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理性の融解
 水で濡らした布を持って再び部屋に戻ると、机の横に胴体が横たわっていたので思わず後ずさりした。確かに胴体だけ扉の前に放置しておくわけにもいかないが、改めて胴体だけ見るとなかなかショッキングな光景だ。

「すみませんでした、まさかあんな簡単に落ちるなんて」
「い、いえいえいえ……」

 彼女の顔を拭いていると、彼女の様子がおかしいことに気付いた。なんだか挙動不審だし、よくどもるし。それだけ言えば先程と何も変わらないのだが、そうではなく、よりいっそうおかしい。
 彼女の顔が赤いのも、きっとろうそくの光で照らされているからというだけではあるまい。

「あの、もしかして風邪ですか?」
「あっいえ、そんなことないです! 元気です! アンデッドは風邪をひきません!」

 どう見たっておかしい。なんだか落ち着かない様子だ。確かに風邪ではないかもしれないが、何らかの変化があったはずだ。この短時間の中で。
 「どうかしたんですか」と言おうとして、あることに気がついた。

「……あ、そういえば、まだお互いに自己紹介もしてませんでしたね。僕はノエルと言います。ノエル=アストニー。あなたの名前は?」
「あ、ああ、言われてみればあの日、お互いに名前も言い合いませんでしたね。わたしの名前は、ルーナです。デュラハンって大抵はファミリーネームもあるんですけど、私ははぐれ者なので、その、名前だけなんです」
「そ、そうなんですか」

 何やら普通ではない重い事情を知り、それ以上何か言うことはできなかった。はぐれ者……デュラハンというのは、もともと森に住む魔物ではないということだろうか。


「とにかく、もう一度落ち着きましょう。何かあったんなら、話してほしいです」

 彼女の顔と髪を一通り拭き終わった後で、未だ挙動不審の彼女を落ち着かせる為に僕はもう一度髪を撫でた。しかし、今度は髪を撫でても落ち着く様子はない。

「あ、あのあのあのっ! ごめんなさい!」
「? なにがです?」

 返答した後、横でガチャガチャと金属音がしていることに気付いた。
 何の気なしに横を見ると、彼女の胴体が鎧を脱ぎ、一糸まとわぬ姿に――



 そこで、状況を理解する間もなく僕はベッドに押し倒された。いつのまにか胴体をつけていたルーナは、上気した顔で僕を見つめ、そしてまだ呆けている僕の口の中に、いきなり舌を入れてきた。あちこちをまさぐられて、いつの間にか上半身は裸になっていた。その状態のまま、彼女の手が体のいたるところを触ってくる。そのくすぐったさに、思わず上ずった声を上げてしまう。

「んっ……あっ? うあぁぁ!?」

 そして同時に、この状況を理解した。僕は今襲われている。初めてのキスなのにディープキスをされ、女性の裸なんて見たことがないのに、その体を今は自分の体に押し付けられている。
 声を出せたのは、彼女が僕の口を解放してくれたからだ。キスを止めたかと思えば、彼女は僕の乳首を舌先で舐めたり、時には噛んだりして弄んだ。

「ひっ! ちょ、ちょっと、やめてください……!」

 必死に理性を保ちながら抵抗するが、彼女は止める気配などまったくなく、今度は上半身全体を舐めまわし始めた。唾液たっぷりの舌でお腹も胸も首も腕も舐められて、僕の体はべとべとになっていた。その頃には、もう抵抗するだけの力も奪われていた。まったく力が入らないまま、ただ這いまわる舌に身をよじるだけ。

「あっ、ひあうっ! や、やめ、ほんとに、やめて!」

 下半身が痛いくらいに熱い。いや、実際に痛かった。腰の辺りでテントのように張っているそれは、窮屈な服を脱ぎ捨てて、外に出たがっていた。破裂しそうなくらいに膨張したそれは、もはや隠しようがない。

「あは……。おっきくなってますね」

 舌責めを止めたルーナは、ほんの少しだけ邪気の混じった笑顔でそれを見た。僕は激しい舌の動きによって息も絶え絶えになっていて、何かを言う余裕はなかった。ただ、恥ずかしいという感情だけが渦を巻く。泣きたくなった。心臓は、壊れたのではないかというくらいに速い鼓動を刻んでいた。

 ゆっくりと、優しく丁寧に服を脱がしていく。それでも、窮屈な服から出られた僕のペニスは、反動で勢いよくはねた。あまりにも恥ずかしくて、彼女の顔を見ることができなかった。その間にも、衣服が脱がされていく。ゆっくりと、優しく、丁寧に。まるで、子供みたいに。そして、ついには僕も一糸まとわぬ姿になってしまった。

 ろうそくの灯が、ルーナを照らす。真夜中、裸の男女が二人。橙色の暖かい光。今更ながら、そんなシチュエーションに言い知れぬ興奮を覚えてしまう。彼女が笑う。にっこりと。僕がそんな興奮を抱いていることに気づいたのか、それとも単に僕が抵抗するのをやめたからか。

 ピト、と軽く、ルーナの指がペニスに触れた。

「ひうっ!」

 それだけで、僕は声を上げてしまった。それどころか、油断していれば射精してしまいそうだった。気付かない内に、それほどまでに僕は興奮の絶頂にいたのだ。

「……まだ、出さないでくださいね」

 そう言って、ルーナはゆっくりと僕のモノを扱き始めた。それでも、彼女の柔らかな手は僕を追いつめていった。裏筋をしっかりと刺激され、時にはカリを往復して……それでも、全く痛くない。文句なしの的確な責めだった。触られるだけでも出てしまいそうだったのに、こんなの我慢などできない。
 しかし、こんなにゆっくりとした責めなのに出してしまったら、それこそ男として立つ瀬がない。それは僕が男として面目を保てる最期の砦だった。


 ……耳をすませば、彼女の吐息が聞こえる。ルーナは、僕のすぐ横で裸になって、僕のペニスを扱いているのだ。顔は吐息が聞こえるほどに、胸はむにゅむにゅと腕に当たるほどに、僕たちは密着していた。どんなに落ち着こうと思っても、興奮は冷めない。

 むしろ、理性がこの現実を認めると同時に、興奮は高まった。夢じゃないのだ。僕は、現実でこんな可愛らしい少女と裸で抱き合って、そして奉仕してもらっている。それで興奮しないわけがなかった。

「いっ、ダメ、でる、出るぅっ!」

 とうとうその瞬間は訪れた。「え、もう、ですか?」とルーナが言う間に、僕は射精していた。ゆっくりとした責めにもかかわらず、精液は僕の胸のあたりまでかかった。

「うわ、うわ、すごいですね……。まさか、あれだけでこんなに出るなんて」
「あうぅ……」

 快楽の残滓に浸っている中で聞こえてきた、その驚きの声に顔が熱くなる。顔を隠したくても、腕を動かす気力すら沸いてこなかった。

「ちょっ、何してるんですか!」
「何って、あの、もともとこれが目的なので……。長時間首が取れてたので、精力を失ってしまったんです」

 呆けている時間も束の間、なんとルーナが僕の体に垂れた精液を舐めとりだした。またあの舌責めが始まる。先程舐められたばかりで敏感になっているというのに。

「んふふ、美味しいです」
「お、おいしい?」
「私たちにとっては、精液はとても大きなエネルギーになるのです」

 原理は分からないが、とにかくこの子たちにとって、精液というのは美味しく感じるらしい。

「んぅ……ほんとに美味しい」

 先程舐めていた時とは違い、今度は精液を舐めとっているため、ぴちゃぴちゃ、じゅるじゅると水音がより大きく響く。それに、自分の出した精を飲んでもらっているというのが、さらに興奮を引きたてた。

「ふふ、また大きくなってますね」
「こ、これは、その」

 一度精液を出してしまって冷静になった僕は、さらに恥ずかしくなってしまった。しどろもどろに何とか弁明をしようとするが、前述の通り、こんなにも大きくしてしまっては隠しようがない。

「いいんですよ。それにさっきのじゃ、きっと満足できていないですよね」
「そ、そんなことは」

 ……そんなことは、ある。いかに気持ちが良くても、ゆっくりとした責めではどうしても満たされない。しかし、それを正直に言うなんて、もっとしてほしいと言うようなものだ。

「いいですいいです。正直になってください。ね?」
「い、いや、その」
「あむっ♪」
「えっ!? あっ、あぁぁぁ……!」

 なんとルーナは、唐突に僕のペニスを咥えてしまった。その瞬間、すさまじい脱力感に襲われて、一切の抵抗ができなくなった。腕を動かすことすらままならない。
 初めて味わう感触だった。ぬめった口内がペニスを包んでいる。あまりの気持ちよさに、言葉すらでなくなった。もう、今がどういう状況であるかとか、今どうすべきだとか、そういうことは考えられなくなっていた。

「今度は、いつイッてもいいですよ。出そうになったら言ってください、激しくしますから」
「え、うあ……はい」

 何とか返事をしたところで、舌が亀頭を包んできた。カリをぐるっと回ったかと思えば、次は尿道をチロチロとくすぐられるの繰り返し。一度出していなければ、すぐにでもイッてしまっていたかもしれない。そうでなくても僕のペニスはまるごと咥えられていて、全体が口内のぬめりによって刺激されているのだ。

「んっ、んっ、んむ……♪」

 やがて、ゆっくりと口が上下に動き始めた。にちゃにちゃという淫猥な水音が耳を支配する。唇が竿の根元を往復して、たまらなく気持ちがいい。だけど、器用にも裏筋には触れられていないため、イッてしまうような刺激ではない。その感触は、僕の理性を徐々に溶かし始めた。

 要するに……裏筋も、舐めてもらいたい。そんな欲求が、じんわりと頭の中を浸食してきているのだ。気持ちはいいが、物足りない。どうしても、その少し上、裏筋を舐めてもらわなければ、満足できない。しかし、そんなことをお願いするなんてできない。
 結果として、僕は情けないことに、裏筋に刺激が来るように少しずつ動くしかなかった。それも、ペニスがルーナの支配下にある中、動いていることがバレないように。ちょっと腰をひねってみたり、ペニスを動かしてみたりして。

「あぅ、あっ……はっ」

 たまに裏筋にも刺激が来て、思わず声が出た。しかしすぐに刺激は止んでしまう。次第に僕の動きは激しさを増していった。理性が快楽に溶かされていく。脳が快楽に浸かってしまう。性欲を満たす以外にはものを考えられなくなってくる。

 そんな状態で、ペニスを咥えている彼女が気づかないわけがなかった。

「ぷはっ。あはは、ノエルさん、もうイッちゃいたいんですか?」

 ペニスから口を離して、いたずらっぽく笑う。その言葉で、再び僕の理性は快楽の波から打ち上げられた。恥ずかしさで顔が熱くなる。ルーナが僕の耳元まで近寄ってきて、囁く。先程まで僕の肉棒を咥えていた、その口で。

「意外と恥ずかしがり屋さんなんですね。いいんですよ、今くらい何も考えなくても。ただ、あなたがやってほしいことを言ってください」

 理性の溶ける音がした気がする。水や何かでゆっくりと溶けるのではなく、高熱で強引に溶かしたような、そんな音が。

「……い、イかせてください」
「どんな風に、ですか?」
「…………裏筋を激しく舐めてイかせてくださいっ!」
「はい。かしこまりました♪」

 ルーナが笑う。とても嬉しそうに笑う。そして、焦らすようにゆっくりと、ペニスに顔を近づける。既に僕のモノは、唾液でたっぷりと濡れていた。唾液が、緩やかな上下運動によって泡立ち、白くなっているところもあり、その光景がまた興奮を加速させた。

「ん……ちゅっ」

 ルーナは軽く亀頭にキスをしてから、一気にペニスを咥えこんだ。今度はしっかりと、裏筋に舌が当たっている。ややざらざらとした舌が、裏筋から竿の根元までを何度も何度も往復する。それだけでもすぐにイっていたというのに、彼女は口をすぼめて、激しい上下運動を始めた。

 じゅぷっ、ぐちゅ、ちゅぱっ……。

「あひっ、あっ、はっ、いいぃぃっ!」

 いやらしい音が部屋に響く。もう何も考えず、大声で喘いでいた。今は夜中だと言うことも、女の子が目の前にいるということも、僕が男だと言うことも、ぜんぶ、忘れて。

 ぐじゅぐじゅ、ちゅぶっ、じゅぷるるる――!

「はっ、あぐっ! も、もうイクッ! も、あう、あぁぁぁぁ!!」

 思い切り腰を突き上げて叫び、精を吐きだした。

「んぐっ。むー……んく、んく」

 いきなり動かれたことに多少驚いたものの、ルーナは精液を飲みだした。飲むたびに口が少し狭まって、イった直後のペニスには苦痛なくらいの刺激が与えられた。

「あっ、やぁ、吸わないで……!」
「ごめんなさい、もうちょっとで終わるから、我慢してください。……ねっ?」

 にやり、と笑う。彼女のこんな笑い方を見たのは初めてだ。なんだかとても嫌な予感がする――。

「ちゅぅぅぅーっ!」
「ひゃああぁぁぁ!?」

 思い切りペニスを吸われる。おまけに、まだしっかりと裏筋に舌を当てながらというサービス付き。僕は、自分でも驚くくらいに勢いよくはねた。まるで魚みたいに。

「っとと。そんなにはねたら怪我しちゃいますよー」
「ど、どの口が言うんですか!」
「この口ですよ?」

 そう言って、彼女は口の中を見せてきた。口の中にはまだ精液が残っていて、糸を引いている。あまりにも淫猥な光景に、つい目を背けてしまう。

「……あなた、最初に会ったときと性格違いませんか?」
「えへへ。ようやくあなたの精をもらうことができて、ちょっと舞い上がっちゃってるだけですよう」
「まったくもう……」
「それより、まだおちんちんが大きいままですよ?」
「いや、それはあなたがムリヤリ大きく」

 言いかけて、彼女が何を言わんとしているかを理解した。



「……もう一度、出してみませんか?」

 そう言うと、彼女は自らの割れ目を広げ、僕を誘ってきた。
13/07/29 22:25更新 / 明鏡
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