礼慈は、射精欲が促すままに少女の口の中へと放出した。

「――――っぐ!」
「――んむ?! ん、――っぷぁ……っ!」

 最初の脈動で喉に向かって放たれた精に驚いたのか、リリは口を離してしまった。結果、長い一度目の脈動の後に訪れた二度目の吐精は、リリの顔に放たれる形になる。

「ん、ぁっ……っ……」

 リリの顔と髪を汚しながら脈動は更に続く。陰茎が震えるたびに尿道に鋭い快感が走り、高い粘度の精液が可憐な少女を白濁で汚していく。

 その光景に、礼慈は背筋にゾクりと震えを感じた。

 射精が終わって陰茎が名残惜しそうに震えるだけになった後、リリは両手で陰茎を掴んだ。
 そうしたまま、息を詰めてふるふると体を震わせている。
 いきなり綺麗な顔や髪を汚されて怒っただろうかと思い声をかけようとすると、リリの喉がこくん、と嚥下の動きを見せた。

「ん、っく……」

 少し苦しそうに喉に絡んだものを飲み下すように喉の動きを繰り返すと、リリは俯き、一層身を縮めて震えた。
 やがてほう、と息を吐くと陰茎に目を向け、それから礼慈を見上げた。

「あつかった、です……お兄さま、これ、白い、おしっこ、ですか?」
「いや、これは……」
「あ」

 手の中で陰茎が小さくなっていることに初めて気付いたようにリリが呟いた。

「おちんちん。楽になったんですね。よかったぁ」

18/09/02 19:30更新 / コン
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