戻る / 目次 / 次へ

お揚げをくださいな!

 さくさくと雪を踏みしめる。
 分厚い草鞋を履いていなければ冷たくて仕方がなかったに違いない。
 今も足の指先が冷たくて痛いのだから、草履草鞋の類では足が凍り付いてしまいそうだ。
 冷たい風が一つ吹けば体を縮め込んでしまう。
 降る雪は編み笠と蓑に積もっていく。
 はぁと息を吐くと白い息がふわぁと目の前に広がる。
 冬の山はとても寒くて、ずっと暖かい火鉢の傍でじっとしていたいくらい寒い。
 肌はチリチリと痛い。
 吸う空気は氷みたいで喉が痛くなる。
 母様は冬は世界が澄んでいて好きだと仰るけれど、とても私にはわからない。
 冬は熊を眠らせ、木々を眠らせるとても寂しくて辛い季節なのだと思う。

「うぅ、寒いよぉ」
 手に息を吹きかける。
 母様に比べると紅葉の様に小さな私の手は、白い息で温められる。
 何度か息を吹きかけるとじんわりと手が温まっていく。
 空を見上げる。
 日差しは分厚い雲に遮られていて、朝なのに暗い。
 そして灰色の空からは真っ白な雪がちらちらと降ってくる。
 雪は美味しいのかな?と思って、空を見上げたまま口を開けっ放しにする。
 ちらちらと降る雪が下の上に乗る。
 ほんの少しだけ冷たい雪は余韻だけ残して溶けた。
 あまり美味しくない。
「……。こんなことしてる場合じゃない。早くお使いを済ませて家に帰ろう」
 少しだけ自分の行いを振り返って恥ずかしくなったので、早足に雪で埋もれた山道を進んでいくことにした。


「はい、鮎の干物だよ」
「ありがとうございます」
「帰り道は気をつけるんだよ。今日も雪は止みそうにないからね」
「はい」
 おじさんから干物を受け取ると腰を折ってお辞儀をする。
 くん、と鼻を鳴らす。
 とてもいい匂いの干物の匂いが私の鼻を引くつかせる。
 いい匂いの干物の匂いだけでその味が私の口の中に広がる。
 何度も何度も噛み締めて口いっぱいに広がる、あの干物のふかいふかい味わいを思い起こす。
「はふぅ〜」
 とても幸せな気持ちになった。
 想像の中で何度も何度も干物を噛んで噛んでかみしめて、ごくんと空想の魚を飲み込む。
「はふぅ〜」
「ありゃりゃ、鈴様ったら」
 お魚、お魚〜。
 釣りたても美味しいし、干物にしても美味しいし、煮ても焼いても美味しい〜。
「おや、五十鈴様じゃあないか」
「母さん。起きてて大丈夫なのかい?」
「はへ?」
 ふと自分の名前が耳に入り、慌てて我を取り戻す。
 おじさんの隣には、いつの間にか優しそうに目を細めているおばあさんが立っていた。

 おじさんの名前は与作。
 おばあさんの名前はきよ。
 二人ともお魚売りを仕事にしている人たちで、いつもお世話になっている。
 私はお魚が大好きだけど、お魚を釣ることが出来ない。
 だからお魚を釣ってくれる与作おじさんは大好き。
 いつも砂糖菓子や煎餅をくれるきよも好きだけど、ちょっと大げさに構ってくれるので戸惑ってしまう。
 私はまだ母様みたいにりっぱじゃないから、ちょっとだけ困ってしまう。
「こんな雪の中お越しになって、さぞ寒かったでしょう。ささ、囲炉裏で暖まっていってください」
「いえ。母様が待っていますので、今日はこのまま帰ります」
 だからきよの誘いを丁重に断って、ばいばいと手を振って。
 最後にもう一度だけお辞儀をした。


 小雲村。
 冬の雪にすっぽり埋まってしまうこの小さな村は近くの村に比べて家の数が少ないけど、住んでいる人はもっと少ない。
 全員集めても30にも足りない。
 10年位前まではもっと沢山居たのだけど、若い人たちが戦や出稼ぎでいなくなってしまった。
 今この村に残っているのは、戦いが嫌いなおじさんたちと、出稼ぎに出る体力のない子供たちだけ。
 村の隣には小さな山があって、その山にはやっぱり小さな社がぽつんと建っている。
 私と母様はその社に住んでいて、時々村に降りてきてお話をしたりお祭りをしたりする。
 母様の名前は鈴音。
 私の名前は五十鈴。
 私たちは昔々から社の主として、山の守護者として村を守ってきた。
 ……私はまだ生まれたばかりだから、守護者見習いだけど。
「でもがんばるんだから」
 早く一人前になって母様の代わりが出来るくらいなるんだ。
 山のふもと、社へ案内する立て札のある坂道から村を振り返る。

 雪で白く染まった家々の屋根がぽつんぽつんと雪に浮かんで見える。
 どの家も、干した萱を数百本単位で束ねた物を幾つも並べて作り上げられた分厚い雪山の屋根。
 雪の重みで自然と雪が地面へと落ちるように急な角度で組み上げられている。
 厚い雪を踏んだような音がして視線を向けると、ちょうど重くなった雪が屋根から落ちていた。
 人が考えた知恵はすごい。
 雪かきをしなくてもいいように、雪で家が潰されないように工夫している。
 人の知恵と工夫が合わさった雪村の屋根を見て少し感動する。
 人の知恵といえば大福。
 あのふにふにとして甘くて美味しいお菓子を考える事が出来るのは本当に凄いと思う。
 つぶ餡はちょっと苦手だけど、おいしいから気にしない。
 お菓子といえば、他にも他にも〜。
「あ、鈴さまだ! 遊びに来たの?」
 感慨に浸っていると、後ろから遠慮のない子供の声が飛んできた。

 振り向いた先には満面の笑顔で駆け寄ってくる子供は私の知っている男の子。
 8年位前は小さい赤ん坊だった男の子。
「もう、せっかく感慨に浸っていたのに邪魔しないで」
「かんがいって、また食べ物の事考えていたんだろ」
「違うわ」
 つぃと視線を反らす。
「それとね、私は遊びに来たんじゃないの。母様のお使いに来たのよ」
 証拠はこれだと干物を見せる。
 ふわんとまた干物の芳ばしい匂いが私の鼻をくすぐる。
 あぁ、早く帰って食べないなぁ。
「そんなことよりさ、遊ぼうよ!」
「遊ぶって、あのね。今は雪が降っているでしょ。寒いし雪が溶けると濡れるから、家に入ってないといけないのよ」
「え〜、そんなぁ」
「大人はみんな家の中に入っているでしょ。見てわからない?」
 村中の家を指差す。
 どこもかしこも外で遊んでいる人なんていない。
 まぁ大人はみんな遊ばないで家の中で出来る仕事をしているんだと思うけど。
「じゃあ子供だから僕たちはいいんだ!」
「違うでしょ、ああ、もぅ。あと、私は子供じゃないの」
「え〜? 鈴さまって僕と背丈が同じくらいじゃないか」
 違う、ぜんぜん違う。
 私は妖怪だから人に比べて見た目の成長が遅いだけで、タケよりもずっとずっと年上なんだから。
「何度も言っているじゃない! 私は齢数百にして社の主たる…ああっ、こら! 干物を返しなさい!」
「へへ〜ん。取れるものならとってみろ〜!」
「待ちなさい! この悪戯坊主!」


 タケ。この小さな村で10年くらい前に生まれた、この村で一番若い村の住民。
 若い人たちは皆外に出てしまっているのでタケ以外にこの村には子供はいない。
 遊び相手がいないからいつもつまらなさそうにしている。
 だからこうして私が遊び相手になってあげている。
「はー、はー、疲れたぁ」
「ぜー、ぜー。やっと捕まえた」
 私とタケは二人とも雪の上で寝転がっている。
 走り回って熱くなった体に雪は冷たくて気持ちがいい。
 タケはおかしそうに笑っていて、私もなんだか楽しくて笑ってしまう。
「ねぇ、鈴さま」
「なに?」
「鈴さまって、狐なの?」
 ぴくんと、頭から生えている耳が反応する。
 雪を撫でるように尻尾が動く。
「狐じゃないわよ。私は稲荷。れっきとした妖怪よ」
 ふさふさの尻尾と三角耳のある妖怪。
 夕山神社に住む紅毛稲荷の一人娘。
 いずれは母様の元で修行して山と村の守護者になるべく偉大な妖怪となる娘。
 それが私なんだ。
「え〜、同じだろ〜」
「全然違うの!」
 まったく何もわかっていないタケの額を指で弾く。
「いたっ」
「ふん。わからずやにはお仕置きだ」
「暴力はいけないんだぞ〜」
「私の方が年上だからいいの」
 これはいじわるではなくて、教訓なのだから問題ない。

 私とタケはお腹が空くまで、雪が降る中でずっと遊び続けた。


「ただいま戻りました」
 家に帰ると奥の方から暖かなお味噌汁の匂いが漂ってきた。
 しかもこの匂いは私の好きな山菜なめこ汁だ。
 私は急いで戸を閉めると中へと入っていく。
 木目の廊下を歩き、ふすまを何枚も開けて、居間と一つ繋ぎになっている台所に入る。
 私と同じ色の赤みがかった髪を結い上げて束ねている人が立っていた。
 紅葉色した4本のふさふさした尻尾が柔らかそうに揺れている。
 私の優しい母様だ。
 私が来たことに気づいたみたいで、母様は料理の手を止めてこちらに振り向いた。
「思ったより早かったですね」
「えへへ。急いで帰って参りました」
「寒かったでしょう。ささ、手を出して御覧なさい」
 母様は私の前にしゃがみこむと暖かな手で私の手を包み込んで目を閉じた。
 ぼぅと母様の手が光に包まる。
 するとじんわり手があったかくなり、体も足もぽかぽかと暖かくなっていく。
「これでよし」
「ありがとうございます、母様」
「お昼の支度はまだなのでもう少し待っていてくださいね」
「はいっ」
 ぴょこんと耳を立てて返事をする。
 また料理に戻っていく母様の背中を見る。
 ふわりふわりと揺れている4本の尻尾。
 稲荷は妖力の強さと尻尾の数が比例しているので、母様は稲荷の中でもそれなりに強い力を持っているということなのだ。
 私も4本とは言わなくても、早く2本目の尻尾が欲しいなぁ。

 居間を離れて、私はある部屋にやってきた。
 ゆっくりと音を立てないように襖を開けると、畳敷きの部屋に座っている男の人の背中が見える。
 私は音を立てないようにゆっくりゆっくりとその背中に近づいていく。
 男の人は背筋をしゃんと伸ばしたまま、何かに夢中になっているみたい。
 もう少し、あと少し。
 手が届くくらいの距離まで近付いて、そして、
「とうさまっ!」
「うわぁああ!?」
 ぴょんと男の人…父様の背中に抱きつく。
 予想以上に驚いたので抱きついた私もびっくりしてしまう。
「わ、五十鈴かい。おかえり」
「はい、ただいま帰りました!」
「びっくりしたなぁ」
 寝ているみたいに目を細めている優しい顔。
 私の大好きな顔にぎゅ〜っと抱きついてほお擦りする。
「こらこら。まったく五十鈴は何時までたっても子供なんだから」
「う〜。わたしもちゃんと大人になっているんですよ」
「はいはい」
 父様は私の言葉をあんまり聞いてくれていないみたいで、私は足をばたつかせて抗議する。
「今日は干物匂いがするね」
「はい! 母様のお手伝いで、おさかなを貰ってきたのです!」
「魚というと、与作さんのところかい」
「はい!」
 お使いはいつもしていることだけど、父様はよくやったねと頭を撫でてくれる。
 私は尻尾を沢山振って嬉しさをアピールしながら、ぎゅうと抱きつく。
「それで、今日はどんな事があったんだい?」

 私は父様の背中に抱きついたままいろんな事を父様に話した。
 雪はあんまり美味しくなかった事。
 ふんわりやわかい雪を踏んだらすっぽり足が嵌って出られなくなった事。
 今日の干物もおいしそうだと言う事。
 タケはやっぱりまだまだ子供なんだなぁという事。
 父様は綿毛のついた棒をぽんぽん叩いて日本刀の手入れをしながら私の話を聞いてくれている。
「あなた、食事の支度が出来ましたよ」
 帰り道で見たカラステングの話をしていると、母様の声が聞こえた。
「あらあら。五十鈴ったら甘えん坊さんね」
「そうなんだよ。五十鈴はずーっと僕の背中にくっついたままなんだよ」
「五十鈴もまだまだ子供ねぇ」
「うんうん」
「母様! 父様までっ!」
 プンと怒って見せても二人は聞いてくれない。
 私だって人間の年齢で言えばもう大人なのだから、子ども扱いはやめて欲しいのに。

 



 雪を丸めて転がして、大きくなったら出来上がり。
 雪を丸めて転がして、大きくなったら出来上がり。
 小さい方を大きい方の上に乗せて、葉っぱと枝を付け足して、木桶を被せて出来上がり。
「雪だるま完成!」
「鈴様、もう作れちゃったの? 早いなー」
「そりゃそうよ。私の方が年上なんだから」
 昼になって雪も止んだので、私とタケは村の外れで雪だるまを作る事にした。
 雪合戦は2人でしてもつまらない。
 だから今日は雪だるまを沢山作る競争をしている。
 小さな雪の玉を作ってごろごろ転がして、大きな雪の玉を作っていく。
「3つ目できあがり〜!」
「うわ、はやっ!」
「ふふふー。ほら、早くしないと4つ目も作っちゃうよ」
「この〜!」
 タケが急いで大玉を作ろうと雪球を転がし続ける。
 でも速さばかり考えていてちょっと危なっかしい。
「タケったら。そんなに力任せだと危ないよ」
「どこも危なくない、うわっ!」
 転がすのに夢中になっていたタケが、足を滑らせて大玉にぶつかった。
 タケの肩ぐらいの高さまで大きくなっていた雪球に顔がめり込んでいる。
「あーあ。だから言ったじゃない」
「むぐぐ……ぷはぁっ」
「ぷっ、タケったら。顔が雪だらけだよ」
 顔一面が雪まみれになっているタケをみて笑ってしまう。
「むぅ〜。笑う事ないじゃないか」
「いいじゃない。おもしろい顔しているんだから。ほら、じっとしてて」
 タケの顔についている雪を手で払っていく。
「い、いいよ、こんなの自分で取れるって!」
「大人しくしなさい。ん、こんなもところかな」
 ついでに服についている雪も払っていく。
「わわわ! そこはいいから!」
「そこはって、ここも雪がついているでしょ」
「いいって! 自分でするから!」
 タケがあんまりにも嫌がるので、腰辺りの雪はそのままにして足の方の雪を落としていく。
「そ、それよりさ! 雪そりしようよ!」
「雪そり? いいよ」
 作りかけの雪だるまの事なんか忘れて、私とタケは山の方へと走っていく。

「それ!」
 木が全然生えていない広くて急な斜面を勢いよく滑っていく。
 ごぉごぉ鳴る風と流れる景色は普段私が耳にする目にする世界とは別物で、まるで別の生き物になったみたいなおかしさとスリルがいっぱいで楽しい。
 顔はとても冷たいし怪我をしたら危ないけど、やめられない。
 山のふもとに見える村の位置はあんまり変わらないけど、右を見れば下を見れば少し前とは全然違う光景。
 木は流れて、景色は止まらない。
 何もかもが速くて、それだけでどきどきわくわくしてしまう。
「それそれー!」
 後ろの方からタケの声がする。
 ソリに繋がっている荒紐を馬の手綱代わりに引いてる。
 馬に乗って駆ける自分の姿を想像しているのかな。
「あははは!」
「いけいけー!」
 滑り終わったらまた上る。
 何度も踏みしめた足跡をまた踏んで、一歩一歩上っていく。
 上った先は発着点。
 この辺りはあんまり斜面が急じゃないので、ちょうどいい休憩場所にしている。
 上り終わったらタケが来るのを待って、よーいドンでまたスタート。
 二人並んで滑ると二人の距離はあまり変わらない。
 周りだけがすごい速さで変わっていくのに、私たちは変わらないまま笑い合い、競い合う。

 
 何度も何度もソリで滑って疲れたので、私たちは発着点で休んでいた。
 そこに空から誰かがやってきた。
「ふむ、子供は風の子。やはり外で遊んでいるのが一番でありますね」
「千早さん、こんにちわ!」
 羽の音を殆ど立てないで降りてきたのはカラステングの人。
 山伏が着るような羽織と頭に乗せている朱色の頭襟(ときん)。
 大きくてぴかぴか黒く光る羽根。
 そして、とてもきれいなお姉さん。
「夕山の五十鈴様もお元気そうで何よりです」
「千早さんも元気そうですね。お仕事、どうですか?」
「はは。私なんかはまだまだ修行中の身ですから、仕事と呼べるような事はしていないのでありますよ」
 千早さんはとてもいい人。
 夕山の守護者の娘だからって自分よりも年下の私にも丁寧に接してくれる。
 でも変に私を持ち上げたりしない。
 そよ風みたいに軽くて心地のいい笑顔で、よく頑張りましたねと褒めてくれたり、これからは頑張りましょうと励ましてくれたり。
 一人っ子の私にとってはお姉さん代わりの、とても優しい人。
 でも、最近は、ちょっと。
「千早さんも一緒に遊ぼうよ!」
「申し訳ないのですが、私は修行の合間を縫って顔を見せただけなのでありますよ。ですから、また少ししたら山に戻らないといけないのであります」
「え〜、そんなぁ」
「私の修行が終わればまた沢山遊べるようになるのであります。それまで辛抱するのでありますよ」
 千早さんがいると、胸の中がもやもやしてしまう。

 千早さんは私がまだ小さい頃、父様から離れたがらない、本当に小さい頃からよくお話をしていた。
 最初に会ったときは今みたいな話し方じゃなくて、もっとのびのびと自由な話し方をしてた。
 ある日、カンカンに怒ったお母さんカラステングの人から「山を出てはいけない令」が出されるまでは、たくさん神社に来て私とお話したり遊んだりしてくれた。
 千早さんはとてもよく笑う人で、笑った顔を見ると空気がとても暖かくなる。
 久しぶりに会った時も「丁寧な話し方」が慣れていないみたいでぎこちなかったけど、笑った顔はやっぱりあったかかった。
 何年かぶりに会えてすごくうれしかったのに。
 この頃、胸の中のもやもやのせいでよくわからない。
 千早さんの笑顔を見るとやっぱりあったかくなる。
 でも、時々もやもやしてしまう。
「それでは。お二方、またお会いしましょうであります!」
 ばさぁとカラステング風の挨拶をすると、やっぱり音を立てないであっという間に空へと飛んでいってしまった。
「ふわぁ。千早さんって本当に飛ぶの速いなぁ」
「昔から飛ぶのは好きだから、いっぱい空を飛んでいたって聞いてるよ」
「いいなぁ。僕もあんな風に飛んでみたいなぁ」
「……そう?」
「うん! だって、千早さん、とっても気持ち良さそうに飛んでるんだよ? ソリであれだけ気持ちいいなら、空を飛んだらきっと、もっと気持ちいいんだよ!」
「……そうかもね」
 うぅ、また胸がもやもやする。
 タケがあんなに嬉しそうにしているのに、千早さんの事を褒めてくれているのに、私は愛想のない返事しか出来ない。
「鈴さま?」
「ううん、なんでもない。さ、滑ろう」
「え、あ、うん」

 結局、何度雪ソリで強い風を受けるても、私の中のもやもやは残ったままだった。


 家に帰ってからも、もやもやは残ったままだった。
 このもやもやをどうにかしたくて、私は父様の背中に抱きついていた。
 父様は何も言わないまま書き物をしていた。
 私が何も言わなかったから、何も言ってくれない。
 でも父様の空気はとても柔らかくて暖かい。
 陽だまりみたいないい匂いに包まれて少しずつ私の中のもやもやが消えていく。
 もやもやが出て行ったから安心して小さな欠伸をしてしまう。
 父様の背中は広くてあったかい。
 昔もこんな風に広い背中に抱きついたままよく寝ていた。
「あなた、五十鈴は……あら」
「しっ。どうやら寝てしまったらしい」
 父様と母様の声がする。
 夢なのかな、目を閉じてるのに二人の声を潜める姿を見ている私がいる。
「どこに行ったのかと思えば。ふふ、この子もまだまだ子供ね」
「最近はめっきり減って寂しく思っていた所だよ」
「ええ、そうね。でもどうしたのかしら。この頃はあなたの背中で寝る事はやめてしまったと思ったのに」
 だってそれは変なもやもやがあったから、などといい訳をしてしまう。
 でも寝ている私は声なんて出せない。
「あら、寝ていても声は聞こえるみたいね。尻尾で文句を言われてしまったわ」
「こういう所は君にそっくりだね」
「まぁまぁ。どういう意味かしら?」
「甘えん坊だけど意地っ張り」
「私がいつ意地を張ったりしたのでしょうか?」
「さぁ。忘れてしまったなぁ」
 普段あまり見ない、少しだけ怒った母様。
 悪戯をしたり嘘をついたとき以外で怒ったのは初めてなので何だか不思議。
 二人は私が寝ているからと普段しないような事を話している。
 私が小さい頃はもっと甘えん坊だったとか。
 母様と父様が最初に出会った頃は大変だったとか。

 他にも色んな話をしていた気がするけど、ぼんやりしたまま、私はすっと眠りに落ちてしまった。


 それから数日は晴れた日が続いたのでタケと沢山遊んだ。
 ソリの発着点に大きな大きなかまくら2日もかけて作ったり、二つに割った竹と長い棒を使って斜面を滑ったり、色んな遊びをした。
 でも私の心のもやもやは消えない。
 どんどんと増えていって私は笑うのが難しくなってしまった。
「上手いのでありますねぇ。やはり子供は何でもの見込みが早いのであります」
「へへっ、こんなもんちょろいもんだよ!」
 千早さんとタケが笑ってる。
 この頃、千早さんはよくこの山にやってきて私たちと一緒に遊んでいる。
 千早さんは何でも出来る優しいお姉さん。
 かまくらの作り方がわからなかった私たちに土台の作り方を教えてくれたり、大陸の方で流行っている「すきー」を教えてくれたり。
 千早さんがいてくれたお陰でとても楽しかったのに、胸のもやもやのせいであんまり楽しめない。
 タケが楽しそうに笑っているのに、楽しくない。
 千早さんが明るく笑っているのに、楽しくない。
「鈴さま! もう一回滑ろうよ!」
「今度はどちらが速く滑るのでありましょうか」
 こんなの凄くいやだ。
 二人が笑っているのに、もやもやして笑えない。
「どうしたのでありますか?」
 心配してくれるのに、私は何もいえない。
「さき、滑るよ」
「え、わわ、ちょ、ちょっとまってよ、鈴さま!」
 どれだけ速く斜面を滑っても、どれだけ強い風を受けても、私のもやもやが吹き飛ばない。
「五十鈴様、ちょっと速度を出しすぎなのでありませんか?」
 どれだけ速く滑っても。
「あっ」
「あ、危ない!」
「五十鈴様!」
 私の心のもやもやが無くならない。

「だいじょうぶ!? けが、してない?」
「問題ないのであります。間一髪、倒れる前に私が抱きとめたのであります」
 雪の斜面はどこを見ても白一色で変わらないように見えても、何度も滑って堅くなった部分と雪が柔らかいままの部分があって、私はその柔らかい所を堅いと思って滑って足をとられてしまった。
 倒れて転がりそうになった私を千早さんは助けてくれた。
 お礼を言わないといけない。
 だけど、私は俯いたまま、何かをしゃべろうとしても声が出ない。
「鈴さま?」
「ふぅむ。姿勢を崩した拍子に足を挫いてしまったかもしれないのであります。五十鈴様、これは痛いですか?」
 痛くない。
 でもそう返事する事も出来なくて、首を横に振る。
「ふぅむ。では痛かった時は首を縦に振ってくださいのであります」
 こく、と首を縦に振る。
 千早さんは右足首と左足首をひねってどこが痛いかを診てくれている。
 でも私は千早さんの問いかけに首を横に振るだけで、お礼も何もいえない。
「ふぅむ。足は大丈夫ですね」
「そう。よかったぁ」
「ふぅむ……まぁ初めて滑ったにしてはとても上手かったのであります。失敗など誰にでもあることなので、気落ちする事はないのでありますよ」
 違う、そうじゃない。
 でも私は何も言えないでいる。
「大丈夫だったら、また滑ろうよ! 今度はちゃんと千早さんの合図でさ」
 タケが私の手を握って立たせてくれる。
 そう思って立ち上がろうとしたのに、私はその手を払ってしまっていた。
「え?」
「五十鈴様?」
「いい」
 私は板から足を外して立ち上がる。
「え、あ、すず、さま?」
「私はもう帰る。タケは千早さんと遊んでて」
「五十鈴様、あの」
 千早さんが私の肩に触ろうとした時、私の中のもやもやに火がついた。
「触らないで!」
 二人が驚いている。
 でも私は燃え上がる気持ちと、急に冷えた頭の中がごちゃごちゃに混ざって、その場から逃げるように立ち去ってしまった。







「五十鈴。今日も千早さんが来ていらっしゃいますよ」
「ごめんなさい。今日も、会いたくないです」
「これで3日目ね。まだ会いたくないの?」
「はい。ごめんなさい」
 私はあれからずっと、神社に篭ったまま一歩も外に出なくなってしまった。
 家に帰ってから私は母様に抱きついて泣いてしまった。
 自分が悪い事をしたことはわかっているのに謝る事が出来なくて泣いてしまった。
 なぜそんな事をしてしまったのかがわからなくて泣いてしまった。
 たくさんたくさん、私は泣いてしまった。
 私が泣き止んでから母様が私に言った言葉は、「謝りたくなったなら言いなさい」だった。
 母様は事情を深く聞かないで抱きしめてくれた。
 父様は何も言わないまま頭を撫でてくれた。
 そして私は今もずっと、二人の優しさに包まれたまま内に篭り続けている。
 よくない事だってわかっているのに、どうしても謝れない。
 一度頭を冷やせばと時間を置いたのに、どんどんと口が重くなっていく。
 何とかしたいけど、何も出来ない。
 早く家を出よう。
 でもまたもやもやしていやな事を言ってしまったらどうしよう。
 タケとまた遊びたいな。
 でも千早さんと一緒に居るところを思い浮かべるだけでやっぱりもやもやしてしまう。
 会いたいけど会いたくない。
 頭の中がごちゃごちゃになって、また涙が出てしまう。

「五十鈴」
 襖の向こうから母様の声が聞こえた。
 また寝ていたみたいで、私は布団から体を出して目を擦る。
「かあさま?」
「入りますよ」
「え? あ、はい」
 慌てて布団から這い出ると畳の上で正座する。
 その私の正面に母様が座る。
「また泣いていたみたいね」
 はい、と頷く。
 母様は叱るでもなく、ただじっと私を見ている。
「私が小さな頃の話をあなたにした事はあったかしら」
「え?」
 思いもよらない事を訊ねられたので、私はきょとんとしてしまう。
「母様の小さな頃、ですか」
「ええ」
「そうですね。確か母様は昔からここに住んでいたのではないという話は聞いた事がありますけど、小さな頃のことは知らないです」
 母様はある日この夕山にやってきて、村の人と約束をして、それ以来ずっとこの山で守護者として過ごしてきた。
 けれど、それよりも前の話を私は知らない。
「私が小さな頃、まだ妖怪は全て人のような姿をしては居なかったのです」
「絵巻物にあったような姿、ですか」
 鬼はいかめしい顔で、他の妖怪たちもみんな今と全然違う姿だった頃があったんだ。
 でも私が生まれた頃には、千早さんが生まれた頃にはもう今みたいに人の姿をしているのが当たり前になっていたんだって。
「はい。もちろん妖怪の中には私の様な稲荷を含めて、人に化ける妖怪がいたため姿自体は問題ではありませんでした。人に化けている間は」
 含みのある言い方。
 私は自分の事でもないのに、嫌な予感が背筋を走ってつばを飲み込む。
「人間の少年に恋をしました」
 恋。
 その言葉を聞いて不安とは別の何かが胸の中をざわざわ暴れ出した。
「けれど人に化けるのが苦手だった私は狐の姿のまま彼と会っていました。そしてある日、私は意を決して人に化けて少年と会いました」
 不思議とその光景が目に浮かんだ。
 少年が大好きだけど、少年からは狐としてしか接する事が出来ない母様。
 そして、恋という言葉。
「でも私は上手く人に化ける事が出来ませんでした。最後には耳と尻尾を見られてしまい、私は狐の姿に戻って山に帰ってしまいました」
 山に逃げ帰った光景が、なぜか私の背中と被ってしまう。
「それから私は家に帰って以来ずっと外に出ないまま、ずっとずっと山を降りませんでした。両親には術の修行だと言い張って、修行ばかりしていて、決して里の方へは降りませんでした」
「それで、それからどうなったのですか?」
「何もありませんでした」

「……え?」
 あまりにもあっさりした口調でした。
 私なら泣いて泣いて泣き続けているのにと思っていたから、何もなかったと聞いて訳がわからなくなりました。
「沢山の年月が過ぎて、里を降りた時にはなにもありませんでした」
「その男の子がもう大人になっていたの?」
「いいえ、違います」
「もう他の里に引っ越してしまったの?」
「いいえ、違います」
「それじゃあ……もう嫌われてしまって、ぜんぜんお話も出来なかったの?」
 そんなことになっていたら、私はもう一生外には出られなくなるんじゃないかって、すごく不安になってしまう。
 でも、母様は首を横に振った。
「いいえ、違います」
「え、じゃあなにがなかったのですか?」
「何もなかったのですよ」
 意味が全然判らなくて首を傾げてしまう。
 そんな私に母様は悲しそうに笑う。
「里が無かったのです。無くなってしまったのです。人間同士の戦で里は滅ぼされてしまったのですよ」
「滅んでしまった? え、でも、母様の父様と母様もいらっしゃったのですよね?」
「ええ。けれど昔は人と仲良くする妖怪がいた、程度だったのです。そして父様も母様も人にはあまり関心の無い方々でした」
「それじゃあ……」
 怖いことを想像してしまい、私は震えてしまう。
「あなたが考えている通り。私は仲直りをしようと思い里を降りたのですが、その時にはもう仲直りしようとしていた少年はいなかったのです」
 死んでしまった。
 きっと母様はそう思っている。
 だって里が滅んでしまったのだから、小さな子供は生きてなんかいられない。
 でも母様は私の心を読み取ったように笑って、静かに首を横に振る。
「里が滅んでしまい、少年がどこにいるのかわからなくなってしまった。会えなくなってしまった。でも私は少年に謝りたかった。もう一度いっしょに遊びたかった。だから、探しました。きっと生きているに違いない。そう思って旅に出て、様々な地域を歩いて回って、そしてここにたどり着いたのです」
「え、じゃあ、もしかしてここって」
 不安な気持ちが急に明るくなる。
 母様もにこりと優しく笑っている。
「ええ。やっとこの地で再会出来たのです。後は想像がつくかと思われますが、私は大人になった少年と出会い、仲直りをしたのです」
 色々とありましたが、と母様が付け足す。
 ただ、大変だったけど出会えてよかったんだろうなと一目でわかる笑顔なので、私はほっとする。
「私の場合は別れてから急いで探しました。ではあなたはどうするのか。それはやはり、自分で決める事なのです」
「はい!」

 私の返事の後、母様は一度だけ頷いて部屋から出て行った。
 母様にも会いたいのに会いたくないって思いで悩んだ頃があったなんて初めて知った。
 だけどやっぱり会いたいって気持ちが強いから母様は少年を探したんだ。
 きっと母様は自分のような失敗をしてはいけないと私に教えるためにきてくれたんだ。
 母様の話のお陰で、私の胸の中にあったもやもやが少しだけ晴れた。
 私はタケと千早さんが一緒にいるともやもやしてしまう。
 でも、私はタケと一緒に遊びたい。
 そのためにはやらなくちゃいけない事がある。
「まず部屋を出ないと」
 私は衣を整えて、大きく息を吸ってから部屋を出る。
 行き先は神社の境内。
 足を運んだ先には思っていた通り、千早さんがいた。
「あ、五十鈴ちゃん!」
 私に気づいた千早さんが驚いて羽根をバタバタさせている。
 呼び方も様付けじゃなくて昔みたいにちゃん付けになってる。
「えっと、あの、ごめんなさい!」
「へ? 何が?」
「あの……、3日前は、怪我しそうになって所を助けてくれたのに、あんな態度を取っちゃって」
「あー、うん。気にしてないよ。すごく驚いたけどさ」
 いつも明るい千早さんの顔が翳る。
 その顔を見ると、やっぱり自分はひどいことをしたんだなと実感してしまう。
「ああ、でもさ。よかったよ。出入り禁止はなくなったんだよね」
「出入り禁止?」
「え? だってこの数日は鈴音様の言い付けで神社から出てはいけないって言われていたんだよね?」
「え……ええええええ!?」
 
 話を聞くと、どうやら千早さんとタケには「私は千早さんに失礼な事をしたので、罰として外出禁止」させられていた事になっていたみたい。
 事情を知った千早さんは目をまん丸にしてから、大笑いをしてしまった。
「あっははははは、いやいやごめん! 鈴音様にしては随分と厳しいことをするもんだなぁと思っていたんだよ」
「母様は怒ると怖いのですよ」
「それは言えてる! 何時だったかな、私がまだ出入り禁止を食らう前にもさぁ」
「あらあら。二人とももう仲良しなのね。うらやましいわ」
 びくぅっ!と千早さんの背筋が震えた。
「す、すす鈴音様!? いや、まだ話していないですよ、はい!」
「えぇ、えぇ、わかっていますよ」
 母様はにこやかに小首をかしげているけど、尻尾4本分の妖力を背負っているようなものすごく重々しい空気を出している。
 これは母様が怒っている時の顔なんだ。
 ゆらゆら揺れる尻尾が炎みたいに見えるほど怖い。
「あ、そう言えばさ。あの子が心配してたよ」
 タケもやっぱり心配していたんだ。
 嫌われたらどうしよう。
 不安が後から後から沸いてきて、つい俯いてしまう。
「こっちの方で適当に誤魔化していたんだけどさ。やっぱりあの子にも…」
「あ、あの!」
 意を決して顔を上げる。
 いまここで何か言わないと、もやもやは消えないと思う。
「えっと、何?」
「私、負けませんから!」
「……へ?」
「絶対に負けませんから!」
「えっと、……何?」
 胸の中のもやもやを吐き出すように声を出し切ると、私は居ても立ってもいられずに外へ飛び出した。


「え、あ、あれ? 私と五十鈴ちゃん、何か勝負していたっけ?」
「ふふ。千早ちゃんもまだまだ若いわねぇ」
「え? え?」







 雪の下り坂を走りながら、私は千早さんに言った言葉を思い出す。
「負けない……何になんだろう」
 思い出してもわからない。
 ただあの時、胸の中のもやもやが吹き飛んでしまった。
 久しぶりに大声を出したからかな、今は胸の中がすっきりとしている。
 湧き水みたいな透明感。
 私は冬山の寒さなんて忘れて、尻尾を大きく揺らしながら、雪に足をとられて転びそうになりながら、ただ山を駆け下りていく。

 到着したのは、雪ソリの発着点。
 たくさん走ったから胸がすごくどきどきする。
 体も熱いし顔も熱い。
 息を整えようと胸に手を当ててゆっくりと歩く。
 サク、サクと雪を踏む音がいつもより大きく聞こえる。
 ひゅうと吹く風の音に混じって、誰かの息遣いが聞こえる。
 大きな大きなカマクラの中から小さな誰かの息遣い。
 私はゆっくり歩いてそのカマクラに近づく。
 ゆっくり歩いているのに胸のドキドキが止まらない。
 だからもっともっとゆっくりと足を動かす。
 林の方から鳥が飛び立つ音が聞こえる。
 そんな小さな音でも聞こえる位、シンと静まり返っている。
 胸のドキドキがとても煩く感じる。
「タケ。いるんでしょ」
 カマクラの入り口を覗き込む。
 中にはタケが座っていた。
「五十鈴さま!? もうお仕事は終わったの?」
 目をこすってから慌てて駆け寄ってくるタケ。
 太陽みたいにまぶしい笑顔を見せてくれて、私は少しだけとまどってしまう。
「千早さんのお仕事の手伝いで忙しいから遊べないって聞いてたんだけど、大変だった?」
「お仕事の手伝い?」
「うん。千早さんから聞いたんだけど」
 違うの?と首をかしげるタケを見て私は少しだけ笑ってしまった。
 千早さんも千早さんなりにタケを心配させないように嘘をついていたんだ。
 母様が千早さんを心配させないように嘘をついていたみたいに。
 私は二人の暖かさを感じながら、タケの目をじっと見る。
「私に会いたかった? いっしょにまた遊びたかったの?」
「うん! 決まってるじゃないか」
 迷わない言葉に私は、どきりとしてしまった。
 悪戯が見つかった時みたいに、でもぜんぜん嫌な感じがしない「どきり」。
 胸の中がすごく熱くなって体がぽかぽかあったかくなる。
「うん。私もタケと一緒がいい」








 昔々 ある所にゆうやまというお山がありましたとさ
 その山にはあかいあかいきつねのかみさまがいらっしゃって
 むらのひとたちをあたたかくみまもっているのだと

 ある日 きつねのかみさまがいいました
「さむいふゆはとてもさびしい。だから年に一度、とても寒い日にたのしいたのしい祭りを開いておくれ」
 むらのひとたちはきつねのかみさまにとてもかんしゃしていました
 むらはとてもちいさくて盛大なおまつりはできませんでしたが むらのひとたちが祭りをしない年はありませんでした

 またある日 きつねのかみさまがいいました
「私には娘がおります。娘が年頃になったら、むらのひとの中から夫になる人を出しておくれ」
 むらのひとたちはきつねのかみさまにとてもかんしゃしていました
 むらにはわかい男性はあまりいなかったのですが むらのひとたちの中からわかい男性を選んできつねのかみさまに婿入りさせました

 そしてある日 きつねのかみさまがいいました
「あなたたちにはとても感謝している。住む土地とあたたかい祭り、そして娘の伴侶までくれた。なにか一つ、お礼をしよう」
 むらのひとたちはきつねのかみさまにとてもかんしゃしていました
 だからむらのひとたちはこうこたえました
「では、年に一度のお祭りに顔を出してください。あなたさまがいない祭りはとてもさびしいのです」 

 それからというもの
 ゆうやまのきつねのかみさまは祭りがはじまると ひとの姿に化けてむらの祭りに混じり
 たのしくたのしくすごされたそうな


(赤銅日記-夕山の狐より)



戻る / 目次 / 次へ

----------------------------------------------------





----作者より
去年の間に書き上げようとしたのに出来なかったSS(。。
久しぶりに書いたから文章がおかしくなっているかもしれないですけど、そこはご愛嬌(−−
ちなみに最後の部分に書いている文章はあくまでも読み物なので、本当にあった事かどうかは不明です、あしからず(。。





幼女は可愛いけど、愛でるだけでいいよね? よね?(’’

























(以下、エロ注意(’’ )






























「うん。私もタケと一緒がいい」
 そう口にすると頭がぼぅとして、そのままタケに近付いていく。
「ん、んん!?」
 気がついたら私はタケに接吻をしていた。
 私より少しだけ背の低いタケに抱きついて何度も何度も口付けをする。
 何が起きているのかわかっていないタケが慌てているのがわかるけど、私も何が起きているのかわからないので放っておく。
「ん、ちゅう、ちゅう、ちゅ、ちゅっ」
 体がとても熱い。
 心臓がどきどきと煩い。
 でもなによりずっと、タケと一緒に居たい、タケと触れ合いたい。
 外はとても寒いけどカマクラの中はあたたかい。
 ずっと一人でカマクラに座っていたみたいで、タケの匂いがあたり一面に広がっている。
 その匂いだけで私はまた体が熱くなってしまう。
 熱いから帯を緩めて少しでも涼しくしようとする。
「ええ!? す、すずさま!?」
「熱い。タケ、冷やして」
「ひ、ひやすって!?」
「舐めて」
 私は着物をはだけて尻尾を揺らす。
 ごくんとツバを飲み込むタケ。
「私の体を舐めて」
「え、えええ!?」
 タケは顔を真っ赤にして慌てるだけで、ぜんぜん舐めてくれない。
 顔を真っ赤にしてる?
「タケ、熱いの?」
 抱きついて私とタケの額を擦り合わせる。
 熱いかどうか、よくわからない。
「す、すすすずさま!? いったいどうしたの!?」
「熱いの? なら冷ましてあげる」
 ぺろとタケの頬を舐める。
「ひゃあっ」
「変な声を出さないの」
「だ、だってぇ、ひゃうっ」
 舐める度に変な甲高い声を出す。
 おまけにそのまま雪の上に座り込んでしまった。
 私はタケの上に覆いかぶさるようにして丁寧にタケの顔を舐めていく。
 でも、舐めても舐めても顔は赤いままで、ぜんぜん冷えていかない。
 もしかすると、顔以外が熱いからかなと衣を脱がせていく。
「うぅ、さむいよぉ」
「さむいの? こんなにあったかいのに」
 仕方が無いので衣を着せ直そうとして、足に何か硬い物が当たった。

「ん?」
「へ?」
 私とタケは二人とも不思議そうにソレを見る。
 タケの腰の部分、おちんちんの辺りが硬くなってる。
「なにこれ」
「うわぁっ」
 触るとタケが変な声を出したけど気にしない。
 衣を脱がせて下帯も外すと、おちんちんが出てきた。
 でも形がちょっと違う。
「硬い。もしかして病気?」
「えええ!? そ、そんな、なんで!?」
 触ってみるとやっぱりタケが変な声を出す。
 もしかすると何かあったのかもしれない。
 気になった私はくんくんと鼻を鳴らして、それからおちんちんを舐める。
「きゃううっ」
 やっぱり何かあるみたい。
 怪我は昔から舐めて治すものだって母様も仰っていたし、早く舐めて治さないといけない。
 私はたっぷりと唾液を垂らしながら丹念に腫れ上がったおちんちんを舐めていく。
 その間もずっとタケは変な声を出しているけど気にしてはいけない。
「……うぅ」
 でも私も何か変になってしまった。
 体はどんどんと熱くなるし、お股の部分がむずむずする。
 おしっこがしたいわけじゃないのにむずむずする。
 私も何か病気にかかってしまったのかもしれない。
 早く母様に診てもらわないと、そう思って口を開いておちんちんを食べる。
「ひゃううっ!!」
「んん!?」
 唾液が怪我に効くから舐めるんだって効いたから、咥えちゃえば全部に唾液が塗りつけられる。
 そう思って咥えたら、何かおちんちんから出てきた。
 よくわからないけど苦くて、でもじんわりとあったかいので、私はソレを飲んでしまった。
「う、ふぅ〜〜」
 するとぽわぽわと体が熱くなって、お股がさらにむずむずとしてしまった。
 耐え切れなくて、私はその部分を触る。
「きゃうっ」
 触った途端、体がびりびりっと来てしまった。
 それからじんわりと体全体が気持ちよさが広がっていく。
 私は直感でこれは病気じゃないんだとわかった。
「タケのこれ、まだ治らないね」
 触ってみるとおちんちんはまだ硬いままだった。
 ふと、私はこれを擦りつけたら気持ちよくタケのおちんちんを治せるんじゃないかと思った。
 思ったときには即行動。
 私は下帯を外すと、位置を手で調節してからタケの上に乗った。

「はぁっ、んんんっ、あぅ、んぅんっ」
 お股とおちんちんを擦り合わせるととても気持ちが良かった。
 何回も擦り合わせていくと、間違っておちんちんが中に入りそうになってしまった。
 その時は擦り合わせるよりもずっと気持ちよくて、私はおしっこが出る穴とは別の、透明ななにかが出ている穴におちんちんを入れてみた。
 するとちょっと痛かったけど直ぐにとてもとても気持ちよくなった。
 私は寝そべっているタケに抱きついて何度も何度も腰を動かす。
 その度にくちょくちょと変な音が聞こえるけど、それが気にならないくらい気持ちがいい。
 動けば動くほど気持ちよくて、でも何かがどんどん増えていく。
 体はとても熱いけどそれも気にならない。
 何度も接吻をして、抱きついて、おちんちんで私の中をぐちょぐちょにかき回す。
 何かが来る。
 そう感じて私はより一層腰の動きを激しくする。
「んんっ、んん、っはぁ、ん、んっ!」
 私の中でタケのおちんちんが少し震える。
 またあの苦いのを出すんだと、やっぱり直感でわかった。
「うん、いいよ、だして、はやく出して!」
 出せば病気が治る。
 そう思って声に出しながらぎゅうと抱きつく。
「〜〜〜〜〜〜!!」
 強い、とても強い何かが体全体に広がって小刻みに体が震える。
 お腹の中にタケの苦い液体が出ているのがわかる。
 声にならない悲鳴を出して私はその何かに耐える。
 ぎゅうとタケに抱きついてその何かに耐えてから、はぁと息をついた。
 
































「うぅ〜。なぜ、こう……下腹部辺りが疼くのでありますか〜!!」
 カラステングは今日も任務に就いていましたとさ。


11/01/01 15:12 るーじ

top / 感想 / 投票 / RSS / DL

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33