読切小説
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乳牛が相談だ♪

簡素な安物の衣服に身を包んだ男が山で薬草を取っている。
彼の名前はマルスコ・アウアイといい、腕が良いとはお世辞にも言えない医者ではあるが、この場所から近くの村では唯一の医者であるため村人は頼りにし、マルスコという名前を捩って『ヤブスコ』という愛称で彼のことを呼ぶ。

「お、あったあった」

目当ての薬草が見つかったのか、マルスコは屈むと毒々しい色をした一輪の花を取り、腰に吊るしてある小さな編籠へ。
その後も本当に薬草なのかと疑いたくなるような色をした草や花を摘みつつ山の中を歩いていたマルスコだったが、視線の先になにやらこんもりと盛り上がった布のようなモノを見つけ、訝しげながらも注意してその布の塊の様なものへ近づいた。
軽く足先で突いてその塊を刺激してみても大して反応は無く、何かの死体かと更に近づいて手に触れてみればその塊はまだ温かい。
指先で布の塊を捲るようにすると、そこから白と黒に斑に染まった毛と小さいながらも確りとした角がにょっきり捲れ出る。

「もしや!」

慌てて布を剥ぎ取っていくと、そこからは整った顔立ちを苦悶で歪めた一人のホルスタウロスの顔が。

「おい!大丈夫かい!?」
「お、おな……」

何かを言いたそうにしているホルスタウロスの口元に耳を寄せるマルスコ。
そしてホルスタウロスの口から蚊の鳴くような小さい声がマルスコの耳に届く。

「お腹すいた……」

その言葉と同時になった腹の虫の音にガックリとしたマルスコだったが、ホルスタウロスがその言葉を発して失神してしまったため、取り合えずマルスコは取り合えずこのホルスタウロスの状態を調べていき、彼女が直ちに危ないという状態では無い事を確信した後で、自分の家兼病院である場所へと走って向かっていった。



誰かの話し声が聞こえ、次に消毒液の匂いを感じたホルスタウロスが目を覚ました。

「頼まれていた薬。用法容量はきっちり守ってよ」
「ありがとうなヤブスコ。これで嫁をヒーヒー言わせることが出来るぜ!」
「ああそうだね、そうだといいな〜。じゃあ、お大事に〜」

誰かがそこから去りもう一人が自分のいる場所へ歩いてくるのを感じたホルスタウロスは、別に悪い事をしているわけではないのでそんな必要は無いのだが、思わずといった感じでどこかに隠れる場所が無いがあたりを見回す。
しかしながら整理整頓されている部屋の中には、ホルスタウロスの幼さが残る小さめの体躯でも、体を隠せる場所が何処にも見当たらない。

「ん? 起きたのかい?」

そう掛けられた声に振り向いたホルスタウロスが目にしたのは、ぼさぼさの髪に無精ひげを生やして白衣を着流すように身に着けた、いかにもヤブ医者といった風貌の長身の男――マルスコだった。

「はい、ごめんよ〜」

行き成り出くわした怪しい人物を見て混乱で固まっているホルスタウロスへ、マルスコは無遠慮に下目蓋を捲ってそこの血色を確認し、続いて額に手を当てて熱の程度を確認し、最後に腕を取って脈を診たマルスコは部屋を出るとそのまま何処かへ行ってしまった。
何をされたのか分かっていない様子のホルスタウロスは、寝かされていた診察台から降りようとして自分に掛かっていたシーツがずり落ちると、そこで自分が何も身に着けていない真っ裸だと理解すると、慌てて診察台に掛かっていたシーツを体に巻きつける。
丁度そこにマルスコが手になにやら良い匂いのするお椀と、綺麗に畳まれた衣服を持って戻ってきた。

「怪我とかの確認のために、あのボロ布は脱がしたよ。悪かったね」

マルスコに自分の体を調べられたと知ったホルスタウロスは、顔を真っ赤にて捲れそうになるシーツの胸と股間を押さえつけて必死に隠そうとしている。
少し考えるしぐさをしたマルスコだったが、何かを思いついたのか真剣な面持ちでホルスタウロスの顔を覗き込む。
マルスコの吊り上がり気味の目に射竦められたホルスタウロスは、急に居心地の悪さを感じてしまった。

「何処か痛い場所や、違和感を感じる場所はあるかい?」
「……」
「ん?? 喋れないのか?? ちょっと喉を拝見させて――」
「しゃべれる……」

マルスコに顎を掴まれそうになったホルスタウロスは、搾り出すような声色でマルスコに呟き、そしてそのお腹からは可愛らしい空腹の合図が。
ホルスタウロスが喋れる事を確認したマルスコは納得したのか、ホルスタウロスの寝ていた診察台の上に手に持っていたお椀と、着替えと思わしききちんと畳まれた服を載せた。

「じゃぁ俺は隣に居るから。それ食べて、それに着替えたら来てね」

それだけ告げたマルスコは、また部屋から出て行った。
そんなマルスコの慌しい様子に完全に置いてけぼりを食らったホルスタウロスだったが、お椀から立ち上る美味しそうな匂いにお腹がまた可愛らしく鳴ると、喉を一つ鳴らしてからお椀へ手を伸ばし匙で一救いして口へ。

「そうそう言い忘れてたけど、お代わりが欲しければ言ってね。ちゃんと用意するから」

ノックもせずに部屋のドアを開けてそれだけ言ってまた出て行ったマルスコに、ホルスタウロスはしばし匙を咥えたまま呆然とし、マルスコが再度ドアから出てくるのではとシーツをきっちりと巻き直してから、おずおずとお椀の中身を食べ始める。 
お椀の中に入っていたのは病人食らしい薄味のスープだったが、そこから立ち上る美味しい匂いに刺激されたのか、それとも食べ物を受け取った胃が喜んでいるからなのか、ホルスタウロスのお腹がまた鳴った。



スープを食べ終えて用意された服――マルスコが昔に着ていたと思われる短パンと大きめな上着を身に着けたホルスタウロスは、見た目だけなら何処にでも居そうな十代半ばの可愛らしい少女に変わっていた。しかしホルスタウロスらしい大き目の胸が張り出して上着を押し上げているために窮屈なのか、時折胸の辺りを引っ張って具合を直していた。
何度か服を調えてようやく良い感じになったのか、彼女はドアを少し開けてその先を伺うようにそっと覗くと、そこにはベンチと待ち受けだけがある待合室と思わしき空間が広がっており、マルスコは待ち受けにある椅子に腰掛けて何かの作業をしていた。

「あの〜……」

そのドアの隙間からホルスタウロスはマルスコに声を掛けると、マルスコは何処から声を掛けられているのか分からなかったのか回りを二・三度見渡して、ようやくといった感じでドアの隙間から覗いているホルスタウロスに目を向けた。

「入っておいで。それでどうしたのかな?スープのお代わりが欲しいのかな――ええっと……」

そこでようやくマルスコはホルスタウロスの名前を知らない事に気が付いたようで、なんと呼べばいいのか苦悩しているようだった。

「十九番」

そんなマルスコの様子に、部屋に入ってきたホルスタウロスは助け舟を出したつもりなのだろうが、急に数字を言われてもピンと来ないマルスコは逆に困惑を深めてしまう。

「十九??何のことだい?」
「僕の名前だよ」
「名前じゃなくて番号だろそれは」
「僕はそう呼ばれてたよ?」

まさか子沢山で名前をつけるのが面倒になったズボラな親が、適当につけた名前なのかと考えを巡らせたマルスコだったが、それ以外にもう一つだけ可能性のある事――むしろこちらの方が当たっているのではないかと思われる事を思い出した。

「もしかして君は反魔物領の出身なのかい?」
「反魔物領って何??」
「魔物娘を殺したり、奴隷のように扱っている場所って事」
「たぶん僕の居た場所はそいう場所だと思う」

やっぱりかと頭を抱えてしまうマルスコ。
ここから山を五つほど越えた場所には反魔物領の末端に位置する村があり、そこでは人間に従順で有益な魔物――ワーシープだとかホルスタウロスだとかを家畜として飼っている。
理由としては繁殖のための種は飼い主自身でこなせるので種用で無駄飯食らいの雄は要らず、そして大人しい気性である上に言葉が通じることで動かし易い魔物は、手間の面を考えれば従来の家畜より大変扱い易いし、しかも反魔物領内でも魔物から取れる畜産物は人気が高くて良い買い手が付き易いためだ。
つまりこの自分を番号で呼ぶホルスタウロスは、そこから逃げ出したか追い出されたかした元家畜だろう。
そう考えれば本来なら間延びしたようなほんわかした喋り方のホルスタウロスが、幼い子供が遣うような男言葉を喋るのにも納得がいく。
彼女らの見た目が人間の女性に近いからか、反魔物領で魔物で経営している畜産者の中には、稀に飼育している魔物が女言葉を使うのをことさらに嫌う者がおり、男言葉を強制することがあったりする。

「あー、なんか理由は予想がつくけど……どうして森の中で倒れていたんだい?」
「僕は牛なのにお乳が出ないんだ、だから処分されそうになってそれで……」
「まぁそんな事だろうとは思ってたんだけど……でも君ぐらい若いホルスタウロスのミルクが出なくなることは、ほぼないはずなんだけどなぁ」
「そこまで言うんだったら、試しに絞ってみようか?」

首を捻っているマルスコに対して証明しようと言うのか、十九番と名乗ったホルスタウロスはそうマルスコに提案をしてきた。

「本当に出ないとなると学術的に貴重な事例だからね。ここじゃ何だから、診察室で拝見させてもらおうかな」

二人して診察室に舞い戻り、ホルスタウロスはマルスコに見せるように上着の右半分を肩まで捲り上げて自分の右乳房を服から出すと、飛び出てきたホルスタウロスの乳房は一つが彼女の頭の大きさほどもあり、捲り上げたときに上着に引っかかったのか、胸がゆっさゆっさと揺れていた。
そんな健全な男なら生唾を飲み込むほどの衝撃的な光景だというのに、マルスコは医者特有の無味乾燥な視線で反応を返している。

「ねえ、容器か無い?」
「出ないんでしょ?」
「でも出たら、床びしゃびしゃになると思うけど良い?」

ホルスタウロスの言葉も一理あると思ったのか、マルスコはその場から立ち上がり棚から新品の病巣を入れるための金属製の箱を取り出すと、ホルスタウロスの前に設置してあげた。
そしてホルスタウロスは自分の両手を使って、ぎゅっぎゅっと力を入れて乳房を揉んで中にある筈のミルクを出そうとするが、ホルスタウロスの丘の天辺からは白い液体どころか汗すら出ない有様だった。
その後何度か試しても出る様子は無く、最後には両手を離してマルスコに対して『ほらね』と言いたげなホルスタウロス。

「ふむ。絞り方は悪くないと思うんだが……あ、触って良いかい?」

うっかりホルスタウロスの了承を取らないまま触ろうとして、慌ててマルスコは手を止めて彼女に確認を取った。
今日知ったばかりの男性に胸を触られる事に少し戸惑いがあったようだが、元家畜だからかそれともマルスコが医者だからか、最終的には許可を出してくれた。
許可が出たのでマルスコは遠慮無しにホルスタウロスの胸を手で丹念に触診していく。
乳腺の位置を指で軽く押し込んで違和感がないかを、次に下乳を救い上げるように持ち上げて張りと重量からミルクの溜まり具合の確認をした。
しかしそのどれもマルスコの得た知識の中では健康体に属するものであり、歳若いホルスタウロスがミルクが出ない原因が分からなかった。

「元飼い主に何か言われたりした?」
「胸に筋が走って気持ち悪い。乳首が無いから乳が取れないって言われた」

精神的なものかもしれないなと考えてそうな顔つきのマルスコだったが、ホルスタウロスが告げた場所を見ようとマルスコはまじまじと大きな乳房を観察する。
たしかに彼女が言ったように、色白の肌に浮き上がるように何か細長い虫が入っているかのような青白い筋――静脈が浮んでいる。だがこれはホルスタウロスという種族にとっては、むしろ乳の出が良い証拠であるのでむしろ良い点。乳が出ない理由にはならない。
そしてもう一つの問題点である乳首の方はといえば、ホルスタウロス特有の乳房から細く小さい指が飛び出てきたかと思うほどの大きさがある乳首の存在は、このホルスタウロスには無かった。
だがそれは病気や欠損ではなくいわゆる陥没乳首という彼女の体質であり、マルスコが指で触診した限りではちゃんと乳肉の先端に埋まるように乳首は存在している。
たしかにこのまま絞っていたのでは、ミルクの出が悪くなるのは致し方が無い。
しかしそれだけではミルクがまったく出ないという問題の決定打とはいえず、マルスコにとっては何処をどう考えても乳が出るはずなのだから不思議でしょうがなかった。

「うーんと、牧場に居たのならありえない事だと思うけど……君は種付けとか性行為とかはした経験あるよね?」
「……僕には無い」

少し考えるようだったホルスタウロスがそう断言する。『には』ということは彼女以外のホルスタウロスは、ちゃんと飼い主に種付けをされていたという意味だろうか。
そこまで来てついさっき彼女の元飼い主が、彼女の胸の青筋が気持ち悪いと言っていたという話の事をマルスコは思い出したようで、何か得心がいった表情を作って頷いている。
そうなれば後は治療だとばかりに、マルスコは治療法を見つけた医者らしく朗らかにホルスタウロスへ微笑んだ。

「理由がようやく分かったよ。じゃあちょっと実際に俺が絞ってみるからね」

マルスコはホルスタウロスの後ろに回り込むと、近くにあった清潔なタオルで軽くホルスタウロスの乳輪部分を拭き、そして両手を使ってホルスタウロスの右の片乳を両手で揉み込む様に動かしていく。
痛くもくすぐったくも無いのか表情を動かさないホルスタウロスは、それでもどこかマルスコの無駄な行為を眺めているような視線をマルスコの動く手に向けていた。
しかしそんな表情は約三分ほどマルスコが乳を揉み込むと段々と緩み始め、彼女の白い肌も血色が良くなって薄いピンク色に染まっていった。

「うーん、ホルスタウロスの乳搾りは初めてだから加減が分からないな……もしかしたら、ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね」

ずっと揉んでいて疲れたのか、マルスコは一旦手を離してストレッチしてから、今度はホルスタウロスの乳輪部分を右手だけで弄り始めた。
最初は乳輪の感度を確かめるように外周にそって指を這わせ、次に埋没してしまっている乳首を乳肉越しに刺激するように指先に力を入れて抓るように揉む。

「ぅんッ!――ん??」

自分の体に走ったモノとそれに釣られて口から漏れた声が不思議だったのか、ホルスタウロスは考えるように小首を傾げていた。
そんな性知識の無い可愛らしい様子にマルスコは軽く笑みを浮かべながらも、その手は休む事無く動く。

「良い兆候だよ。そのまま胸に意識を集中させていてね〜」
「う、うん、分かった……」

初めて味わった絶頂への片鱗にホルスタウロスは緊張した面持ちでマルスコへ返事を返す。
そんなこんなで胸の先端を抓るように一分間揉むと、マルスコの指には少しコリコリとした触感が感じることが出来るようになり、ホルスタウロスの胸の先端には僅かに乳首の先が出てきているのも見えてきた。

「じゃあ今度は引っ張るからね」
「うん?引っ張るって何を??」
「君の右乳首だけど?」
「だって僕の乳首は??」

本当に彼女は元飼い主に言われていた事を信じて自分の乳首が存在していないと思っていたのか、マルスコの言葉に首を傾げるばかりだ。
このまま押し問答してもしょうがないと思ったのか、マルスコはホルスタウロスの乳首の愛撫を右手で続けながら、左手の指でホルスタウロスの隆起し始めたきた乳首を掴むと、それをゆっくりと引き上げ始めた。

「あッン!――」

何時もは肉厚の乳房に守られ空気ですら触れた事の無いような無垢な乳首を直接指で掴まれたホルスタウロスは、思わず背中に力を入れて喉から声を出してしまう。
しかしマルスコはそんなホルスタウロスの様子に構う事無く、ゆっくりながらも容赦なく乳房から乳首をサルベージしていく。

「先生〜、僕なんか変な感じがするよぅ……」
「正常な反応ですから、安心してくださいね」

そんなやり取りをしている最中にマルスコの手によってホルスタウロスの乳首の根元が引き出されると、そこには立派にぴんっと隆起した乳首と性感で桜色に染まった右乳房が存在していた。
自分の乳房から無いと思っていた乳首が出てきたことに驚きながらも、マルスコの手の愛撫を乳房と乳首に受けたホルスタウロスは、本来ホルスタウロスが持つ緩い表情を取り戻したかのように、初めて身に受けた快感で目も口も蕩けて半開きになってしまっていた。

「さて、これからが本番だからね」
「まだぁ〜、続けるのぉ?」
「そりゃあこれは乳絞りだから、出るまで続けるさ」

ホルスタウロスの疑問に口でのその言葉と、乳首と胸へ両手を使った愛撫でマルスコは答えた。
乳房のいままで休業していた各場所に設置された母乳の生産工場といえる乳腺を、右手の指先と掌を使って丹念に刺激し揉み解しミルクの製造信号を発していく。
そしてその工場からの輸送ラインと射出口にあたる乳首とその周りの乳輪を、左手の親指と人差し指に多少力を込めて刺激して役割を思い出させるように開放していく。

「ふぁ、んぅぁ……はぅ、んッふぅ……」

やがてホルスタウロスの肌には汗が浮んでマルスコの手にしっとりと吸い付き、甘美な痺れを感じる体にはもう力が入らないのか体重を完全にマルスコへ預けてしまい、性感に蕩けている表情はより一層緩み口の端からは唾液が一筋漏れて顎を伝って胸の谷間に落ち込み、その瞳はマルスコから与えられる刺激に集中するためか中空を見つめていた。
そしてとうとうその時がやってくる。マルスコの左手指の間に挟まれた乳首からは、そこと乳腺とをつなぐラインが見事に開通した証である薄らと白い液体が珠となって浮かび上がってきた。

「なんか来ちゃう、なに、なにこれぇ!!」

このホルスタウロスが人生で初めて感じたであろう乳房が内から膨れる熱さと圧力に、ホルスタウロスは困惑の色を浮かべた表情をし、溺れる者が藁に縋るかのように後ろ手で自分の乳房を弄り回すマルスコの服を掴んだ。
マルスコはそんなホルスタウロスの行為を何も言わず受け入れると、乳絞りの仕上げとばかりに右手は大きな乳房を横から鷲掴み左手は乳首を指で摘むと、両手に力を全開で入れてぎゅうと形が分かるほどに掴み捻る。

――びゅうぅぅうううう!!
「ふぅううぁあ!!……ああ、僕の……僕の胸から、ミルクが……」

ホルスタウロスの乳首の先から迸った白い液体は、びしゃびしゃとマルスコが用意していた金属製の容器に当たると、その容器の底へと溜まっていく。
いままで一度も出していなかったからだろうか、それともマルスコが丁寧に乳絞りの準備をしたからか、その勢いは留まる事を知らずにどんどん容器へと溜まっていき、ようやくといった感じで止まったのはその容器の半分ほどまでに白い液体が詰まった後だった。

「よく頑張ったね。偉いよテーナ」
「てーなぁ??」

とつじょマルスコの口から出てきたその名称が何なのか分からないのか、ホルスタウロスは快感に痺れた口を動かしてマルスコに尋ねた。

「流石に十九番(ナインティーン)じゃ味気ないからね、十(テン)と九(ナイン)に分けてから頭を合わせて『テーナ』って呼ぶ事にしたんだけど」
「てーな…・・・テーナ……」

初めて聞いた番号ではない自分の名を口の上で確かめるように、言い馴れない自分の名前を舌の上で転がすように言葉に出すホルスタウロス。
何度も何度も同じ言葉を吟味するように繰り返しているホルスタウロスの様子に、マルスコは彼女がその呼び名を気に入っていないと勘違いしたようで、急に済まなそうな顔つきになった。

「やっぱり気に入らなかった?」
「ううん、気に入ったよ。僕はテーナ!テーナだ!!」

名を持って初めて人になるいうジパングの言葉があるらしいが、まさに今彼女は一匹の元家畜のホルスタウロスから、名を得た一人の魔物娘へと生まれ変わったのだった。
嬉しそうにテーナと自分の名前を何度も告げてくるホルスタウロスに、マルスコは気に入ってくれた事に喜びながらも何処かほっとした様子だった。

「そういえば先生。僕の名前がテーナだったら、先生の名前は何ていうの?」
「あれ?教えてなかったっけ??俺の名前はマルスコ。こんな風貌だし腕もそんなに良くないから、近くの村の人たちは『ヤブ医者のマルスコ』略して『ヤブスコ』って呼ぶけどね」

自傷気味にテーナにそう告げたマルスコは、何処か『ヤブスコ』と名乗るのに慣れた様子。
しかしテーナはそのマルスコの言葉を聞いて、なにやら考えている。

「ということは、マルスコって呼ぶ人は少ないんだね?」
「ああ、そうだね。俺以外にはマルスコって読んでくれる人は居ないね」

テーナの疑問にマルスコは余り誇らしいことではない事実をなんの臆面も無く答えた。
そんなマルスコの言葉にテーナは何かを思いついたような笑みを浮かべて背後にいるマルスコに横向きで抱きつくと、甘えるように彼の胸板とお腹に頬と柔らかい横胸を擦りつけ始めた。

「じゃぁ、僕が先生をマルスコって呼んであげる」
「ああ、ありがとう」

テーナの嬉しい申し出に、マルスコはテーナの頭を撫でて感謝の意を伝える。
そしてマルスコは頭を撫でている手とは反対の手でテーナの服を全部胸まで捲り上げると、陥没した先っぽから母乳を滲ませたテーナの左乳房を掴んだ。

「ああん!マルスコぉ、まだ日が高いよぅ〜」
「……何か勘違いしているようだから言っておくけど、逆の乳房の母乳を出そうとしているだけだよ?」
「むぅ……襲ってくれていいのに……」

その小さいテーナの呟きはマルスコに届かなかったようで、マルスコはテーナの右乳房にしたように左乳房にも刺激を与えて母乳を搾り出そうとし始める。
しかしもうすでにテーナの体が性感で温まっていたからか、それとも名前をくれたマルスコが揉んでいるからか、乳を揉まれたテーナの喘ぎ声の中、右乳房よりは遥かに簡単に左の勃起した乳首からの白い迸りが金属の容器に向かって放たれた。



初めての性感と搾乳を経験したからか、テーナは移された診察台の上でぐったりと横たわり、乳房の先っぽからはまだマルスコの愛撫の残り香で薄らとした白い液体の筋が豊満な乳房の横を流れて診察台の上へと流れ落ちている。
一方のマルスコは並々と注がれたテーナのホルスタウロスミルクをどうしようかと思案しているようで、何かの料理に使おうかしかし新品とはいえ病巣を入れる容器に入ったのはと口の中でブツブツと呟いていた。

「ねえ、マルスコ」
「ん?なんだいテーナ」
「僕、この病院で働かせてくれない?」

突然のテーナの申し出にマルスコは驚いたようで、目も口もあんぐりと大開になってしまった。

「駄目、かな?」
「駄目って言うより、ホルスタウロスは病院で働くのは無理がある気がするんだよね」
「むッ!マルスコも僕が役に立たない愚図って言いたいの!!?」

ホルスタウロスの存在意義の一つでもある搾乳を覚えさせてくれて、しかも名前まで名づけてくれた人から、元飼い主同様にひどい事を言われたと感じたテーナは憤然とした様子でマルスコにそう詰め寄った。
そんなテーナの様子に参ったなとマルスコは頬を掻くと、切開用の小刀を手に取ってそれでマルスコ自身の指を切って血を出させた。

「ま、マルスコ、何をしてるの!?」
「大丈夫。だけどやっぱり痛いなぁ……さて、実験だよテーナ。ちょっと俺のこの指を見ててね」

手でテーナを押し留めたマルスコは、テーナの目の前で血が流れる指を見せた。
最初は何をしているのか分からない様子のテーナだったがマルスコの血の赤を見続けると、段々とその目と表情に興奮の赤い色が浮び始め、マルスコの甘く痺れる愛撫の残り香が体を覆っている筈なのに、テーナの体の筋肉にはマルスコへ飛びかかろうとする力が込められていく。

「はい、終了!」
「――ハッ!?」

ぱくりと血の滴る指を自分の口に入れたマルスコに、血の赤が無くなり冷静になり自分がいま何をしようとしていたのか気が付いたテーナ。
血をなめ取ったマルスコは呆然とするテーナを横目で確認しつつ指の裂傷の手当てをする。

「テーナも判ったと思うけど、ホルスタウロスは血とかの赤いものを見ると暴走する危険性があるから、病院ではちょっとね……」
「やだあ!!僕はマルスコと同じ場所に居たいの! 暴走なんか絶対しないから、だから、だからぁ……」

やんわりとテーナの申し出を断ろうとしたマルスコに正面から抱きついたテーナは、マルスコを放さない様に腕に力を入れたまま乳房と額をマルスコに擦りつけながら嘆願し、マルスコの白衣にテーナの乳房から漏れ出た母乳が付き濡れ染みを拡げていく。
そんな必死なテーナの様子にマルスコは強い事を言う気を削がれてしまい、あれこれと考えを巡らせた様子の後で溜息を一つ吐いた。

「判ったよ。ここで働いてもいいよ」
「本当!?」

マルスコの言葉に胸を押し付けたまま上目遣いでマルスコの様子を確認するテーナの顔には、自分が無理を言っているという自覚からくる若干の不安が残っていた。
テーナのそんな表情を見て、マルスコは優しい笑顔を向けながらテーナの頭を丁寧に撫でていく。

「流石に怪我の治療とか血が大量に出る手術は無理だと思うけど、受付とか薬草取りとかテーナの出来そうな事はあるしね」
「マルスコ、ありがとう!」

嬉しそうにテーナはマルスコをきつく抱き寄せてホルスタウロスの愛情表現の一つである乳房の押し付けを行い、マルスコに彼女が感じている感謝の気持ちを伝えようとしている。
そこに運悪く診察室の扉を開けて入ってくる人物が一人。

「おいヤブスコ。お前に貰った薬、いま嫁さんとするときに服用したが、射精回数二ダースしか持たな……」

文句を言いつつ現れたのは、テーナが気を失っているときにマルスコに薬を貰っていった男だった。
乳房を服から出してせがむ様に押し付けている女に、その女に抱き寄せられてながらも頭を撫でているマルスコ。
何も事情を知らない人がこの状況を見れば、情事が始まる直前の光景にしか見えないことだろう。

「ご、ごゆっくり!!」

入ってきたその男もそう見えたのか、慌てて診察室の扉を閉めると一目散に病院から出て行った。
勘違いしている様子の男を一瞬だけ追いかけようとする素振りを見せたマルスコだったが、さっきの男が視界に入らなかったのか、テーナは相変わらず嬉しそうにマルスコに抱きついていた。

「まぁいいか……」
「えへ〜♪ マルスコ〜♪」

そのままテーナがホルスタウロス特有のその愛情表現に飽きるまで、二人はこの診察室の中で抱き合ったままだった。


11/10/28 20:16更新 / 中文字

■作者メッセージ
はいと言うわけでホルスタウロスのSSでした〜。

いやはや、巨乳を生かそうイカそうとする所為で、またSSが本番前で終わってしまった。

それでは次のSSでお会いしましょう。

陥没乳首は正義! 中文字でした〜。

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