読切小説
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秘密の発声練習
 超満員のライブハウス。
 その裏で、セイレーンのレナはそわそわとしていた。
「うー……緊張してきたぁー……」
 腕をもじもじとうごめかせ、カタカタと小刻みに震え、控え室をそわそわと動き回っている。
「おいおい、レナぁ……ちょっとは落ち着けよ」
 そんな彼女を見かねて、同じく控え室にいた男が声をかけた。
 レナとは対照的に、ゆったりとソファに座って余裕の表情を見せている。彼女のプロデューサー、清家蓮(せいけ れん)である。
「うぅー……プロデューサー、そんなこと言われてもー……」
 レナは立ち止まりちらりと蓮の方に視線を向けたが、またすぐに歩き回ってしまう。
 彼女は新人のアイドルで、去年デビューしたばかりである。
 可愛らしさが売りで、そのイメージに合ったポップな歌をすでに何曲か発表している。
 今回は、今週発売されたばかりの新曲の披露を兼ねて、ファンを集めてのライブを行うことになっている。
 今まで細々とイベント活動していたのだが、小さなものとはいえ、初めての単独ライブなのである。
 ファンとの距離も今までとは比べ物にならないくらい近い。緊張するのもうなずけるのである。
 しかし、蓮は落ち着いていた。
 始まる前から、ライブの成功を確信していたからである。
――大丈夫だ。レナなら絶対に成功してみせる。
 彼は、彼女がどのアイドルよりも精一杯にレッスンしているのを知っていた。
 彼は今まで、多くの不真面目なアイドルを見てきた。
 お金が欲しいから。ちやほやされたいから。
 表ではいい子でいるのに、裏に回った瞬間に周囲に当り散らし、平気でファンの悪口を言うアイドルも見た。
 だが、レナは違った。
 ファンのために本気で歌うし踊る。それに、どんなときでも周りを気遣う心を忘れない。
 先輩後輩問わず、一緒の仕事をするときは挨拶回りを欠かさないし、礼儀正しい。
 それに何より、アイドルという仕事を本当に楽しんでいる。
 それがファンの心を掴んで離さないのだ。
 その証が、初ライブのチケット即完売。超満員となった会場である。
――しかし……
 蓮には不安なことが一つあった。
「うー……あと30分だよぉ……」
 そわそわと辺りを動き回るレナ。
 実力は確かである。しかし、緊張していては力を出し切ることはできない。
――何か、緊張をほぐすことのできるものは……
 プロデューサーの責務として、しばらく考えていると。
 彼の脳内に、一つのアイデアが浮かんだ。
「よし、レナ。『発声練習』だ」
 その言葉を聞くと、レナは顔をはっとさせた。彼女の顔は、緊張のせいとは違う朱に染まっていた。

「そうだ。まずは脱がせて……」
 初の単独ライブであるので、楽屋は当然アイドルとプロデューサーの二人のもののみである。
 その上、スタッフたちは本番直前のため、地獄のような忙しさで作業を行っている。
 よって、この部屋のことを気にする人間など、誰一人もいない。
 レナは素早く、しかし確実な手つきで蓮のベルトを外し、ズボンと下着を同時に下ろした。
 ぼろりと転がるように出てきた彼のペニス。
「プロデューサーの、相変わらず小さくて皮っかむりさんですねー」
「う、うるさい!かなり気にしてるんだからな!」
 彼女の的確な意見に、彼は目を潤ませながら抗議した。
 彼の表情を見て、彼女がにこにこと微笑む。
「そんな、気にすることじゃあないですよ?男の人ってみんなこうなんじゃあないんですか?それに」
 両手でペニスをもみほぐしながら、彼女が続ける。
「私、プロデューサーのおちんちん、大好きですよ」
 あぁむ……レナが声を漏らすと、大きく開けた口にペニスをほお張った。
「むぐ、むぐ。れる、れる」
 口内の肉を総動員させ、彼の萎えている分身を優しくもみほぐす。
 舌を裏筋とカリに重点的に這わせ、ごりごりとけずりとるような強さで責める。
 魔物の技を全てぶつけられたペニスは、すぐにむくむくと血管を詰め込み始めた。
「ちゅぽんっ。あはっ、可愛い亀さんが出てきましたねぇ」
 ふふっと笑い声を漏らし、硬くそそり立ったそれを眺めるレナ。
 仮性包茎が勃起したことによって、桃色の敏感そうな粘膜が皮から顔を出している。
「よ、よし……それじゃあ、『発生練習』をして気持ちを落ち着けろ」
「はーい」
 元気よくレナが右手を上げると、立っている蓮の前にひざまずくような体勢になった。
 そして彼の顔の方を見上げる格好となる。
 彼女の口が、ちょうど彼のペニスの斜め下にある状態となった。
「あー えー いー うー えー おー あー おー」
 頬を真っ赤に染め、発声練習を行う。
 その朱は羞恥によるものではない。
 フェラをしたのに精液を飲めず、性的興奮が高まっているせいである。
「かー けー きー くー けー こー かー こー」
 声の振動に合わせ、ペニスがビリッビリッと震える。
 音――それは物質の振動である。つまり、分子・原子の震えである。
 声帯を震わせ発射された空気振動は、隣の分子へと伝わり、その震えがまた隣の分子に移っていく。
 セイレーンはさらに魔力を乗せる。
 魔力分子は空気とともに喉から発射されるが、酸素や窒素、二酸化炭素に邪魔されることなく、直接ペニスにぶつかる。
 そこにダメ押しとして、物質である空気の分子たちがぶつかるのだ。気持ちよくないわけがない。
 わけがわからない説明かもしれないが、とにかくそうなのである。きっと本当に気持ちいいのである。
 当然、今まで真面目にレッスンを重ねてきたセイレーンだからこそできる芸当である。
「うっ……くっ……上出来じゃあないかっ……」
 ぎゅっと目を閉じ、声を震わせながら蓮は褒める。
「えへっ、そうですか?……さー せー しー すー せー そー さー そー」
 ニコニコと微笑み、レナは嬉しそうに声を上げる。
「たー てー ちー つー てー とー たー とー……それで、声の方はどうなんですか?」
 性感ばかり気にしている様子のプロデューサーに、彼女が声をかけた。
「えっ……あ、ああ……声がよく通っていて、いいんじゃあ……ないか?」
 あからさまに目線をそらしながら言う蓮。
 誰の目にも、快楽ばかりに集中していたことが明らかであった。
「むー。プロデューサー、聞いてなかったんですね?……それじゃあ、耳じゃあなくて、おちんちんで分からせてあげますからね」
 レナが発声練習を続ける。
 な行。は行。そしてま行の途中で。
「うぅ……もう、でっ、るっ……」
 蓮が音を上げた。
「えっ、もう出るんですか!?」
 いつも以上の速さに、彼女は少し慌てて言う。
「だからっ……衣装にかかるっ、からっ……」
 それだけ言うと、ぎゅっと目と唇を閉じてしまったプロデューサー。
 しかし、魔物であるレナにとっては、それだけで十分であった。
 最後の脈動。射精にいたる直前のペニスの震えその瞬間に、レナは大きく口を開けてかぷっと亀頭をくわえた。
「んっ、んっ……ちゅぽっ、じゅぷっ……ちゅぅぅー!」
 精液が漏れるたびに、口を上手に動かして口内に精液を溜め込んでいく。
 脈動が終わると、今度は唇で尿道を圧迫し、残った精液を上手に放出させた。
「れちゃいまひたね……こんな、いっふぁい……ごくっ、ごくっ……」
 一滴も衣装や髪に付着させず、全て口内に納め、全て美味しそうに飲み込んでしまった。
「ごくり……ふぅ。もう、プロデューサー、速すぎですよ?新記録じゃないですか。一周もたないなんてー」
「はは……すまん……」
 ひょっとしたら見つかるかもしれない。という異常な心境が、彼の射精を早めたのかもしれない。
 連は気恥ずかしそうに頭をかきながら、照れくさそうにつぶやいた。
 そんな彼の顔を見て、とろんとレナの瞳が情欲にとろける。
「ねぇ……プロデューサー……」
 先ほどまでの元気な声とは違う、明らかに熱のこもった声色。
 蓮ははっとした。精液を飲んで、彼女が発情してしまったのだ。
「あっ、こら!レナぁ!これから本番だろ!?」
「でも、でもぉ……おまんこがきゅんきゅんして、もう我慢むりぃ……」
 瞳を潤ませ、レナが哀願する。
 魔物娘であり、現役アイドルでもある彼女の性的なおねだり。普段だったら、絶対に断ることはできないであろう。
 しかし、今は状況が悪すぎる。
 ここで襲ってしまったら、二人とも業界から追放である。
 それだけは絶対にできないと彼は思った。
 自分のためではない。レナのためである。
 今まで一年間、ずっと営業とレッスンをこなしてきたのだ。それが水の泡と化してしまうのはどうしても避けたかった。
 そこで彼は彼女に一計を案じた。

 結局、初の単独ライブは大成功を収めた。
「はっ、あんっ、うんっ、きゅぅんっ!」
 今、二人は南の島の浜辺で、二人きりのバカンスを楽しんでいる。
「プロデューサーぁ……プロデューサー……!もうっ、いきゅぅっ!」
 騎乗位で快楽を貪っていたレナは、一声叫ぶと、全身をぶるぶると震わせ、子宮を叩く精液の感触を楽しみながら果てた。
 ライブ開始直前に蓮と交わした約束。
――これが終わったら、一週間オフをとってあげるから!ショッピングでも!バカンスでも!なんでも付き合ってあげるから!
11/04/01 02:31更新 / 川村人志

■作者メッセージ
声コキ。イメージがどうも間抜けになってしまうなぁ。

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