連載小説
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3章 『阿呆な奴ら』
「ふぅ〜イイ湯だった〜」

俺の家は夕食後に入浴するのが決まりになっている。
別に誰が決めたわけじゃないけど。

「次、誰入る〜?」

一応家主とゆうことで、1番風呂の特権は俺にあるのだが…。

「ワシじゃ!」「アタシ!」「ティータです」「私だ」「………(挙手)」
「誰でもイイけど喧嘩すんなよ〜」

そう言い残して、俺はホルタウ印の濃厚ミルクを美味しくいただく。

「ぷはあーーー! やっぱ風呂上がりはコレに限……」
「ワシが先と言っておろう!!」
「ふんっ! この場合、年長者が先と決まっているだろう?」
「ならワシじゃ! この中ではワシが1番長く生きておるのじゃぞ!!」
「どうだかな…こんなナリで、しかも無い乳を自慢げにステータスなどと吠える幼女の、どこが年長者だと言うのだ?」
「ぐっ…! み、見た目は関係ないじゃろ!?」
「大アリだ。 その点、私は完璧パーフェクト世界一だ! 今なら私の体をシゲシゲと眺める権利を貴様に与えるぞ?」
「ぬぬぬぬ…!!」
「どうだ? 歳だけ重ねたロリババアと高貴なドラゴンの差を思い知ったか?」

ブチッと何か切れる音が聞こえた。
たぶん気のせいだと思う。

「………ぬがあああああ!! もう我慢ならぬ!! おもてへ出るのじゃ雌トカゲ!!!」
「臨むところだアバズレ! 良い機会だ、どちらが上かケリを着けるとしよう!!」

そう言うと2人はズカズカと家を出て行った。
家が郊外にあって良かったよ…。

「なかなか面白いものが見れましたね」
「ティータ…お楽しみを奪うのは気が引けるけど、できれば止めてくれ」
「検討しておきます」

ダメだコイツ…。

「ご、ごめんねフレン…アタシ、止めようとしたんだけど……」
「あ〜、フィロは良く頑張ったよ。 あんまり気にすんなって」

ティータは高みの見物。
フィロは傍でアワアワ。
メイは喧騒の隙にちゃっかり2番風呂。


ま、いつも通りの展開だ。












翌朝。
今日は朝から大学へ行かなければならないで、少し朝食は急ぎめ。
ちなみにテーブルの家主席には俺。
俺から見て右側の列にはアイリとフィロ。
そしてその2人と対称に座るのがエルザ、メイ、ティータ。
右側の列には1つ空き椅子がある。
これも別に誰が決めたわけでもなく、何となく決まった配置。
家主席に俺を座らせたり、俺の起床に合わせるあたり、コイツらは変に律義なところがある。

「………(zzz)」
「エルザ、メイ起こしてくれ。 行儀が悪い」
「まったく世話が焼ける…」
「ティータよ、ソースを取ってくれぬか」
「マヨネーズをオススメしますが?」
「ソースと言っておろう!」
「モグモグ…♪」

相変わらず賑やかな食卓。
嫌でも目が覚める。
それにアイリとエルザは一応和解した様子。
どんなに大喧嘩しても、だいたい次の日には元に戻っている。不思議なものだ。
まぁ、またすぐに喧嘩を始めるんだろうけど。

「フレンさん。 今日はいつ頃お帰りになりますか?」
「夕方ぐらいじゃないかな、たぶん」
「そうですか」
「ん? なんかあるのか?」
「いえ、今日はティータが食事当番なのですが、今朝見たら食材が切れかけていたので」
「あぁ、買い出しか。 一緒に行ってやりたいけど、夕方はちょっと遅いなぁ…」
「アタシが行ってあげる〜!」
「イイのかフィロ?」
「うん! ティーちゃんとお買い物するの楽しいもん♪」
「余計なもの買うなよ?」
「あう…;」
「安心してください。 実験に使うもの以外は買いませんから」
「それこそ余計なものだろうが!!」












「…で、何か釈明は?」
「「「「「………」」」」」

帰宅後。
テーブルの上に置かれている、『余計なもの』のオンパレードを見て久しぶりに怒った。
一応食材は揃えてあるものの、食材より『余計なもの』の方が多いことに腹が立った。

「あれだけ言ったのに、まったく…」

頭にタンコブをつけた5人を1列に正座させている。
5人全員で行ったみたいだけど、フィロやメイは誰かにそそのかされた様に見える。

「フィロ、メイ。 反省してる?」
「うぅ…ごめんなさ〜い……;;」「………(コクコク!)」
「はぁ…じゃぁ釈放」

そう言うと、フィロとメイは自分達の部屋に戻っていく。

「むむむ…何故あの2人だけ解放させるのじゃ……」
「まったくだ。 不公平にも程がある」
「しかしフレンさん、良い判断です」
「何でお前ら上から目線なんだよ…」

口ぶりから察するに、やはりフィロとメイの罪は軽いようだ。

「ん〜…あとティータも解放」
「「なっ!?」」
「ありがとうございます」

そそくさと地下の研究室に逃げ込むティータ。

「お、お主! ティータを解放とはどういうことじゃ!?」
「あいつらを贔屓(ひいき)しているのではないだろうな!?」
「お前ら、俺を舐めるなよ? 伊達に長く一緒に暮らしてないさ」
「「ぐっ…!」」

あの3人の解放は間違っていないはず。

「まず1つ、フィロとメイは自分から悪事を働くことはない」

これは言わずもがな。

「2つ、ティータは口ではああ言ってるけど、あいつの場合言葉遊びのつもりに過ぎない。 実際に実行するような奴じゃない」

こんな感じで消去していくと……

「よって、お前ら2人が残る」
「「………」」
「大方、ティータあたりに罪を着せようとしたんだろ?」
「「ギクッ」」
「阿呆…」

もはや阿呆としか言いようのない阿呆コンビだ。

「女性雑誌はわかるとして…なんだよ、この『スペルマンD』って。 しかも箱詰めの徳用」
「は、半額じゃったからつい…」
「オバサンかお前は」

しかも怪しい匂いがプンプン漂ってる。
正直ネーミングセンスも悪い。

「じゃこれは? 『魔界ヌッポンサプリ』」

魔界とか付いてる時点で胡散臭いぞコレ。

「それは、その…肌に良いと評判だから……」
「気持ちはわかるけど、食費から出さないでくれ。 小遣いあげてるんだし」

他にもバフォ様印の胡散臭い商品がところ狭しと置かれている。

「思ったんだけど、バフォメットって希少な存在なんじゃなかったっけ? これ作ってる奴もバフォメットなんだろ?」
「うむ、個体数が少ないのは確かじゃ。 じゃが、エキドナほど希少種というわけでもないのじゃ」
「ふ〜ん。 じゃぁこのバフォメットと面識あったりするの?」
「ない。 じゃが是非会ってみたいものじゃ」
「同感だ。 バフォメットが製造しているのは少々気に食わんが、良質なものを提供してくれているのは確かだ」
「人気なんだな、そのバフォメット…」

不思議と俺も会ってみたくなってきた。

「ちなみに未だ独身だそうです」
「うお!?」

いつの間にかティータが俺の背後に立っていた。

「半ばどうでもイイ情報だけど…てゆうか何で戻ってきたんだ?」
「ずっとリビングにいましたよ? 気配を消していましたが」
「ティータよ…まさかワシらが説教されている様を楽しんでおったのか?」
「バレましたか」
「百歩譲ったとしても、良い趣味とは言えんぞ?」
「犯罪者に何を言われてもまったく気になりません」
「ぐっ…」「むむ…」

口でティータに勝てる気がしない。
マッドサイエンティストを自称するだけのことはある。

「話の続きですが、独身と言っても想い人はいるようです」
「ほう?」「ふむ」「へぇ」
「しかし、その想い人は既婚者だそうです」
「あらら…」
「ふむ…」
「切ないのう…」
「なんでも7人の魔物を妻にしているそうです」
「「「一夫多妻!?」」」

どれだけ図太い甲斐の持ち主なんだよ…。

「…ん? 7人?」
「フレン、どうかしたか?」
「あぁいや、うちの大学に複数の妻がいるってゆう教授が1人いるんだけど…」
「ほう? その男の名は知っておるのか?」
「会ったことはないけど…『ルーク教授』だと思う。 ファミリーネームは覚えてない」
「ビンゴです、フレンさん」
「えっ、マジ?」

ルーク教授…若干25歳にして魔物生態学を創始、最優秀栄誉賞を受賞した偉人。

「こんな身近にいたなんて…」
「灯台元暗し、というやつだな」
「1度そのルーク教授とやらを見てみたいのじゃ」
「噂だけど、恐ろしくハンサムらしいぞ?」
「ティータもそう聞いています。 10人とすれ違えば10人が振り向くほどだそうです。 魔物限定のようですが」

魔物生態学は学年が上がると必修科目として扱われるようになるらしい。
その内嫌でも会うことになるだろ。

「と、話がだいぶ逸れたな」
「「………」」

え、許してくれたんじゃないの?みたいな目を向けてくる2人。
ティータはキッチンで夕食の準備中。

「結局、黒幕はどっちなんだ?」
「こいつじゃ!」「こいつだ!」
「………」












「むぅ…何故ワシがこんな目に……」
「くっ…空の支配者である私が…なんたる体たらく……!」

まったく反省の色が見えなかったので、2人には2階のテラスからの宙吊りの刑を執行。
一晩反省してもらうことにした。

「それもこれも、貴様が罪を認めなかったのが原因だ! どう責任をとるのだ!?」
「なんじゃと! それを言うならお主も同じじゃ! 何故あの時このようなくだらん計画を思いついたのじゃ!?」
「貴様がやろうと言ったのだろう!! 王に罪を擦り付けるなどと…万死に値するぞ! このロリビッチが!!」
「黙らんか雌トカゲ!! お主のせいでワシの周りの空気が汚染されてしまうじゃろうが!!」
「き、貴様ァァ…!」
「ぬぬぬぬ…!」



一晩中喧嘩していたそうな―――――





10/11/24 18:57更新 / HERO
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■作者メッセージ
微エロと書きながらエロがない。
すみませんの一言ですorz

どなたでも感想をいただけると嬉しいです^^

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