連載小説
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出合い〜「えーと、最後ですよね?」「その3だ。」〜


ありがとうございましたー!
来店への礼を背に二人は居酒屋を出た。正確には、その声は一人し届いていないのだが。

「ほら泰華、落ちるなよ。」

「ふぁぁ」

それは欠伸か、はたまた返事か。
居酒屋にて、これでもかと飲んだ、いや客たちが注文したものを飲まされ、当然泰華はダウン。 茜華すらも若干ふらつく量を飲んだので泰華を誰が責められようか。ちなみに、鉄板の代金は例の酔っ払いが置いていった支払いから引かれた。

まして、自分は弱いと自己申告していたのに飲ませたのは、場の空気が1/3、茜華が2/3であるから今、会計を終え茜華は半分夢の中の泰華を背中におぶっていた。

「ふぅ…仕方ないな。それにしても軽い。」

ちゃんと食っているのか。
そんなことは些細なことで、ただ一つ問題があるとしたら泰華の住所を聞かずに飲ませ潰したことであった。

「あたしの家で良いよな…?」

「Zzz…」

心地よい寝息をたて眠りの世界へと旅立っている男には現実の恋している女性の声は聞こえないわけで。

いつもの茜華ならば絶対に適当なホテルに捨て置き、もう関わらないようなシチュエーションではある。

ではあるが、なぜか自身の家で一晩泊めてやるくらいは良いと感じてしまっていた。

「全く…気持ちよさそうに。」

どうして、口の端があがりそうになるのか。
自分も酔いが回り、それ故の行動が滑稽だから。
そう自分に言い聞かせ歩く。

そこまで遅い時間ではないため最終のバスには間に合うはずであった。
こいつはあたしがヘルハウンドじゃなかったらどうする気だったんだ…。

バス停につくと運良く最終便がすぐに到着した。

流石にバスの中は閑散としており、整理券をとって後ろの方の座席に泰華をおろしその隣に座る。

「しっかし、起きないな。」

茜華は気づいているが信じたくない事実。
茜華自身が起こさないように注意を払っているのだから起きるはずもないこと。

「…」

本当に成人か?
言動から飛び級するくらいの天才には感じられないが。

まぁ、つまりは二十歳を超えている、日本でいう成人をしているのは間違いないだろう。
なら…なんだ、この寝顔。

「…ぁん。」

「ん?」

「茜華さぁん、お家…」

Zzz…
はぁ、いっそ起こしてやろうか。
いや、このまま返しても危ないだけか。

「いやいや、泰華が危ない目に遭おうとあたしには関係ない…。」

“泰華”

いつの間にか下の名前で読んでいる。
そう言えば泰華もあたしを呼んでいたな。


“好き”ってなんだ?

茜華の疑問だ。
当然、友人はいる。
そうは言っても大学からの友人だ。
それ以前はあまり人と関わらなかったし、それで良いと思っていた。

いつも人の裏が見えてしまう茜華は一種の不信に陥っていたのかも知れない。
魔物娘であることからも性欲は強く体を持て余し、未来の夫を妄想し慰めることだってある。

しかし、妄想はできても想像はできなかった。

ヘルハウンドは特に、力自慢で人に屈しないとされている。
それ故に人間の男性で何かしらの勝負を掛けてきた奴を“娶る”形で夫婦となることが多いらしい。
そう、らしいのだ。

茜華には分からなかった。
自分より弱くて、詰まらなくて、頭の悪い奴が体目当てで寄ってきて。
そんな奴らじゃ話にならない、そう考えてきた。

「なんだよ?」

ふっと腕に違和感を覚え、目を向けると小さな男は、その小さな腕で茜華の腕に抱きついていた。

仕草、力の入り方、表情から分かる。

こいつ、寝ているくせに…。
でも、いつもみたいにイラつかない。
気持ち悪くない。
ウザくない。

「はぁ…」

泰華の顔をつつくとピクッと反応する。
なぜかもう一度してみろと脳から電気信号が流れてきた。

ツンツン…ピクッ

あぁ…意味が分からない。
あたしはどうなっているんだ。
誰でも良くなっちまったか。

そろそろ考えることにすら疲れてきたところでバスが目的地を告げる。
一旦、感情の整理は置いておこう。運転手に二人分の料金と申告し、自身の家へ向かうためまた泰華をおぶって歩く茜華であった。


ーーーーー☆ーーーーー


「す、すみせまん…女の人の一人暮らしなのに。」

「良いって。流石にあたしも飲ませすぎたから。」

家について声をかけると泰華も目を覚まし、自分がどこにいるのかとその経緯を知って深く反省していた。

「ほれ、水。」

「あ、ありがとうございます。」

一気に水をあおり、吐く息にアルコールを乗せ酔いを全力で覚まそうと試みる。

「風呂はいるか?」

「い、いえ!もうお暇させて頂きますよぉ!」

無理にでも立とうとする。
が、フラフラと膝まででそこから上が上がらない。

「良いんだってば。泊まってけ。」

まだ大分酔ってるのに気を使いやがって。男なら今は素直に喜ぶべきだろ?そんな事を頭では考えつつ、よしよしと頭を撫で座することを促す。

「んっ、茜華さんの手おっきくて凄く気持ちいいです。」

はっ!
今何をしていた?
あたしは今、何を?

「あっ、すみません!違います!大きい手、素敵だなと!」

あっ、違うとあたふたする泰華。
言いたいことは分かっていた。

「分かる、分かってる。泰華は素直に誉めてくれたんだよな。」

もう、嫌と言うほど理解している。こいつが何もかも本気で言っていることは。

体目当てでのお世辞でもなければ、怖いから持ち上げているという訳でもない。

「あたし、あんまり自分の手好きじゃなかったんだがな。…ありがと。」

「そ、そんな、茜華さんは素敵ですよ!」

「分かった分かった。」

本人を前にしてこんな恥ずかしいことを断固抗議する姿勢の泰華にはもう負けを認めるしかない。

こいつはバカだ、大バカだ。
でも、面白いやつだ。

あたしには分からない感性で、見てる世界も違って、でもそれを純粋に表現することができて。

「泰華、こんなところに座らずにソファーに座ろう。」

「はぁい!」

完全に承諾も取れ少し安心したのか、また酔ってるのを抑えなくなった。
言われるがままソファーに座る。


「ほら!」

人間、座った瞬間とは脱力する時だ。
少なくとも立っていろ、立った状態を維持しろなんて電気信号を脳は出さなくて済むのだから。

だから、泰華も倒れる。
茜華が手をかけ倒そうとした、彼女自身の膝に。

「せ、茜華さん!?」

「良いから、落ち着け。」

もちろん、嫌だったらすぐに起きてくれて構わないがな。
突然の膝枕に二秒困惑するが、ちょうど良く肉が付き、なおかつ引き締まっている太ももにすぐ陥落させられた。

「ど、どうだ?太もも気持ちいいか?」

「はぁ、気持ちいいです…」

天国ですね…。

もうウトウトしているこいつの頭は回路がいくつか飛んで繋がれているのではないか?
でも、それならあたしは何してんだ…。

「はぁ。」

「…茜華さん。」

「どうした?」

もうこの感情がなんなのか、とかどうでも良いかな。



「僕、幸せです!」



バチン、と茜華は体が雷に打たれたような感覚を覚える。

「そ、そうか良かったな。」

なんだそれ。なんだよそれ。
嬉しそうな顔するなよ。
ずっとあたしのこと褒めてるけどさ、そんなに真っ直ぐなお前だってカッコ良いよ。
泰華だって自分の信じたこと、感じたことを真っ直ぐ通せるやつじゃないか。

「泰華、一つだけ質問良いか?」

「はいぃ、なんですか?」

アルコールと素の睡魔に負けそうな声であるが茜華にはどうしても確認しておきたいことがあった。

「店であたしが拳を振り上げたときにいけません、とか言ってたよな。あれどういう意味だったんだ?」

膝の上の男は不思議そうに聞いているがいったて真剣な質問だ。

「もちろん、茜華さんに人を傷つけて欲しくなかったんですよぉ。僕が大事にしちゃったんですから、僕が責任とってあの人に謝ってもらおうとしただけです…」

今、即席で考えた…わけないよな。
もう見るまでもない、嘘なんてつけないやつ。

「酔っ払いが悪いんだから別に良いじゃないか。」

「ダメです!あの人が傷つくのもそうですが、何より茜華さんが悪者になるのだけは絶対嫌です!」

「…だな。」

恐らく、出禁にはならないだろうがあたしならあの店には行かなくなるな。
言わずもがな、社会的な地位が落ちることもあればヘタすれば前科持ちとしてのレッテルが貼られる。

「あたしを気遣ったんだな。」

わしわしと頭を撫でて貰い泰華はまた気持ちよくて目を細める。

「…少し乱暴だったかもな。」

「茜華さんがですか?そんな事無いです!何も悪く無いですから!」

何も分かってないくせに相手を庇うことは考えてるんだな。

「でも、現に物は壊してるぞ。」

庇いきれない所まで行ったらどうなるのかは興味があっただけだが、泰華は笑う。

「分かってるんです。あの人たぶん、茜華さんが口で言っても下がらなかったと思います」

拳を見てもビックリしてませんでしたからね。

「暴力を使わずにまともな思考じゃない相手を気遣った結果って事くらいわかります!」

「あ、あの後振るったかも知れないぞ?」

まさか真意を見抜かれていたとは考えてなかった茜華。
慌てて付け加えるが無駄であった。

「なら僕が立つ前からやってたはずです。合理的に考えれば僕が騒ぎ立てるのを待つこともなかったと思いますしね。僕が表に出ろって言われてすぐでしたから。」

「…過大評価のしすぎだ。」

苦し紛れの文句を言ってその話題は終わった。が、今度は泰華からの反撃が。

「僕なんてどうにでもなれば良いと思うならあんな事しなければいいだけですが、あの酔っ払いさんを悪者にもしない言い方まで。誰も傷つけずに丸く納めてしまうのは流石だと思いました。」

なんで。
なんで変なところで頭回ってるんだこいつは。

「まぁ、何はともあれだ。あーでもしないと絡んだ奴一人まともに相手できないあたしが悪いんだ。」

本心だ。
知り合いの店に迷惑かけて何が丸く納めただ。
しかし、泰華はそれを許さなかった。

「茜華さんは自分に厳しく人に優しいんですね!茜華さんは何も悪くないのに。だって、僕は…」





“あなたみたいな人が恋人だったら、綺麗で優しくて強くて、そんな人と付き合いたい”



完全に照れている泰華だが茜華の膝に顔を半分埋めているため顔は見えない。

「…泰華、もう一回だけ聞かせてくれ。」

「なにをです?」

「今、その…どうだ?」

「…あっ!僕は今、凄く幸せです!」

出会ってまだ数時間の奴にこんなに思考を、感情を、理性を混乱させられることはなかった。あるわけがない。

純粋に嬉しそうで、単純に楽しそうで。
自分には分からないくらい真っ直ぐな男。

今、茜華の気持ちは一つだった。

こいつをもっと近くで見ていたい。
何で喜んでいるのか。
何で悲しんでいのか。
何に怒って、何を楽しむのか。

そして何より…

“こいつを幸せにしてやりたい”

今、幸せだと聞くだけでこんなにも胸が締め付けられる思いをさせられている。
しかし、こんなに真っ直ぐな奴を社会は簡単に折ろうとするだろう。

「…あたしが、守ってやる。」

「ん?なんですかぁ?」

「何でもないさ。」

頬を擽ると軽く声をあげ鈍く反応する。
膝の上でゴロゴロと遊び始めた小さい酔っ払いに問いかける。
一つ答えが出たのだから魔物娘なら行動あるのみだと結果を出した。

「泰華さ」

「はい!」

何が嬉しいのか分からないが元気良く返事をする。
ただし、もう先ほどの微妙な感覚ではなく素直に愛しいその笑顔に微笑みかける。

「あたしと付き合うか?」

「はい!」

…えっ?
もちろん衝撃で飛び起きる。
ソファーなのに正座をして自分の耳が可笑しくなっていないかの確認を始めた。

「つきあう、突きあう?フェンシングではないですよね?」

「違うな。」

「就きあう、お互い再就職ですか?」

「何言ってんだ?」

「to key own…意味が分かりません!」

「同じくだ。」

必死に何かを考えているがここばかりは茜華にも分かった。
照れているな、と。

「僕と茜華さんがお付き合いするって事ですか?」

「そんなに嫌か?」

涅槃寂静。
時間にして10のマイナス24乗である。

泰華は茜華に抱きついていた。
気づいたら抱きつかれており、勢いはあったがヘルハウンドからすれば大したことはない。

「本当に良いんですか?」

「何がだ?」

「僕、面白くも何ともないし、強くもないし、頭も良くないし…。カッコ良くもないし。」

絶対にこう来ると思っていた。
答えはもう決まっている。

「あたしにはよく分からなくて、自分のことを真っ直ぐに通せて、気付くべき所でしっかり気づけて。」

よく分からないと言いたげだが、気にしない。
これからゆっくりと教えてやるさ。

「何より…小さい奴が好きなんだ♪」

ぼっーとしていたが、最後の言葉だけは理解できたようだ。
茜華の胸の中で怒りだした。

「なんですかそれー!」

「ククッ…仕方ないだろう?どうせ身長が高くてもあたしにはかなわないのに日常から見下ろされちゃたまらないんだ。」

「むう…」

それでも早速気にしていることを弄られ男は拗ねてしまった。

「どうしたら許してくれるんだ?」

本気で怒ってないのは分かっているがこの後にうまく繋げるために話を持っていく。

「ギュッとして下さい。」

「なんだ、怒ってたんじゃないのか。」

「怒ってるからギュッとして下さい!」

返事の代わりに抱擁を返す。
小さな男は大きなヘルハウンドにすっぽりと収まった。

「泰華、まだ返事を聞いてなかったんだが。」

むくりと茜華の胸から顔を上げ深紅の目を見て誓う。

「僕、まだ茜華さんには相応しくないと思いますが頑張ります。だから隣に、誰よりも近いところにいさせて下さい!」

泰華からの答えにも抱擁で返し晴れて二人は恋人となったのであった。


ーーーーー☆ーーーーー


「あたしに、ヘルハウンドにこんなこと言っといて無事に寝れると思ってたのか?」

今は寝室、もちろん茜華の家だ。
泰華は言わずもがな、茜華も風呂に入ってな状態で上はYシャツ、下はスエットだ。

ん?と妖艶な笑みを浮かべ両手で泰華の頬を包む。泰華はベットに腰掛けようとしたがすぐに茜華に押し倒され見下ろされる形になっていた。

「で、でも出会ったばかりなのは変わりないですよ…」

「イヤなのか?」

見れば、相当に迷っているようだ。
話を聞いてる限りお互い初めだとは分かっているが泰華には別の考えもあった。

「男の人は別に、何というか…なんでもないと思いますけど。女の人の初めては特別じゃないですか。」

「なら、止めとくんだな?」

しっかり自分の考えをもてるこいつ、泰華にちゃんと教えていかなければなるまい。
心遣いは時として無用、それどころが相手を傷つけるという事を。

「し、たいです。ですけど。」

人を思いすぎるばかりに今は行くべきだと心で理解できないのだ。

「あのな、あたしも大人だ。それに魔物娘とくっついて離れられる男なんていないよ。」

それでも迷っている泰華。茜華も分からないことはないので恋人繋ぎに手を絡め、踏ん切りのつかない小男に提案する。

「なら、あたしとキスしよう。それでも我慢できるならしてみろってことだ!」

「ま、待って下さい!なら僕からさせてほしいです!」

男の意地であろうか。
自分から役目をかって出たため茜華に断る理由はない。
寧ろ嬉しいくらいだった。

かなり恥ずかしいが目を瞑り、あとは泰華に身を任せる。
しかし、中々人が近づく気配がない。少し様子を見てみようか悩むと泰華が口を開く。

「茜華さん…可愛いです。」

「おい、泰華!それはズルいぞ!」

所謂キス顔を見られているのだ。それでも男から来てくれると言われたのなら女性は断れないだろう。なのにじっくりと観察されていたかと思うと流石の茜華も顔が朱くなる。

「す、すみません!でもやっぱり可愛かったです。」

「なんだこの辱めは…後で絶対に仕返ししてやる!って、んっ!!」

ぐぬぬという顔をして目背けた一瞬、泰華はいきなり茜華と唇を重ねた。
ドクンと心臓が跳ね、時間が止まったかのように感じられる。
すぐに離すが、遅れて顔が赤くなってくるのが分かる。
もれなく二人ともだ。

「き、気持ちいいですね。」

「ほら!もう一回だ!じゃないと許さないからな!」

今度は茜華が少し下に向けて顔をおろしていく。
お互いの吐息が分かると思った次の瞬間にはまた唇が重なり頭がふわふわとした感覚に支配されていく。

「んっは!ふぅ…どうだ泰華。この後は止めとくか?」

「や、やりたいです…けど。」

絶対すぐ落ちると思っていたが案外強情な泰華。茜華も我慢の限界で魔物娘として動くことに決めた。

「もう、良いよ。あたしは後悔しないから。その代わり泰華は初めてをリードされたとずっと後悔すりゃいいさ!」

またキス。
しかし、今度は重ねるだけではなく貪るように。
まだ少し酒が残っているのかファーストはアルコールの香りである。
しばらくの間、口周りを舐られ途中から舌先が触れあっていくとまた別の快感が弾け止まらなくなっていく。

「僕、これ以上に柔らかい物を知りませんよぉ。」

「泰華、可愛く声漏らして。これじゃ結局形無しだな。」

軽い煽りを入れると茜華の思い通りにことは進む。

「ぼ、僕だってしっかり出来ます!」

今度は二、三度フレンチにしたあと茜華の頬、耳そして首筋へと口を這わせていく。
キスの絨毯爆撃に思わず茜華も牝としての声が漏れ始める。

「んぁ、ちょ、泰華。くすぐったいって。」

しかし、場所に関わらず泰華の唇が触れたところが気持ちよくなっていくのもまた事実であった。

「茜華さん、今度は可愛い声でてますよ。もっと聞きたいです。」

鎖骨、そして胸の谷間手前までを愛し終わりまた唇へと戻る。

「今度は息が続く限り重ね合っていましょう。」

茜華が承諾する前に塞ぐ。お互い鼻で呼吸しているが息づかいまで相手に知られていると思うと慎重になりペースが乱れる。

それでも離したくない、離れたくないと抱き合いギリギリまで続けた。
泰華が限界で離れると二人の脳は酸素を求め呼吸の命を出し息が切れている。

「泰華、胸が苦しいんだ。見てくれないか?」

何とも恥ずかしいが文句だが、もう考えることもままならないくらい興奮が勝ってた。
泰華もコクコクと頷いており満場一致。 
二人はベットに座り込み向き合う。

Yシャツを脱いだ茜華はゆっくりと後ろでブラホックの交差をはずし、その胸を露わにする。

大きい、シャープな体と不釣り合いにならない最大の大きさだ。目を見張るのはなんと言っても形で人工物でないにも関わらずしっかりと張り、下着のサポートを失ってなお美しいというという言葉がぴったりであった。

「おぉ…」

「な、なんか言ってくれよ。思った以上に恥ずかしいんだからな!」

片手で先端を隠すようにして羞恥をかき消そうとする。
ちなみにヘルハウンドは肌が黒いが胸の先端、蕾は淡いピンクがかっている。

「隠さないで下さい。」

優しく茜華の腕をとり、ゆっくりと胸の前から離していく。

もう一度露わになった乳房。その先端は恥ずかしいそうに、かつここまで感じた快楽を主張するとようにピンと勃っていた。

泰華は焦らず、全体的に揉みほぐしていく。

「や、柔らかい…。こんなに柔らかいのにこの大きさで垂れてないなんて。」

もう自分でも何を言っているか分からなくなっているだうろが感想を言わないと柔らかさを堪能するだけで時間を忘れてしまいそうだった。

「た、泰華。もっと激しく揉んでも良いんだよ。」

それは遠回りにねだっているのに違いなかった。
泰華も恐る恐るなのでありがたい情報であるのだが。

言われたとおり強めに揉んでもツプツプと指はどこまででものめり込んでく。
先程と違うのは茜華の体がビクビクと小刻みに跳ねているところだ。

「気持ちいい、気持ちいいよ泰華。自分でするのとは全然違うっ…」

身体能力、知力、人となりでこんなにも優れている女性も自分の愛撫で感じ牝になるのを目の当たりにし泰華も興奮を抑えられない。

「とろけた表情して、すごく可愛いです。鉄板だってあんなに簡単に割れるのに僕の手で…」

ゾクゾクしてしまうと共に嗜虐のかけらが零れ、予告も前触れもなく乳首を抓った。

「〜〜〜〜〜っ!!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫だ。」

普通の人間なら有り得ない、初体験前に乳首だけで軽くイってしまった。
何かのプライドが邪魔して泰華には言えない。

「茜華さん…」

大丈夫という言葉を信じさらに自分の欲望をぶつけていく。
茜華の乳房を口いっぱいに含んでのだ。

もう先程から喘ぎ、悶えてしかいないヘルハウンドだが構わずに乳輪を、乳首を舌で舐め上げ吸いたてる。

「口、暖かくて気持ちいいよ。」

もう愛しさが止まらない茜華は快感を味わいながらも自分のできる数少ないことをする。
泰華の頭を撫で、快楽を伝えることを。

「ほんのり甘くてずっと舐めてられます。茜華さんの子供が羨ましいくらいです…」

「当分は泰華のモノだから安心しな。」

その言葉を聞いて嬉しそうにする泰華をまた抱きしめる。
すると、カチャカチャとベルトをはずす音がしてきた。

「ズボン、辛くなってきたか?」

「痛いくらい勃っちゃってます。」

やはり恥ずかしいのだろう、泰華は苦笑い。
興奮してくれているのとが、実で分かることに茜華もまた喜びを覚える。

「今度はあたしに見せてくれないか?」

ベルトを外されたところでズボンをおろした茜華はまるでテントを張っているかのような下着に笑顔になってしまう。

「せ、茜華さん、恥ずかしいです。」

「なんで、ここ湿ってるんだ?」

「んっ!」

妖艶かつ嗜虐的な笑みで浮き上がっている下着の先端を指でつつく。
すると触れたところがピンと反応し、指には体液がついてしまった。

「泰華…先走り出ちゃったのか?」

「あっ…」

辱めるようにねっとりとした言い方で責め立て、カウパーのついた指を舐め上げた。
キス顔を見られ恥ずかしい思いをしたのだからと言うのもあるが、何より泰華の困ったときや、テンパったとき、泣きそうな顔を見ると愛しさと同等に嗜虐が沸いてくるのだ。

言葉が出ない泰華をよそに茜華はいきなり下着を下ろした。
ブルンと隆起している泰華の肉棒は決して大き過ぎないが体の縮尺にはあわないサイズだ。

「これは♪」

早速、握ると脈打っているのが伝わってきて興奮具合が分かる。
ちなみに、茜華の手はヘルハウンドの中でも大きめの方ですっぽり埋まってしまっていた。

「痛くないか?」

「茜華さんの手、こんなに優しいなんて…。包まれてると幸せになりそうです。」

「なら、今から幸せにしてやるさ♪」

泰華を寝かせる間も股間から手を離さずに一定の力で握られていた。

しかし異変が。
いや、実際は何も変わってはいないがそれが問題なのだ。

「…茜華さん?」

「ん?どうかしたか?」

ニヤニヤとして泰華の様子を窺っている。それしかしてないのだ。

「あの…」

「どうした?包まれてるだけで幸せっていってたから問題ないよな?」

一切動かない手に困惑していた泰華も茜華がわざとやってることに気付き、言い返す。

「もっと気持ちよくなりたいです…」

「ん?どうすればいいのか分からんな?」

仕返しはまだ続いていたということだ。
茜華も魔物娘、しかもヘルハウンドである。陰茎をどのように扱えば良い刺激が与えられるかなど分かりきっている。
ずいっと泰華へ近づき本人も気付かないほどの淫乱な顔で囁く。

「泰華、おねだりしないと気持ちよくなれないんだ。分かるか?」

赤子になぜ泣いているのかを問いかけるように優しく、完全に調教されきった性奴隷に命令するかのように。

「まだ出会って間もないあたしに『僕のオチン×チンいっぱいシゴいて気持ちよくして下さい』って言うべきだろ?」

「うぅ…」

「おっ、とダメだぞ。」

羞恥の念からねだりを言わず自身で動き快楽を得ようとしたが腰を突き上げようとした瞬間に茜華が手に少し力を入れただけでびくともしなくなってしまった。
こうなるとマウントをとられているため動くこともままならない。

「茜華さん酷いですよぉ。」

「そうか?でもさ、泰華。多分、自分で動くよりあたしにねだってシゴいて貰った方が何倍も気持ちいいぞ?」

力を抜き試してみろとでも良うように挑発する。
騎乗位で腰を突き上げるように動かすが握られた時よりも快感は少ない。

「ほらな♪」

「茜華さん…僕のオ」

諦めたように俯き先程の言葉を絞り出すが茜華はそれも許さない。

「あたしの目を見てお願いしないとな。」

「っ…」

「意地悪だなぁ。でも、泰華のこれ全く萎えてないって事は興奮しちゃってるんだよぁ?」

酷く焦れったい責めなのにどうしてか鼓動が高鳴る一方で、泰華もよく分からなくなっていた。
意を決して茜華の、深紅の瞳を見つめ言を発する。

「 僕のオチン×チンいっぱいシゴいて気持ちよくして下さい!!」

「良い子だ♪」

茜華の大きな手は上下運動をはじめ竿に快感が与えられる。
なぜ?さっきと動きは同じなのに。

茜華の顔を見ると、淫猥で意地の悪くニヤニヤしているが明らかに喜びが混じっている。
そう、好きなもの同士、好意を抱いている相手にやって貰うからこそ気持ちが良いのだと直感的に理解する。

「もっと!茜華さん!もっとシゴいてください!」

「おっ、やっと素直になったな♪」

キス。
軽く二度唇を合わせ、次にディープ。
最初のものよりさらに舌を絡ませジュプジュプと音が漏れるほどだ。

泰華の興奮はマックスになり自身の分身もビクビクと射精の準備を始めるのが分かった。

「んぷっ、はいストップx」

「えぇ!」

なぜ!?
ここにきてまだ意地の悪い責めをするの?
イヤだイヤだ!出したい!
表情をみて察したのか、今度は慈愛に満ちた顔で言い聞かせる。

「泰華、あたしの中でイってくれx」

「中…で…」

中。
女性の膣内で。
もう、言葉はいらなかった。

「は、はいっ!」

勢いよく今度は茜華を押し倒し逆転する。
茜華がパンティーをおろしていたがすでに陰部とクロッチの間にアーチができるくらいに濡れそぼっていた。

「ほら、泰華。見て」

あたしの中。
綺麗に縦に割れている茜華の性器は他人が触れられていないことが分かるくらいのピンク色であった。

「可愛いです。ピクピクしてて…」

「あっx!」

上から下へとなぞる泰華の指が生む快感にまた声が出てしまう。

「もう我慢できないんだxx!泰華早く来てくれxx!!」

コクリと頷きペニスを茜華の、その体からは想像もできないような小さな入り口にあてがい、一気腰を突き出した。

「んぁぁxxx」

ぶちっという感触。
茜華が初めてである証拠を泰華は消し去ったことの証だった。

「せ、茜華さん大丈夫ですか…?」

既にギュムギュムと締め付けてくる感覚に奥歯を噛み我慢する。
目の前の愛しい女性が辛そうであるためだ。

「泰華、泰華。キスしてくれ。」

急いで体躯の合わないことを悔やみながら茜華の上に寝転がる形で何とか唇を合わせた。

チュッチュッジュルチュパ

体内で起こっている痛みをかき消してくれる口づけ。

「だ、大分慣れてきた。」

「よ、良かったです。」

もう腰が勝手に動きそうな泰華は必死に動かさないようにしてきたがぜひの言葉を聞いて少し動いてみる。

「ひゃっxxxxx」

平常より2オクターブは高い牝の声。
もちろん茜華のものだ。

「き、気持ちいぃx泰華ぁ、動いてくれぇxx」

「はいっ!」

ぎこちなく、しかし確実に前後に腰を動かしていく。

「はぁぁxx」

ゾリゾリと肉棒の出っ張ったカリの部分が膣壁を削るように動く。
自分の指だけのオナニーでは絶対に得られない快感。

何より、好きになった男に愛されている感覚が堪らなく心地よかった。

「良い〜xx!」

「もっともっと、気持ちよくなって下さい!」

牝の可愛い嬌声を聞き泰華の興奮の最高潮もどんどん塗り替えられていく。
もっともっと聞きたい。

好きな人を気持ちよくして上げたい。

「イクッxxxx!!!」

それはいきなりだった。
乳首の時とは比較にならないくらいに跳ね上がり絶頂を迎えた茜華。

「んぁ、はぁはぁx待って泰華!ちょっと!」

「ダメです!まだまだ気持ちよくなってもらいますっ!」

「ひやぁぁぁxx!」

泰華も我慢の限界であったため、最後の力を絞ってパンパンと腰を打ち付ける。
ラップ音が大きく鳴り続き、そのたびに頭で光が始めるような感覚と共に茜華は軽い絶頂を何度も繰り返す。

「で、出ちゃいます!イクッ!!」

「き、きてふれぇ!あらしも、またイクゥゥxxx」

ビュクビュッビュッビュルルッ!!

茜華の膣壁にビチャビチャと精液をぶちまけその快感に姿勢を保っていることもままならなくなる。

ふらりと前のめりに倒れ込むが茜華がどうにか支え抱き抱える形になる。

二人の意識は段々と遠のいて行き、そのあまりにも甘い快楽の余韻に浸っているのであった。

ーーーーー☆ーーーーー

「んっ、明日がお休みで本当に良かったです。」

「確かにな…」

少しして茜華が目を覚まし、泰華も起こされた。
二人はぼうっとする頭でキスを繰り返していた。

「茜華さん。」

「ん?どうした?」

いっそう愛しくなった男の頭を愛でていると真剣な目で語りかけてきた。

「僕、あの時鍵落として良かったです…」

苦笑しているがこれもまた本気で言っているのが分かる。
少なくとも茜華には分かるのだ。

「こいつはぁ、可愛いこといって♪」

また口づけ。
顔を離し見つめ合うと同時にはにかむ二人。

「ホントです。その…これからよろしくお願いしますっ!」

「こちらこそ♪」

ギュッと抱きついてきた小さな男を包み込む大きなヘルハウンド。
その姿は幸せの絶頂であり、それが日常になっていくことが既に予感できていた。

「大好きです、茜華さん。」

「んっ、あたしもだよ♪」


“泰華、その、さ。最後のもう一度だけ聞かせてくれ。”

何のことか、いくら泰華でも理解してる。
満面の笑みで茜華へ自分の感じたままを素直に伝えた。




“僕、幸せです!!”





18/04/15 10:02更新 / J DER
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■作者メッセージ
やっと終わりましたね。

次はおまけです(終わりだとはいっていない
正直楽しすぎて止まらないのですがホントのエゴ作品ですからね。
楽しんでもらえるとは思っていませんが惰性でも読んで下さる方が入れ下されば嬉しいです。

この話の段階だと、私の中では泰華と茜華の距離感が掴めきれていない設定なので若干違和感を感じられた人がいたら凄いと思います。読解とかではないですが、すさまじい感覚だと。

長々と話しました。正直まだこの二人で書き足りないので次もこっちかなぁって感じです。

それでは。

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33