読切小説
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不思議の国クエストーBoss enemy appearー
「嘘…でしょ……。」
「あひぃ…♥」「あへぇ…♥」

 目の前の光景がにわかには信じがたく、思わず声を漏らした。
 ここに至るまで実質無敗、あれほど頼もしかった仲間の二人が一瞬のうちに戦闘不能にされたのだ。

「ふふ…、次は誰が相手をしてくれるのかなぁ? お に い さ ん ♪」

 悠然と構える敵が、その幼い身体に圧倒的なプレッシャーを纏い挑発してくる。


 どうしてこうなった……





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ある日突然この不思議の国なる世界に召還された。

最初案内役だったチェシャ猫には、元の世界に戻るには女王に会わなければならないと言われ、この不思議な世界での旅を決意する。途中半ば騙されるような形で8人の仲間と契約をし猫とは別れたのだが、この8人が問題だった。
トランパートというこの種族は序盤の冒険にはあまりにもオーバースペックだったのである。
 ここまで如何な魔物に襲われようとも、カードから彼女らを召喚して戦わせればあっという間に勝負がついてしまった。
桃色の鳥人の群れに襲われた時など一分後には全員頭を逆さまにして媚薬の沼に突き刺さっていたし、無数の触手を操るドラゴンと対峙した際も数分後には相手が触手の海に沈んでいた。
どんな相手も瞬時に返り討ちにし、倒した敵は嬉々として淫惨な拷問にかける。その狂気染みた光景はある種の恐怖と同時に心強さを与えてくれた。

 …もっともこの圧倒的な力を自由に使役できることの代償は、戦闘後彼女らに契約の対価を支払う際、嫌と言うほど思い知ることになった訳だがそれはまた別の話である。
 とにかく、契約した仲間の予想外の強さもあって、これなら案外簡単に女王の下まで辿りつけるのではないかと楽観し始めていたのだ。

 そんなときである…「彼女」が行く手に立ちふさがったのは。




「こんにちは!旅人のおにーさん♪ここで私と一緒に暮らさない?」

 見晴らしのいい草原に突然現れた少女は開口一番そう言い放った。艶やかな金髪に青を基調としたエプロンドレス、背後に見える小さめの翼と尻尾…話に聞いたアリスと呼ばれる魔物の特徴に似ている。あるいは通常のサキュバスの幼体か…
そして魔物らしい直球の勧誘。申し訳ないがもちろん乗るわけにはいかない。

「ごめん、僕には帰らなきゃいけない場所があるんだ。」
「ふーん。ならいいや。」

 ほっ。

「そんなの忘れるくらいめちゃくちゃに犯してからもう一回聞くから。」

 少女の顔から笑みが消えると同時に突風のようなオーラが押し寄せてきた。
すぐさま2枚のカードを取り出し、仲間を呼び出す。

「…ッ!フォーズワン、フォーズツー!来て!!」

「はいはーい♪」
「き、来ました!」

 桃色の煙とともに現れる2体のトランパート。彼女らの数字は4。契約している仲間の中では最も下位に位置するカードだが、2人同時に召喚した際のコンビネーションならば上位にも届く。弱点らしい弱点が無いので常に安定した強さが発揮でき、未知の敵に最初にぶつけるには上位カードよりも安心して出せるのだ。

「えっと…あ、あれ、アリス?…だよ……ね?」
「楽勝っしょ!さくっとやっちゃお♪」

「二人とも気をつけて!」

 これまでの魔物とはどこか違う、嫌な予感がした。

「いくよ!」
「う、うん!」

 二人が目標に向かって突進する。
 衝撃波を生み出すほどの加速、構えた2本の銀槍が左右から標的を射抜くべく打ち出され……

 そして、「それ」は起こった。



「はぎいぃぃぃぃいいいぃいいいいいッ!!」
「きゃああぁぁぁぁあああぁあああああああ!!」


「え……」




―――そして場面は冒頭へと戻る。


 何が起こったのか理解できなかった。

 敵に槍を突き立てたと思った2人は次の瞬間、召還した元の位置で絶叫していたのだ。

 服はボロボロに破け、一瞬前までは存在していなかった巨大なキノコが二人の腰から下を飲み込んでいる。
 ブシャッと水音が鳴った。
 見れば露になった、元々小柄な二人の身体には不釣合いに大きかった乳房は更にサイズを増し、ボタボタとミルクを迸らせていた。

「お゛…お゛お゛お…お゛お゛――――――ッ♥イグッ♥い゛っでるのおお゛お゛ッー♥」
「ひぃぃぃ…………・・なにこれ・・に゛ゃにこれえ゛えーー!?♥」

 二人の顔は紅潮し、涙と涎とでぐしゃぐしゃになっている。壮絶な絶頂が継続しているのだろう。その淫靡な光景に一瞬見とれそうになるがそんな場合ではない。次にああなるのは自分かも知れないのだ。

「エイトッ、来て!」
「はい、旦那様♥」

 慌てて8のカードを召喚する。
 彼女はクイーンを除いた7人の中では最も知力が高い。意味不明な状況に対する分析は彼女に任せるのが最適だった。
…ちなみに彼女より高位であるはずの10はフィジカル全振りの…なんというかアレなのでこういった場面で呼ぶには向いてない。

「なんなのアレ!?」
「落ち着いてください旦那様、見たところ確かにアリスです。」
「アレがッ!?」
「アリス……ですがあれは言わば上位アリス。たまに居るのです、真のアリスを目指して幾つもの試練を乗り越えた結果、力を蓄えた固体が…。おおかた単身での攻略に行き詰まりパートナーを探し始めたといったところでしょう。」

「当たりぃー。だからそのお兄さんちょーだい?」
「ダメです!」

 エイトにむぎゅと腕を抱き締められる。
 その光景を見てアリスはぷくーと頬を膨らませた。

「む〜見せ付けてくれちゃってもー!!いいもん、お兄さんを手に入れたらじっくりちょーきょーしていっぱいイイコトするんだもん!…あ、そしたらおねーさんたちは召使にしてあげるね♪お城を買ってハートの女王様ごっこするのー♪」

 無邪気な笑顔でなにやら恐ろしいことをのたまっている。

「で、どーするの?おねーさんが次のお相手?」
「いえ、ここはもうクイーンを呼びましょう。」
「え、いいの?」
「はい、アレはおそらく時魔術か領域魔術を使います。その場合他では対処が難しいかと。」
 
 目の前で無残な姿となっている二人を見ながらエイトが言う。

「君達がそれでいいなら…」

 彼女に言われたとおり持てるカードの中で最強のそれに手を掛ける。順番を飛ばされた10がカードの中で白目を剥いた。

「きて!クイーン!!」

 他よりやや豪華な光の演出とともに、長身の女性が現れた。

「むぅ、だから最初から私に任せてくれればよいのですよ!」
「まぁみんなで決めたことだから…ね?」

 出てきたクイーンは両手を腰に当てて拗ねていた。
 

『初手にクイーンは出さない』

 これは冒険を始めてしばらくした後できた取り決めである。
 当初はその強さゆえクイーンを多用していたのだが、しばらくすると圧倒的過ぎて他の者の出番が無くなると不満が出てきた。結果、経験値を稼がせる目的も併せ、なるべく数字が下位の者から使用するという協定が出来たのだ。「それはそれで不公平になる」との声もあったが、最終的にはクイーンも納得したのである。
 だが、心の中ではやっぱり不満であったらしい。


「…まぁいいでしょう。ここで私の力を再認識していただきます!」
「…気をつけてね?」

 クイーンはニヤリと不適な笑みを浮かべる。

「ふふ、お姉ちゃんにまっかせなさい♪」

「んー決まった?そのなんか偉そうなおねーさんが次のお相手でいいのー?……じゃあ今度はこっちからいくよぉ?」

 待っている間ヒマだったのか、どこからともなく取り出して読んでいた絵本を閉じ、アリスは首から下げた懐中時計を手に取った。

「…ッ!?」

 それを見たクイーンが顔色を変えとっさに杖を振るう。そして次の瞬間…





「……は?」


 目の前の状況が理解できない。
 
 ここは先ほどまで見晴らしの良いただの草原だったはず。それが10歩程先を境として街になっていた。しかも凄まじい破壊の痕だ。
石畳は砕け家は崩れ地面には大穴が空き…そしてそこらじゅうから巨大なキノコが生えている。街の向こうに見えるのは巨大な女神像…

 わけが分からない。

「あっ、クイーンとあのアリスは…」
「はいここに♪」

 …と言った途端、破壊された石畳の上に突然現れた。
 そしてその腕の中にはしっかり例のアリスを捕まえている。

「あひっ…♥あっあっ……ごめんなしゃい…♥こうさん、こうさんしましゅ……♥」

 クイーンはやや上気した顔で、アリスのほうはクイーンの腕の中で完全に蕩けていた。


 
「エイト…何が起きたのか分かる範囲で。」

 困ったときの解説担当、エイトさんの出番である。
 
「はい、まずあのアリスが時魔術を発動しようとした為クイーンは急遽詠唱介入し彼女の時間に潜り込みました。その中で戦闘が始まり、なんやかんやあって結局勝ったということでよいのではないでしょうか。」

 エイトがチャームポイントの眼鏡をクイッと上げた。

「あの街やらキノコやらは…?」
「クイーンの魔術にあのようなものはありません。おそらく相手方が使用した領域魔術の跡かと…。」
「うーん、とりあえずクイーンが無事でよかったよ…」

 魔術戦に関することについては正直まだ良く理解できていない。が、状況を見るにとりあえずこちら側の勝利ということでよいのだろう。思わず二人の居るところへ駆け寄ろうとするが、エイトに腕を掴まれた。

「まだ行ってはダメです!」
「え?」
「アリスの領域魔術の効果がまだ残っているかもしれません。不用意に中に入っては…あそこに落ちてる猫のようになりますよ。」
「え?」

 言われてエイトが指差す方向に目を向ける。『街』の領域の端、崩れかけた建物の影にその猫は居た。
 1人のチェシャ猫が地面にのた打ち回っている。
 
 「にゃひいいいいいいいいぃぃ!!?にゃんで…にゃんにゃのこれへぇ……服がぁ!!…服に犯されるにゃぁ…!」

 彼女も自分と同様、気付いたときにはこの状況だったのだろう。しかし位置が悪かった。

「『街』の侵食があそこで止まっているのはクイーンが私たちを守ろうとした結果でしょう。しかしただの観客は守護対象外だったようですね。」

半狂乱でのたうちながらも必死に這いずり『街』の外へ出ようとするも、その境で見えない何かに阻まれる。その両手は虚しく空を叩き、その間にも彼女の表情はみるみる狂っていった。
やがて糸が切れたかのように崩れ落ち、嬌声を吐きながらピクピクと痙攣を繰り返す肉塊と化すまでそう時間はかからなかった。

「ひえぇ……」
「あぁ……引っ掛からなかったぁ… おにーさんがこっちに来てくれたらまだ逆転の芽もあったのにぃ…んひぃ!?」

クイーンに捕まったままのアリスがそんな事を言う。それを咎めるかのように彼女のスカートの中に潜り込ませたままのクイーンの手が蠢き、アリスは首を仰け反らせた。

…危なかった。アリスの罠だったようだ。


「さあ、これでもう打つ手は無いでしょう?結界を解いてください。」
「…ふぁい。」

アリスがぐったりとしながらも手を掲げ、宙で何かを握り締めるような動作をするとガラスの割れるような音が響いた。見た目には何も変わっていないが、おそらくあの街と草原の間に設置されていた見えない壁のようなものが無くなったのだろう。
 障害物が無くなったことでクイーンがアリスを抱えたまま歩いてくる。そのまま壁に阻まれることも無く、『街』の領域を抜けた。

「よく見破りましたね、エイト。お手柄ですよ。」
「だいたいあの猫のおかげです。そもそも中から教えてくれればよかったものを…」
「それも出来ないようになっていたのです。淫獄都市ルベルキア…なかなか恐ろしい術でした。あそこに満ちている高濃度の魔力を含んだ瘴気は肉体と衣服の両方を変質させます。肉体の方はスタンダードな催淫と感度上昇ですが問題は衣服のほう。数多の耐性を積んだこの法衣がこの通り…」

 そう言ってクイーンがその襟元を少しだけめくる。

「ひぇ……!?」

 外見は全くもって変化なし。しかしその内側は完全に異形化していた。
 桃色をした無数の触手が蠢いている。

「相応の精神力がなければあの猫のようになるのも当然ですね…。さて、それでは…」


 ボボボンッと音を立て残りのトランパート達が勝手にカードから出てきた。

「楽しい楽しい拷問タイムといきましょうか♪」
「ふえええぇぇ………!?」

 アリスの表情が青ざめる。

「さ、二人ともいつまで埋まっているおつもりですか。」
「ひぃん!?」「おひょっ!?」

 カードから出てきたセブンスの二人が未だ巨大キノコに下半身を飲み込まれたままのフォーズを引き抜いた。二人の下半身の衣服は溶け、代わりに白くネバる菌糸がその両足を覆っている。本体から離れてもその菌糸は生きているらしく、二人の下半身をにゅるにゅると這い回っていた。

「クイーンがカタを着けてくれましたよ。『お返し』をしなくて良いのですか?」

「ふ、ふふ…、そうだね…たっぷりとお礼を…してあげなきゃ、だよ…ね♥」
「こんな体にしてくれちゃってもぅ…♪さてどうしてあげようかなぁ…♪」

 よろよろと立ち上がり二人ともクイーンに捕まったままのアリスの方へと近づいてゆく。毎度この場面の彼女たちはとても楽しそうだ。敵とはいえやや同情してしまうがここで下手に口を出すと後が怖いため、心の中で合掌し一歩下がって見守ることにする。

 南無…。


………、

……、

…。





「あは…あははは…♥、どうしよう…もう何もされてないのに…イくの止まらなぃ……♥えっちなカラダになっちゃったよぉ……」

拷問が終わり草原にへたり込むアリス…、彼女は自らの涙と涎で汚したその端正な顔を快楽に蕩けさせつつも、先ほどまでの拷問の後遺症を自覚すると呆然とつぶやいた。
 
「それに…」

 視線を下に向ける。
 アリスらしくほぼ平坦だった胸元も今はしっかりと谷間が出来るほどに膨らみ、加えてエプロンドレスには母乳が滲んでいる。

「わたしのおっぱいが……」
「あ、あなたが私たちに使ったこのミルク、解析して…10倍に濃縮したのを塗り込んだのに…あまり大きくならなかった…ね……。種族の壁…なのか…な?」
「身動き取れなくなるくらい膨らませようと思ったのにねー。次襲ってきたアリス以外の魔物に試してみよっか?」
「ふふ、そうだ…ね♪」

 フォーズツーの手には中身が半分ほど入ったミルク瓶が握られていた。彼女らの乳が膨らんだのは時間停止中にアレを使われたかららしい。
 なんにせよ次に彼女らの餌食になる魔物には今から同情を禁じえない。

「だからって…お尻にまで塗りこむことないじゃない………!」
「いや、前だけじゃバランス悪いかなと思って………なんかごめん。」「あ、でも…その、に、似合ってる…よ?だ、大丈夫、需要はある……と、思う。……たぶん。」
「たぶんて!!」
 
 拷問の最中、ミルクの効きが思ったほど良くないことに業を煮やした2人は途中から何を思ったか、彼女の臀部にそれを塗り込め始めたのである。その結果、今現在地面にへたり込んでいる彼女のそこは遠目にも分かるほどずっしりと実ってしまっていた。
 幼い顔立ちに肉感的な肢体というギャップ……フォーズツーの言うとおりどこかに需要はありそうな気もすしなくもない。…いや、あって欲しい。なんかこっちが申し訳ない気持ちになるので。



「そのカラダにも慣れてきたようですね…ではちょっと立って見ましょうか♪」

 フォーズ達とのやり取りを黙って見ていたクイーンが口を開いた。その顔にはいつもどおりの慈愛を湛えた微笑…しかしその奥底には悪戯心と呼ぶにはあまりにも淫蕩な何かが潜んでいるのだ。
 言葉には出来ないが、これまでの彼女との付き合いの中で何となく理解できてしまった。

「…え?うん…。」

 アリスが立った。

「ちょっと失礼…♪」

 直立したアリスの背後に回り、そのエプロンドレスの背中側を指でサッとなぞる。

「え、何を…………ッひゃううぅ!?」

クイーンの動作から一拍遅れ、突然彼女は背を仰け反らせへなへなと崩れ落ちた。

「ひゃあああぁぁ…何これぇ!?」

 腕にその身をかき抱き、悶えるアリス。クイーンはいったい彼女に何をしたのか…

「私は貴女の体には手を出しませんでしたので…かわりにその服を改造させてもらいました♪裏地にジャブジャブの羽毛と綿毛型の触手を絶妙なブレンドで生やし、更に快楽のルーンを刻印してあります。全身性感帯の今の貴女にはよく効くでしょう?歩く度に腰が抜けるような快感が味わえますよ♪」
「ほんとに腰が抜けて立てないんだけど…」
「ではこれからは這って移動してくださいね♪」
「ひ、ひどい…」

 泣き笑いの表情でアリスは抗議するがクイーンはどこ吹く風である。とりあえずその着る拷問器具と化したドレスを脱ごうとするもなかなか上手くいかない。

「これ…やっぱり脱げない?」
「当然、脱衣妨害の術式が編み込んであります。更に対燃焼、破壊、腐蝕、消滅他あらゆる魔術耐性を完備、加えて仮に破くことが出来たとしても瞬時に元通りになる再生能力付き!あ、勿論浄化の術式も付いているのでご安心を♪何を漏らしても汚しても、一晩経てばキレイさっぱり清潔ですよ?」
「あはは……ですよね………なんて至れり尽くせり…。まぁ気持ちいいからいっかぁ…♥」

 そういう問題なのだろうか…?

「他人の契約者に手を出そうとするからですよ。あんなえぐい術まで使って…正直私も今にも意識が飛びそうなのですからお互い様です!パートナーが欲しいならちゃんとチェシャ猫と交渉するか、正規の資格を得て外の世界に狩りに行きなさいな。」
「あうぅ……」

 観念したのか、震える足でもう一度立ち上がるとふらつきながらここから立ち去ろうとする。…が、クイーンに呼び止められた。彼女は魔術で作り出したであろう『街』を指差していた。

「コレは片付けていきなさいよ!」
「うぅ、わかったよぉ…」

アリスが右手を水平に上げると、どこからともなく分厚い開いたままの本が現れる。よく見れば先程待ち時間中に彼女が広げていた絵本のようだ。
そして彼女がそれをパタリと閉じると同時に、その『街』もまるで仕掛け絵本が閉じられるかのように本に吸い込まれ消えてしまった。
後にはやや破壊の痕が残る元の草原と…巨大なキノコの群れ。

「キノコは戻せないから…このままでもいいよね。好きに『使って』いいよ?……それじゃ!!」

 そう言うだけ言いい、近くにあった水溜りへと彼女は飛び込んだ。そしてそのまま出てこない。
 
「…?あ!逃げた!?」
「え?」
 
 ただの水溜りに見えるがどこかへ通じる水路にでもなっているのだろうか。

「鏡渡りですね。水面を鏡面に見立てたのでしょう。」

「は、はぁ…」

また初めて聞く魔術だ。ここの魔物は時折、こちらの理解の及ばない能力を身に付けている事がある。
そもそも自らが使役しているトランパート達の事すらまだ正確に把握出来てはいないのだ。これまでは彼女達のステータスの高さに物を言わせて何とかなってきたが、今後あのアリスのような強敵が現れるならしっかりと彼女らを理解しておかねばならないだろう。それぞれ何が出来て何が出来ないのか、能力の相性も含めて戦略的に立ち回れるようにしておく必要がある。

「その通りです。しかし、ここから全てあのような敵ばかりになるわけではありませんのでご安心ください。あれは言わば関門、分かりやすく言えばボスキャラのようなものなので。一定のポイントでああいう強力な固体と出会うように出来ているのですよ。」
「当然のように思考を読まないでください…。あ、でもボスってことはつまりゴールは近いという…」
「ステージ1ー1の中ボスです。」
「……。」

「ちなみに総ステージ数は…」
「さぁそればかりはなんとも…。100程度で済むのか、あるいは1000を越えるのか…少なくとも4や8でないことだけは確かだと思います。」

くらりと一瞬気が遠くなった。予想以上に長い道程だったらしい。

「…だからこそ!もっとお互いの理解を深めなければならないのですよ!」

エイトがずいっと顔を寄せてきた。

「ふふ、そぉですよぉ♪お互いを知り、信頼を醸成しなくてはこの先の戦いを生き残れません♪」

クイーンも便乗する。
なんだか怪しい流れになってきた。

「そうそう、しっかりと相性を見極めて戦略を立ててれば私達の身体もこんなことにならなかったんだからぁ…♥」
「……♥」

そしてフォーズの二人まで両腕に絡み付いてくる。
確かにその通りだが、あの時は彼女らも警戒感0で突撃したのだから正直お互い様だと思う。しかしその明らかに質量を増してしまった双丘を押し付けられると何も言えなくなった。

「それでは理解と信頼を深めに行きましょうか♪」

「………はい」

 観念するしかなかった。





「…。」
 
 淡く桃色に色づいた空気が甘ったるい香りを伴って鼻腔を侵す。

 ここはハートのトランプの中の空間。壁や天井、床の至るところにハートの意匠があしらわれた出口の無い個室…。

 彼女たちの領域である。
 
 壁のハートの模様から外と内を出入りできるのはその紋章を持つトランパートのみ、それ以外の存在は彼女らと一緒でなければ通過することは出来ない。
すなわち、一度ここに引き込まれてしまえば彼女らの許可が無ければ脱出は不可能なのだ。

「さぁ、楽にしてて下さいね?」

 壁際に備え付けられた大き目の寝台…そこで正座したエイトに後ろから柔らかく引き倒される。後頭部が彼女の豊かな胸の間に埋まった。
 両腕は脇の下から回され胸の下あたりに乗っている。優しく柔らかく抱かれているようでその実、上半身を起こそうとしてもびくともしない。
 
「エイト毎回その位置…ずるい。」
「私は毎回解説役として貢献していますので♪まぁ実際役得ですが…かしこさを優先的に上げておいてよかったですよ。」
「むー、力と素早さなら負けないし!もっとでっかい敵が出てきたらわたしがそこ代わるんだし!!」

 今回出番の無かったテンさんが不満そうにしている。彼女の言うパワータイプの敵がこれまでまったく居なかったわけではないのだが、それらも他の面子で圧倒できてしまっていたのだ。…これまでは。
 今後フィジカル面であのアリスと同等の力を持つ敵が立ちはだかることもあるのかもしれない。

 …などと考えているとフォーズの二人がベッドに上がってきた。

「今日は私達が先に頂いていいってー♪そのあとにクイーン…たぶん気絶するまで搾り尽くされると思うから、頑張ってね☆」
「き、気絶するだけで許して貰えるのかな…?」
「さり気に怖いこと言わないで!?」

 端に目を向ければ当のクイーンは少し離れたところで呼吸を荒くしていた。そしてふと目が合う。

「……(ニコッ)♪」
「……(ヒエッ)!?」

 情欲と期待に満ちた視線をこれでもかと注ぎこまれ背筋に痺れが走った。
いや、日ごろから彼女にはおおいに世話になり、今日も窮地を救われた身とあってはその期待に応えたいのは山々なのだが、いかんせん体と精神がもたないのは分かりきっているのだ。

「まぁ、後のことは後で心配するとして…今は私たちと楽しもうよ♪」

 股の間に陣取ったフォーズワンが言った。そしてツーは目の前…いつの間にかポジショニングが完了している。
 ここで一旦他のメンバーは姿を消し、部屋の中には自分含めて4人だけが残った。

「じゃあ、あのアリスが残してったコレ…さっそく使ってみようか♪」

 コレとは…ちょっと顔を傾けてワンのほうに目を向けると、彼女の手には顔ほどの大きさの真っ白いキノコが握られていた。あの戦場に生えていたうちの1つなのだろう。あの場にあったものの中ではかなり小型の部類だが、冷静に考えればそれでも巨大である。
 そして彼女はカサの部分に手を掛けるとそのまま握りつぶした。内部からどろりと溶けた純白の菌糸が溢れ出す。

「これを…」

 溢れた菌糸を掬い取り両の手でこね合わせ混ぜ合わせ…、そして手を開くとべっとりと糸を引く真っ白な何かが出来上がった。
 そして彼女はそれを目の前で孤立する肉の棒に塗りたくる。お世辞にもあまり立派とは言えないその逸物はあっという間に白いものに塗れてしまった。

「…う!?」
「どぉ?不思議な気持ち良さでしょ♪柔らかくてスベスベで…ヌルヌルでネバネバで…しかも勝手に動き回ってキモチイイところをしつこく弄って来るの♪私たち感度の上がった状態で下半身全部それに漬かってたんだよ?」
「お股全部がむにゅむにゅされて…拷問に使えそうな快感だったよね…うふふ♪」
「んでこうなったコレを…」

 腰が持ち上げられ膝の上に乗せられた。

「せっかくだからこの変わっちゃった身体を味わってもらうね♪」
「わ、私も…。ちゃんと好きになってもらわないとね…えへへ♪」

 ワンはその肥大化した乳房を開き、ツーは乳汁を滴らせる自らの先端を口に含む。そして…

「えい♪」
「…ん♥」

 腰のモノは巨大な双球に飲み込まれ、同時に唇が奪われた。
 柔らかな菌糸の粘液に包まれた状態で、更にその上から圧倒的な質量に包まれる。

「あは♪前は先っぽがちょっと見えてたのに、もう完全に隠れちゃったねぇ♪」
「んん――ッ!?」

 彼女らに精を搾られるのはこれが初めてではない。その都度手を変え品を変え、様々な方法で搾り取ってくるのが常である。しかし今回ほど勝手が違うことは無かった。
 腰の上に感じる重量感とその中で粘体に責められる感覚、そして強制的に口移しで流し込まれるミルクに思考が犯される。フォーズツーは一見大人しく臆病に見えるが、実は彼女の責めは非常にねちっこい。唇を割り開き侵入した舌が強引に口に含ませたミルクを唾液と混ぜ合わせ攪拌し、こちらの舌や口腔粘膜に刷り込むように塗り付けてくるのだ。その味が甘く味覚を犯すと同時に、触れた箇所から粘膜に染み込み感覚を鋭敏にしてゆく。まるで口内を性感帯へと改造されてゆくような感覚に思わず顔を引こうとするも、後頭部が更に深くエイトの胸に沈みこむだけだった。そして彼女は絶対に逃がさないと言うかのように、更に深く身体を押し付け口内を貪ってくる。押し付けられた双乳が潰れ、噴出した乳汁が二人の胸元を汚した。

「このミルクまだどんな効果があるか分からないんだよねぇ…。ただ甘いだけじゃないのは感覚的に確かなんだけど…悪いけど実験台になってね♪しばらくこっちは動かさないでおいてあげるから。…て言っても中の菌糸は止められないからこのままでもしばらくしたら勝手にお漏らししちゃうかもねぇ♪」

「……っぷぁ!?」

 フォーズワンがそこまで言ったところでようやく唇が開放された。朦朧としながらも必死で深く息を吸い込む。…がしかし、それも長くは続かなかった。

「ふぁ…今度わぁ直接……♥」
 
 空いた口に今度はその乳の先が突っ込まれ押し付けられる。当然逃げ場など無く、口内を勢いよく溢れ出るミルクが襲った。口と乳肉の間に隙間は無く、鼻の通気口を確保するだけで精一杯。それも口内にミルクが満ちれば危うい。視線を上にやり、目で手加減を訴えかけるも、その相手はと言えば恍惚とした至福の表情でもはや心此処に在らず…。結局、窒息しない為にはその口の中に流れ込む液体を飲み込むしかなかった。

「大丈夫♥大丈夫♥少なくとも身体に悪いものじゃない筈だよ♪」
「んむ―――ッ!?」

 そうは言われてもどんな効果があるか分からなく、しかし何かしらの効果があることが確実な液体を強制的に飲まされるというのはやはり恐ろしい。ついでに言えばこれまで見てきた不思議の国の常識を思い出せばその効果がどのような類のものかはおおよそ想像が付くのだが…

「んんッ!?」

 突然腰の奥にキュンと力が入った。じんわりとした快感が生まれ、みるみる膨らんでいく…。同時にふわりと浮き上がるような、頭がぼーっとする心地よさに包まれ…気付いたときには背を仰け反らせ絶頂していた。

「んっ……むぉ…ぉ………!?」

 何がなんだか分からないうちにイかされ、口からミルクを垂らしながら放心する。いつの間にか口に押し付けられていた胸の圧力は緩められ、普通に呼吸が出来るようになっていた。絶頂のピークは過ぎたものの、いまだ甘くイき続けているような不思議な感覚を味わう。股間の方に意識を向ければ、腰の前半分を包み込む圧倒的な質量とその中で性感神経を優しく擽られるような快感が変わらず与えられていた。…いや、最初よりも感覚自体は鋭敏になったような気がする。

「なるほどなるほど…、飲むともう強制的にイかされちゃうんだ。あとは性感神経の鋭敏化?こりゃまた強力だね―♪」

 フォーズワンがそんなことを言っているのをぼんやりと聞いていると不意に目の前が開けた。焦点の合わない目をこらしてその先を見ると、興奮した様子のもう片割れが無言で自らの乳を持ち上げ吸っている。

「―――ッ!!?」

 その病的に白い喉がごくりと動くと同時に、彼女は声にならない悲鳴を上げ仰け反った。その衝撃で口から離れた乳房がぶるんと揺れる。

「あ…あは……こ、これ…イイ…です………♥」

 ミルク混じりの涎を垂らした蕩けた表情でそれだけ言うと、彼女はどさりとこちらの胸へとうつ伏せに倒れこんだ。…その顔は幸せそうなアヘ顔に変わっていた。

「あーあ…自爆しちゃった……。それじゃこっちもさっさと搾っちゃうね♪もうちょっとじっくり楽しませてあげたかったんだけどあんまり時間掛けると後が怖いし…ゴメンね?」

 そう言ってちらりと脇へ目をやるとワンはこれまで獲物を捕えたまま動かさなかったその乳肉へと手を掛ける。
 そしてじんわりと圧力を掛けながらそれを捏ね回し始めた。

強制的に感じさせられるその柔らかな感触が脱力を誘う。甘く射精感を高めながらも我慢を許さない、一見優しそうに見えて実際は効率的な搾精に特化した悪魔の如き技巧…。しかも今回はそれだけではない。

「どう?ナカで菌糸が動いて気持ちいいでしょ♪」

 そう、最初に塗りつけられたキノコの菌糸もまた、自らを包む周囲の肉の動きに呼応するかのように激しく蠢き始めたのだ。しかも乳肉の動きとは全く別に、独立した動きで精を搾ろうと責め立ててくる。

「うあぁ……」
「ソレは加えられた力に反応して激しく運動するみたいでね…上から刺激を与えることで2種類の動きを同時に感じられるの♪…あは、もうイきそう?いいよ、イっちゃえ♪」

 ぎゅう…と一際強い圧力が加えられ、それに反応して中の菌糸が激しく蠢いた。既に腰は砕け切っており、我慢することなど出来ずに精が勝手に漏れ出す。

「おほお…漏らしてる漏らしてる♪最初のころよりだいぶ早漏になってきたね…日頃のちょーきょーの成果が出てきたかな…♪」

 今回は戦利品である謎のキノコとミルクの効果もあると思うのだが口に出せば確実に薮蛇なので黙っていることにした。

「あ、でもキノコとミルクの効果のせいもあるよね…。うん、もっといい調教メニューを考えなきゃ!」

 無駄だった。
 



……、

…。


「……それじゃ、私たちは戻るから…あと頑張ってね♪」

 身体の上で寝ていたフォーズツーを担ぎ上げ、ワンが言う。彼女はそのまま床に刻印されたハートの紋章に飛び込み消えた。
 
 入れ替わるようにどこかで順番を待っていたクイーンが姿を現す。

「さぁ。次は私と楽しみましょうねぇ♪」
「クイーン……」
「もう、二人きりのときはお姉ちゃんと呼んでくださいと言ったじゃないですかぁ♪」

 彼女は今、姉プレイに嵌っていた。

「でも…今は二人じゃ……」
「え……?あ、居たのですかエイト。」
「見つかってしまいましたか……隠密の術により空気と化していたというのに。」

 背後で自分を拘束し続けていたエイト。ずっと喋らないと思ったら何らかの認識阻害の術を使用していたようだ。

「さ、どうぞお気になさらず続きを…」
「出て行きなさい。」
「しょぼん。」

 エイトがしょぼくれる。だがしかし、クイーンにこう言われてしまうと従わざるをえない。

「仕方ありません。でも最後に…」
「んん!?」

 背後から顔に腕を回され唇を奪われた。そしてひとしきり口内を嘗め回され、開放される。
 
「…これくらい、いいですよね?それではまた。今度は私にも甘えてくださいませ。旦那様♪」

 そう言って彼女は姿を消した。
 あとは本当に二人きり…

「……。」
「……ごめんなさい!正直もう我慢が限界なので入れさせてもらいますねッ!!」
「えっ!?」

 前戯も無く、いきなり彼女が覆い被さってきた。ムードもへったくれも無いが彼女の情欲に狂った表情を見れば本当に限界であろう事が分かる。ここで下手に焦らそうものなら後でどんな拷問を受けるか分からない。
 大人しく、されるが儘にその捕食を受け入れた。

「……んっ♥」

 彼女の纏う不思議な素材で出来た衣服…その股間部分が割けるように開き、陰茎を呑み込んでゆく。そこはもう既に、肉穴に満ちた粘液が滴り落ちるほどに濡れそぼっていた。
 微細で密な襞を掻き分け膣内を進んでゆく。先ほどフォーズツーに飲まされたミルクの効果に加え、粘膜を通して染みこむクイーンの愛液が感覚を更に鋭敏に変えてゆく。複雑な内部構造を余すことなく味わわされ、悪寒の如き快感が背筋を駆け登った。思わず背が仰け反る。

「…っはぁ♪全部入りました♥まだ出しちゃダメですよ?出すときはいつもの体勢で…」

 後頭部に左手が回される。同時にこちらの左手は彼女の右手に取られた。

「お顔をおっぱいの間に埋めて…両手はお尻に……そう、しっかり掴んでくださいね♪ぎゅっと腰を押し付けて……♪」

 彼女の身体にしがみつく様な格好で拘束される。頭と掌が柔肉に包まれ、その沈み込んでゆくような柔らかさに脱力させられてゆく…。そこが彼女の肉体の凶悪な所…そうやって肉体的、精神的抵抗力を奪い完全に無防備になったところで、圧倒的快楽を叩き込んでくるのだ。

「ふふ、力が抜けていい感じにふにゃふにゃになってきたかな?それじゃぁ…ナカを動かしますね♪」

 腰は密着させたまま一切動かさず、その内部の構造を蠢かして精を搾り取る。それが彼女のやり方であり、その威力はここに至るまで幾度も思い知らされてきた。
 精神的にも完全に脱力させられ、直後に襲い来るであろう刺激に構えることすら出来なくなった獲物に彼女の膣肉が容赦なく牙を剥く。

 ずるり…

「むぐっ……!!」

 まずは膣内をみっしりと満たし肉竿に絡みつく襞肉が一回大きく蠕動した。その刺激だけで危うく精を漏らしそうになるが、その瞬間根元がきゅっと締め付けつけられ吐精を阻まれる。射精を堪える力すら奪われた今の状態では、クイーンの与えるどのような刺激でも簡単に精を漏らしてしまうだろう。そしてそれを許可するもしないも彼女の自由…。
 彼女は今、完全にこちらの肉体を支配しているのだ。

「出したらアレをしますから…もうちょっと遊びましょう♪次は先っぽいきますよ♪」
「むぇ…」

 先端に何かが押し付けられる。奥の方から降りてきたそれは彼女の子宮口…しかしその形状は一般的に想像するものとはあまりにも異なっていた。
 本来つるりとした滑らかな器官であるはずのそこは数多の襞が折り重なり、まるで肉で出来た薔薇の花のようになっている。咥え込んだペニスの先端を徹底的に責め嬲るための拷問器官と化しているのだ。
 そしてその肉の搾精花が亀頭に喰らいつく。無数に備わった花弁が包み込み、ざわざわと敏感な箇所を擽り回し揉みしだいてきた。
 
「――ッ!?」

 激しくも射精に至らない快感。それが媚薬性の愛液とともに幾度も塗り重ねられてゆく。しかも彼女の中に入れている限り、粘膜を通して浸透してゆくそれにより感度はじわじわと高められ続けるのだ。
 このままこれが続けられればいつかは壊れてしまうだろう。…しかし彼女はその限界すらも完全に看破していた。現実感が希薄になり、意識を手放しそうになったところで根元を締める肉が緩められ、竿全体がざわりと無数の襞に撫で上げられた。
 
「ふぁぁ……」

 既に限界まで高められていたところにその刺激が止めとなり、とろとろと精が漏れ出す。短時間とはいえ限界近くまで焦らされた果ての絶頂にしてはあまりにも甘く穏やかな放精。快楽を伴う失禁が途切れずに続くような不思議な感覚…。射精中のペニスに加えられる絶妙な愛撫が為せる技である。
 蕩けそうな快楽と恍惚に溺れ時間を忘れるがそれもやがて治まった。

「はぁぁ……染み入ります♥なんて美味…この性欲と食欲を同時に満たされる感覚は一度味わえばやみつきになってしまいますね…♥」

 クイーンもまた恍惚とした表情で甘いため息をついた。しかしその能力に見合う『大喰らい』である彼女がたった一回の搾精で満足するはずも無い。いや、彼女を満腹にしようと思ったら通常の人間の精では―それがたとえ魔力変換効率が最適化された契約者からの直搾りであろうとも―何日かかるか分からない。そんなことをすれば脆弱な人間の精神では確実に壊されてしまうだろう。
 故に、彼女を満たす為にはもっと別のものを捧げる必要があった。

「…では続けていきますね♥力を抜いて、そのまま受け入れてください。抵抗したり、我慢しようとしてはいけませんよ?」

 射精直後の亀頭部に膣奥の淫花が再び覆い被さる。襞の表面に微細な柔突起が現れ、先程よりも更に激しい動きでその鋭敏化した性感帯を責め嬲った。
 
「ひゅお……ッ」

 くすぐったさに似た耐え難い激感に襲われ、変な声が漏れた。脱力していた身体に力が籠もり、制御を離れ勝手に暴れだそうとするがその前にクイーンの腕によって抱き締められる。

「大丈夫ですよぉ♪このままぎゅってしてあげますから…その溜まってるモノ、出しちゃってください♪さぁ力を抜いて…♥」

 その声に導かれるように…或いは暗示の魔力が載せられていたのか、腰の奥から脱力感が拡がり同時に視界が真っ白になるような絶頂感に上り詰める。一瞬尿意が膨らんだかと思うと今度は勢い良く彼女の中に放出される。
 潮を噴かされたのだ。

「あぁ〜、精がいっぱい溶け込んだコレ…ご馳走様です♪」

 その身を抱き締めていた彼女の腕から開放され、仰向けにベッドに倒れこんだ。全てを注ぎ込んだ開放感と疲労感…今度こそもう指一本動かせない。強すぎる快感も過ぎ去れば心地よい余韻となり、睡魔を誘う。

「もうおネムですか?…ではおねんねするまでちょっと面白いこと、してみましょうか♪」
「ふぇ…?」
 腰で繋がったまま騎乗位の体勢でいたクイーンがずいっと体を倒してきた。
 顔の左右に両手がつかれ見下ろされる。目の前で大きな胸がゆさりと揺れた。

「今、私の服はあのアリスの攻撃によりご覧の有様です。更にルベルキアの瘴気により全身の感度が大幅に引き上げられ元に戻りません。」

 そう言って彼女は上半身の衣服の一部を少しだけ捲り上げる。その裏地は完全に変質し、桃色をした羽毛の如き微細な触手が無数に蠢いていた。一見ピンクの毛皮が裏地に使われているかのようだ。

「この快感…少しだけ味わってみませんか?」
「ゑ?」

 嫌な予感がする…

『センシティブ・リンク』
「い゛ぎい゛――!?」

 突然全身が総毛立つような快感が襲った。一瞬で絶頂に達し、彼女の中に残りの精液を全て吐き出す。性感を急激に高められて絶頂したというよりは強烈な絶頂そのものを直接叩き込まれたかのような衝撃…。
 それは本当に一瞬、一秒にも満たなかっただろう。しかしその一瞬で残りの体力全てを持っていかれた。

「ぁ…………ぁ………」

「知覚範囲内に居る相手に対し、自らの感じている感覚を強制的に共有させる術です。コレのおかげである意味、この身体も強化と言えなくも無いのかもしれませんね♪」

 先程の超的な感覚の余韻にいまだ混乱が抜けない頭で必死に理解しようとする。アレがなんだったかと言うと、つまり彼女はあの快感を常に感じながら今普通に会話しているのだ。
 その事実の方が衝撃だった。

「いつか同じ快感を共有しながら交わってみたいですね♥それでは、夜にまたお会いしましょう。おやすみなさい♥」
「あは…はは………」

 そう、これはあくまで今日の活躍に対する対価、夜にはまた契約そのものの対価を支払わねばならないのだ。…今度は8人全員に。

 急激な眠気が襲う。先程の感覚共有により疲労感がピークに達したのだ。夜に行われる淫惨な儀式を思い、恐怖と期待が入り混じった複雑な感情が生まれるがそれもすぐに眠りの中へと溶けて行く。そのまま、意識は夜までのつかの間の休息へと堕ちていった…。



「…。」

 愛しの契約者の安らかな寝顔をひとしきり上から眺めたクイーンはようやく腰を上げ彼のペニスを解放した。このまま夜になるまで添い寝していてもいいだろうか…と考えたところであることに気付く。

「あ…、結局お姉ちゃんって呼んでもらってない!」









―翌朝―

 そこには満身創痍の1人と満足げな8人。

「か…身体が動かない………」
「じゃあ今日はお休みにしましょう♪時間はいくらでもあるのですから先に進むのは明日でも良いでしょう♪ね♪」
「いつでも諦めていいんだからね?ここで永遠に暮らすほうがきっと幸せだよ?」
「うぅ…」

 ここぞとばかりに畳み掛けられる甘言。しかしこれに流されてはいけない気がした。理由は分からないがきっとたぶんそうなのだ。単なる意地かもしれないが…

 …しかし物理的に動けないのではどうしようも無いのも事実。

「じゃあ今日だけ…」
「やた!!」

 仕方がない。これは仕方がないのだ、不可抗力である。



「それにしても…あのチェシャ猫は笑いあり涙ありなんて言っていたけど、今のところ濡れ場しかないよね…。」

…ピコン!!

 隣に寝そべっていたフォーズワンの頭上に電球が灯った。

「ちょっと待ってて!」

 起き上がり壁のハートマークから外へ出てゆく。
そして数秒後戻ってきた。その手には桃色のふわふわした何かが大量に抱えられている。

「…なにそれ?」
「ジャブジャブの羽箒♪これでくすぐり拷問プレイしよ♥せっかく動けない事だし…♪」
「あっ、笑いってそういう……」



 結局これにより筋肉痛となり、翌日も動けずに終わったのだった。

 女王の城はまだ遠い。
19/11/18 13:45更新 / ラッペル

■作者メッセージ
調子に乗って続きを書いてしまいました…クイーンのキャラ付けコレでよかったんだろうか……

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