連載小説
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三章
      ※

 今日も今日とて、エルフィスに抱かれていた。
 既に調教師として何人かの女性を仕付けている彼に、まだ練習が必要なのかは分からない。けれど彼は、ほぼ毎日、男たちが酔い潰れて寝静まった頃にやって来ては、エイリアを抱くのだ。
 そのせいか、エイミーはエルフィスの部屋で寝入ってしまう事が多かった。代わりに事が終わった後、エルフィスとエイリアは、そのエイミーのベッドで朝を迎える事が増えていた。
 初めてエルフィスの腕の中で目覚めたときの、あの頭が真っ白になってしまう感覚を、エイリアは鮮明に憶えている。
 唇が重ねられた。もう彼の舌が侵入してくる感触にも、彼の唾液を飲みこむ事にも嫌悪感はなくなっている。目の前で閉ざされた瞼から伸びる睫毛が意外と長い事や、その下の宝石のような瞳の色や、中性的な造形が浮かべる笑みが時々やけに優しい事も、もう知っていた。
 そう――彼は優しくなっていた。何も知らない状態でドルムスの指示に従うだけだった初めてのときはともかく、それ以降はアマルダや他の男たちから別のやり方を聞く機会があったにも関わらず、相変わらずこちらの言う事には耳を貸さずに、一方的な蹂躙を続けていたというのに。
 いつからだろう、と考える。確かアマルダに呼ばれて、レミアという少女の相手をした日から数日が経過した頃からだった。
「何か……あったのですか?」
「え?」
 エイリアは、ハッとなる。胸中で呟いただけのつもりだったのに、口に出してしまっていたらしい。
「いえ! ……何でもありません」
 以前ならすぐ別の言葉にすり替えられたというのに、今では口応えも満足に出来なくなっていた。
 あまりの情けなさに唇を噛んで顔を背けようとすると、口づけの前のように顎を掴まれ、それを阻まれる。
「言ってみ」
「……いえ、その」
 僅かに躊躇い、
「貴方の私への扱いが、以前より優しくなっている気がして……。それがレミアさんの所へ行ったあたりからなので、彼女と何かあったのではと……」
 まるで嫉妬のようだと、ふと思った。
「何か、って……普通に抱いただけだけど」
「普通……私にしていたようにですか?」
「いや。あのときは、恋人みたいにって頼まれた」
 恋人、と呟きエイリアは俯く。そのまま震える声で、
「な……ならば、もう私で練習する必要などないはずではありませんか。何故、ここへ来るのです……?」
 そして勢いよく顔を上げ、
「何故、私のところへ来るのですか!? 何故、私を抱き続けるのですか!?」
 今にも泣き出しそうな声で叫んだ。
「貴方が優しくするから、私はおかしくなってしまいました! 大嫌いなのに……最低の行為で私の処女を奪い、私の夢を踏みにじり、私を汚し続けているのに……」
 とうとう決壊した目尻から、大粒の涙が溢れ出す。
「どうして、こんな思いをしなければならないのです……!? どうして、こんなに貴方の事が気になるのですか!!」
 泣きながら、エイリアはエルフィスの胸に顔をうずめた。
 嗚咽するこちらの頭を、彼は暫く優しい手つきで撫でてくれていた。けれど落ち着いてきたのを見て取るや、後頭部付近の髪がグッと掴まれる。そのまま無理やり上を向かせられた。
「ぅあ!?」
 痛みに顔をしかめる間もなく、強引に唇を塞がれる。
「んっ、んんー!? んっんっ――んぅ、ぁ……はぷ、んんっ――んふ、ぅ……」
 初めの頃のような、暴力的な口づけだった。
 エイリアが驚きに身体を硬くしているのにも構わず、エルフィスは一方的に彼女の舌を、口内を蹂躙する。そのままベッドに押し倒されても尚、唇を離す事をしない。
 いいかげん苦しくなってエイリアの意識が遠退きかけた頃、彼はようやく口を離した。ぼうっとした瞳で荒く息をつく彼女を至近距離から睨み、
「分かってないみたいだけど、俺の態度が変わったっていうなら、それはお前が自分の立場を理解したと思ったからだ」
「っは……たち、ば……?」
「忘れたなら、もう一度教えてやる。お前は俺のものだ。従順になったなら厳しくする必要はないと思ってたけど、それが嫌なら態度を戻してやろうか」
 酷薄に細められるエルフィスの目に背筋が寒くなり、エイリアは勢いよく首を振る。
 エルフィスは鼻を鳴らすと、エイリアの上から退いた。傍らのベッドに放り投げてあったシャツを羽織ると
「気分が壊れた。今日は寝る」
 そう言って、未練などないような足取りで部屋を出ていく。
 暫くして不思議そうな表情のエイミーが戻って来ても、エイリアは乱れた服も直さないまま呆然と座りこんでいた。


 深夜。明かりのない室内を、月だけが仄青く照らしている。
 カーテンを開けているのはエイリアだった。隣のベッドでは、エイミーが無邪気な寝顔で規則的な寝息を立てている。ここへ来たばかりの、全てを拒絶し自分を守ろうと身体を丸めていた頃とは比べものにならないくらい、彼女は明るくなった。
 その変化をエイリアは素直に喜んでいた。姉と呼び慕われるのも、くすぐったくも心地いい。欲を言えば、こんな場所でさえなければとも思うが。
 けれど、今はそんな気分にはなれない。時々やるように彼女のベッドへ潜りこんで、暖かな子供の体温を感じながら眠りに落ちるような気にはなれなかった。
「……何と……愚かな…………」
 月を見上げていた目を伏せ、吐息と紙一重の呟きを洩らす。
 胸が痛かった。認めたくはないが、目を逸らせないほどに痛んでいた。
 理由は簡単だ。エルフィスの言葉――
『お前は俺のものだ』
 ――もの≠セ。
 彼の態度が優しくなってきたから、勘違いしていた。良心の呵責を覚えたとか、自分の行いに疑いを持ち始めたとか、そして何より愚かな事に――
 もしかしたら彼は、自分に特別な感情を抱いてくれているのではないか――そんな事を考えたのだ。彼を説得できるかも知れない。ここから出られるかも知れない。初めは躓いたけれど、改めて勇者と守護天使としてやり直せるかも知れない――そんな甘い幻想を。
 そんな訳がなかった。自分は人格すら認められていなかった。
 その事実に、エイリアは涙を零す。
 自分は道具だった。調教練習のための奴隷ではなく、道具。売り物にする価値すらない、奴隷の調教で発散しきれなかった性欲を晴らすための、ただの肉人形。
「……本当に……愚かな女です。私は……」
 俯いた顔の下――他の奴隷たちと同じ質素な服の膝に、涙が浸みていった。

      ※

 買い物のときにはメモを作る。
 買うべき物を暗記するくらいは容易なのだが、万が一でも間違う可能性があるなら万全を期すのはおかしな事ではないだろう。個人的な買い物ではなく、屋敷で使う備品や食料の買い出しなのだから。
 内容をアマルダに確認してもらった後、彼女から資金を受け取る。この屋敷の金銭管理は彼女が担っていた。
 けれど、この日、彼女は買い出し用の資金とは別に、それよりは少ない額をエルフィスに渡した。問うようにアマルダを見返すと、
「なに……ちょっとしたボーナスさ」
 照れ隠しなのか、何でもない事のように彼女は言う。
「エイミーを連れて行って、そいつで服を買っておやり。あの子が元々着てた服はボロボロで、あと何回も洗濯しないうちに捨てる事になりそうだからね」
「ああ、成程」
 エルフィスも納得した。着替えとして使っている服は奴隷用の一番小さなサイズのものなのだが、それでも歳の割に小柄な彼女には大きいのだ。
「残りは好きに使いな。髪飾り追加してやるなり、飴玉買ってやるなり」
 分かった、と頷いてから、ふと気になってエルフィスは聞いてみる。
「……姐さんは子供が好きなの?」
「可愛い子は好きさ」
 やや無理のある形で誤解を装い、自身の性癖から来る好き≠答えるあたり、やはり照れ隠しなのかも知れなと思った。
「それと、こいつも頼むよ」
 その話題を早く有耶無耶にしたいという訳でもないのだろうが、アマルダは別のメモを差し出してくる。一枚目には店の名前と、場所と、入店の際の合言葉が書かれていた。
「ウチの事を知ってる、数少ない業者だよ。あんたも、そろそろ顔見せときな」
 二枚目にはエルフィスが身内――新入りである事を証明するために、ドルムスとアマルダが一筆書いてくれてあった。
「……分かった」
 ようやく一人前として認められた、という意味も勿論あるのだろう。けれど同時に、これは脅しのようなものでもあると思った。
 重要な情報を知った以上、抜けられない――そういう脅しだ。

 エイミーには、準備らしい準備などなかった。
 彼女を連れ、馬屋へ向かう。買った物を全て自分だけで持ち帰る事など出来ないので、買い出しには幌つきの荷馬車を使うのが常だった。力はあるが気性の大人しい牝馬を一頭引き出し、馬車に繋ぐ。いつの間にか、こういった作業にも慣れていた。
 身を起こし御者台に上ろうとしたところで、ふと、屋敷の開いた窓からこちらを窺う者がいる事に気づいた。目が合うと彼は驚いたように眉を上げ、ぎこちなく手を上げる。
「よ、よう」
「何? ついでに買ってくる物でもある?」
 時折そういう個人的な買い物を頼まれる事もあるので訊いてみるが、彼は判然としない事をモゴモゴと呟くだけだった。
 エルフィスが怪訝そうに眉根を寄せていると、
「ああ、いや……何だ。そう――感慨に耽ってたんだ! お前も、とうとう俺たちの一員だなーって」
「ふうん……」
「まあ、あれだ! お前がいると飯は美味いし、屋敷ん中は妙に小綺麗だしで良い事づくめ――いや、だからって下っ端としてこき使うって事じゃなくて、その……とにかく、よろしくな。今後とも」
「ああ、うん……よろしく」
 よく分からないまま返事をするエルフィスに構わず、彼は奥へ入っていった。


 辿り着いた町は都市と呼べるような大きなものではなかったが、それでもエイミーには驚きだったらしい。
 人の多さ。道行く者たちの服装。威勢の良い商店の客引きの声。そこに並ぶ食べ物。整頓された建物。ゴミの落ちていない道。
 昨日通った道に今日は餓死者が倒れている事も珍しくない彼女の育った村では、考えられない風景ばかりなのだろう。物珍しげに辺りを見回している。
「先に買い物を済ませよう」
 エルフィスが歩き出すと、エイミーも頷き速足でついてくる。
 メモに記されているのは、干し肉と野菜、香辛料、パンにバター、そして――女物の下着。
 屋敷の男たちは普段やっている事を棚上げして、これを買いに行く事を嫌っていた。恥ずかしがるような歳でもないとは思うが、買うのは勝手が違うらしい。そのせいか、以前エルフィスが平然と買ってきて以降、彼が買い出しの担当になったときを見計らって、下着がメモに書かれるようになった。
 おそらく彼らがそれを嫌う理由は、いい歳した男が女物の下着を買う事の恥ずかしさよりも、その分量に関する言い訳を考える事の方が本命なのではないかと思う。不審げな店主の問いに、女性の犯罪者だけが収監されている監獄で働いている、と答えたら信じてもらえてしまったエルフィスには、彼らの気持ちは分からないのかも知れない。
 一通りの買い物を済ませ、その都度それを馬車まで運ぶ。このくらいの規模の町には、だいたい出口付近に馬を預かってくれる所があるものだ。
「次は何?」
 大量の下着の詰まった箱を馬車に乗せたエルフィスを、傍らからエイミーが見上げてくる。
「次は、お前の服だ」
 そちらへ視線を遣って答えると、驚いたように彼女は目を大きくした。
「お前に合う着替えがないから、何着か買って来いってさ」
「……いいの?」
「いいんじゃない?」
 適当に応えて、エルフィスは歩き出す。エイミーの顔は嬉しそうだった。
 同じ年頃の子供と擦れ違う度に、彼女が身体を縮こめるようにして自分の背後へ隠れていたのには、エルフィスも気づいていた。そのあと向けられる顔には、身体に合わない服を着る自分のみすぼらしさを恥じると共に、そんな自分を連れている事でエルフィスが恥を掻くのでは、という申し訳なさが見て取れた。
 何となく、その気遣いは不愉快だった。らしくない、とエルフィスは思う。どちらかといえば明るく気の強い彼女がそんな顔をする事には、憤りにも似た感情を覚えた。

 扉を引いて服屋へ入る。店員は愛想よく迎える声と共にエルフィスを見、次いでエイミーに視線を移して軽く表情を引きつらせた。
 それを敏感に察してエイミーが俯くが、エルフィスは構わず彼女の肩を抱くと、その店員の所へ向かう。
「彼女に合う服を、いくつか見繕ってもらえる?」
「は、はい。かしこまりました」
 店員は焦ったように愛想笑いを浮かべて、奥へ入っていった。その態度に、自分はどんな顔をしていたのかと、エルフィスは何となく頬を撫でる。
「どんな服がいいか、希望はある?」
 歩きながら訊くと、エイミーは思案げな表情になった。やがて、
「……丈夫で動きやすければ、何でもいい」
 それは、おそらくエルフィスの補佐という、あの屋敷での立場を鑑みた上での答えなのだろう。
 しかし、それならば今のままでも問題はないはずだった。アマルダも、わざわざ新しく服を買って来いなどと言いはしないはずだ。
 おそらく彼女は、この年頃の子供らしい服を買ってこい、というつもりだったのだと思う。それは善意かも知れないが、その裏に、状況が変わってエイミーを売り物にする日が来てもいいように、という打算がある可能性も否めない。
「まあ……そのときは、そのときか」
 小声で呟くエルフィスをエイミーが怪訝そうに見上げてくるが、彼は答えず彼女を促した。
 表情を取り繕う技術はともかく、店員は、服を選ぶセンス自体は悪くないらしかった。彼女が選んだ数点の服と共に試着室へ押しこまれたエイミーが、暫くして恥ずかしそうに姿を現す。
 涼しげなワンピースに、ブラウスとミニスカート。動きやすそうな、半袖とパンツ。どれも彼女の雰囲気に、よく似合っていた。
 もともと素材はいいんだよな、というエルフィスの独り言のような感想が耳に届いたのか、紅茶色の目をビックリしたように見開いたエイミーは、真っ赤になって試着室のカーテンに隠れてしまう。
「ついでだから、これもつけてみ」
 その隙間から差し入れられたエルフィスの手には、小さな髪飾りが乗っていた。自分のセンスに自信はないが、何となく彼女の赤い髪に映えると思う。
 やがて、おずおずとエイミーが顔を覗かせた。髪飾りは右耳の上あたりに留められている。
「ど……どう? 変じゃない……?」
「……うん。良いと思う」
 少しだけ自分のセンスに自信を持ちながら店員を窺うと、彼女も微笑ましげに頷いた。
「どうせだから、そのまま着て行こう。袋だけもらえる?」
 そう言うと、かしこまりました、と店員はカウンターの方へ歩いていった。


 店の名前が書かれた紙袋を手に、外へ出る。
 買い物自体は既に終わっているので、少し町を見て回るくらいの時間はあった。多少帰りが遅くなったところで、夕食の用意に間に合うように戻って来ればいいと言われているので、怒られる事もないだろう。
 エイミーは好奇心に瞳を輝かせ、あちこちを忙しなく行ったり来たりしていた。そして、その都度エルフィスの所へ戻って来ては、自分が見たものを逐一報告してくる。その顔には、もう自身を恥じるような影はない。
 やはり、こちらの方がいい――エルフィスは胸中で密かに満足した。
 公園では大道芸人がジャグリングを披露していた。四色ほどに塗り分けられたボールを、あるものは上へ放り上げ、あるものは地面にバウンドさせて、複雑かつ器用に左右の手を行き来している。
 目を丸くしているエイミーと共に、暫くそれを眺めた。彼女に硬貨を渡して大道芸人の前へ放らせ、再び歩き出す。
 本屋で料理本を立ち読みし、雑貨屋で字の練習になるからとエイミーに日記帳を買った。休憩がてら喫茶店に入り、エルフィスは紅茶、エイミーは生まれて初めてだというケーキを頼む。
 運ばれて来たそれを、彼女はまじまじと見つめていた。食べてしまうのが勿体ないのか、それとも、その形自体が彼女の好奇心を刺激するのかは分からないが、クリームが溶けるまで観察を続けるつもりでもないだろうし、存分に堪能すればいいと思った。
 そんな事を考えていたエルフィスの前で、エイミーは記念すべき一口目を口へ運ぶ。
「美味し〜……!!」
 クリームより先に彼女の方が溶けそうな表情だった。
 エイミーは更にもう一口フォークで切り分けると、けれど、それを自分の口ではなくエルフィスの方へ差し出してくる。
「エル兄ぃも食べてみて」
 食べられる物ならどんな物でも独り占めしなければ、その日を生きる事すら危うい村で育ったにも関わらず――だからこそかも知れないが――彼女は誰かと一緒に食事をしたり、一つの食べ物を誰かと分け合う事を好んでいた。
 そのエイミーの強さを思いながら、エルフィスは躊躇う事なくケーキを口にした。
「美味しいでしょ?」
「うん」
 頷いて見せると、エイミーは嬉しそうに微笑む。頬を赤らめ再びフォークを口に運ぶ様を眺めながら、そこまで喜ばなくても、と苦笑したい気分になった。


 ガタゴトと、馬車はのんびり進む。
 はしゃぎ疲れたのか、エイミーは荷台で眠ってしまっていた。彼女の服装は、もともと着ていたものに戻っている。帰ったらエイリアにも見せたいので、汚れたりシワになったりするのは嫌なのだそうだ。
 そのあたりの乙女心に口出しするのは無粋だと思い、エルフィスは何も言わなかった。しかし綺麗に畳まれているとはいえ、服の入った袋を宝物のように抱きしめて眠っているのでは、やはりシワにはなりそうだと思う。
 もっとも、その程度の事でエイリアは評価を変えたりはしないだろうが。
 やがて、屋敷が近づいてくる。太陽の位置を見るに、夕食の準備を始めるには、まだまだ余裕があった。
 町では随分とゆっくりしたつもりでいたが、おそらく買い物の方が思ったよりスムーズに終わったという事なのだろう。
 今度からはエイミーを連れていく事にしようと思いながら、エルフィスは軽く手綱を引いて速度を落とす。炊事場に繋がる勝手口の前へ回り、停車させた。
「着いたよ」
 荷台へ上がりエイミーを起こすと、彼女は目を擦りながら小さく欠伸をし、それから荷台を降りて勝手口の扉を開けてくれた。
 屋敷内は、何となく賑やかだった。聞こえてくるのは声というよりは、くぐもって判然としない音だ。大勢で酒を飲むなら食堂を使うだろうし、ならば何か賭け事にでも興じているのかも知れない。珍しい事に、窓も扉も閉め切っている理由までは分からないが。
 エルフィスは、かさばって重い物から順に降ろしていく。芋類は日陰へ運び、干し肉やバターは涼しい場所へ。香辛料やパンは、エイミーが決められた場所へと仕舞った。
「お疲れ様」
 そう労って頭に手を乗せてやると、彼女ははにかんだように笑う。
 馬を繋いでくる、と言い残してエルフィスは外へ出た。御者台へは上らず、手綱を引いて馬屋へ向かう。
「お前も、ご苦労だったな」
 馬車から外した牝馬を馬屋に繋ぎ直し、鼻面を撫でてやってから飼い葉と水を与えた。後で身体も擦ってやろうと思っていると――
 ガシャーン、と。
 硝子でも割れるような音が耳に届いた。
 エルフィスが振り返ると、二階の部屋の窓が一枚、内側から割れているのが見えた。何かを投げつけたのだろう――何を投げつけたのかは分からないが。
 けれど、そこは――
 エイリアの部屋だった。

      ※

 弾かれたように走り出す。馬屋からなら、勝手口よりも正面玄関の方が近い。
 建物の石壁に肩を擦りそうなほど身体を傾けながら角を曲がり、玄関の扉を勢いよく開ける。ロビーには男が一人。彼は驚いたように肩を撥ねさせ、ぎこちなく手を上げた。
「よ、よう! 早かったな、エルフィス」
「……何してるの?」
「い、いや……特に何も……」
「他のみんなは?」
 エルフィスが訊くと、男の視線は一瞬、二階を向いた。意図しての事ではないのだろうが。
「硝子が割れる音もしたけど?」
 彼の視線を追うように二階を見遣ると、
「あ、ああ。何かやってるみたいだな……カードか何かだろ。誰かがイカサマでもしたんじゃないか……?」
 誤魔化すような――誤魔化す気があるのか疑いたくなるような口調で、男は言う。直後、
「リア姉ぇ!!」
 その声を聞き間違える事は、エルフィスに限って言えば、ありえなかった。
 無表情のまま、彼は嘆息する。
「イカサマ……今のお前みたいにか」
 えっ、という声は疑問というよりは、ただの空気の漏れる音だった。
 鳩尾に拳を打ちこまれ、男がくずおれる。その腰のナイフを引き抜いて背中から肝臓を一突きし、エルフィスは階段へ向かった。
 どやどやと数人の足音が上階から聞こえてくる。階段を上り終えるより早く、そのうちの一人が姿を現した。男はエルフィスの姿を見るなり、小さく舌打つ。
「ぉ――」
 けれど彼が何かを言うより早く、エルフィスはナイフで男の脚を斬りつけた。傾く相手の身体を掴んで引き摺り落とし、擦れ違い様に首筋を刃で撫でる。飛沫いた血で、視界が紅霧に染まった。
 階段を上り切り、振り返る。エイリアへの部屋へ続く廊下は一直線だ。
 そこには男が三人。彼らはエルフィスの常の無表情と、血のついたナイフを見て顔色を青ざめさせる。
「お前……殺したのか」
「――邪魔」
 彼が平然と足を踏み出すのへ、最前の男が反応した。ナイフを抜いて突撃して来る。
「エルフィス、手前ぇ!!」
 スッと、エルフィスは目を細めた。廊下は狭く、ナイフを振り回せる余裕はない。攻撃の手段は限られている。
 突き出されるナイフを持つ手を左腕で撥ね上げ、ガラ空きの腹部に逆手に持ち替えたナイフを突き立てた。突撃の勢いも相まって、刃は厚い筋肉を貫いて深々と突き刺さる。
 それを抜く手間を嫌って、エルフィスは相手の身体を前方へと蹴り飛ばした。二人目の男の進行が妨げられ、その間に一人目が取り落としたナイフを拾う。
「くそっ!!」
 既に物言わぬ仲間を避けて、二人目が遅いかかってきた
 その体勢は崩れているのを見て取り、エルフィスは身体を低くしながら相手のナイフを打ち上げた。刃同士がぶつかり、火花が散る。半歩左へずれ体の外へ回りこむと、身体の流れた男の脇腹を薙ぐ。男は、そのまま次の足を踏み出せずに、廊下へ倒れ伏した。
「動くな、エルフィス!!」
 三人目の男の声に顔を上げる。その腕の中にはエイミーが捕まっているのを見て、眉間にシワが寄るのを自覚した。
「それ以上来やがったら、このガキぶっころ――ぉぐ!?」
 言い終わるより早くナイフを投擲。無防備に開かれた口腔を銀光に貫かれ、彼は驚愕に目を見開いたまま大きく仰け反り、ゆっくりと倒れていった。
 エイミーを人質にしなければ死なずに済んだかも知れないのに――僅かな苛立ちと共に男の死に顔を眺めてから、エルフィスはエイミーに歩み寄った。
「エル兄ぃ……!」
 震える声で、彼女が腕の中に飛びこんでくる。
「リア姉ぇが……リア姉ぇが……!」
「何となく想像は出来てる」
 輪姦から惨殺までエルフィスには想像できていた。だからこそ、彼はこの選択肢を選んだのだから。
「窓硝子割ったの、お前?」
「……うん」
「よくやった」
 少し乱暴に頭を撫でてやり、それから自室の鍵を差し出す。
「合鍵は持ってるね? 中から鍵かけて俺の部屋にいて」
 頷いたエイミーはそれを受け取り、ときおり不安そうに振り返りながらエルフィスの部屋の扉を開いた。
「エル兄ぃ……リア姉ぇの事――」
「分かってる」
 頷いてやると、彼女も少しだけ安心したように部屋へ入っていく。
「……合鍵、か」
 盲点だった、とは思わない。単に自分が不注意だっただけだ。
 この屋敷の個室の鍵は二つずつある。それはエルフィスの部屋の鍵を彼とエイミーが持っている事から、間違いないだろう。
 合鍵の所持者は、基本的にはドルムスだ。それは、エイリアの部屋の鍵も。
 だが、彼とて四六時中すべての部屋の合鍵を持ち歩いている訳ではないはずだ。おそらく、普段は彼の部屋にあるのだろう。そして、この屋敷で自室に鍵をかける者は少数派だ。精々、エルフィスとアマルダくらいである。
 つまりドルムスが不在であれば、全ての部屋の合鍵が手に入ると考えていい。
 いまさら悔いても仕方がないが、ドルムスからエイリアの部屋の合鍵も貰っておくべきだった。
 ガチャリ――エルフィスの部屋から錠の落ちる音が聞こえる。それと前後して、
「嫌っ、嫌です!! いやああああああああっ!!」
 くぐもった――激しく抗う絶望的な悲鳴と、男たちの下卑た声が聞こえてきた。
 ぎり、とエルフィスは奥歯を強く噛み締める。脚を痛める可能性など思考の彼方に吹き飛ばし、力任せにエイリアの部屋の扉を蹴り開けた。

      ※

 ノック、というものに慣れ切っていた。
 エルフィスは買い出しに行き、それに同行してエイミーもいないというのに。
 もっと不安を感じて、そして警戒していなければならなかったのに。
 突然、鍵の開く音がしたかと思うと、男たちが雪崩れこんで来た。彼らは一様にニヤついた顔で、エイリアに舐めるような視線を向けてくる。
 こんな場所にいれば――いや、いなくとも身の危険を感じるには充分だった。
 素早く立ち上がる。テーブルが揺れ、添削中だったエイミーの課題が床に散らばった。後退しようとするが、男たちの一人が足枷に繋がる鎖を引っ張る。
「ぅあ!?」
 体勢を崩してその場に崩れると、別の男が近づいて来て髪を鷲掴んだ。脈絡なく頬を張られ、忘我状態のままベッドへ放り投げられた。
 そこから先は、殆ど憶えていない。憶えていたくなかったのだろう。
 男たちが殺到して来た。誰かに手で口を塞がれ、服が破られる。露出した胸に吸いつかれ、股間をまさぐられた。左右の手には、それぞれ誰のものかも分からない肉棒を握らされる。
 スカートが捲り上げられた。下着が引き千切られる。目の前には、更に別の誰かの屹立したモノが突きつけられていた。銜えろ、と。
 必死で歯を食いしばり、唇に力を入れ顔を背ける。すると、その先端を頬に擦りつけられた。粘りのある液体が頬に塗り広げられていく。
 汚らわしい。気持ち悪い。エルフィスに初めてを奪われたときすら、ここまでのおぞましさは感じなかった。
「しょうがねえ……諦めさせてやるか」
 そう聞こえた次の瞬間、大きな汗ばんだ手で顔を固定される。脂ぎった男の顔が近づいてきた。
「いっ――嫌ぁ!」
 悲鳴を上げて、どうにか顔を背けようとする。嫌悪感に背筋が冷え、同時に吐き気すら催した。
「ぐだぐだ喚くな!! エルフィスに散々やられてんだろうが!!」
 そう――その通りだ。だから、もう彼以外には許すつもりなどない。
 生臭い息を伴ったせせら笑いと共に、男の唇が近づく。それが触れようかとした瞬間、部屋の扉が開かれた。
「……リ、ア姉ぇ…………?」
 小さな赤毛の少女。愛らしい妹のような存在。
「――お前らリア姉ぇに何してんだ!!」
 視線を鋭くしてエイミーが叫ぶ。瞳の色は赤熱する火口のような暗い赤――それが怒りに輝いていた。
 男たちは誰からともなく舌打ちをした。つまみ出せ、という誰かの声に、扉の近くの男が動く。
 エイミーは素早く反応した。扉近くの棚に置かれた一輪差しを掴み、力いっぱい投げつける。
 それが誰にも当たらないコースを飛んだ事で男たちは失笑したが、彼女は聡かった。一輪差しは窓硝子にぶつかり、耳障りな音と共にそれを砕く。
「これで、すぐにエル兄ぃが来る!」
 男たちが顔色を変えた。
「何人か行って、あいつ足留めしとけ! 縛って転がしといてもいい」
 指示に従い、四人ほどが出ていく。同時にエイミーも引き摺り出されていった。
「リア姉ぇ!!」
 その叫びと共に、扉が閉ざされる。
「時間がなくなっちまった」
 そう言ったのは、男たちの誰だったのか。おそらく共通認識なのだろう――蹂躙が再開された。
 左右の胸が、それぞれ別の男に乱暴に揉まれ、舐め回される。力ずくで膝を開かれ、股間を二、三度指でなぞられた後、舌が這わされた。
「――ぅ、〜っ!! うぅ……く、んんー……!!」
 絶対に感じてなどやらないという決意と共に唇をきつく噛んで快感に耐えるが、男たちは嘲笑うばかりだった。
「何だ、エルフィスの奴、いい腕してんじゃねえか。しっかり開発され始めて……」
 股間から溢れる液体を、汚らしい音を立てて啜っていた男が身を起こす。その下半身が露出されているのを見て、エイリアは大きく目を見開いた。
「そんじゃ、味わわせてもらいますかね」
 ひた、と先端が触れる。ぐっ、と力がかかり、
「嫌っ、嫌です!! いやああああああああっ!!」
 絶望から目を逸らせず、けれど首だけは激しく振り――
 蝶番が千切れ飛ぶのではというほどの勢いで、部屋の扉が蹴り開けられた。

 その姿は、凄絶の一言に尽きた。
 エルフィスは血塗れだった。髪も、頬も、服も、全て鮮血に塗れている。鋭い眼差しは鍛え上げられた刃のようだった――その手に携える物と同様に。
 いつも通り、表情はないように見える=B分かるのは自分だけだとエイリアは思った。或いはエイミーもいれば、彼女も分かっただろうが。
 分からないのは、彼が駆けつけてくれた理由だった。自分は道具でしかないはずなのに、何故そんなに怒っているのか。
 そそくさと下半身を仕舞った男が、ベッドを降りる。
「よ……よう、エルフィス。早かったな。これは、その……なんつーか――そう! 練習だよ、練習。最近、腕が鈍ってるような気がして……毛色の違う相手なら新鮮な気持ちで――」
 一閃。全く見えなかった。
 気がついたときには、エルフィスの方へ馴れ馴れしく差し出された男の指が床に数本転がっていた。更にエルフィスは踏みこみ、相手が絶叫するより早く喉笛を斬り裂いている。
 傍らでエイリアを押さえていた男が、慌てて起き上がった。腰の後ろへ手を伸ばすが、彼もまた、投擲されたナイフを受けその姿勢で絶命した。
 その間に最後の一人がナイフを抜き、エルフィスに斬りかかる。
「この裏切り者がああああ!!」
 その物言いに、彼は嘆息したようだった。振り下ろされるナイフを半身になって躱し、返す刀で薙がれるその相手の腕を掲げた腕で受ける。動きの止まった一瞬に腕を捻り上げ、奪ったナイフで首筋を突き刺した。
 エルフィスが振り返る。目が合ったエイリアの口から、ぁ、と我知らず声が洩れた。
 それは紛れもなく恐怖だった。といっても、抵抗するだけで必死だった状況から解放され、助かったという安堵でそれを改めて実感したのではなかった。もちろん眼前で繰り広げられた殺戮劇でも、昨日まで寝食を共にしていた、言ってみれば仲間であった者たちを平然と殺し尽くした彼に対して向けられたものでもない。
 言葉は出て来ず、行き場を失った言い訳だけが頭の中を渦巻いていた。
 チガイマス、ワタシハヨゴサレテナドイマセン――エルフィスに失望され、関心を失くされ、捨てられるかも知れないというのが、何より怖かった。道具でもいい、とすら思うほどに。
 エルフィスが一歩を踏み出す。同時に、何者かが廊下を走る音が聞こえてきた。
「……何だ、こりゃあ!!」
 足音の主――ドルムスが室内を見回して叫ぶ。その視線は最後に、全身を赤く染め、鮮血を滴らせるナイフを持ったエルフィスに固定された。俯き、苦痛を堪えるように呻く。
「……状況は……何となく分かった」
 彼の視線は、無理やり引き裂かれた、かつて服だった布切れを巻きつけただけの半裸の自分にも向けられた。
 ドルムスは、やり切れないといった表情で叫ぶ。
「だが、何も殺す事はねえだろう!? 一人ずつボコボコにするとかならまだしも――」
「分かってないね」
 エルフィスは遮るように――そして、初めて口を開いた。
「自分の名前すら分からない記憶喪失が、どれだけ不安だと思う? 何も確かなものがないんだよ。確かに自分のものだと言える何かすらないんだ。そんな俺にとって、エイリアがどれだけ大事か分かる? こいつだけが――こいつとエイミーだけが、確かに俺のものだと言えるんだ」
 彼は俯きがちだった視線を上げ、ドルムスを射抜く。
「あんたが言ったんだ――こいつらは俺のものだって。こいつらだけが、俺が生きてる事を実感させる……それを奪われるのがどういう事か分かるか!」
 それは――おそらく命を奪われるようなものだろうとエイリアは思った。同時に涙が溢れ出し、両手で口元を覆って俯く。
 誤解していた。酷い誤解をしていた。自分もまた、彼を理解しようとはしていなかったのだ。ドルムスと同じように。
「私は……私は……ごめんなさい……!」
 大事にされていたのだ、自分は。普通の人とは違う形だったというだけで、この上なく大事にされていたのだ。
 対するドルムスは、苦汁を滲ませた口調で言う。
「もっともな言い分ではある……か。だがな! 俺も頭って立場上、部下を皆殺しにされて黙ってる訳にゃいかねえんだよ。けじめだけは、つけさせてもらうぜ!!」
 雄叫びと共にナイフを抜くドルムスに応じるように、エルフィスもナイフを一振りして血糊を払った。
「拾ってくれた事には感謝してるよ」
「お前の働きぶりにゃ満足してたぜ」
 二人は同時に腰を落とし、
「いけません! おやめなさい!!」
 エイリアの制止を合図とするように床を蹴った。


 大柄な体格に反し、ドルムスの動きは速かった。相当に戦い慣れしている事が窺える。
 フェイントを交えて突かれ、振るわれる刃を躱しきれず、エルフィスは鎬でそれを逸らした。耳障りな音が鼓膜を震わせ、火花が散る。跳び退くと、ドルムスは追撃してきた。
 突き出されるナイフを左半身になって躱し、更にその右腕を左手で自身の右へ逸らす。無防備な首筋へ刃を突きこもうとするが、素早く引かれた腕がこちらの持ち手を受けた。それだけではなく、力任せに腕が薙ぎ払われる。
「ぬぅうん!!」
 エルフィスの身体が浮いた。不安定な姿勢で空中を移動させられ、僅かに体勢を崩しながら着地する。即座に左へ転がり、踏みこんだドルムスの下段からの斬り上げをやり過ごした。そのまま四つ足の動物のように飛びこみ、相手の太股を斬りつける。
 浅い――エルフィスは小さく舌打ちした。これでは多少、相手の動きが鈍くなる程度だろう。
 その隙を衝かれ、振り向き様の蹴りを受ける。腕を交差させて防ぐが、壁際まで転がされた。素早く跳ね起き、首を右へ逸らす。空気を切り裂くように打ち出された拳が壁を打ち、木製の壁にヒビが入った。
「ふっ!」
 動きの止まった一瞬を狙い、鋭い呼気と共にその腕にナイフを突き立てる。刃は間違いなく肉を抉るが、直前に腕の角度を変えたドルムスに、エルフィスは戦慄した。計算づくで骨で刃を止めたのだ、彼は。
 更に腕が捻られるのへ、慌ててナイフを握る手から力を抜く。奪われまいと力を入れれば、骨と筋で逆に絡め取られてしまう。指を引っかけておく程度でいい。
 だが、それによって武器は封じられた。急いで手を引きナイフを抜くが、体は開き切っていた。必殺を確信したドルムスのナイフが迫る。
 エルフィスは歯を食いしばって覚悟を決めた。動きそのものの速さもさる事ながら、これまでの戦歴に裏打ちされているのであろうドルムスの見切りを封じるには、他に手段はない。
 突き出されたナイフを、左の掌で受けた。僅かな抵抗と共に、刃は掌を貫通する。痛みに耐えるためにきつく噛んだ唇を犬歯で食い破りながら、ナイフを握るドルムスの手を掴んだ。
「――捕まえた!」
 これで彼は、もう武器は使えない。同時に、逃げる事も出来ない。
「手前ぇ――!?」
 慌ててドルムスは左腕を掲げるが、その下をくぐるようにエルフィスはナイフを突き出し、相手の首に突き刺した。グリッと捻って引き抜くと、噴き出した鮮血が顔の半分を染める。
 ドルムスの身体から力が抜け、瞳から光が消えていく。
 崩れ落ちる彼の身体へ、エルフィスは小さく別れを告げた。
11/12/02 17:45更新 / azure
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■作者メッセージ
 あらあらメインヒロインが泣いているというのに、裏でチビッ子とデートだなんて、いい御身分ですわね……何このキャラ。
 そんな訳で、見る人が見れば作者がへたばっている事が丸分かりな第三章でした。展開が強引なとことか、詰めこみすぎなとことか、駆け足すぎなとことか。
 思うに私の書く物語はキャラの心情描写が甘い気がするので、今後頑張る事を前向きに検討します。いや、頑張れよ。
 戦闘描写も久しぶりで、何だか腕も勘も鈍っている気がします。鈍るほどの力量があった憶えもありませんが。というか戦闘というよりただの暴力ですね、ドルムス戦はともかく。

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