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第十二話 「白い嘘」 前編

「山の天気は変わりやすいとは聞いていたが…。」

送る前にヒメから「少し寒くなるかもしれんのぅ…。」と、聞いてた矢先の事だった。

「これは寒くなりすぎじゃ…ないのか?」

そこは白い銀世界。
どこを見ても真っ白、おまけに風まで強くなり吹雪になる始末だ。
先程までは日が隠れていた程度だったはず…どうしてこんなことに?
ザクッ…ザクッ…と雪の中を歩いていく。

「これはどこかで雪を凌がないと凍え死んでしまうな…。」

山道だからって軽装で来たのはまずかった。
急いでどこか暖まる場所を探さないと…。
多少は耐えることができるが何もない雪原で眠るとなると自殺行為だ。

「洞窟か…廃家…吹雪を凌げるところなら何処でもいい、急がないと。」


……。



俺はずっと宛もなく歩き続けていた。
方角も分からないうえにどれだけ歩いても見渡してみても白い景色が広がるだけで何も見えない。
歩いていくうちに段々と体力が削られ…足も動かなくなってくる。
手は感覚を失い、体温も分からなくなり…意識が朦朧とする。

「こりゃ…本格的に…まずい…な…。」

バサッ…。

足を取られ雪の上に倒れた。
…正直起き上がれるほどの力がない。
背中に感じる雪の冷たさが逆に暖かくなるような錯覚に見舞われる。

「はは…参ったな…、眠くなってきやがった。」

寝てはいけないと頭のどこかで叫んでいる。
だが瞼が落ちていくのを止められない。
こんなとこで寝るぐらいならヴェンのところで眠りたかったな…。

「…そうだ。」

今更何言ってる。
俺には待ってくれている妻たちがいる、俺の帰りを待ってくれている皆がいる。
こんなところで…くたばってられるか…。

なんとか仰向けの身体をうつ伏せにし起き上がろうとする。

「…ん?」

気のせいか?
今、前を見たとき何か屋根が見えた気がしたが…。

「…気のせいじゃない!!」

間違いない、だいぶ埋もれているがあれは屋根だ。
屋根があるのならまだ下の家は崩れていないはず…。
身体を奮い起こして立ち上がり、屋根へと近づいていく。
人間、希望があればどんな状態でも意外に動けるもんだ。
近くまで来たとき明らかに人がいる痕跡を見つけた…。

「なんだ…?中に人がいるのか?!」

こんな辺境の地で…だが逆に今はありがたい。

「すまない、誰かいないか?!」

力を込めてドンドンッと戸を叩く。
吹雪が強くなってきた…急いでくれ…!!
しばらく…何度か鳴らし続けた時だった。

「はい…。」

中から細くか弱い声が聞こえてきた。
どうやら女性みたいだが…。

「旅の者だが…吹雪が酷くて凍えそうなんだ、出来れば中へ入れてもらえないか?」
「旅のお方…、殿方でございますか?」
「そうだ…別に怪しい者じゃない、最悪この家の前でも構わない…止むまで居させてくれないか?」
「…。」

俺の返答に向こうは黙ってしまった。
出来れば中へと入りたいが中からの声が一つしかないとなると今いるのは女性だけということになる。
なぜこんな所に一人かは分からないが、警戒されても仕方がない…。
なんとか信用してもらえないか?
しばらくして…。

「…わかりました。」

ゆっくりと戸が開き、中へと入れてくれた。

「ありがとう…恩に切る―」

開けてくれた女性を見たとき、俺の動きが止まった。

「寒かったでしょう?どうぞ…お入りください。」
「あ、ああ…。」

想像していた以上に…綺麗な人だった。

…。

中は少し寒く薄暗かった。
無理もないか…、窓も殆ど雪で積もっているしな。
でもなんか変だな、少し違和感が…?

「少しお待ちください…夕食を用意致します。」
「お気遣いなく、吹雪が止むまでだし…。」
「大丈夫ですよ…簡素な物で申し訳ないのですが。」
「…すまない。」

囲炉裏に火が灯り寒かった部屋全体が暖かくなった。
その上に鍋を吊し、グツグツと米を炊いていく。

「はい…どうぞ。」
「おぉ…。」

俺はあっというまに並べられた料理に心底驚いた。
焼き魚であったり、汁物であったり…。
こんな辺境の地でまともな料理が食べられると思わなかった。

「確か食べるときは…そうだ、『いただきます』。」
「ふふ、冷めないうちに…。」

温かいご飯を俺は貪るように食べた。
最近色々な事があったせいでまともに食べていなかったからとても美味しく感じる。

「それほど美味しそうに食べて頂けるなんて…嬉しいです。」
「いやいや…助かった、それにしても…えっと?」

名前を聞こうとしたとき、ユキノは座り直して自己紹介した。

「私、雪乃(ユキノ)でございます。」
「ユキノか…どうしてこんなところに一人で?」
「私…あまり群れるのが苦手で…こうして静かに暮らすのが好きなんです。」
「へぇ…ずっとここで?」
「はい…こうして人が訪ねてくるのも何年ぶりでしょうか。」

少し遠い目をして語るユキノ、彼女なりに何かあるのだろう。
そのへんはあまり詮索はしないでおこう。

「これだけ積もってたら食料も大変だろう…良かったのか?」
「えぇ、大丈夫ですよ?」

ユキノは優しい微笑みをしながら言った。
人間の女性を見るのが久しぶりなせいかすこし緊張する。
そんな姿をみて彼女はふふっと笑った。

「さぁ、まだありますから…どんどん食べてくださいね?」
「あ、ああ。」

初めて会ったにも関わらず良くしてくれるユキノ。
俺は申し訳なく思いながらも、出来立てのご飯を頬張った。

…。


「へぇ、そんなことが…。」

ご飯も食べ終わったあと、俺はユキノの話し相手になっていた。
なにか旅の話を聞きたいと言われ俺の今までの旅の経緯を話していた。
勿論、彼女たちのことはなるべく伏せて。

「色々あった…崖から落ちたり、野盗に出会ったり。」
「…お身体、大丈夫ですか?」
「並の鍛え方はしていない、じゃないと旅なんて出来ないからな。」
「そうですか…でも、どうしてそこまでして旅を続けるのですか?」
「あ…それは、な。」

核心を突くような質問をされ、少しどぎまぎしてしまう。
落ち着け…適当に、適当に。

「さ、探し物…。」
「探し物ですか、何をです?」
「えっと…大切な、そう、思い出とか?」
「思い出…ですか?」

馬鹿…もっとマシな答えなかったのか。
なんだよ思い出って…。
ところが。

「ふふっ…。」

予想外にもユキノは笑っていた。

「やっぱ…可笑しいよな?はは…。」
「いいえ、とても素敵だと思いますよ、すこし子供みたいですが…ふふ。」
「そ、そうか。」

なんとか納得してもらえたらしい。
俺としてはしっくりこないがじゃあなんだと言われても言い返せないからこれでいくしかない。

下手な嘘ついちまったな…。

…。


「では…おやすみなさい。」
「あぁ。」

寝床を用意しようとしたユキノに、流石にそれは悪いと断りを入れ俺は毛布だけ借りて隅の方で座って寝ることにした。
渋々いった感じで了承したユキノは布団にへと入った。

「…。」

今…皆はどうしているのだろう。
スラミーの時の様に誰か子供が出来てたりするのだろうか…?
そのときは…また名前を考えてやらないとな。
ちゃんと戻れるようにしておかないと。

(そうだ…近い内に見に行ってみようか?)

彼女たちもきっと喜ぶだろうし、そうしよう。
その時を思い浮かべて俺は目を瞑った。

「…。」

ゆったりと微睡んでいく。
明日も吹雪が止み次第、すぐに出よう。
さすがにユキノの世話になりっぱなしは良くない。
…早く次の魔物に―。






「どういうつもりだ?」
「…?!」



ゆっくりと近づいてくる影に俺は言い放った。

「…起きていらしたのですか?」

その影、ユキノは驚いたように聞いた。

「金が欲しいんなら素直にそう言え、じゃなきゃ下手な考えは止めておいたほうがいい。」

目を瞑ったままユキノに忠告をする。
だがユキノの答えは意外なものだった。

「いいえ…私は金目当てでも命目当てでもございません。」
「…なんだと?」

俺が目を開けるとユキノは頬を赤くさせ少し危なげな視線をこちらへと向けていた。

「私はただ…少し身体が冷えてしまいまして。」
「…なら囲炉裏を―」
「いえ…もっと暖かい物が目の前に…。」

寝巻きをはだけていき、白い肩を露わにしていく。
人間の女性でも発情することはあるらしい。

「…悪いが俺には妻がいる、それに…俺は普通の女性には―。」

そう言いかけて止まった。
待て…普通?
目の前のユキノはずっと笑っている。


俺はここへ入ってくるときの事を思い返した。
あの時、感じた違和感…。
それは―。

何故…俺が入ってきたとき、囲炉裏に火が無かったんだ?

身体が冷えていたから気付かなかったが今考えれば不自然すぎる。
あれだけ寒い中、彼女はずっと火をつけていなかった?
普通なら凍え死んでしまうほどの寒さだ…そして今になっての発情―。

「お前…まさか。」
「ふふふ、やっと気づいてくださいました…。」

彼女の肌がみるみる変わっていき…そして雪のように白くなり正体を現した。

「ゆきおんなか…。」

そう呼ばれた彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「最初、あなたをここへ呼び寄せるときはハラハラ致しました…死んでしまわれたかと思いましたから…。」
「この吹雪もお前の力というわけか。」
「はい、ですから…逃げようなんて思わないでください。」

なるほど…さっきから吹雪が止む気配がないのもそのせいか。
だが、ある意味運は良かったか。

「…俺もお前に会いたかったよ。」
「そうなのですか?」
「ああ、俺はお前達魔物を探すために旅をしているのだからな。」
「あら、先程は思い出だと聞いておりましたが…?」
「それは忘れてくれ…、お前たち魔物を探して妻にするのが俺の目的なんだ。」
「それはそれは、素敵な旅ですね…。」

俺の言葉を聞いたユキノの目がすっと細くなる。
まるで浮気をした夫を疑う妻のように。

「ということは…私も貴方の妻にしていただけるのですね。」
「そちらが良ければな。」
「先ほど言った『妻がいる』とは…私と同じ魔物?」
「あぁ、今はこことは違うところで俺の帰りを待っている。」
「では…アレスさんには既に沢山の妻が?」
「…さっきから何が言いたい?」

俺が聞き返すとユキノは少し顔を近づけていった。
そして耳元で囁くように言う。

「忘れたのですか?…私は群れるのが苦手なんです、それにここが一番好きな場所ですから―」

彼女が言葉を続ける前に俺の身体に異変が起きたのが先だった。

「ぐっ?!」
「ここで、好きな貴方とずっと過ごしてはいけませんか?」

なんだ?!
急に身体が震え出してきた…。

「な…なん…?」

歯が鳴りすぎて上手く喋れない。
寒い、寒すぎる…凍えそうだ…!!
今まで平気だったのにどうして?!

「ふふふっ…寒いでしょう?…私の身体で暖まって下さい。」

はらりと帯を取り、着物を脱いで美しい白い肌でユキノは誘惑してくる。
ダメだ…これは彼女の誘惑の罠だ。
掛かったら…ここでずっと…。

「ほら…触れてください。」
「ひっ?!」

彼女の肌に触れたとき、ゆきおんなとは思えないほどの暖かさを感じた。
いや…これは身体が凍えてるんじゃない…心が冷えきっているんだ。
現に…俺は彼女を求めてしまっている。

「だ、駄目だ、俺には。」
「大丈夫…誰も咎めませんよ…私が貴方の妻なのですから…。」

彼女の手がゆっくりと下の方へと向かい、股間を優しく撫でていく。
その手はとても暖かく、触れられるだけで大きくなっていった。

「ふふっ…逞しいです…。」
「う、…あぁ…。」

まずい…気が遠くなってきた。
理性が保てない、今すぐ彼女を押し倒したい…繋がりたい…。
だが俺には…。

(そうだ…薬を…。)

声にならない言葉を上げながら俺は腰に付けた緑色の薬の瓶を取り出した。
ユキノは俺に迫り首元を舌でなぞらせていく。
これ以上は限界だ…早く飲まないと!!
蓋を開け、瓶を逆さにし一気に飲み干し、平静を取り戻す。
…はずだった。

「…あ“ぁ?!!!」

中身をいくら振っても出てこない。
口に注がれるはずの緑色の液体は瓶の中で静かに停止している。
…その訳を知ったとき、俺の中ですべての希望が絶たれた。

「…凍っている…だと。」

この寒さで薬は凍結してしまっていた。
囲炉裏に火を焼べた際、溶かしておかなかったせいだ。
今更…悔いたところで…もう…。
俺の手から瓶が離れ、床へと落ちた。

「アレス様…ユキノを…抱いてください。」
「…。」

その言葉で…俺の理性は砕け散った。


――――――――。



「あぁん、すごい…いいっ、いいです…!!」

ユキノの膣内へと盛りきった獣のように肉棒を突いていく。
突かれる度に彼女は淫らな声を上げ、俺を抱きしめる。
あれだけ寒かった身体と心は彼女によって満たされていった。

「もっと…もっと…暖めて、貴方の身体で…ユキノを暖めて…。」
「はぁ…はぁ!!」

突けば突くほど彼女は俺を求め腰を自分で動かしていく。
彼女の蜜壷からは愛液が溢れ、全体を包むように締まっていく。
肌は少し冷たいのに、中はとても暖かくとろけてしまいそうだった。

「寂しかった…ほんとは凄く寂しかったのです、殿方のを…欲しくて、あんっ…自分を慰めたり…していましたが、アレス様がいてくれるなら…ユキノは幸せです…。」
「ユキノ…!!」
「ひあっ…急に激しくっ…なってっ!!…出されるのですね?…私の中に出してくださるのですね…んあっ、暖かい精子、貴方の…沢山下さい!!」
「んんっ!!」

より一層腰を動かし、止めに彼女の膣内が締まった瞬間、彼女の中へ俺の子種をぶちまけた。

「はぁん…!!…熱い…熱いのが中に…沢山入って…。」

彼女はとても満足そうにとろけきった顔をしていた。
俺は…まだ…余韻が残って、動けない。

…。


「んっぶ…ちゅ…ちゅば…んはぁ…。」

ユキノは出したばかりの俺の肉棒を口と舌で綺麗に舐めとっていく。
出したばかりにも関わらず、俺の肉棒はまた大きくなっていた。

「ふふん、しゅごいですっ…れろぅ…これなら、お口にも…ちゅぶ…お精子…頂けそうです…♪」
「あぁ…ああ。」

情けないような声が出てしまう。
もう何も考えることができない。
何も思い出せない。
今俺はどうしてこんなことになっている?
そもそもどこから来た?初めからここにいた?初めってどれくらい?
俺は何のために生きている?

なんでもいい…今は…この余韻に浸りたい。

「アレスさま…、ちゅば…私のおクチは、ひもちいでしょうか?」
「…あ、ああ、すごく。」
「ふふっ…嬉しいです…、じゃあもっと頑張りますね…。」
「う、わぁ…そ、そんなに…!!」

彼女は激しく吸い上げ俺の射精を強く促していく。
我慢できそうもない、すごい吸引だ。

「い、イきそうだ…。」
「ふぁい…お口に…おふひにはひてひいでふよ?」
「う、うう!!」
「んぶうっ!?」

たまらずユキノの口へと射精した。
ユキノは一瞬目を見開けたがやがて喉を鳴らして飲み干していく。

「ぷはぁ…美味しい…とても濃くて…。」
「はぁ…はぁ。」

射精の余韻を味わいながら息を整える。
これほどの女は他にいない。
彼女がたまらなく愛おしい…。

「アレス様…。」
「おいで…ユキノ。」
「はい…。」

彼女を自分の胸へと抱き寄せる。
少しひんやりした肌が逆に心地いい。

「アレス様…何もかも忘れて…私だけを愛して下さい。」
「…。」
「私と…一緒にここで過ごしましょう…、貴方は私の夫なのですから…。」
「…夫?」
「はい、私の夫でございます。」

そうか…。
ユキノは俺の妻なんだ。
ということは俺はここにいるべきだ。
ユキノは寂しがりだから…一緒にいてやらないと。
何も考えずに…ただ一緒に居ればいい。
それで…いいんだ。
そういうのも…悪くない。

「ユキノ…。」
「はい…。」
「ずっと、一緒にいよう。」
「…はい♪」

そして彼女に口づけをし、重なり合った。




――――――――――。


「じゃあユキノ、行ってくるよ。」
「はい、お気を付けて…あなた。」

いつもの様にユキノに見送られ食材を採りにへと出かける。
昨日は散々だったからな、吹雪に見舞われて何も採りに行けなくてユキノと一緒に早寝してしまった。
今日は頑張って沢山とってこないとな!!
天気もいいし、吹雪もなし、絶好の天気。
俺は雪の中を軽快に進んでいった。
12/01/31 16:33更新 / ひげ親父
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■作者メッセージ

はい、最近眠り病に悩まされているひげ親父でございます。
なんとまたもや新しい魔物が増えていましたね…。
しかも二つ…。
どこかで加えられると良いですね。

さてさて…実は本編の進行率と共にコラボの作品も作っております。
しとしと様のネズミ海賊団をテーマに書いております。
しとしと様の作品も素晴らしいものなので是非見てくださいね?

ここまで見ていただいてありがとうございます!!
後編もご期待下さい!!

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