連載小説
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後編
 エイサルが陥落してから、一日が経過した。
 日が落ち再び昇るまでの間、ロギウスは馬を全速力で走らせた。
 途中で潰れた馬は乗り捨て、途中にある街で新たな馬を調達し、3頭の馬を乗り継ぎ漸く見覚えのある丘に到着した。そのまま丘を越えると、エイサルの街が見える。
 かつて交易都市としても栄えたエイサルの街は、遠目にも非常に大きな都市だ。背の高い建物の多くは、経済活動の中心地である証だ。並び立つ建物を隔てた無数の通りには、人が絶えず行き来し活気に溢れ、街を生き生きとした人の喧騒で包む。
 そんなエイサルの街は、今は精気のないスケルトンやゾンビが歩き回っている。人の影は見当たらず、全員アンデッドに食われたか命を落したのだろう。
 ロギウスは正門を迂回し、魔物が少ない外壁からエイサルの街に忍び込む。
 そのまま路地を駆け、真っ直ぐ中枢部へと向かった。
 作戦は簡単だ。
 このまま街の中心部にいる、アンデッドを統率する首魁を破城魔砲で撃破する。頭が消えれば取り巻きも逃げ帰り、アンデッドの支配からエイサルは解放される。その後にルギイの墓を確認し必要なら掘り返して遺体を別の街に運ぶ。
 ロギウスは自分が朽ちるまで、ルギイを安らかな場所で眠らせると決めている。そのためにも一刻も早く、アンデッドを排除しルギイの遺体を救出しなければならない。
 はやる気持ちを脚力に変え、エイサル市街の路地を駆け抜ける。ルギイと何度も歩いた活気に溢れる大通りは、陰鬱な瘴気で満ちている。街並み自体はそれほど変化していないが、レンガ造りの家々は墓石のように冷え切っている。
「……チッ。もう自分達の街に変え始めてやがる」
 建物の合間から見えた街の中心部は、大きく様変わりしていた。遠目にも人間が造形したとは思えない、魂さえ奪われそうな美しい建物が建ち始めている。こういった人間の感性を超えた、しかし人が営む遥か先にあると確信する芸術に耽溺するのは、アンデッドの特徴だ。寿命が有り余っているからこそ、享楽を追及し究めていく。人間の生では決して届かない領域の芸術は、見た人間を不死という外道に誘惑する。
 エイサルは陥落したばかりだが、既に生きた人間が生活している街ではなくなりつつある。
 だが不死の世界に造りかえられたのは中心街だけで、目につく場所へ早々に手を加えたに過ぎない。他はまだ、十分に生者の営みが残っている。ルギイとロギウスが過ごした喫茶店や、歩いた道はまだそのまま残っていた。
 それらは街が生きてきた証だ。
 不死者を排除すれば、沈黙したそれらが再び息を吹き返す。
 恐らく敵がいると思われる一際煌びやかな城、そこへ侵入し敵を撃破すればまだまだ希望はある。途中に、見慣れた墓地の傍を通りかかる。その墓地はロギウスがルギイを埋葬した、彼女が眠っている場所だ。
 急がねばならないのは承知だったが、アンデッドに荒らされていないか気になっていた。
 ロギウスは戦う前にルギイの墓が無事か確認するため、墓地にそっと足を踏み入れる。
 静かな墓所で、街が滅んだというのが嘘のように変わりない。
 埋葬された死体がアンデッド化した形跡も見当たらない。
 これなら、まだ時間はあるかと安堵し背を向けた。

 ゴゴゴゴゴッ

「っ!」
 突然、墓地全体が大きく揺れる。
 整然と墓石が並んでいた墓地が、丸ごと盛り上がって山のように膨れ上がる。
 ホロホロと黒土や墓石を背中から零しながら、その白く濁った巨体が現れた。
 白い骨が、溶けた肉が、流れ落ちる土砂から、首を擡げた。
 地面の下にあるべきモノが、自らの力で外に出た。
 それは、墓場の主――王だった。
 牙を持ち、角を持ち、鉤爪を持ち、翼を持ち、鱗を持ち、尻尾を持つ。
 ドラゴンのような姿でありながら、ドラゴンではない。
 その身体は、満遍なく腐っていた。

「ギャオオオオオオオオオオオッ」

 雄叫びを上げたその口からは、万物を腐らせる息が漏れた。
 墓場の死臭を全て集め、更に濃縮したような凄まじい腐臭が漂う。
 肉は殆どが腐ってしまっていて、骨格と内側に残る僅か筋肉、そしてアンデッドの魔力が身体を支えている。
 腐り果てた肉は液化しているが、僅かに残る強靭な生命力が体の芯で生身の肉を作り出している。その新鮮な肉が全身に満ちる間も無く端から腐り、粘ついた汁となって絶え間なく体から滴る。
 広げられた翼の皮膜は溶けていて、とても飛べるような見た目には思えない。しかしその翼を大きく羽ばたかせ、周囲に腐臭を撒きながら空に飛び立った。
 骨の身体で、皮膜が溶けかけた翼で空を飛ぶ。
 奇怪な、魔力によって生きる不死の怪物らしい姿だった。
「ドラゴンゾンビッ!!」
 それは不死殺しにとって最悪の敵。
 最強の種族である、ドラゴンがアンデッドとなった魔物だった。
 その強さはアンデッドというよりもドラゴンに近く、不死殺しよりも竜殺しの獲物だ。そしてアンデッドという特性によって、竜殺しにも苦戦を強いる難敵だ。特に、アンデットの力が強まった現在では。
 その武器は腐ってもドラゴンである肉体と、触れたものを一瞬で命なき怪物に変える危険な腐敗のブレスだ。どちらか一つでも強力な能力なのに、二つを併せ持つドラゴンゾンビに怪物として隙はない。
「……」
 恐るべき目の前にして、ロギウスの脚は震えていた。
 怒りに震え、憤り狂っていた。

「よくも、ルギイを、ルギイの墓をッ!!」

 ロギウスの足元には、僅かな白い破片が転がる。
 それは彼が何度も手入れした墓石の断片だった。眠るルギイが寂しくないようにと、彼が手ずから施した花の彫刻。無味乾燥な墓石に沿えた、ちょっとした彩りだった。
 それが粉々になって、足下にほんの一かけらだけ残った。
 墓石の下にあった死体など、語るべくもない。
 あの腐った体のどこかに引っ掛かっているか、ロギウスの頭を飛び越えた街のどこかに落っこちただろう。人の死体と判別できないほどバラバラになって、もう彼女の体が同じ場所に集まる事はない。
 ルギイの命と同じように骸を、またしても『彼女』を目の前で取りこぼした。
 それどころかロギウスの手さえ介さぬまま、見ず知らずの魔物に砕かれた。
 街からアンデッドを排除する計画など、彼方に吹き飛んだ。
ルギイの墓を、ルギイの眠る地を穢したこいつを必ず殺す。
 今持っている全てを使い果し、二度と戦えなくなろうとも、そのせいで自分が死のうと、夢が果せなくなろうと、このドラゴンゾンビを滅ぼす。ドラゴンゾンビの死をもって、不死の体に齎される終わりによって、ルギイの骸を辱めた責任を取らせる。
「……殺す」
 かつてないほどの集中が、ロギウスの手を素早く動かす。
 地面に降ろされた破城魔砲の台座が炸裂し、四方八方に広がったワイヤーが周囲に地面に破城魔砲を固定する。その間に素早くロギウスは頭からフードを下げ、覆面を固定する。
 備え付けられた破城魔砲に、燃料棒を装填し穂先が明るく耀く槍弾を射出筒に番えた。
 不思議そうに見つめるドラゴンゾンビの目の前で、鮮やかに発射体勢は整った。
「死ね」

 ズッガァァアアンッ

 ロギウスの手元で、魔力が爆発した。
 炎が吹き上がるよりも速く射出筒から槍弾が打ち出され、ドラゴンゾンビの肩に直撃する。撃ち出した穂先に装填した燃料棒の魔力が、ドラゴンゾンビの肩口で解放され大爆発する。魔力の衝撃がドラゴンゾンビの姿勢を大きく崩し、その巨体を大地に押し付けた。
 発射に際して放出された、人間を死傷させる爆風が防護服の表面を舐める。
 凄まじい反動が、台座とワイヤーを軋ませた。だが台座を固定しているのはただの細いワイヤーではなく、ドラゴンを一瞬拘束するための道具だ。遥か彼方にすっ飛んでいくような衝撃も、力ずくで押さえ込む。
 ドラゴンゾンビに今の一撃による外傷は見られないが、姿勢を大きく傾がせたダメージは間違いなく内部に効いている証だ。爆風により地面に叩きつけたことで軽く脚が埋まり、その動きを封じている。不死殺しと竜殺しを組み合わせた力は、間違いなくドラゴンゾンビを圧倒していた。
 残る四本の槍弾を使い果たす頃には、ダメージは致命的な領域を超える。
 その時こそ、ドラゴンゾンビはルギイの報いを受ける。
 ロギウスはドラゴンを討伐する為に蓄えた力を、ここで全て費やすつもりだった。
 ロギウスは背中から抜き出した次弾を、破城魔砲へと番えた。

「……こら。いじめない」

「ッ!」
 発射しようと力をこめたロギウスの手が、凍りつく。
 骨まで凍結したような金縛りは、手だけでなく体全体に及んでいた。
 横目で周囲を見回せば、アンデッド――戦場で相対したリッチの姿があった。
「……また会った、『国崩し』」
「キサマぁッ!!」
 ドラゴンゾンビの打倒に没頭しすぎたせいで、完全に周囲への注意を怠っていた。
 リッチの他にも、多数のアンデッドが墓地を取り囲んでいる。
 ワイトが、ファントムが、リッチが、上級アンデッド達がくすくすとロギウスを嘲笑っていた。
「……男の子は好きな子に意地悪しちゃうのは解る、けどほどほどにしないとダメ。……女の子は繊細なんだから、大切にしないとダメ」
「……何を言ってるッ! 早く離せッ!!」
「……ダメ。……そしたらあなた、その娘に攻撃再開する」
「当たり前だッ! そのドラゴンゾンビは、絶対に俺が殺すッ!!」
「……仕方ない。……やっぱり、直接見ないと解らない。……貴方も見せてあげて、新しい姿を。……野暮ったくて恥ずかしい姿じゃない、彼だけに見せたい姿を」
 リッチの言葉に反応したのか、ドラゴンゾンビは身じろぎすると体が変化し始める。
 全身の骨や翼が小さくなっていき、長い首が無くなり尻尾が縮まる。
 骨と腐肉で覆われていた体の中から、艶かしい柔肌が浮び出す。
 ゴツゴツと節くれ立った角は縮まって、色褪せた赤い髪がふぁさりと肩に落ちる。
 牙をむき出した恐ろしげな口は、桃色の唇に縁取られた小さな口に変わった。
 それは、よく見知っていた姿。
 ルギイだった。
「……なん、で」
 だが記憶の中のルギイとの差異も大きい。
 ルギイの鍛え抜かれた体は、女らしくも一目で戦士とわかる筋肉質な体だった。
 しかしそいつは、鱗と鉤爪の厳ついドラゴンの手足に柔らかい女体が詰まっているだけ。
 竜殺し達が美姫と育み子孫に伝えた美貌を、ルギイは受け継いでいる。だが美しいというより凛々しく、『美姫』よりも爽やかで精悍な『竜殺し』に寄った『美貌』だった。それが明らかに艶やかさを増し、どちらかと言えば竜殺しを迎えた美姫の物となっている。竜殺しの武勇を、その種を優しく閨で受け止め育む姿をしている。
 褪せた色合いながらも妖美さを感じさせる、艶のある赤髪。はちきれんばかりに膨らんだ、男の視線を包み込むように大きい乳房。キュッと閉まった括れと対照的に厚みのある安産型の下半身は、絞った種を優しく育み産んで貰えると男に一目でわからせる。女性らしい身体をとことん突き詰めた、男の本能を鷲掴みにするような魅惑の体。
 昼夜問わず、閨に身を横たえ、男の精を吸い続けた娼婦のように柔らかい肉しかない。野生で命を研磨してきた豹の身体ではなく、籠の中で愛と安寧に育まれた美しい愛玩猫の肢体だ。
 男を受け止め、男を包み込み、男に押し潰してもらうための、柔らかさしか彼女にはない。
 ルギイの面影があるだけの、別人にも見える。

「ひさしぶりぃ、ロギウスぅ」

 でへへと、そいつは馬鹿みたいに笑った。
 それはルギイの顔で、ルギイの声で、ロギウスに手を振った。
 ロギウスは素直に再会を喜ぶ気になんてなれない。
 ルギイはロギウスの手によって殺され、ロギウスによって先祖の誇りを奪われ、ロギウスによってこの地に埋葬された死人だ。緩んだ身体で、女らしすぎる姿で、朗らかに笑って手を振ったりしない。
 冷たい大地の下で、哀しくロギウスへの怨嗟をあげている。
 それが今のルギイで、ロギウスが知る彼女だった。
 だから、あってはならない。

「おまえ、は……ぁ……あ、ぁぁぁあああああっ!!」

 眠っていたルギイの骸を、悲痛な最期のせめてもの慰めを弄ばれた。
 彼女の安らかな眠りを、汚らわしい邪法が妨げた。
 クスクスと、元凶が笑う。
「……お前か、お前たちが、お前らがやったのか! あいつの身体を、こんなバケモノに変えたのか!!」
「バケモノなんて、酷い言い草だわぁ。それに私達がしたのはほんの後押し」
「悲しくも儚い、酷薄な現実! しかしてそれらは、その全てが彼女に救済をもたらした! ああ、なんと言う天の悪戯か!」
「彼女の祖先が浴びてきた竜の血と呪詛、死してなお抱えた竜の角とドラゴンを求める思い。それが彼女を、死した竜殺しをドラゴンゾンビへと作り変えた」
「……竜殺しはドラゴンに変じやすい……ならば、死した竜殺しがなるのは死したドラゴン……道理よな、くふふ」
 アンデッド達は一人一人が言いたい事を言うように、しかし示し合わせたように意味のある言葉を墓所に響かせる。
 恐らくそのとおりなのだと、ロギウスは悟った。
 彼女の竜殺しとしてのサガ、そしてロギウスが破城魔砲に組み込めないと判断し一緒に埋葬した彼女の私物――首飾りに加工されたドラゴンの角のせいで、ルギイはドラゴンゾンビになってしまった。
 竜殺しという、ドラゴンの仇敵である彼女をあろう事かドラゴンのバケモノにしてしまった。ロギウスの配慮に欠いた選択が、またしてもルギイの尊厳を踏み躙ったのだ。
 しかし、それはそもそも彼女たちアンデッドが現れなければ、アンデッドの魔力が存在しなければ起こりえなかった。その溢れ出るアンデッドの力を、この墓地に振り撒かなければルギイはドラゴンとして復活しなかった。
 ロギウスは彼女達を、血走った目で睨みつけた。
「殺してやる、殺してやるぞ! 魂だけになっても、貴様らを縊り殺してやる!!」
「それは無理だよ」
「私達は貴方を殺さないし」
「貴方は魂だけになれないし」
「私達を貴方は殺せないもの……もう死んでるし♪」
 勿体つけるように、歌うように、そいつらはロギウスの感情を逆撫でする。
「「「それに」」」」
 そして一斉に、指を指した。
 ロギウスへ向けて――いや。

「「「だってキミは、その子の愛しい旦那様になって幸せに暮らすんだもの♪」」」

 ロギウスの『背後』へと、人差し指を揃えた。
「つぅ〜かま〜えたぁっ♥」
「っ!?」
 底なしの泥沼のように、背中が沈み込む。
 腐りかけの果実のように甘ったるい、香水のような体臭が漂ってくる。
 しかし忘れようもない懐かしい香りが、間延びしたような声にのせて届けられる。
「あの一撃ぃ、とぉっても凄かったよぉ♥ 体が壊れちゃいそうなほどぉ凄かったぁ。でも、それだけ強い武器をぉ作ったんだねぇ……私のとぉ、ロギウスのをぉ組み合わせてぇ……すごいよぉ、ロギウスはすごぉい。本当にぃ、強くなったんだねぇ……ロギウスぅ♥」
「ルギ、い」
「はいはぁい♥ ルギイさんだぁよ、よぉうやく呼んでくれたねぇ」
 ルギイは上体を傾けロギウスを押し倒す。
 溶け出しそうに柔らかい体が、ロギウスに密着する。
 しかし彼女の優しく肉を包む皮膚が、柔肉が流れ出すのを防ぐ。
 その絶妙な体の緩み具合が、熟れきった魅力をロギウスの身体に落していく。
 熱く蕩けるような気持ちよさが、ロギウスの緊張を溶かす。
 ロギウスは甘美な誘惑に必死に抗い、神経を尖らせる。
「やめろ、バケモノ! ルギイの姿で、ルギイを汚すなっ!!」
「でへへぇ〜嬉しいくせにぃ、気付いてるくせにぃ♪」
「何を」
「解っちゃったんだよねぇ、嬉しくなっちゃったんだよねぇ、だからぁ必死でわからない振りしてぇ、嫌いな風を装ってぇ暴れてるぅ……ねぇ、知ってるぅ?」
 ルギイの顔が近付いてくる。
「ロギウスねぇ、とっても嬉しそぉだよぉ。私がルギイだって確信してぇ、もう最高に幸せぇって顔してるよぉ? もっともぉっとぉ、ぎゅーってして欲しいぃよぉっておねだりしちゃってるよぉ? でへへぇ♥」
「ッ! そんな事、あるはずない!!」
「じゃぁあ、じぃっと私の目をぉ見てぇ。見えるよねぇ、ロギウスの顔がぁ」
 ボンヤリとしたルギイの瞳に映る、ロギウスの顔。
 それは確かに、愛する女性との逢瀬に喜び安らぐ男の顔だった。
 安心して緩んだ顔は否定しようもなく、決定的に喜色に満ちていた。
「違う、違うっ!」
「なぁらぁ、下ぁ見てみてぇ。私のえっちなぁおまたぁ」
 ルギイは、ロギウスの頭を抱え込んで視線を下げさせる。
 密着していたルギイの股下が薄くあげられ、合間から見える光がチカチカ明滅する。
 トン、トン、トン
 ロギウスの下腹部で張られているテントが、何度も上下してぶつかっていた。彼の愚息は当人の意思とは関係なく、発情した犬のようにルギイへと擦り寄っていた。
「チンポがねぇ、犬の尻尾みたいにぃ好きぃ好きぃーってぇ愛情表現しちゃってるのぉ。体はぁ私だって理解してぇ、好き好き大好きぃルギイちゃん愛してるよぉって叫んでるんだぁよぉ。素直でぇ可愛いよねぇ、堪んなぁいよねぇ……ッ♥」
「「「かーわーいーいー!」」」
「みんなぁ〜ありがとぉ〜♪ この人がぁ、私のだぁい好きなぁ旦那様でぇすぅっ〜♥」
 周囲から集まる黄色い声に、ルギイは負けず劣らず黄色い声を返した。
 ルギイは自分を殺した相手を、卑しく生き延びたロギウスを、あろうことか旦那様と呼んでいる。男を誘惑するような仕草を、娼婦のような振る舞いをさせられている。骸を卑劣に弄んだ無残な姿に、勃起するような下衆を好きだと宣言している。
 ロギウスは哀しかった。
 相棒の魂を、気高い女の心をここまで弄ばれ、だのに唯一彼女の尊厳を守れる自分が逸物を振っている。自分が、もっとも彼女の辱めに加担している。何より許せないのは、もっと触れ合いたいという期待があることだ。彼は、今すぐ自分の心の臓を突き破りたかった。
 ルギイはロギウスの悲しみを察したように、優しく握った彼の右手を自らの乳房へと誘う。
「……触ってぇ」
 ふに……ぐにゅぅっ
 ルギイの乳房が手のひらに降り立つも、熟れすぎた果実のように緩む。
 ロギウスは手の中で形を崩していく乳房を支える。
 指の隙間から、流れ出てしまいそうに柔らかい。
 むにぃっむにゅぃっ
 もっと深くまで触って、動かない心臓近くまで、おっぱいの芯を気持ちよく愛撫して、そう言いたげに乳房はロギウスの指を飲み込む。勝手にひしゃげさせて受け入れていながら、硬直したロギウスの指でルギイの乳房は快楽に悶えていた。
 ルギイはまるで凄まじいテクニックで弄ばれているように、背筋を震わせている。乳首がロギウスの手の平に触れているだけで、いやらしく乳首を舐られているように腰を揺すっている。
 触れているだけで気持ちいいのは、ロギウスもだった。
 指が包まれただけで、手首がもげそうに気持ちいい。
 乳房に触れているだけで、性感帯を刺激されているような快楽が関節を痺れさせる。ドラゴンの体で熟成された濃密な腐敗の魔力で、ロギウスの身体も甘く腐り落ちてしまいそうだった。
 下腹部は、そのまま精液を送ってしまいそうに疼いている。
 馬乗りにされているだけで、ルギイの重さを感じているだけでそれだ。
 もしも挿入させられてしまったら、どうなるか想像もつかない。
 ロギウスは恐怖から逃れるように、必死に呼びかけた。
「お前、わかってるのかっ! アンデッドに、よりにもよってドラゴンになっちまうなんて! オレはお前を殺したのに、愛してるとか、旦那にするとか……違うだろう!? それに、俺たちの夢を忘れたのか!!」
「夢ぇ? 竜殺しとしてのぉ、夢ぇ?」
 ルギイはふと動きを止め、ロギウスを凝視した。
 どこか魔の本能に振り回されていたような彼女の目に、若干の理性が灯る。
「ッ! そうだッ!! 夢だ! お前の!! ドラゴンを討伐して、竜殺しとして大成するっていう夢を!!」
「ドラゴンと戦ってぇ、一族の悲願をぉ達成してぇ、一族をぉ再興してぇー……? それでぇ〜……どうするのぉってぇ?」
「そうだ! 俺たちは、同じ目的だったんだ! 相棒として、親友としてやってきた、二人の願いを思い出せ!」
「ドラゴンとぉ戦ってぇ、戦ってぇ……倒したらぁ〜? 倒したらぁ、後はぁ……後はぁ、その後はぁそれからぁ〜……?」
 ロギウスは直感した、ルギイの意思を取り戻せると。
 不死の魔力で腐敗していない、生前の彼女本来の魂を。
 後一押しで、魔物に覆われていたルギイは本当の自分を取り戻す。
 そう確信してロギウスは、ルギイの不死の魔力で閉じられた心の扉を強く押し開けた。

「それからぁー……そうだぁ、そうだった! でへへっ! 二人三脚でロギウスと頑張ってきた私は、ロギウスとちゅーして、ロギウスにおっぱい揉まれて、膣でロギウスのチンポ抱きしめて、子宮でロギウスのチンポにキスしてぇ、いっぱいロギウスの子供を産むんだよねぇ♪ お前のお陰だって、私のお陰だってぇ、お礼にいっぱい子作りしあうのぉ♪ ロギウスにパパになってもらってぇ、子供たちにたくさん兄弟作ってあげるんだぁ♪ そしたらぁ、竜殺しも不死殺しも一族再興、はっぴーえんど! 忘れてたよぉ、そういう夢だったねぇ♪」

 開かれたルギイの心の扉からは、腐りそうなほど濃く熟成された情欲が溢れた。
 手で頬を押さえ小指をくわえながら、腰や胸を揺すって嬉しそうに語るルギイの嬌態にロギウスは固まる。
「…………は? い、いや! ちがう、違うぞ!!」
 必死に否定するロギウスに、ルギイはきょとんとする。
 一族の復興、祖先から継いで来た存在意義の再興。
 それぞれの血に失われた勇名を、この現代に蘇らせる。
 それが、目的だった。そのためにルギイは戦い、ロギウスは協力した。
 好きだとか、子作りだとか、そんな話は微塵もしてこなかった。
 だが頭に疑問符を浮かべたルギイは、余りにも生前の姿そのままで。
「違わないよぉ? ドラゴンとしてはもろもろ腐っちゃってるけど、記憶とかは冴え冴えぇなんだぁ♪ というか今のロギウスのお陰でぇ、家族計画もはっきりぃ思い出せちゃったぁ、ありがとぉ♪」
 愛の力だねーとルギイは観客ときゃあきゃあ騒いだ。
 つまり、あの時から『願い』に違いはない。 
 ルギイは一緒にいたときから、そう考えていたのだ。
 ロギウスを男として愛し、ゆくゆくは伴侶にしたいと願っていたのだ。
「そんな、嘘だ……そんな話、一度だってルギイとしたことは……」
 否定してくれと願うロギウスに、ルギイは首を横に振る。
「あの戦いの後でぇ、告白して処女破ってもらうつもりだったんだぁ。暖かくて、幸せにぶちぃって。でも処女より先に、心臓が破られちゃったぁ♪」
 でへへっと笑い、クスクスと周りも笑う。
 小粋なアンデッドジョークに墓場は沸き、凍りついたままなのはロギウスだけだった。確かに、彼もルギイを憎からず思っていたのは間違いない。ルギイに纏わる決意や執着も、女として好いていたからこそといえる。ルギイへの好意は、否定できない。しかしそれはロギウスからの一方的なもので、これほど真っ直ぐな思慕の念を向けられていたとは考えもしなかった。
「だから、ね」
 ルギイは上体をロギウスに傾ける。
 熟した肉にロギウスの体はどこまでも深く埋まる。
筋肉が存在していないように、抵抗なくルギイに沈んでいく。
 しかし肉は微かに押し返して、骨に当たらずただ女の柔らかさを楽しませる。
 男が気持ちよくなるためだけの、余りにも『柔らかい』体だった。
「こんどこそ、破って欲しぃなって」
 腹筋が存在しないかのように柔らかい下腹部を、ロギウスの硬く勃起した肉棒に押しつけていた。彼女の柔肉に包まれた子宮の熱が、彼の逸物に伝わってくる。下腹部の奥で『もうすぐ逢えるね、逢えちゃうね♪』と囁くような鼓動が、ズクンズクンと尿道を擽り愚息を煽る。
「おねがい……っていっても、我慢できないからしちゃうね♪」
 ルギイは胸をロギウスの胸板で押し潰したまま、腰だけ持ち上げて硬く反った先端に膣口を宛がう。
 声も出せず首を振り精一杯の抵抗を続けるロギウスに、ルギイはでへへと笑った。
「かわいい♪」
 そのまま落ちそうだった腰の動きが止まる。
 腰は浮いたまま、下がらず宙に留まっている。
 ルギイが必死に我慢しているのが、腰の震えでわかる。
「やって。心臓を破った時みたいに、私の処女膜を、ロギウスのモノで破って」
「……お、おれは」
「お願い、ロギウス。今度こそ、私の夢を叶えて」
 その懇願はあの時の、短剣の切っ先を望んだルギイと重なった。
 憔悴したロギウスは、言われるがままに逸物を立てた腰を持ちあげる。
 ピトリと秘部が触れ合い、心地よさを我慢して、閉じた割れ目を掻き分け進む。
「あぁ……進んでる、突き進んでる、哀しくて冷たくない、嬉しくて温かいモノが入り込んでるッ!」
 ロギウスが本能で力強く掴んだ腰は、指を容易く受け入れる。
 その刺激にビリビリと砕けかけたルギイの腰を支え、穏やかに下腹部へと引き寄せていく。
 ルギイの膣はあの日の心臓よりも脆く、それでいてなめしゃぶるように絡みついてくる。
 処女膜とは思えない、一つの性器のようにロギウスの逸物に吸い付く。
 先端が徐々に徐々に、より奥の開放的で気持ちいい部分に侵入していく。穴を広げ、その奥から流れてくる愛液に鈴口は直に口をつける。
 絡み付いたまま音も立てず、肉棒に解けるように膜は破れた。
「破られちゃった……」
 ルギイへと持ち上げていたロギウスの腰が、地面に叩きつけられる。
 ずっしりと重く、溶けそうなほど柔らかく、ルギイの腰がロギウスの下腹部に墜落する。
 肉壷の深い部分へと誘われ、ルギイとロギウスの境界がなくなりそうなほど、腐る寸前にまで熟した肉がロギウスを愛する。
「人間のままだったら、こんな素敵な初体験できなかった」
 ゆさゆさ。
 ルギイは腰を揺らし始め、大きな乳房がロギウスの眼前で前後に迫っては離れる。
 先端の硬く勃った乳首がカリッカリッと胸板を引っかき、その度に甘ったるい吐息を漏らす。うずうずと震え膣の抱擁に抗う怒張を僅かに揺らし、煽るように乳首がロギウスの頬に爪を立てた。
「あッ……♥」
 ロギウスは、動きを止めさせるようにルギイを抱きしめる。それでもルギイは、嬉しそうに甘い息をロギウスの耳朶にかけた。
「るぎ、い……ルギイぃ!!」
「つらいの? 哀しいんだよね、解っちゃうもんね♥ さっきまで言ってた事が、全部正しいって理解できちゃったもんね♪」
 そうだ。
 ルギイがロギウスを愛していたのも、ロギウスがルギイの復活に喜んでいるのも、ロギウスが否定した全てが事実であったと、ほんの僅かな交わりによって彼は自覚させられた。
 破城魔砲とともに強固に作り上げてきた心の壁が、甘ったるい不死の魔力に腐り落ちてしまった。
 理性で閉じ込めていた悦びが、ルギイへの想いが、彼を動かす。
 種が混ざった先走りに痺れて悶え、涎を溜める膣道がよりなめらかに男根を滑らせる。
 もっとちょうだい、もっとほしい、そうねだるように子宮口は熱烈なキスを鈴口に落す。
 大きく軽やかに弾む胸のように、楽しく嬉しそうにロギウスの上でルギイが弾む。
「すごいすごい、ロギウスすごいよぉ……どらごんぞんび、おいつめちゃってるよぅ♥ ロギウスを気持ちよくするだけの肉が、気持ちよくて悲鳴上げてるよぉ♥」
「ルギイ、ルギイ!」
 下腹部から伝わる悦びに満ち、楽しそうなだけではない艶然と快楽に緩んだ顔がロギウスを見下ろす。自分のモノの気持ちよさを告げる顔に、思わずもっと悦んで欲しいと腰が振り上げられる。
 押さえつけるようにのしかかった姿勢で、力強く打ち上げられる肉槍の連打を受け止める。下半身に力を入れて腰を低くし、一番威力の高い位置で正々堂々オスの繁殖力に対峙する。
「ロギウスかっこいい、ドラゴンゾンビにも一歩も引かないロギウスかっこいい……♥ 立ち向かって、メストカゲの怨念を切り裂いちゃう『不死竜殺し』かっこいいよぉ♥」
 竜殺しの遺志と力を継いだ不死殺しは、不死竜殺しとなってドラゴンゾンビに立ち向かう。組み敷かれたまま『不死竜殺し』で急所を突かれたドラゴンゾンビの陶然とした甘い悲鳴が、更に『不死竜殺し』を猛々しく強くする。
「こんなかっこいい所見られるなんて……不死竜殺しの活躍が見られちゃうなんてぇ♪ こんなに勇ましい戦いされちゃったら、交尾しか頭にないメストカゲ脳も満たされちゃうよぉぉおっ♥」
「見て、ルギイッ! 俺を見てくれ、ルギイ!」
「見てるよロギウス、いちばん近い所で、誰よりかっこいい所見てるよ♥ 竜殺しの見込んだお婿さんが、不死竜殺しがドラゴンゾンビ圧倒してる所目に焼き付けてるよッ!」
「ルギイが見てくれてる……ルギイが幸せそうな顔で、気持ち良さそうな可愛い顔で、オレを見てくれてる……あぁ……ああっ!!」
「幸せに酔ったままでも、ドラゴンゾンビ追い詰めてるロギウスかっこいいぃ……♥ 頭ボーっとしててもピストン一切緩めないロギウスかっこいい……ッ!!」
 ドラゴンゾンビは言葉通り、追い詰められていく。
 『不死竜殺し』は、はちきれんばかりに精気を宿して奥へ進む。
 ドラゴンゾンビのもっとも大事なその源へと、不死竜殺しは到達しかけている。命を拒んだ強靭な不死の力で成す護りを乱す、精気の鉄砲水がドラゴンゾンビの最も大事な器官で解き放たれようとしている。
「あと少し、あとちょっとでドラゴンゾンビが討伐されるよっ♪ 私達竜殺しと不死殺しの仇敵を、私の大好きなロギウスが討ち滅ぼしちゃうよぉっ♥」
「見てくれルギイッ! 俺が、お前を好きな俺が、ドラゴンゾンビを倒す所を! お前を好きで好きでたまらない俺が、俺たちの願いを叶える所をッ!!」
「見せてっ! いけないドラゴンゾンビをっ、卑しく腐ったメストカゲをッ、正義の不死竜殺しが成敗するトコぉッ、目の前一番特等席で見せ付けてぇぇええッ♥」
「ルギイぃぃいいい!!」
 びゅぶるるるっ
「〜〜〜〜〜〜〜ッ♥」
 子宮口を貫いた『不死竜殺し』の切っ先が、白濁液を噴き出した。
 子宮は逸物に押し付けられた形に変形したまま、その奥で白い種が爆発する。無数の精気を宿した種が、不死に堕ちた竜の子袋へ群がり命を注いでいく。
 柔らかい子宮は袋を穿たれたまま、子宮口をすぼめ直に鈴口から尿道の種を強く吸い上げた。
 メストカゲの本能が不死竜殺しのモノとされるため、その種で彼のものにしてもらうため、子宮内へと精液を直送する。先走り汁から急激に量を増した精子の、一つも逃さないとばかりに濃い精液を含んでいく。幸せそうに、一杯に膨らんでいく。
 びゅぷ、びゅぷっ
「倒されちゃってる……ドラゴンゾンビ、倒されちゃってるよぉ♥」
「はぁ……はぁっ……」
 ぴゅ、ぴゅ
「ずるいよ、反則だよぉ♥ 死んだメストカゲの子袋に、生命の種撃ち込んで無理矢理子宮を浄化しちゃうなんてェ♪ 不死の魔力が追っ払われて、命が芽吹いちゃうよぉ♥」
「ぅうっ……あっ……ぁあっ」
 びゅぶっ
「ンァあっ♥ また出てる、また出してる……ひどいよぉ、容赦ないよぉ♪ 徹底して、死ぬ前はメストカゲだったんだぞって躾けてる……♥ 元気な子を産まなきゃだめだぞって、甘ったるく諭されちゃってるよぉ♥」
 びゅっびゅっびゅっ
 ルギイが一言いう度に、射精が追加される。
 出尽くしたと思っても、ルギイの卑猥な睦言で暴発する。
 討たれたドラゴンがかけた呪いのように、子種が何度も漏れる。
 ルギイの睦言とロギウスの射精がようやく収まると、ロギウスはゆっくりと顔を持ち上げルギイの瞳を覗き込む。
「ルギイ、ルギイぃ、幸せだ、お前とまた会えて……こんな風に愛し合えるなんて。俺は……オレはっ……こんな、こんな素敵な女の上で、種付けの悦びを知れるなんて! 優しい手解きでオスに、番にしてもらえるなんて……生まれてきて、お前に愛されるオスに産まれてよかった!」
「〜〜ッ♥ それ反則ぅ、オスの幸せ、メストカゲの上で噛み締めるのだめぇ♥ そんなところでオス人生勝利宣言されちゃったら、メストカゲ復活しちゃうぅ♥ 忌まわしい人間の不死竜殺しじゃなくて、ドラゴンゾンビ孕ませるオスにしか見られなくなっちゃうからぁ、薄暗い墓場で永遠に気持ちいた種付け続けられちゃう、苗床ドラゴンゾンビになりたくなっちゃうからぁ♥ せめて不死竜殺しの鞘で、メストカゲの子作り鞘で我慢させてぇ♥」
 幸せを噛み締めるように、ルギイがロギウスの身体を抱きしめる。
 互いの温もりを分け合うように、身体を密着させた。
「ふふっ……でも、これでホントに本物の不死竜殺しだね♥ ドラゴンゾンビの大切な場所刺し貫いて、せーなるえきで不浄の子宮を浄化できたねぇ、死を司った身体に命宿しちゃうねぇー♪」
「……えっと、その……もっとルギイとしたいんだが……いいか?」
「やーめーてーよー! そーいう、可愛い顔するの……♥ 堪んなくなっちゃうでしょ♪」
 尻を掴んでいたロギウスの手が滑り、抵抗なく指が桃尻に深々と埋まる。
 堅く閉じられていた子宮口が、とんっと肉棒で突付かれた。
 幸せに浸っていた子宮は、あっけなく口を緩ませ大量の精液を漏らす。
 二人の結合部から、逆流した白濁液が大きく広がった。
「もぉ……♥ あんなに溜まってたのに……出ちゃったぁ♪ もぉ、乱暴にするからぁ♥」
 抗議するように吸い付いてくる子宮口に、亀頭がぐりぐり噛み付いて黙らせる。オレのものだと主張するロギウスの分身を、あやすようにルギイの分身は子宮口でくわえた。
 びゅぶぶぶぶっぶるるっ
 咥えられて嬉しそうに震える鈴口から、精液がどっと漏れ出す。それを敏感に感じ取った子袋は、ビクビクと痙攣しながら今度こそ漏らすまいと必死に子種を頬張る。
 マーキングするために搾り出された種が子宮を内側から圧迫し、甘く痺れるような快感の拍動をルギイの身体に放たせる。子宮からの嬉しい悲鳴に堪えようと、ロギウスにしがみついて乳首を胸ごと彼にぐりぐり押し付ける。
「ドラゴンゾンビのルギイきもちいい、俺に倒されたルギイ、俺に自ら屈した綺麗で可愛いドラゴンゾンビに精子でる……ッ」
「やぁんっ♪ 屈服したメストカゲ必要以上にいじめないでぇ♥ メストカゲの交尾本能に、拍車かけて駆り立てないでぇ♪ 死んだ子宮にメスの命吹き込んだらだめ、だめだからね、私は不死竜殺しの子作り鞘なんだからねッ♥」
 性器を通して二人は言葉を、意思を交わす。
 膣道は抱きしめるように抱擁し、もっと深く愛したいと密着する。肉棒は抱擁を振り払って、子袋を孕ませたいと小さな口へ体当たりする。
 子宮はじゅぶじゅぶ亀頭に吸い付いて、孕みたいと懇願する。肉傘がもっと深く膣道を抉りたいと、子宮口から遠ざかる。
 凹凸の深くまでこそがれた肉襞が、行かないでもっといじめてと締め付ける。肉壷の堪え性のなさを責めるように、力強く肉槍が最奥までも串刺しにする。
 肉壷は子種を一杯に抱えたまま、届く衝撃がもたらす快楽にただただ悦び震える。もっと多くの種を詰め込みたいと、硬く張った『不死竜殺し』が吶喊する。
「……だめ、だめ♥ メストカゲの本能、強く、出始めちゃってる、からぁ♥ 押さえて、押さえて、ね?♥」
 ルギイは理性的に節度を維持できる限界を悟り、もうそこまでにしてとストップをかける。
 このままでは、メスドラゴンの本能に何もかもが支配されて何も考えられなくなる。幸せな営み以外の一切合切が、塵芥と変わらなくなってしまう。
今は傍でほったらかしにされたままの破城魔砲や槍弾、ロギウスが積み重ねてきた努力さえどうでもよくなってしまう。ロギウスが『国崩し』としてやってきた事は、破城魔砲はいわば成形されたルギイへの愛だ。それを蔑ろにするのは、もったいない。
 全身を包み込む柔らかい絹のような肌が、その奥から快楽をもたらす魔力がジンジンとロギウスの肌を痺れさせる。そうしてロギウスの身体で増幅された快楽が、彼を包むルギイへと跳ね返る。
 乳首や皮膚が擦れ合い触れ合う刺激的な温もりと、子宮のオスに攻略される喜悦の悲鳴が、ルギイの脳天で快楽をぐつぐつと煮詰める。
 このまま溶岩のような快楽に理性を溶かし、組み敷いた番を一心不乱に貪りたい。番の種をタマゴに閉じ込めるまで、気持ちいい種付けをさせる装置になりたい。メストカゲとして、オスの血や欲望や魂さえもタマゴに閉じ込めたい。愛するメスで子作りするオスの幸福を、このメストカゲが作ってあげたい。
「だめ、だめ……だめ、だめぇ♥ 努力が、私への愛がぁ……♥」
 それでもルギイは、何とか理性を叩き起こして衝動を抑える。
 耐える彼女の背中に、快楽が煮詰まる後頭部を優しく手が撫でる。
「いい……もう、いいんだ」
「え?」
 ロギウスの頑張りを想うルギイの理性が企てた、メストカゲ本能への無謀で精一杯の抵抗は当のロギウスによって阻まれた。
「幸せに交尾するだけの人生でいい、子袋を苗床にして、子孫繁栄以外何も考えられなくなってもいい……オレは、ルギイさえいれば、ルギイの愛と幸せさえあればもう何もいらない。何かを求める必要もない……だからッ!?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ♪♥♥♥」
 限界まで滾っていた溶岩が、火口から流れ出した。
 ロギウスの腰に重い振動が伝わり、ドラゴンゾンビの脅威は再来した。
 不死竜殺しで突き崩されたはずの体が蘇り、理性の腐ったメストカゲが再臨する。
 英雄を組み敷く悦びに震えながら、ドラゴンゾンビはその忌まわしさと程遠い幸福に生きる。
「もう駄目だからね、わたし抑えられないからねっ♥ ドラゴンゾンビで作った子作り鞘じゃなくて、苗床ドラゴンゾンビになっちゃうからねッ! 不死竜殺しがどれだけ強くても、いつまでも復活繰り返して、子種を脅かし続けちゃうからねッ♥♥」
「何度復活しても、俺が倒す! 俺だけがお前と戦って、お前を倒し続ける……誰にも渡さないからなッ!!」
「うん、うんっ!! 最強の、無敵の、私だけの不死竜殺しで、ドラゴンゾンビを倒して続けてねっ♥ もっと、ずっと、どこまでも、いつまでも、私を倒して離さないでねッ♪」 

「ルギイィィイイイッ」
「ロギウスぅぅぅううううっ♪♥♥♥」
 ずびゅるるるるるっびゅぶゅるるるるるるるっ

 不死竜は何度も蘇る。
 不死竜殺しが滅ぼし続ける。
 不死者が永劫に腐らず、死なぬように、淫らで過激な討伐劇は続く。
 いつか不死竜殺しが人でなくなっても、二人は気付かぬまま戦い続けるだろう。
 竜殺しと不死殺しは、不死竜と不死竜殺しになった。数奇な運命を辿った二人は、魔界においては余りにもありきたりで誰にも負けない幸せを得た。
 かくして、一人と一匹の討伐劇は終わらなかった。
 幸福な再会の顛末を見届けた観客達は、満足そうに去っていく。
 後は二人だけの時間、自分たちは邪魔するべきではないというように。
 人気が消えた墓地には、淫靡に激しく争う声と、熱っぽい水音が絶えず響いた。
















「逃げないでよぉ、そんな酷い事とかしないからさぁ♥ ちょーっと何も考えられなくなるくらい気持ちよくなって、私の夫になっちゃうだけだからぁ♥」
「貴様、今度こそ逃がさんぞっ! 私の首を落した代償を……そのままほったらかしにして逃げた責任を取ってもらうからなぁっ♥」
「温かい……満たされてく……♥ もっと……♥」
 エイサルに『国崩し』が向かってから数日後、勇者率いるエイサル奪還部隊が到着した。
 奪還に訪れた部隊は、ロギウスが危惧していた通り完全にアンデッドに包囲されていた。彼らは無策で飛び込んできたのではない。むしろ纏まった数の軍勢を引き連れ、慎重に慎重を期して乗り込んだ。しかしその結果が、この窮地だ。
 突入した当初は、押されつつもなんとか対抗できていた。
 だが戦況を一変させたのが、目の前の巨大な魔物――ドラゴンゾンビだった。
 今はその濁った目を赫怒に爛々と光らせ、口からは腐敗のブレスを噴かせている。
「……強すぎる」
 一撃だった。
 ブレスが通り抜けると、男は力を失い、女は不死者へと変わった。ドラゴンゾンビを倒す生者の包囲が、侵入者を圧殺する死者の包囲となった。
 勇者は普段なら、非常に危険なドラゴンゾンビを決して相手にしなかった。事実、通り過ぎるつもりだった――この墓地で『国崩し』を発見するまでは。
 やけに強い魔物の反応を察知し、様子を伺った墓地。
 その中心で、何かに覆い被さる魔物。
 その魔物の脇からは、手が生えていた。
 そして傍には、見た事のある破城魔砲が無残に打ち捨てられていた。
 ロギウスは、勇者にとって苦い思い出だった。初対面では酷薄で苛烈な性分を気に入らないと思っていたが、経歴を知って勇者は心を痛めた。おぞましいセルコイド帝国との戦いで、傭兵が囮に使われ敵中に取り残されたと知り、勇者は救援に向かいセルコイド兵を撃退した。自分が多くのものを助けられたと思ったあの戦いで、『国崩し』は相棒――恐らく恋人同然の女性を亡くした。それも彼自身の手で。
 よく『国崩し』が破城魔砲のために相棒を殺めたという流言を聞くが、それは間違いだ。セルコイドを知っている人間ならば、奴らに親しい女性とともに包囲されたら『国崩し』と同じ手段を取るだろう。女性と共に、自決するはずだ。
 『国崩し』とその相棒の心中は、セルコイドが齎したありきたりな悲劇で終わる筈だった。
 しかし勇者が『国崩し』の命を助けた事で、心中は殺人となってしまった。
 彼は相棒を、道具のために殺害する卑劣漢にされてしまった。
『国崩し』を相棒ともに救っていれば、彼は『国崩し』とも呼ばれず違った人生を歩んでいただろう。救援するまでに掛かった、僅かな時間が彼に彼女を殺させた。僅かな時間も間に合わなかった、自分が殺したも同然だと勇者は考えていた。この話をすれば、そんな事はないと誰もが言うだろう。しかし善意の救出で、一人の男の人生に救い難い呪いをかけてしまった。
 勇者は『国崩し』の性根を気に入らないと感じた。だが『国崩し』の『気に入らない』部分が勇者の落ち度によるものとなれば、彼を責めるのは筋違いだと思い改めた。勇者がすべきは彼を疎むのではなく、二度と彼のように哀しい業を背負った者を生み出さないこと。自分の手で、救い切れる力を得ることだと考えた。
 だから今度こそは、ロギウスへの助けに間に合わせると急いた。
 しかし辿り着いた勇者は、またしても遅かった。
 彼の――彼だったモノは、魔物に覆い被さられてその骸を貪られていた。
 恐らく、相棒だった女性が埋葬されていた墓地をドラゴンゾンビが根城にしているのを見て、衝動的に挑みかかったのだろう。そして他のアンデッドにも包囲され、無残に敗北した。彼はまたしても相棒を守れなかったという無念を抱いたまま斃れ、その骸を貪られている。
 だからせめてその遺骸だけでも、なんとか助けて持ち帰りたかった。他の面子は『国崩し』の骸より彼の破城魔砲を回収しようとしていたが、勇者はせめて彼を安らかに眠らせたいと思い、魔物の隙を伺い彼の骸を取り返そうと考えていた。
 しかし彼らが墓地へと足を踏み入れた――その途端、魔物の体が巨大化した。脚はより大きく強靭になり、首が伸び、翼が広がり、牙が生え、角が立ち、尻尾が長くなり、人間じみた肌が完全に消失する。
 その姿はドラゴンに、『よく似ていた』。
 しかしその身体は殆どが骨でできていて、体からは強烈な腐臭がしてぶじゅるぶじゅると肉の溶けた汁が垂れている。凄まじい死臭を纏い、それは皮膜の溶けた翼を広げる。
 ドラゴンゾンビ。
 死の瘴気によって、ドラゴンがアンデットと化した最悪のバケモノ。ドラゴンの強さと、アンデッドの死が、一つに融合した恐るべき魔物。ドラゴンゾンビはギロリと墓地に脚を踏み入れた勇者達を睨み、いきなり腐敗のブレスを吐いた。
 その一撃により、女は肉を腐らせ不死者へと堕ちた。
「きもちいい、きもちいいよ旦那様ぁ♥ イイ人見つけられないまま死んじゃったのに、こんなご褒美があるなんてぇ♪」
「モット、モット……♥ アタタカイ、たね、ちょおだい……♥ キモチイい、タね♥」
「ずっと、ずっと好きだったのぉ……♥ こんなに好きなのに、死ぬかもしれない戦いなのにぃ♥ 童貞のまま、私を処女のままほったらかしにしたきみが悪いんだからねぇ♥」
 男は肉は腐らなかったものの、その精神が完全に腐敗した。人間としての理性を完全に消失させ、ただ本能のままに動いている。手近なゾンビやスケルトンといった、女性に似た魔物に覆いかぶさって腰を振っている。中には、不死者に堕ちたばかりの戦友と体を重ねる者もいた。
 愛する女性のように、朽ちた身体と唇を重ね愛を囁く。兵士は腐った死体と恋人のように愛し合わされ、死者は死後の眠りから叩き起こされ見知らぬ男と交わらされ、人間としての尊厳を貶められる兵士達と死者の姿に悔しさと怒りが滲む。だが、それだけ感情が昂っても、勇者の剣はドラゴンゾンビに届かない。唯一倒せる可能性のあった『国崩し』が、ドラゴンゾンビの寝床で餌にされていたのだ。『国崩し』すら殺したドラゴンゾンビの、墓場の王の牙城は倒せない。
 ドラゴンゾンビは明らかな優勢の中にあっても尚、腐敗のブレスを吐き続けている。まるで何か大事な宝を守ろうとするように。どれだけ卑小な存在であろうと、宝を傷つけ横取りするものは最後の一片まで腐らせると絶叫するように。
 生者の軍勢が、不死の軍隊に変わるのは時間の問題だった。
「ですから、勇者様も交ざりましょう……♥ 淫らで、狂おしく、甘美な常夜の饗宴へ♥」
「……勇者様は、とてもいい実験体になる。だから、私に協力しよう……協力して、ね……?」
「わたくしたち、今までも仲間としてやってきましたわ……ですので、ずっと仲間でいたいんですの♥ 尊き不死の仲間となりましょう、勇者様ぁ♥」
 ファントム、リッチ、そしてワイト。
 情けない『国崩し』の尻拭いをしてやると息巻いていた彼女らは、強力なブレスを止め切れずに全身に浴びた。一瞬で身体は腐れ果て肌は大理石のように命の温もりを失くし、舌なめずりしながら勇者に立ちはだかっている。
 惨状を作ったドラゴンゾンビは、未だブレスを吐き続ける。自らの縄張りを、死の領土を侵す生を全て絶やすまで。全てを腐らせるまで止まらないとばかりに、ブレスで空を覆った。どうあがいても、全てを腐らせる死の力には抗えない。

 勇者の目に、腐っていく空が写る。
 腐敗のブレスが空も大地も、墓地の全てを埋め尽くす寸前。
 ドラゴンゾンビの脚の間で幸せそうにしている『国崩し』の幻が見えた。







17/01/07 00:29更新 / 鈴繰ビーハイヴ
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■作者メッセージ


「はー疲れた。結局男捕まえらんなかったなぁ……まぁ、上手くいったし最後イイもの見れたからいっか」
「突然、寝てる所に毒まかれたときは何事かと思ったけどな。にしてもリッチが先陣切るとはねぇ……実験台無しにされたって話だし仕方ないけどさぁ」
「結局何の実験だったの? すっごい殺気立ってたけど」
「あー……なんでも、高い金出して手に入れた素材を作って、八年かけて作った新しい魔法薬が、旦那で実験する前に毒で変質しちゃって頑張りが全部パーになったとか」
「あぁ……そういう。よく殺されなかったね、連中」
「ホントな。まぁ代わりにいいものが見れたからいいんだと」






 ドラゴンゾンビはドラゴン型に変身が可能なのかとか、ドラゴン形態では腐ってないのかとか解らないから突っ込まれそう。というか間違ってたら突っ込んでください。図鑑は確認していますが、失念している可能性がありますので。
 ドラゴンゾンビは人型の肉体は腐っていないが、ドラゴン部分は腐っているという想定でしています。なので街中で変身すると大惨事になるという……ええんかなこれ。

 ちなみに破城魔砲は一見すると魔物に対しても危険な武器に見えますが、槍弾に使っている魔槍は穂先が魔力合金化しているので破壊力に反して殺傷能力は殆どありません。


 元々は前編後編だけでしたが、番外編をそのうち投下します

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