連載小説
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第一見聞 豚とスライムと商人と
燦々と照りつける太陽、潮風の吹くこの港町にひとりの青年が降り立った。

「着いた、、ここが西の国か、、」

青年の名は海谷蓮(かいたにれん)齢20のジパング出身の行商人だ。
その服装は港町の人々からすればお世辞にも異様であった、周りの人々は洋服を見に纏いブーツを履いているのに対し蓮は、白い手ぬぐいを頭に巻き全身麻で出来た青い作務衣を着込み履物は草履ときた。

蓮「ただの港町だってなのに凄い人の量だな、、これは商売しがいがあるな。」

当の本人は自分の服装になにも疑問を抱かずこれから始まる自分の旅に心を踊らせる。
そこへ蓮を此処まで送り届けた船の船長が甲板から身を乗り出して蓮へ呼び掛ける。

船長「おい坊主!本当に一人で大丈夫か?何度も言ったが此処はジパングとは勝手が違う、いくら勉強したからってガイドも無しに一人旅ってのは無茶だぜ?」

髭を撫でながら少し心配気な表情で蓮を見つめる。

船長「悪いことは言わないから路銀ケチんないでガイド雇っちまった方が良いと思うぜ?」
蓮「ご忠告感謝します!ですが自分もそれほど余裕がないんです。地道に貯めて余裕が出来たら雇わせてもらいます。」

心配そうな船長に対して心配させまいと満面の笑みを浮かべて紳士的な返事をする。

船長「そうか、、悪いな引き止めちまって‼︎達者でな‼︎」
蓮「こちらこそ、わざわざ此処までありがとうございます‼︎船長さんもお気を付けて‼︎」

船長は気さくに挨拶するのに対して蓮は深々とお辞儀を返す。
それを見て船長は満足そうに仕事場へ戻り、蓮も頭を上げて後ろを振り返ると辺りを見渡す。

蓮「よし。とりあえず役所で両替と今日の商売場所を見つけなきゃ。」

蓮は人混みを掻き分け役所を目指す。小一時間ほど、両替と商売場所の手続きを済ませ役所を後にする。

蓮「よしよし、、それじゃあチャチャっと始めますか。」

時間を気にしてか蓮は足早と登録した商売場所へと行き、いそいそと商売道具を広げる。日は正に正午の掻き入れ時、ジパングから持ち寄った民芸品や保存食。異国情緒溢れる品々を売り捌いていく。














時は変わって夕暮れ時、燦々と降り注ぐ太陽は夕日に染まり活気あった町並みは寂しさを感じる程になっていた。
そして日は沈み夜。蓮は宿を借りて部屋で売り上げを数える。

蓮「ひーふーみー、、うん、出だしは上々だね。」

両替した額の二倍近くまで売り上げを叩き出し少し御満悦。だが一つ疑問を感じていることがあった、、というよりはやはりと思った感じかもしれない。

蓮「うーん、やっぱり売れなかったか、、お姉ちゃん達に申し訳ないな、、」

蓮がしかめっ面に八の字眉を浮かべながら売れ残りをみつめる。毛娼ロウの髪を紡いで作った髪留め、白蛇の念を込めた御守り、レンシュンマオの笹の竹で作った竹トンボとかんざし。

蓮「みんな説明聞いた途端不気味がって逃げちゃったしな、、やっぱりじいちゃんが言ってた通り魔物が側に居るのは普通じゃないのか。」

蓮は首を傾げる。それもそのはず、彼の村には当たり前のように魔物娘が暮らしていたのだ。しかも魔王が交代する前の時代からずっと、よって彼が産まれた時には既に魔物娘が側に居るのは当たり前になっていたのだ。


蓮「、、、仕方ない、文化の違いには勝てないさ。それにこんなところで挫ける訳にはいかないんだ。何としても世界中を回って交易品を持ち帰って村を復興しないと、、」

彼の村は現在若者が不足していた。魔物が居るというだけで周りからの交流は殆どなく周りから妖怪村だの呪われた村だの悪い印象しかない。そこで村唯一の若者であるかれは世界中を回って交易品を持ち帰って村を復興しようと考えたのだ。
無論村のみんなは「危険だ。」「お前まで居なくなったらこの村はおしまいだ
‼︎」と必死に止めました。
しかし、彼の母親であり村長でもある彼女はこう言いました。
母親「行かせておやり、ただし半年、、いや、一年はこの村で学べる事は全て学びなさい。そして必ず私達の元へ帰ってくるのだよ。」
母親は意を決したようにそう言いました。
そこから一年、、、彼は村で学べる事は全てを学んだ。
刑部狸から商売を。白蛇と狐火からは術を。レンシュンマオと人虎からは武術を。
そして母親からは大いなる加護を受け彼は旅立ったのである。

蓮「、、、寝よう。明日朝早くに出発して次の町に行かなきゃ。」

蓮は大事なお金とこの日に買った食料や地図を仕舞いベッドへ潜り込んだ。

翌朝日も昇らぬ内に宿から出て行く。町から出て街道を真っ直ぐ、真っ直ぐに進んで行く。














どれ位歩いただろうか、日は頭上まで登り昼時を知らせる。
少々疲れた表情を浮かべていると途中街道から少し外れた近くに森を見つける。
木陰もあり風も涼しく吹いていてなんとも心地が良さそうであった。

蓮「ふう、、大分歩いたし少し休憩しようかな。」

一息つき森の入り口にあった切株に座り込み港町で買った弁当を広げる。
シーフードサンドに少しぬるくなった真水、そしてジパングから持ち寄ったタクアンを食べる。

蓮「んぐんぐ、、ポリポリ、、さんどうぃっち、、、だったかな?なんかタクアンとあまり合わない、、っ⁉︎」

昼食に舌鼓を打ってると、突然森の奥から下品な笑い声とピーピーという泣き声が聞こえ、木々を揺らしながらこちらへ何かが向かってくる。

蓮「ゴクっ、、、な、なんだ?」

慌てて水を飲み訳も分からず目の前を見据えていると、突然二匹の魔物が飛び出してきた。

「ピー‼︎ピー!」
「あはは!待ちやがれ!」

先に全身が青くプルプルと震えるスライムが飛び出して来て蓮の後ろに隠れる。
遅れて出てきた魔物は明らかに露出が高い服装をし、ピンク髪に豚のような尻尾と耳を携え、大きな石槌を振り回しながら目の前に立った。

オーク「お⁉︎男じゃないか⁉︎へへへっ、、若くてハリのある奴が見つかったぜ♪」

スライム「ピー、、、」

蓮「え?なに、え?」

持っていたシーフードサンドを置いて思わぬ来訪者に面食らい、スライムとオーク、両方をみつめる。

オーク「でかしたぞショボくれスライム!今日は肉奴隷が手に入りそうだ♪後でまた遊んでやるからな♪」

スライム「ピー!ピー!」

スライムは嫌そうに泣き喚き蓮の服にしがみつく。

蓮「えっと、とりあえず弱い者いじめはあんまりよくないと思いmオーク「うっせぇ‼︎肉奴隷が‼︎つべこべ言わずにさっさとち◯◯おっ勃てろ!」

オークは蓮の胸倉を掴むと軽々と持ち上げる。
蓮はなす術もなく情けない表情をしながらオークをみつめる。

蓮「ヒッ⁉︎あ、あのっ!やだっ、、やめてっ、、」

どもり涙ぐみ小刻みに震える姿は正に子鹿。
そんな姿を見てオークの苛虐心を擽り息を荒くしながら蓮を押し倒す。

オーク「ふひひ♪そんなエロい声出さないでよ♪ますます興奮しちゃうじゃない♪」

蓮「うぅ、、せ、せめて一つだけ聞いてください、、」

小刻みに震えながら俯き小声で声を放つ。

オーク「あ?なんだい?まだ何k蓮「油断大敵ってことわざ知ってます?」

オークが話を聞こうと顔を近づけたところへフッと顔を上げそう言い放つとそのまま鼻に頭突きを食らわせる。

オーク「んがっ⁉︎てめっ」
蓮「うらぁっ‼︎」

頭突きを喰らい思わず手を離し悪態をつこうとした瞬間、鋭くオークの顎へ蹴り。

オーク「っ⁉︎⁉︎」

突然の猛撃に面食らい蓮と石槌を手放してそのまま地面へ倒れこむ。

オーク「てっ、てめぇよくもっ」ガツンッッ‼︎

顎をさすりながらキッと睨みつける。正にその瞬間、顔スレスレに大きな石槌が鈍い音を立てながら地面に突き刺さる。

オーク「ヒッ⁉︎」
蓮「あまり見かけで人は判断しない方が良いですよ、子豚さんっ」

オークの顎を持ち上げ冷酷な声で言い放つとフイっと手を離し荷物があった場所へ歩みを進める。

スライム「ピー、、」
蓮「ん?怖かったね〜大丈夫だったかな?」

ポカンとみつめるスライムの頭を優しく撫でて荷物をまとめる。

蓮「よしっと、それじゃあ今度は虐めらるんじゃないぞ?じゃあね。」

優しく声を掛け荷物を背負い歩き出そうとした時。

オーク「ちょっと待て!い、いや待ってください!」

蓮「はぁ、、なんですか?まだやるkオーク「私をあなたの雌豚にしてください‼︎」

溜息をつきパッと振り返る。
その目線には先程のオークが土下座をしながら嬉々とした表情で尻尾を振りながら見つめていた。

蓮「、、、はい?」

オーク「ですから私をあなたの雌豚、、いや便器にしてくだひゃいぃぃ!」

嬉々とした表情から変わり淫気たっぷりの表情で見つめながら懇願する。

蓮「いやいやいや、訳が分からない!えっちょ、え⁉︎」

オーク「お願いでしゅうぅぅ‼︎」

困惑する中オークをどうにか宥めて事情を聞いてみた。

蓮「つまり、僕に負けたら本能的に僕を絶対的な主人と判断して今の発言にいたると?」

オーク「はい、、、はぁはぁ、、」

疑問が解けるがそれでも納得のいくような表情をせず耳元で息を荒くしながら見つめるオークを必死に避ける。

蓮「うーん、ていうかあんまりそういうの今は興味ないし、第一女の子を便器って、、」
オーク「私にはそれが喜びなんです!ですから是非!」

うーんと長く唸りしばらく沈黙、、、そして口を開く。

蓮「、、君名前は?」
オーク「え?便器に名前はi蓮「名前は⁉︎」
オーク「、、、セレナです。」
蓮「セレナね。よしじゃあこれから君を僕の護衛として任命する!」

名前を聞きニッコリと笑いながら肩を叩きみつめる。

セレナ「、、え⁉︎でもそれじゃry蓮「つべこべ言わない!ほら行くよ。」

そう言って歩き出そうと足を動かそうとしたら何かが足を掴んでいる。

蓮「ん?」

スライム「ピー♪」

縋るように足にまとわりつき満面の笑顔を見せる。

セレナ「あ、この子凄いご主人様に懐いてますよ♪」

蓮「え⁉︎本当に、、ってか今ご主人様って、、」

スライム「ピーピー♪」

よじよじと身体をよじ登り頭に乗っかり愛嬌たっぷりの笑顔を見せる。

蓮「、、、悪くないかも、、、」

スライム「ピー♪」

内心愛嬌のある可愛さに心をうたれ頬が緩みそうになるが我慢し優しく頭を撫でる。

蓮「あっと、、そしたら名前きめなきゃね、、えっとえっと。」

辺りを見回しながら名前を考える。
ふと森の入り口に目をやると一輪のスズランの花が目に入る。

蓮「スズランか、、、よし、これから君の名前はすずにしよう!」

そう呼びかけるとスライムのすずは嬉しそうに見つめプルプルと震える。

セレナ「あはは、凄い喜んでますよ♪」
蓮「うむ、それでは改めて出発!」
すず「ピー♪」

旅立ち二日目にして仲間が二匹。旅はまだまだ始まったばかり。
15/05/20 10:27更新 / sak.m.2
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