連載小説
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こんごともよろしく
なんだか頭重い、というか目覚めが良くない

でも起きなきゃ
仕事の支度しなきゃ・・・


だんだん意識がはっきりしてくると、いつもの朝と何かが違う。

布団は確かに俺のものだけど、俺の部屋じゃない。
そして普段なら寝相が悪いためにはだけている布団もしっかりと掛けられていて、胸元にはヤギの角が生えた少女の頭が見えていた。
俺を枕にして寝てるのかな?






あれは夢では無かったんだ・・・
ぼんやりとそんな事を考えながら

なんとなくその角の生えた頭を撫でてみた。
サラサラの茶色い髪の感触と、角のゴツゴツした感触が気持ちいい。
「んっ、ん〜♪」
しばらく撫でていたら起こしてしまったみたいだ。
「兄上に撫でられると気持ち良くてポーッとするのじゃぁ・・・ あ、兄上!?」

ガバッと起き上がると彼女は俺の顔をじーっと見つめてきた

やっぱり可愛いなぁ・・・
性的な意味じゃなくてさ。

彼女の目がみるみる潤んでいくのに気がついた
「し、心配したのじゃぁ!突然倒れるからワシの召喚が失敗して内臓が置いてけぼりになったんじゃないかとか飛びついた時に頭を打ったんじゃ無いかとかこのまま目が覚めないんじゃないかとかとても心配したのじゃぁ!ヒールもポーションも霊薬も気功も鍼灸もいろいろ試したのに全然目が覚めなかったのじゃ!」
俺の胸元にしがみつくと泣きながら一息でまくし立てた。
なにかグロいのが混ざっていたが、滑舌もいいし素晴らしい肺活量だ。

後から思えば、召喚の負荷で疲れきっていたんだと思う。


ともかく、本当に心配してくれていたらしい。
どこかの映画じゃ無いが、胸の奥がポカポカするw

ココまで想われると初対面だとか現状が全然把握できないとかどうでもよくなってくる。
目の前の女の子を笑顔にしたいと思えてきた。

この子を抱きしめ返すと一瞬身を硬くしたが、すぐに弛緩して俺に身体を預けてくれた。

「ゴメンね。ホントに心配かけちゃったんだね」
ゆっくりとした口調で話しかけながら後頭部を右手で撫でる。
左手は背中をゆっくりとしたペースで泣いた赤ん坊をあやすようにぽんぽんと軽くたたく。
「いや、違うな。ゴメンねじゃ無いな。 心配してくれてありがとう。」




「うっ、グスッ・・・うわ〜〜〜〜ん!兄上が無茶苦茶優しいのじゃ〜!」
今度はそっちで泣くのかよw




俺は開き直る事にした。

このバフォメット少女に召喚されてここに来た
それは間違いないようだし。
Web上の創作物に過ぎなかったイラストの魔物娘が実在する世界
数ある並行世界の中にはこうゆうのもあるって事だね。



それから暫くの間彼女の好きなようにさせていたが
泣き止んだようなのでいろいろ話を聞いてみようと思う。

「さて、そろそろ落ち着いたかな?」
ズズッ(鼻水を啜る音)
彼女がゆっくり顔をあげると、赤く腫れた目が保護欲をそそるがグッとこらえる。

「あ・・・シャツに鼻水が・・・」

「はわわわわ!すまないのじゃ!すぐ拭くから待つのじゃ!!」
俺の上から飛び退くと部屋の隅にある棚を漁って何か拭ける物を探し始めた。

改めて周囲を見渡してみると、まだ俺が呼び出された場所だったが、すでに小さな魔女たちはいなかった。
それなりに時間が経っているんだと思う。

俺と家財道具一式が鎮座していたのは洞窟の中を石壁で仕切ったちょっとした部屋だった。
だいたいバスケットボールのコート半分くらいの広さかな。

そこに部屋の床全部を使って描かれた魔方陣があって
その中心部に俺の家財道具が4畳ほどのスペースにポツンと置かれている。

家財道具
シェルフの棚にはデカい液晶テレビ、P○3、ノートパソコン、大量の漫画、趣味の本やグッズ類が詰まっている。
俺の楽しみが全て詰まった棚だ。

まぁプ○ステやノートパソコンは電気の無い、剣と魔法のこの世界じゃ使えないだろうなぁ・・・


でも趣味のグッズ類は使える
俺の趣味はサバイバルゲーム
いわゆるミリタリーオタクだ。
実物の軍用品は高価なので持ってないけど、レプリカは色々ある。
機能は若干劣るけど、最低限使えりゃいいからね。

まぁバフォメットの少女が近くにいれば大抵の危機は無視できると思うけど。



あ・・・大切な事に気が付いた。

あの子の名前知らない・・・



いまさら聞くのもちょっと勇気がいるなぁ
でも聞かないともっとマズイ

「ねぇ、シャツは洗えばいいよ。ちょっと話があるからこっち来て」
運よく俺の着替えが詰まった衣装ケースも一緒に召喚されてるので着る服には困らない。

「なんじゃ?兄上?」
「うん、さっきから兄上って呼んでくれてるけどさ。まだ自己紹介してないと思ってね」


「あ、・・・そういえばそうじゃった・・・」


「俺は坂本直之。キミは?」


彼女は少し距離をとって、腰に手を当てたポーズを取ると名乗りをあげた

「わしは伝統あるバフォメットの血統、ルー・レオナール・バフォメットなのじゃ。ここではバフォ様かルーと呼ぶがよい。」


すると、どこにいたのか部屋の入り口から顔を出した魔女が
「彼氏いない歴=年齢の35歳ですよ〜」

「ゴラァ!何バラしとんじゃぁあ!」

おもわず苦笑して和んでしまう雰囲気だねw
バフォメットにしては若いのかな?
自然に醸し出される威厳を、語尾に【じゃ】をつけて無理に出そうとするから喋り方が不自然なのかも。

「ルーさんでいいかな?」
「ルーと呼んでくれると嬉しいのじゃ♪」
んじゃ
と手を差し出す
「ん?なんじゃ?」
ルーも同じように手を出し

「今後ともよろしくw」

「おぉ、そうじゃな。ヨロシクなのじゃ」
モフモフの手と握手をする。
その手触りに心の中で小さくガッツポーズをした。
11/01/09 01:15更新 / ミニたん
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■作者メッセージ
オチは知ってる人だけにやりとする仕様w
魔物(悪魔)と親しくなる時にはこの台詞はお約束っしょ!

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