読切小説
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リザードマンのステラ
目の前には青く澄んだ空がどこまでも広がっている。僕はその光景を地べたに転がったまま見つめていた。
雲から覗く日差しは柔らかく、頬を撫でる風が心地よい。冬の到来を感じさせる秋の風が、汗ばんだ体を冷やしてくれた。

「ケヴィン。いつまでそうしているつもりだ」

太陽を背負った人影が、僕に影を落としていた。逆光に目を細めながら顔を向けると、腰に手を当てて僕を見下ろすステラの姿があった。
横髪から除く水ヒレのような耳。大きく鋭い爪を持った足に緑の鱗に覆われた腕。そして臀部から伸びる太く大きな尻尾。それらの特徴が、彼女がリザードマンであるということを雄弁に示している。
風が吹く度、リボンでまとめられた彼女の髪が尻尾のように揺れていく。日差しを受けて輝く髪は、収穫を待ちわびる小麦を思い出させた。

「風が気持ちよくてね」
「答えになってないぞ」

切れ長の瞳を更につり上げ、憮然とした様子でステラが呟く。その調子に苦笑を漏らしながら僕は体を起こした。
小高い丘の向こうに住み慣れた街並みが見える。海を抱く石造りの街並みが、日差しを浴びて白く輝いていた。
民家から煙が上っている。そろそろ昼に差し掛かる時間だ。白い煙がたなびいて、空へと消えていく。風が強い日だった。

「まあ、たしかにいい風だな」

ステラが腰を落ち着ける。町外れの草原には僕と彼女の姿しかない。風に運ばれた彼女の香りには、わずかな甘さが混じっていた。

「今日も私の勝ちだな」
「また手も足も出なかったよ」
「そうか? そこそこ善戦はしてたぞ」

傍らにあった木剣を目の前に掲げてみる。樫で出来たその粗末な剣には無数の傷がついていた。この傷の数が、ステラに挑み、敗北した試合の多さを物語っている。僕はただの一度すら彼女に勝ったことがなかった。
深い溜息をつく僕にステラが微笑を浮かべていた。

「ケヴィンも昔より力強い踏み込みが出来るようになったな。剣を正面から受けると、少し腕が痺れる」
「僕は腕が痺れるどころじゃなくて、全身がガクガク言ってるよ…」
「体の作りが違うからな。それに私の方がお前より一歳年上なのも忘れるな」

冷静な指摘に、反論する気力すらなかった。体を動かす気になれないのは、何も疲労だけが原因ではないだろう。表には出さぬように努めていたが、僕は敗北に落胆していた。

「ふてくされるな」

ステラが忍び笑いを漏らしているのが気配で伝わってくる。その雰囲気からは余裕が感じられた。
リザードマンであるステラは、人間である僕よりも身体能力に優れている。強い虚脱感に襲われている僕とは対照的に、彼女は汗一つかいていない。それだけの差が僕とステラの間には横たわっている。
そして体力以外でも、僕が彼女に勝っている要素などなかった。精神的にも技術的にも彼女は常に僕の数歩先を進んでいる。
今までも、そしておそらくはこれからも。僕はいつまでたってもステラに勝てないのだろう。

「またくだらない事を考えてるのか」

ステラの指先が僕の額に触れる。前髪に隠れたその部分には、意識して見なければ分からないような小さな古傷がある。
指先から伝わるステラの熱に、僕は咄嗟に顔を背けた。

「別に、何も考えていないよ」
「誤魔化すな。何年の付き合いになると思っているんだ」
「少なくとも、くだらない事ではないよ」
「まったく。減らず口は達者だな」

ステラは深く追求してこなかった。察しのいい彼女なら、僕が遠まわしに認めた事を、気づいていないわけがない。しかし、それにはあえて触れないでくれた。僕に悩みがあったとしても、僕自身が口を割らない限りは、彼女は決して聞いてはこないだろう。その気遣いが今はとてもありがたい。

「ほら。いい加減考え事はやめて、さっさと行くぞ」

笑いながら彼女がゆっくりと立ち上がる。
太陽を背負うステラの姿はとても絵になった。今日の彼女は裾の長いズボンと白いチュニックを身に着けている。生地が薄いせいで、シルエットが露になっている事に彼女は気づいているのだろうか。いや、気にしてもいないのだろう。彼女より弱い僕は、異性として見られてもいないのだろうから。

「もう少しここに居てもいいだろう?」
「何を言っている。試合の後は買い物に付き合う約束だろ。忘れたとは言わせんぞ」

忘れていた。ものの見事に忘れていた。しかしそんな事は億尾にも出さず――少なくとも出さないように努力はした――、僕はゆっくりと立ち上がる。
彼女はわずかに唇を尖らせていた。

「私はいまとても悲しい」
「ごめん…今日は仕事の直前まで付き合うので勘弁してください」
「ふふ、今の言葉忘れるなよ」

僕の言葉に彼女はころりと表情を変える。勝ち誇った笑みを見て、僕は彼女につままれた事を悟った。

(まったく。本当に僕は彼女に勝てないな)

「ケヴィン、何をボサっとしている。早く行くぞ」

ステラが堂々とした足取りで歩き出す。ワンピースの裾を舞い上げるように歩く彼女の後ろを、僕はゆっくりとついて行った。





「それで、何を買いに行くんだい?」
「それはついてからのお楽しみだ」

問いかけにステラは含み笑いを見せた。唇の端をわずかに持ち上げた意味ありげな表情。それは彼女が悪戯を思いついた時に見せる顔だった。彼女は――少なくとも僕にとっては――よからぬことを考えている。長い間一緒にいる僕には、それが手に取るように分かった。
行き先も分からないまま、僕はステラと共に目抜き通りを歩いた。昼時という事もあり、通りには多くの人と魔物たちの姿があった。この国が親魔物政策を執り始めて二十年近く。今では多くの魔物たちがこの街に定住し、当たり前のように生活を行っている。

(昔とは随分変わったものだなぁ…)

今でこそ人と魔物が平和的に暮らしているこの街も、昔は多くの人々が、暮らしの中に入り込んできた魔物たちの存在に困惑していた。年老いた者の中には、前魔王時代の凶悪な魔物の姿を忘れていない者だって少なくはなかった。そんな中に姿形が変わったと言えど、魔物が入り込んのだ。多少の混乱があるのは想像に難くない。
国の働きによって表立った暴動はなかったとはいえ、水面下では穏やかでない騒ぎがあった事も僕は覚えている。
僕とステラも、かつてはそんなトラブルの当事者だった。

「おい、ケヴィン。どこまで行くんだ」

僕の思考はステラの言葉によってさえぎられた。気がつけば隣にステラの姿がない。慌てて振り返れば、彼女は一軒の店の前で立ち止まっていた。

「ごめん、考え事してた」
「知ってる。何度呼んでも返事をしなかったからな」

駆け寄る僕をステラの溜息が出迎える。見れば、彼女は尻尾を胴に巻きつけていた。これは彼女が苛立っている時に見せる癖の一つだった。僕を見つめる表情は心底呆れたような色を浮かべていた。

「考え事をするなとはいわんが、せめて私と居る時ぐらいはやめろ。楽しめないだろう」
「あぁ…折角の買い物だもんね。ごめん」
「そういう意味で言ったんではないんだが…まあいい。じゃあ入るぞ」
「入るって…ここに?」
「そうだが。何か問題でもあるか?」

彼女の言葉に僕は目の前の煉瓦造りの真新しい店を見上げた。そこは街で唯一魔物向けの衣類を扱っている専門店だった。
魔物たちが街で生活を始めてから、こうした魔物向けの店舗が増えてきている。それは、次第にこの街で魔物たちが受け入れられているという事でもあるのだろう。かつてはどうであれ、この街は今では魔物と共に歩む道を進んでいる。

(それ自体は喜ばしい事だけど…)

僕は店頭で飾られている下着としか思えないような代物を直視することが出来なかった。

「…外で待っているっていうのは?」
「却下だ。今日は買い物に付き合う約束だろう」

僕の問いかけは案の定、ステラによって一蹴されてしまった。
彼女は頑固だ。一度決めた事は決して曲げようとしない。それは今も同様だった。
まことに遺憾な事ではあるが、曲りなりにも年頃の男である僕の羞恥心を、彼女は理解してくれなかった。彼女に異性として意識されていないにしても、さすがに悲しい。

「いやぁ、でも…これは…」
「つべこべ言うな」
「ちょ、ちょっとっ。待ってよ」

なおも言い募る僕の腕を彼女が強引に掴む。彼女の掌は鍛えられているというのにしっとりと柔らかい。わずかに汗ばんでいるのは、彼女も僕と同じように緊張でもしているからだろうか。
その手に意識を取られている間に、僕の体は店引っ張られていた。

「ほら、入るぞ」

ステラが僕を引っ張りながら店の門を潜っていく。足を踏み入れた僕の目の前には別世界が広がっていた。

「う、わぁ…」

店中は淡い光に照らされていた。頭上に目を向ければ、輝く光珠が魔術によって浮かび上がり、薄桃色を基調とした内装と商品を彩っていた。
所狭しと並べられた衣服は明らかに着用していたほうが卑猥としか思えるものばかりだ。肌の露出面積が異様に広いシャツ、見せそうなぐらい丈の短いスカート、腰までスリットが入ったチャイナドレス、向こうが見えるほど透けたブラウス。男の目を引き付ける事を重視したそれらは、衣類としての機能性など考慮していないに違いない。
そしてそんな服が並ぶ店内には、多くの魔物たちが訪れていた。彼女たちは、男の目を引き付けるためだけに作られた服の数々を、熱心に品定めしている。
男の姿は僕以外にはなかった。

「いやぁ…すごいなこれは」

ステラはとても興味深そうに周囲を見渡している。激しく尻尾を振り回すその姿からも彼女が心の底から楽しんでいるのは明らかだった。

「そうだね…」

僕は先ほどから周りの客たちの眼差しを痛いぐらいに感じていた。女の子に腕を引っ張られ、なすがままの僕は、さぞかし滑稽に違いない。彼女たちの視線は生暖かく感じるのも気のせいではないだろう。

「あの、ステラ…そろそろ離してもらえると助かるんだけど…」
「駄目だ。離したら絶対に逃げるだろ」
「だって…ていうか、普通の店じゃ駄目なの…」
「お前な…私のこれで普通の服が着れると思うか?」

ステラが目線で僕に下を見るように促す。その先には彼女の揺れる尻尾があった。
言われて気がついたが、彼女がいま着ているズボンには、尻尾の太さに合わせて大きな穴が開いていた。たしかにこんな穴が開いている服が人間向けの店で売っているとは思えない。

「その服もここで買ったの?」
「いや、これは自分で繕った。この店に来たのは初めてだ」
「ステラ、裁縫できるんだ…」
「心外な。私は家事全般が得意なんだぞ。料理だって、人並み以上に出来る自信がある」
「へぇ…」

小さい頃から一緒にいる幼馴染の思いがけない一面に、僕は感嘆の声を漏らすしかなかった。僕はステラの事を知っているようで意外と知らなかったのかもしれない。恥ずかしそうに顔を背けるステラの姿は、普段の剣を握った彼女とはまったくの別人のようにも思えた。

「とはいえ、自分で繕うのは手間がかかる。それに、きちんとプロにやってもらった方が綺麗だしな。だから今日はここに来た」
「なるほど…」

普通の服屋でも魔物向けの衣装が売られてはいるが、種類が豊富であるとは思えない。この街の住人は大半が人間であり、魔物は少数だ。そんな状況では、彼女たちが満足出来る服を探すのはとても大変な事に違いない。一挙に扱っているこの店の方が好みの服を見つけやすいのだろう。

(これが、エルフやデュラハンならそこまで困らないのだろうけど)

一部の例外こそあれ、魔物たちの多くは人間とは異なる姿をしている。翼が生えていたり、下半身が蛇や虫だったり、ステラのように尻尾が生えていたり。そんな彼女たちにとっては、人間用に作られた服は色々と不便に違いない。魔物たちが自分の着れる服を見つくろうのは、着飾ることと同じぐらい死活問題なのかもしれない。

「分かった。今日はちゃんと付き合うよ」
「よろしい」

ステラの手が僕の腕から離れていく。彼女は頬を緩め、尻尾をかすかに揺らしていた。
自由になった腕を見つめる僕の機先を制し、ステラが口を開いた。

「もう逃げないだろ?」
「まぁ…そうだけど…もしかしたら、そう思わせる罠かもしれないよ?」
「ケヴィンがそんな事をしない事ぐらい分かっている。私がお前を何年見続けてきたと思っているんだ?」

ステラが得意げな表情を浮かべる。その顔と言葉に、僕は慌てて赤くなった顔を背けたが、手遅れだった。視界の端に見える彼女は、心の底から愉快そうに笑っていた。

(ステラの、こういう屈託のない所は卑怯だ)

僕はステラが好きだ。彼女の何気ない一言は、いつも僕を舞い上がらせる。
けれど、彼女は僕をただの幼馴染としか思ってないだろう。事実、物心ついた頃から彼女の態度と距離感はなんら変化がない。それはつまり彼女は僕に気がまったくないという事の証左でもあった。きっと彼女は僕の事を、世話のかかる弟分ぐらいにしか見ていないだろう。

(それにステラは、リザードマンだ)

リザードマンは自分よりも強い男に惹かれる性質がある。それは単純な好みの問題というよりも、本能に刻まれた種族的な特性のようなものらしい。それはステラも同様のはずだ。つまり、彼女よりも弱い僕は、ステラの好意の対象には決してなりえない。

(それが嫌で、剣の腕だって磨き続けてはきたけれど…)

結果は惨敗。ただの一度すら僕は彼女に勝てたことがない。
残念ながら、僕は彼女の御眼鏡にかなう存在ではなかった。

「とりあえず、早く選んでくれ」
「そう慌てるな。服ぐらいゆっくり選ばせてくれ」

複雑に絡んだ感情を押し殺して出た声は自分でも分かるほど平板に聞こえた。しかし熱心に服を見渡すステラは、僕の声色にまでは気づいていないようだ。それが何よりの幸いだった。

「いいけど…ステラ、こんなに際どい服着るの?」
「いや、私が見たかったのはあそこのやつだ」

ステラが近くの陳列棚を指差して見せる。その一角は店の表に並んでいるような奇抜なものとは違い、いたって普通の服が飾られていた。それでも魔物向けであるためか、多少は丈が短かったり、胸元が見えていたりもするが、今まで僕が見ていたものに比べれば常識の範囲内だと言える。僕はそっと肩を撫で下ろした。

「あそこなら、ケヴィンも抵抗がないだろう?」
「うん…まぁ…そうだね…」
「よし。それじゃあ早速見てみるか。お前の意見も聞かせてくれ」

奇妙な虚脱感に力なく頷く僕とは対照的に、彼女は踊るような軽い足取りで棚へと近づいていく。
色とりどりの鮮やかな服を見つめる彼女の目は、傍目にもわかるほど輝いていた。その様子から、彼女が服を見る事自体を楽しんでいるのが伝わってくる。
この店に来たのは今でも恥ずかしいけど、楽しそうに服選びをしているステラを見ているのは悪くなかった。

(そういえばこの店に来たのは初めてだって言っていたな)

初めての訪問ならば、ここにある服の多くは初めて見るものばかりだろう。それを思えば、彼女のいつにもない喜びようもなんとなく分かった気がした。なにせ見るだけの僕と違って、彼女は実際に着る事になるわけだから。熱が入るというものだろう。

(最近のステラは服装にこだわってるしなぁ)

僕の記憶がたしかならば、今日のような服装を彼女が着るようになったのはここ一、二ヶ月前からだったはずだ。前のステラは、簡素なズボンとシャツを好んでいた。全身を覆うように袖や丈の長いそれらは、お洒落とは程遠いものだった。
そんな彼女が心変わりしてお洒落をするようになる理由はなんだろう。好きな人でも出来たのだろうか。

(好きな人…か)

僕はじっと彼女を眺めてみた。
ステラは綺麗な女の子だ。一般的なかわいらしさとは違うが、中性的な顔立ちはとても整っている。それに鍛えられた体つきは彼女の凛々しい魅力を十二分に引き立てている反面、女性らしいフォルムを損なっているわけではない。
エメラルドのような鱗で覆われた手脚はスラりと長く美しい。無駄な肉のない腰はキュっと大きく引っ込んでいる割に、その上には形のいい胸がしっかりと自己主張している。爬虫類独特の縦長の瞳孔が見える瞳は切れ長で、琥珀色のアクセントが彼女の幼い顔立ちにいいコントラストを生み出している。感情が表に出やすい緑色の尻尾は見ていて飽きないし、健康的な肌はとても滑らかだ。

この店にある服は――露出の度合いはどうあれ――そのどれもが、男である僕から見ても魅力的なものばかりだ。そんな魅力溢れる服を着た彼女は、きっと素敵に違いない。

「あのな…ケヴィン。そんなにじっと見つめられると恥ずかしいんだが…」
「あ、あぁ。ごめん」
「…ま、まぁ…別に見たければいくら見てくれてもいいが…そ、それよりこの服をどう思う?」

頬を赤く染めた彼女は一着の服の掲げていた。
それは前面にかわいらしいフリルがふんだんに施された白いワンピースだった。

「これ…?」
「あ、ああ…どうだろうか…」
「うーん…」

それを身に付けているステラを思い浮かび、僕は首をかしげてしまった。たしかに服自体は可愛らしいし、とても女の子っぽい。しかしどうにも彼女の雰囲気には合っていない気がした。
そんな僕の様子に気づいたステラはしょんぼりと尻尾を垂らしてしまう。

「やはり…似合わないか」
「それよりは、そこにある服の方がいいかな」
「…これか?」

僕は胸元にレースをあしらったキャミソールを指差していた。装飾が少ないせいで、一見すれば先ほどのワンピースよりも地味に見える。しかしそのシャープなシルエットは、彼女の魅力を引き立ててくれるように感じられた。

「あれか…しかしあれだと完全に手が露出するな」

ステラは傍目に分かるほど露骨に渋い顔を浮かべていた。その理由は、おそらく小さい頃に他の子供たちから、トカゲ女と苛められたのが原因だと思う。いじめの原因が、本人の努力で改善出来るものならばよかった。しかし彼女の鱗に覆われた手足は、ステラがリザードマンという種である以上、避けられない問題だった。
そのせいでステラは、昔から自分の手足を出来るだけ晒さないようにしている。事実、彼女がいま着ているチュニックも袖が手首まで覆うタイプで、ズボンの丈は足元まであった。

「綺麗だと思うよ。ステラの手」
「冗談はよしてくれ。こんな鱗に覆われた手、醜いだけだろう」

吐き捨てるように呟き、ステラは唇を噛み締める。それがとても悲しくて、僕の口から自然と言葉が出ていた。

「僕は好きだよ」
「えっ…」
「ステラの手足は醜くなんかない。綺麗だ」
「あっ…あぅ…そ、その…」

ステラが声を失い、顔をうつむかせる。怒っているわけではない。照れていた。その証拠に、彼女は顔を真っ赤に染めていた。でも僕もステラの事を言えない。告白めいた事を言ってしまった僕の顔も、きっと真っ赤になっているに違いないだろうから。

「ありがと…」

やがて彼女は聞き漏らしそうな程小さな声で呟いた。
その感謝の言葉には色々な意味が込められているように感じられた。それがどんな意味を持つかまでは僕には分からない。多分聞いてもステラは答えてくれないだろう。それでも、彼女は少なくとも僕の言葉を受け入れ、喜んでくれた。
僕はそれが嬉しかった。





秋の日は落ちるのも早い。僕たちが店に来た時は真上にあった太陽も、店を出る頃には既に傾き始めていた。
わずかに赤く染まり始めた石畳を、僕たちはゆっくりと連れ立って歩いていく。

「いやぁ…予想以上に買い漁ってしまった」
「僕の予想を遥かに超えていたよ…」

彼女の服選びは留まる事を知らなかった。むしろ、気に入った服を見つければ見つける程、彼女のテンションは増していった。その度に僕は意見を求められ、彼女が持つ服は増え続ける。ステラはそんな今日の戦果の詰まった嬉しそうにギュっと抱えて、満足そうにしていた。

「しかしもう少し金があればな…」
「まだ買うつもりだったの?」

ステラが物惜しげな表情で後ろを振り返る。その目はあの店を見つめていた。

「いや、あと一品な。出来れば欲しかったんだが…まあ手持ちが尽きたのでは仕方がない」

その言葉で、僕は店を去る際に彼女が見ていた髪留めを思い出した。
あれは男の僕から見ても綺麗な代物だった。施された装飾は控えめながらも丁寧な仕上がりで、はめ込まれた小さな琥珀は彼女の目に似て、綺麗に澄んでいた。

「また、買いにくればいいんだよ」
「そうだな。髪留めは逃げない」
「誰かに買われる可能性はあるけどね」

僕の軽口にステラが苦笑を浮かべる。
その顔には最早未練はなかった。前向きな彼女らしい切り替えの早さだった。

「ケヴィン、今日は付き合ってくれてありがとう」
「参考になったならいいけど」
「安心しろ。まったく問題ない。しかし、お前には悪い事をしたな。結局仕事の直前までつき合わせてしまった」
「そういう約束だろう?」
「本当はもう少し早めに終わらせて軽く何か食べるつもりだったんだ…不覚にも我を忘れてしまった」

彼女の言葉に僕は空腹を思い出した。考えてみれば試合の後からずっとこの店に居たおかげで、昼食にありつけていなかった。本当ならば僕も彼女と同じく、買い物を済ませた後にでも食事にでも誘おうかと考えていたが、仕事の時間が迫っている中では難しそうだ。諦める他ない。

「店で賄いでも食べるからいいよ。それよりも、ステラはどうする? よかったらうちの店で食べていく?」
「折角の申し出なんだが…生憎と持ち合わせがない。まあ、今日の埋め合わせは今度する。何かして欲しい事でも言ってくれ。私で出来る事ならなんでもいいぞ」
「気にしないでいいのに」
「そう遠慮するな。お前と私の仲だろう?」

親愛の情が感じられる言葉に、僕はかすかな胸を痛みを覚える。
ステラの言葉に悪意があったわけではない。ステラは僕に親友として、幼馴染として、純粋に好意から言ってくれている。それ自体は嬉しい反面、彼女からはそれ以上何も思われていないのだと再認識できて、少し悲しかった。
結局の所、僕はあくまでも彼女の幼馴染止まりでしかない。

「っと、危うく通り過ぎるところだった…」

分かれ道でステラが立ち止まる。ここからは僕の勤め先とステラの家で方角が違う。出来れば彼女を家まで送っていきたいところだけど、そうすると遅刻は免れないだろう。いや、今から行っても多分ギリギリ遅れると思う。

「楽しい時間というのは…あっという間に過ぎ去るな」

ステラが名残惜しそうに見えるのはたぶん僕自身の願望だろう。僕がそうであるように彼女もそうあって欲しい、思わずそう考えてしまった。自分の未練がましさに思わず苦笑を零しながら、僕はステラに向けて手を振った。

「じゃあ、行って来るよ」
「ああ、またな…今日はありがとう」

微笑を残し、ステラが去っていく。太陽に照らされる彼女は綺麗だった。





目抜き通りを曲がっていくつか通りを抜けた僕に目に、見慣れた看板が飛び込んできた。綺麗に磨かれた看板の中では、羊が木陰でまどろみ、その下には『はぐれ羊亭』と店の名前が刻まれている。その看板を通り過ぎて、僕は慌てて裏口へ向かった。

「すみません、遅れました」

勝手口から宿に入り込んだ途端、古びた床が軋んだ音をたてた。その音に思わず体がビクリと跳ねるのと同時に、店主であるリックさんが洗い物の手を止めて振り返る。

「ケヴィンか。おはよう。お前が遅刻とは珍しいな」
「ええ、まあ…色々ありまして…」

曖昧に濁した答えにリックさんは大きな体を揺らしながら意味深に忍び笑いを浮かべていた。
かつては冒険者として活躍していたらしいリックさんの体つきは、間もなく三十半ばに差し掛かるにも関わらず、とてもよく引き締まっていた。そんなリックさんが含みをもった笑い方をすると、妙な迫力があった。

「色々、か。デートは楽しかったか?」
「は? い、いや。デートじゃないですよ。ていうか、なんで知ってるんですか」

ステラと買い物に行く事はリックさんには一言も伝えていない。そもそも僕自身がステラとの約束を忘れていたのだ。言えるわけがない。困惑の表情を浮かべる僕に、リックさんは事情を説明してくれた。

「昼頃にレイチェルが見かけたらしくてな。俺に教えてくれた。あの店に入ったんだろ。あそこは色々な意味で男には辛い場所だからな。災難だったな」
「リックさんも行った事あるんですか?」
「まぁ…レイチェルに連れられて何度か、な。悪かったな。驚かせて」

レイチェルというのはリックさんの奥さんであるワーシープの名前だ。
屈強な見た目とは裏腹に、リックさんは年下の奥さんの尻に敷かれている。おそらくは僕と同じようにあの店に連れてかれた経験があるのだろう。僕の肩を叩くリックさんの顔には、同類を見るような自嘲気味な苦笑が浮かんでいた。

「…いや、まあいいんですけど…そういえば、レイチェルさんは寝てるんですか」
「あぁ。そろそろ起きるとは思うが」

ワーシープは身にまとう羊毛からは常に眠りの魔力を放たれているらしい。そのせいかレイチェルは仕事中も眠そうに目を擦りながら、接客をしていている。この店には、そんな小動物っぽいレイチェルさんの姿を見るのが目的で来る客も少なくはない。彼女はいわば、店のマスコットだった。

「ふぁぁぁ〜…おはようございますぅ」

噂をすればなんとやら。カポカポと蹄を鳴らす音に目を向けると、大きな欠伸を浮かべたレイチェルさんがのんびりと階段から降りてきた。頼りない足取りで階段を降りたレイチェルさんは、両手を前に突き出してリックさんに抱きついた。

「旦那様ぁ、おはようございますぅ」

レイチェルさんはとても小柄だ。その背は僕よりも頭一つ小さく、顔つきもあどけない。僕より年上であるにも関わらず、明らかに二歳ぐらいは若く見える。そんなレイチェルさんがリックさんにしがみついている姿は、夫婦よりも親子のそれに見える。あやすみたいに頭を撫でるリックさんの仕草がその印象を強めていた。

「レイチェル、ケヴィンに見られてるぞ」
「あらぁ、ケヴィン君じゃないですかぁ。ご注文は何になさいますかぁ?」
「おい、ケヴィンは客じゃなくて従業員だろ。まだ寝ぼけてるのか」

咎めるような言葉とは裏腹にリックさんの声色はとても優しい。
もう結婚して長いらしいが、二人は新婚のように仲睦まじかった。そしてその関係は人と魔物――異なる種族だという事をまったく感じさせない。ステラに好意を抱く僕にとっては、二人の姿は憧れの的であり、理想の姿だった。

「レイチェル、いい加減離れてくれ。羊毛のせいで私まで眠くなる。――ああ、ケヴィン。悪いが俺は手が離せない。食堂を空けてきてくれないか」
「分かりました」

『はぐれ羊亭』の本業は宿屋だ。けれど夕食時だけは一階の食堂を酒場として解放している。僕は二ヶ月ぐらい前からその手伝いをしていた。
この店は、店主の料理と奥さんの愛らしさが評判で、大通りから少し外れた土地柄にも関わらず繁盛していた。街が夕暮れで真っ赤に染まる頃には狭い店内はあっというまに埋まっていった。僕は接客のため、厨房と食堂を延々と往復していく。

「すみませーん。こっちにエールもらえますか?」
「はぁい。いまお持ちしますので少々お待ちくださぁい」

気づけば、いつのまにかレイチェルさんが厨房から出ていた。それだけで客の多くの目つきが変わったのが分かった。この店はレイチェルさん目当ての男性客が多い。彼女を一目見ようとわざわざ街の正反対の区画からやってくる人まで居るぐらいだ。

「ふぁぁぁぁっ…眠いですねぇ…」

そんな客の気配を気にする様子もなく、レイチェルさんは大きな欠伸を浮かべながら食器を運んでいる。眠そうに目をしょぼしょぼさせてふらふら歩く姿は危なっかしくて仕方ない。

「あらぁ…?」

案の定、レイチェスさんはバランスを崩した。僕は慌ててレイチェルさんの体を支え、食器の転落を防ぐ。食器は間一髪のバランスを立て直した。僕の腕の中で、レイチェルさんがニッコリと微笑んでいた。

「あ、ケヴィン君〜。ありがとうございますぅ」
「いえ、たいしたことじゃないですから」

レイチェルに苦笑を返し、僕は客の応対へと戻っていく。心なしか周囲の客――特に男性客――の視線が痛い。厨房の奥ではリックさんがくつくつと笑っている。いつもの事ではあるが、勘弁してほしかった。

「災難だったわねぇ。それとも、役得だった?」

突然横から聞こえた声に顔を向ける。カウンターに、一人の女性が席についていた。彼女はサキュバスだった。

「良くある事ですから」
「ふふ、優しいのね。私、そういう子、大好きよ」

妖艶に微笑むサキュバスに、僕は曖昧な笑みを返す事しか出来なかった。
異性から好意を持たれるのは悪い気持ちではない。それが美しい女性となればなおさらだ。けれど僕が好きなのはステラで、付き合うならば彼女以外にはどうしても考えられなかった。ステラの眼中に僕がいないと分かってはいても、自分自身に嘘はつけない。我ながら往生際が悪かった。

「あなたのオススメの料理は何かしら?」
「そうですね…カポナータでしょうか」
「じゃあそれを頂戴。デザートはあなた、なんていかがかしら?」
「すみません。僕は今日のレシピにはないもので」
「あら、それは残念」

働きはじめて二ヶ月ともなると、客のあしらい方にも慣れてくる。はじめは相手に少しからかわれるだけで頬を赤くして言葉を失っていたが、今ではそれなりに対応できていた。
あくまでもそれなり。軽口で終わらない相手にはどうしようもない場合が多い。

「でもお店の外なら関係ないわよね。ふふ、閉店後が楽しみだわ」

今回の客もまさしくそういう相手だった。
魔物たちの多くは頑固者で押しが強い。下手に跳ねつけようものなら燃え上がった相手に何をされるか分かったものではない。積極的なアプローチをしてくる客に対して、僕個人だけではどうにもならなかった。

「だめですよぉ、お客様ぁ。その子はもう他の娘のモノなんですからぁ」

何時の間にか僕の隣立っていたレイチェルさんが助け舟を出してくれた。
今回のように僕がお客の対応に困っていると、レイチェルさんが助けに入ってくれるのがこの店での常の事だった。彼女が手を離せないか眠っている時は、わざわざ厨房からリックさんが出てくれる。二人のおかげで、僕はなんとか今までこの店で働く事が出来ていた。そうでなければ、今頃はとっくに誰かに貞操を奪われていたに違いない。

「そうなの? …あら、本当だわ。うっすらとだけどリザードマンの匂いがするわね」

サキュバスの女性は、ガッカリと肩を落としていた。魔物は人間では感知出来ない匂いが分かるらしい。それによって他の魔物の配偶者や恋人である男を見分けているのだという。おそらく彼女は僕に残ったステラの匂いを感じ取ったのだろう。残り香がつくほど一緒にいたのかと思うと、少し恥ずかしい。

「本当にすみませんでした、お客様。恋人に怒られたくはないので」

ステラとは特別な関係ではないが、僕はこの場を乗り切るために話を合わせる。サキュバスはそれに気づいた様子もなく、微笑を浮かべていた。

「ふふ、相手を大切に思っているのね。偉いわね」
「え、ええ。まあ」
「でも、こびりついてる匂いの薄さからして全然シてないでしょう? 駄目よ、もっと可愛がってあげないと」
「き、気をつけます」
「ええ、恋人さんを大切にね」

好色な笑みを浮かべるサキュバスに手を振られながら、僕は厨房へと逃げ帰った。レイチェルさんが僕を見て楽しそうに笑っている。僕は苦笑を返すしかなかった。

「レイチェルさん、今回もありがとうございます」
「いいえ〜、頑張ってくれてるケヴィン君を守るぐらいお安い御用ですよぉ。それにぃ、彼女さんにも悪いですからぁ」
「本当に助かります。まあ、僕とステラはそういう関係ではないですけど」

レイチェルさんはぽかんとした表情を浮かべていた。

「…そうなんですかぁ…? あれぇ…さっき恋人って言ってたような?」
「それは…まあ、なんというか。あの場を乗り切るための方便です」
「…でもぉ、ケヴィン君は彼女さんのことが好きなんですよねぇ」
「…えぇ…まぁ…そこを否定する要素は…ない、ですけど」

レイチェルさんの言葉に顔を赤くなる。
ステラを好きな事は事実だし、それを恥じるつもりもない。けれど、年頃の男としては、異性への恋心を指摘されるのはとても気恥ずかしい。けれどレイチェルさんがそれを理解してくれる気配はなかった。

「ケヴィン君の好きな人ってあのリザードマンの女の子ですよねぇ。今日一緒に歩いているのを見かけましたよぉ。いいですねぇ。青春ですねぇ。レイチェルももっと旦那様と青春したいです〜」

レイチェルさんは熱っぽい眼差しをリックさんに向けている。調理に勤しむリックさんはわずかに唇の端を持ち上げて肩を竦めていた。二人の微笑ましいやり取りに、レイチェルさんのせいで意味もなく高鳴っていた心が休まる。
しかし、そんな僕の気持ちは、たった一言で乱された。

「そういえば聞きましたよぉ。彼女さん、兵士として王都に行くみたいですねぇ」
「だから彼女じゃありま――なんですか、その話」
「なんかぁ、剣の腕前を見込まれてぇ、王都に行くことになったって話みたいですけどぉ…あれぇ、聞いてませんでしたぁ?」
「…初耳です」

この国は常に水面下で軍備を整えている。侵略を行おうとしているのではない。むしろその逆、教団への備えを行っているのだ。
魔物に対して友好的な態度を取ることで、この国は当然のように教団からも目を付けられるようになった。幸い僕の街に被害は出ていないが、他の地域では大きな戦いがあったという事も耳している。そういった被害を防ぐためには、やはり同様に武力で固めるしかない。そのため国は常に優秀な人材を捜し求めていた。
優れた剣の腕前を持つステラに国が目を付けたのも、当然の成り行きなのかもしれない。

「…レイチェルさんはその話…誰から聞きました?」
「えっとぉ…お客さんから教えてもらったんですぅ…リザードマンの女の子が王都の兵士団に入るんだ、ってぇ…」
「その話がデマってことは…ないですよね?」
「…少し前ですけどぉ。王都から遣いの人が来たってぇ…自警団の人が言ってましたぁ」
「そう、ですか…知りませんでした…」

王都から遣いがきていて、リザードマンの女の子が王都から誘いを受けている。ここまで情報が揃っていれば、確定的だった。
ステラは王都へと行くのだろう。

(来る時が来たか…)

僕は前々から、心のどこかでこうなるだろうという事を予感していた。いや、それは予感というよりも確信に近かったかもしれない。
リザードマンは修行のために旅をする者も多いと聞く。剣の腕前を鍛えるステラも、いつかはそうやって旅に出て行くだと思っていた。僕が予想していた形とは違っていたが、ステラがこの街を去るという点では変わらない。
彼女は王都へ行ってしまう。そして恐らくは、この街には戻ってこないだろう。幼い頃から一緒にいたステラとの関係も、間もなく終わりを告げるのだ。僕は彼女との離別を、冷静に理解していた。

(ちゃんと、お別れをしないとな)

王都に行くのが何時になるかは分からないが、既に決まっているのだとしたら、そう遠くはないだろう。
別れは惜しい。出来れば離れたくない。けれど、彼女が選んだ道ならば、僕はそれを認めて、門出は祝ってあげたかった。例えそれが今生の別れになろうとも、新天地に向かう幼馴染を快く見送ってあげたかった。
それこそが僕に出来る、唯一の事な気がした。

「ケヴィン、これを客に出してもらっ――お前、泣いてるのか?」

リックさんの言葉で、僕は頬に触れる。そこは涙で濡れていた。





「すまない、遅くなった」
「ううん。こっちこそ突然でごめん」

それから数日後、僕はステラをあの街が見える丘に呼び出していた。いつもは剣を交わらせるこの場所で、僕らは並んで佇んでいる。いつも彼女と過ごしたこの場所こそ、別れを済ませるには最適だと思えた。
丘の上を撫でる秋風が一面に生える野草を揺らしている。風はわずかに肌寒かった。

月日の移り変わりは早い。季節は次々と移ろい、年を重ねていく。小さい頃から一緒に居た僕とステラも、気づけばこんなに大きくなって、そして互いに違う道を歩もうとしている。刻々と冬に近づいていく風が、それを感じさせた。

「むぅ…今年の冬は寒そうだな。寒いのは苦手だ」

リザードマンであるためだろうか、ステラは寒さにめっぽう弱かった。
今日のステラはあの店で買った服を身に着けていた。キャミソールの下はショートパンツ。シャープなシルエットが鱗に覆われた引き締まった四肢を引き立てていた。

「変、じゃないかな」

ステラがじっと僕の事を上目遣いで見つめている。その体が震えているのは寒さばかりのせいではないのかもしれない。
僕は彼女を安心させるべく大きく頷いて見せた。

「大丈夫。凄い似合ってるよ」
「そうか。それはよかった」

僕は上着を脱ぎ、それを微笑を浮かべるステラの肩にかけた。

「ありがとう。やっぱりお前は優しいな」
「ステラが風邪を引いたら呼び出した僕のせいになる。それが嫌なだけだよ」

心の中に渦巻く色々な感情を誤魔化すように、つい軽口を叩いてしまった。けれどステラはまったく気にせず、嬉しそうに肩に掛かった上着を両手でギュっと掴んでいる。
僕たちの間を一陣の風が通り過ぎ、ステラの髪を乱していく。ステラはもう体を震わせてはいなかった。


「しかしお前から誘ってくるなんて珍しいな。今日はどういう風の吹き回しだ?」
「今日は渡すものがあってね」
「渡すもの…?」

僕は持っていたズボンに入れておいた小さな袋を彼女に手渡した。彼女の眼差しが僕に何かを問いかけている。

「いいよ、開けて」

ステラは恐る恐る紙袋を開いていく。その手が何かに気づいたように動きを止めた。僕が見守る中、彼女の指先が小さな琥珀の髪留めを取り出した。それは魔物向けの衣装店で彼女が諦めた、あの髪留めだった。
ステラは大きく目を見開いていた。

「ケ、ケヴィン…こ、これ…その、いいのか?」
「うん。喜んでもらえればいいけど」
「よ、喜ばないわけがないだろう。店に行ったらもう無くて、売れてしまったのだと諦めていたのに…それがこんな…凄く嬉しい…」

彼女が髪留めを強く抱き締める。その様子は本当に嬉しそうで、僕はそっと胸をなでおろした。彼女が喜んでくれたなら贈った甲斐もあるというものだ。きっと彼女も大事に使ってくれるだろう。残念ながら、この髪留めを付ける彼女の姿を僕は見ることはないだろうけど。
彼女はおそらく、明日か明後日には、もうこの街を出るのだろう。そうすればきっと、彼女と出会う機会も限られるに違いない。そう思うと、涙が出てきそうになってくる。

(我ながら未練がましいな…)

僕は未だに彼女との別れを惜しんでいる。出来る事なら彼女に行ってほしくない。けれど、僕が止めれば、彼女を悩ませる事になる。だからこそ、僕は彼女を笑って見送らないといけない。
もしも引きとめた事で彼女の決意が乱れ、王都に行く事を断念しようものなら、僕は自分を許せない。彼女の将来を身勝手な我侭で踏みにじる権利など、僕にはない。だから、僕は彼女を引き止めない。笑って彼女を見送ってあげたかった。それだけが僕に残った小さなプライドだった。

「これ、もしかしてお前が一人で買いに行ったのか?」
「う、うん…」
「あれだけ店に入るのを恥ずかしがってたのに?」
「今でも恥ずかしいよ…」

これを買いに行った時の事は出来れば思い出したくない。魔物向けの女性服が立ち並ぶあの店に男である僕がたった一人で入った瞬間の、周囲の客の驚いた表情。レジに立ってプレゼント用の包装を頼んだ時の、店員の微笑ましげな態度。あれはまさしく、針のむしろだった。

「それなのに…私にプレゼントしてくれるために…行ってくれたのか…?」
「うん…まあ、そうなるね」
「ケヴィン…っ!」

彼女にかけていた上着が草むらに落ちていく。それに気づいた時には、僕はステラに強く抱き締められていた。
今まで経験した事がないぐらい、彼女の顔が間近にある。相手の吐息すら感じられる距離だった。彼女の甘い香りを、今までよりも強く感じた。甘く切ない香りに僕の胸を締め付けられる。

「ありがとう、ケヴィン…一生大事にする…」

僕の肩にステラの小さな顔が置かれる。彼女は力を抜いて僕に身を委ねていた。柔らかい重さが少しずつかかっていく。鍛えられていても、彼女は女の子だった。秋風に冷えた体にステラの熱が心地よかった。

「よかった…そんなに喜んでもらえて。贈った甲斐があったよ。その、王都に行っても、元気で」
「え…?」
「僕も応援してるから。ステラが、向こうで頑張るのを」
「もしかして…誰かから聞いたのか?」

彼女が口にする肯定の言葉に僕は大きな落胆を味わった。
この段になっても僕はどこかで、噂が嘘である事を望んでいた。彼女が僕の思い込みを笑って一蹴する事を期待していた。けれど、ステラは僕の話を肯定した。その事に改めて絶望している自分の矮小さに涙が出てくた。

「ケヴィン…?」

ステラは僕を見上げている。その気遣わしげな表情に僕は更なる呵責を覚える。ステラに何の負い目を感じさせる事なく、笑って送り出そうとしていたのに。結局、僕は彼女にこんな顔をさせてしまっている。僕は弱くて情けない人間だ。そんな僕をステラに好きになってもらいたいだなんて、自分のおこがましさに反吐が出そうだった。膨れ上がる自己嫌悪に、涙は滂沱と溢れ続けた。

「だ、大丈夫…目にゴミが入っただけだから」

入ってもいないゴミを取り出そうと、僕は必死に目を擦る。そんな僕の頭にステラの手が触れた。指先で髪をかき乱す彼女の顔には笑みが浮かんでいた。その優しげな表情に僕の中で言い知れぬ不安が募っていく。寒くもないのに体が震えた。何か、とてつもなく嫌な予感がした。
その思いは彼女の一言で確信へと変わった。

「安心しろ。ケヴィン。私がお前を置いていくわけがないだろう?」

彼女の一言に僕の全身が粟立つ。それは僕が心のもっとも恐れていた言葉だった。
ステラは僕のために自分の将来を閉ざそうとしている。それだけはさせまいと思っていたのに。僕の弱さが、僕の迂闊さが、彼女を追い詰めてしまっている。その事実が、胸を掻き毟っていく。

「私はどこへも行かない」

彼女の優しさが僕を蝕んでいく。僕は間違いなく、心のどこかで彼女の発言に喜んでいた。そしてそんな自分を嫌悪した。
ステラと離れたくない。けれどステラと離れなければいけない。二つの感情が入り乱れて自分でもどうしたいのか分からない。
喉が痛い。声を出そうにも、何を言えばいいか分からない。それでも、必死に何かを伝えようと口を開いたその瞬間――

「そもそも、私は最初から勧誘など断ったのだから」

――放たれた彼女の言葉に、僕は声を失った。

意味を理解するのに時間がかかった。ようやく理解出来した僕の頭を埋め尽くしたのは、困惑だった。

「勧誘があったのは確かだ。しかし私はそれをキッパリと断った。だから心配する事は何もない」

顔を上げたステラは真摯な表情を浮かべていた。その顔は嘘をついているとは思えなかった。だからこそ、彼女の言っている意味が分からなかった。
ステラは日々、鍛錬に明け暮れている。僕だって彼女に勝つべく修行は続けているが、彼女の量は僕を遥かに上回っていた。その凄まじさは舌を巻くほどだ。
強さを求めている彼女にとって、優れた戦士の集まる王都は、修行の場に最適な環境のはずだ。そんな絶好の機会を、なぜ彼女は断ったというのか。

「な、なんで…」
「それを私に言わせるのか…?」

僕の問いかけにステラは頬を赤らめていた。彼女は僕をちらりと一瞥した後、丘の下に広がる街の方へと目を向ける。その眼差しは、まるで何か――もしくは誰か――を探しているように見えた気がした。

「あぁ…この街に好きな男がいるんだね…」

この街に誰か好意を寄せた相手がいるのならば、彼女の選択も理解出来た。魔物たちは、自分の愛する人を最優先に生きている。ステラが修行に最適な環境を捨て、この街に残る選択をするとしたら、それぐらいしか考え付かなかった。
しかしそんな憶測から出た言葉への返答は、ステラの大きな溜息だった。

「…ある意味では当たっているが、多分お前の考えている事は間違っている」

彼女の言葉の意味が理解出来なかった。僕はかなり間抜けな表情を浮かべていたと思う。そんな僕に、ステラは思い切り顔を近づけてきた。
僕の唇にほんの一瞬だけ暖かい物が触れる。
それが彼女の唇だと気づいた時には、既にキスは終わっていた。

「んっ…」

一秒にも満たない幻のような口付け。しかし僕の唇に残る感触は現実だ。頬を赤く染めたステラと目があった。潤んだ琥珀色の瞳は吸い込まれそうなぐらい綺麗だった。

「…いくらお前が鈍感でも、これで分かるな?」

彼女の赤らんだ頬を見つめながら、僕は声を失った。たしかに彼女の言っている事は理解出来た。けれど、なぜ僕が好かれているかは理解できていなかった。

「冗談…じゃないよね?」
「…私が冗談でキスをするような女に見えるか?」
「でも…僕はステラより弱いのに…」

リザードマンは自分より強い男に恋をする。それなのにステラは僕が好きだと言っている。理解が出来なかった。僕は謙遜でも何でもなく、ステラよりも弱い。それが実際に何度も剣を交わせたステラも分かっているはずだ。僕は一度として彼女に勝利したことがない。

「剣の強さじゃないんだ。お前は強い。覚えているか? 私たちが子供だった頃の事を。私は小さい頃、苛められていただろう?」

僕の考えを読んだように彼女が声を発する。その言葉に、僕に一つの記憶が呼び起こされた。
とても古い、けれど未だに色鮮やかに残っている過去の記憶だ。

それは僕たちが物心ついたばかりの頃だった。

親魔物政策が打ち出されて数年。街の人々は生活に入り込んできた魔物たちの存在に困惑していた。当時はまだ魔物への風当たりが強く、中には敵意をむき出しにする大人たちもいた。大人の気持ちはすぐに子供に伝播していく。そしてその矛先は魔物であり子供だったステラへと向けられた。ステラは同年代の子供たちの中で孤立していた。

「そう…あの時…私が苛められていた。いや、苛めというよりも、最早あれは暴行だった」

それがただの腕っ節に物を言わせた喧嘩ならばよかった。リザードマンである彼女ならば、例え子供とはいえ、喧嘩でなら負けるわけがなかった。ただし、子供たちは大人が思っている以上に、計算高く陰険な存在だ。
力では決して敵わない彼女に対し、子供たちは集団で石を投げ、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせかけ、危なくなるとすぐに逃げた。
魔物が当たり前になった今でこそ、そういう問題はなくなったが、当時はそれが当たり前だった。

「けれど…他の子供たちにトカゲ女と馬鹿にされて石を投げられる中、お前だけは必死で守ってくれたじゃないか。顔にこんな傷まで作って」

彼女の指先が僕の額を、そこにある古傷を撫でていく。今では消えそうな程小さな痣となったそれは、投げられた石からステラを守って出来た傷だった。彼女はそれを未だに覚えていた。

「けれど…僕はステラを助けられなかった…」

他の子供たちに苛められ続けるステラは、傍目からも見てられないぐらい酷かった。
そんな彼女を助けようと、僕は何度も子供たちの前に立ちはだかった。けれど彼女とは違って秀でた所の何もない僕では、彼女を助ける事なんて出来なかった。腕っ節では誰にも敵わず、背も小さかった僕は、結局ステラと同じように罵声を浴び、石を投げられた。僕に出来たのは、ただ彼女に矛先が向かわないようにすることだけだった。

「いいや。助けてくれたさ。おかげで私の心は死なずにすんだ」
「そんな、大げさだよ…」
「大げさな事ではない。私自身諦めていた。自殺すら考えていた。それだけ絶望的に思えたんだ」

ステラがそこまで思い込んでいた事を僕は知らなかった。僕はただ、彼女が悲しそうに泣いている姿を見たくなかっただけだ。だから必死で彼女を守ろうとした。僕の大事な女の子を。思えば、僕はあの頃からステラが好きだった。

「そんな私を、お前は…お前だけは守り続けてくれたじゃないか」

彼女の頬を涙が伝う。かつての記憶は、彼女にとってとても辛い過去に違いない。第三者であった僕ですら、時として憂鬱な気分になるのだ。当事者だったステラの悲しみは、その比ではないだろう。
それでもステラは健気に笑って見せた。

「お前は、自分が苛められるのも厭わずに、投げつけられる石から私を守って立ちはだかってくれた。それが打ちひしがれた私をどれだけ勇気付けたか分かるか? そんなお前が私より弱いわけないだろう?」

ステラが僕の耳元へと顔を近づける。彼女の頬が僕の横髪を撫でていく。僕たちは今まで以上に密着していた。服を通して、ステラの暖かい鼓動が伝わってきた。

「いま私がこうして生きているのは、すべてお前のおかげなんだ。お前は私の命の恩人だ。そして同時に、私の最愛の人だ。私はあの頃からお前が――いや、あなたが好きだった」

言葉は甘い吐息となって僕の耳に届いた。

「ずっとあなたが好きだった。あなたの強さに惹かれていた。あなただけが私の支えだった。あなたのために強くなりたかった。あなたが愛おしくてたまらなかった。あなたが欲しくて、お前のモノになりたくて、仕方なかった」

ステラの告白は、彼女の性格を表すように真っ直ぐだった。そのひたむきな言葉は弱い僕の心にするすると溶けていく。

「あなたと会うと鼓動が高鳴った。あなたと話すと心が華やいだ。あなたと剣を交じあわせる度に体が火照った。あなたの体が触れるだけで頭が真っ白になった。愛してるんだ。狂おしいまでにあなたを」
「ステラ…」
「ケヴィンは私の事を…どう思っている? やはり、私みたいな醜いトカゲ女は嫌いか…?」

ステラが顔を上げ、僕をじっと見つめてくる。彼女の体は強張り、その唇は何かを求めるように震えていた。
僕はそんな彼女の背中を抱き、艶やかに膨らんだ唇に先ほどよりも長くキスをした。

「ステラが人か魔物かなんて関係ない。僕はステラが好きだ」

僕の頬を涙が伝う。悲しいわけではない。嬉しかった。僕と同じように、彼女も僕を好きでいてくれた事が。
気づけば彼女も同じように泣いていた。僕たちは互いに強く抱き締めあいながら、涙を流していた。
彼女の指先が僕の背中を撫でていく。その動きは僕という存在が居る事を必死で確かめているように感じられた。

「ケヴィン…好きだ…大好きだ…世界で一番あなたが好きだ…」

彼女の告白。それに僕が応えようと口を開いたその瞬間、彼女の舌先が口内へと侵入していた。
その動きは先までのような柔らかいキスとはまったく異なっていた。僕の歯茎も舌も頬肉も。そのすべてを蹂躙するように彼女は舌で僕の口腔を犯していく。

「んっ…ふぅっ…♪」

舌先を擦りつけ、全体を絡みつかせる動きから、ステラが僕を激しく求めている事が伝わってくる。味蕾を潰すような情熱的な接吻に、唇から唾液が滴り落ちている。けれど彼女は、唾液が服に染みを作るのも気にせず、僕の体に体重を預けていった。僕は彼女の背中に両手を回し、鍛えているとは思えないほど軽い体を受け止めた。

「ふぅっ…んっ…ちゅぅぅっ…♪」

僕の味覚にステラの甘い味が広がっていく。その味は脳を蕩かすほど甘美だった。それをもっと味わいたくて、僕は夢中で彼女の舌に自分のものを絡ませる。
僕の反応に驚いたのか、ステラが一瞬だけ動きを止める。しかし彼女は目を細め、更に行為へ没頭していった。

「…んーっ…♪ ちゅっ、ちゅぴっ…ちゅるるっ…♪」

僕は呼吸も忘れて彼女の唇に吸い付いた。息苦しさに意識が朦朧としていく。それがまったく苦痛ではなかった。今の僕にあったのは、彼女とこの口付けを何時までも続けていたという気持ちだけだ。キスをすればするほどに、彼女の芳香は甘く切なくなっていく。僕はその香りに酔いしれながら、彼女との口付けに溺れていた。

「んっ…けびんっ…けびぃんっ…しゅきっ…らいしゅきらっ…♪」

舌を絡ませながらも、ステラが器用に愛を囁いてくる。その言葉と荒く暖かい吐息が、曖昧な思考を更に溶かしていく。
彼女の舌先が縦横無尽に踊っている。絶え間なく注がれる刺激に、僕の粘膜はすっかり麻痺してしまっていた。それでも彼女の舌がどこかに触れる度に頚椎を電気が走り、ドロドロと甘い唾液が体を熱くたぎらせていく。

「ふぅっ…んっんっー♪ けびぃんっ…♪」

彼女の滑らかな脚が絡みつき、深く密着する二人の間で形のいい胸が潰れていく。両手で頭を抱えられている僕は、抵抗もせずにステラのすべてを受け入れる。あのステラが、僕との口付けでここまで淫らに蕩けている。その事実が、僕の雄の本能を刺激していく。一物が痛いぐらいに充血しているのが自覚できた。

「んっ…ちゅるっ…ちゅるるるるっ♪ …っはぁぁ…っ♪」

口内の唾液を舐め取るようにしながら、彼女の唇がゆっくりと離れていく。無意識のうちに舌先で追いすがろうとするも、彼女の長い舌はそんな僕から逃げるように遠ざかっていってしまう。やがて、彼女の舌が僕の口から引き抜かれる。彼女に頭を押さえ込まれている僕には、それを名残惜しく見つめる事しか出来なかった。

「はぁ…はぁ…♪ ケヴィンのが…私の体に当たってる…♪」
「うっ…っ…」

彼女に腰を押し付けられ、僕は思わずうめき声をあげてしまう。彼女の言う通り、ズボンを膨らませる一物は張り裂けそうなほど硬くなっていた。彼女の体と密着しているだけだというのに、暴発して精を撒き散らしてしまいそうだ。それほどまでに彼女のキスは甘く気持ちよかった。

「こんなにビクンビクンって、布越しに分かるぐらいに膨らんで…♪ そんなに、私とのキスは気持ちよかったんだな…♪」

ステラは開かれたままの口から涎を垂らしたまま、淫靡な微笑を浮かべていた。溢れる熱い吐息が目に見えそうだ。
顔だけじゃない。彼女は体全体が熱に浮かされるように変貌を遂げていた。
薄桃色に紅潮させた肌も、淡く煌く緑色の鱗も、そのすべてがうっすらと汗を浮かべていた。四肢は小刻みに震え、尻尾はだらんと垂れ下がっていた。その姿は淫蕩に溺れる魔物そのものだ。
彼女は全身で発情していた。そして僕はそんな彼女に魅入られていた。

「好きな女の子とキスをして、こうならない男がいたら、見てみたいよ…」
「ふふっ…こんな状況でも減らず口が聞けるなんて、余裕だな」
「まさか。正直…その、情けないけど、限界が近い」
「私もだ…あなたと抱き合っていたせいで、体が疼いて仕方がなかった。ほら…見てくれ…」

ステラが僕から身を離し、ショートパンツを下ろしていく。露になったレースの下着は彼女の愛液でぴったりと肌に張り付き、盛り上がった恥丘を露にしていた。彼女がわずかに動く度に、濡れた下着がピチャピチャと水音を奏でた。

「凄いだろう…こんなに下着がグチョグチョで…。あなたといるといつもこうなんだ…あなたに抱いて欲しい、犯して欲しいって、体がずっと訴えていたんだ…けど、あなたに嫌われたくなくて…今までは必死に我慢していた」

僕の目の前で彼女が下着をずらし、恥丘をゆっくりと開いていく。開かれた秘裂からは、まるで湯気が出そうなほど蜜で滑っていた。その奥のピンク色の柔肉は、何かを求めるように蠢いていた

「あなたに受け入れられたって分かったらもう歯止めが利かなくて…。あなたに犯して欲しい。あなたの女にして欲しいって…子宮が、疼いてるんだ」

僕は今まで、魔物でありながらステラは例外なのだと思っていた。淫らで奔放な他の魔物とは違うのだと思っていた。しかし、そうではない。彼女は身を焦がすような情欲を必死に耐えていただけなのだ。僕に嫌われたくないという一心で。
それがどれほど辛い事か、人間である僕には完全には理解出来ない。けれど、少なくとも今、彼女が僕を欲しているのだという事だけは分かっていた。

「やはり…こんな醜くて淫らなメストカゲでは…抱いてもらえないかな…?」

ステラが小さく俯く。前髪に隙間からわずかに見える琥珀色の瞳は涙を浮かべて揺れていた。

「そんな事ない。ステラは、綺麗だ。それに、その…エッチなステラも、嫌いじゃないというか…なんというか、嬉しかった」

緊張と興奮で声が震えてしまった。我ながら情けない。歯切れも悪いし、全然格好良くない。それでも、これは偽らざる本心だった。それをなんとか伝えたくて、僕は彼女の体を今まで以上に強く抱き締めた。

「ステラは綺麗だし、かわいいし、大好きだ。普段の毅然としたステラも、今みたいなステラも。どっちも僕の好きなステラだ」
「ケヴィン…ありがとう…」

僕の腕の中でステラは身をすり寄せている。自分の匂いを刻みつけようとするその動きがたまらなく愛おしい。彼女の髪から漂う仄かに甘い匂いが僕の嗅覚を刺激していった。

「んっ…♪ ケヴィンの…キスしてた時よりも大きくなってる…♪」
「だ、だってステラがそんなに体を寄せるから。それより、その、本当に僕でいいの?」
「ばか。お前がいいんだ。お前じゃなきゃ嫌だ」

ステラが草むらに体を横たわらせ、ゆっくりと脚を開いていく。下着から溢れる蜜液は太腿を濡らすほど大量にあふれ出していた。秘部だけでない。彼女の全身が汗に濡れて艶かしい。僕は思わずその光景に見とれてしまった。

「あんまりジロジロ見るな…恥ずかしいだろうっ…」
「そんな事言ったって…凄く、綺麗だから…」
「あ、あぅ…卑怯だぞ…こんな時に綺麗だなんて言うなんてっ…♪」

彼女の体に誘われるように、近づいていく。キャミソールに覆われた彼女の胸が、荒い呼吸にあわせて激しく上下している。僕は思わずその胸に腕を伸ばしていた。

「んっ…ふぁっ…♪ い、いきなり触るなぁっ…♪」
「ご、ごめんっ」

抗議の言葉に咄嗟に手を離す。彼女は不満そうに小さく口を尖らせ僕を睨みつけた。

「別に触るなと言ったんじゃない。い、いきなり触られてビックリしただけだ」
「なら…触ってもいい?」
「き、聞くなっ、恥ずかしっ…ん…ぁっ…こらぁっ♪ だからいきなりっ♪」

もう彼女の声が耳に入らない。僕はキャミソールの下から腕をいれ、彼女の豊かな双丘を持ち上げるようにも揉みしだいた。
掌にぴったりと吸い付いてくる汗に濡れた肌の感触を味わうように、ステラの柔らかい膨らみの手を埋めるだけで、彼女は体を震わせた。その反応がかわいらしくて、色々な揉み方を試してみたくなる。

「んっ…ふぁっ…私の胸で遊ぶなぁっ…♪」

持ち上げるように下から上へと揉み上げたり、全体を強く握ってみたり、胸の付け根から揺らしてみたり。彼女の反応が一番大きかったのは、外周をなぞるように刺激を加える事だった。膨らみの外側からゆっくりと乳首のある内側へ。緩急をつけて愛撫を加え続けてると、ステラは切なそうに脚をすり合わせ始めた。

「あっ…そ、そんなっ…んっ…っふぅっ…はぁぁ♪」

ステラの息が上がっていくのを楽しむように、指先で撫で、時折掌で揉み解す。マッサージのような一連の流れを続けながら、僕はステラの柔らかくて弾力を堪能していた。
好意を抱き続けていた女の子が、自分に体を委ねてくれている。きめ細かさと張りを併せ持つ豊かな胸を自由にさせてくれている。その実感に、一物は痛いぐらいに膨張し、今にも射精してしまいそうだった。

「ふぁっ…あぁぁっ…んっ…あっ…♪」

彼女の蕩けた声と甘い吐息を感じれば感じるほど、僕の理性は溶けていく。今すぐにでもステラの中に怒張を入れ、欲望のままに腰を押し付けたい。そんな雄としての本能がムクムクと鎌首をもたげてくる。それでも僕は必死にこらえ、ステラへの愛撫を続けた。どうせやるなら、思い切り彼女に感じて欲しかった。

「ステラ…気持ちいい?」
「んっ…気持ちいいけどっ…そんなにっ…焦らさないでっ…♪」
「じゃあ、どうすればいい?」

問いかけながら今までと同じやり方で彼女に刺激を与え続ける。胸は次第に熱を帯び、弾力さの中に柔らかさが増してきた。まるで僕の指の間で溶けていくみたいだ。指先の動きに合わせ、ステラの尻尾がピクピクと揺れていた。

「そんなのっ…聞くなんっ…てっ…♪ いじわるっ…いじわるぅっ…♪」
「だって、初めてだから」
「わ、私だってっ、はじめてなんだぞっ…んっ…ふぁっ…♪ あぁぁっ…んっ…♪」

ステラは両手で顔を覆ってしまっていた。指の隙間からは羞恥に染まった頬を更に紅潮させ、目を瞑っているのが垣間見えた。
それでも動きを変えないでいると、やがて彼女は観念したように僕の質問に答えてくれた。

「乳首っ…乳首触ってっ…っ♪」

僕は彼女に言われるがままに、掌を中心へと這わせていく。そして指先が小さな突起に触れた瞬間、ステラは大きく体を震わせた。

「あぁぁっ♪ そうぅっ、そこぉっ♪ 乳首っ、いいのぉっ♪」

指先が触れただけの軽い接触。それにも関わらず、ステラの声には喜悦の色が強く浮かび上がっていた。それだけ彼女にとって乳首は気持ちいいようだ。
僕は両手で左右の膨らみを揉み上げながら、指先で乳首を擦り始めた。ふるふると震える左胸の先端を側面からなぞり上げ、右胸の突起を指先で転がす。左右で異なる動きを与えると、彼女は腰を浮かせて髪を振り乱した。

「んっ、あっ、あぁっ♪ 両方っ、いっぺんになんてっ♪ ふぁっ、んぁぁ♪」
「ここがいいんだね」
「そうだっ♪ 乳首っ♪ 乳首弄られるのがっ、気持ちいいんだっ♪ ひぅぅっ♪ あぅっ、あぁっ♪ もっとっ♪ 強くっ、強くしてっ♪」

彼女の嬌声の感覚が次第に短くなっていくのに応じ、胸を揉む力を強める。今までの撫でるような動きから、揉みしだく動きへ。指先の間から汗がにじんだ豊かな双丘がはみ出している。零れ出た乳首は指の間で挟むようにつねってみた。

「んっ、ふぁぁっ♪ コリコリってっ、潰されるとっ♪ 今までとっ♪ 違う感じでっ♪」

刺激を強めてもステラはいやがる様子を見せない。彼女は手足をピンと伸ばして快楽に浸っている。僕はキャミソールをまくり上げ、今まで隠れていた二つの乳房が露にする。その膨らみの先端ではピンク色の乳首が大きく膨らんでいた。僕は咄嗟にそれを口に含んだ。

「んっ、ふぁぁぁぁ♪ オッパイっ、舐められてるっ♪ あぁっ♪ 舌先がっ♪ ざらざらってっ♪ すごいぃっ♪」

ステラは縛った髪を振り乱し、白い喉をさらけだして声をあげる。
巨大な果実に唇全体で強く吸い付くと、じっとりと浮かんだ汗が唇を濡らし、口の中に甘くてとろみのある味が広がった。舌先でなぞる度、熱く火照った乳頭は大きくなっていく。前歯を擦り付けると、彼女の肢体が痙攣し、それに合わせて胸が大きな揺れた。

「あっ、あっ、らめ、そんなに強く吸うなっ♪ んっ、私のオッパイっ、ミルク出るわけじゃないのにっ♪」

たしかにいくら絞っても彼女の胸から母乳は出ない。しかし彼女の汗には蕩けるような癖のある甘味があった。僕はそれをもっと味わいたくて、彼女の乳房のあちこちに唇で強く吸いつき、赤い跡を残していく。もちろんその間も、空いている片方の乳房を愛す事はやめなかった。

「んっ、ふぅっ♪ らめっ♪ ケヴィンっ、私、もうっ、イク、イっちゃうっ♪ イっ…くぅぅぅぅっ♪」

口の中に含んだ乳頭に強く吸い付いた瞬間、ステラの体が今までになく大きな痙攣を始めた。彼女の全身からは今までにない程の甘く芳しい香りが立ち込める。手足と腰をガクガクと振るわせる姿は、発情した雌そのものだ。

「あっ…ふぁぁっ…私っ…胸らけでっ…イっちゃったぁ…♪」

法悦を極めた彼女は全身を弛緩させている。手足が力なく草むらに投げ出された事で、いままで両手で隠されていた表情を僕はようやく見ることが出来た。見たことがないぐらいに下がった目尻には涙が浮かび、淫欲に溺れた眼差しは虚空を見つめ、わなないた口からは涎を垂らしている。紅潮した顔は全体が快楽に蕩けていた。
気丈さを失ったステラはとても淫らで美しかった。

「あっ…はぁっ…はぁっ…♪ ケヴィンっ…これで終わりにっしたらっ…♪ 許さないからなぁっ…♪」

荒い吐息を隠すような彼女の声はとても切なげだ。虚ろな眼差しは熱心に僕のある部分へと注がれている。それが意味する事は明白だった。僕だってここでやめるつもりはないし、これ以上耐える事は出来そうにない。今でも触れずに暴発してしまいそうなほどだ。
僕は慌てて下を脱いだ。外気に性器を晒す事で、思わず体が震えた。

「はぁぁぁ…♪ すごい…そんなに大きくなって…先走りが溢れてる…♪」

熱い眼差しを受けながら彼女の下着をずらしていく。愛液で濡れた下着が脚を滑るだけでステラは小さく体を震わせ、熱い息を吐いている。

「んふぁっ…私を抱いてくれるんだなっ♪」
「うん。その…初めてだからうまくないかもしれないし、多分すぐ出ちゃうだろうけど」
「気にするなっ…私だって、もう…耐えられそうにないっ…♪」

ステラの脚を掴み、白日に晒された恥丘にそっと一物を押し付ける。性器同士が触れ合うと同時に、ピチャリといういやらしい水音が僕の耳朶を打った。膣口が亀頭に吸い付こうとうねうねと動いている感覚が、見ないでも伝わってくる。

「じゃあ…行くよ」
「あぁ…はやくっ…♪ 早く私を、あなた専用の雌にしてくれっ…♪」

ステラは期待と興奮の色を浮かべた瞳で僕を見つめていた。それに応えるべく、僕は肉棒を秘裂へと押し込んだ。
その途端、彼女の熱くうねる膣壷の歓迎を受けた。

「んふぁぁぁぁぁぁっ――っ♪」

彼女の嬌声が響く中、僕は腰を深く押しこんでいく。愛液で濡れた膣肉が収縮を繰り返し、一物を奥へと勝手に誘っていく。
僕のモノを包み込む媚肉にはまったく硬さがなく、むしろ熱で溶けそうなぐらいに柔らかい。それでいて細い膣道は、肉茎全体にまるでキスをするみたいにキュウキュウと吸い付いてくる。その刺激は竿が進むに連れて増していき、僕を翻弄していった。

「あぁぁぁっ♪ すごいっ♪ オマンコっ、開かれてるっ♪ ケヴィンのオチンポでっ、女にされてりゅぅ♪」

ステラがあられもない喘ぎ声を上げている。しかし僕にはそれに気を回す余裕もない。
硬く膨張した肉竿には、彼女の襞の一つ一つ、突起の一粒一粒が絡みついている。それらはカリ裏や裏筋といった敏感な所に強く吸い付きながら、搾り出すような蠢動を繰り返していた。ドロドロに溶けた肉壷がうなり、熱く蕩けた愛液が僕のペニスに絡みつく。収縮を繰り返す膣口から愛液が溢れ出し、門渡りを濡らしていく。

「ケヴィンのオチンポがっ、あちゅくてっ、ビクビクしててっ♪ こんにゃのっ、がまん、れきないっ♪」

ステラの体が震える度、媚肉が一物を締め付ける。その感覚が尿道から背筋まで走り、僕の腰が勝手に震える。経験した事のない快感に咄嗟に腰を引こうとしても、ステラ自身が腰を深く押し付けてくる。そのせいで僕の肉棒は、絡みつく肉襞のより深くへと呑み込まれていってしまう。頬から汗が流れ落ちる感覚をやけに鋭敏に感じ取れた。

「らめぇ♪ 気持ちよしゅぎて、腰がかってにうごいひゃゃうよぉっ♪」
「くぅっ…ステラっ…ステラっ…!」

襲い掛かる快楽を抑えるために、僕はステラの脚を握り締めた。
細い穴が開かれる度、ステラは白い喉をさらけ出して悦んでいた。僕はそんな彼女の膣奥へと、懸命にペニスを埋め込んでいった。
肉竿が愛液にまみれた淫壷の中を滑り、輪のように重なる肉襞を貫いていく。
やがて先端が、硬くコリコリとしたものにぶつかった。

「あぁっ♪ きらっ♪ しきゅうのいりぐひにっ♪ コツンっれぇ♪ ケヴィンのオチンポっ、きらぁっ♪」

彼女の言葉で僕は、そこが子宮口である事を理解した。そこは膣肉とは違う硬さを持っていて、コリコリとした独特の弾力を持っていた。そして太い輪のような部分は、密着した鈴口に盛んに吸い付いてきていた。

「ふぁぁっ♪ しゅごいっ♪ 子宮をっ、コツンってしゃれるのっ、気持ちいいのぉっ♪ もっろ、もっとしょこをいじめてぇっ♪」

僕は彼女の柔らかいお尻を掴み、激しく腰を動かし始めた。名残惜しそうに絡みつく膣肉から逃げるように腰を引き、そして力のままに肉竿を最奥へと叩き付ける。子宮を押し上げるような強引な動きにも、彼女は苦痛を示す事なく、激しく首を振り乱していた。

「んっ、ああぁっ♪ 子宮いいっ♪ ズンズンってしゃれるとっ、頭がとりょていっちゃうぅっ♪」

僕が腰を打ちつける度、ステラの豊かな乳房が波打っていく。そんな僕に合わせるように、ステラ自身も腰をくねらせ、恥丘を押し付けてきた。膣道を亀頭が往復する度、かき混ぜられて泡だった愛液が掻き出されていく。
技術も何もない、闇雲なピストン。そんな稚拙な性交にも、ステラは喜んでくれていた。

「あああっ♪ オマンコがっ、ケヴィンのれっ、おくまれっ、広がってりゅぅっ♪ んっ、広がりゅっ、ケヴィンの形に、広がってりゅぅっ…ふぁぁっ♪」

ステラの言葉に僕の雄としての本能が刺激されていく。ステラを体の中から自分のものにしているのだという充足感が理性を溶かし、僕は今まで以上に激しく腰を震わせた。子宮を押しつぶし、引き抜かれる直前まで腰を引く。パチュパチュと卑猥に響く水音が、興奮を高めていった。

「しゅごいっ♪ こんにゃ激しくっ♪ ケヴィンに、しちゅけられてりゅっ♪ ケヴィンの雌だってっ♪ オマンコの奥からしつけりゃれてりゅぅ♪」

なめらかな鱗に覆われたステラの手足が僕に体に絡みつく。珠のような汗を浮かべるなめらかな肌を感じながら、僕はステラの背中に両手を回した。
腰の動きを封じられた僕は、子宮口を擦るように肉竿を押し付ける。ステラの腰が弧を描き、僕に合わせて動いていく。互いの汗と熱の溶け出し、境界がなくなっていくような錯覚すら覚える。僕たちは理性を投げ捨て、身を絡めあい、動物のように互いを貪った。

「しゅきぃっ♪ だいしゅきなのぉっ♪ ケヴィンがっ、しゅきしゅぎてっ♪ 気持ちいいのがっ、止まりゃないのぉっ♪」

ステラが嬌声を上げる。彼女の整った顔立ちは、涙と涎でベチャベチャに汚れていた。僕との性交でステラがこんなに淫らな痴態を演じている。その実感が大きな快感を生み出し、肉竿が激しい痙攣を始める。尿道を満たす精液は、既に亀頭にまで到達し、鈴口を強く刺激していた。

「あぁっ♪ 中でぇっ♪ 中れ、ケヴィンのオチンポがビクビクいってりゅぅっ♪」

強い射精感が僕の脳をチリチリと焦がし、精液がペニスの中で荒れ狂う。そんな敏感な一物をステラの淫肉が容赦なくしごきあげていく。射精を促すような動きに、先端から少しだけ漏れた精液が先走りと共に彼女の膣中に放たれた。

「ふぁっ♪ いまっ、れたっ♪ ケヴィンのザーメンっ♪ ちょろっと、出たぁっ♪」
「ごめんっ、ステラ…もう耐えられない…!」
「らしてぇっ♪ わらしの膣中にっ、ケヴィンの子種、ビュービューらしてぇっ♪」

ステラが大きく体を震わせながら、太く長い尻尾で自分の秘部へと僕の腰を押し付けていく。それと同時に、ステラの柔肉が僕の肉棒に今まで以上に猛烈に食らいつく。
搾り出すように絡みつく淫肉、亀頭に強く吸い付いた子宮、そして更に奥深く味わおうと収縮する膣口。精を求めてオネダリをしているのが明白なその締め付けに、僕の一物はビクビクと情けなく痙攣を始めた。

「くっ、駄目だっ…ステラっ…出るっ…!」

尿道に含まれる精液を揉みほぐすような快楽に、睾丸から駆け上った精液が緩んだ鈴口から溢れ出す。蜜で潤んだ膣肉の中に、僕は下腹部を燃やす熱い欲望を解き放った。

「あぁぁぁっ♪ れてりゅっ♪ わらしのオマンコにっ♪ ケヴィンの子種が出しゃれてりゅぅっ♪」

泡だった蜜液を撒き散らす膣肉は今まで以上に肉茎に絡みつく。
亀頭から精液が迸る度、汗の浮かんだ胸が僕たちの体の間で潰れ、肢体がビクビクと痙攣を繰り返している。呂律の回ってない声が彼女の感じている快楽の高さを物語っていた。

「んぁっ♪ らめっ♪ イっちゃうぅっ♪ しゅごいっ♪ ケヴィンの子種っ♪ 奥にっ、出てりゅぅぅっ♪」

僕はステラの柔らかい身体を強く抱きしめ、彼女の跳ね上がる腰を強引に引き寄せた。射精を繰り返す亀頭を子宮口へとピッタリ押し付け、ステラの最奥へと直接、精を送り込んでいく。僕の心の中にあったのは、ステラの大事な部分にマーキングしたいという雄の欲望だけだった。

「はぁぁぁっ♪ 子宮がっ、ザーメン、ゴクゴクしてりゅ♪ らいしゅきなっ、ケヴィンにっ、種ぢゅけされてりゅぅぅっ♪」

ドクンドクンという脈を打つような射精の感覚に、僕の意識が遠のいていく。それでも僕は懸命に腰を揺らし、最後の一滴まで彼女の膣肉へ精液をなすりつけた。

「んっ…はぁぁぁぁっ…♪ 膣中れっ…ザーメンがっ…泳いでるぅっ…♪」

やがて、長かった射精もようやく終わりを告げる。僕はステラと同じように荒い息を吐いていた。

「ステラ…抜くよ…」
「んっ…ふぅぅぁぁ…♪」

彼女の淫肉が、射精を終えたばかりで敏感なモノに、名残惜しそうに絡みつく。その刺激になんとか耐えて一物を引き抜いた僕は、そのまま、ステラの横に倒れこんだ。全身を強い虚脱感が包み込んでいた。体は鉛のように重く、動かす事すらままならない。
横目に見たステラは全身を弛緩させ、蕩けきった表情で虚空を見つめていた。

「ごめん…ステラ…こんなすぐ終わっちゃって…」
「んっ…はぁっ…らいろうぶらっ…♪ わらひもっ、これいじょうしゃれたら、もたにゃいっ…♪」

ステラの体は未だに余韻に浸るように小さく痙攣を繰り返していた。それでも彼女は、緩慢な動きで僕の体にしがみついてきた。
胸元にすり寄せられた彼女の頭を抱いて、大きな息をつく。修練を重ねた時よりも強い疲労感に、意識は次第に朦朧となっていった

「けびぃんっ…もうしゅこしっ…こにょままれっ…♪」
「うん…僕も少し休みたい…」

秋風が僕たちの上を通り過ぎていく。冷たい風が、火照った体に心地よい。

「けびぃんっ…じゅっと、ずっと一緒らよぉっ…♪」

遠ざかる意識の中、彼女の甘い囁きが僕の心にしみこんでいく。
これからもステラと一緒。そんな幸福な未来に思いをはせ、最愛の女性に体を抱き締めたまま、僕は目を閉じた。










――私はいつも彼に恋焦がれていた。それは最早、崇拝と言っても過言ではなかったかもしれない。

毎日のように他の子供たちから苛められていたかつての私には、街のどこにも居場所がほとんどなかった。
家族はそんな私を必死に守ってくれたが、そんな二人の目を潜り抜けるように、陰湿な苛めは続いた。反撃出来ないよう、常に遠くから石を投げられ、水をかけられ、罵声を浴びせられた。両親が不在の時には奴らは家の前まで押し寄せてきて、私を罵倒した。
そんな辛い毎日を過ごすうちに、私の心は緩慢に死んでいった。毎日のように死ぬ事ばかり考えていた。いっそ殺してくれれば楽になるのに。そんな事すら考えていた。

私は毎日のように泣いていた。そんな私を母は毎晩慰めるようにある事を繰り返し言っていた。
『いつかあなたにも、お母さんのように、自分を理解してくれる人が現れてくれるわ』と。
けれど私にはそんな事が信じられなかった。この街のどこにも私の居場所はない。私は醜い蜥蜴だ。そんな私を誰が理解して、一緒に居てくれるというのだろうか。

(けれど、母の言う通り、『彼』は本当に現れてくれた…)

その日、私は子供たちから石を投げつけられながら、死に場所を求めて街中を彷徨っていた。幽鬼のように俯いて歩く私、その私を追いかけて石を投げ続ける子供たち。周囲には「トカゲ女」「化け物」「気持ち悪い」という罵声が木霊していた。
そんな異様な光景を前にしても、大人たちは全員見ぬフリを決め込んでいた。彼らにとっては未だに魔物は邪悪な存在だった。そんな魔物の子供が苛められていたとして、一体誰が守ってくれるだろう。この街のどこにも私の居場所はないのだと、それを再認識しながら私は涙を流していた。そんな時だった。
見覚えのある少年が、私を守るように他の子供たちの前に立ちはだかった。

(…その少年がケヴィンだった)

彼は両手を広げて必死に私を守ってくれた。投げつけられた石が自分の体を痛めつけようとも、彼は決して怯まなかった。そんな彼の姿勢がグラリと揺らいだのは、誰かが投げたひときわ大きな石がぶつかったせいだった。血の気の引いた青ざめた顔を浮かべ、子供たちは慌てて逃げていく。それを尻目に私は彼の元へと駆け寄ったのを覚えている。

「だ、大丈夫か!」
「う、うん…」

涙を流しながらもケヴィンは気丈に笑っていた。そんな彼の顔を見て、私は息を呑んだ。あの大きな石が当たったのだろう。彼の額には酷い傷が出来ていて、そこから沢山の血が溢れていた。
彼への申し訳なさに私は涙を流していた。この傷は私を守ったために出来た傷だ。つまり私のせいで彼は傷を負ったようなものだった。

「すまん、私のせいだ…っ」

けれど、彼は自分の傷を気にする事なく、泣きじゃくる私の頭を優しく撫でてくれた。自分も傷が痛むだろうに、それよりも私を慰める事を優先してくれていた。その掌の温かさは、死に掛けていた私の心を暖かく癒してくれた。私にはまだ、助けてくれる人がいるのだ。支えてくれる人がいたのだ。それが何より嬉しかった。

(けれど、その日からケヴィンは私以上に苛められてしまった…)

腕力だけならばそこらの子供に引けを取らない私と違い、ケヴィンは普通の人間の子供で、ましてや私よりも年下だった。子供たちは私へ向けていた矛先を彼に向けるようになった。子供たちは容赦がなかった。魔物に組するものは魔物と同類。そんな感情もあったのだと思う。子供たちはケヴィンを苛め続けた。

毎日のように傷を作る彼の姿はとても痛々しかった。それでも彼は、自分がどんなに痛めつけられても、私が無傷である事を喜んでくれた。

(そんな彼が見てられなくて、私は自分を鍛えた)

すべては彼を守るため、脅かす者を退けるため、そして彼とずっと一緒にいるために。そんな思いだけで、私はひたすらに修練を重ね、気づけば私は大の大人相手でも負けないぐらいの剣の腕前を手に入れていた。

やがてその腕前の噂は街の外へと広がり、遠く王都まで届いたようだった。私は王都から誘いを受けた。
しかし私はそれをすぐさま断った。私が彼の元を離れるなど、ありえないことだった。私の心はケヴィンによって救われた。だから私の一生はケヴィンのためだけに使いたかった。それに、私はケヴィンから離れたくなかった。

(だって…私はずっと彼が好きだったんだから…)

私は彼に恋をしていた。私を守ってくれたあの日から、私はずっと彼に恋焦がれていた。
けれど私はその思いを彼には伝えられなかった。
私は魔物で、醜いトカゲ女だったから。幼い頃からそういわれ続けていた私は、自分に自信を持っていなかった。そして彼との関係が壊れる事を恐れていた。醜いトカゲ女に好意を告げれて喜ぶ男などどこにいようか。気持ち悪がられるだけではないか。

人でないこの身を、あれほど憎らしく思った事などなかった。普通の人間であったなら、私は苛められる事もなかった、ケヴィンが傷つく事もなかった。そしてケヴィンへの好意を隠す必要などどこにもなかった。そうやって枕で涙を濡らした夜は数え切れなかった。

(そんな私を彼が好きだと言ってくれた時は本当に嬉しかった…)

彼は私を好きだと言ってくれた。綺麗だと囁いてくれた。
今まで否定されてきたすべてを彼が認めてくれたのが、凄く嬉しかった。あの日は私が今まで生きてきた中で、最良の日だった。

(だからってあの場でセックスしたのはさすがにやりすぎだったかもしれないが…)

とはいえ、私も魔物娘の端くれである。抑えていた感情があふれ出したと同時に、今までの反動で彼が欲しくなってしまうのは、どうしようもない事だった。むしろあの瞬間まで耐え続けていたのだから賞賛されてもいいぐらいかもしれない。事実、すべてを母に話したら、『よく我慢できたわね…』と半ば呆れられたように驚いていた。

(まあ、結果よければ、というやつかな…)

今、私は彼の家で同棲している。愛する彼のために剣の腕を磨き、家事をこなす毎日はとても充実したものだ。そしてもちろん、夜になれば仕事で疲れた彼のことをたっぷりとベッドの中で癒してあげている。既に何度も彼の新鮮な子種を膣や喉奥で受けた私は、彼の精液なしでは生きられないまでに、躾けられていた。
それはとても幸せな毎日だ。これ以上を求めようがないほどの満足した生活だった。

「ん? 帰って来たか」

追憶に浸っていた私の鼻を、嗅ぎ慣れた甘く濃密な香りがくすぐっていく。人間では感じ取れないかすかな匂いも、私たち魔物にとっては感知するのがたやすい。しかもこの匂いは私のもっとも愛する男の匂いだ。この匂いを嗅いでいるだけで、私は強い幸福感を覚える事が出来た。彼の匂いには、かすかに食欲をそそる食べ物の香りが混じっていた。

彼は今でもあの宿で働いている。あの店の客は大半が男だが、時折魔物娘たちも利用している事、そして彼女たちの多くが愛する彼を狙っていた事を、私は知っていた。
今でこそ、彼が決して浮気をしないという事を理解しているので問題はないが、私たちが結ばれる前は本当に気が気ではなかった。もしも彼が他の魔物娘に取られたら、他の魔物娘に興味を持ったらどうしよう。かつては、そんな思いに毎日のように苛まれたものだった。

(そんな彼の目に留まりたくて、慣れないファッションにも手を出したし…)

私は、彼が働き始めると同時に自分の服装を変えた。色気のないシャツとズボンだけのスタイルから、様々な衣装を取り入れていった。少しでも彼に振り向いて貰えるように、少しでも彼が意識してくれるように。彼を奪われないために私は必死だった。

「ただいま。ステラ」

扉の開く音と最愛の人の声が聞こえた。私は愛する彼を出迎えるために玄関へと向かっていく。そこには肩を揉みながら首を回すケヴィンの姿があった。
最近の彼はとても疲れているようだった。きっと店が繁盛しているのだろう。最近では食堂だけでなく、宿の仕事も任されるようになったと嬉しそうに話していたのを私は覚えている。
彼の表情からは疲労と同時に、かすかな充足感が見て取れた。

「おかえり、ケヴィン」
「ああ、遅くなってごめん」

胸の中へと飛び込むと同時に、彼の両腕が私を強く抱き締めてくれる。私と同じように鍛え続けられた体はとても逞しく、雄の力強さを感じさせてくれる。私はそんな彼の胸元にすりより、顔を擦りつけた。
ケヴィンはそんな私に対して微笑を浮かべ、硬直した。

「ス、ステラ?」

ケヴィンの間の抜けた声が玄関に響く。私は勝ち誇った笑みを浮かべながら、彼のことを見上げてみた。狐に化かされた顔というのは、きっとこういう顔を言うのだろう。彼はそれぐらい唖然とした表情をしていた。

「どうかしたか?」
「い、いや。むしろどうかしたのはステラの方だよ。な、なにその恰好」

彼は唖然とした様子で、腕の中の私を凝視していた。私は自分の姿を改めて確認した。
彼が好きだと言ってくれた手足は、今は完全に露出している。太くて長い尻尾の付け根には形のいい――と私は思っている――お尻が露になり、そこから続く背中は彼の視線に晒され、わずかに赤くなっている事だろう。あの頃よりも長くなった髪は、彼がくれた髪留めで束ねている。
そして体の前面は白い純白のエプロンで覆われ、その内にある胸は、彼の体で潰されていた。

「裸エプロン、というやつだが?」
「いや、それは見てわかるよ。なんでそんな恰好してるのを聞いてるんだ」
「母から教わったのだ。この恰好をすると男が喜ぶと」

そう、私は今日、彼をエプロン一つで出迎えている。毎日仕事で大変そうな彼に対する、私なりのささやかなご褒美だった。
私は彼と結ばれたあの日から、コンプレックスであった手足を隠すことをやめた。彼が綺麗だと言ってくれたこの手足を、好きなだけ見てもらいたかった。綺麗だと囁いて欲しかった。
もちろん、私のすべてを見ていいのは彼だけだが。

「あー…そ、その。ステラ…」

ケヴィンが顔を背けてしまう。もしかして、彼は気に召してくれなかったのだろうか。彼に喜んでもらいたかっただけの私は少し残念な気持ちになってしまった。尻尾が自分でも垂れ下がるのが自覚できた。
そんな私を見て、彼が慌てて弁解の言葉を口にする。

「ああ、いや。違うんだ。嫌ではない。ただ、こう意表をつかれた、というか…」

その時になって私は、彼の顔が頬を赤らめている事に気づいた。

「じゃあ、嬉しかったか?」
「…すごく嬉しいよ…それに、なんというか…普段と違う感じで、その…」
「欲情した?」
「うん…した」
「ふふっ。それはよかった」

私は頬を緩め、彼の胸に顔を埋めた。わずかに汗の混じった彼の匂いが私の鼻腔を刺激する。その匂いを嗅いでいるだけで、私の中の雌としての本能がかきたてられ、子宮がうずくのを感じた。

「ああ、そうだ。一つ、言う事を忘れていた」
「…ん?」
「おかえりなさい、あなた。食事にする? お風呂にする? それとも、私?」

羞恥に顔を染める顔を隠すように、彼が私を強く抱き締めてくれる。顔を紅潮させる彼の様子が、たまらなく愛おしい。

「…ステラは卑怯だ。僕がなんて答えるか、分かってて言っている…」
「勝利のためには手段を選ばないのが私の流儀だからな」

勝利などと言いながら、私はとっくの昔に彼に敗北しているのだ。だって私は、こんなにも彼のことが好きなのだから。

「じゃあ、寝室に行くよ」
「あぁ…♪ 今日も沢山、愛してくれ…♪」

彼が、私をゆっくりと抱き上げてくれる。
甘く素敵な香りに包まれながら、私は最愛の人にすべてを委ねた。
11/09/26 12:49更新 / メガンテ

■作者メッセージ
逆レイプもいいけど、和姦もいいよね!
どうも、自爆魔法系男子のメガンテです。

というわけで今回の主役はリザ子さんです。バトルはありませんが、リザ子さんです。
最初の段階ではバトルシーンも申し訳程度に入れてありましたが、なくても問題なかったのでバッサリと切ってしまいました。

だって、リザ子さんとの青春とかイチャエロとかが書きたかっただけだから!

エピローグ部分の裸エプロンは、もちろん魔物娘図鑑Tを参考にさせて頂きました。いつかは書こうと思っていたリザ子さんの裸エプロンをこうして形にする事が出来て感無量です。
私もこんな風にリザ子さんに迎えてもらいたいものです。なんで私のところには、裸エプロンで帰りを待ってくれるリザ子さんがいないのでしょうか。人生の致命的な不具合だと思います。


今まで以上に長い話になってしまいましたが、楽しんで頂けたのなら幸いです。
最後までお読み頂いてくださった方々は、本当にありがとうございました。


余談ですが、『はぐれ羊亭』のリックとレイチェルの名前は、フィリップ・K・ディックの著書「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(原題:Do Androids Dream of Electric Sheep?)から拝借しています。
分からなくてもなんの問題もない自己満足です。

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