読切小説
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激走!ヨツンバウェイ!!
ここはヨツンバウェイ 不思議の国にあるキョウシュウマウンテンを四つ葉のように巡る 高速道路である 普通の車が走る一般道の他に四つん這いの魔物が走る専用の道路がある
そのサービスエリアに男が一人、煙草を一服しながら景色を眺めていた
眼下には不思議の国の色とりどりの鮮やかな世界が広がっている




「ふぅ… やっぱり愛車と一緒に走って 見る景色は最高だぜ」
俺の名前は風祭 翔 ただのしがないサラリーマン……だった

しかし今は、そう!走り屋!走り屋の翔だっ!

ご自慢のバイクに跨り 風になる
これこそが、俺の生きがい 俺の生き様
現実世界のクソの様な権力争い 足の引っ張りあい 陰口のたたきあい!
もう、うんざりだ!

俺は!ここで“愛車”と風になっている時が一番 自分らしくいられるんだー!

「ぷひ〜」

俺は煙草を消し、駐車している 愛車をながめる
う〜む美しい やはりバイクと言うものは走る芸術だな!
もちろん盗難防止の為に前輪 後輪 その他ガチガチにロックしている

「ふふっ 眺めているだけでも幸せな気持ちになるぜ」

俺は愛車に近づき 軽くタンクをムニムニと撫でた

「さぁ そろそろまた風になろうか」

愛車に跨り エンジンをかけるが

パシィン「ぷひ〜」

「あれ?」

パシィン「ぷひ〜」

「あれれ?」

パシパシィン 「ぷひぷひ〜」

「参ったな エンジンがかからないぞ」

俺は愛車から降りて 後ろにまわる

「あっちゃあ〜 オイルが漏れてやがる」

愛車の給油口から トロトロのオイルが漏れだしていた

「まったくしょうがないなぁ」
俺は修理を始めた 何年も乗り続けている愛車だ もはやメンテナンスなんてなんでも自分一人で出来る 領域まで達している
愛車の給油口を指でくぱぁと開いた
「うわぁ もうこんなになってるよ」
給油口からはとめどなくオイルが溢れ手がベトベトになってしまった
オイルを一舐め、ふむ、まぁ始めるか

「ここをこうして」
給油口に指を突っ込む
クチュクチュ 「ぷっ!」

「ここはこう 軽く引っ掻くように」
ぐちょぐちょ「ぷひぃ」

「そしてこの ちょっと入れたとこの上の方を 細かく振動させる様に」
ガガガガガガ
「ぷひひひん ぷひひん ぷひひひひん」

「最後にー こうっ!思いっきり引っぱたく!」

スパッシィン!「ぷひひひひひひひひひひひひひひひん ぷっひひん ぷひひん」

「よしっ!エンジンがかかったぜっ! ついでにガソリンも入れておこう 」

自前のノズルを取り出し給油口に突っ込んだ

「ハイオク 満タン入りまーす」
愛するバイクに燃料を注入する為に俺は腰を振りまくった!

ヌップ!ヌップ!ヌップ!

溢れでるオイルとあいまって愛車の中は熱くトロトロになって 俺のノズルに絡みつく
「くっ 相変わらず締まりがいいぜ!」

そのまま腰を振り続けていると おれの燃料がこみ上げてくる感が 迫ってくる
「ぬぁっ!待ってろ今 美味しい燃料をお前に…ぬぅううん!」

どぴゅるるるるるるる!

「ぷっ ぷっひゃああああん」

愛車の中に燃料をたっぷり注ぎこむ 愛車も車体を震わせ 嬉しそうな感じがした ま、気のせいだろうが

グポッ
給油口からノズルを抜き 溢れた燃料を綺麗に拭き取り 俺は改めてバイクに跨った
「さぁ行こうか、相棒」

「ぷひぃぃん ぷんぷん ぷひいぃいん ぷひいぃいん」

愛車と共に走り 風になる、これこそが俺の生き甲斐 生きる意味 故障とかトラブルは日常茶飯事だし、燃費なんかとても悪い だけど
本当にコイツと出会えて良かった





思い起こせば数年前ー
俺は会社勤めのしがないサラリーマンで働き詰めのただ単に生きてる そんな感じだった
しかし、ある日いつもの様に夜遅く家に帰る途中 何故か吸い寄せられる様にふらふらといつもと違う道を進んでみたんだ

そしたらいつの間にかまわりはヘンテコな動植物の住む森へと変わっていたんだ!あの時は本当混乱した
そして、突然出てきた紫の猫耳に案内してもらって辿り着いた街 そこに

“ばいく屋”

が あったんだ!

俺は何もかもが理解できない世界で唯一理解できるものに惹かれ 店に入っていった

そこにはたくさんのバイク達
HOND○、 Y○MAHA、 SUZ○KI 、KAWASAK○ 国産バイクから ハーレ○ ド○カティ などの外車まで レーサーからオフロード 最新モデルから激レアな旧車までありとあらゆる車種が取り揃えられていた

「おっ CB400SFだ! こっちはSV400S!!KATANAまであるじゃないか!!!」

周りが異常な世界の中、普通のバイクが置いてある事には驚いたが 学生時代バイクに明け暮れた俺は興奮してバイクを見て回った

「うおぉっ!! すげえ!すげえよ! どんなバイクも全部揃ってる!! へへへっ!こっちには何が…… ぐはぁ!!」

そして、店の奥の一角、そこにコイツ、
“PIGー400MM”はいたんだ

薄ピンク色の車体、つぶらなライト 大きめのタンク 座り心地の良さそうなシートから美しい曲線を描くテール くるりと一巻きした変形マフラー

ー一目惚れだったー

次に気がついた時は ローンの契約のハンコを押して 道路を走っていたよ

こうしてそれからずっとコイツと走り続けているんだ
あと、これ言ったらみんなひくかもしれないけど、俺バイクと一緒に寝てんだぜ!




「ぷひひひひひひひひ…」
心地良いエンジンの鼓動と排気音が俺の心を高揚させる
「おう!相棒 今日も不思議の国の風は気持ちがいいな」

俺たちは ゆったりのんびりツーリングしていた しかしそんな時


ヒィヤォン!

俺たちの横をものすごいスピードで軽く抜き去る謎のバイク

「なんだ?あの白いバイクは? あんなバイク見たことないぞ?最新モデルか!?」

だがそんな事はどうでもいい 問題はこの走り屋のこの俺に ケンカを売ったと言うことだ
新参者にこの俺の庭を荒らされるのは勘弁ならねぇんだよぉ

「うおおおぉ!待ちやがれぇえええええ! 」































アクセル全開 謎の白いバイクに追いついた

「てめぇ! この俺の前を走るなんざぁ 一兆年速ぇえんだよ!」

そんな俺の言葉をよそに 謎のライダーは 無言でかかってこいと手をちょいちょいと振り 挑発してくる

「!!? 野郎!」

こうして、俺と奴との勝負は始まった

「ぷひいぃいぃいいん」
「ふごおぉおおぉおん」

ヒュンヒュン

ぬちょぬちょ

ぼちゅん

ネバネバ

不思議の国特有の怪植物達、ネバネバの粘液 かかると給油したくなる巨大雨粒など天変地異を避けながら 俺達は熱いバトルを繰り広げる

バイクのスペックは奴の方が上だろうが 勝負はバイクの性能で決まるもんじゃない! こちとらバイク乗りとしての経験と一緒にすごした日々の経験と度胸と気合いと根性でそういった性能差ウンヌンは簡単に消し飛ぶんだ!

「うららららあー!!!」

奴とはほぼ互角だったが 俺が先にリードしている
「へっ どうだ! ……なっ!?」

いきなり 道路に異変が起こった
なんと、今まで道路だった所が水に沈み あっという間に数百メートルほどの海になってしまったのだ!!?

「くそっ!」
俺はブレーキをかける しかし奴らは

「ふごごごぉん」

なんとバイクについていた翼を広げ 飛んだ!

「なんだとおぉ!?アレ飾りじゃなかったのか!?」

飛んで行く奴らを俺は見ているしかできなかった

「くそぉ… 負けたくねぇ 負けたくねぇよぉ」

その時だった!

(翔… 翔…)
俺を呼ぶ声が聞こえた

「なんだ!? 誰だ! 俺を呼ぶのは!」

(翔… 私よ… )

「! まさか!?PIGー400MM!お前なのか!?」

(翔… 大丈夫!私を信じて…私はあなたの為になら 飛べるよ…)

「あぁ!わかった!俺はお前を信じる!!」


「お前に命を吹き込んでやる!!」

俺はスピードを緩めることなく素早く 道路脇のタケリダケを手に取りかじりつき 走りながら給油口にノズルをぶち込みターボエンジンの如く激しくピストン! そして、タンクのカバーを外し その先端にある二つの秘密のボタンを思い切りひねり上げ 盛大に燃料を中にぶちまけた!

「イっけぇえええぇえぇえ!!!」

そして、俺達は





飛んだ


「ぷっひゃおおおおおおおおぉおぉぉん!!!」

浮遊感と小さくなっていく不思議の国の景色

風が、風が吹いている
あぁバイクと一体なるってのはこんなに気持ちいいんだ
俺はバイクとライダーの可能性をひしひと感じていた

そして 前方を走る奴らを見つけた

ズシャぁ
奴らのすぐ後ろに着地する

「勝負はまだ!終わってないぜ!」

「うおおおおおっ!」

その後も抜きつ抜かれつデッドヒートを繰り返し 俺達の勝負は最終局面にまでもつれ込んだ


「あっ!あれは!」

“魔のカーブ”ヨツンバウェイにある緩やかなカーブでありながら 事故率が高く多くのライダーが吸い込まれる様に……
※下は触手の森となってます

だけど、今の俺達なら

「ぷひぃん」
「うおおおおおお!」

魔のカーブの不思議な引力に打ち勝ち カーブを曲がり切った!

そして、奴らは

ぴょいーん♪

落ちてった


「うおおおおっ!勝った!勝ったぞぉ! やった!やったぞおぉ!!」


俺は雄叫びをあげ、タンクをもみまくり勝利の余韻に浸った

…が

う〜! う〜!う〜 !う〜!

「はい、そこのバイク 左寄せてー」

「えっ!?…」

後ろにはANBISー880に乗った白バイ?黒バイ警官が…

「はい、バイクから降りて!君何キロ出てたかわかってる? 」

「あのその…」

「80Kmオーバーだね 免停だ!」

「ひゃあぁっ!おまわりさん〜 勘弁してくださいよぉ〜 ぼく バイクがないとダメなんですよぉ〜 ほんとなんでもしますから〜 勘弁してくださいよぉ〜 ふえええぇぇん」

「ダメだ 教習所からやり直しなさい」

「ぴえええぇえ〜ん」


激走ヨツンバウェイ! 〜バイクとか走り屋とか全然詳しくないけど 大丈夫か?〜






「あぁシャルロッテ、お義姉さんち楽しかったね〜 また行こうねぇ〜」
「ふごぉん」
14/09/16 21:43更新 /

■作者メッセージ
バイクは女人に例えられるとかなんとか
と言うわけで今回は不思議の国 ドリルモール様の作品、不思議の国の麗人達に出てくる“ヨツンバウェイ”をお借りしてお送りしました
ドリルモール様、使用許可ありがとうございました!
おかしいとこがあれば言って下さい

ドリルモール様の作品はこの他にも色々な楽しい名所や、発明品さらに 心にストっと収まる下ネタが満載です!
まだ読んでない人は是非読んでみて下さい!


風祭 翔 29 趣味バイク弄り 洗車
脱サラして現代世界から不思議の国へ バイク好きで女性、魔物娘をバイクだと認識していて 他のカップル達にいいバイク乗ってるね と話しかけたりする (もちろん 自分のバイクが一番だと思っている)不思議の国の影響かバイクにエロい事をすることになんの違和感を感じていない
カスタムとか言って色んな洋服を着せたり 快楽のルーンを刻んだりしている
そんな彼だが 数年後給油口から“新車”が出てきた時は慌てふためいたと言う
バイクが近くにないとダメダメになる

PIGー400MM(ぴーあいじーよんひゃくだぶるえむ)
ヨツンバウェイで夫を乗せて幸せそうに走る魔物娘達を見て“自分も乗られたい” そう思った彼女は店頭に並んだ
バイクになりきっている
たまに喋ることもあるが 翔はそれを自分にしか聞こえない心の声とかテレパシーとかと思っている
燃費リッター三キロ(でおねだりする) 弄って欲しいのでよくトラブルを起こす

ばいく屋
現代から来たバイク設計者の旦那とドワーフの嫁が経営している不思議の国のバイク販売店
古今東西ありとあらゆるバイクが常時千台以上売られているが たまに変なお客様が店頭に並べろと言って詰め寄ってくる
運が良ければドラゴンやワイトなど 超レアな車種が置いてあるかもしれないぞ!
さぁみんなも お気に入りのバイクに跨って不思議の国で風になろう!

魔のカーブ
カーブの先の崖の下には不思議な触手の森が不思議な魔力で引き寄せ 犠牲者を待っている 死亡率は安定の0%


お詫び
挿絵のタケリダケ 資料を見ないで描いたら 全く違いました事に描いてから気づきました
あれだけタケリダケタケリダケ言ってたのに恥ずかしい限りです
お詫び申し上げます
ここまで読んで下さいまして本当にありがとうございます!

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