「お、おにいちゃん♥」

「ふぁ、ふぁみりあちゃん……はぁはぁ……」
　魔法的なエアコンは全開のハズだが、今年の魔界は暑い。

　ボクとファミリアちゃんはそんな日だというのに……。



「ああっ！！」

「くっ！」

　ファミリアちゃんの顔が苦痛に歪む。ボクは……ボクはっ！　そんなファミリアちゃんの顔を見たくないので早くコトを済ませようと焦る！！


「ああん、ダメだよぉ！！！」

「だ、大丈夫だ。イける！」

　すでにボクたちは汗びっしょり。ボクはしっかり棒をにぎって狙いをつける。そして……ゆっくりとモノが降りていく……。


「おにいちゃん……はやくぅ♥」

「だ、大丈夫だ！！　焦ったら失敗するし、痛い目にあうから、落ち着いて見てて」

　緊張しているのか、それとも暑いせいか、……ファミリアちゃんの息も荒い。ボクもだけど。


「ああああーーーー！！！」

「くそっ、棒が滑ってうまく握れない」

「おにいちゃん、はぁはぁ、あまりらんぼうにしちゃだめだめぇ！！　壊れちゃうよぉ！！」

　汗で手が滑り、またうまくいかなかった。ファミリアちゃんの握る手が震えている。

　穴に入れようとして、また手が滑る。これ以上ミスができない分、更にあわてていたみたいだ。

「ごめん、もうちょっと優しくするね……ん、ど、どう？」

「うん、だいじょうぶ……は、はやくぅ、おにいちゃん……」
　指で慎重にさわるが、その度にまた返って逆に奥へと……。

「よ、よしっ」

「う、うん、……もうげんかいだよぉ♥」
　こんなにも応援してくれているんだ。彼女の期待に応えないと申し訳ない。また、手をぎゅっと握る。

「おにいちゃん……」

「まかせろっ！」

「うんっ☆」

　ふたたび棒を握る。

「おにいちゃん、穴はここだよぉ。えへへ♥♥」

「そ、そうだな」

　ファミリアちゃんの手がボクの手に重なる。

「よし、入れるぞ」

「……う、うん♥」



　見つめあうボク達……、もう言葉はいらなかった。

　そして動き出す。


　爪が、爪がひっかかった！

「あんっ♥」

「くっ」

　その瞬間、ファミリアちゃんの体が歓喜に震える。
　ボクは全身で喜びを表す。

　やった！！
　ついに
　ついに！！！

　ボクとファミリアちゃんは抱き合う。

「ごめんね。すごい待たせちゃって」

「いいの、ずっと欲しかったし……その、おにいちゃん、あたしのためにがんばってくれたし♥♥……えへへっ☆」














がらーーーーー！！！



「こら、兄ーーーーー！！！　何をやっているのじゃ！！！！！！」



「あっ、バフォメットさまぁ、見て見て、これぇ、おにいちゃんが取ってくれたんです♥♥♥」

「え、えええ、ぬいぐるみ！？ じゃと？？」

「あれ？　バフォさま、そんなに慌てて、どうしたんですか？？」

「いや、その、通りかかったら、変な声がしたので、それで兄の浮気と思ったのじゃ！！」

「ええっ、なんでそうなるんですか！！？」

「だって、だって！　あきらかにえっちぃ会話で、兄もファミも、そ、その、もしかしてえっちなこを……そもそも、棒とかなんじゃ！」

「ゲーム機のスティックですが？」

「ファミが、壊れちゃう〜　とか言っておったぞ！」

「バフォメットさまぁ、あれはおにいちゃんが、ぬいぐるみを強引に爪で引っ掻けて取ろうしてたので、あたしが止めたんです」

「早くぅーー、とかはなんじゃ？」

「だって、早くぬいぐるみが欲しかったんですっ☆」

「穴とか入れるとかはなんじゃ！　おかしいじゃろ！！」

「コインを入れる穴が入れ辛くて、機械の隙間に落としちゃったんです。必死になって手を伸ばして取りましたよー」

「うんうん、もう汗とかで滑るし大変だったもんね。おにいちゃん！！」

「うぐぐ、ファミが、あん、とか、いやらしい声を！！……」

「ぬいぐるみがとうとう取れそうだったので、嬉しくて！！」

「………バフォさま？」

「バフォメットさま、暑さで妄想が……、大丈夫ですか？？」


「えーーい、というかまぎらわしいのじゃ！！」


「だって、バフォさまがこのクレーンゲームの機械を作ってくれたんじゃないですか！」

「うぐ、それはそうじゃが
いや、実際作ってくれたのはグレムリンちゃんじゃ！！」

「えへへ、バフォメットさまの『メガジャンボぬいぐるみ』が取れなくて、そこにおにいちゃんがたまたま通りかかってくれて、やっと取ってもらったんですよ♥」

「バフォさま、このクレーンゲーム、設定が鬼畜すぎです！！　ラウ〇ドニャン、並みじゃないですか！！　爪もアームもやる気が無いです。アシスト無しで取ったのでこれは称賛されるべき！」

「うんうん、おにいちゃんもっとぉ、もっとぉ、イっちゃえーーーー♥」

「ファミリアちゃん、イくねっ」

「うん、きてぇーー☆」


「だーーーーーーー！　わざとじゃな？　それわざとじゃろ！！！」


「「てへぺろっ☆」」

「あと、ですね。配線がごちゃごちゃしてて、お金を下に落とした時、大変でしたよ」

「ううう、わし悪くないもん、グレムリンちゃんじゃ」

「ここの責任者は？」

「わしじゃ！！」


「「じーーーーーーーー」」



「ひゅーひゅーーひゅーーー♪」

「また、ごまかそうとしてる（ぼそっ）」

「バフォメットさま、あとコインの穴ちっちゃすぎです。さっきも言いましたけど、ちゃんと入らなくてたいへんでしたー。ねー。おにいちゃんっ、部屋も暑いし」

「く、口笛がスルーされたじゃと！？」

「うんうん」






ガミガミガミガミ


「ご、ごめんなのじゃ。あれ？　なんでわしがこんなに怒られておるのじゃ？？」


「というか兄！！　ファミとそんなにくっつくでない」

「えーー、いいじゃないですかぁ♥」

「ふぁ、ファミリアちゃん、くっつきすぎ」

「えへへぇ、だってだってうれしいだもん☆」

　いちゃいちゃ♥




「兄ぃぃぃぃぃ！！！！」
　
　ずるずるずるずる

「あ、あははーっ、ファミリアちゃんまたね」

「お、おにいちゃんーーー！！！」




がちゃん


「兄、わしにもあのぬいぐるみを取るのじゃ！！」

「えええ！　もう今月のお小遣いが無いですよ！！」

「ほれ」


ゴトっ！


「ブル○ョワだ！！　というか！！！　イン〇ットをさりげなく脇から出さないでください。また怒られますよ！！」

「え、これもダメなのじゃ？」

「そうです！　お〇ぎりもインゴッ〇もだめです。それに〇ンゴットをどうやってあの狭い穴にブチ込むんですか」

「あ、兄は激しいのじゃ、そ、そんな狭い穴とかブチ込むとか♥♥……」


「うわ………バフォさまの妄想がやばい」

「えーーい♥！！」

「ああああああああああ！！！！！！」

「さっきはよくもわしに向かって説教してくれたのじゃ！！　許さんぞっ！！！！
　さあ、するぞ、兄のそのでっかい棒をわしの狭い穴に！！！」

「バフォさまーーーー！！！」

「今更スライング土下座など、遅いっ！　遅すぎるのじゃぁ！！！」

「そ、ソレはっ！？」


「兄の棒よりもぶっとい魔界銀ペニバンバージョン２で、尻穴を拡張じゃ、あと尿道も、穴と言う穴を全部♥ ぐふふふふ♥♥」

「ちょ、それ、ぎゃあああああああ！！！」






（ものすごい描写だったので削除いたしました）






※セックス（？）の途中ですが、差し替えの文章をお伝えします。


ＭＮ〇スペシャル、魔界のすごい魔導重機！！

「今日ご紹介する。すごい魔導重機はこちらです。この魔力式ドリル式掘削機８０１！！！　先端には魔界鉱石（すごく硬い）が取り付けられていて、どんな岩盤も砕いて、前に突き進みます！！！」

ジャイアントアントさん（恋人募集中）
「この魔導重機８０１の登場でいままで掘れなかったトンネルもあっという間に開通っすよ！」
ジャイアントアント監督（恋人募集中ほんと頼む）
「魔界の技術は最強ぉぉぉ！！」
「どのくらいの穴が掘れるんですか？」
「今ですね。とある反魔物国家の侵攻作戦で山が邪魔なので、一気に掘り進むつもりです」
「危険はありませんか？」
「はい、最初の試験掘削で、魔界銀でテストしてますんで安心っすね！！　８０１すごいっす♥」

がががががががががががが！！！

「なるほど、まさか主神教も地下から……（以下略








72時間後






「あ、あの……」
「なんじゃ♥」
「どーすんですかこれ」

（あまりにもひどい光景なので削除いたしました）

「いや、その♥……つい幼い欲望がじゃな♥♥……」






がらーーーーーーーーーーー


「おにいちゃんあそぼーーーー☆」

「「ぎゃーーーーーー」」

「ひぃっ、おにいちゃんがおにいちゃんが（ぴーーーーーーーーー自主規制）になってるぅーーーーー」

「ふぁ、ファミまつのじゃ！！」

「にひひっ、これはサバトのみんなに教えないと、わーーーい♥」

「ああああああ、わしじゃ、ファミリアを捕獲するのじゃ、えーーい、どんな方法を使ってもかまわんのじゃ！！！」

「ば、バフォさま……（ﾊﾟﾀﾘ）」

「あ、兄ーーーーー！！！」



　バフォメットと兄が、すんごいプレイ（背徳的で掘削的な）でいたしていたという情報はあっという間にサバト内にとどまらず。魔王軍全部に１時間もかからないで広まった。

　ファミリアちゃんは速い、それにどの子が“手配中”のファミリアかわからない。一見みんな同じ姿に見える。


　バフォさまが「どんな手を使ってでもかまわない」というのがやばかった。


　おかげで魔王軍は大混乱、久々に登場した、大根らん時にだけ現れるという。だい○ん妖精も出てきて大騒ぎになった！


　魔界の株は軒並み下落！！

　コールセンターも電話が鳴りやまず。対応にあたった魔物娘はちゃっかり男を電話で口説いているし。

　まあ、とにかく……それはおいといて。





その後
「バフォさま、なんでボクまで」

「てへぺろっ♥なのじゃ」

　現在、ボクたちはリリム様の部屋で正座中。

　ビシっ！！

「ひぃっ」
「兄！」

　ビシっ！！！

「のじゃーーーーーーー！！」
「バフォさ」

　ビシビシっ！！！！


「「ああああああああ！！！！」」


　容赦なく振り下ろされる。お仕置き棒。魔界銀製だから痛くないけど。


「ごめんなさいねぇ。だってぇ、手が汗ですべっちゃうの。うふふ♥」

　リリム様はむっちゃ楽しそうだ。
　というか、お仕置きといっているがノリノリだ。


「えーーい♥♥」


「「らめぇぇぇ！！！」」



　実はあのクレーンゲームのせいで、リリム様もたっぷりお金を搾られていた。
　普段搾っている側（性的な意味で）なので、搾られた（金銭的）のがすっごく悔しかったらしい。
　ここぞとばかりにお仕置きと評してバフォメットとその兄をいじめることにしたらしい。




がらーーーーー！！！


ラタトスク（恋人募集中）
「リリム様、例のトンネル作戦のほうｋ？？」

「ちょっと今取り込み中、って、なんで簡単にここに入れるのよ！」

「行方不明だった。バフォメット様とその兄がここに居た！！！　わっ、これは特ダネだぁーーーー！！」

「ま。待ちなさいっ！！」




「わしらも逃げるのじゃっ！！」
「がってん承知！！」






「「バ〇ス！！」」






　どかーーーーーーーーーーん








　もうメンドイので爆破オチ！！！！


　また、株が下がった。
　大暴落だ！！


　勇者がこの隙に攻め込めば、もしかしたら？
　幸いなことにそんな勇者が居るわけもなく。

　
　奇跡的に負傷者はゼロ！　みんな地下のコールセンターで親魔物領から掛かってくる男の電話を待ち構えていたのが良かった。

　魔界は平和を取り戻した……たぶん。






ファミリア（サイフお兄ちゃん募集中）
「ゲーム機、あれは貯金箱……あたしは、色々な物をうしなった……」
　ぎゅっと抱きしめるバフォぬいぐるみ。
　例の件とは関係ない、黄昏たファミリアが遠くジパングで発見されたのはまた別のお話。


バフォさまと兄も行方不明、次回どうなる？

■作者メッセージ
※くれぐれもゲームのやりすぎには注意なのじゃ！
魔界銀って便利だね！！